(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】クロック分配システム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/10 20060101AFI20221129BHJP
H03K 3/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G06F1/10
H03K3/00
(21)【出願番号】P 2020563993
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 US2019036069
(87)【国際公開番号】W WO2019245758
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-11-17
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ストロング,ジョシュア エー.
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,マックス イー.
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ,ピーター ジョン
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09722589(US,B1)
【文献】国際公開第2016/209387(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0125309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/10
H03K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック分配システムであって、
第1のクロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、
前記第1のクロック信号に対して位相がずれた第2のクロック信号を伝搬する第2の共振器スパインと、
前記第1の共振器スパインに
導電的に結合されており、それぞれの第1の変圧器結合線を介してそれぞれの第1のクロック信号を関連する第1の回路に誘導的に提供するために、前記第1のクロック信号に関する定在波共振器として配置されている、第1の共振器リブと、
前記第2の共振器スパインに
導電的に結合されており、それぞれの第2の変圧器結合線を介してそれぞれの第2のクロック信号を関連する第2の回路に誘導的に提供するために、前記第2のクロック信号に関する定在波共振器として配置されている、第2の共振器リブと、
前記第1の共振器スパインが結合される前記第1の共振器リブの部分、および前記第2の共振器スパインが結合される前記第2の共振器リブの部分を含む絶縁素子であって、それぞれの第1および第2の共振器リブの部分は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されており、前記絶縁素子は、それぞれの第1および第2の共振器リブの部分の各々の間にかつそれぞれに対して平行に延びる接地されたクロスバー導体をさらに含み
、第1および第2のクロック信号の間の誘導結合および容量結合のうちの少なくとも一方を軽減する、絶縁素子と、
を含む、クロック分配システム。
【請求項2】
前記第1のクロック信号は同相クロック信号であり、前記第2のクロック信号は直交位相クロック信号である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
クロック分配システムであって、
第1のクロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、
前記第1のクロック信号に対して位相がずれた第2のクロック信号を伝搬する第2の共振器スパインと、
前記第1の共振器スパインに
導電的に結合されており、それぞれの第1の変圧器結合線を介してそれぞれの第1のクロック信号を関連する第1の回路に誘導的に提供するために、前記第1のクロック信号に関する定在波共振器として配置されている、第1の共振器リブと、
前記第2の共振器スパインに
導電的に結合されており、それぞれの第2の変圧器結合線を介してそれぞれの第2のクロック信号を関連する第2の回路に誘導的に提供するために、前記第2のクロック信号に関する定在波共振器として配置されている、第2の共振器リブと、
前記第1の共振器スパインが結合される前記第1の共振器リブの部分、および前記第2の共振器スパインが結合される前記第2の共振器リブの部分を含む絶縁素子であって、それぞれの第1および第2の共振器リブの部分は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されており、前記第1および第2の共振器リブ
の部分は
、第1および第2のクロック信号の間の誘導結合および容量結合のうちの少なくとも一方を軽減するために、前記第1の共振器リブの前記第1の共振器スパインへの結合部に関して、および前記第2の共振器リブの前記第2の共振器スパインへの結合部に関して、前記第1および第2の共振器リブのそれぞれ
の部分の長さに沿って非対称である、絶縁素子と、
を含む、システム。
【請求項4】
クロック分配システムであって、
第1のクロック信号を各々伝搬する複数の第1の共振器スパインと、
前記第1のクロック信号に対して位相がずれた第2のクロック信号を各々伝搬する複数の第2の共振器スパインと、
前記複数の第1の共振器スパインの各々に
導電的に結合されている単一の第1の共振器リブであって、前記単一の第1の共振器リブは、それぞれの第1の変圧器結合線を介してそれぞれの第1のクロック信号を関連する第1の回路に誘導的に提供するために、前記第1のクロック信号に関する定在波共振器として配置されている、単一の第1の共振器リブと、
前記第2の共振器スパインに
導電的に結合されており、それぞれの第2の変圧器結合線を介してそれぞれの第2のクロック信号を関連する第2の回路に誘導的に提供するために、前記第2のクロック信号に関する定在波共振器として配置されている、単一の第2の共振器リブと、
前記第1の共振器スパインが結合される前記第1の共振器リブの部分、および前記第2の共振器スパインが結合される前記第2の共振器リブの部分を含む絶縁素子であって、それぞれの第1および第2の共振器リブの部分は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されており、前記単一の第1の共振器リブは、前記複数の第1の共振器スパインの各々から前記第1の共振器リブに沿って等距離に配置された複数の接地接続部を含み、前記単一の第2の共振器リブは、前記複数の第2の共振器スパインの各々から前記第2の共振器リブに沿って等距離に配置された複数の接地接続部を含み
、第1および第2のクロック信号の間の誘導結合および容量結合のうちの少なくとも一方を軽減する、絶縁素子と、
を含む、システム。
【請求項5】
クロック分配システムであって、
第1のクロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、
前記第1のクロック信号に対して位相がずれた第2のクロック信号を伝搬する第2の共振器スパインと、
前記第1の共振器スパインに
導電的に結合されており、それぞれの第1の変圧器結合線を介してそれぞれの第1のクロック信号を関連する第1の回路に誘導的に提供するために、前記第1のクロック信号に関する定在波共振器として配置されている、複数の第1の共振器リブと、
前記第2の共振器スパインに
導電的に結合されており、それぞれの第2の変圧器結合線を介してそれぞれの第2のクロック信号を関連する第2の回路に誘導的に提供するために、前記第2のクロック信号に関する定在波共振器として配置されている、複数の第2の共振器リブと、
前記第1の共振器スパインが結合される前記第1の共振器リブの部分、および前記第2の共振器スパインが結合される前記第2の共振器リブの部分を含む絶縁素子であって、それぞれの第1および第2の共振器リブの部分は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されている、絶縁素子と、
第1および第2の共振器スパインの間に延び
ており、
かつ前記第1の共振器スパインと前記第1の共振器リブとを導電的に相互接続する複数の第1のクロスバーと、
第1および第2の共振器スパインの間に延び
ており、
かつ前記第2の共振器スパインと前記第2の共振器リブとを導電的に相互接続する複数の第2のクロスバーであって、前記複数の第1の共振器リブのうちの1つおよび前記複数の第2の共振器リブのうちの1つは
、複数の第1および第2のクロスバーの各それぞれの対の間にかつ前記第1および第2の共振器スパインの間に複数の列のうちの1つとして配置されており
、複数の第1および第2の共振器リブの各々は、前記複数の第1および第2の共振器リブの各々が前記第1および第2の共振器スパインの間において時計回りおよび反時計回りの向きのうちの一方においてそれぞれ
の複数の第1および第2のクロスバーに対して平行および逆平行方向の両方に延びるように、複数の曲げ部を含み、前記複数の列は、前記複数の第1および第2の共振器リブのそれぞれ1つに対して同じおよび異なる向きに関して交互になっている、第2のクロスバーと、
を含む、システム。
【請求項6】
クロック分配システムであって、
第1のクロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、
前記第1のクロック信号に対して位相がずれた第2のクロック信号を伝搬する第2の共振器スパインと、
少なくとも1つの共振器リブであって
、第1および第2の共振器スパインの各々は、前記少なくとも1つの共振器リブのそれぞれ1つに結合されており、前記少なくとも1つの共振器リブは、前記第1および第2の共振器スパインの少なくとも一方に各々
導電的に結合されており、それぞれの第1の変圧器結合線を介し
て第1および第2のクロック信号のうちのそれぞれの少なくとも一方を関連する第1の回路に誘導的に提供するために、前記第1および第2のクロック信号のうちのそれぞれの少なくとも一方に関する定在波共振器として配置されている、少なくとも1つの共振器リブと、
前記第1および第2のクロック信号の間の誘導結合および容量結合のうちの少なくとも一方を軽減するために、前記少なくとも1つの共振器リブ
のそれぞれ1つへの前記第1および第2の共振器スパインの導電的結合部の間に等距離において前記少なくとも1つの共振器リブ
のそれぞれ1つに結合された接地接続部
と、
前記少なくとも1つの共振器リブのそれぞれの部分の近くにかつそれに対して平行に配置されたDCクロスバー導体を含
む絶縁素子であって、前記DCクロスバー導体は、DC電流を伝搬するように構成されている、
絶縁素子と、
を含む、システム。
【請求項7】
クロック分配システムであって、
同相クロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、
直交クロック信号を伝搬する第2の共振器スパインと、
第1および第2の共振器スパインの少なくとも一方に各々
導電的に結合されており、それぞれの変圧器結合線を介し
て同相および直交クロック信号のうちのそれぞれの少なくとも一方を関連する回路に誘導的に提供するために、前記同相および直交クロック信号のうちのそれぞれの少なくとも一方に関する定在波共振器として配置されている、少なくとも1つの共振器リブであって、前記第1および第2の共振器スパインは、互いに近くにかつ互いに平行に配置されており、前記第1および第2の共振器スパインの1つに導電的に結合された少なくとも1つの共振器リブは、前記第1および第2の共振器スパインの一方から直交して延び、前記第1および第2の共振器スパインの他方の上または下を横切って
いる、少なくとも1つの共振器リブと、
前記第1および第2の共振器スパインの他方の上または下を横切る前記少なくとも1つの共振器リブの部分を含む
絶縁素子と、
を含む、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のクロック分配システムを含む集積回路(IC)チップであって、前記ICチップは、前記第1および第2の共振器スパインが配置され
ているクロック層を含み、さらに、前記クロック層に隣接
する接地面層を含み、前記第1および第2の共振器スパインの1つに導電的に結合され
た少なくとも1つの共振器リブは、前記第1および第2の共振器スパインの他方の一方の側において前記クロック層から、前記接地面層を通
り、再び前記接地面層を通って、前記第1および第2の共振器スパインの他方の反対側にお
けるクロック層へ戻
るように伸びている、ICチップ。
【請求項9】
前記システムは、接地面層から前記少なくとも1つの共振器リブの少なくとも一部分に沿って延びる少なくとも1つのビア壁をさらに含み、前記少なくとも1つの共振器リブ
の少なくとも一部分は、前記第1および第2の共振器スパインの他方の上または下を横切る前記少なくとも1つの共振器リブの領域を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの共振器リブの少なくとも1つと、前記第1および第2の共振器スパインの他方とは、前記少なくとも1つの共振器リブが前記第1および第2の共振器スパインの他方の上または下を横切る部分において厚さが減少している、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1および第2の共振器スパインの各々は、反対の極性を有する、共振器スパインの相補的な対を含み、前記第1および第2の共振器スパインのうちの一方
の相補的な対のうちの一方に導電的に結合され
た少なくとも1つの共振器リブは、前記第1および第2の共振器スパインのうちの一方
の相補的な対のうちの一方からほぼ直交して延びて
おり、前記第1および第2の共振器スパインのうちの他方
の相補的な対の上または下を横切っている、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの共振器リブは、複数の共振器リブを含み、前記共振器スパイン
の相補的な対は、
前記第1の共振器スパインに関連
する第1の相補的な対および前記第1の共振器スパインの第2の相補的な対
であって、前記第1の共振器スパインに関連
する第1および第2の相補的な対は、互いにほぼ直交して配置されており、前記複数の共振器リブのうちの第1の共振器リブは、前記第1の相補的な対のうちの少なくとも一方から延びており、前記複数の共振器リブのうちの第2の共振器リブは、前記第2の相補的な対のうちの少なくとも一方から延びて
いる、前記第1の共振器スパインに関連する第1および第2の相補的な対と、
前記第2の共振器スパインに関連
する第1の相補的な対および前記第2の共振器スパインの第2の相補的な対
であって、前記第2の共振器スパインに関連
する第1および第2の相補的な対は、互いにほぼ直交して配置されており、前記複数の共振器リブのうちの第3の共振器リブは、前記第1の相補的な対のうちの少なくとも一方から延びており、前記複数の共振器リブのうちの第4の共振器リブは、前記第2の相補的な対のうちの少なくとも一方から延びて
いる、前記第2の共振器スパインに関連する第1および第2の相補的な対と、
を含み、
前記複数の共振器リブのうちの第1および第3の共振器リブは、前記複数の共振器リブのうち
の第2および第4の共振器リブの各々の上または下を横切っている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
クロック分配システムであって、
第1のクロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、
前記第1のクロック信号に対して位相がずれた第2のクロック信号を伝搬する第2の共振器スパインであって
、第1および第2の共振器スパインは、互いに近くにかつ互いに平行に配置されている、第2の共振器スパインと、
前記第1および第2の共振器スパインの少なくとも一方に各々導電的に結合されており、それぞれの第1の変圧器結合線を介して第1および第2のクロック信号のうちのそれぞれの少なくとも一方を関連する第1の回路に誘導的に提供するために、前記第1および第2のクロック信号のうちのそれぞれの少なくとも一方に関する定在波共振器として配置されている、少なくとも1つの共振器リブと、
前記第1のクロック信号と前記第2のクロック信号との間の容量結合を軽減するために前記第1および第2の共振器スパインを相互接続するインダクタを含む絶縁素子と、
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年6月19日に出願された米国特許出願第16/012517号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権益
本発明は、政府契約番号W911NF-14-C-0116の下で行われた。したがって、米国政府は、その契約に明記されているように本発明に対する権利を有する。
【0003】
本発明は、一般にコンピュータシステム、特にクロック分配システムに関する。
【背景技術】
【0004】
論理関数を実行する一般的な回路は、データを同期しかつ/または論理関数の時間ベースのフローを提供するためにクロックに基づいて動作することができる。相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術に基づく回路は、クロックを実行することができ、これにより、データを処理するためにまたはデータを他の論理関数へ転送するために、いつ所定の論理回路またはゲートが1つ以上の入力においてデータをキャプチャすべきかを示す。したがって、所定のクロックは、回路内の様々なデバイスにクロック信号を提供することができ、これにより、必要なタイミング情報を提供し、ひいてはデータ転送およびタイミング機能を実質的に同期させる。レシプロカル量子論理(RQL)回路などの他のタイプの回路は、クロック信号を実行することができる。RQL回路は、例えば、実質的に安定した周波数を有する信号として提供されるクロックに基づいて、タイミング情報を実行することができる。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態は、クロック分配システムを含む。このシステムは、第1のクロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、第1のクロック信号に対して位相がずれている第2のクロック信号を伝搬する第2の共振器スパインとを含む。システムはまた、少なくとも1つの共振器リブを含み、各共振器リブは、第1および第2の共振器スパインの少なくとも1つに導電的に結合されており、それぞれの変圧器結合線を介して第1および第2のクロック信号のうちのそれぞれの少なくとも1つを関連する回路に誘導的に提供するために、第1および第2のクロック信号のうちのそれぞれの少なくとも1つに関する定在波共振器として配置されている。システムはさらに、第1および第2のクロック信号の間の誘導結合および容量結合の少なくとも1つを軽減するように構成された絶縁素子を含む。
【0006】
別の例は、クロック分配システムを含む。このシステムは、同相クロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、直交クロック信号を伝搬する第2の共振器スパインとを含む。このシステムもまた、第1の共振器リブを含み、第1の共振器リブは、第1の共振器スパインに導電的に結合されており、第1の変圧器結合線を介して同相クロック信号を関連する回路に誘導的に提供するために同相クロック信号に関する定在波共振器として配置されている。第1の共振器リブは、第1の共振器スパインに導電的に結合された部分を含む。このシステムはさらに、第2の共振器リブを含み、第2の共振器リブは、第2の共振器スパインに導電的に結合されており、第2の変圧器結合線を介して直交位相クロック信号を関連する回路に誘導的に提供するために直交位相クロック信号に関する定在波共振器として配置されている。第2の共振器リブは、第2の共振器スパインに導電的に結合された部分を含む。第1の共振器リブの部分は、第2の共振器リブの近くに第2の共振器リブに対して平行に配置されており、これにより、同相クロック信号と直交位相クロック信号との間の誘導結合および容量結合のうちの少なくとも1つを軽減する。
【0007】
別の例は、クロック分配システムを含む。このシステムは、同相クロック信号を伝搬する第1の共振器スパインと、直交クロック信号を伝搬する第2の共振器スパインとを含む。システムはさらに、少なくとも1つの共振器リブを含み、各共振器リブは、第1および第2の共振器スパインの少なくとも1つに導電的に結合されており、それぞれの変圧器結合線を介して第1および第2のクロック信号のうちのそれぞれの少なくとも1つを関連する回路に誘導的に提供するために、第1および第2のクロック信号のうちのそれぞれの少なくとも1つに関する定在波共振器として配置されている。第1および第2の共振器スパインは、互いに近くにかつ互いに平行に配置することができる。第1および第2の共振器スパインの1つに導電的に結合された少なくとも1つの共振器リブは、第1および第2の共振器スパインの一方からほぼ直交して延びて、第1および第2の共振器スパインの他方の上または下を横切っている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、一般にコンピュータシステム、特にクロック分配システムに関する。本明細書において説明されるクロック分配システムは、共振器「スパイン」および「リブ」構成として配置された共振器システムを含む。本明細書で説明する場合、共振器に関する「スパイン」という用語は、クロック信号(例えば、正弦波クロック信号)を伝搬するように構成された導体を表す。共振器に関する「リブ」という用語は、スパインに導電的に結合され、クロック信号を伝搬する定在波共振器として配置された導体を表す。クロック分配システムは、少なくとも2つの共振器スパインを含むことができ、各共振器スパインは、互いに対して可変位相を有するなど、別々のACクロック信号を伝搬するように構成されている。例えば、クロック分配システムは、第1のクロック信号(例えば、同相クロック信号)を提供することができる第1の共振器スパインと、第2のクロック信号(例えば、直交位相クロック信号)を提供することができる第2の共振器スパインとを含むことができる。クロック分配システムは、各々が同じ共振器スパインに導電的に結合され、したがって、各々が共振器スパインから別々にクロック信号を伝搬することができる複数の共振器リブを含むことができる。本明細書でより詳細に説明するように、共振器リブおよびスパインは、可変であり得る所定の厚さを有することができる。本明細書で説明するように、共振器リブおよび共振器スパインに関する「厚さ」という用語は、それぞれの共振器リブまたはスパインの断面の少なくとも1つの寸法(例えば、幅)を表す。
【0010】
さらに、クロック分配システムは、関連する回路に導電的に結合された少なくとも1つの変圧器結合線を含む。変圧器結合線は、複数の誘導結合部を介して共振器リブに誘導結合されており、関連する回路のための機能を提供するためにクロック信号に対応するクロック電流を誘導的に発生する。本明細書で説明するように、共振器リブおよびスパインの多数の異なる構成があり、したがって、共振器リブへの変圧器結合線の誘導結合を提供するための多数の異なる方法がある。
【0011】
クロック分配システムはまた、第1および第2のクロック信号間の誘導結合および/または容量結合を軽減するように構成された1つまたは複数の絶縁素子を含むことができる。例えば、絶縁素子は、それぞれのクロック信号間の結合を軽減するために特定の形式で配置された共振器リブの部分として構成することができる。別の例として、絶縁素子は、互いに対する共振器リブの位置関係、および共振器スパインと共振器リブとを相互接続する導電性クロスバーに対する共振器リブの位置関係として、構成することができる。さらに別の例として、絶縁素子は、接地されたクロスバーまたはDCクロスバー、関連する集積回路(IC)チップにおける接地面、および/または接地されたビア壁構造などの、共振器リブおよび/またはスパインの近くに配置された追加の導体を含むことができる。さらに別の例として、絶縁素子は、共振器スパインとリブとの間および/または共振器リブの互いの間のクロスオーバーのそれぞれの配置を含むことができる。したがって、本明細書で説明するように、絶縁素子は、専用の物理的デバイスに限定されず、それぞれの共振器システムのデバイスの配置を含むことができるか、またはその代わりにそれぞれの共振器システムのデバイスの配置であることができることを理解されたい。
【0012】
図1は、クロック分配システム10の例を示す。クロック分配システム10は、レシプロカル量子論理(RQL)回路設計など、様々なアプリケーションにおいて実装することができる。例えば、クロック分配システム10は、集積回路(IC)チップ内に、またはその一部として実装することができる。
【0013】
クロック分配システム10は、少なくとも1つの共振器システム12を含む。共振器システム12は、本明細書に記載されるように、クロック分配システム10が実装されるICチップ全体に分配され得るそれぞれの1つまたは複数の回路14の各々にクロック信号を提供するように構成することができる。一例として、クロック信号は、2つの位相のずれたクロック信号として提供することができる。例えば、
図1の例では、クロック信号は、互いに対して90°位相がずれている同相クロック信号I_CLKおよび直交位相クロック信号Q_CLKを含む直交信号(例えば、正弦波)として示されている。
図1の例では、各共振器システム12は、少なくとも1つの第1の共振器スパイン16、少なくとも1つの第2の共振器スパイン18および少なくとも1つの共振器リブ20を含む。共振器リブ20は各々、それぞれの共振器スパイン16および18の少なくとも1つに導電的に結合されている。したがって、(例えば、ローカル発振器から)それぞれの共振器スパイン16および18に提供されるクロック信号I_CLKおよびQ_CLKは、それぞれの共振器リブ20の各々を伝搬するように提供することができる。一例として、クロック分配システム10は、2017年11月17日に出願された特許出願第15/816,518号、代理人整理番号NG(ES)027022USPRIに記載されているように、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKを回路14に分配するために様々な異なる形式で構成することができ、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、クロック分配システム10は、前述の特許出願に記載されている様々な異なるクロック分配アーキテクチャのいずれかに対応することができる。
【0014】
図1の例では、共振器システム12はまた、少なくとも1つの変圧器結合線22を含む。回路14のうちの関連する1つに、対応するクロック電流ICLK_IおよびICLK_Qを誘導的に提供するために、各変圧器結合線22を共振器リブ20の1つまたは複数に誘導結合することができる。特に、関連する回路14のための機能(例えば、タイミング機能および/または電力分配機能)を提供するために、それぞれのクロック信号I_CLKおよびQ_CLKに対応するクロック電流ICLK_IおよびICLK_Qを誘導的に発生させるために、変圧器結合線22は、複数の誘導結合部を介してそれぞれの共振器リブ20に誘導結合されている。本明細書に記載されるように、共振器リブ20およびスパイン16の多数の異なる構成があり得るため、共振器リブ20への変圧器結合線22の誘導結合を提供するための多数の異なる形式があり得る。
【0015】
さらに、
図1の例では、各共振器システム12は、1つまたは複数の絶縁素子24を含む。絶縁素子24は、それぞれの共振器システム12におけるクロック信号I_CLKおよびQ_CLK間の誘導結合および/または容量結合を軽減するように構成されている。例えば、絶縁素子24は、それぞれのクロック信号I_CLKとQ_CLKとの間の結合を軽減するために特定の形式で配置された共振器リブ20の部分として構成することができる。別の例として、絶縁素子24は、互いに対する、および共振器スパイン16および18と共振器リブ20とを相互接続する誘電性クロスバーに対する、共振器リブ20間の位置関係として構成することができる。さらに別の例として、絶縁素子24は、共振器リブ20および/またはスパイン16および18の近くに配置された追加の導体、例えば、接地されたクロスバーまたはDCクロスバー、関連する集積回路(IC)チップにおける接地面、および/または接地されたビア壁構造を含むことができる。さらに別の例として、絶縁素子24は、共振器リブ20および/またはスパイン16および18の間のクロスオーバーおよび/または互いの共振器リブのクロスオーバーのそれぞれの配置を含むことができる。したがって、本明細書で説明するように、絶縁素子24は、専用の物理的デバイスに限定されるのではなく、それぞれの共振器システム12のデバイスの配置を含むことができるまたはその代わりにそれぞれの共振器システム12のデバイスの配置であることができ、共振器システム12ごとに異なることができることを理解されたい。
【0016】
図2は、共振器システム50の一例を示している。共振器システム50は、
図1の例の共振器システム12のうちの1つに対応することができる。したがって、以下の
図2の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0017】
図2の例では、共振器システム50は、第1の共振器スパイン52および第2の共振器スパイン54を含む。
図2の例では、第1の共振器スパイン52は、
図2の例において同相クロック信号I_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第2の共振器スパイン54は、
図2の例において直交位相クロック信号Q_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。共振器システム50はまた、第1の共振器スパイン52に導電的に結合された第1の共振器リブ56と、第2の共振器スパイン54に導電的に結合された第2の共振器リブ58とを含む。
図2の例では、第1および第2の共振器リブ56および58の各々は、それぞれの第1および第2の共振器リブ56および58の複数の平行部分を提供するように複数の屈曲部を含む。第1の共振器スパイン52は、第1の共振器リブ56の部分60のほぼ中点に導電的に結合されており、第2の共振器スパイン54は、第2の共振器リブ58の部分62のほぼ中点に導電的に結合されている。部分60および62は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されている。
【0018】
部分60および62の配置は、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKの相互誘導結合が実質的に軽減されるようにすることができる。例えば、特許出願第15/816,518号に記載されているように、それぞれのクロック信号I_CLKおよびQ_CLKから提供されるそれぞれの共振器リブ56および58における電流は、それぞれの共振器スパイン52および54への結合部において最小の振幅を有し、振幅は、それぞれの共振器リブ56および58のそれぞれの接地された端部に向かって増大している。したがって、それぞれの部分60および62におけるクロック信号I_CLKおよびQ_CLKに関連した実質的に最小の電流振幅に基づいて、互いに近くなるように共振器リブ56および58を配置する潜在的な必要性にもかかわらず、クロック信号I_CLKおよびQ_CLK間の相互インダクタンスを実質的に軽減することができる。
【0019】
一例として、空間的考慮のためおよび/または誘導電流I
CLK_IおよびI
CLK_Qの異なる位相関係を提供するため、共振器リブ56および58は、互いにある程度の近接性を有することが必要とされることがある。しかしながら、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKに関連したそれぞれの電流の振幅が増大した残りの平行部分に基づいて、残りの平行部分は、互いに対してより遠くなるように配置され、一方、それぞれの共振器スパイン52および54が結合されたより近い部分60および62は、最小の電流振幅を有する。したがって、クロック信号I_CLKとQ_CLKとの間の相互誘導結合は、共振器システム50に設けられた共振器リブ56および58の配置に基づいて軽減することができる。結果として、
図2の例では、部分60および62は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
【0020】
図3は、共振器システム100の一例を示している。共振器システム100は、
図1の例における共振器システム12のうちの1つに対応することができる。したがって、以下の
図3の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0021】
図3の例では、共振器システム100は、第1の共振器スパイン102および第2の共振器スパイン104を含む。
図3の例では、第1の共振器スパイン102は、
図3の例において同相クロック信号I_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第2の共振器スパイン104は、
図3の例において直交位相クロック信号Q_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。共振器システム100はまた、第1の共振器スパイン102に導電的に結合された第1の共振器リブ106と、第2の共振器スパイン104に導電的に結合された第2の共振器リブ108とを含む。
図3の例では、第1および第2の共振器リブ106および108の各々は、それぞれの第1および第2の共振器リブ106および108の複数の平行部分を提供するように複数の屈曲部を含む。第1の共振器スパイン102は、第1の共振器リブ106の部分110のほぼ中点に導電的に結合されており、第2の共振器スパイン104は、第2の共振器リブ108の部分112のほぼ中点に導電的に結合されている。部分110および112は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されている。
【0022】
さらに、共振器システム100は、それぞれの第1および第2の共振器リブ106および108の部分110および112のそれぞれの間にかつ部分110および112のぞれぞれに対して平行に延びた、接地されたクロスバー導体114を含む。接地されたクロスバー導体114は、部分110および112の長さに沿って延びた導体に対応することができ、他の共振器システム100に沿って延び、その一部となることができる。例えば、接地されたクロスバー導体114は、
図3の例に示されるように、部分110および112の長さにほぼ等しい長さを有することができるか、またはより長く延びた、1つまたは複数の追加の共振器システムのそれぞれの第1および第2の共振器リブの部分の間に、これらの部分に対して平行に延びた長さを有することができる。接地されたクロスバー導体114は、両端において接地されているものとして
図3の例に示されているが、接地されたクロスバー導体114の接地は、それぞれの導体の接地を提供しかつ(例えば、誘電結合を介して)電流伝達能力を高める様々な方法のいずれかによって提供することができると理解されたい。一例として、接地されたクロスバー導体114の実質的に全体を、接地された接続部に実質的に隣接して結合することなどによって、接地された接続部(例えば、接地面または接地壁ビア)に結合することができる。
【0023】
部分110および112と接地されたクロスバー導体114との配置は、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKの相互誘導結合が実質的に軽減されるようにすることができる。
図2の例において説明したのと同様に、それぞれのクロック信号I_CLKおよびQ_CLKから提供されるそれぞれの共振器リブ106および108における電流は、それぞれの共振器スパイン102および104への結合部において最小の振幅を有し、この振幅は、それぞれの共振器リブ106および108のそれぞれの接地された端部に向かって増大している。しかしながら、接地されたクロスバー導体114は、部分110と112との間に追加の誘導シールドを提供することができる。例えば、接地されたクロスバー導体114の近接は、接地されたクロスバー導体114とそれぞれの各部分110および112との間の誘導結合を容易にすることができる。結果として、それぞれの部分110および112におけるクロック信号I_CLKおよびQ_CLK間の誘導結合は、
図2の例における共振器システム50と比較してさらに軽減される。したがって、クロック信号I_CLKとQ_CLKとの間の相互誘導結合は、共振器システム100に設けられた接地されたクロスバー導体114の両側における共振器リブ106および108の配置に基づいて軽減することができる。その結果、
図3の例では、部分110および112ならびに接地されたクロスバー導体114は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
【0024】
図4は、共振器システム150の一例を示している。共振器システム150は、
図1の例における共振器システム12のうちの1つに対応することができる。したがって、以下の
図4の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0025】
図4の例では、共振器システム150は、第1の共振器スパイン152、第2の共振器スパイン154、第3の共振器スパイン156および第4の共振器スパイン158を含む。
図4の例では、第1および第2の共振器スパイン152および154は各々、
図4の例において同相クロック信号I_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第3および第4の共振器スパイン156および158は各々、
図4の例において直交位相クロック信号Q_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。一例として、第1および第2の共振器スパイン152および154を各々導電的に結合することができ、第3および第4の共振器スパイン156および158を各々導電的に結合することができる。別の例として、第1および第2の共振器スパイン152および154は、(例えば、別々のクロックソースから)別々の位相ロックされた第1のクロック信号を提供することができ、第3および第4の共振器スパイン156および158は、(例えば、別々のクロックソースから)別々の位相ロックされた第2のクロック信号を提供することができる。
【0026】
共振器システム150はまた、第1および第2の共振器スパイン152および154に導電的に結合された第1の共振器リブ160と、第3および第4の共振器スパイン156および158に導電的に結合された第2の共振器リブ162とを含む。
図4の例では、第1および第2の共振器リブ160および162の各々は、それぞれの第1および第2の共振器リブ160および162の複数の平行部分を提供するように複数の屈曲部を含む。
図4の例では、第1および第2の共振器リブ160および162の各々は、
図2の例における2つの隣接する共振器リブ56および58と同様にそれぞれ配置されている。特に、
図4の例では、共振器リブ160は、第1のセクション164および第2のセクション166を含み、第1のセクション164および第2のセクション166は、ほぼ等しく、かつ第1および第2のセクション164および166の間の接地接続部に関して対称的であり、共振器リブ162は、第1のセクション168および第2のセクション170を含み、第1のセクション168および第2のセクション170は、ほぼ等しく、かつ第1および第2のセクション168および170の間の接地接続部に関して対称的である。
図4の例は、共振器リブ160および162の各々における2つのセクションを示しているが、共振器リブ160および162は、より多くのセクションを含むことができ、同じ数のセクションを有することに限定されないことを理解されたい。
【0027】
さらに、
図2の例において説明したのと同様に、第1の共振器スパイン152は、第1の共振器リブ160の第1の部分172のほぼ中点に導電的に結合されており、第2の共振器スパイン154は、第1の共振器リブ160の第2の部分174のほぼ中点に導電的に結合されている。同様に、第3の共振器スパイン156は、第2の共振器リブ162の第1の部分176のほぼ中点に導電的に結合されており、第4の共振器スパイン158は、第2の共振器リブ162の第2の部分178のほぼ中点に導電的に結合されている。第1の共振器リブ160の部分172および174は、第2の共振器リブ162の部分176および178の近くに、かつこれらの部分176および178に対して平行に配置されている。
【0028】
しかしながら、
図2の例とは対照的に、共振器リブ160および162は、共振器スパイン152および154への第1の共振器リブ160の結合部に関しておよび共振器スパイン156および158への共振器リブ162の結合部に関して、共振器リブ160および162の部分172および174ならびに部分176および178それぞれの長さに沿って非対称に配置されている。特に、共振器リブ160および162は、点線180によって示されたそれらの間の間隔に関して、互いに対して非対称であり、したがって、
図2の例に示したように対称的に配置されるのとは対照的に、互いに対してずらされて示されている。
図4の例では、第1および第2の共振器リブ160および162は、部分172、174、176および178のうちの所定の1つの部分の長さの約4分の1だけずらされている。しかしながら、他のずらした配置が可能である(例えば、部分172、174、176および178のうちの所定の1つの部分の半分の長さ)。
【0029】
部分172、174、176および178の配置は、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKの相互誘導結合が実質的に軽減されるようにすることができる。例えば、特許出願第15/81,6518号に記載されているように、それぞれのクロック信号I_CLKおよびQ_CLKから提供されるそれぞれの共振器リブ160および162における電流は、それぞれの共振器スパイン152、154、156および158への結合部において最小の振幅を有し、振幅は、それぞれの共振器リブ160および162のそれぞれの接地された部分に向かって増大している。したがって、部分172、174、176および178のうちの所定の1つの部分における電流振幅は、屈曲部に最も近いところで最大である。共振器リブ160および162をずらすことにより、部分172および174の最大電流振幅は、部分176および178の最大電流振幅に対して近くならない。したがって、クロック信号I_CLKとQ_CLKとの間の相互インダクタンスは、共振器システム150に設けられた共振器リブ160および162の配置に基づいて実質的に軽減することができる。その結果、
図4の例では、部分160および162は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
図4の例における共振器システム150は、同様に、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKの相互誘導結合をさらに軽減するために、
図3の例で説明したのと同様の接地されたクロスバー導体を含むことができることも理解されたい。
【0030】
図5は、共振器システム200の一例を示している。共振器システム200は、
図1の例における共振器システム12のうちの1つに対応することができる。したがって、以下の
図5の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0031】
図5の例では、共振器システム200は、第1の共振器スパイン202、第2の共振器スパイン204および第3の共振器スパイン206を含む。
図5の例では、第1の共振器スパイン202は、
図5の例において同相クロック信号I_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第2および第3の共振器スパイン204および206は各々、
図5の例において直交位相クロック信号Q_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。一例として、第2および第3の共振器スパイン204および206は各々、導電的に結合させられることができるか、または(例えば、別々のクロックソースからの)別々の位相ロックされた第1のクロック信号を提供することができる。
【0032】
共振器システム200はまた、共振器スパイン202、204および206の各々に導電的に結合された共振器リブ208を含む。共振器リブ208は、複数の平行部分を提供するように複数の屈曲部を含む。第1の共振器スパイン202は、共振器リブ208の長さに沿ったほぼ中央または中点に結合されたものとして
図5の例に示されており、第2および第3の共振器スパイン204および206の各々は、共振器リブ208のそれぞれの反対側の端部に結合されている。さらに、接地接続部は、第1の共振器スパイン202の導電的結合部と、それぞれの第2および第3の共振器スパイン204および206との間のほぼ等距離の位置において、共振器リブ208に結合されている。したがって、共振器リブ208への結合部に関する共振器スパイン202、204および206の配置に基づいて、クロック信号I_CLKは、共振器スパイン202から共振器リブ208に沿って各接地接続部へ伝搬し、クロック信号Q_CLKは、共振器スパイン204および206から共振器リブ208に沿ってそれぞれの接地接続部へ伝搬する。
【0033】
さらに、共振器システム200は、共振器リブ208のそれぞれの部分212および214の近くに、これらの部分212および214に対して平行に配置されたDCクロスバー導体210を含む。DCクロスバー導体210は、DCクロスバー導体210の長さに沿ってDC電流IDCを伝搬するように構成することができる。結果として、共振器リブ208への結合部に関する共振器スパイン202、204および206の配置に基づいて、また部分212および210におけるクロック信号I_CLKおよびQ_CLKに関連した電流の誘導結合に基づいて、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKの間の相互インダクタンスを実質的に軽減することができる。その結果、
図5の例では、部分212および214ならびにDCクロスバー導体210は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
図5の例における共振器システム200は、同様に、共振器スパインが反転させられている(例えば、クロック信号I_CLKが追加の共振器リブの端部に提供され、クロック信号Q_CLKが追加の共振器リブのほぼ中点に提供される)ことなどによって、共振器リブ208と実質的に同様に構成された、DCクロスバー導体210の反対側に配置された別の共振器リブを含むことができることも理解されたい。
【0034】
クロック信号I_CLKとQ_CLKの間の結合を軽減することの説明はこれまで、クロック信号I_CLKとQ_CLKの間の相互誘導結合を軽減することに関して記述されてきた。しかしながら、容量結合などの他のタイプの結合も、ここで説明されている技術を使用して同様に軽減することができる。一例として、容量結合は、それぞれのクロック信号I_CLKおよびQ_CLKを伝送する導体のクロスオーバーから発生する可能性がある。本明細書において説明するように、「クロスオーバー」は、1つの導体(例えば、共振器リブまたは共振器スパイン)が、ほぼ直交するなど、別の導体(例えば、共振器リブまたは共振器スパイン)の上または下を横切っており、2つの導体が、それぞれ第1および第2のクロック信号I_CLKおよびQ_CLKを伝搬する場合を表す。
【0035】
図6は、共振器システム250の一例を示している。共振器システム250は、
図1の例における共振器システム12の1つに対応することができる。したがって、以下の
図6の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0036】
図6の例では、共振器システム250は、第1の共振器スパイン252および第2の共振器スパイン254を含む。
図6の例では、第1の共振器スパイン252は、
図6の例において同相クロック信号I_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第2の共振器スパイン254は、
図6の例において直交位相クロック信号Q_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。
図6の例では、共振器スパイン252および254は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されている。共振器システム250はまた、各々が第1の共振器スパイン252に導電的に結合された第1の共振器リブ256および第2の共振器リブ258と、各々が第2の共振器スパイン254に導電的に結合された第3の共振器リブ260および第4の共振器リブ262とを含む。
【0037】
第1および第2のクロック信号I_CLKおよびQ_CLKをそれぞれICチップなどにおける回路の様々な部分に分配するために、共振器リブ256、258、260および262は、それぞれの共振器スパイン252および254から直交して両方向に延びていることができる。結果として、
図6の例では、第1および第2の共振器リブ256および258は、クロスオーバー264で示されたように、第2の共振器スパイン254の下を通過するものとして示されており、第3および第4の共振器リブ260および262は、クロスオーバー266で示されたように、第1の共振器スパイン252の下を通過するものとして示されている。
図6の例は、共振器リブ256、258、260および262がそれぞれの共振器スパイン252および254の下(例えば、背後)を通過していることを示しているが、共振器リブ256、258、260および262のうちの1つまたは複数が、それぞれの共振器スパイン252および254の上を(例えば、その前方を)通過することができることが理解されるべきである。
【0038】
クロスオーバー264および266のそれぞれにおいて、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKは、互いに対して容量結合する可能性がある。このような容量結合により、それぞれのクロック信号I_CLKおよびQ_CLKにエラーが発生する可能性がある。したがって、以下の例は、本明細書においてより詳細に説明されているように、クロック信号I_CLKとQ_CLKとの間の容量結合を軽減するために実行することができる。
【0039】
図7は、集積回路(IC)チップ300の一例を示している。ICチップ300は、従来のまたは量子計算コンポーネントを有するように製造された様々なICチップのいずれかに対応することができる。本明細書に記載の例のいずれも、
図7の例に記載のICチップ300などのICチップ上で実行することができる。したがって、
図1の例における共振器システム10は、ICチップ300として、またはICチップ300の一部として製造することができる。ICチップ300は、ICチップ300の複数の層を示す縦断面図として概略的に示されている。ICチップ300の層は、必ずしも一定の縮尺ではないものとして示されており、層は、説明を容易にするために誇張された形式で空間的にずらされて示されている。
【0040】
ICチップ300は、基板302を含み、基板302上には追加の層が製造されており、また、複数のN個の論理層304を含み、ここで、Nは正の整数である。論理層304は、相互接続する信号伝達導体およびデジタルまたは量子ゲートを含む様々な層のいずれかを含むことができる。ICチップ302はまた、接地面306、クロック層308および変圧器層310を含む。一例として、接地面306は、論理層304とクロック層308との間に挿入された接地された導体に対応することができ、接地接続部を提供するために、クロック層308および/または論理層304へ上または下へ延びることができるビアおよび/またはビア壁を有することができる。クロック層308は、共振器リブおよびスパインを含む、本明細書に記載の共振器システムを含むことができる。変圧器層310は、特許出願第15/816,518号に記載されているものと同様に、共振器リブに誘導結合された導体を含むことができ、これらの導体には、クロック電流を受け取る関連する回路が結合されている。
【0041】
図7の例では、ICチップ300はクロスオーバー接続部312を含み、このクロスオーバー接続部312は、クロック層308から接地面306を通って延び、接地面306の、クロック層308とは反対側に沿って横方向に延び、そして再び接地面306を通ってクロック層308へ戻る。したがって、クロスオーバー接続部312は、別の共振器リブまたは共振器スパインの上(または下)を横切る共振器スパインまたは共振器リブの部分に対応することができる。したがって、クロスオーバー接続部312は、
図6の例におけるクロスオーバー264および/または266に対応することができる。クロスオーバー接続部312はクロック層308に対して接地面306の下に延びているので、接地面306は、クロスオーバー接続部312上を伝搬する第1および第2のクロック信号の一方を、それぞれのクロスオーバー接続部312によってバイパスされた(クロスオーバーされた)、クロック層308における導体上を伝搬する第1および第2のクロック信号のうちの他方に対して、隔離することができる。したがって、接地面306によって提供される絶縁に基づいて、クロスオーバー接続部312および接地面306の配置は、クロック信号I_CLKとQ_CLKとの間の容量結合を軽減することができる。その結果、
図7の例では、クロスオーバー接続部312および接地面306は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
【0042】
図8は、共振器システム350の一例を示している。共振器システム350は、
図1の例における共振器システム12の1つに対応することができる。したがって、以下の
図8の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0043】
図8の例では、共振器システム350は、第1の共振器スパイン352および第2の共振器スパイン354を含む。
図8の例では、第1の共振器スパイン352は、
図8の例において同相クロック信号I_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第2の共振器スパイン354は、
図8の例において直交位相クロック信号Q_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。
図8の例では、共振器スパイン352および354は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されている。共振器システム350はまた、第1の共振器スパイン352に導電的に結合された第1の共振器リブ356、および第2の共振器スパイン354に導電的に結合された第2の共振器リブ358を含む。
図8の例では、共振器スパイン352および354ならびに共振器リブ356および358は、
図2~
図6の他の例と比べて誇張された厚さを有するものとして示されている。
【0044】
図8の例では、第1および第2の共振器スパイン352および354の厚さは、それぞれの第1および第2の共振器リブ356および358とのクロスオーバーの領域において減少している。
図8の例では、第1の共振器スパイン352と第2の共振器リブ358とのクロスオーバーが360で示されており、第2の共振器スパイン354と第1の共振器リブ356とのクロスオーバーが362で示されている。クロスオーバー360および362を超えると、それぞれの共振器スパイン352および354は、それぞれのクロスオーバー360および362の前のそれぞれの部分の厚さに戻るなど、厚さが増大している。同様に、第1および第2の共振器リブ356および358の厚さは、それぞれのクロスオーバー362および360において減少している。クロスオーバー362および360を超えると、それぞれの共振器リブ356および358は、それぞれのクロスオーバー362および360の前のそれぞれの部分の厚さに戻るなど、厚さが増大している。
図8の例では、クロスオーバー360は、第1の共振器スパイン352の下を横切る第2の共振器リブ358として示され、クロスオーバー362は、第2の共振器スパイン354の上を横切る第1の共振器リブ356として示されている。しかしながら、クロスオーバーの形式は任意であり、例として
図8の例に提供されていることを理解されたい。
【0045】
したがって、クロスオーバー360および362における共振器スパイン352および354ならびに共振器リブ356および358の厚さの減少は、クロック信号I_CLKとQ_CLKとの間の容量結合を軽減することができる。例えば、共振器スパイン352および354ならびに共振器リブ356および358の厚さが減少することにより、それぞれの共振器スパイン352および354ならびに共振器リブ356および358の互いにクロスオーバーする面積が減少し、したがって、共振器リブ356および358と比較して、共振器スパイン352および354の間の容量結合に関連した静電容量を低減する。その結果、静電容量が減少すると、クロック信号I_CLKとQ_CLKの間の容量結合を軽減することができる。したがって、それぞれのクロスオーバー360および362における共振器スパイン352および354ならびに共振器リブ356および358の減少した厚さの部分は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
【0046】
さらに、共振器システム350は、第1のビア壁延長部364および第2のビア壁延長部366をさらに含む。一例として、第1および第2のビア壁延長部364および366は、接地面層(例えば、接地面306)から延びていることができる。
図8の例では、第1のビア壁長部364は、クロスオーバー362を含む共振器リブ356の一部分に沿って横方向に延びており、第2のビア壁延長部366は、クロスオーバー360を含む共振器リブ358の一部分に沿って横方向に延びている。ビア壁延長部364および366は、(例えば、接地面306からの延長に基づいて)接地することができ、したがって、それぞれのクロスオーバー360および362の追加の隔離を提供することができる。結果として、ビア壁延長部364および366によって提供される絶縁は、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKの間の容量結合の軽減をもたらすことができる。ビア壁延長部364および366は、クロスオーバー360および362の背後に示されているが、ビア壁延長部364および366は、代わりに、クロスオーバー360および362の手前に配置することができ、またはそれぞれのクロスオーバー360および362において共振器スパイン352および354と共振器リブ356および358との間に延びていることができる。したがって、ビア壁延長部364および366も、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
【0047】
図9は、共振器システム400の一例を示している。共振器システム400は、
図1の例における共振器システム12のうちの1つに対応することができる。したがって、以下の
図9の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0048】
図9の例では、共振器システム400は、第1の共振器スパイン402、第2の共振器スパイン404、第3の共振器スパイン406および第4の共振器スパイン408を含む。
図9の例では、第1の共振器スパイン402は、
図9の例において第1の同相クロック信号I+_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第2の共振器スパイン404は、
図9の例において第2の同相クロック信号I-_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。第1および第2の同相クロック信号I+_CLKおよびI-_CLKは、同じクロック信号(例えば、同相クロック信号I_CLK)の反対の極性に対応することができる。同様に、第3の共振器スパイン406は、
図9の例において第1の直交位相クロック信号Q+_CLKとして示された第3のクロック信号を伝搬し、第4の共振器スパイン408は、
図9の例において第2の直交位相クロック信号Q-_CLKとして示された第4のクロック信号を伝搬する。第1および第2の直交位相クロック信号Q+_CLKおよびQ-_CLKは、同じクロック信号(例えば、直交位相クロック信号Q_CLK)の反対の極性に対応することができる。例として、それぞれのクロック信号の反対の極性、すなわち、第1および第2の同相クロック信号I+_CLKおよびI_CLKならびにそれぞれの第1および第2の直交位相クロック信号Q+_CLKおよびQ_CLKは、互いに対する180°の位相シフトに基づくことができる。別の例として、第1および第2の同相クロック信号I+_CLKおよびI-_CLKならびに第1および第2の直交位相クロック信号Q+_CLKおよびQ-_CLKのタイミング動作は、互いに対する誘導結合線の交替する誘導結合極性に基づくなど、実質的に同じであり得る。
図9の例では、共振器スパイン402および404の対は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されており、共振器スパイン406および408の対は、互いに近くにかつ互いに平行に配置されている。共振器システム400はまた、第1の共振器スパイン402に導電的に結合された第1の共振器リブ410、第3の共振器スパイン406に導電的に結合された第2の共振器リブ412、第2の共振器スパイン404に導電的に結合された第3の共振器リブ414、および第4の共振器スパイン408に導電的に結合された第4の共振器リブ416を含む。
【0049】
第1および第2のクロック信号I_CLKおよびQ_CLKをそれぞれ、ICチップ内などの回路の様々な部分に分配するために、共振器リブ410、412、414および416は、それぞれの共振器スパイン402、404、406および408から直交して両方向に延びていることができる。結果として、
図9の例では、第1の共振器リブ410は、クロスオーバー418に示されているように、第3および第4の共振器スパイン406および408の下を通過するものとして示されており、第2の共振器リブ412は、クロスオーバー420に示されているように、第1および第2の共振器スパイン402および404の下を通過するものとして示されている。同様に、第3の共振器リブ414は、クロスオーバー422に示されているように、第3および第4の共振器スパイン406および408の下を通過するものとして示されており、第4の共振器リブ416は、クロスオーバー424に示されているように、第1および第2の共振器スパイン402および404の下を通過するものとして示されている。
図9の例は、共振器リブ410、412、414および416が、それぞれの共振器スパイン402、404、406および408の下(例えば、背後)を通過することを示しているが、共振器リブ410、412、414および416のうちの1つまたは複数は、それぞれの共振器スパイン402、404、406および408の上(例えば、手前)を通過することができることを理解されたい。
【0050】
図6の例において前述したように、各クロスオーバー418、420、422および424において、クロック信号I_CLKおよびQ_CLKは、互いに対して容量結合される可能性がある。しかしながら、共振器リブ410および414のうちの所定の一方が両方の共振器スパイン406および408上を横切っているので、第3の共振器スパイン406からの第1の直交位相クロック信号Q+_CLKによって提供される容量結合の寄与は同様に、第4の共振器スパイン408からの第2の直交位相クロック信号Q-_CLKによって、ほぼ等しくかつ反対に提供される。同様に、共振器リブ412および416のうちの所定の一方が共振器スパイン402および404の両方の上を横切っているので、第1の共振器スパイン402からの第1の同相クロック信号I+_CLKによって提供される容量結合の寄与は同様に、第2の共振器スパイン404からの第2の同相クロック信号I-_CLKによって、ほぼ等しくかつ反対に提供される。したがって、クロスオーバー418、420、422および424のうちの所定の1つにおいて共振器スパイン402、404、406および408のうちの所定の1つによって提供される容量結合は、相補的なクロック信号に関連したクロスオーバー418、420、422および424のうちの他のクロスオーバーにおいて、相補的なクロック信号によって提供される反対の容量結合によって実質的にネゲートされる(例えば、打ち消される)。その結果、それぞれのクロスオーバーにおける相補的な容量結合により、クロック信号I_CLKとQ_CLKの間の容量結合を軽減することができる。したがって、共振器スパイン402、404、406および408に対する相補的なクロック信号の配置は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
【0051】
さらに、共振器システム400は、クロック信号I_CLKとQ_CLKとの間の誘導結合を実質的に軽減するように構成することができる。
図9の例では、共振器リブ410および414において提供される電流は、ほぼゼロである共振器リブ412への正味誘導結合を提供するために、ほぼ等しくかつ反対の形式で共振器リブ412に(例えば、相互インダクタンスを介して)誘導結合する。同様に、共振器リブ412および416は、ほぼ等しくかつ反対の形式で共振器リブ414に結合する。したがって、この構造は、IシステムとQシステムとの間の誘導結合および容量結合の両方を打ち消す。)
【0052】
図10は、共振器システム450の一例を示している。共振器システム450は、
図1の例における共振器システム12の1つに対応することができる。したがって、以下の
図10の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0053】
図10の例では、共振器システム450は、第1の共振器スパイン452、第2の共振器スパイン454、第3の共振器スパイン456および第4の共振器スパイン458を含む。
図10の例では、第1の共振器スパイン452は、
図10の例において第1の同相クロック信号I+_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第2の共振器スパイン454は、
図10の例において第2の同相クロック信号I-_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。同様に、第3の共振器スパイン456は、
図10の例において第1の直交位相クロック信号Q+_CLKとして示された第3のクロック信号を伝搬し、第4の共振器スパイン458は、
図10の例において第2の直交位相クロック信号Q-_CLKとして示された第4のクロック信号を伝搬する。前述のように、第1および第2の同相クロック信号I+_CLKおよびI_CLKは、同じクロック信号(たとえば、同相クロック信号I_CLK)の反対の極性に対応することができ、第1および第2の直交位相クロック信号Q+_CLKおよびQ-_CLKは、同じクロック信号(例えば、直交位相クロック信号Q_CLK)の反対の極性に対応することができる。
【0054】
さらに、共振器システム450は、第5の共振器スパイン460、第6の共振器スパイン462、第7の共振器スパイン464および第8の共振器スパイン466を含む。
図10の例では、第5の共振器スパイン460は、第1の同相クロック信号I+_CLKを伝搬し、第6の共振器スパイン462は、第2の同相クロック信号I-_CLKを伝搬する。同様に、第7の共振器スパイン464は、第1の直交位相クロック信号Q+_CLKを伝搬し、第8の共振器スパイン466は、第2の直交位相クロック信号Q-_CLKを伝搬する。
図10の例では、共振器スパイン460、462、464および466は、共振器スパイン452、454、456および458に対して直交して配置されている。
【0055】
図10の例では、共振器スパイン452と454、456と458、460と462、および464と466のそれぞれの対が、互いに近くにかつ互いに平行に配置されている。共振器システム450はまた、第1の共振器スパイン452に導電的に結合された第1の共振器リブ468、第3の共振器スパイン456に導電的に結合された第2の共振器リブ470、第2の共振器スパイン454に導電的に結合された第3の共振器リブ472、および第4の共振器スパイン458に導電的に結合された第4の共振器リブ474を含む。同様に、共振器システム450はまた、第5の共振器スパイン460に導電的に結合された第5の共振器リブ476、第6の共振器スパイン462に導電的に結合された第6の共振器リブ478、第7の共振器スパイン464に導電的に結合された第7の共振器リブ480、および第8の共振器スパイン484に導電的に結合された第4の共振器リブ482を含む。
【0056】
前述のように、第1および第2のクロック信号I_CLKおよびQ_CLKをそれぞれ、ICチップ内などの回路の様々な部分に分配するために、共振器リブは、それぞれの共振器スパインから直交して両方向に延びていることができる。
図10の例では、共振器リブ468、470、472および474は、
図9の前述の例における共振器スパインに対する共振器リブのクロスオーバーと同様に、共振器リブ476、478、482および484上を直交して横切るものとして示されている。結果として、共振器リブ468、470、472および474ならびに共振器リブ476、478、482および484に関して第1の同相クロック信号I+_CLKによって提供される容量結合の寄与は同様に、第2の同相クロック信号I-_CLKによってほぼ等しくかつ反対に提供される。同様に、共振器リブ468、470、472および474および共振器リブ476、478、482および484に関して第1の直交位相クロック信号Q+_CLKによって提供される容量結合の寄与は同様に、第2の同相クロック信号Q-_CLKによってほぼ等しくかつ反対に提供される。したがって、所定のクロスオーバーにおいて共振器リブ468、470、472および474のうちの所定の1つまたは共振器リブ476、478、482および484のうちの所定の1つによって提供される容量結合は、相補的なクロック信号に関連した他のそれぞれのクロスオーバーにおける相補的なクロック信号によって提供される反対の容量結合によって実質的にネゲートされる(例えば、打ち消される)。その結果、それぞれのクロスオーバーにおける相補的な容量結合により、クロック信号I_CLKとQ_CLKの間の容量結合を軽減することができる。したがって、共振器リブ468、470、472および474ならびに共振器リブ476、478、482および484に関する相補的クロック信号の配置は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
【0057】
図11は、共振器システム500の一例を示している。共振器システム500は、
図1の例の共振器システム12の1つに対応することができる。したがって、以下の
図11の例の説明では、
図1の例を参照する必要がある。
【0058】
図11の例では、共振器システム500は、第1の共振器スパイン501、第2の共振器スパイン502、第3の共振器スパイン503および第4の共振器スパイン504を含む。
図11の例では、第1および第3の共振器スパイン501および503の各々は、
図11の例において同相クロック信号I_CLKとして示された第1のクロック信号を伝搬し、第2および第4の共振器スパイン502および504の各々は、
図11の例において直交位相クロック信号Q_CLKとして示された第2のクロック信号を伝搬する。共振器システム500はまた、複数のクロスバーを含む。
図11の例では、共振器システム500は、第1および第3の共振器スパイン501および503に導電的に結合された第1のクロスバー506と、第2および第4の共振器スパイン502および504に導電的に結合された第2のクロスバー508と、やはり第1および第3の共振器スパイン501および503に導電的に結合された第3のクロスバー510とを含む。共振器システム500は、第1と第3の共振器スパイン501と503の間、および第2と第4の共振器スパイン502と504の間の導電性結合を交互に行う追加のクロスバーを含むことができることを理解されたい。
【0059】
共振器システム500は、クロスバー506、508および510に導電的に結合された共振器リブを含み、クロスバーは、共振器リブと、共振器スパイン501、502、503および504とを相互接続している。
図11の例では、共振器システム500は、第1のクロスバー506の第1の側に導電的に結合され、したがって同相クロック信号I_CLKを伝搬する共振器リブ512および514の第1の対を含む。共振器リブ512および514の第1の対もそれぞれ、時計回りにらせん状に曲がった屈曲部を有するものとして示されている。共振器システム500はまた、第1のクロスバー506の第2の側に導電的に結合され、したがって同様に同相クロック信号I_CLKを伝搬する共振器リブ516および518の第2の対を含む。共振器リブ516および518の第2の対もまた、時計回りにらせん状に曲がった屈曲部を有するものとしてそれぞれ示されている。
【0060】
図11の例では、共振器システム500はまた、第2のクロスバー508の第1の側に導電的に結合され、したがって直交位相クロック信号Q_CLKを伝搬する共振器リブ520および522の第3の対を含む。共振器リブ520および522の第3の対はそれぞれ、時計回りにらせん状に曲がった屈曲部を有するものとして示されている。共振器システム500はまた、第2のクロスバー508の第2の側に導電的に結合され、したがって同様に直交位相クロック信号Q_CLKを伝搬する共振器リブ524および526の第4の対を含む。共振器リブ524および526の第4の対はそれぞれ、反時計回りにらせん状に曲がった屈曲部を有するものとして示されている。
【0061】
共振器システム500は、第3のクロスバー510の第1の側に導電的に結合され、したがって同相クロック信号I_CLKを伝搬する共振器リブ528および530の第5の対をさらに含む。共振器リブ528および530の第5の対はそれぞれ、時計回りにらせん状に曲がった屈曲部を有するものとして示されている。共振器システム500はまた、第3のクロスバー510の第2の側に導電的に結合され、したがって同様に同相クロック信号I_CLKを伝搬する共振器リブ532および534の第6の対を含む。共振器リブ532および534の第6の対もまた、時計回りにらせん状に曲がった屈曲部を有するものとしてそれぞれ示されている。
【0062】
したがって、
図11の例に示されるように、共振器システム500は、それぞれのクロスバー506、508および510の間の共振器リブの対によって形成された列として配置されている。
図11の例は、第1および第2のクロスバー506および508の間の第1の列536と、第2および第3のクロスバー508および510の間の第2の列538とを示している。
図11の例によって示されるように、各列における共振器リブの向きは、それぞれのクロスバーに結合された共振器リブの対に関して、同じ向きと交互の向きとの間で交互になっている。
【0063】
例えば、第1の列536は、共振器リブ516および518の第2の対および共振器リブ520および522の第3の対が互いに同じ向きを有し、したがって、同位相クロック信号I_CLKと直交位相クロック信号Q_CLKとの間の正味で負の相互誘導結合を提供する。しかしながら、第2の列538は、共振器リブ524および526の第4の対および共振器リブ528および530の第5の対が互いに反対の向きを有し、したがって、同位相クロック信号I_CLKと直交位相クロック信号Q_CLKとの間の正味で正の相互誘導結合を提供する。結果として、第1の列536と第2の列538との間の相互誘導結合への寄与は、ほぼ等しくかつ反対であることができ、したがって、ほぼゼロである第1および第2の行536および538の間の正味の相互誘導結合を提供する。したがって、クロスバーの間のそれぞれの連続する列の同じ向きと反対の向きとを交互にすることにより、同相クロック信号I_CLKと直交位相クロック信号Q_CLKとの間の相互インダクタンスを実質的にネゲートすることができる。共振器システム500は、
図11の例に示されているのと同様に、複数の追加のクロスバーの間に複数の追加の列を含むことができることを理解されたい。
【0064】
さらに、クロスバー506、508および510を、共振器リブと共振器スパイン501、502、503および504との間のクロスオーバーの数を実質的に低減させるように実施することができる。例えば、共振器システム500におけるクロスオーバーの数を共振器リブが共振器スパイン501、502、503および504に直接結合された共振器システムと比較して3分の1に低減させる。その結果、同相クロック信号I_CLKと直交位相クロック信号Q_CLKとの間の容量結合も実質的に軽減することができる。さらに、
図11の例では、共振器システム500は、第1および第2の共振器スパイン501および502と、第3および第4の共振器スパイン503および504とのそれぞれの対を相互接続するインダクタL
1およびL
2を含む。したがって、共振器スパイン501および503および共振器スパイン502および504にそれぞれ提供されているように、同相クロック信号I_CLKおよび直交位相クロック信号Q_CLK各々の間にインダクタンスを実行することによって、同相クロック信号I_CLKおよび直交位相クロック信号Q_CLKの90°の相対位相に基づいて、同相クロック信号I_CLKと直交位相クロック信号Q_CLKとの間の容量結合は、クロックシステムの動作周波数におけるIとQと間の容量結合を打ち消すインダクタンス値を選択することによってさらに軽減することができる。インダクタは、適切な長さおよびインピーダンスの伝送線セグメントとして実施することができる。したがって、
図11の例では、共振器リブの列536および538の交互の向き、クロスバー506、508および510、ならびにインダクタL
1およびL
2の配置は、
図1の例における絶縁素子24に対応することができる。
【0065】
上述したのは、本発明の実施例である。もちろん、本発明を説明する目的で構成要素または方法論の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む、本出願の範囲内に入るそのようなすべての変更、修正、および変形を包含することが意図されている。さらに、開示または特許請求の範囲で、「a」、「an」、「第1」、または「別の」要素、またはそれらと同等のものが挙げられる場合、それは、1つ以上のそのような要素を含むと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必要とするものでも、排除するものでもない。本明細書で使用する場合、「含む(includes)」という用語は、限定することなく含むことを意味し、「含む(including)」という用語は、限定することなく含むことを意味する。「に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。