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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】トルク検出センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
G01L3/10 301J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021023127
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125511
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 顕秀
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩行
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200138(JP,A)
【文献】特開2019-203744(JP,A)
【文献】特開2019-211334(JP,A)
【文献】特開2016-200552(JP,A)
【文献】特開2020-201135(JP,A)
【文献】特公昭35-12447(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00- 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の周囲に設けられた複数の環状コアと、該複数の環状コアから千鳥配置で複数突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサであって、
前記コイルに通電することにより励磁されたティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成される第一トルク検出部と、
前記コイルに通電することにより励磁されたティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁気回路が形成される第二トルク検出部と、を備え、
前記被検出体の周囲に隣接して配置される前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、前記環状コアどうしの周方向のティース配置が互いに同一となるように配置されており、前記第一トルク検出部の出力電圧と前記第二トルク検出部の出力電圧の差動出力が検出されるトルク検出センサ。
【請求項2】
前記第一トルク検出部は、第一コア及び第二コアを有し、前記第一コアに周方向に複数形成された第一ティースと前記第二コアに周方向に複数形成された第二ティースが積層されて前記第一ティース及び前記第二ティースが周方向に千鳥配置で突設され、各ティースの周囲にコイルが各々巻かれており、各コイルに通電することにより励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁気回路が形成され、
前記第二トルク検出部は、第三コア及び第四コアを有し、前記第三コアに周方向に複数形成された第三ティースと前記第四コアに周方向に複数形成された第四ティースが積層されて前記第三ティース及び前記第四ティースが周方向に千鳥配置で突設され、各ティースの周囲に巻かれたコイルに通電することにより励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁気回路が形成され、
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部が第二コアと第四コアが対向するように隣接配置され、前記第一ティースと第三ティースの前記環状コアの周方向の位相が同一となるように配置され、前記第二ティースと第四ティースの前記環状コアの周方向の位相が同一となるように配置されている請求項1記載のトルク検出センサ。
【請求項3】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、対称面を介して軸心方向に隣接するティースどうしが同磁極に励磁される請求項1又は請求項2記載のトルク検出センサ。
【請求項4】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、対称面を介して軸心方向に隣接するティースどうしが異磁極に励磁される請求項1又は請求項2記載のトルク検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己励磁型のトルク検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸等の被検出体に作用するトルクを非接触で検出する方法として、磁歪式のトルク検出装置がある。例えば、歪みを検出する被検出体となる軸(シャフト)の表面に、磁歪特性を増加させる表面処理(たとえば、メッキまたは溝加工等)を施し、磁歪効果を測定することによってトルクを検出する。磁歪効果の測定は、シャフトと同軸に巻かれたコイルを配置し、インピーダンスの大きさに基づくビラリ効果により発生したシャフトの透磁率の変化を読み取ることによって行われる。
【0003】
軸表面に生じる磁歪の逆効果を利用して回転軸のトルクを検出するトルク検出装置として、第一共振回路、第二共振回路及び検出回路を備えたトルクセンサが提案されている。第一共振回路は、軸表面において+45°方向の透磁率変化を検出すべく配置される第一検出コイルに、第一コンデンサを直列又は並列に接続され、検出回路から出力される駆動信号により駆動される。第二共振回路は、軸表面において-45°方向の透磁率変化を検出すべく配置される第二検出コイルに、第二コンデンサを直列又は並列に接続して構成され、検出回路から出力される駆動信号により駆動される。上記第一共振回路や第二共振回路から減衰状に出力される自由振動波においては、軸表面の透磁率変化が位相ズレとなって明確に現れ、しかも、自由振動波における位相ズレは、振動波の数だけ蓄積されるので、+45°方向及び-45°方向の透磁率変化を高精度に検出でき、その差分から回転軸のトルクを高精度に検出するものである(特許文献1:WO2008/081572参照)。
特許第6483778号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2008/081572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献の磁歪式トルクセンサにおいては、回転軸に生じたトルクの歪みによる磁気抵抗の変化をトルクに換算するものである。このため、回転軸の回転偏心により磁気抵抗が変化する。このためセンサの出力値にトルク成分(歪み成分)と偏心誤差成分が加わるため、トルク測定精度が低下する。
【0006】
また、回転軸(シャフト)の全周にわたってトルク測定を行う場合、回転軸周りに複数のセンサを組み付ける必要がある。この場合、複数のトルクセンサにより検出されるトルク成分(歪み成分)に偏心誤差成分が加わるため、トルク測定精度が低下する。
特に、複数のトルクセンサを回転軸周りに設ける場合、回転軸の軸心に対して+45度のトルクセンサのコアと-45度のトルクセンサのコアの位相が互いにずれている場合、出力値の差分をとっても偏心成分が残るため誤差が生じたままとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路において偏心誤差が抽出されることなくトルク成分のみが抽出されて測定精度を高めた自己励磁タイプのトルク検出センサを提供することにある。
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
被検出体の周囲に設けられた複数の環状コアと、該複数の環状コアから千鳥配置で複数突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサであって、前記コイルに通電することにより励磁されたティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成される第一トルク検出部と、前記コイルに通電することにより励磁されたティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成される第二トルク検出部と、を備え、前記被検出体の周囲に隣接して配置される前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、前記環状コアどうしの周方向のティース配置が互いに同一となるように隣接配置されており、前記第一トルク検出部の出力電圧と前記第二トルク検出部の出力電圧の差動出力が検出されることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、第一トルク検出部のコイルに通電することにより隣接するティースどうしが異磁極に励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成され、第二トルク検出部のコイルに通電することにより隣接するティースどうしが異磁極に励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成される。よって、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を検出することができる。
また、隣接配置される第一トルク検出部と第二トルク検出部が環状コアの周方向のティース配置が互いに同一であり、第一トルク検出部の出力電圧と及び前記第二トルク検出部の出力電圧の差動出力が検出されるので、被検出体の偏心誤差をキャンセルすることができ、トルク成分のみが抽出されるのでトルク測定精度を高めることができる。
【0010】
例えば、前記第一トルク検出部は、第一コア及び第二コアを有し、前記第一コアに周方向に複数形成された第一ティースと前記第二コアに周方向に複数形成された第二ティースが周方向に千鳥配置で突設され、各ティースの周囲に巻かれたコイルに通電することにより励磁された第一ティース及び第二ティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成され、前記第二トルク検出部は、第三コア及び第四コアを有し、前記第三コアに周方向に複数形成された第三ティースと前記第四コアに周方向に複数形成された第四ティースが周方向に千鳥配置で突設され、各ティースの周囲に巻かれたコイルに通電することにより励磁された第三ティース及び第四ティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成され、前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部が第二コアと第四コアが対向するように隣接配置され、前記第一ティースと第三ティースの前記環状コアの周方向の位相が同一となるように配置され、前記第二ティースと第四ティースの前記環状コアの周方向の位相が同一となるように配置されていてもよい。
【0011】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、隣接するティースどうしが同磁極に励磁されると、トルク検出部どうしを跨ぐ磁路が被検出体の軸心方向に形成されることはなく、検出感度を低下させることはない。
【0012】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、隣接するティースどうしが異磁極に励磁されると、トルク検出部どうしを跨ぐ磁路が被検出体の軸心方向に形成されるが、トルク検出には寄与しない磁路成分であるため、検出感度に影響しない。
【発明の効果】
【0013】
被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路において偏心誤差が抽出されることなくトルク成分のみ抽出されて測定精度を高めた自己励磁タイプのトルク検出センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トルク検出部の正面図、矢印Y-Y方向断面図及び斜視図である。
図2】実施例1のトルク検出センサの正面図、右側面図、矢印Y-Y方向断面図及び斜視図である。
図3】コアの周方向に突設されたティースの配置及び通電により形成される磁極の配置図である。
図4図3の複数のティースに巻かれたコイルの結線図である。
図5】コイル通電により形成される磁極の配置図である。
図6図2のコアの周方向に突設されたティースの配置及び通電により形成される磁路の説明図である。
図7図6の他例に係るコアの周方向に突設されたティースの配置及び通電により形成される磁路の説明図である。
図8】実施例2のコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。
図9図8のティース間に形成される磁路の説明図である。
図10】実施例2に係るコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。
図11図10のコア磁極間に形成される磁路の説明図である。
図12】他例に係るコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。
図13図12のティース間に形成される磁路の説明図である。
図14】トルク検出センサの出力電圧の差動処理を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る磁歪式トルク検出センサの概略構成について図1乃至図3を参照して説明する。
被検出体の一例としては、逆磁歪効果が大きい材料が好ましい。例えば、逆磁歪効果が高い材料として、パーメンジュール、Fe-Al(アルフェル)、Fe-Nix(パーマロイ)および球状黒鉛鋳鉄( JIS :FCD70 ) などがある。尚、逆磁歪効果とは、磁性体に外部から応力を加えると磁気特性が変化する現象である。また、被検出体Sには、必要に応じて磁性焼鈍を予め施しておくと、詳しくは後述するが被検出体Sに作用するトルクを好適に検出できる。また、非磁性材料であっても金属磁性材料を溶射等してコーティングしたり、磁性円筒を軸に圧入したりすることでトルク検出することが可能となる。尚、被検出体は、円柱状であるがこれに限定されない。被検出体は、外形が円柱状であれば、内部の構造は問わない。例えば、内径が軸方向において一定である円筒状、または内径が軸方向に位置により異なっている円筒状であってもよい。また、被検出体は、回転することが予定されているものであってもよいし、予定されていないものであってもよい。更には、被検出体は、中実な軸材料でもよいし、空芯状の筒体であってもよい。
【0016】
先ず、トルク検出センサを構成するトルク検出部1の例について、図1A~Cを参照して説明する。図1Bに示すように、筒状の中間コア2cの両端開口より環状の第一コア2a-1と第二コア2a―2が所定間隔を空けて嵌め込まれている。中間コア2cも磁性体であるため、45度位相が異なる第一ティース3a1と第二ティース3a2は中間コア2cを介して磁気回路が形成される。尚、例えば中間コア2cの外径が第一コア2a及び第二コア2bと同等で、第一コア2a-1と第二コア2a―2との間に積層されていてもよい。
【0017】
環状コア2及びティース3の構成について説明する。環状コア2及びティース3は、例えば電磁鋼板をプレス成形したものを積層したものでも、磁性材料をブロック状に一体形成されたものでもよい。また、焼結体、金属粉末射出成形、圧粉体で製造されたものでもよい。以下、積層タイプの構成について説明する。
第一コア2a-1には環状のコアバック部2a1に径方向内側に向かって突設された第一ティース3a1が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第一ティース3a1には筒状の絶縁樹脂製の第一インシュレータ4a1が嵌め込まれ、周囲には第一コイル5aが巻き付けられている。
【0018】
第二コア2a―2は、第一コア2a-1と同様に環状のコアバック部2a2に径方向内側に向かって突設された第二ティース3a2が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第二ティース3a2には筒状の絶縁樹脂製の第二インシュレータ4a2が嵌め込まれ、周囲には第二コイル5bが巻き付けられている。
【0019】
第一コア2a-1と第二コア2a―2は、環状の中間コア2cの両端開口に嵌め込まれて一体に組み付けられている。第一ティース3a1の被検出体と対向する先端部と第二ティース3a2の被検出体と対向する先端部が周方向に45度位相が異なるように組み付けられている。このため、後述する図3A,Bの環状コア2の展開図に示すように、環状コア2の内周面には、周方向に第一ティース3a1及び第二ティース3a2が千鳥配置で突設されている。中間コア2cは、第一コア2aと第二コア2bとの間の磁路を形成している。尚、中間コア2cには径方向内側に向かうティースは設けられていない。
【0020】
図3Aの上段は、引っ張り方向(CW方向)と圧縮方向(CCW方向)の応力を測定するティース3(第一ティース3a1及び第二ティース3a2)の配置を単純化して示すものである。第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5a及び第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bは同一の通電回路6に直列に接続されている。図3A下段に示すように交流電源により通電することにより周方向に隣接する第一ティース3a1又は第二ティース3a2は互いに異磁極(N極又はS極)に励磁されるようになっている。ここでは第一コイル5a、第二コイル5bをAコイルとして説明する。図中NAはN極に励磁されたAコイル、SAはS極に励磁されたAコイル表示するものとし、N極に励磁されるかS極に励磁されるかはAコイルをティース3に巻く向きを反対にすれば実現することができる。また、NA及びSAを囲む長枠Eは第一ティース3a1及び第二ティース3a2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾き(例えば+45度の磁路の傾き)を示す。
【0021】
図3Bの上段は、圧縮方向(CCW方向)と引っ張り方向(CW方向)の応力を測定するティース3(第一ティース3a1及び第二ティース3a2)の配置を単純化して示すものである。第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5a及び第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bは同一の通電回路6に直列に接続されており、図3B下段に示すように交流電源により通電することにより周方向に隣接する第一ティース3a1又は第二ティース3a2は互いに異磁極(N極又はS極)に励磁されるようになっている。ここでは、第一コイル5a、第二コイル5bをBコイルとして説明する。図中NBはN極に励磁されたBコイル、SBはS極に励磁されたBコイル表示するものとし、N極に励磁されるかS極に励磁されるかはBコイルをティース3に巻く向きを反対にすれば実現することができる。また、NB及びSBを囲む長枠Eは第一ティース3a1及び第二ティース3a2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾き(例えば-45度の磁路の傾き)を示す。
【0022】
図4A,B,Cは、環状コア2の展開図において各ティース3(第一ティース3a1及び第二ティース3a2)に巻かれた第一コイル5a、第二コイル5bに対する通電パターンの一例を示している。図中の黒いラインは第一コイル5a及び第二コイル5bであり、図中では省略されている。また、図3の説明と同様に第一コイル5a、第二コイル5bをティース3に巻く向きを反対にすることで励磁する極を変更している。環状コア2に周方向に千鳥配置で突設された複数の第一ティース3a1及び第二ティース3a2のうち同一の通電回路に直列に接続される第一コイル5a、第二コイル5bが巻かれたティースは、周方向に隣接するN極とS極が交互に励磁されることが好ましい。これにより、同一の通電回路に直列に接続される第一コイル5a、第二コイル5bが巻かれた周方向に隣接する第一ティース3a1及び第二ティース3a2がN極とS極に交互励磁さえすれば、複数コイルに対して例えば以下に説明するように一筆書き状に連続して配線することもでき、配線バリエーションが増えて配線も容易に行える。
【0023】
図4Aは、第一ティース3a1と第二ティース3a2とでジグザグ状に通電する通電回路6a及び第一ティース3a1と第二ティース3a2に形成される磁極(-SA-SA-NA-NA-…)を例示する。図4Bは、第一ティース3a1と第二ティース3a2とで矩形波状に通電する通電回路6b及び第一ティース3a1と第二ティース3a2に形成される磁極(-SA-NA-SA-NA-…)を例示する。図4Cは、第一ティース3a1に周方向に通電してからUターンして第二ティース3a2に周方向に通電する通電回路6c及び第一ティース3a1と第二ティース3a2に形成される磁極(-SA-NA-SA-NA-…)を例示する。図4A~Cに示すいずれの通電パターンにおいても、トルク検出に最も寄与する磁路は、周方向に位相差±45度で配置された第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に形成される磁路(図5参照)である。
【0024】
図5は、CW方向及びCCW方向のトルク検出部1の環状コア2の展開図であって、図中矢印は第一ティース3a1と第二ティース3a2に形成される磁路を示す。
図5上段に示すCW方向のトルク検出部1において第一ティース3a1の周方向に異磁極間(NA-SA間)に発生する磁路及び第二ティース3a2の周方向に異磁極間(NA-SA間)に発生する磁路はトルク検出にはほとんど寄与しない磁路成分である。そのため、検出感度にほとんど影響しない。
同様に図5下段に示すCCW方向のトルク検出部1において第一ティース3a1の周方向に隣合う異磁極間(NB-SB間)に発生する磁路及び第二ティース3a2の周方向に隣合う異磁極間(NB-SB間)に発生する磁路はトルク検出には寄与しない磁路成分である。そのため、検出感度にはほとんど影響しない。
【0025】
次に、図1に示すトルク検出部1と同様の構成を用いたトルク検出センサ7の一例について図2を参照して説明する。トルク検出センサ7は、被検出体Sの周囲に複数箇所で対峙する第一ティース3a1と第二ティース3a2に巻き付けられた第一コイル5a、第二コイル5bに通電して被検出体Sとの間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型のトルク検出センサである。
【0026】
図2Cにおいて、第一トルク検出部7aは、環状の第一コア2a-1,環状の第二コア2a-2に周方向に複数の第一ティース3a1,第二ティース3a2が径方向内側に向けて突設されている。第一コア2a-1と第二コア2a-2は筒状の中間コア2c1の両側開口より嵌め込まれて第一ティース3a1と第二ティース3a2が千鳥配置となるよう組み付けられている。各第一ティース3a1,第二ティース3a2の周囲には第一インシュレータ4a1,第二インシュレータ4a2が各々嵌め込まれ、同一の通電回路に接続された第一コイル5aが各々巻かれており、各第一コイル5aに通電することにより隣接する第一ティース3a1,第二ティース3a2が異磁極に励磁されて対向する被検出体Sとの間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成されるようになっている。
【0027】
第二トルク検出部7bは、環状の第三コア2b-1,環状の第四コア2b-2に周方向に複数の第三ティース3b1,第四ティース3b2が径方向内側に向けて突設されている。第三コア2b-1と第四コア2b-2は筒状の中間コア2c2の両側開口より嵌め込まれて、第三ティース3b1と第四ティース3b2が千鳥配置となるように組み付けられている。各第三ティース3b1,第四ティース3b2の周囲には第三インシュレータ4b1,第四インシュレータ4b2が各々嵌め込まれ、同一の通電回路に接続された第二コイル5bが各々巻かれており、各第二コイル5bに通電することにより周方向隣接する第三ティース3b1,第四ティース3b2が異磁極に励磁されて対向する被検出体Sとの間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成されるようになっている。
【0028】
上記第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bが第二コア2a-2と第四コア2b-2が中間コア2c3を介して対向するように隣接配置されている。第一ティース3a1の第一コア2a-1の周方向の位相と第三ティース3b1の第三コア2b-1の周方向の位相が同一となるように組み付けられている。また、第二ティース3a2の第二コア2a-2の周方向の位相と第四ティース3b2の第四コア2b-2の周方向の位相が同一となるように組み付けられている。
【0029】
即ち、第一コア2a-1,第二コア2a-2及び第三コア2b-1,第四コア2b-2(環状コア2)は図6の展開図に示すように、被検出体Sの軸心方向(図の上下方向)と直交する対称面M(図2B,C参照)を中心に第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bが鏡面配置となるように積層されている。
また、後述するように、第一トルク検出部7aの出力電圧と及び第二トルク検出部7bの出力電圧の差動出力が検出されるようになっている。
【0030】
図2C,Dにおいて、第一コア2a-1には環状のコアバック部2a1に径方向内側に向かって突設された第一ティース3a1が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第一ティース3a1には筒状の絶縁樹脂製の第一インシュレータ4a1が嵌め込まれ、周囲には第一コイル5aが巻き付けられている。第二コア2a-2には環状のコアバック部2a2に径方向内側に向かって突設された第二ティース3a2が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第二ティース3a2には筒状の絶縁樹脂製の第二インシュレータ4a2が嵌め込まれ、周囲には第一コイル5aが巻き付けられている。第一コア2a-1と第二コア2a―2は、第一ティース3a1と第二ティース3a2が周方向に+45度位相がずれて積層されるようになっている(図6コア展開図上段参照)。
【0031】
図2Cにおいて、第三コア2b-1は、第一コア2a-1と同様に環状のコアバック部2b1に径方向内側に向かって突設された第三ティース3b1が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第三ティース3b1には筒状の絶縁樹脂製の第三インシュレータ4b1が嵌め込まれ、周囲には第二コイル5bが巻き付けられている。第三コア2b-1と第四コア2b―2は、第三ティース3b1と第四ティース3b2が周方向に-45度位相がずれて積層されるようになっている(図6コア展開図下段参照)。
また、第四コア2b-2には環状のコアバック部2b2に径方向内側に向かって突設された第四ティース3b2が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第四ティース3b2には筒状の絶縁樹脂製の第四インシュレータ4b2が嵌め込まれ、周囲には第二コイル5bが巻き付けられている。
【0032】
図2B,Cに示すように、筒状の中間コア2c1の両端開口に第一コア2a-1及び第二コア2a-2が嵌め込まれて組み付けられている。筒状の中間コア2c2の両端開口には第三コア2b-1及び第四コア2b-2が嵌め込まれて組み付けられている。
【0033】
また、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bとは中間コア2c3を介して隣接配置されている。即ち、中間コア2c1及び第二コア2a-2と中間コア2c2及び第四コア2b-2は、環状の中間コア2c3の両側に重ね合わせて接着等より一体に組み付けられる。
【0034】
中間コア2c1は第一コア2a-1と第二コア2a-2間の磁路を形成し、中間コア2c2は第三コア2b-1と第四コア2b-2間に磁路を形成している。中間コア2c3は、第二ティース3a2の周囲に第一コイル5a、第四ティース3b2の周囲に第二コイル5bを巻くスペースを確保するスペーサとなっている。
尚、中間コア2c1,2c2,2c3には径方向内側に向かうティースは設けられていない。
【0035】
第一トルク検出部7aにおいて互いに隣り合う第一ティース3a1,第二ティース3a2は周方向に+45度位相が異なるように千鳥配置で積層されている。また、第二トルク検出部7bにおいて隣り合う第三ティース3b1,第四ティース3b2は周方向に-45度位相が異なるように千鳥配置で積層されている。
【0036】
このため、図6のコアの展開図に示すように、第一トルク検出部7aの第一コア2a-1,第二コア2a-2に周方向に千鳥配置で形成された第一ティース3a1,第二ティース3a2と、第二トルク検出部7bの第三コア2b-1,第四コア2b-2に周方向に千鳥配置で形成された第三ティース3b1,第四ティース3b2が対称面Mを中心として鏡面配置で積層されている。尚、NA及びSAを囲む長枠Eは第一ティース3a1及び第二ティース3a2間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。同様にNB及びSBを囲む長枠Eは第三ティース3b1及び第四ティース3b2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。
【0037】
上記構成によれば、第一トルク検出部7aの第一コイル5aに通電することにより隣接する第一ティース3a1,第二ティース3a2が異磁極(N極又はS極)に励磁されて対向する被検出体Sとの間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成される。また、第二トルク検出部7bの第二コイル5bに通電することにより隣接する第三ティース3b1,第四ティース3b2が異磁極(N極又はS極)に励磁されて対向する被検出体Sとの間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成される。よって、被検出体Sの全周にわたって圧縮応力及び引張応力の発生を検出することができる。
【0038】
また、隣接配置される第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bが環状コア2の周方向のティース配置が互いに同一となっている。即ち、図6のコアの展開図において、第一トルク検出部7aの第一コア2a-1に形成された第一ティース3a1と第二トルク検出部7bの第三コア2b-1形成された第三ティース3b1の周方向の位相が互いに同一となっており、第二コア2a-2に形成された第二ティース3a2と第四コア3b-2に形成された第四ティース3b2の周方向の位相が互いに同一となっている。
【0039】
また、トルク検出センサ7は、被検出体S(シャフト)に印加された歪みによる磁気抵抗の変化をトルクに換算しているが、シャフトの回転偏心によっても磁気抵抗が変化する。このため出力値V=V1(トルク成分)+V2(偏心成分)となり、トルク測定精度が低下する。
【0040】
具体的には、図14の出力波形図において、上段がトルク波形を示し、下段が偏心波形を示す。左端が-45°のセンサ波形、真ん中が+45°のセンサ波形を示しており、右端が-45°のセンサ波形と+45°のセンサ波形を回路処理(差動処理)後の出力波形を示す。
-45°のセンサ波形において、上段のトルク波形は、破線は無負荷(0Nm)の波形を示しており、実線(細線)はトルク荷重(+δ)が作用した波形を示す。無負荷に比べてトルク荷重が作用した場合には、絶対値が大きく測定される(矢印参照)。
下段の偏心波形は、破線は無負荷(0Nm)の波形を示しており、実線はトルク荷重(+δ)が作用した波形を示す。無負荷に比べてトルク荷重が作用した場合には、絶対値が大きく測定される(矢印参照)。
【0041】
+45°のセンサ波形において、上段のトルク波形は、破線は無負荷(0Nm)の波形を示しており、実線(太線)はトルク荷重(-δ)が作用した波形を示す。無負荷に比べてトルク荷重が作用した場合には、絶対値が小さく測定される(矢印参照)。
下段の偏心波形は、破線は無負荷(0Nm)の波形を示しており、実線はトルク荷重(-δ)が作用した波形を示す。無負荷に比べてトルク荷重が作用した場合には、絶対値が大きく測定される(矢印参照)。
【0042】
回路処理(差動増幅回路による差動処理)後の出力波形において、上段のトルク波形は-45°のセンサ波形のトルク荷重(+δ)と+45°のセンサ波形のトルク荷重(-δ)との差がトルク荷重として出力される。
下段の偏心波形は、-45°のセンサ波形のトルク荷重(+δ)と+45°のセンサ波形のトルク荷重(-δ)が略同じであり、無負荷に対して同じ方向に偏心荷重が発生するため、差動処理により相殺される。
以上より、第一トルク検出部7aの出力電圧と及び第二トルク検出部7bの出力電圧が差動処理されて出力されるので、被検出体Sの偏心誤差をキャンセルすることができ、トルク成分のみが抽出されるのでトルク測定精度を高めることができる。
【0043】
また、図6に示すように、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bは、対称面Mを介して軸心方向に隣接する第二ティース3a2と第四ティース3b2が同磁極に励磁されると、対称面Mを介して軸心方向に対称位置にある第二ティース3a2と第四ティース3b2は同磁極となるため、対称面Mを跨いで第二コア2a-2と第四コア2b-2の間に磁路が形成されることはない。
【0044】
また、図7に示すように、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bは、対称面Mを介して軸心方向に隣接する第二ティース3a2と第四ティース3b2が異磁極(N極又はS極)に励磁されると、対称面Mを介して軸心方向に対称位置にある第二ティース3a2と第四ティース3b2は異なる磁極となるため対称面Mを跨いで第二コア2a-2と第四コア2b-2の間に磁路が形成されるが、トルク検出にはほとんど寄与しない磁路成分である。そのため、検出感度にはほとんど影響しない。
尚、図6図7において、環状コア2(第一コア2a-1,第二コア2a-2及び第三コア2b-1,第四コア2b-2)の周方向に形成される異磁極(NA,SA)(NB,SB)間に周方向に形成される磁路は、トルク検出にはほとんど寄与しない磁路成分である。そのため、検出感度にはほとんど影響しない。
【0045】
次に他例に係るトルク検出センサの一実施形態について、図8乃至図13を参照して説明する。被検出体Sは、逆磁歪効果が大きい材料が好ましく、中実な軸材料でもよいし、中空状の中空軸等であってもよいのは同様である。
【0046】
図8に示すように、環状コア2に第一ティース3a及び第二ティース3bが周方向に千鳥配置で複数突設されている。環状コア2は、図1Bに示すように、筒状の中間コア2cの両端開口に環状の第一コア2aと第二コア2bが嵌め込まれて組み付けられている。第一ティース3aと第二ティース3bが周方向に45度位相が異なるように組み付けられている。このため、図8のコア2の展開図に示すように、コア2の内周面には、周方向に第一ティース3a及び第二ティース3bが千鳥配置で突設されている。第一ティース3aどうしの環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置され、第二ティース3bどうしの環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置されている。また、各第一ティース3aには筒状の絶縁樹脂製の第一インシュレータ4aが嵌め込まれ、周囲には第一コイル5aが巻き付けられている。各第二ティース3bには筒状の絶縁樹脂製の第二インシュレータ4bが嵌め込まれ、周囲には第二コイル5bが巻き付けられている。尚、中間コア2cには径方向内側に向かうティースは設けられていない。以下、展開図においては、複数の中間コア2a,2b,2cが組み合わされたものを単に環状コア2と表記して説明するものとする。
【0047】
図8は、環状コア2の展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。図8において、第一ティース3a1の周囲に巻かれた第一コイル5aと第二ティース3a2の周囲に巻かれた第二コイル5bは巻方向が反対に巻かれている。また、第一コイル5a及び第二コイル5bが直列に接続された複数の通電回路を備えている。具体的には、第一通電回路6a(図8上段破線)は、第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5aから周方向に+45度の位相差を有する第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bへ通電し周方向に配線された他の第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bから+45度の位相差を有する他の第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5aへ通電する。なお、より正確には第一ティース3a1の被検出体と対向する先端部と第二ティース3a2の被検出体と対向する先端部が中間コア2cを介して周方向に+45度の位相差を有するように積層されている。この第一通電回路6a(図8上段破線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が(図8下段)される。
【0048】
また、第二通電回路6b(図8上段実線)は、第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5aから-45度の位相差を有する第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bへ通電し周方向に配線された他の第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bから-45度の位相差を有する他の第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5aへ通電する。この第二通電回路6b(図8上段実線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路(図1下段)が各々形成される。また、第一通電回路6aを形成するコイルをコイルAとし、第二通電回路6bを形成するコイルをコイルBとすると、図中NAはコイルAによりN極に励磁されたティース、SAはコイルAによりS極に励磁されたティースを表示するものとし、同様に図中NBはBコイルによりN極に励磁されたティース、SBはBコイルによりS極に励磁されたティースを表示するものとする。より正確には被検出体Sと対向するティースの先端部がN極またはS極に励磁される。N極に励磁されるかS極に励磁されるかはAコイル及びBコイル(第一コイル5a及び第二コイル5b)の巻く向きを反対にすれば実現することができる。
【0049】
また、図8下段に示すNA及びSAを囲む長枠E1、NB及びSBを囲む長枠E2は、第一ティース3a1及び第二ティース3a2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。尚、千鳥配置された第一ティース3a1と第二ティース3a2は、コイルが巻かれていないものが存在しても良い。
以上説明したトルク検出センサ7は、被検出体Sの周囲に複数箇所で対峙する第一ティース3a1と第二ティース3a2に巻き付けられた第一コイル5a、第二コイル5bに通電して被検出体Sとの間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型のトルク検出センサが用いられる。
【0050】
図9は第一ティース3a1と第二ティース3a2間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3aがN極に励磁され、第二ティース3bがS極に励磁される複数の磁路を示す。NA及びSAを囲む長枠E1は、第一通電回路6aに通電した際の軸心方向(図2の上下方向)に対する磁路の傾き(+45度)を示す。また、NB及びSBを囲む長枠E2は、第二通電回路6bに通電した際の軸心方向(図2の上下方向)に対する磁路の傾き(-45度)を示す。+45度に傾く磁路と-45度に傾く磁路はコアの周方向に交互に形成されている(長枠E1,E2参照)。
この場合、周方向に隣合う第一ティース3a1の極性は同磁極(N極)であり、周方向に隣合う第二ティース3a2の極性も同磁極(S極)となるため、トルク検出に必要な磁路成分(±45度)のみが形成されるため、トルク検出が効率よく実現することができる。
【0051】
図10図8の他例に係るコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3a1どうしが環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置され、第二ティース3a2どうしが環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置されている点は図8と同様である。図10上段において、第一通電回路6a(図10上段破線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が(図10下段)される。また、第二通電回路6b(図10上段実線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路(図10下段)が各々形成される。図8と異なるのは、第一ティース3a1に巻かれる第一コイル5aと第二ティース3a2に巻かれる第二コイル5bの巻方向が反対になっている。よって、第一ティース3a1がS極に励磁され、第二ティース3a2がN極に励磁されている。図10下段に示すSA及びNAを囲む長枠E1及びSB及びNBを囲む長枠E2は、第一ティース3a1及び第二ティース3a2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。なお、図10では長枠E2は2つ例示しているが両方とも第一ティース3a1がSB、第二ティース3a2がNBの組み合わせである。別の例としては、1つの長枠E2を第一ティース3a1がSB、第二ティース3a2がNBの組み合わせ、別の長枠E2を第一ティース3a1がNB、第二ティース3a2がSBの組み合わせのもので構成しても良い。それ以外にも1つの長枠E1を第一ティース3a1がSA、第二ティース3a2がNAの組み合わせ、別の長枠E2を第一ティース3a1がNA、第二ティース3a2がSAの組み合わせのもので構成しても良い。このように長枠E1と長枠E2内で第一ティース3a1と第二ティース3a2をN極に励磁するかS極に励磁するかは自由である。
【0052】
図11は第一ティース3a1と第二ティース3a2間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3a1がS極又はN極に励磁され、第二ティース3a2がN極又はS極に励磁される複数の磁路を示す。SA及びNAを囲む長枠E1は、第一通電回路6aに通電した際の軸心方向(図4の上下方向)に対する磁路の傾き(+45度)を示す。また、SB及びNBを囲む長枠E2は、第二通電回路6bに通電した際の軸心方向(図11の上下方向)に対する磁路の傾き(-45度)を示す。+45度に傾く磁路と-45度に傾く磁路は環状コア2の周方向に交互に形成されている。
【0053】
この場合、周方向に隣合う第一ティース3a1の極性は異なる磁極であり、周方向に隣合う第二ティース3a2の極性も異なる磁極となるため、図8と異なり、図11の周方向に隣接する第一ティース3a1間にN極からS極に向かう矢印方向の磁路(NB-SA)が各々形成される。しかしながら、これらの磁路はトルク検出にほとんど寄与しない磁路成分である。そのため、検出感度にはほとんど影響しない。
【0054】
図12は他例に係るコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3a1どうしが環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置され、第二ティース3a2どうしが環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置されている点は同様である。図12において、第一通電回路6a(図12上段破線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が(図12下段)される。また、第二通電回路6b(図12上段実線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路(図12下段)が各々形成される。SA及びNAを囲む長枠E1は、第一通電回路6aに通電した際の軸心方向(図12の上下方向)に対する磁路の傾き(+45度)を示す。また、SB及びNBを囲む長枠E2は、第二通電回路6bに通電した際の軸心方向(図12の上下方向)に対する磁路の傾き(-45度)を示す。図8図10と異なるのは、+45度に傾く磁路と-45度に傾く磁路はコアの周方向に交互に形成されていない(長枠E1,E2参照)。
【0055】
図13は第一ティース3a1と第二ティース3a2間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3a1がコアの周方向にN極とS極に交互励磁され、第二ティース3a2がコアの周方向にS極とN極に交互励磁される。
この場合、周方向に隣合う第一ティース3a1の極性は異なる磁極であり、周方向に隣合う第二ティース3a2の極性も異なる磁極となるため、第一ティース3a1と第二ティース3a2間に形成される±45度に傾斜する磁路の他に、図13の周方向に隣接する第一ティース3a1間にN極からS極に向かう矢印方向の磁路(NA-SA),(NB-SB)が各々形成される。また、周方向に隣接する第二ティース3b間にN極からS極に向かう矢印方向の磁路(NA-SA),(NB-SB)が各々形成される。しかしながら、これらの磁路はトルク検出にほとんど寄与しない成分であるため検出感度にはほとんど影響しない。
【0056】
第一通電回路6a及び第二通電回路6bに通電して各々形成される±45度の傾きを有する複数の磁路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化として測定し差動出力が検出される(図14参照)。これにより、被検出体の偏心誤差をキャンセルすることができ、トルク成分のみが抽出されるのでトルク測定精度を高めることができる。
【0057】
以上説明したように、被検出体Sの全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路において偏心誤差が抽出されることなくトルク成分のみ抽出されて測定精度を高めた自己励磁タイプのトルク検出センサ7を提供することができる。
【0058】
本実施例に係るトルク検出センサ7は、被検出体Sが、中実状の軸であると中空軸のいずれのトルクを検出することができる。また、環状コア2及びティース3は積層タイプについて説明したが、これに限定されるものではなく、ブロック状の磁性材料を切削、ワイヤーカットなどにより形成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 トルク検出部 2 環状コア 2a,2a-1 第一コア 2a-2,2b 第二コア 2a1,2a2,2b1,2b2 コアバック部 2b-1 第三コア 2b-2 第四コア 2c,2c1,2c2,2c3 中間コア 3a1 第一ティース 3a2 第二ティース 3b1 第三ティース 3b2 第四ティース 4a 第一インシュレータ 4b 第二インシュレータ 5a 第一コイル 5b 第二コイル 6a 第一通電回路 6b 第二通電回路 7 トルク検出センサ 7a 第一トルク検出部 7b 第二トルク検出部 S 被検出体
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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