(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20221129BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20221129BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20221129BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H05K3/34 501B
H05K1/02 C
(21)【出願番号】P 2020571985
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2019005323
(87)【国際公開番号】W WO2020166000
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨山 清隆
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 宏義
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/216411(WO,A1)
【文献】特開2015-006015(JP,A)
【文献】特開2017-157606(JP,A)
【文献】実開昭61-020080(JP,U)
【文献】特開2011-100912(JP,A)
【文献】特開2007-317806(JP,A)
【文献】特開平11-068281(JP,A)
【文献】実開昭53-023548(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H05K 3/34
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を有するパワーモジュールと、
前記端子が挿入されるスルーホールを有するパワーモジュール実装基板とを有する電力変換装置であって、
前記パワーモジュール実装基板は、
内部と外部に配置された配線パターンと、
前記配線パターンの間を絶縁する絶縁層と、
はんだを蓄えたはんだ溜まりとを有
し、
前記パワーモジュール実装基板は、プリント基板であって、
前記プリント基板のはんだ付けをする側の表面に、
前記はんだ溜まりを支持する段差構成物を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
端子を有するパワーモジュールと、
前記端子が挿入されるスルーホールを有するパワーモジュール実装基板とを有する電力変換装置であって、
前記パワーモジュール実装基板は、
内部と外部に配置された配線パターンと、
前記配線パターンの間を絶縁する絶縁層と、
はんだを蓄えたはんだ溜まりとを有
し、
前記パワーモジュール実装基板は、
ビアを有するプリント基板であって、
前記ビアは、前記はんだ溜まりと接しており、
前記ビア内は、前記はんだが充填されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュールは、順変換器もしくは逆変換器を有するか、順変換器と逆変換器の両方を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュール実装基板は、
前記はんだ溜まりには、前記端子が貫通しており、
前記はんだにより、前記端子と前記スルーホールの内面における導電体とが接合されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュール実装基板は、プリント基板であって、
前記はんだ溜まりは、前記プリント基板の内層配線まで達していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュール実装基板は、プリント基板であって、
前記はんだ溜まりは、前記プリント基板のコア層まで達していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュール実装基板は、
制御回路とドライブ回路とデジタル操作パネルを実装したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュールは、放熱フィンに固定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュール実装基板の一方の表面に前記はんだ溜まりが配置されており、
前記パワーモジュール実装基板の他方の表面に対向して、前記パワーモジュールが配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記スルーホール内のはんだの充填高さは、
前記スルーホールの長さの75パーセント以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項
4に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュール実装基板は、部品パッドを有するプリント基板であって、
前記はんだにより、前記部品パッドと前記端子とが接合されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記パワーモジュール実装基板は、
ソルダレジストとシルクを有することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールと接続したパワーモジュール実装基板を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部接続端子を、配線基板のスルーホールに挿入し、溶融したはんだで外部接続端子を接合する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1は、コネクタなどの外部接続端子をスルーホールに挿入し、はんだ付けする際に、ランド間の距離を規定することで、はんだブリッジを抑制する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、はんだブリッジを抑制し、はんだ接続信頼性の高いランド構造を開示しているが、はんだ付け方法は、溶融したはんだ槽内にはんだを噴流させ、噴流させた溶融はんだに配線基板を浸漬させるフローはんだ付け方法を利用している。
【0005】
電力変換装置においては、大電流を流す経路には、端子と金属バーのネジ留などの接続技術が用いられ、パワーモジュールなど大電流部品では端子とプリント基板とをはんだ接合する構成となっている。また、パワーモジュールは、熱容量が大きいので、プリント基板などの多層基板には、実装しにくく、プリント基板とは別に実装することになる。パワーモジュールの端子を別部品のプリント基板のスルーホール内で、はんだ付けするには、上記のフローはんだ付け方法では作業は困難である。
【0006】
パワーモジュールなど大電流部品の端子とプリント基板スルーホールの接続に、はんだ接合を採用する場合、スルーホール内での電気抵抗の上昇を防ぐために、スルーホール表面メッキと端子との間には最低でもスルーホール深さの75%以上はんだを充填する必要がある。その一方で、大電流の供給をロスなく行うためには、多層基板のベタ銅箔で基板内多層配線を行いつつ、複数のビアホールでそれらの多層配線を接続する必要がある。
【0007】
これは製品としては放熱の面で優れた構造といえる。しかし、はんだ接合という製造プロセスから見ると、スルーホールからベタ銅箔(多層配線)の放熱速度があまりにも速すぎるため、溶融はんだがスルーホールと端子との間に十分に充填される前に冷却され、スルーホールの途中で固まってしまう。その結果、大電流を流すための十分な接続が確保できず、回路動作の際に端子接合部の発熱や放熱の問題が生じかねない。
【0008】
また、十分なはんだ充填をする方法として、大型大熱容量のはんだ鏝の適用や長時間の加熱があるが、いずれも部品実装における作業性が悪く、プリント基板へ与える熱ダメージも大きい。
【0009】
本発明の目的は、パワーモジュールの端子が挿入されるスルーホールを有するパワーモジュール実装基板を有する電力変換装置の温度上昇を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい一例は、端子を有するパワーモジュールと、前記端子が挿入されるスルーホールを有するパワーモジュール実装基板とを有する電力変換装置であって、
前記パワーモジュール実装基板は、
内部と外部に配置された配線パターンと、前記配線パターンの間を絶縁する絶縁層と、はんだを蓄えたはんだ溜まりとを有する電力変換装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パワーモジュールの端子が挿入されるスルーホールを有するパワーモジュール実装基板を有した電力変換装置の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】プリント基板の製作から実装基板完成までのフロー。
【
図7】比較例のプリント基板を用いた場合を説明する図。
【
図8】実施例1における電力変換装置の回路構成を示す図。
【
図9】実施例1の電力変換装置を組立てる前の構成図である。
【
図10】実施例1の電力変換装置を組立て後の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
電力変換装置の構成例について、
図1から
図10を用いて説明する。
【0015】
図1は、実施例1の電力変換装置を説明するための図であり、具体的には、プリント基板1における部品パッド8とスルーホール7とパワーモジュール端子12とを、はんだ付けした状態である。部品を実装したプリント基板1は、ベアボードに電力変換装置の制御回路、ドライブ回路などの回路を実装し、パワーモジュール11と接続した構成である。
【0016】
プリント基板1は、銅箔2a、2bと、内面を銅めっき4で構成されたビア6と、スルーホール7と、はんだ溜り31と、銅箔をエッチングして形成した部品パッド8、図示しない配線パターンを構成する銅箔2a、2b間を絶縁する絶縁層3と、ソルダレジスト5と、シルク9とを有する。ここで、スルーホール7は、内面を銅めっき4で構成され、パワーモジュール11内の素子と接続したパワーモジュール端子12を貫通させる貫通孔である。はんだ溜り31は、スルーホール7を含めたエリアにザグリを入れて形成され、はんだ21を蓄える。
【0017】
スルーホール7は、プリント基板1の表裏に形成された部品パッド8や外部の配線パターン、及び内部の配線パターンを電気的に導通させる目的で設けている。
【0018】
はんだ溜り31は、プリント基板1の上部表面から第1層目の内層銅箔2bに到達する深さにすることで、はんだ21と内層銅箔2bの接続面積を増加させている。
【0019】
はんだ溜まり31には、パワーモジュール11に備えられたパワーモジュール端子12を貫通させており、はんだ溜まり31の底部と、スルーホール7とが繋がった構成である。また、スルーホール7内面の銅めっき4とパワーモジュール端子12の間にはんだが充填されることで、パワーモジュール端子12と銅箔2a、2bなどの配線とが電気的に導通させるとともに固定される。
【0020】
また、プリント基板がコア層を有する場合には、はんだ溜まり31の深さをコア層まで達する深さとすることで、スルーホールの長さがに対してはんだ充填深さを十分深くできる。そのためパワーモジュール端子12と配線との間の電気抵抗を低くでき、動作中の発熱を抑制しやすくなる。また、はんだ溜まりがコア層まで達することにより、多層の厚いプリント基板に対しても、上記と同様に、電気抵抗を低くでき、動作中の発熱を抑制しやすくなる。
【0021】
図4は、パワーモジュール実装基板81におけるプリント基板1(ベアボード)の製作工程(S40~S45)、及びプリント基板1への部品実装工程(S46)の流れを表したフローである。
【0022】
プリント基板1や、実装する部品などの基材を用意する基材投入工程(S40)が実行される。
【0023】
そして、
図5(a)に示すように、プリント基板に、スルーホール7や、ビア6といった穴あけ工程(S41)が実行される。
【0024】
そして、
図5(b)に示すように、はんだ溜り31を形成するザグリ工程(S42)が実行される。
【0025】
そして、
図5(c)に示すように、プリント基板1の表裏や、スルーホール7やビア6といった穴の内壁に銅めっき4を施す銅めっき工程(S43)が実行される。
【0026】
そして、
図5(d)に示すように、プリント基板表面の配線パターンや、部品パッド8をエッチングするエッチング工程(S44)が実行される。
【0027】
そして、
図5(e)に示すように、ソルダレジスト5を塗布するレジスト塗布工程およびシルクを印刷するレジスト・シルク印刷工程(S45)が実行される。
【0028】
そして、
図1、
図2、
図3の実施例に示されたように、はんだ鏝により、はんだを蓄えたはんだ溜まりにおいて局所的にはんだを加熱し溶融させて、スルーホール7内にはんだを充填させ、パワーモジュール端子12とスルーホール内面とを接合するはんだ付け工程(S46)が実行される。そして、パワーモジュール実装基板81が完成する(S47)。
【0029】
図5(a)~(e)を用いて、配線パターンである、銅箔2a、2bや部品パッド8を備えたプリント基板1の製作工程を説明する。
【0030】
基板投入工程では、プリント基板1は最初、表裏面全体に銅箔が張られた銅張板の状態であり、両面2層基板の場合は基材とも呼称される。多層プリント基板の場合はプリント基板1の内部に配線パターンが形成された内層が組み合わされている。
【0031】
穴あけ工程では、プリント基板1に層間接続を行うためのビア6、或いはパワーモジュール端子などの部品端子を取り付け用のスルーホール7を形成するために、
図5(a)に示したような穴あけ加工を行う。
【0032】
さらに、スルーホール7に充填するはんだを蓄えるはんだ溜り31が、内層銅箔2bに到達する深さになるように、
図5(b)に示したようなザグリ加工の工程を行う。
【0033】
銅めっき工程では、プリント基板表裏、或いは多層基板における内層との回路導通するために
図5(c)の様にスルーホール7やビア6といった穴の内壁に、導電体である銅めっき4を施す。
【0034】
エッチング工程では、プリント基板表面の配線パターンや、パワーモジュール端子などの部品端子と配線パターンとをはんだ接合するための部品パッド8は、プリント基板1の表裏に張られた銅箔をエッチングなどにより不要な銅箔を除去することで
図5(d)の様に形成する。
【0035】
レジスト塗布工程では、部品パッド8とパワーモジュール端子12とをはんだ付けで接合させる際に、部品パッド8以外の配線パターンに、はんだが付着することを阻止するために、
図5(e)の様に、ソルダレジスト5を塗布する。
【0036】
シルク印刷工程では、プリント基板の表面又は裏面に部品外形や部品記号等の部品に関する情報を、シルク9のようにプリント基板表面に印刷して表記する。このプリント基板1を用いて、はんだ21を用いて、スルーホール7の内面の導電体とパワーモジュール端子12の接合を行い、
図1に示した電力変換装置を製作する。
【0037】
ここで、本実施例を適用せずに製作したプリント基板1について説明する。
図6のプリント基板1は、
図5(e)とは、はんだ21を蓄えたはんだ溜り31が無い点で異なっている。このプリント基板1を用いて、パワーモジュール11とはんだ付けを行い、
図7に示す比較例であるパワーモジュール実装基板81が構成される。
【0038】
図7に示すように、スルーホールの長さがaのときのはんだ充填深さはbである。回路動作の際に端子部の発熱や放熱の問題を生じさせないためには、aに対してbが75%以上であることが必要である。プリント基板1のスルーホール7内面の銅めっき層と、パワーモジュール端子12をはんだ21で接合するには、はんだ鏝51やはんだ鏝51で溶融した初期の溶融はんだ21で、パワーモジュール端子12とスルーホール7を、はんだ浸透に必要なはんだ融点温度以上に温めなくてはならない。パワーモジュール端子12は、はんだ鏝51やはんだ鏝51で溶融した初期の溶融はんだ21の熱を温度のより低いパワーモジュール11に伝達する。
【0039】
また、はんだ鏝51やはんだ鏝51で溶融した初期の溶融はんだ21の熱は、スルーホール7を経由して、温度のより低い外層銅箔2aや内層銅箔2bに伝達する。このときパワーモジュール11が熱容量の大きな部品の場合や、スルーホール7がベタ銅箔に接続している場合、熱容量の大きな部品やベタ銅箔は、保温性が高いため、はんだ鏝51やはんだ鏝51で溶融した初期の溶融はんだ21の熱が、はんだ付け対象であるスルーホール7の遠方には伝達し難くなる。
【0040】
このため、パワーモジュール端子12とスルーホール7を接続するためのはんだ21が十分に浸透するのに必要なはんだ融点温度以上に温まらずスルーホール7内の途中ではんだ21が凝固する。その結果、大電流を流すための十分な接続(スルーホールの長さaのときのはんだ充填深さbが75%以上であること)が確保できず、端子部の発熱や放熱の問題が生じかねない。また、製造不良にもなる。
【0041】
そこで、本実施例ではベアボードの製作工程の
図5(b)において、はんだ付け対象のスルーホール7の周囲に内層銅箔2bに到達する深さのザグリを入れ、スルーホール7に充填したはんだを蓄えた、はんだ溜り31を設けるプリント基板1を構成する。
【0042】
次に、上記で説明したはんだ溜りを有するプリント基板について、各実施例にて説明する。
【0043】
図8は、実施例1における電力変換装置60の回路構成図である。
図8の電力変換装置60は、交流電動機64に電力を供給するための順変換器61、逆変換器62、平滑コンデンサ63、冷却ファン65、放熱フィン83、制御回路66、ドライブ回路67、デジタル操作パネル68、シャント抵抗69を備える。
図8では、入力電源として交流電源を用いた場合を示す。
【0044】
順変換器61は、交流電力を直流電力に変換する。平滑コンデンサ63は、直流中間回路に備えられ、順変換器61によって変換された直流電力を平滑にする。
【0045】
逆変換器62は、直流電力を任意の周波数の交流電力に変換する。逆変換器62の内部には温度保護検出回路が搭載されている。温度保護検出回路は、
図8の様なサーミスタ70を搭載して温度を検出するか、或いは逆変換器62内の半導体素子に温度感知用のセンシング機能を内蔵させるようにしてもよい。
【0046】
順変換器61と逆変換器62は、それぞれ順変換器モジュール61A、逆変換器モジュール62Aとして1パッケージ化することが一般的である。さらに順変換器モジュール61Aと逆変換器モジュール62Aを一体化しパワーモジュール11とすることも一般的であるが、パワーモジュール11に順変換器61と逆変換器62のいずれか一方を搭載するようにしてもよい。ここで、電力変換装置60は、電線や金属バー等の電気接合部品、或いはプリント基板を用いて
図8に示した回路の構成部品を電気的に接続して構成される。
【0047】
本実施例における電力変換装置60は、汎用インバータ、サーボアンプ、DCBLコントローラなどに電力変換装置として適用できる。
【0048】
図9は、実施例1のプリント基板やパワーモジュールなどを有した電力変換装置を組立てる前の構成図である。
図9では、
図8の冷却ファン65、交流電動機64、デジタル操作パネル68は省略している。
【0049】
パワーモジュール11は、取付け用ネジ84により放熱フィン83に固定される。パワーモジュール実装基板81は、組込み基板82を放熱フィン83に固定した後に、放熱フィンに固定するように組立てる。
【0050】
組込み基板82は、平滑コンデンサ63を実装した基板であり、パワーモジュール実装基板81は、ベアボード(プリント基板1)に、
図8の制御回路66、ドライブ回路67を実装した基板である。
【0051】
図10は、実施例1のパワーモジュール実装基板81、組込み基板82、パワーモジュール11と放熱フィン83を組立て後の構成図である。
図10は、
図9で説明した工程後の電力変換装置の構成図である。
【0052】
パワーモジュール11のパワーモジュール端子12は、パワーモジュール実装基板81の部品パッド8を貫通して挿入される。パワーモジュール端子12と部品パッド8は、はんだ付けにより電気的接続を行うが、フロー及びリフローはんだ付けでは製造することは困難であり、手はんだによるはんだ付けが必要となる。通常のフロー装置で、
図10のような電力変換装置を実装しようとすると、余熱時間は長く、余熱温度は高い条件でないとはんだ付けが安定しないといった製造上の課題が生じる。さらに、電力変換装置は、かなりの重量物でありフロー装置で流すことが困難である。
【0053】
また、
図9、
図10に示すように、パワーモジュール11の上にパワーモジュール実装基板81や組込み基板82を実装することで、それらの部品を平面に別々に配置する場合に比べて電力変換措置の面積を小さくすることができる。
【0054】
実施例1のプリント基板1のはんだ溜り31は、溶融はんだ21を充填し、溶融はんだ21と外層銅箔2a、内層銅箔2b、及びパワーモジュール端子12への接触面積と熱伝達性を増加させる。
【0055】
実施例1によれば、はんだ溜まりで得られる熱容量により、プリント基板1のはんだ付け面からの熱伝達の降下を抑制し、はんだ浸透に必要なはんだ融点温度以上を保持することを容易にする。そして、溶融はんだがスルーホールの充填に必要な時間だけ溶融状態を維持できるようになり、フローアップ不足(はんだ上がり不足)発生を回避することができる。
【0056】
また、実施例1によれば、大型で大熱容量のはんだ鏝を用いることや、長時間の加熱も不要であり作業性が向上する。また、実施例1では、はんだ溜り31の深さ分、スルーホール7の高さ方向にはんだを充填する高さが、比較例に比べて短くなり、はんだをスルーホール7内の隙間に十分に充填しやすくできる。
【0057】
また、はんだ溜り31内のはんだ21は、その体積に相応する熱容量を保有するため、回路動作の際には、はんだ溜まりで得られる熱容量は、回路の発熱を吸収・放熱し、プリント基板1の温度上昇を抑制する。
【実施例2】
【0058】
実施例2における電力変換装置について、
図2、
図7を用いて説明する。本実施例は、実施例1におけるプリント基板1の別構成例について説明するものである。従って実施例1と共通する部分についての説明は省略する。
【0059】
図2は、部品を実装したプリント基板1とパワーモジュール11の断面図である。本実施例では、はんだ鏝51などで局所的にはんだ付けをするプリント基板1のはんだ付け側表面に、段差構成物41を配置することで、はんだ溜り31を形成する。
【0060】
実施例2では、はんだ溜り31を形成するために、はんだ付け対象の部品パッド8、パワーモジュール端子12の周囲であって、プリント基板1のはんだ付け側表面に、段差構成物41を設ける。段差構成物41は、はんだ溜り31を形成するだけの十分な厚みをもち、溶融はんだ21がプリント基板1の横方向への広がりを防止する機能を果たす。
【0061】
段差構成物41は、前述の機能を果たせればよい。本実施例を適用せずに製作したプリント基板1を、
図7に示す。
図7のプリント基板1に対して段差構成物41を追加することではんだ溜り31を有するプリント基板1を提供できる。また、
図7の説明にあるソルダレジスト5とシルク9に、はんだ溜り31を構成できる十分な厚みを与えることでも、はんだ溜り31を有するプリント基板1を提供できる。
【実施例3】
【0062】
実施例3における電力変換装置について、
図3を用いて説明する。実施例3は、実施例1におけるプリント基板1のはんだ溜り31に、ビア6を内在させる例について説明するものである。実施例1と共通する部分についての説明は省略する。
【0063】
図3は、部品を実装したプリント基板1とパワーモジュール11の断面図である。
本実施例では、はんだ溜り31と接してビア6を設ける。このビア6は、ビア6と接続された内層銅箔2b、及びプリント基板1のはんだ付け側裏面の外層銅箔2aへ、はんだ溜り31に充填された溶融はんだ21の熱を伝達する。
【0064】
これにより、スルーホール7のプリント基板1のはんだ付け面からの熱伝達を側面から温める機能をもつ。また、回路動作の際には、はんだ溜まりで得られる熱容量による熱吸収、及び放熱経路を分散させる機能をもち、プリント基板1の温度上昇抑制を、さらに高めることが出来る。
【0065】
図1、
図2、
図3、
図5では、多層基板で説明しているが、2層(両面)基板においても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1…プリント基板、
6…ビア、
7…スルーホール、
11…パワーモジュール、
12…パワーモジュール端子、
31…はんだ溜まり、
41…段差構成物、
81…パワーモジュール実装基板、
82…組込み基板