(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】自律式作業機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20221129BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20221129BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221129BHJP
【FI】
A01D34/64 M
A01B69/00 303Z
G05D1/02 N
(21)【出願番号】P 2020554669
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2018040526
(87)【国際公開番号】W WO2020090038
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山村 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 寛人
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 貴正
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-202165(JP,A)
【文献】国際公開第2017/158797(WO,A1)
【文献】特開2017-158532(JP,A)
【文献】特開2018-108040(JP,A)
【文献】実開平02-113906(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/64
A01B 69/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業地を移動しながら該作業地に対する作業を自動的に行う自律式作業機であって、
前記作業地を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段による前記作業地の撮影画像に基づいて前記作業地に発生している不具合の内容
と発生位置とを特定し、特定した不具合の内容
と発生位置とに基づいて前記自律式作業機を制御する制御手段と、
前記発生位置と前記不具合の内容とを示す情報を送信する送信手段と、を備える、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の自律式作業機であって、
前記送信手段は、前記不具合の内容が前記自律式作業機によって回復不能である場合、又は、前記不具合の内容が予め定めた内容である場合に、前記情報を送信する、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載の自律式作業機であって、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が予め定めた内容である場合、前記発生位置の手前で旋回するように前記自律式作業機の移動を制御する、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項4】
請求項
1又は請求項2に記載の自律式作業機であって、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が予め定めた内容である場合、前記発生位置を迂回するように前記自律式作業機の移動を制御する、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項5】
請求項
1又は請求項2に記載の自律式作業機であって、
前記制御手段は、特定した不具合の内容に基づいて前記発生位置における前記自律式作業機の作業時間を制御する、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項6】
請求項
5に記載の自律式作業機であって、
前記作業地に対する作業とは、芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が第一の内容である場合に、前記発生位置における前記自律式作業機の作業時間を増加し、
前記第一の内容は、刈芝の塊の存在又は雑草の存在の少なくともいずれか一つを含む、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項7】
請求項
5に記載の自律式作業機であって、
前記作業地に対する作業とは、芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が第二の内容である場合に、前記発生位置における前記自律式作業機の作業時間を減少し、
前記第二の内容は、病気の芝の存在又は芝剥がれの存在の少なくともいずれか一つを含む、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項8】
請求項1に記載の自律式作業機であって、
前記作業地に対する作業とは、芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が第一の内容である場合に、
前記発生位置へ前記自律式作業機を移動して前記芝刈り作業を行い、
前記第一の内容は、刈芝の塊の存在又は雑草の存在の少なくともいずれか一つを含む、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項9】
請求項1に記載の自律式作業機であって、
前記作業地に対する作業とは、回転カッタによる芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が芝の葉先の白化である場合に、前記回転カッタを逆回転した芝刈り作業を行う、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項10】
請求項1に記載の自律式作業機であって、
前記作業地に対する作業とは、回転カッタによる芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が芝の葉先の白化である場合に、前記回転カッタの回転速度を上昇した芝刈り作業を行う、
ことを特徴とする自律式作業機。
【請求項11】
請求項1に記載の自律式作業機であって、
前記作業地に対する作業とは、回転カッタによる芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が芝の葉先の白化である場合に、前記回転カッタを逆回転した芝刈り作業を行い、
前記制御手段は、前記回転カッタを逆回転した芝刈り作業を行った後、芝の葉先の白化の不具合を特定した場合には、前記回転カッタの回転速度を上昇した芝刈り作業を行う、
ことを特徴とする自律式作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律式作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
芝刈り作業等の作業地に対する作業を自動的に行う自律式作業機が提案されている。例えば、特許文献1には、草刈り作業を自動的に行う作業機が開示されている。特許文献1の作業機は、センサにより異物との接触を検知し、接触した場合に回避動作や復帰動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業機のように異物との接触を検知する方式では、作業地に動物が掘った穴等、接触を伴わないが作業機の動作に影響する障害に対応が困難である。また、接触しなければ異物を検知できないため、その対応が遅れる場合もある。
【0005】
本発明の目的は、作業地に生じている様々な事象に対応可能な自律式作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
作業地を移動しながら該作業地に対する作業を自動的に行う自律式作業機であって、
前記作業地を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段による前記作業地の撮影画像に基づいて前記作業地に発生している不具合の内容と発生位置とを特定し、特定した不具合の内容と発生位置とに基づいて前記自律式作業機を制御する制御手段と、
前記発生位置と前記不具合の内容とを示す情報を送信する送信手段と、を備える、
ことを特徴とする自律式作業機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業地に生じている様々な事象に対応可能な自律式作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自律式作業機の側面図。
【
図2】
図1の自律式作業機の制御部を示すブロック図。
【
図4】
図1の自律式作業機の作業情報の例を示す模式図。
【
図5】
図2の制御部が実行する処理例を示すフローチャート。
【
図10】
図1の自律式作業機の制御例を示す説明図。
【
図11】
図1の自律式作業機の制御例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<自律式作業機の概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る自律式作業機1の側面図である。本実施形態の作業機1は、作業地(芝地)を移動しながら芝刈り作業を行う芝刈り機である。しかし、本発明は、除雪機、耕運機、道路舗装機等、他の種類の作業機にも適用可能である。
【0010】
作業機1は、左右の前輪3と、左右の後輪4とが車体2に支持された四輪車である。左右の後輪4は駆動輪であり、作業機1を作業地上で移動させる。各後輪4には、モータ4aを駆動源とした駆動機構が設けられ、左右の後輪4は独立して回転制御が行われる。左右の後輪4を独立して回転制御することにより、作業機1の進行方向を制御することができる。左右の前輪3は自由回転自在に設けられている。
【0011】
作業機1は作業部5を備える。作業部5は作業地の芝刈り作業を行う機構である。作業部5は、回転カッタ5aと、モータ5cを駆動源として回転カッタ5aを略鉛直方向の軸5b回りに回転させる駆動機構とを含む。回転カッタ5aは、作業機1の前後方向で中央部(前輪3と後輪4との間)において車体2の下方に配置されている。本実施形態の回転カッタ5aは、回転方向が正回転、逆回転いずれの場合も芝を切断できるようにブレード(刃)が設けられている。作業部5は回転カッタ5aの上下方向の位置を変化させる昇降機構を備えていてもよい。以上の構成により、前輪3及び後輪4で作業機1を移動させつつ、作業部5により芝刈り作業を行うことができる。
【0012】
車体2の前部には撮影装置9が設けられている。撮影装置9は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像センサ、レンズ等の光学系を含むカメラである。本実施形態の場合、撮像装置9の撮影範囲9aは作業機1の前方である。しかし、撮影範囲9aはこれに限られず、撮影装置9として360度カメラを採用してもよい。
【0013】
車体2の頂部には、ユーザの操作入力を受け付ける操作パネル8が設けられている。操作パネル8には表示部を設けてもよく、操作パネル8としてタッチパネル式ディスプレイを採用してもよい。ユーザは操作パネル8から作業機1の各種の情報の入力を行うことが可能である。
【0014】
作業機1は、その電源としてバッテリ6を備える。バッテリ6はモータ4a及び5c、撮影装置9等、作業機1が備える電気負荷に電力を供給する。バッテリ6は充電ステーション100においてその充電が可能であり、車体2には充電ステーション100と作業機1とを電気的に接続するためのコネクタ7が設けられている。
【0015】
作業機1は、その動作を制御する制御部10を備える。
図2は制御部10及び周辺の構成を示したブロック図である。
【0016】
制御部10は、処理部11と、RAM、ROM等の記憶部12と、外部デバイスと処理部11との信号の送受信を中継するインタフェース部(I/F部)13と、を含む。処理部11は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行し、センサ21の検知結果や、操作パネル8に対する入力等に基づいて、アクチュエータ20や撮影装置9を制御する。アクチュエータには、モータ4a及び5cが含まれ、処理部11は駆動回路16を介してこれらのモータの駆動制御を行う。
【0017】
センサ21には位置センサ21aが含まれる。位置センサ21aは作業機1の現在の位置を特定するためのセンサであり、例えば、左右の後輪4の回転量を検知するセンサ、GPSセンサのいずれか、或いは、双方を挙げることができる。左右の後輪4の回転量を検知するセンサは、例えばロータリエンコーダであり、後輪4の駆動軸の回転量を直接検知するものでもよいし、モータ4aの出力軸の回転量を検知するものであってもよい。
【0018】
また、作業機1の現在の位置は、この他に、作業地内に配置したマーカを撮像装置9で撮影し、その撮影画像から特定してもよいし、或いは、作業地内に配置したビーコンから無線通信により取得した情報から特定してもよい。
【0019】
制御部10は、また、撮影装置9が撮影した画像の内容を認識する画像認識部14を含む。画像認識部14は、例えば画像処理プロセッサであり、撮影画像を解析して撮影画像中に含まれる物体の種類を特定する。画像認識部14は、画像認識に特化して機械学習された人工知能として機能するものであってもよい。処理部11は、画像認識部14の認識結果に基づいて作業機1の動作を制御する。
【0020】
なお、処理部11が画像認識部14として機能する構成も採用可能であるが、本実施形態のように処理部11とは別に画像認識部14を備えることにより、処理部11の処理負担を軽減することができる。
【0021】
制御部10は、また、バッテリ6を充電する充電回路15を含む。充電回路15はコネクタ7を介して充電ステーション100から供給される電力により、バッテリ6を充電可能である。
【0022】
制御部10は、また、通信部17を含む。通信部17は、通信ネットワーク200を介して、管理サーバ201と無線通信が可能である。管理サーバ201は作業機1の状態を管理するサーバであり、例えば、複数の作業機1の情報を管理可能である。管理サーバ201は、通信ネットワーク200を介してスマートフォン等の携帯端末202と無線通信が可能である。携帯端末202は、例えば、作業機1の管理者の端末であり、作業機1の情報を管理サーバ201から受信することができる。これにより、管理者は、作業機1から離れた場所でも作業機1を監視することができる。
【0023】
<作業機の使用例>
図3は作業機1の使用例を示す模式図である。同図において作業機1は、家屋に隣接した作業地(芝地)WAの芝刈り作業を行う。本実施形態の作業機1は、刈り取った芝を回収する機能を有しておらず、刈り取った芝は作業地WA上に放置されて肥料とされる。なお、作業機1は刈り取った芝を回収する機能を有していてもよく、例えば、回収袋に刈り取った芝を送り出す機構を有していてもよい。
【0024】
作業地WAには家屋から電力が供給される充電ステーション100が設置されている。作業機1は充電ステーション100から発進して作業地WAの芝刈り作業を行い、また、充電ステーション100に戻る。作業地WAには、その区画を示す複数のマーカ101が設けられている。マーカ101は例えば柱状の部材である。作業地WAの区画は、作業地WAを囲むように敷設され、磁界は発するエリアワイヤで行ってもよい。
【0025】
作業地WAには様々な不具合が発生し得る。不具合とは、例えば、作業地WAから除去すべき物体、作業地WAにおいて修復すべき事象、作業機1の動作に支障を与える物体であり、通常時或いは正常時には存在しないものである。
【0026】
図3には一例として、刈り芝の塊102、雑草103、芝剥がれ104、うさぎやもぐら等の動物が掘った穴105、轍106が図示されている。刈り芝の塊102は、例えば、雨で濡れた刈り芝が玉になることで発生し得る。こうした刈り芝の塊102は見た目が悪いため、散乱させることが望ましい。芝剥がれ104は、芝が剥がれて地面が大きく露出した部分である。これも見た目が悪いため、芝の生育を促進することが望ましい。穴105や轍106は、作業機1の移動の支障になる場合がある。本実施形態では、撮影装置9が撮影した画像からこうした不具合の存在と内容を認識して作業機1の制御に反映することが可能である。
【0027】
<制御例>
制御部10による作業機1の制御例について説明する。制御部10が実行する制御内容としては、任意に作業地WAの芝刈り作業を行う自由制御や、予め定めた作業スケジュールに従って作業地WAの芝刈り作業を行うスケジュール制御を挙げることができる。自由制御は、作業機1を直進させつつ芝刈り作業を行い、作業地WAの境界において進行方向を順次切り替えていく制御である。進行方向はランダムに決定してもよいし、一定の規則に従って決定してもよい。
【0028】
スケジュール制御は、作業機1を基本的に予め定めた経路に従って移動させつつ芝刈り作業を行う制御である。この制御の場合、記憶部12に作業地WAの座標情報や作業計画情報が予め格納される。制御部10は位置センサ21aの検知結果に基づき作業機1の現在位置を確認しつつ、予め定めた経路を移動させて芝刈り作業を行う。作業計画情報は、当該経路の情報の他、作業時間の情報等を含む。作業時間は、例えば、単位面積当たりの芝刈り作業の時間であり、作業機1の移動速度によって定義することが可能である。
【0029】
図4は作業地WAの座標情報を模式的に示している。同図の例では、互いに直交する水平方向であるX方向及びY方向により作業地WAの二次元座標が定義され、その原点(0、0)は充電ステーション100の位置に設定されている。経路RTは、作業機1を移動させるべき移動経路を示しており、制御部10は作業機1に経路RTを移動させつつ芝刈り作業を行わせる。経路RTは基本的に作業機1を直進させ、境界において進路を変更するものである。作業地WAの座標情報や作業機1の現在位置情報は、管理サーバ201においても共有するようにしてもよく、これにより管理サーバ
201において作業機1の現在位置の特定が可能となり、こうした情報を携帯端末
202に対して作業状況の情報として提供することができる。
【0030】
次に、撮影装置9の撮影画像を利用した作業機1の制御について説明する。
図5は制御部10の処理部11が実行する制御例を示すフローチャートである。撮影装置9は、例えば、所定の周期で画像を撮影し、画像認識部14が当該周期で撮影画像中の物体を認識する。
【0031】
S1では画像認識部14から撮影画像の認識結果を取得する。S2ではS1で取得した認識結果がマーカ101であるか否かを判定する。マーカ101である場合はS3へ進み、折り返し制御を実行する。折り返し制御とは、作業地WAの境界で作業機1の進路を変更して作業地WAから外に作業機1が出てしまわないようにする制御である。具体例は後述する。進路の変更は、自由制御の場合、任意に設定してもよいし、予め定めた角度分だけ変更するものであってもよい。スケジュール制御の場合、経路RTに従って変更する。
【0032】
S4ではS1で取得した認識結果が、作業地WA上の不具合か否かを判定する。不具合である場合はS5へ進み、不具合の内容に応じた制御を実行する。具体例は後述する。
【0033】
<画像認識結果に基づく制御例>
画像認識部14の認識結果に基づく制御例について説明する。
【0034】
<マーカの検知>
図6はマーカ101の存在が認識された場合の制御例を示している。状態ST1では、撮影範囲9a内にマーカ101が存在し、撮影画像IM中にマーカ101の画像が含まれている例を示している。画像認識部14は撮影画像IM中からマーカ101の存在を認識する。
【0035】
処理部11は、画像認識部14がマーカ101の存在を認識したことを受けて、作業地WAの境界付近において作業機1の進路を変更する。状態ST2は作業機1がその進路を変更した例を示している。作業地WAの境界の位置は、例えば、画像認識部14がマーカ101の画像から演算してもよい。この演算を採用する場合、撮影装置9を車幅方向に離間して2つ設け、2つの撮影画像の視差を利用して作業機1に対するマーカ101の位置をより正確に推定することも可能である。また、作業地WAの境界の位置は、位置センサ21aの検知結果による現在位置の認識結果と作業地WAの座標情報におけるマーカ101の座標とから処理部11が推定することもできる。
【0036】
<不具合の検知>
図7は不具合の存在が認識された場合の制御例を示している。状態ST3は、撮影範囲9a内に刈り芝の塊102が存在し、撮影画像IM中に刈り芝の塊102の画像が含まれている状態を示している。画像認識部14は撮影画像IMから刈り芝の塊102の存在を認識する。
【0037】
処理部11は、画像認識部14が刈り芝の塊102の存在を認識したことを受けて、不具合が発生していること、及び、その不具合の内容が刈り芝の塊102であると特定し、対応する制御を実行する。本実施形態の場合、刈り芝の塊102に対応する制御として、塊を解消して平坦化する。このため、処理部11は刈り芝の塊102の位置を特定し、状態ST4に示すように刈り芝の塊102を通過するように作業機1の進路を変更する。更に、作業時間を増加させる。作業時間の増加は、例えば、作業機1の移動速度の減速や、刈り芝の塊102の位置の通過回数の増加により行うことができる。上記のスケジュール制御においては、作業計画を修正することになる。このような制御によって、刈り芝の塊102を解消することができ、作業地WAの外観を向上することができる。
【0038】
なお、刈り芝の塊102を通過する際には、作業部5を停止(回転カッタ5aの回転を停止)してもよい。刈り芝の塊102を通過するだけでも、これを踏みしめて平坦化したり、周囲に散乱させて塊102を解消でき、また、回転カッタ5aに刈り芝の塊102を巻き込んでロックさせてしまう事態を回避できる。
【0039】
刈り芝の塊102の位置は、例えば、画像中の刈り芝の塊102の画像の位置から作業機1に対する刈り芝の塊102の実際の位置の方位を特定し、作業機1の現在位置から予め定めた距離だけその方位で前方の位置と特定してもよい。また、画像認識部14が刈り芝の塊102の画像から作業機1との距離を演算してもよい。この演算を採用する場合、撮影装置9を車幅方向に離間して2つ設け、2つの撮影画像の視差を利用して作業機1に対する刈り芝の塊102の位置をより正確に推定することも可能である。或いは、作業機1に測距センサを設けて作業機1に対するマーカ101の距離を計測し、その位置を特定してもよい。こうした刈り芝の塊102の位置の特定方法は、後述する他の不具合の発生個所の位置の特定についても同様である。
【0040】
図8は別の不具合の存在が認識された場合の制御例を示している。状態ST5は、撮影範囲9a内に、目立つ雑草103が存在し、撮影画像IM中に雑草103の画像が含まれている状態を示している。画像認識部14は撮影画像IMから雑草103の存在を認識する。
【0041】
処理部11は、画像認識部14が雑草103の存在を認識したことを受けて、不具合が発生していること、及び、その不具合の内容が雑草103であると特定し、対応する制御を実行する。本実施形態の場合、雑草103に対応する制御として、これを刈り取る。このため、処理部11は雑草103の位置を特定し、状態ST6に示すように雑草103を通過するように作業機1の進路を変更する。更に、作業時間を増加させる。作業時間の増加は、
図7の例と同様に、例えば、作業機1の移動速度の減速や、
雑草103の位置の通過回数の増加により行うことができる。上記のスケジュール制御においては、作業計画を修正することになる。このような制御によって、雑草103を刈り取ることができ、作業地WAの外観を向上することができる。
【0042】
なお、刈り芝の塊102の場合と同様、雑草103を通過する際には、作業部5を停止(回転カッタ5aの回転を停止)してもよい。雑草103を通過するだけでも、これを踏みしめて平坦化したり、周囲に散乱させて雑草103を除去でき、また、回転カッタ5aに雑草103を巻き込んでロックさせてしまう事態を回避できる。
【0043】
図9は別の不具合の存在が認識された場合の制御例を示している。状態ST7は、撮影範囲9a内に、芝剥がれ104が存在し、撮影画像IM中に芝剥がれ104の画像が含まれている状態を示している。画像認識部14は撮影画像IMから芝剥がれ104の存在を認識する。
【0044】
処理部11は、画像認識部14が芝剥がれ104の存在を認識したことを受けて、不具合が発生していること、及び、その不具合の内容が芝剥がれ104であると特定し、対応する制御を実行する。本実施形態の場合、芝剥がれ104に対応する制御として、芝が剥がれている箇所の作業時間の減少又は回避を行い、芝の育成を促進する。
【0045】
状態ST8の例では、処理部11は、芝剥がれ104の箇所を通過するものの、その作業時間を減少させる。作業時間の減少は、例えば、作業機1の移動速度の増速や、芝剥がれ104の位置の通過回数の低減により行うことができる。上記のスケジュール制御においては、作業計画を修正することになる。このような制御によって、芝剥がれ104が生じている箇所において、芝の生育が更に悪化することを回避でき、作業地WAの外観を向上することができる。
【0046】
また、芝剥がれ104の解消は作業機1では困難である。このため、状態ST7において、芝剥がれ104の位置を記録すると共に、通信部17を介して管理サーバ201へ芝剥がれ104の位置の情報を送信する。芝剥がれ104の位置の情報は、管理サーバ201から携帯端末202へ送信可能であり、携帯端末202のユーザは芝剥がれ104の位置を認識し、必要な修復作業を行うことが可能となる。芝剥がれ104以外にも、病気の芝の存在が認識された場合も、芝剥がれ104の場合と同様の制御を行うことができる。
【0047】
なお、不具合箇所の位置の情報の送信は、
図7、
図8の例のように作業機1によって回復が可能な不具合についても行ってもよいが、
図9の例のように作業機1では回復が困難な不具合についてのみ行ってもよい。その場合、不具合の内容によって作業機1によって回復可能か否かを判定し、回復不能であると判定した場合に、或いは、不具合の内容が予め定めた内容である場合に、不具合箇所の位置の情報の送信を行う処理であってもよい。
【0048】
図10は別の不具合の存在が認識された場合の制御例を示している。状態ST9は、撮影範囲9a内に、比較的大きな穴105が存在し、撮影画像IM中に穴105の画像が含まれている状態を示している。穴105は、例えば、うさぎやもぐらといった動物が掘った穴である。画像認識部14は撮影画像IMから穴105の存在を認識する。
【0049】
処理部11は、画像認識部14が穴105の存在を認識したことを受けて、不具合が発生していること、及び、その不具合の内容が穴105であると特定し、対応する制御を実行する。本実施形態の場合、穴105に対応する制御として、その手前で旋回する移動制御を行い、作業機1が穴105に嵌って移動不能となる事態を回避する。
【0050】
状態ST10の例では、処理部11は穴105の位置を特定し、穴105の手前で旋回して、穴105を迂回するようにその進路を変更する。旋回後の作業機1の進路は、穴105の迂回以外に、左右いずれかに曲がるものであってもよいし、進行してきた方向に戻るものであってもよい。このような制御によって、作業機1の移動や作業に支障を与える物体を回避でき、作業の中断を免れることができる。物体を回避した場合、上記のスケジュール制御においては、作業計画を修正することになるが、迂回して当初予定していた経路に戻る制御とした場合には、作業計画の修正が少ない場合がある。
【0051】
また、穴105を埋めることは作業機1では困難である。このため、状態ST9において、穴105の位置を記録すると共に、通信部17を介して管理サーバ201へ穴105の位置の情報を送信する。穴105の位置の情報は、管理サーバ201から携帯端末202へ送信可能であり、携帯端末202のユーザは穴105の位置を認識し、必要な穴埋め作業を行うことが可能となる。穴105以外にも、轍106の存在が認識された場合も、穴105の場合と同様の制御を行うことができる。
【0052】
図11は別の不具合の存在が認識された場合の制御例を示している。状態ST11は、撮影範囲9a内に、葉先が白化した芝107が多数混在し、撮影画像IM中に芝107の画像が含まれている例を示している。葉先が白化した芝107は、過去の芝刈りの際にその切断の切れが悪かったことを示しており、回転カッタ5aの切断能力の低下(摩耗)を意味している。葉先が白化した芝107が混在していると、作業地WAの外観が悪化する。
【0053】
処理部11は、画像認識部14が芝107の存在を認識したことを受けて、不具合が発生していること、及び、その不具合の内容が芝107(換言すると回転カッタ5aの切断能力の低下)であると特定し、対応する制御を実行する。本実施形態の場合、芝107に対応する制御として、回転カッタ5aの切断能力を向上する制御を行う。これにより、作業地WAの外観悪化を改善できる。
【0054】
回転カッタ5aの切断能力の向上制御として、本実施形態の場合、回転方向の切り替え(逆回転)、又は、定速回転される回転カッタ5aの回転速度の上昇、を行う。回転方向を切り替えることにより、これまで芝刈りに用いていなかった刃の部分を用いて芝を刈ることができ、その切断能力が向上する。また、回転速度の上昇により、刃と芝の接触回数が増えるため、その切断能力が向上する。
【0055】
2つの向上制御は、一方のみを実行してもよいし、双方を同時に実行してもよいが、本実施形態ではこれら2つを段階的に実行する。まず、状態ST12に示すように回転方向の切り替えを行い、芝刈り作業を行う。その後に再び先端が白化した芝107が検知されると、今度は状態ST13に示すように回転速度の上昇を行う。回転速度の増速はモータ5cの電力消費を増加させるため、回転方向の切り替えを優先して段階的に対応することで、電力消費の増加を抑えつつ、芝刈り性能を維持することができる。
【0056】
状態ST13の段階では回転カッタ5aがその交換時期に来ていると言える。このため、状態ST13では、通信部17を介して管理サーバ201へ、回転カッタ5aの寿命を通知するメンテナンス情報を送信する。メンテナンス情報は、管理サーバ201から携帯端末202へ送信可能であり、携帯端末202のユーザは回転カッタ5aの寿命を認識し、その交換作業を行うことが可能となる。
【0057】
以上の通り、本実施形態の作業機1によれば、撮影装置9の撮影画像から不具合の発生と内容を特定することで、不具合の対象と非接触でその存在と内容を特定でき、作業地に生じている様々な事象に迅速に対応することができる。不具合の内容に対応した作業機1の制御を予め定めておくことで、最適な対応をとることが可能である。
【0058】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は以下の作業機を少なくとも開示する。
1.上記実施形態の作業機(例えば作業機1)は、
作業地(例えば作業地WA)を移動しながら該作業地に対する作業を自動的に行う自律式作業機であって、
前記作業地を撮影する撮影手段(例えば撮影装置9)と、
前記撮影手段による前記作業地の撮影画像に基づいて前記作業地に発生している不具合の内容を特定し、特定した不具合の内容に基づいて前記自律式作業機を制御する制御手段(例えば制御部10)と、を備える。
【0059】
この実施形態によれば、撮影画像から不具合の発生と内容を特定することで、不具合の対象と非接触でその存在と内容を特定でき、作業地に生じている様々な事象に迅速に対応することができる。
【0060】
2.上記実施形態では、
前記制御手段は、不具合が発生している発生位置を特定し、該発生位置と不具合の内容とに基づいて前記自律式作業機を制御する。
【0061】
この実施形態によれば、不具合の発生位置を迂回したり、逆に、通過させるといった制御が可能となる。
【0062】
3.上記実施形態では、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が予め定めた内容である場合、前記発生位置の手前で旋回するように前記自律式作業機の移動を制御する。
【0063】
この実施形態によれば、自律式作業機の移動や動作に支障が生じる事態を回避できる。
【0064】
4.上記実施形態では、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が予め定めた内容である場合、前記発生位置を迂回するように前記自律式作業機の移動を制御する。
【0065】
この実施形態によれば、自律式作業機の移動や動作に支障が生じる事態を回避できる。
【0066】
5.上記実施形態の自律式作業機は、
前記発生位置と不具合の内容とを示す情報を送信する送信手段(例えば通信部17)を更に備える。
【0067】
この実施形態によれば、不具合の発生をサーバで管理したり、ユーザに通知することが可能となる。
【0068】
6.上記実施形態では、
前記制御手段は、特定した不具合の内容に基づいて前記発生位置における前記自律式作業機の作業時間を制御する。
【0069】
この実施形態によれば、不具合の解消やその拡大防止を図ることが可能となる。
【0070】
7.上記実施形態では、
前記作業地に対する作業とは、芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が第一の内容である場合に、前記発生位置における前記自律式作業機の作業時間を増加し、
前記第一の内容は、刈芝の塊の存在又は雑草の存在の少なくともいずれか一つを含む。
【0071】
この実施形態によれば、刈り芝の塊や雑草を消失させることができる。
【0072】
8.上記実施形態では、
前記作業地に対する作業とは、芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が第二の内容である場合に、前記発生位置における前記自律式作業機の作業時間を減少し、
前記第二の内容は、病気の芝の存在又は芝剥がれの存在の少なくともいずれか一つを含む。
【0073】
この実施形態によれば、作業に起因した芝の病気や芝剥がれの拡大を防止することができる。
【0074】
9.上記実施形態では、
前記作業地に対する作業とは、芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が第一の内容である場合に、当該不具合の発生位置へ前記自律式作業機を移動して前記芝刈り作業を行い、
前記第一の内容は、刈芝の塊の存在又は雑草の存在の少なくともいずれか一つを含む。
【0075】
この実施形態によれば、刈り芝の塊を消失させたり、雑草を刈り取ることができる。
【0076】
10.上記実施形態では、
前記作業地に対する作業とは、回転カッタによる芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が芝の葉先の白化である場合に、前記回転カッタを逆回転した芝刈り作業を行う。
【0077】
この実施形態によれば、回転カッタの切断能力を維持して、葉先の白化した芝を刈りこむことができる。
【0078】
11.上記実施形態では、
前記作業地に対する作業とは、回転カッタによる芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が芝の葉先の白化である場合に、前記回転カッタの回転速度を上昇した芝刈り作業を行う。
【0079】
この実施形態によれば、回転カッタの切断能力を維持して、葉先の白化した芝を刈りこむことができる。
【0080】
12.上記実施形態では、
前記作業地に対する作業とは、回転カッタによる芝刈り作業であり、
前記制御手段は、特定した不具合の内容が芝の葉先の白化である場合に、前記回転カッタを逆回転した芝刈り作業を行い、
前記制御手段は、前記回転カッタを逆回転した芝刈り作業を行った後、芝の葉先の白化の不具合を特定した場合には、前記回転カッタの回転速度を上昇した芝刈り作業を行う。
【0081】
この実施形態によれば、回転カッタの切断能力を維持して、葉先の白化した芝を刈りこむことができる。
【0082】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。