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特許7184903硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20221129BHJP
   G03F 7/035 20060101ALI20221129BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221129BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20221129BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20221129BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/027 502
G03F7/035
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K3/28 D
H05K3/28 F
B32B27/16 101
B32B27/30 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020535628
(86)(22)【出願日】2018-08-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 CN2018100646
(87)【国際公開番号】W WO2019128256
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201711445246.X
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】507149350
【氏名又は名称】太陽油墨(蘇州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIYO INK(SUZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.26TaishanRoad,Suzhou New District,Suzhou City,Jiangsu 215129China
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋一朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 修一
(72)【発明者】
【氏名】ドン スーユェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユービン
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-022328(JP,A)
【文献】特開2007-100074(JP,A)
【文献】特開2016-071359(JP,A)
【文献】特開2008-015285(JP,A)
【文献】特開2011-064864(JP,A)
【文献】特開2007-271987(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0077428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/035
G03F 7/004
H05K 3/28
B32B 27/16
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂と、
(B)光重合開始剤と、
(C)5個以上のアルキレンオキシド骨格を有するエチレン性不飽和基含有化合物と、を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)成分として、
(A1)エポキシ樹脂に、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に酸無水物を反応させてなるカルボキシル基含有樹脂にグリシジル基とエチレン性不飽和基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂、及び
(A2)エポキシ樹脂に、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に酸無水物を反応させてなるカルボキシル基含有感光性樹脂と、を含み、
前記(C)成分が、下記の一般式(2)または(3)で示される化合物である
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【化2】
(式中、l+m+n≧5である。)
【化3】
(式中、n≧5である。)
【請求項2】
前記(A2)成分のエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、5個以上30個以下のアルキレンオキシド骨格を有することを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分100重量部に対し、前記(A1)成分の含有量は10~30重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(D)下記一般式(1)の構造を有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは、炭素数7以上の脂環式骨格または芳香族骨格を表し、nは0以上の数を表す。)
【請求項6】
前記(D)成分として、一般式(1)中のXがジシクロペンタジエン骨格であるエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)成分として、さらに、ウレタン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
フレキシブルプリント配線板の製造に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物または請求項9に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末の普及と性能の向上が急速に進行している。これらに代表される情報機器端末は、小型化、薄型化への消費者の要求が高く、その要求に応えるべく、製品内部の回路基板の高密度化、省スペース化が必要となっている。そのため、折り曲げての収納が可能で、回路配置の自由度を高めることのできるフレキシブルプリント配線板の用途が拡大しており、フレキシブルプリント配線板に対する信頼性もこれまで以上に高いものが求められている。
プリント配線板の製造工程には、基板上にスクリーン印刷などの方法によって形成した配線(回路)パターンを外部環境から保護したり、電子部品をプリント配線板に表面実装する際に行われるはんだ付け工程において、不必要な部分にはんだが付着しないように保護するために、カバーレイもしくはソルダーレジストと呼ばれる保護層をプリント配線板上に被覆することが行われている。従来、かかる用途に使用されるソルダーレジスト用の硬化性樹脂組成物において、主としてエポキシ系のカルボキシル基含有感光性樹脂が使用されている。
【0003】
例えば、特開平10-282665号公報には、ラジカル重合性不飽和アシル基とカルボキシル基を有する樹脂のカルボキシル基に、1つのエポキシ基と1つ以上のラジカル重合性不飽和基を1分子中に合わせもつ化合物を反応することにより得られる紫外線硬化性樹脂を使用したソルダーフォトレジストインキ組成物が提案されている。
【0004】
また、特許5556990号公報には、多官能エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸のエステル化合物又は飽和若しくは不飽和多塩基酸のエステル化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、さらに1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物を付加させた感光性プレポリマー、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマ、光重合開始剤、ブロック化イソシアネート、ビスマレイミド化合物を含有する感光性樹脂組成物が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなカルボキシル基含有感光性樹脂を使用した樹脂組成物から得られる硬化膜は、耐熱性は良好であるが、折り曲げ性が低かったり、反りが大きいという問題があり、改善の余地があった。
本発明の目的は、耐熱性のみならず、折り曲げ性、低反り性も優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物、及びそれを使用したドライフィルム、硬化物、及びプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、特定のカルボキシル基含有感光性樹脂を組合せ、かつ5個以上のアルキレンオキシド骨格を有するエチレン性不飽和基含有化合物を配合することにより、耐熱性のみならず、折り曲げ性、低反り性も優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記のとおりである。
[項1](A)カルボキシル基含有樹脂と、
(B)光重合開始剤と、
(C)5個以上のアルキレンオキシド骨格を有するエチレン性不飽和基含有化合物と、を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)成分として、
(A1)エポキシ樹脂に、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に酸無水物を反応させてなるカルボキシル基含有樹脂にグリシジル基とエチレン性不飽和基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂、及び
(A2)エポキシ樹脂に、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に酸無水物を反応させてなるカルボキシル基含有感光性樹脂と、を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
[項2]前記(A2)成分のエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂であることを特徴とする項1に記載の硬化性樹脂組成物。
[項3]前記(C)成分が、5個以上30個以下のアルキレンオキシド骨格を有することを特徴とする項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
[項4]前記(A)成分100重量部に対し、前記(A1)成分の含有量は10~30重量部であることを特徴とする項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
[項5]さらに、(D)下記一般式(1)の構造を有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とする項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは、炭素数7以上の脂環式骨格または芳香族骨格を表し、nは0以上の数を表す。)
[項6]前記(D)成分として、一般式(1)中のXがジシクロペンタジエン骨格であるエポキシ樹脂を含むことを特徴とする項5に記載の硬化性樹脂組成物。
[項7]前記(A)成分として、さらに、ウレタン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことを特徴とする項1~6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
[項8]フレキシブルプリント配線板の製造に用いられることを特徴とする項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
[項9]項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
[項10]項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物または項9に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
[項11]項10に記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性のみならず、折り曲げ性、低反り性も優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物、及びそれを使用したドライフィルム、硬化物、及びプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)5個以上のアルキレンオキシド骨格を有するエチレン性不飽和基含有化合物と、を含む硬化性樹脂組成物であって、前記(A)成分として、(A1)エポキシ樹脂に、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に酸無水物を反応させてなるカルボキシル基含有樹脂にグリシジル基とエチレン性不飽和基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂、及び(A2)エポキシ樹脂に、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に酸無水物を反応させてなるカルボキシル基含有感光性樹脂と、を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0010】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分をそれぞれ説明する。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、以下他の類似の表現についても同様である。
【0011】
(A)カルボキシル基含有樹
本発明の組成物には、(A)カルボキシル基含有樹脂として、(A1)エポキシ樹脂に、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に酸無水物を反応させてなるカルボキシル基含有樹脂にグリシジル基とエチレン性不飽和基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂(単に「(A1)成分」ともいう)、及び(A2)エポキシ樹脂に、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に酸無水物を反応させてなるカルボキシル基含有感光性樹脂(単に「(A2)成分」ともいう)を必須成分として含む。
【0012】
前記エチレン性不飽和基を有するカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸などが好ましくあげられる。
前記酸無水物としては、代表的なものとして無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの二塩基性酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物;その他これに付随する例えば5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物のような多価カルボン酸無水物誘導体などが使用できるが、二塩基性酸無水物が好ましい。
【0013】
前記のエポキシ樹脂として、エポキシ基を有する樹脂であり、公知のものをいずれも使用できる。分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を多数有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
前記グリシジル基とエチレン性不飽和基を有する化合物として、グリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つのグリシジル基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。
前記(A1)成分の原料となるエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂およびビフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
前記(A2)成分の原料となるエポキシ樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0014】
(A1)成分として、下記の(1)~(2)の樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つのグリシジル基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂が更に好ましい。
(A2)成分として、下記の(1)~(2)の樹脂などが更に好ましい。(A2)成分を含むと、ウレタン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂よりも硬化物の柔軟性が向上し、硬化物の折り曲げ性に優れるようになる。
【0015】
(1)2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
(2)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0016】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、本発明の効果を妨げない限り、上記の(A1)成分と(A2)成分以外のカルボキシル基含有樹脂を1種類でも複数種混合しても使用することができる。(A)カルボキシル基含有樹脂として、さらに、(A3)ウレタン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂を含んでもよい。(A3)成分を含むと、硬化物の折り曲げ性と耐熱性を向上させることができる。
(A3)成分として、下記の(3)~(7)のいずれかの樹脂が好ましい。
(3)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(4)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基を含有する、ジアルコール化合物、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
(5)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物と、カルボキシル基含有ジアルコール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
(6)上述の(4)または(5)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
(7)上述の(5)または(6)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0017】
(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物中に、20~80質量%が適当である。20質量%以上80質量%以下であると、皮膜強度が良好で、組成物の粘性を低くでき、塗布性などに優れる。より好ましくは20~60質量%である。
前記(A)カルボキシル基含有樹脂において、(A1)成分と(A2)成分との含有割合に特に限定されない。(A1)成分の含有量が低すぎると、(A1)成分による耐熱性向上効果が不十分となる恐れがあり、高すぎると、折り曲げ性が劣り、反りが大きくなる恐れがある。耐熱性と、折り曲げ性、低反り性とのバランスの点から、前記(A)成分100重量部に対し、前記(A1)成分の含有量は、好ましくは10~30重量部、さらに好ましく10~20重量部である。
【0018】
(B)光重合開始剤
本発明において、(B)成分として用いる光重合開始剤としては、通常、硬化性樹脂組成物に用いられるものであれば特に制限はない。具体的には、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヘラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェノン)-ブタノン-1、2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等などが挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
(B)成分としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を好適に使用することができる。
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI-325、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、アデカ社製N-1919、NCI-831などが挙げられる。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、カルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が好ましい。
アルキルフェノン系光重合開始剤の市販品としてはBASFジャパン社製イルガキュアー184、ダロキュアー1173、イルガキュアー2959、イルガキュアー127などのα―ヒドロキシアルキルフェノンタイプが挙げられる。
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、BASFジャパン社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
また、光重合開始剤としてはBASFジャパン製のイルガキュア389、イルガキュア784等のチタノセン系光重合開始剤も好適に用いることができる。
【0020】
(B)光重合開始剤の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1~25質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。0.1~25質量部であることにより、光硬化性及び解像性に優れ、密着性やPCT耐性も向上し、さらには無電解金めっき耐性などの耐薬品性にも優れる硬化膜を得ることができる。特に、25質量部以下であると、アウトガスの低減効果が得られ、さらに塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下することを抑えることができる。
【0021】
(C)5個以上のアルキレンオキシド骨格を有するエチレン性不飽和基含有化合物
本発明において、(C)成分として、5個以上のアルキレンオキシド骨格を有し、かつエチレン性不飽和基を含有すれば、特に限定されない。分子中に5個以上のEO又はPOを有し、且つ2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。また、(C)成分は、アルキレンオキシド骨格の末端に(メタ)アクリロイル基を有する構造を含むことが好ましい。エチレン性不飽和基の数は、2以上4以下であることがより好ましく、2以上3以下であることが最も好ましい。
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことを称し、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことを称す。また、以下に、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(-CH-CH-O-)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(-CH-CH-CH-O-、-CH(CH)-CH-O-、-CH-CH(CH)-O-)のブロック構造を有することを意味する。
【0022】
(C)成分として、EO変性の多価アクリレートを例に、下記の一般式(2)又は(3)で示される化合物がさらに好ましい。
【化2】
(式中、l+m+nの合計が変性数を表し、l+m+n≧5である。)
【化3】
(式中、nが変性数を表し、n≧5である。)

【0023】
「5個以上のアルキレンオキシド骨格を有する」とは、二種類以上のアルキレンオキシド骨格を含有する場合、あらゆる種類のアルキレンオキシド骨格を合計で5個以上有することを意味する。5個未満であれば、本発明の優れた折り曲げ性及び低反り性を実現できなくなる。
各性能のバランスの点から、前記(C)成分が、5個以上30個以下のアルキレンオキシド骨格を有することが好ましく、5個以上20個以下を有することがより好ましい。アルキレンオキシド骨格の数が30個以下であると組成物の粘度を調整せずに、硬化膜の厚さを安易に確保できる。
(C)成分の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましく、10~20質量部であることがさらに好ましい。
【0024】
そのほかの成分
本発明において、上記の(A)~(C)成分に加えて、さらに、(D)下記一般式(1)の構造を有するエポキシ樹脂を含んでもよい。
【化4】
(式(1)中、Xは、炭素数7以上の脂環式骨格または芳香族骨格を表し、nは0以上の数を表す。)
前記一般式(1)中のXがジシクロペンタジエン骨格であることが、本発明の効果を著しく発揮するので好ましい。
なお、本発明においては、(D)成分以外のエポキシ樹脂、例えば上記のビスフェノールA型エポキシ樹脂等を含んでいてもよい。
【0025】
本発明において、上記の(A)~(C)成分に加えて、さらに、(E)エーテル骨格を有するジアミンを含んでもよい。(E)成分としては、例えば、JEFFAMINE D-230、JEFFAMINE D-2000(ハンツマン社製)が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物の現像性、ポットライフの点から、前記(E)成分が、好ましくはエーテル骨格の数が15以上のポリエーテルアミン(ポリエーテルジアミンともいう。)を含み、より好ましくはポットライフおよび耐熱性の観点からエーテル骨格の数が1以上10以下のジアミンと、エーテル骨格の数が20以上40以下のポリエーテルアミンとの両方を含むことが好ましい。エーテル骨格の数が1以上10以下のジアミンの含有量は、(E)成分の総重量を100重量部に対し、1~40重量部であることが好ましく、エーテル骨格の数が15以上のポリエーテルアミンの含有量は、(E)成分の総重量を100重量部に対し、60~99重量部であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、(F)架橋密度向上のための3官能以上のエチレン性不飽和基含有化合物((C)成分を除く)を含有してもよい。その(F)成分として、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、所望の物性に応じて硫酸バリウム、酸化珪素、タルク、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、ベントナイト、カオリン、ガラス繊維、炭素繊維、雲母等の公知・慣用の充填剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック等の公知・慣用の染料や着色顔料、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤またはレベリング剤などの各種添加剤、あるいはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t-ブチルカテコール、フェノチアジン等の公知・慣用の重合禁止剤などを添加してもよい。
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などを使用することができる。これらの有機溶剤は、単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、耐熱性のみならず、折り曲げ性、低反り性も優れた硬化物を得られるので、フレキシブルプリント配線板の製造に好ましく用いられる。
【0027】
本発明のもう一つの形態は、上記の硬化性樹脂組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルムを提供する。
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持体)上に塗布、乾燥させることより得られることができる。ドライフィルム化に際しては、本発明の組成物を、必要に応じて上記の有機溶剤により希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して、乾燥塗膜としての樹脂層とすることができる。樹脂層の厚さについては特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で0.1~100μm、好適には0.5~50μmの範囲で適宜選択される。
【0028】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、0.1~150μmの範囲で適宜選択される。
【0029】
この場合、キャリアフィルム上に樹脂層を形成した後、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面にさらに、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離する際に、樹脂層とカバーフィルムとの接着力が、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0030】
本発明のもう一つの形態は、上記の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物を提供する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて塗布方法に適した粘度に調整し、これを例えば、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、必要に応じて例えば60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。その後、得られた塗膜又は上記のドライフィルムの樹脂層を、所定の露光パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線照射により露光し、未露光部を現像液により現像してレジストパターンを形成でき、さらに、例えば140~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、耐熱性、折り曲げ性、低反り性に優れた硬化物がレジスト膜として得られる。
【0031】
本発明の組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど、蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、および、ノズルより支持体に吹き付ける方法を用いて行うことができる。
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接活性エネルギー線を照射し画像を描くダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機の光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にある光を用いているものであればよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などの希アルカリ水溶液が使用できる。
また、本発明は、上記の硬化物を有するプリント配線板を提供する。
【実施例
【0032】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0033】
硬化性樹脂組成物を、表1に示した各成分を、そこに示す固形分の配合比(質量基準)で混合することにより得た。
【0034】
[(A1)成分の合成例]
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート700gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、エピクロン(EPICLON) N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、さらにトリフェニルホスフィン1.6gを追加し、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に、芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)562g、テトラヒドロ無水フタル酸684g(4.5モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行った。さらに、得られた反応液にグリシジルメタクリレート142.0g(1.0モル)を仕込み、115℃で4時間反応を行い、(A1)成分となるカルボキシル基含有感光性樹脂溶液を得た。このようにして得られた樹脂溶液の固形分は65%、固形分の酸価は87mgKOH/gであった。
【0035】
[(A2)成分の合成例]
エポキシ当量800、軟化点79℃のビスフェノールF型固形エポキシ樹脂400部を、エピクロルヒドリン925部とジメチルスルホキシド462.5部を溶解させた後、攪拌下70℃で98.5%NaOH81.2部を100分かけて添加した。添加後、さらに70℃で3時間反応を行なった。
次いで、過剰の未反応エピクロルヒドリンおよびジメチルスルホキシドの大半を減圧下に留去し、副生塩とジメチルスルホキシドを含む反応生成物をメチルイソブチルケトン750部に溶解させ、さらに30%NaOH10部を加え70℃で1時間反応させた。反応終了後、水200部で2回水洗を行った。油水分離後、油層よりメチルイソブチルケトンを蒸留回収して、エポキシ当量290、軟化点62℃のエポキシ樹脂(a-1)370部を得た。
得られたエポキシ樹脂(a-1)2900部(10当量(エポキシ基で10モル))、アクリル酸720部(10当量(カルボキシル基で10モル))、メチルハイドロキノン2.8部、カルビトールアセテート1950部を仕込み、90℃に加熱、攪拌し、反応混合物を溶解した。次いで、反応液を60℃に冷却し、トリフェニルフォスフィン16.7部を仕込み、100℃に加熱し、約32時間反応し、酸価が1.0mgKOH/gの反応物を得た。次に、これに無水マレイン酸786部(酸無水物構造で7.86モル)、カルビトールアセテート423部を仕込み、95℃に加熱し、約6時間反応を行い、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
このようにして得られた樹脂溶液の固形分は65%、固形分の酸価は100mgKOH/gであった。
【0036】
[(A3)成分の合成例]
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、アルコール性ヒドロキシル基を複数有する化合物として1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製T5650J、数平均分子量800)を3600g(4.5モル)、ジメチロールブタン酸を814g(5.5モル)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn-ブタノール118g(1.6モル)を投入した。次に、芳香環を有しないイソシアネート化合物としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート2009g(10.8モル)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が60wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のカルボキシル基含有樹脂を得た。得られた(A3)ウレタン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂の固形分の酸価は49.8mgKOH/gであった。
市販の材料として、光重合開始剤として、BASFジャパン製のイルガキュア784、イルガキュアー369、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)を使用し、ジシクロペンタジエン型固形エポキシとして、日本化薬株式会社製XD-1000を使用し、ビフェニルノボラック型エポキシとして、日本化薬株式会社製NC-3000を使用し、EO変性アクリルモノマーとして、新中村化学社工業株式会社製A-600、A-400、A-200、A-GLY-20Eを使用した。そのほか、DPHA(ジペンタエリスリトールトリアクリレート、日本化薬株式会社製)、JEFFAMINE D-230、JEFFAMINE D-2000(ハンツマン社製)。
【0037】
洗浄した銅回路を有するポリイミド基板(ポリイミドフィルムの厚み:25μm、銅回路:1/3オンス)上に、実施例1~7および比較例1~3の各組成物をスクリーン印刷で乾燥後10μmとなるように全面塗布し、熱風循環式乾燥炉で160℃30分で乾燥させて乾燥塗膜を形成し、次いで、オーク製作所社製メタルハライドランプを搭載した露光機により感度7段となる露光量で露光した。その後、1wt%NaCO水溶液によりスプレー圧0.1MPaで1分間現像し、次いで、熱風循環式乾燥炉を用いて150℃で60分間熱硬化処理を施すことにより、ポリイミド基板上に厚み10μmの硬化塗膜を作製した。
得られた各硬化性樹脂組成物の硬化塗膜を評価した結果を表1に示す。なお、評価方法及び評価基準は、次の通りである。
(硬化物-低反り性評価)
硬化塗膜を有するポリイミド基板を5cm×5cmに切り出して評価サンプルを作成した。硬化塗膜の面を上面として各角の反りを定規にて測定し4点の平均値を評価した。
○:各角反りの平均値2mm以下
△:各角反りの平均値3mm以下
×:各角反りの平均値4mm以下
(折り曲げ性)
硬化塗膜を有するポリイミド基板を、幅10mm×長さ70mmに切り出し、評価サンプルを作成した。硬化塗膜を有する面を山折りにして重り1Kgを乗せ、10秒乗せた後に折り曲げ部を拡げた。そして、再度、折り曲げ部に重りを10秒間乗せて、これを1回とした。折り曲げ部を顕微鏡にて観察し銅が見えるまでの回数を評価した。
○:折り曲げ回数-2回
△:折り曲げ回数-1回
×:折り曲げ回数-0回
(耐熱性試験)
硬化塗膜を有するポリイミド基板を、縦20mm×横20mmに切り出し、評価サンプルを作成した。はんだ槽温度を320℃にし、その中にサンプル基板を入れ、10秒後に基板を取り出し、基板表面上の硬化塗膜の膨れを確認し、膨れが出るまでの回数を評価した。
○:320度×10秒 3回以上
△:320度×10秒 2回
×:320度×10秒 1回
【0038】
【表1】
【0039】
表1から明らかなように、カルボキシル基含有樹脂として(A1)成分と(A2)成分との組み合わせを含有し、5個以上のアルキレンオキシド骨格を有するエチレン性不飽和基含有化合物を使用した実施例1~7のいずれも、硬化物の低反り性、折り曲げ性、及び耐熱性の評価に優れた結果となった。それに対して、5個未満のアルキレンオキシド骨格を有するエチレン性不飽和基含有化合物を使用した比較例 では、硬化物の低反り性、折り曲げ性がやや悪かった。アルキレンオキシド骨格を有するエチレン性不飽和基含有化合物を使用しない比較例2では、硬化物の低反り性、折り曲げ性が悪かった。(A1)成分を含有しない比較例3では、硬化物の低反り性、折り曲げ性がやや悪く、はんだ耐熱性が不良となった。
それらの結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は、耐熱性のみならず、折り曲げ性、低反り性も優れた硬化物を形成することが可能であることが判明した。優れた折り曲げ性、低反り性の結果から、フレキシブルプリント配線板へも好適に使用される。