(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】発信機
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
G08B17/00 H
(21)【出願番号】P 2021100941
(22)【出願日】2021-06-17
(62)【分割の表示】P 2017013064の分割
【原出願日】2017-01-27
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直子
(72)【発明者】
【氏名】小見山 哲嗣
(72)【発明者】
【氏名】田村 政徳
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-157446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0193867(US,A1)
【文献】特開平10-154282(JP,A)
【文献】登録実用新案第3188944(JP,U)
【文献】実開平04-040395(JP,U)
【文献】特開2011-253765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
G08B17/00-31/00
H01H9/00-9/28
13/00-13/88
89/00-89/10
H05K7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方から操作可能な押釦および該押釦が操作されたことを検知可能な検知手段を有する本体ケースと、少なくとも前記押釦の一部を露出させる開口部を有する取付けベース体と、を備え、前記本体ケースの内部に、前記検知手段の状態に応じて外部へ出力する信号を生成する回路が実装された回路基板が収納されている発信機であって、
前記取付けベース体は、前記本体ケースの少なくとも一部と係合可能な枠体部と、該枠体部の前端に設けられたフランジ部と、外縁部に設けられ当該発信機を取付け面に取り付けるためのネジ部と、を備え、
前記本体ケースは、前記枠体部と係合する収容枠部を備え、前記収容枠部には当該発信機の取付け用のネジが挿通可能な孔が設けられ、
前記収容枠部が前記取付け面よりも前側に位置した状態で
、前記取付け用のネジを前記収容枠部に設けられた孔に挿通して、前記本体ケースが挿通可能な開口部およびネジ穴を有する取付け面又は取付け面に設けられた設置用プレートの前記ネジ穴に螺合させることで当該発信機が取り付けられる態様と、
前記ネジ部が挿通可能な開口部を有する前記取付け面の
当該開口部に
前記本体ケースが挿入され前記フランジ部の背面が前記取付け面の前面に接した状態で
、背部に突出した前記取付けベース体の外縁部の前記ネジ部にリング状のナットのネジ部を螺合させることで当該発信機が取り付けられる態様と、
のいずれかの態様で前記取付け面に取り付けられることを特徴とする発信機。
【請求項2】
前記枠体部の前面は平坦であり前記フランジ部の前面と連続する平面を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発信機。
【請求項3】
前記ネジ部は、前記枠体部の前側および後側を除く外縁部の少なくとも2箇所にそれぞれ形成されている、連続した雄ネジまたは雌ネジの一部をなす部分ネジであることを特徴とする請求項1または2に記載の発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急報知用の発信機に関し、例えば建物の壁部に設けられ火災発生時に操作されることで警報を発するための火災発信機に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部には火災の発生を知らせるために、火災報知システムが設けられている。火災報知システムは、火災感知器や押釦スイッチを備えた手動の火災発信機、受信機、火災報知用のベル、表示灯などから構成され、このうち火災発信機は建物の廊下等の壁面に適切な高さで設置されている。火災発生時には、発見者が火災発信機の押釦スイッチを強く押すことにより、火災発生を知らせる信号が受信機に伝送されると共に、火災発信機の近傍に設けられるベルから警報音が発せられて、周囲の人に対し火災発生を知らせることができる。
【0003】
このような火災発信機は、円盤状のものが一般的であり、火災発信機本体は上記押釦スイッチと、受信機の監視員と通話するための電話ジャックとを備え、また押釦スイッチが押された場合に信号を伝送するための回路が内蔵されており、建物の壁面に埋め込むように設置される。さらに、火災発信機本体の室内露出部分を覆う前面カバーが火災発信機本体の前面に設けられ、前面カバーは、押釦スイッチが露出する開口部および復帰ボタンや電話ジャックを収納する収納凹部を有しているとともに、収納凹部の前面を覆い、必要に応じて開閉することができる扉が設けられている。このような火災発信機としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0004】
一方、表示灯は、発信機や消火栓箱等の防災機器の設置位置を表示するために設けられている機器で、従来は砲弾状ないしはドーム状のものが一般的であった。また、近年、前面が平坦もしくは円盤状をなすフラットタイプの表示灯や、発信機と一体に構成された表示灯も実用化されている。フラットタイプの表示灯に関する発明としては、例えば特許文献2に記載されているものが、また発信機と一体に構成された表示灯に関する発明としては、例えば特許文献3に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平04-40395号公報
【文献】特開2015-56205号公報
【文献】特開2014-157446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の一般的な火災発信機は、比較的大型の円盤状のもので表示灯を備えていないため、取付け箇所に制約が生じたり、消防法等の要請により近傍に表示灯を設置する必要がある場合に対応できなかったりして、柔軟性が低いという課題があった。
一方、従来の一般的な砲弾形の表示灯は、通行や搬入作業等の建物の通常使用において障害物となることがあるため、薄型形状のものが望まれている。
特許文献3に記載されている発信機と表示灯とを一体に構成したものは、上記のような要望にある程度応えることができるものの、多数のビスを用いて固定する構成のものは建物の壁面等に設置する作業が面倒である。また、薄型形状ではあるが、表示灯が発信機の周囲全体を囲むリング状に構成されているため、充分な視認性を確保しようとすると全体が大型になってしまう一方、発信機の大きさが固定されている場合に小型化を優先すると表示灯の視認性が低下してしまう。
【0007】
また、特許文献3に記載されているものは、発信機と表示灯とを常に一体に組み合わせて設置することを前提としているため、発信機を単独で設置することが困難であり、柔軟性が低いという課題があった。
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、従来のものに比べて取付け箇所に制約が生じることがないとともに、設置個所や環境に応じて柔軟に対応することができる発信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、
前方から操作可能な押釦および該押釦が操作されたことを検知可能な検知手段を有する本体ケースと、少なくとも前記押釦の一部を露出させる開口部を有する取付けベース体と、を備え、前記本体ケースの内部に、前記検知手段の状態に応じて外部へ出力する信号を生成する回路が実装された回路基板が収納されている発信機であって、
前記取付けベース体は、前記本体ケースの少なくとも一部と係合可能な枠体部と、該枠体部の前端に設けられたフランジ部と、外縁部に設けられ当該発信機を取付け面に取り付けるためのネジ部と、を備え、
前記本体ケースは、前記枠体部と係合する収容枠部を備え、前記収容枠部には当該発信機の取付け用のネジが挿通可能な孔が設けられ、
前記収容枠部が前記取付け面よりも前側に位置した状態で、前記取付け用のネジを前記収容枠部に設けられた孔に挿通して、前記本体ケースが挿通可能な開口部およびネジ穴を有する取付け面又は取付け面に設けられた設置用プレートの前記ネジ穴に螺合させることで当該発信機が取り付けられる態様と、前記ネジ部が挿通可能な開口部を有する前記取付け面の当該開口部に前記本体ケースが挿入され前記フランジ部の背面が前記取付け面の前面に接した状態で、背部に突出した前記取付けベース体の外縁部の前記ネジ部にリング状のナットのネジ部を螺合させることで当該発信機が取り付けられる態様と、のいずれかの態様で前記取付け面に取り付けられるようにしたものである。
【0009】
上記構成によれば、収容枠部が取付け面よりも前側に位置した状態で当該発信機が取り付けられる態様と、本体ケースが取付け面の開口部に挿入されフランジ部の背面が取付け面の前面に接した状態で当該発信機が取り付けられる態様と、が選択可能であるので、柔軟性が向上する。また、フランジ部の背面が取付け面の前面に接した状態で当該発信機が取り付けられる態様では、取付け面すなわち壁面からの突出量をかなり小さくすることができるため、通行や搬入作業等の建物の通常使用において発信機が障害物となることがない。
【0010】
ここで、望ましくは、前記枠体部の前面は平坦であり前記フランジ部の前面と連続する平面を形成するように構成する。
かかる構成によれば、発信機の前面が平坦になるため、通行の際に衝突ないしは引っ掛かりを防止することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記ネジ部は、前記枠体部の前側および後側を除く外縁部の少なくとも2箇所にそれぞれ形成されている、連続した雄ネジまたは雌ネジの一部をなす部分ネジであるようにする。
かかる構成によれば、枠体部に設けられている部分ネジに螺合可能なネジ(リング状)1つで、発信機を消火栓箱の扉等のパネルに取り付けることができるため、作業性が向上するようになる。
ここで、前記部分ネジは2条ネジとするとよい。これにより、短い時間に締め付け、取り外しが行なえる。また、取付け時にネジが螺合し始める場所が対向配置されるので(180度間隔で2箇所)、リング状ナットを最大180度回転させれば螺合を開始させることができ、取付け作業が容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のものに比べて取付け箇所に制約が生じることがないとともに、設置個所や環境に応じて柔軟に対応することができる発信機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る火災発信機の第1の実施例を示すもので、(A)は発信機の正面図、(B)は発信機の側面図である。
【
図2】実施例の火災発信機の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図3】実施例の火災発信機を斜め後方から見た斜視図である。
【
図4】実施例の火災発信機の中央にて切断して内部構造を示した縦断面図である。
【
図5】実施例の火災発信機を構成する本体ケース内部の押釦回動支承部の構造を示す要部拡大斜視図である。
【
図6】実施例の火災発信機を消火栓箱の扉等のパネルに取り付ける際の様子を示す斜視図である。
【
図7】実施例の火災発信機を構成する取付けベース体と固定用ナットとの関係を示すもので、(A)は取付けベース体に固定用ナットを近づけた状態を示す断面図、(B)は取付けベース体のネジ未形成部分に固定用ナットのネジ未形成部分を嵌合させた状態を示す断面図である。
【
図8】本発明に係る火災発信機(発信装置)の第2の実施例を示す斜視図である。
【
図9】第2実施例の火災発信機(発信装置)を構成する装飾パネルの具体例を示す斜視図である。
【
図10】第2実施例の火災発信機(発信装置)を消火栓箱の扉等のパネルに取り付ける際の様子を示す斜視図である。
【
図11】本発明に係る火災発信機(発信装置)の第3の実施例を示す斜視図である。
【
図12】第3実施例の火災発信機(発信装置)を構成する表示灯の具体例を示す斜視図である。
【
図13】第3実施例の火災発信機(発信装置)を消火栓箱の扉等のパネルに取り付ける際の様子を示す斜視図である。
【
図14】(A)~(C)はそれぞれ第2実施例の装飾パネルおよび第3実施例の表示灯の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を適用した火災発信機の一実施形態について説明する。
本実施形態の火災発信機(以下、単に発信機と記す)10は、火災等の異常が発生した際に押釦を強く押して内部のスイッチをオンさせることにより異常の発生を知らせる信号を受信機に伝送する機能を備え、建造物の壁面あるいは消火栓箱の扉などに設置されて使用されるように構成されている。具体的には、本実施形態の発信機は、押釦スイッチを有する発信機本体と、発信機本体を壁面等に取り付けるためのリング状のナットからなる固定手段と、発信機本体と合体して一体化される表示灯または装飾プレートなどから構成される。
【0016】
(第1実施例)
図1~
図4は、第1実施例の発信機を示す。このうち、
図1(A)は発信機の正面図、
図1(B)は発信機の側面図、
図2は発信機の分解斜視図、
図3は
図1に示す火災発信機を斜め後方から見た斜視図、
図4は
図1に示す火災発信機の中央にて切断して内部構造を示した縦断面図である。
第1実施例の発信機は、
図1に示すように、前面中央に押釦11が設けられている発信機10と、該発信機10を壁面等に取り付けるための固定手段としてのリング状ナット20とを備える。
【0017】
発信機10は、前面視小判状(円を2本の平行線で上下に切断し、切断された左右両側の弓状部を除いた形状)をなしほぼ中央に押釦11を有する本体ケース12と、該本体ケース12の前端部と係合する収納枠部13Aを背部に有する取付けベース体13と、を備える。取付けベース体13は、ほぼ平坦な前面パネル部を有し該前面パネル部の縁部に、上フランジ部13B1および下フランジ部13B2と横フランジ部13B3(
図3参照)が設けられているとともに、中央に押釦11の前面が臨む開口部13Cが形成されている。また、取付けベース体13の収納枠部13Aは上面と下面がそれぞれ円筒の一部をなす円弧状に形成され、それらの周面に、リング状ナット20が螺合可能な部分雄ネジ13D1,13D2が形成されている。
【0018】
さらに、取付けベース体13の前面には、上記開口部13Cの上方に、収納凹部13E(
図2参照)が形成され、該収納凹部13Eの前面側を覆うように小扉14が設けられている。小扉14は、両側部に上下方向に沿って所定の高さを有するリブ14a,14aが形成され、該リブ14a,14aの外側面にガイド溝14bが形成されている。そして、該ガイド溝14bが収納凹部13Eの側壁面に形成されている突状部13aに係合されるとともに、ガイド溝14bの一方の端(
図2では上側の端部)が閉塞されている。また、収納凹部13Eの底壁には、突状部13aに対応する高さ位置に、小扉14の断面形状に対応した横長の矩形開口部13bと、取付けベース体13から本体ケース12が外れるのを防止する脱落防止ネジ23が挿通されるネジ挿通孔13eが形成されている。
【0019】
上記のような構成により、小扉14は、水平な姿勢では前後方向にスライド可能であり、上方へ回動させて開いた後に後方へ移動させることで指を離しても開状態を維持することができるとともに、前方に引き出された状態ではガイド溝14bの後端が突状部13aに当接することで、突状部13aを始点として上下方向に回動することができるようになっている。また、小扉14の両側部にリブ14a,14aが形成されているため、該リブが補強部材として機能し、開閉の際に強い力が加わったとしても扉が湾曲するのを防止することができるとともに、リブ以外の部位を薄くすることで、該小扉14が出入りする収納凹部13Eの奥部の矩形開口部13bの面積を小さくし、ケース内部への水が侵入しにくくすることができる。
なお、収納凹部13Eの底壁には、本体ケース12に内蔵される後述の回路基板上に設けられている電話コネクタに接続された電話ジャックに対応して電話機プラグを挿通可能にするための電話機プラグ差込口13cと、後述の押釦ロック解除用の復旧レバー17の先端が突出するための開口13dが形成されている。
【0020】
押釦11は、下方へ向かって伸びる2本の脚部11a,11aを有し、該脚部11a,11aの先端(図では下端)には、外側方へ向って突出する突起11b,11bが形成されており、
図5に示すように、該突起11b,11bが本体ケース12の前面下部に設けられている一対の支承部12c,12cに係合されることで、突起11b,11bを支点にして前後に回動可能に構成されている。また、押釦11の背部と本体ケース12との間には、圧縮バネ15および押釦スイッチ16が配設され、押釦11が圧縮バネ15のバネ力に抗して後方へ押圧されると、押釦スイッチ16がオンされるように構成されている。
【0021】
さらに、押釦11の上端には係止片11cが形成されているとともに、本体ケース12の前面の収容凹部12A内に収容され先端が上下動可能にされた復旧レバー17および該復旧レバー17を下方へ向かって押圧する圧縮バネ18が設けられており、押釦11が押圧されると上端の係止片11cが復旧レバー17の先端の爪17aに係合することで押圧された状態が保持される。また、この状態で、復旧レバー17の先端が圧縮バネ18のバネ力に抗して上方へ持ち上げられると、係止片11cと復旧レバー17の爪17aとの係合が外れ、圧縮バネ15のバネ力によって押釦11が前方へ押されて元の位置に復帰するように構成されている。
【0022】
また、本体ケース12の背部には、発光素子L1が実装された回路基板19および該回路基板19を覆う背面カバー21が、ネジ22によって装着されるように構成されている。本体ケース12には、押釦11の背部に相当する位置に発光素子L1の先端が突出する孔12dが形成されているとともに、押釦11が半透明な樹脂で形成されることで、押釦11を押すことにより押釦スイッチ16がオンされて火災発生を知らせる信号が受信機に伝送され、火災発信機からの信号で発光素子L1が点灯され、その光が半透明な押釦11を通して視認できるように構成されている。
【0023】
回路基板19上には、押釦スイッチ16がオンされたことを検知して火災発生信号を生成する信号生成回路や生成された信号火災受信機へ送信する信号出力回路、火災発信機からの信号を受信する信号受信回路、受信した信号に応じて発光素子L1を点灯させる駆動回路、電話ジャックに接続され火災発信機の電話機との間で通話信号を送受信する送受信回路などを構成する抵抗やコンデンサ、ICなどの電子部品が実装され、基板にはこれらの電子部品間を電気的に接続する配線パターンが形成されている。
【0024】
上記本体ケース12と取付けベース体13とは、取付けベース体13背部の収納枠部13Aと本体ケース12の前端部(小判状部分)との嵌め合いにより一体化され、取付けベース体13の収納枠部13Aの底壁に設けられているネジ挿通孔13eに挿通されるネジ23と、本体ケース12の収容凹部12A内に設けられたボス部12B内に埋設されたナット(図示省略)とによって結合されるように構成されている。
また、背面カバー21には、一対の固定用のネジ22が挿通される一対のネジ挿通孔21aと、上記回路基板19上の回路と火災受信機とを接続するリード線が結合される端子台19Aを露出させたりリード線を引き出したりするための開口部21bが設けられている。
【0025】
上記のような構成を有する火災発信機10は、例えば
図6に示すように、
取付けベース体13の収納枠部13Aの外形に対応した形状の開口30Aを有する消火栓箱や各種機器収容箱の扉のパネルあるいは建物の壁面に設けられている取付けパネルのようなパネル30を挟むようにして、火災発信機10とリング状のナット20を対向させ、火災発信機10の本体ケース12をパネル30の開口30A内に挿入して、背部に突出した取付けベース体13の外周面の部分雄ネジ13D1と13D2に、リング状のナット20の雌ネジ部20Aを螺合させることで、取付けベース体13とナット20とでパネル30を挟み込むことでパネル30に取り付けられる。
【0026】
さらに、本実施例の発信機においては、
図7(A)に拡大して示すように、取付けベース体13の外周面の部分雄ネジ13D1,13D2とナット20の雌ネジ部20Aの開口側端部に、数mmの幅でネジの未形成部13f1,13f2と20fがそれぞれ設けられている。これにより、取付けベース体13の部分雄ネジ13D1,13D2にナット20の雌ネジ部20Aを螺合させる際に、
図7(B)に示すように、先ず未形成部13f1,13f2と20fとを嵌合させてからナット20を回すことで、雄ネジと雌ネジの互いの始まり位置を確認しなくともナット20の螺合作業を容易に行なえるように工夫されている。
【0027】
すなわち、未形成部13fと20fが設けられていない場合には、取付けベース体13の部分雄ネジ13D1と13D2にナット20を接合させた際に、雄ネジの始まり位置と雌ネジの始まり位置がずれていると、ネジの噛み合わせが悪く、ナット20を回しても円滑に螺合せず、力を入れて無理やり回すとネジ山が破損してしまうおそれがあるが、未形成部13f1,13f2と20fを設けることにより、円滑な螺合が可能となる。
【0028】
さらに、ナット20に関しては、ネジの未形成部20fが、表裏両方の開口端側にそれぞれ設けられている。これにより、ナット20に表裏の別がなくなり、いずれの面を取付けベース体13の背面に対向させた状態でも円滑に螺合させることができるようになる。また、取付けベース体13側の雄ネジが上フランジ部13B1と下フランジ部13B2に対応した部分雄ネジであるため、全周にわたる雄ネジを形成したものに比べて小さな力でナット20を回して螺合させることができる。また、特に限定されるものではないが、本実施例では、ナット20と部分雄ネジ13D1,13D2には、2条ネジが使用されている。これにより、1条ネジに比べて短い時間に締め付け、取り外しが行なえる。
また、取付け時にネジが螺合し始める場所が対向配置されるので(180度間隔で2箇所)、リング状ナットを最大180度回転させれば螺合を開始させることができ、これにより取付け作業が容易になる。
【0029】
(第2実施例)
次に、
図8~
図10を用いて、本発明に係る火災発信機の第2実施例について説明する。
第2実施例は、
図8に示すように、発信機10と合体可能な装飾パネル40を設けたもので、本体ケース12と取付けベース体13を有する発信機10は、第1実施例の火災発信機と同じである。本実施例は、円盤状をなす既設の旧型火災発信機を、本発明に係る火災発信機に置き換える際に適用すると有効な実施例である。
【0030】
本実施例における装飾パネル40は、
図9に示すように、発信機10の左右両側方に位置する一対の弓形の補形部41A,41Bと、発信機10の取付けベース体13を収納可能な収納凹部42aを有する台座部42と、を備え、全体として円盤状をなすように構成されている。そして、台座部42の底壁中央には、発信機10の本体ケース12が挿通可能な開口43が形成され、該開口43の上縁および下縁には、装飾パネル40を壁面等に固定するためのネジを挿通させる切欠き43a,43bが設けられている。上記台座部42の底壁に、本体ケース12の部分ネジ周辺部後面12C(収容凹部12Aの裏面)が接触される。また、収納凹部42aの縁部には、取付けベース体13の上フランジ部13B1および下フランジ部13B2と横フランジ部13B3,13B4が接合される段差部42bが形成されている。
【0031】
図10には、上記のような構成を有する本実施例における装飾パネル40と一体の発信機10を設置する方法の一例が示されている。
図10に示すように、装飾パネル40と一体の火災発信機10は、装飾パネル40の裏面側に本体ケース12を挿入可能な開口44Aを有する取付け面としての設置用プレート44を配設し、設置用プレート44を、消火栓箱や各種機器収容箱の扉のパネルあるいは建物の壁面に設けられている取付けパネルのようなパネルの前面に図示しないネジにて取り付ける(取付けパネルに既設のネジ穴がある場合は、設置用プレートの対応する穴を利用する)。
次に、発信機10を取付けベース体13と本体ケース12に分けて、本体ケース12と設置用プレート44で、装飾パネル40を挟むようにして、ネジ45A,45Bを、収容凹部12Aを有し取付けベース体13の収納枠部(枠体部)13Aと係合する本体ケース12の収容枠部12Dの後壁に設けられた挿通孔12a,12bより装飾パネル40の切欠き43a,43bに挿通して、設置用プレート44の対応する位置に形成されているネジ穴(雌ネジ)46a,46bに螺合させることで取り付けられる。
なお、装飾パネル40が、発信機10と設置用プレート44とに共締めされる際、設置用プレート44の外郭円周部の切り欠き(
図10、本実施例では2か所)に、装飾パネル40裏面側に設けられた図示しないフック(本実施例では2か所)が係止されるようになっている。取付けパネルそのものにネジ穴等、上述した設置用プレート44の各機能を設けて設置用プレート44の代わりとしてもよい。
【0032】
(第3実施例)
次に、
図11~
図13を用いて、本発明に係る火災発信機の第3実施例について説明する。
第3実施例は、
図11に示すように、発信機10と合体可能な表示灯50を設けたもので、本体ケース12と取付けベース体13を有する発信機10は、第1実施例の発信機のものと同じである。本実施例は、建設中または増築中の建物等に新たに火災発信機や表示灯を設置する際に適用すると有効な実施例である。
【0033】
表示灯50は、
図12に示すように、発信機10の左右両側方に位置する一対の表示部51A,51Bと、発信機10の本体ケース12を収納可能な収納凹部52aを有する台座部52と、を備える。そして、台座部52の底壁中央には、発信機10の本体ケース12が挿通可能な開口53が形成されている。
また、表示部51A,51Bの背部側には、凹部が形成されており、該凹部内に発光素子を実装した基板が収納可能にされている。表示灯50は、赤色の塗料で着色された透明もしくは半透明の樹脂で形成されており、発光素子が点灯されると表示部51A,51Bは赤色で発光する。
【0034】
図13には、上記のような構成を有する本実施例における表示灯50と一体の発信機10を設置する方法の一例が示されている。
図13に示すように、火災発信機10は、
取付けベース体13の収納枠部13Aおよび表示灯50の台座部52の外形に対応した形状の開口30Aを有する消火栓箱や各種機器収容箱の扉のパネルあるいは建物の壁面に設けられている取付けパネルのようなパネル30を挟むようにして、火災発信機10とリング状のナット20を対向させるとともに、火災発信機10とパネル30との間に表示灯50を介在させた状態で、火災発信機10の本体ケース12をパネル30の開口30A内に挿入する。そして、背部に突出した取付けベース体13の外周面の部分雄ネジ13D1と13D2に、ナット20の雌ネジ部20Aを螺合させることで、パネル30に取り付けられる。また、取付けの際に、上記台座部52の底壁に、本体ケース12の部分ネジ周辺部後面12C(収容凹部12Aの裏面)が接触される。
【0035】
また、発信機10の本体ケース12裏面に2個の位置決め用突起12e(
図4参照)が設けられ、表示灯50の台座部52の底壁には、上記突起12eに対応する位置に当該突起12eの頭部が係合可能な位置決め用凹部52bが2個設けられており(
図12(A)参照)、火災発信機10と表示灯50とを合体させた際に、組み付け誤差を小さくし火災発信機10と表示灯50とのガタツキや位置ずれを減らすことができるようになっている。
【0036】
なお、表示部51A,51Bの背部に発光素子を収納しない形態としても良い。この場合、表示灯50は、第2実施例と同様、装飾パネルとみなすことができる。具体的には、本実施例の表示灯50と同形状で表示機能を有しない装飾パネル(60)であって、発信機10と同系色の塗料で着色された樹脂のものを用いれば、全体として従来から馴染みのある円形状の発信機(発信装置)となる。従って、表示灯と発信機を各々別個に設置する場合には、上述(実施例3)の表示灯50に替えて上記装飾パネル60を使用し、更に発信機10とリング状ナット20とを用いて、上述した表示灯50を用いた場合と同様の取付け方法により発信機として設置することができる。
また、本体ケース12内に発光素子を内蔵し、導光板等によって光を誘導して表示部51A,51Bを構成する透明パネルの端部に光を入射させて表示部51A,51Bの表面より出射させることで光らせるようにしても良い。
【0037】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記第2実施例と第3実施例においては、火災発信機と合体される装飾パネル40の左右の補形部41A,41Bや表示灯50の左右の表示部51A,51Bの形状として弓形を採用したものを示したが、
図14(A)に示すような三日月形、
図14(B)に示すようなかまぼこ形、
図14(C)に示すような三角形の形状を採用するようにしても良い。
【0038】
また、上記実施形態では、取付けベース体13の収納枠部13Aの上部と下部の外周面の部分雄ネジ13D1と13D2を設けているが、取付けベース体13のフランジ部13B1,13B2の背面に円弧状の固定片を設けて、その内周面に連続した雌ネジの一部をなす部分雌ネジを形成し、該部分雌ネジに、当該雌ネジの径に対応した径を有する雄ネジ部と把手部を有するリング状のボルトを螺合させることで、火災発信機を消火栓箱の扉等のパネルに取り付けられるように構成しても良い。
【0039】
また、上記第3実施例では、発信機の左右に配置される表示部51A,51Bの前面を、発信機の前面と連続するほぼ平坦な形状としたものを示したが、表示部51A,51Bは前方へ膨出したドーム状に形成しても良い。このようにしても、表示部51A,51Bは従来の砲弾形の表示灯に比べて突出量がかなり小さくなる上、平坦なものに比べて横方向から点灯状態を視認し易くなるという利点がある。
さらに、上記実施形態では、本発明を、火災報知システムを構成する火災発信機および該発信機と合体可能な装飾パネルまたは表示灯とを組み合わせた機器に適用したものを説明したが、本発明は火災発信機に限定されず、駅のプラットホームや踏切に設置される列車緊急報知用の発信機、トイレや浴室など設置される緊急呼出し用の発信機に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 発信機
11 押釦
12 本体ケース
12C 収容凹部12Aの裏面(後面)
12D 収容枠部
13 取付けベース体
13A 収納枠部(枠体部)
13B フランジ部
13D 部分雄ネジ
14 小扉
16 押釦スイッチ(検知手段)
17 復旧レバー(操作杆)
19 回路基板
20 リング状ナット(固定手段)
30 取付けパネル
40 装飾パネル
41A,41B 補形部
42 台座部
42a 収納凹部
50 表示灯
51A,51B 表示部
52 台座部
52a 収納凹部