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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】エーロゲル材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20221129BHJP
   F16L 59/06 20060101ALI20221129BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C01B33/16
F16L59/06
G10K11/162
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020546413
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2018075446
(87)【国際公開番号】W WO2019170264
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】18159929.1
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ヌムリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ビェルン ラツァール
(72)【発明者】
【氏名】カール オスト
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ケーベル
(72)【発明者】
【氏名】アナ シュトヤノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フーバー
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031386(JP,A)
【文献】特開平10-152360(JP,A)
【文献】特表2016-530199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/16
F16L 59/06
G10K 11/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
a)シリカゾルと、アルコールと、酸触媒作用により活性化できる疎水化剤とを含有する混合物を調製する工程;
b1)工程a)において形成された混合物に塩基を添加し、かつ生じた混合物を混合する工程;
b2)工程b1)において得られた、シリカゾルを含有する混合物をゲル化してシリカゲルを生じさせ、かつ任意に前記ゲルを熟成させる工程;
c)工程b2)において形成され、かつ任意に熟成されたシリカゲルに疎水化触媒を添加するか、もしくは疎水化触媒をその場で形成させ、かつ前記シリカゲルの酸触媒疎水化を開始する工程;
d)工程c)において形成された混合物の揮発性成分を亜臨界乾燥により除去してエーロゲル材料を形成する工程
を含む、非晶質シリカをベースとするエーロゲル材料を製造する方法であって、
少なくとも工程b2)~d)を、1つの同じ反応器中で実施し、工程b2)~d)が実施される反応器が、5~50mmの直径を有する管または互いに平行に配置された複数のそのような管の束であることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
工程a)を、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトライソプロピルオルトシリケート(TPOS)およびそれらの混合物からなる群から選択されるオルガノシリケートのアルコール性溶液の加水分解、続いて、アルコールと、酸触媒作用により活性化できる疎水化剤と、水とからなる有機溶剤混合物を用いる希釈によって実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の酸触媒作用により活性化できる疎水化剤が、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b1)において使用される塩基が、アンモニア、フッ化アンモニウムおよびアミノシランからなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程b2)を、80~120℃の温度で20~180分以内に実施する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記疎水化触媒が、塩化水素、硝酸、硫酸、トリメチルクロロシランおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)によるシリカの疎水化を、80~130℃の温度で、1.2~4barの圧力下で10~180分以内で実施する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程d)を、100~200℃の温度および0.1~4barの圧力下で実施する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程d)の実施中に、任意に予熱されたキャリヤーガスを、150~1500h-1のガスの毎時空間速度で連続的に前記反応器中へ導通し、かつ前記反応器のガス状成分との混合後に、再び前記反応器から排出する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)~c)において使用される軸対称な反応器の対称軸が、これらの工程の実施中に、10~45度の水平角を形成する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記エーロゲル材料が、0.3g/cm未満の密度および12~30mW/(m・K)の熱伝導率を有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーロゲルを製造するための特別な方法、それにより製造できるエーロゲルおよび断熱のためのそのようなエーロゲルの使用に関する。
【0002】
シリカをベースとするエーロゲルおよびキセロゲルは、それらの極めて低い熱伝導率および材料密度のために、高効率なインスレーション材料として、例えば建物断熱において、ますます使用されている。エーロゲルおよびキセロゲルのコスト効率の高い製造は、ますます重要になっている。それらを製造するための多数の方法が公知である。典型的には、ケイ素原料としての水ガラス(ケイ酸ナトリウム)またはケイ素アルコキシレート(オルガノシリケート)、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)およびテトラメチルオルトシリケート(TMOS)から出発し、これらは最初にシリカゾル、ついでシリカゲルを形成する。一般にエーロゲル材料を製造する際の重要な工程は、湿潤ゲルの乾燥である。伝統に従えば、昔は、エーロゲルの製造には、もっぱら超臨界乾燥、すなわち、超臨界流体、典型的には低級アルコール(高温超臨界乾燥またはHTSCD)および今日では好ましくはCO(低温超臨界乾燥またはLTSCD)による乾燥が使用されてきた。その際に、該乾燥の際に使用される溶剤に特異的な臨界パラメーター、例えば温度および圧力を下回ってはならなかった。例えば、COの臨界温度および臨界圧は約31℃および約74barである。そのような高いプロセス圧力下での反応実施は、エーロゲルの製造の際の比較的費用集約的なプロセス管理および装置工学上の投資を必要とする。
【0003】
エーロゲルまたは構造の類似したキセロゲルを製造する際の重要なブレークスルーは、溶剤を含有する疎水化されたゲルから標準圧力で亜臨界乾燥することにより達成された。この方法は例えば米国特許第5565142号明細書(US 5565142 A1)に記載されている。亜臨界条件下でのそのような乾燥により、超臨界乾燥されたエーロゲルとほぼ同じ特性を有する材料を製造することができる。これらは、初めは古典的な定義に従い、キセロゲルと言ったが、その用語は今日ではさらに、溶剤から亜臨界乾燥されたエーロゲルにも使用される。以下において、エーロゲルの製造の種類に基づいた古典的な定義ではなく、典型的な材料特性(密度<0.30g/cm、多孔率>85%、細孔径20~80nm)に基づく定義が使用される。したがって、亜臨界乾燥された材料もさらにエーロゲルと呼び、キセロゲルとは呼ばない。
【0004】
国際公開第2012/044052号(WO 2012/044052 A2)は、光学的に透明および不透明な粒状物形のSiOエーロゲルの調製に関する。このためには、水ガラスゾルが、アルコール相中へ注入され、その際に、この相中で該ゲルが形成される。該ゲルは、さらにアルコールで交換され、かつシリル化試薬を用いて疎水化される。続いて、該ゲルは、標準圧力または減圧下で乾燥される。該方法は、エーロゲル粒状物を明らかにより少ない時間浪費で生産することを可能にするが、しかしながら、重大な欠点は、該ヒドロゲル相から水を除去するために必要とされるエタノールでの洗浄である。該水-アルコール混合物の後処理は、大量のエネルギーを必要とし、このことは、この方法を大規模工業生産にとって著しく不利にする。この発明にとって特に重要なこととして、疎水化剤および疎水化触媒(HCl)からなる混合物中でのアルコゲルの疎水化が挙げられる。
【0005】
国際公開第2013/053951号(WO2013/053951 A1)には、次の順序のプロセス工程を含む、キセロゲルの製造方法が開示されている:(a)アルコール含有ゾルを製造する工程;(b)~(c)該ゾルをゲル化および熟成する工程;(d)工程(b)および(c)において製造され、かつ熟成されたゾルを疎水化する工程;(e)任意に、疎水化されたゾルを、80℃を下回る温度で予備乾燥させる工程および(f)100℃を上回る温度で完全に乾燥させる工程。該方法の最後の工程(d)の実施は、その際に、別個の炉中で行われる。該エーロゲルのそのような段階的な乾燥は、国際公開第2013/053951号によれば、例えば仏国特許出願公開第2873677号明細書(FR 2873677 A1)に記載されたような、1つの工程における乾燥とは異なり、均質なエーロゲルを得ることを可能にする。その実施例は、該予備乾燥工程の省略が、得られた材料のより高い熱伝導率をまねくことを付加的に示している。完成し、かつ熟成されたゲルに工程(d)において初めて疎水化剤を添加すると、阻害された拡散により、一方では該ゲル体の不均質な疎水化および他方では極めて長い疎水化時間をまねきうる。
【0006】
国際公開第2015/014813号(WO2015/014813 A1)には、a)酸触媒作用により活性化できる疎水化剤を含有するシリカゾルが、アルコール性溶剤混合物中で製造され;b)塩基添加により、該ゾルのゲル化の開始が引き起こされ、これはさらに、任意に熟成され;c)該ゲルが、酸添加により疎水化され、かつd)該溶剤混合物が亜臨界乾燥により除去され、その際に該エーロゲル材料が形成されることによる方法が開示されている。すでにゲル形成前の該疎水化剤の添加は、該ゲルの均質で迅速な疎水化ならびに疎水化剤の明らかにより少ない使用量をもたらす。この特許出願の実施例は、エーロゲルベースの材料、例えば粒状物、プレートまたはコンポジットのそのような多段階の製造の異なる変型を示している。例えばエーロゲル粒状物の製造の際に、撹拌槽型反応器中で形成されたゲルは、機械的に粉砕され、他の圧力反応器中で疎水化され、続いてコンベヤーベルト上、150℃で乾燥される。一方から他方の反応器への中間生成物の複数回の移送を伴うそのような多段階のプロセス設計は、極めて労力を要し、かつ完成したエーロゲルの製造コストを高める。
【0007】
国際公開第2016/124680号(WO 2016/124680 A1)には、ゾルの製造、該ゾルのゲルへの変換およびその後の該ゲルの疎水化を含む、国際公開第2015/014813号に類似のエーロゲル材料の製造方法が記載されており、ここでは、主な着眼点は、ゲル体の構造化およびそれによりもらされる、プラント工学およびプロセス管理における簡素化のための選択肢にある。疎水化されたゲルロッドは、第1反応器から取り出され、かつ炉中、150℃で乾燥され、その際に、該ゲルロッドは、該乾燥中に自ずから、より小さな破片へと砕け、かつエーロゲル粒状物が残留する。この方法の乾燥工程は、国際公開第2015/014813号にも記載されたように、別個の反応器中で行われ、これは再び、該中間生成物の移送ならびに別個の乾燥ユニットの構築を必要とする。
【0008】
従来技術から公知のエーロゲル材料の製造方法は、技術的に要求が多く、かつ経済的に費用がかかり、とりわけその原因は、そのような多段階のプロセスの異なる工程に時間がかかりすぎることおよび複数の反応器中で行われることによる。
【0009】
本発明の課題は、良好な製品品質をより短いプロセス期間およびより低いプロセス複雑性で保証する、シリカをベースとするエーロゲル材料を製造するための改良された方法を提供することである。殊に、本発明の課題は、該エーロゲル材料の製造中に、中間生成物の取扱いが最小限で必要であり、かつ可能ならば、一方の反応器から他方への移送を省くことができる方法を提供することである。
【0010】
これらの課題は、次の工程を含む、非晶質シリカをベースとするエーロゲル材料を製造する方法によって解決された:
a)シリカゾルと、アルコールと、酸触媒作用により活性化できる疎水化剤とを含有する混合物を調製する工程;
b1)工程a)において形成された混合物に塩基を添加し、かつ生じた混合物を混合する工程;
b2)工程b1)において得られた、シリカゾルを含有する混合物をゲル化してシリカゲルを生じさせ、かつ任意に該ゲルを熟成する工程;
c)工程b2)において形成され、かつ任意に熟成されたシリカゲルに疎水化触媒を添加するか、疎水化触媒をその場で形成するか、もしくは制御放出させ、かつ該シリカゲルの触媒疎水化を開始する工程;
d)工程c)において形成された混合物の揮発性成分を亜臨界乾燥により除去して該エーロゲル材料を形成する工程、ここで、少なくとも工程b2)~d)は、1つの同じ反応器中で実施される。
【0011】
本発明による方法を用いて、殊に、エーロゲル材料を粒状形で、例えば粉末または粒状物として生産することができる。粉末の場合に、その際に50μmまでの数平均粒度を有する粒子であると理解されるのに対し、粒状物は通常は50μm~10mmの数平均粒度を有する粒子からなる。本発明による方法は、50μm~10mmの数平均粒度を有するエーロゲル粒状物の製造に特に適している。該粉末または粒状物の数平均粒度は、ISO13320:2009に従ってレーザー回折粒度分析によって決定することができる。その際に、得られた測定された粒度分布から、平均値d50が決定され、この平均値は、全ての粒子の50%がその粒度を超えないことを表し、数平均粒度として定義される。
【0012】
本発明による方法の工程a)において製造される混合物は、本質的に、シリカゾル、1種以上の低級アルコールおよび酸触媒作用により活性化できる疎水化剤からなる。該アルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0013】
該シリカゾルは、工程a)において、オルガノシリケートSi(OR)の加水分解により、希釈せずに、またはアルコール中の溶液として製造することができる。該オルガノシリケートは、その際に、テトラエチルオルトシリケート(TEOS、R=C)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS、R=CH)、テトライソプロピルオルトシリケート(TPOS、R=i-Pr)およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。続いて、該シリカゾルの希釈は、上記の群からのアルコールと、酸触媒作用により活性化できる疎水化剤と、水とからなる有機溶剤混合物を用いて行うことができる。
【0014】
工程a)において製造される混合物が、アルコール、シリカゾルおよび酸触媒作用により活性化できる疎水化剤に加えて、少ない割合の水、不可避不純物およびシリカゾルの製造の際に慣用の、ある種の添加剤を含有していてよいことは自明のことである。そのうえ、この混合物は、少なくとも1種の重合性の官能性シランおよび任意に、製造されうるエーロゲル材料の内部にポリマー構造を形成することができる、1種以上のモノマーも含有していてよい。有利には、前記の重合性の官能性シランは、慣用のビニルトリアルコキシシラン、例えばビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランまたは3-トリアルコキシシリルプロピルメタクリレート、例えばトリメトキシシリルプロピルメタクリレートまたはトリエトキシシリルプロピルメタクリレートの場合のように、ラジカル重合性基を含有する。好ましいモノマーは、同様に、ラジカル重合性物質、例えばアクリレート、塩化ビニル、スチレンまたはジビニルベンゼンの群から選択されている。それに加えて、またはそれとは選択的に、該シリカゾル含有混合物中で機械的な補強作用がある添加物、例えば短い繊維、例えばガラス繊維または鉱物繊維を添加することができる。
【0015】
オルガノシリケートと水との反応は、その加水分解をもたらし、その際にケイ素に結合されたアルコキシ基(OR)が、部分的にまたは完全にシラノール基Si-OHにより置換され、これらが再び互いに反応することができ、かついわゆる重縮合反応により、シロキサン結合(Si-O-Si)を形成する。加水分解および縮合は、触媒、例えば酸および塩基により強い影響を受ける、互いにかみ合っている多数の化学平衡の動的な反応である。かなりの残留割合の加水分解されないアルコキシ基Si-ORを有し、非晶質SiOからなるナノスケールのコロイド粒子からなるオルガノシリケートのそのような水解物は、通常は、低い粘度を有し、かつ二酸化ケイ素ゾルまたはシリカゾルと呼ばれる。
【0016】
好ましくは、本発明による方法の工程a)におけるシリカゾルの製造の際に、該オルガノシリケートのアルコール性溶液に、触媒量の酸および化学量論量を下回る水が添加され、ここで、1:1~3.5:0.0001~0.01、より好ましくは1:1~2.5:0.0005~0.005のオルガノシリケート/水/酸のモル比が遵守される。酸として、例えば、硫酸、塩化水素または硝酸を使用することができる。
【0017】
疎水化剤は、酸化物表面に、疎水性や撥水性を付与する成分であると理解される。これは、疎水化剤が反応されることによって達成され、その際にアルキルアルコキシシランは、該酸化物表面へ共有結合される。シリカに典型的な疎水化剤は、例えば、オルガノシラン、オルガノシロキサンおよびオルガノシラザンである。国際公開第2015/014813号からは、そのような一部の疎水化剤が、酸触媒作用により活性化できる、すなわち、触媒量の特定の酸の存在下で、触媒なしの場合よりも低い温度でおよび/またはより迅速に、シリカ表面と反応できることは公知である。そのような酸触媒作用により活性化できる疎水化剤は、とりわけ、オルガノシロキサンおよびその他のアルキルアルコキシシランを包含する。特に適しているのは、酸触媒作用により活性化できる疎水化剤として、ヘキサメチルジシロキサンおよびトリアルキルアルコキシシラン、殊にトリメチルアルコキシシラン、例えばトリメチルエトキシシランおよびトリメチルメトキシシランである。極めて特に好ましくは、本発明の酸触媒作用により活性化できる疎水化剤は、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
工程a)において形成された、シリカゾルを含有する混合物に塩基を添加し、続いて混合する本発明による方法の工程b1)において、工程b2)における実際のゲル化および形成されたゲルの任意の熟成が行われうる直前に、ゲル化プロセスが開始される。すでに形成されたコロイド粒子の表面上に、該オルガノシリケートの加水分解により生じた前記のシラノール基Si-OHは、工程b2)において、ついで、塩基添加により、任意に付加的な加熱により、触媒され、縮合され、その際に3次元粒子ネットワークが生じ、これを二酸化ケイ素ゲルまたはシリカゲルと言う。典型的には、こうしてアルコール/疎水化剤媒体中で形成されるゲルは、“オルガノゲル”と呼ぶこともでき、さらに熟成工程にかけられ、その際に該粒子ネットワーク構造が、新しい化学結合を形成しながら、機械的に固定される。実地において、該ゾル系および添加される塩基量は、通常は、該ゲル化時間が5~15分であるように選択される。塩基添加および混合が、残りのプロセス工程b2)~d)が実施される反応器の外側で行われる場合には、該ゲル化が始まる前に、まさにこの反応器中への移動が行われなければならない。工程b2)における実際のゲル化および形成されたゲルの任意の熟成は、いずれにせよ挙げた反応器中で行われ、そこでプロセス工程b2)~d)全てが行われる。
【0019】
本発明による方法の工程b1)において、該混合物のわずかな粘度増加が起こりうるので、工程b1)において得られた混合物の動的粘度の、工程a)において形成された混合物の動的粘度に対する比は、10以下、好ましくは5以下、より好ましくは2以下である。
【0020】
工程b2)において行うゲル化は、該混合物の実質的な粘度増加をもたらすので、工程b2)において生じたゲルの動的粘度の、工程a)において形成された混合物の動的粘度に対する比は、10より大きく、好ましくは50より大きく、より好ましくは100より大きい。
【0021】
好ましくは、本発明による方法の工程b1)において、アンモニア、低級脂肪族アルキルアミン、アミノシラン、フッ化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物(殊に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)またはアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選択される塩基が使用される。低級脂肪族アミンは、500g/mol未満のモル質量を有する第一級、第二級または第三級のアルキルアミンであると理解される。アミノシランとして、例えば、アミノプロピルトリメトキシシランまたはアミノプロピルトリエトキシシランが特に適している。特に好ましくは、本発明による方法の工程b1)において使用される塩基は、アンモニア、フッ化アンモニウムまたはアミノシランからなる群から選択される。好ましくは、工程b1)において、溶剤中の該塩基の希薄溶液、例えばアルコール性アンモニア希薄溶液が添加される。
【0022】
工程b1)は、好ましくは、最大1時間以内、好ましくは30分以内、より好ましくは10分以内で、工程b2)の前に実施される。
【0023】
本発明の特別な実施態様において、工程b1)およびb2)は、1つの工程において、該塩基の添加およびその後の混合が、残りの全てのプロセス工程b2)~d)が行われる反応器中で行われるように実施される。
【0024】
工程b2)は、60~130℃、特に好ましくは80~120℃の温度下で実施することができる。この工程の通常の期間は、5~240分、好ましくは10~180分である。特に好ましくは、本発明による方法の工程b2)は、90~115℃の温度で20~75分以内に実施される。該混合物の沸点(エタノールが溶剤として使用される場合に約80℃)を上回る操作により、工程b2)およびc)を実施するために圧力反応器の使用は必然的になる。
【0025】
本発明による方法の工程c)において、疎水化触媒によって、工程b2)において製造されたシリカゾルの疎水化が開始される。該疎水化触媒は、その際に、該ゾルに添加することができるか、またはシリカゾル中に直接放出される。
【0026】
本発明による方法において、酸触媒作用により活性化できる疎水化剤が使用される。そのような疎水化剤は、古典的には、HまたはHイオンを生成するブレンステッド酸の存在下で活性化される。したがって、弱塩基性条件下で進行するゲル化プロセスおよび酸性条件下で進行する疎水化プロセスは、1つの同じオルガノゲル中で、時間的にきれいに互いに分かれて実施することができる。
【0027】
本発明の特に好ましい実施態様において、疎水化触媒は、塩化水素(ガス状または溶液として)、硝酸、硫酸、トリメチルクロロシランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、疎水化触媒として、塩化水素、硝酸、硫酸またはトリメチルクロロシランのアルコール性溶液が使用される。
【0028】
本発明のさらなる実施態様によれば、該疎水化触媒は、ラジカル分解プロセスにより、その場で該ゲル中に形成される。有利には、該疎水化触媒は、前もって添加された塩素含有有機化合物、例えば弱安定化された、または安定化されていないPVC、トリクロロメタン、クロロアセトンまたはテトラクロロエチレンのラジカル分解により形成される。したがって、有利にはHClである疎水化触媒は、所望の時点に放出することができ、その際にこれは、電磁放射線(UV、X線)によるか、または慣用のラジカル開始剤によるかのいずれかで行うことができる。高い光学的透明度および薄い厚さを有するゲルについては、光化学ラジカル分解プロセスが好ましい。
【0029】
本発明のさらなる実施態様によれば、該疎水化触媒は、スローリリース剤により該ゲル中に放出され、その際に該放出は任意に熱活性化により開始されるか、または促進される。好ましくは、疎水化触媒として、この場合に、塩化水素、硝酸または硫酸―もしくはそれらの前駆物質―が使用され、これらは、該ゾル中に含まれる“スローリリース”または“コントロールドリリース”添加剤、例えばマイクロカプセルまたはナノカプセルまたは粒子から放出される。理想的には、これらの剤の活性化は、外部で制御できるプロセスパラメーター、例えば圧力、温度または電磁放射線(光、ラジオ波、マイクロ波)を介して行われる。
【0030】
本発明による方法の工程b2)および/または工程c)は、好ましくは圧力容器中で1~20barの圧力で、より好ましくは1.1~10bar(絶対)の圧力下、最も好ましくは1.2~5bar(絶対)の圧力下で実施される。標準圧力で、使用される溶剤混合物の沸点は、通常は80~100℃である。該圧力容器における操作は、圧力釜の例に類似して、本発明による工程b2)を80~130℃の範囲内の明らかにより高い温度で実施できることを可能にし、このことは、その反応速度を高める。したがって、該疎水化時間を劇的に(例えば65℃で24時間から90℃で3時間のみへ)低下させることができ、このことは、該プロセスの明らかな効率増大の結果となる 。
【0031】
本発明の特に好ましい実施態様において、工程c)によるシリカの疎水化は、80~130℃の温度で1.2~4barの圧力下で20~180分以内に実施される。
【0032】
本発明による方法の工程d)において、疎水化されたシリカゲル中に存在している揮発性成分、例えばアルコールおよび残りの疎水化剤は、亜臨界乾燥により除去され、それにより、最終的なエーロゲル構造が残留する。その際に、この工程において、全ての揮発性成分の好ましくは95%超、より好ましくは98%超が除去される。該混合物の揮発性成分は、その際に、標準圧力下で300℃未満の沸点を有するあらゆる成分であると理解される。亜臨界乾燥は、該乾燥中に調節される温度および/または圧力が、使用される溶剤混合物(細孔液体)の臨界パラメーターよりも低く、かつ該乾燥の際のこの細孔液体が、それに応じて超臨界流体として存在しないことを意味する。
【0033】
本発明の好ましい実施態様によれば、工程d)は、少なくとも部分的に減圧下、特に好ましくは0.1~1barの絶対圧下で実施される。真空中での乾燥は、これが低い温度で、すなわち、低下した熱エネルギー必要量で進行できるという利点を有する。殊に該乾燥の終了時に、こうして同じ温度で、真空中での操作により、該エーロゲル材料中のより少ない残量の溶剤(残留湿分)が達成される。しかし、これに反してプロセス工学的な見地から、乾燥されうる材料との対流ガス交換による熱伝達は、圧力が増加するにつれて増加し、これは再び、該乾燥時間を低下させ、かつそのプロセス効率を高める。特に好ましくは、本発明による方法の工程d)は、100~200℃の温度および0.1~4barの圧力下で実施される。
【0034】
本発明のさらに好ましい実施態様において、工程d)の実施中に、キャリヤーガスが連続的に該反応器中へ導通され、かつ該反応器のガス状成分との混合後に、再び該反応器から排出される。こうして、該乾燥工程を明らかに短縮することができ、および/または少ない残留湿分を有するエーロゲル材料を製造することができる。キャリヤーガスとして、例えば窒素を使用することができる。特に好ましくは、使用されるキャリヤーガスは、50~200℃の温度に予熱される。有利には、予熱されたキャリヤーガスを、1~4barの圧力に調節された反応器中へ導通することができる。このために、該反応器中で導通されたガスと固/液反応混合物との間の熱伝達が促進される。特に有利であると判明しているのは、反応器体積を基準とした該反応器中への単位時間当たりのガス投入量が、150~1500h-1のガスの毎時空間速度(英語:Gas Hourly Space Velocity、GHSV)に相当する場合であり、ここでは以下のとおりである:
GHSV[h-1]=該反応器中への毎時ガス投入量[L]/反応器体積[L]
【0035】
本発明による方法の工程b2)~d)は、唯一の反応器中で実施される。好ましくは、これは、0.05~20barのプロセス圧力用に設計されている密閉できる圧力容器である。したがって、この反応器中で、該プロセス工程は、例えば0.05~1barの、減圧で、ならびに例えば1~20barの、高められた圧力でも、実施することができる。
【0036】
本発明による方法の工程d)において除去された、工程c)において得られた混合物の揮発性成分は、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%が回収され、かつ工程a)において再び使用される。それらの回収は、該反応器の下流に接続されたコンデンサー中で行うことができ、該コンデンサー中で、該反応器から排出されたガスは、好ましくは-50~50℃の温度に冷却された表面と接触状態になり、その際にこれらの条件下で再び液体の成分が凝縮され、かつ分離される。使用されるアルコール、例えばエタノール、ならびに該疎水化剤から主になる、工程d)において除去された揮発性成分の回収およびさらなる利用は、本方法を高いコスト効率で実施することを可能にする。本発明による方法の特に好ましい実施態様において、該ゲル中に存在する細孔液体の>97%が回収される。
【0037】
該反応器は、プロセス工学において公知のあらゆる形状を有していてよい。特に好ましいものとして、軸対称な反応器が判明している。特に好ましくは、1つ以上の管が反応器として使用される。本発明の特に好ましい実施態様において、該反応器は、互いに平行に配置された管の束として設計される。原則的に、該管断面の多様な形状を使用することができる。有利には、円形または四角形の、殊に正方形の内部断面を有する管である。さらに、取扱いのために、それぞれある一定の数の管が管束にまとめられている場合が有利である。有利な実施態様の場合に、全ての管は、同じ断面を有し、該断面は好ましくは円または六角形である。そのために、前記の個々の管の間であまり死容積を有していないコンパクトな管束を構成することができる。特に好ましくは、5~50mm、好ましくは10~35mm、より好ましくは20~26mmの最大直径を有する管が使用される。本発明の特に好ましい実施態様において、工程b2)~d)が実施される反応器は、5~50mmの直径を有する管または互いに平行に配置された複数のそのような管の束である。
【0038】
工程b)~d)において使用される反応器の空間的な配向は、事情によっては、本発明による方法による操作の最適化に重要な役割を果たすことができる。
【0039】
乾燥工程d)における最適な結果が、水平に配向された、または少し傾斜した反応器管中で達成されることが見出された。該反応器配向(傾斜)は、工程b2)とd)とを実施する間で、例えば垂直から水平に変えることができる。しかし、本発明による方法の工程b2)~d)の実施に使用される反応器が、該方法の実施中に、その法線に対して傾斜しており、したがって水平にも垂直にも配向されていない場合が特に有利であると判明している。その際に、10~45度の水平角が有利であると判明しており、好ましくは、15~30度、特に好ましくは17~25度の角度になる。本発明の特に好ましい実施態様において、工程b2)~c)において使用される軸対称な反応器の長手方向における対称軸は、これらの工程の実施中に、10~45度、好ましくは15~30度、より好ましくは17~25度の水平角を形成する。
【0040】
前記の方法により、0.3g/cm未満、好ましくは0.2g/cm未満、より好ましくは0.15g/cm未満の密度および標準圧力および20℃で12~30mW/(m・K)の熱伝導率を有するエーロゲル材料を製造することができる。
【0041】
それらは、殊に、50μm~10mmの数平均粒度を有する粒状物であってよい。
【0042】
粉末または粒状物としての該エーロゲルばら材料の熱伝導率は、EN 12667:2001に従って、20℃の平均測定温度、大気雰囲気下での250Paの接触圧でおよび標準圧力で測定される。
【0043】
本発明のさらなる対象は、本発明による方法により製造されるエーロゲル材料から、熱的および/または音響学的なインスレーションパネルが形成されることによる方法である。そのようなインスレーションパネルは、熱および/または音の透過を低下させることができ、ひいては熱的および/または音響学的な遮断特性を有する。
【0044】
本発明による方法により製造されるエーロゲル材料またはそれらから形成されるインスレーションパネル(遮断材パネル)は、断熱に使用することができる。殊に、本発明によれば製造されるエーロゲル材料は、熱的なインスレーションのためのプラスター、モルタルおよびコンクリート配合物において使用することができる。そのうえ、本発明により製造されるエーロゲル材料は、バルク遮断用途における、例えば断熱容器における、熱的なインスレーションのためのばら材料として使用することができる。同様に、本発明により製造されるエーロゲル材料は、熱的および/または音響学的にインスレーションするコーティングにおいて、例えば工業的な用途における省エネルギー断熱コーティングとして使用することができる。そのうえ、本発明により製造されるエーロゲル材料は、軽量建築構造物用途のための熱的にインスレーションするテキスタイルメンブレンおよびフィルムメンブレンを製造するために使用することができる。
【実施例
【0045】
例1
適合した孔の設けられた実験室用反応器ブロック中でのエーロゲルの本発明による製造
75%の加水分解度および20質量%のSiO当量含有率を有するテトラエチルオルトシリケート(TEOS)ベースのゾル濃縮物を、J. Non-Cryst. Solids, 1995, 186, 1-8に従ってTEOSから製造した。エタノールおよび疎水化剤としてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)で該ゾル濃縮物を約6質量%のSiO当量含有率に希釈し、その際に該ゾル中のHMDSOの体積割合は約30体積%であった。このゾル1370mLを35℃に予熱し、2モル濃度のエタノール性アンモニア溶液の添加により活性化し、直ちに、適合した孔の設けられた実験室用反応器ブロック(直径:20mm、長さ250mm)中へ充填した。該反応器は、前もって70℃のプレート温度に予熱されていた。そのゲル化が約2~3分後に行われ、その後で、該反応器を耐圧力性に密閉し、かつプレート温度110℃に加熱した。その際に該反応器中の超過圧は、約2.5~3bar上昇した。2.5時間の熟成後に、その加熱のスイッチを切り、超過圧が<0.5barになるまで該反応器を45分冷却した。残りの超過圧を慎重に放出し、かつ該反応器の上蓋を除去した。その底板を緩め、かつシネレシス液体(細孔液体)約250mLを放出および回収したが、これは熟成されたゲルの約18%の収縮に相当していた。ついで、該底板を改めて固くねじ止めし、かつエタノール性HSO希薄溶液(疎水化触媒)350mLを添加し、その際にそれらのゲルロッドは、該反応器ブロック中で完全に該疎水化触媒液体で覆われていた。ついで、該上蓋を改めて耐薬品性にねじ止めし、かつホットプレートを用いて該反応器を110℃の設定温度に加熱した。ついで該ゲルロッドを2.5時間疎水化し、その際に約1.7barの超過圧が測定された。その後、改めてその加熱のスイッチを切った。その際に約30分の冷却時間後に、残留超過圧が0.5bar未満に低下し、該反応器蓋を改めて慎重に開け、かつ除去した。該底板を緩めることにより、過剰な疎水化触媒溶液を放出させた。
【0046】
上記のゲル化、熟成および疎水化プロセスの際に、該反応器は直立していた(孔もしくは形成されたゲルロッドの配向)。該乾燥プロセスのために、ついで該反応器蓋を改めて耐薬品性にねじ止めし、かつ該反応器を傾け、このことは、該ゲルロッドの水平配向の結果となる。該底板のための止めねじは、該乾燥プロセスのために緩めていたので、反応器ブロックと底板との間に約1~2mmの隙間が生じ、その隙間を介して、その乾燥ガスが逃出することができた。ついで頂部に20L/minの流量を有する熱い窒素(T=200℃)を導通し、かつ該反応器を180℃(ホットプレートの設定温度)に加熱した。該反応器中の乾燥は、約1時間後に完了しており、その後、窒素供給および反応器加熱のスイッチを切った。該反応器を45分冷却し、かつ青味-白味がかった粒状の疎水性エーロゲル約1250mLがばら材料として得られた。該生成物の分析は、該ばら材料について0.11~0.13g/cmのかさ密度および17.8mW/m・Kの熱伝導率となった。該粒度分布は、該粒子の90%超が1.0mm~7.0mmの粒度を有することを示した。該乾燥に最適化されていない反応器設計に基づき、頂部および底部で該材料の品質のわずかな相違(密度差約10%)が確かめられた。その全プロセス時間は7.5時間であった。
【0047】
比較例1
乾燥キャビネット中での乾燥を伴うプラスチック小管束型反応器中でのゲルの製造
例1に類似したシリカゾル濃縮物を、エタノールおよびHMDSOで5.7質量%のSiO当量含有率のSiOに希釈した。該ゾル混合物中のHMDSO割合は33体積%であった。このゾル410mLを、室温で2M NH水溶液10mLと混合し、かつ短時間撹拌した後にビーカー中へ移し、該ビーカーは、ポリプロピレン製の約8mmの内径を有する、長さがカットされたプラスチックストロー小管の束で完全に満たされていた。後者の小管は、調製されうる(エーロ)ゲルロッドの型として利用された。
【0048】
該ビーカーに時計皿で蓋をし、パラフィルムでシールし、かつ65℃で加熱キャビネット中へ入れた。約10~12分後にそのゲル化を行った。該ゲルロッドを、65℃で14時間熟成させた。その後、シネレシス液体約80mLをデカンテーションし、かつ成形に利用したストローを除去し、その際に、直立しているゲルロッドが残留した。ついで、HMDSO 250mL、エタノール10mLならびに37質量%塩酸溶液7.5mLからなる疎水化触媒溶液を添加し、その際に該ゲルロッドは、大規模に(約1.5cm)、液体で覆われていた。時計皿で覆われ、かつパラフィルムでシールしたビーカーを、疎水化反応のために改めて加熱キャビネット中、65℃で24hインキュベートした。その後、過剰な疎水化触媒溶液をデカンテーションし、かつ該ゲルロッドを続いて乾燥キャビネット中、窒素雰囲気下に150℃で3時間乾燥させた。
【0049】
生成物として、典型的には4mm~15mmの長さおよび約6~6.5mmの直径を有し、疎水性エーロゲルからなる、より大きなロッド破片が得られた。こうして得られた材料のかさ密度は0.113g/cmであった。未変化の試料の熱伝導率は、22~23mW/m・Kであった。より高い値は、大きな破片およびそれから生じた大きな空気孔の割合に起因されうるものであった。その全プロセス時間は42時間であった。
【0050】
比較例1は、例1に比べて、その乾燥ユニットへの疎水化されたゲルの付加的に必要とされる移動およびそれと結び付いた工業用装置における付加的な投資コストの欠点を有する。
【0051】
例2
単管型反応器中でのエーロゲルの本発明による製造
実験用反応器として、頂部および底部にフランジと耐薬品性に連結する弁とを備え、特殊鋼1.4571製の電気加熱可能な管(内径20mm、長さ150mm)を選択した。付加的に、頂部および底部ユニットにそれぞれリザーバー容器がフランジで取り付けられていた。ガス排除ラインを介して、同様に圧力平衡化を達成することができた。該反応器は、全実験中に、水平に対して22°の傾斜位置にあった。
【0052】
最初に、20.0質量%のSiO当量含有率を有するP750ゾル濃縮物を、Dynasilan 40(製造者:Evonik Ressource Efficiency GmbH)から製造し、エタノールおよびHMDSO(該ゾル中の体積割合30%)で5.8質量%に希釈した。ついで、室温で撹拌しながら、アンモニア希薄溶液を添加し、活性化されたゾル混合物470mLを、65℃に予熱した単管型反応器中へ充填し、かつ後者を耐圧力性に密閉した。該反応器の充填15分後に、その設定温度を100℃に高め、その際にその超過圧は約2.0barに上昇した。1時間の熟成後に、その加熱のスイッチを切った。ついで、シネレシス液体90mLを、同様に該排除ラインに接続されたリザーバー容器中へ放出し、かつ該系から除去した。その後、その頂部リザーバーをエタノール性硝酸希薄溶液200mLで充填し、かつこの溶液を、ゆっくりと該頂部リザーバーを介して添加した。該管型反応器を、改めて耐圧力性に密閉し、かつ100℃の設定温度に加熱した。ついで該管中にあるゲルロッドを90分疎水化し、その際に約1.5barの超過圧であった。加熱のスイッチを入れた際に、ついで上記の手順に相応して、残りの疎水化触媒液体を除去し、かつ該反応器中の圧力をゆっくりと大気へと換気した。ついで、反応器底部で、質量流量コントローラーで調節された9L/minの流量を有する熱い窒素(T=200℃)を導通し、かつそのオフガスを、頂部およびコンデンサーを介して運び出した。該単管型反応器を、その後で10分以内に165℃に加熱した。該反応器中の乾燥は、約45分後に完了していた。収量として、粒状の疎水性エーロゲルばら材料500mLが得られ、これは収率>95%に相当する。該生成物の分析は、該ばら材料について0.124g/cmのかさ密度および17.6mW/m・Kの熱伝導率となった。その粒度分布は、0.3mm~5mmの範囲内の直径を有する対称分布を示した。その全プロセス時間は5時間続いた。
【0053】
例3
単管型反応器中でのエーロゲルの本発明による製造:該プロセス中の該単管型反応器の傾斜変更
例2に類似した実験を実施し、その際に同じ出発ゾルおよび同一のプロセスパラメーターを使用した。該反応器に充填する際に、この反応器は垂直な位置にあった。熟成が完了し、かつ該シネレシス液体を放出した後に、該疎水化触媒溶液を、依然として垂直配向で、例2に記載された方法で、頂部を介して添加した。反応器を開けた際に、該疎水化触媒を垂直な位置へ傾けることにより、頂部を介して回収した。
【0054】
乾燥のために、該反応器を水平へと回転させた。
【0055】
この例は、全てのプロセス工程(ゲル化、熟成、疎水化および乾燥)が、好ましくは水平に対して少しの傾斜で実施されるべきであることを示している。
【0056】
例4
管束型反応器中でのエーロゲルの本発明による製造
使用されるパイロットプラントは、ゾル製造のための撹拌槽型反応器および頂部および蓋ユニットを有する管束型反応器ならびに対応する補助ユニット(加熱、熱交換器、コンデンサー)および使用される試薬のためのタンク/リザーバーからなっていた。該管束型反応器は、それぞれ18mmの内径を有する平行な管の熱交換器および熱キャリヤー流体によりフラッシングできるジャケットからなっていた。該反応器は、19°の水平に対して固定された角度で固く床にねじ止めされていた。
【0057】
最初に、該撹拌槽型反応器中でエタノールおよびHMDSOでの該ゾル濃縮物の希釈により例2によるゾル76Lを調製し、かつ45℃に予熱した。その後、エタノール性アンモニア希薄溶液を添加し、こうして活性化されたゾルを、圧力平衡化を伴う移動ラインを経て、60℃に予熱した管束型反応器中へ移送した。選択的な実施変型において、エタノールおよびHMDSOで希釈されたゾル混合物ならびにアンモニア希薄溶液を、2つの別個のパイプラインによって、所望の比で該反応器に供給し、かつその中で、反応器入口にある混合装置、例えばオリフィスの組またはスタティックミキサーによって、その充填過程中に均質に混合した。その後、該反応器の頂部弁および底部弁を閉じ、それにより、形成されるゲルロッドを有する熱交換器管が、耐圧力性に密閉する系を形成した。
【0058】
その後で、該反応器の温度を、112℃に該熱交換器液体の加熱により高くした。該圧力は、その際に急速に2.5barの値に上昇した。60分の熟成時間後に、底部弁および頂部弁を注意深く開き、ついでそのシネレシス液体を該リザーバー中に捕集した。ついで、エタノール中の硝酸希薄溶液18.5Lを、該撹拌槽型反応器中で60℃に予熱し、その後、まさに挙げたリザーバー中へ圧送した。該管束熱交換器の加熱を、95℃に調節した。ついで、該疎水化触媒を、ゆっくりと、かつ少しずつ、該管束型反応器中へ圧送し、かつ該加熱のための設定温度を112℃に上げた。70分の疎水化時間後に、過剰な疎水化触媒液体を該系から除去した。反応器および周辺循環路からなる該系を、ゆっくりと窒素雰囲気へと換気し、その際に終了時に1.36m/minの窒素流に調節した。そのオフガスの揮発性成分を、コンデンサーを介して回収した。窒素でフラッシングしながら同時に、その加熱の目標値も160℃に調節した。50分後に、該乾燥は完了していた。
【0059】
終了時に、該反応器底部をゆっくりと開き、かつそのエーロゲル粒状物を、窒素パルスにより流出させた。0.5~6mmの粒度を有する極度に均質な品質のエーロゲル粒状物6.1kgが残留した。該材料の分析は、0.112g/cmのかさ密度および該ばら材料の17.8mW/(m・K)の熱伝導率となった。その全プロセス時間は約4時間であった。
【0060】
比較例2
ハニカム型反応器中でのエーロゲルの製造および続いて乾燥キャビネット中での乾燥
約45Lの収容量、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)内部コーティングおよびハーメチックシール可能な蓋を有する特殊鋼ドラム中へ、六角形のポリプロピレンプラスチックハニカム(Tubus Waben、セルサイズ8mm、長さ450mm)の該ドラム体に適合された部分を、垂直配向で、その全釜体積が、蓋に対して約4cmのエアギャップを除き、該ハニカムブロックで満たされているようにはめ込んだ。該ドラムの上蓋および底部には、各1個のボール弁が設けられており、該ドラムは、アルミニウムフレームに、水平軸を介して自由に回転可能に取り付けられていた。ついで、Dynasylan(登録商標)-40(製造者:Evonik Ressource Efficiency GmbH)から製造されたゾル濃縮物を、例2に類似して、6.0質量%のシリケート含有率に希釈し、その際に該ゾル中のHMDSOの体積割合は29.2体積%であり、かつエタノール性アンモニア希薄溶液の添加により活性化させ、かつ撹拌することにより均質化した。このゾル41.1Lを室温で、ハニカムが装填されたドラム体中へ充填した。該ドラムを、しっかりと密閉し、かつ十分な収容体積を有する65℃に予熱した乾燥キャビネット中へ移動した。該ゲル化は、活性化されたゾルの残量により室温で測定して、約10分後に始まった。65℃で72時間の熟成時間後に、該ドラムを該加熱キャビネットから除去し、慎重に開け、かつ該蓋を除去した。該底部弁を介して、ついでシネレシス液体11.8Lを慎重に放出し、かつ該弁を終了時に再び閉じた。その後、硝酸疎水化触媒希薄溶液(溶剤組成 体積比2:1のエタノール:HMDSO)14Lを、上から該ハニカム体中へ充填したので、これらは、該液体約5mmによって覆われていた。該ドラム型反応器を密閉し、改めて該加熱キャビネット中へ移動し、かつその設定温度を80℃に高めた。該ゲルロッドを、こうして24時間疎水化した。その後、該ドラム型反応器を、該加熱キャビネットから除去し、かつ慎重に開いた(わずかな超過圧)。過剰な疎水化触媒液体を、該底部弁を介して放出した。ついで、該ハニカムブロックを、その目的のために設けられた補助構造物を介して、該ドラムから除去し、かつ疎水化されたゲルロッドを叩いて出した。
【0061】
そのゲル片を、続いて乾燥キャビネット中、窒素雰囲気下に150℃で、循環空気(空気入れ替わり約10回/時)下で、3時間乾燥させた。その際に、大部分が比較的大きな円柱状のロッド破片からなるエーロゲル材料2.3kgが得られた。該破片の組成は、例1からのものに極めて類似していた。こうして得られた材料のかさ密度は0.115g/cmであった。該エーロゲル材料のサンプルを機械的に粉砕したので、該粒子の0.2mm~6mmの幅広い粒度分布が生じ、かつ該ばら材料の熱伝導率は、2枚構成の装置を用いて、16.7mW/(m・K)と測定された。
【0062】
比較例2は、例4に比べて、疎水化されたゲルの付加的に調達すべき乾燥ユニットへの、例えばエアロックシステムを介しての、付加的に必要とされる移動およびそれと結び付いた付加的な投資コストの欠点を有する。