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  • 特許-コア-複合シェルマイクロカプセル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】コア-複合シェルマイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/50 20060101AFI20221129BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20221129BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20221129BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20221129BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20221129BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20221129BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20221129BHJP
   B01J 13/10 20060101ALI20221129BHJP
   B01J 13/16 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C11D3/50
A61K8/11
A61K8/65
A61K8/73
A61K8/84
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q13/00 102
A61Q15/00
A61Q19/10
B01J13/10
B01J13/16
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021122340
(22)【出願日】2021-07-27
(62)【分割の表示】P 2018568729の分割
【原出願日】2017-06-29
(65)【公開番号】P2021167432
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】16177050.8
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ダルデル
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-036079(JP,A)
【文献】特表2012-512933(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041791(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/071150(WO,A1)
【文献】特表2015-536811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
B01J 13/02-13/22
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体または粉末形態のホームケアまたはパーソナルケア製品の形態の消費者製品であって、
界面活性剤0.1~50質量%および
コアセルベートの外側シェルと、ポリアミンまたはアミンからなる反応物の不存在下で少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートから形成された重合ポリイソシアネートからなる内側シェルと、疎水性活性成分を含む内相とを含み、ここで、前記内側シェルと前記外側シェルとが化学的に架橋されているコア-複合シェルマイクロカプセル
を含有する消費者製品。
【請求項2】
洗剤組成物、柔軟仕上げ剤、硬質表面洗浄組成物、食器洗い用組成物、シャンプー、ヘアコンディショナー、シャワームースもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、制臭剤、または制汗剤の形態である、請求項1に記載の消費者製品。
【請求項3】
前記コアセルベートが、第1の高分子電解質と第2の高分子電解質とを含有する、請求項1または2に記載の消費者製品。
【請求項4】
前記第1の高分子電解質がゼラチンであり、前記第2の高分子電解質が、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルグアーガム、キサンタンガムおよび植物ガムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3記載の消費者製品。
【請求項5】
前記第2の高分子電解質がアラビアガムであることを特徴とする、請求項4記載の消費者製品。
【請求項6】
前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートが、前記内相の0.1質量%から30質量%までの間に含まれる量で存在することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の消費者製品。
【請求項7】
前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の消費者製品。
【請求項8】
前記疎水性活性成分が、香料、香味料、栄養補助食品、化粧品、昆虫防除剤、殺生物活性物質およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の消費者製品。
【請求項9】
前記疎水性活性成分が、香料を含むことを特徴とする、請求項8記載の消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアセルベートと合成ポリマーによって形成されたコアと複合シェルの両方を含む送達システム、および疎水性活性成分、例えば香油もしくは香味油を含有する液体、固体、エマルジョンまたは分散液をカプセル化するための送達システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
香料添加剤は、ホームケアおよびボディケア製品などの消費者製品、特に洗濯用組成物を消費者にとってより魅力的で心地良いものにし、かつ多くの場合、香料は、それによって処理された布地に心地良いフレグランスを付与する。しかしながら、水性洗濯浴から布地への香料のキャリーオーバーの量にはしばしば限界がある。香料添加剤をマイクロカプセルにカプセル化することによって、香料添加剤の送達効率および有効寿命を改善することができる。マイクロカプセルは、洗濯用組成物中の不適合な成分との物理的または化学的反応から香料を保護するほか、揮発または蒸発から香料を保護するなど、いくつかの利点を提供する。マイクロカプセルは、布地が乾燥したときにのみ破裂して香料を放出するマイクロカプセルによって香料が送達されて布地内に保持され得るという点で、香料の送達および保存に特に有効であり得る。マイクロカプセルの破裂は、カプセルが劣化したときに内容物が送達されるように、温度などの様々な要因によって引き起こされ得る。あるいはマイクロカプセルは、粉砕などの物理的な力、またはマイクロカプセルの完全性を損なう他の方法によって破壊され得る。さらに、マイクロカプセル内容物は、所望の時間間隔の間にカプセル壁を通過する拡散によって送達されてもよい。
【0003】
洗濯物に関連する香りは、多くの消費者にとって重要である。消費者が洗濯体験の間に連想する多くのいわゆる「タッチポイント」が存在する。これらのタッチポイントの非限定的な例には、ファブリックケア容器を開くこと、洗濯物を洗濯した後に洗濯機を開くこと、洗濯物を乾燥した後に洗濯乾燥機を開くことに関連する新鮮さの体験や、洗濯した衣類を着用することに関連する新鮮さが含まれる。洗濯物を洗濯してから約1日後に洗濯物を折畳んで片付ける消費者がかなりの割合でいることが報告されている。洗濯物を洗濯してから約1日後に洗濯物を折り畳んでいるときの新鮮さも、洗濯物が清潔であることを消費者に知らせる。
【0004】
パーソナルケア製品およびボディケア製品は、香料に対する消費者の体験が非常に重要である他のカテゴリーの商品を構成し、香料送達システムは、使用中の香料ブルーミングまたはさらに長期持続効果など、消費者から期待される利益を提供するために必要である。
【0005】
多層カプセルが当該技術分野で公知である。米国特許出願公開第2005/0112152号明細書(US2005/0112152)は、一般的に、カチオン性コーティングなどの第2のコーティングでさらにコーティングされたカプセル化フレグランスを記載している。英国特許出願公告第1257178号明細書(GB1257178)は、既に形成された一次フィルム層の欠陥部分、例えばその中に存在するクラック、毛細管マイクロポア等における親水性液体と疎水性液体の界面に二次フィルム層を形成して欠陥を充填することによって製造された多層カプセルを開示している。
【0006】
英国特許出願公告第1141186号明細書(GB1141186)は、一方が水性ビヒクル中に存在し、他方が内相中または内相上に存在する2つの反応物間の界面反応によって最初に水性ビヒクル中に内相の液滴または固体粒子をプレコーティングし、次いでコアセルベーションによって別のコーティングを施すことによって製造された二重壁カプセルを開示している。
【0007】
米国特許第5,180,637号明細書(US5,180,637)は、一次壁が重縮合反応によって調製されたアミノ樹脂からなり、二次壁が樹脂のポリイオンコンプレックスとポリスチレンスルホン酸またはその塩とのコアセルベーションによって形成され、それによって液滴が一次壁に堆積させられている二重壁マイクロカプセルを記載している。これらのマイクロカプセルは、熱および湿気に対して改善された抵抗性を有すると言われているが、重ね合わされた別個の層からなるシェルの構造は離層して、透過性が高いままである製品を提供する可能性が高い。
【0008】
Fan他は、交互積層技術による制御された厚さの高分子電解質シェルで取り囲まれたトリアリルアミン含有コアを有するマイクロカプセルの調製を報告している(「Preparation of oil core/multilayerpolyelectrolyte shell microcapsules by a coacervation method(コアセルベーション法による油コア/多層高分子電解質シェルマイクロカプセルの調製)」,Materials Science Forum (2011),vol.675-677(Pt.2,Adv.Mat.Science and Technology),p.1109-1112)。
【0009】
国際公開第2014044840号(WO2014044840)は、香油のフレグランス成分などの活性剤を送達するための多層コア/シェルマイクロカプセルの製造方法を開示している。この方法は、活性剤を含有する内相を取り囲むコアセルベーションによって外側シェルを形成し、内相と外側シェルとの間の界面での界面重合によって内側シェルを形成することを含む。この文献では、重合反応は、反応物の存在を必要とする。なぜなら、前記重合反応は、イソシアネートと反応物(特に、ジアミンまたはポリオール)との間で誘発されてポリウレアポリマーを形成するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2005/0112152号明細書
【文献】英国特許出願公告第1257178号明細書
【文献】英国特許出願公告第1141186号明細書
【文献】米国特許第5,180,637号明細書
【文献】国際公開第2014044840号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Preparation of oil core/multilayerpolyelectrolyte shell microcapsules by a coacervation method,Materials Science Forum (2011),vol.675-677(Pt.2,Adv.Mat.Science and Technology),p.1109-1112)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
多層カプセルは当該技術分野において一般的に知られているが、これらのカプセルの品質および/またはそれらを製造する方法は改善の余地がある。したがって、当業界では、単純化された費用対効果の高い方法により調製されたカプセル化材料のための改良されたバリア特性および放出特性を有するマイクロカプセルが要求されている。本発明は、当業界のこうしたニーズや他のニーズを満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
アミンまたはポリアミンなどの反応物の不存在下でポリイソシアネートの重合から形成された複合壁を既存のコアセルベートシェル中に形成することにより、香油などの疎水性活性成分をカプセル化するマイクロカプセルが得られることが今や見出された。意外にも、使用されるそのようなポリイソシアネートの量が非常に限られていても、それらのカプセルは安定性に関して高い性能を示す。
【0014】
第1の態様では、本発明は、
(i)水性ビヒクル中の分散液として、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートと疎水性活性成分とを含む疎水性内相を準備する工程と、
(ii)複合コアセルベートノジュール(nodules)の懸濁液を形成するために十分な条件下で、水性ビヒクル中で第1と第2の高分子電解質を混合する工程と、
(iii)疎水性内相に隣接する水性ビヒクルの界面に複合コアセルベートノジュールを堆積させてマイクロカプセルの外側シェルを形成する工程であって、疎水性内相がコアを形成し、該コア中にポリイソシアネートと疎水性活性成分とを含有する工程と、
(iv)外側シェルの内側でポリイソシアネートの界面重合を誘発して、内相と外側シェルとの間の界面に内側シェルを形成し、かつコア-複合シェルマイクロカプセルスラリーを形成するために十分な条件を提供する工程と
を含む、コア-複合シェルマイクロカプセルスラリーの製造方法において、この方法のいずれの段階においても、ポリイソシアネートと重合して内側シェルを形成しやすいアミンまたはポリアミンを添加しないことを特徴とする方法に関する。
【0015】
第2の態様では、本発明は、コアセルベートの外側シェルと、ポリアミンまたはアミンからなる反応物の不存在下で少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートから形成された重合ポリイソシアネートから本質的になる内側シェルと、疎水性活性成分を含む内相とを含み、ここで、内側シェルと外側シェルとが複合構造を形成するコア-複合シェルマイクロカプセルに関する。
【0016】
第3の態様では、本発明は、消費者製品用の付香組成物としての、本明細書に開示されたコア-複合シェルマイクロカプセルの使用に関する。これらの消費者製品は、一般的に、その中にマイクロカプセルを含むホームケア製品またはパーソナルケア製品の形態であり、好ましくは液体または粉末の形態であり、特に洗剤組成物、柔軟仕上げ剤、硬質表面洗浄組成物、または食器洗い用組成物、またはシャンプー、ヘアコンディショナー、シャワームースもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、制臭剤、または制汗剤として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のコア-複合シェルマイクロカプセルの製造方法を示す図である。
図2】40℃での貯蔵時間の関数としての油漏れ率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に記載がない限り、%は組成物の質量%を表すことを意味する。
【0019】
本発明によれば、「ポリイソシアネートと重合して内側シェルを形成しやすいアミンまたはポリアミンが存在しない」とは、存在していても、添加されるアミンまたはポリアミンの量は、アミンまたはポリアミンがポリイソシアネートと反応した場合にマイクロカプセルの特性を著しく変えることができないように十分に少なくなければならないことを意味する。一般的には、本発明の方法において添加することができるアミン官能基の量は、イソシアネート官能基の量の50%モル未満、好ましくは25%モル未満、最も好ましくは10%モル未満である。
【0020】
特定の実施形態によれば、ポリイソシアネートと重合して内側シェルを形成しやすいアミンまたはポリアミンは、工程(iii)と工程(iv)の間では添加されない。
【0021】
特定の実施形態によれば、この方法は、ポリイソシアネートと重合して内側シェルを形成しやすいアミンまたはポリアミンを全く添加しない。
【0022】
本発明によれば、「プロセスのいずれの段階においても、ポリイソシアネートと重合して内側シェルを形成しやすいアミンまたはポリアミンを添加しない」とは、界面重合中に起こるポリイソシアネートの自己重合のみによって内側シェルが形成されることを意味するものと理解されたい。
【0023】
言い換えれば、外側シェルの形成に作用する第1と第2の高分子電解質は、したがって、「プロセスのいずれの段階においても、ポリイソシアネートと重合して内側シェルを形成しやすいアミンまたはポリアミンを添加しない」の規定からは除外される。
【0024】
本発明によれば、「コア-複合シェルマイクロカプセル」とは、2つの相互連結した層を有する複合シェルを含むマイクロカプセルを指し、それは、化学的または物理的相互作用によって連結され、それによって1つの複合構造を形成する層からなるシェルを意味する。
【0025】
物理的または化学的相互作用として、共有結合、イオン結合、配位共有結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、キレート化、または立体効果を挙げることができる。
【0026】
本発明は、ヒドロゲル/ポリウレア複合構造の二重壁シェルを有する複合コア-シェルマイクロカプセルを調製するための単純化された費用対効果の高い方法に関する。ポリイソシアネートと反応して前記合成ポリマーを形成するアミンまたはポリアミンなどの水溶性反応物がなくても、これまでに知られているものと同等またはそれ以上の性能を有するカプセルが得られることがわかった。このことは、ポリイソシアネートのための水溶性反応物としてのアミンまたはポリオールの存在が、要求される特性を有するそのような複合膜を調製するのに必須であることが先行技術に開示されていたことからも驚くべきことである。本発明の方法は、とりわけ安定性に関して利益をもたらすことを示す膜組成物および特定の構造を提供する。
【0027】
本発明では、2つの方法、すなわち、(外側ヒドロゲルシェルを形成する)複合コアセルベーション法と、(内側ポリマーシェルを形成する)アミンが存在しない界面重合法とを組み合わせて、良好な特性を有するコア/複合シェルカプセルが得られる。理論に縛られることなく、マイクロカプセルの外側シェルを構成するコアセルベートは、内側ポリマーシェルの重合のためのスカフォードとして作用すると考えられる。そのような組合せは2つの相互連結した層を有する複合膜の形成をもたらす。2つの相互連結した層を有する複合膜とは、化学的および物理的相互作用によって連結され、それによって1つの分離不可能な実体を形成する層からなる膜を意味する。したがって、その構造は、外側コアセルベートが内側ポリマーシェルに連結されているようなものである。相互連結した層を有するそのような複合膜は、機械的破壊時でさえも相互に連結したままであり、したがって、それらは(1層ずつ相次いで離層または破壊されるのではなく)全体として破壊される。
【0028】
したがって、界面重合を誘発するための反応物を添加せずに同一プロセスユニット内で複合コアセルベーションと界面重合プロセスの両方を実施することによって、本発明の方法は、所望の特性を示すカプセルも提供しつつ、プロセス時間およびプロセスコストを有利に低減する。
【0029】
第1の対象として、本発明は、
(i)水性ビヒクル中の分散液として、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートと疎水性活性成分とを含む疎水性内相を準備する工程と、
(ii)複合コアセルベートノジュールの懸濁液を形成するために十分な条件下で、水性ビヒクル中で第1と第2の高分子電解質を混合する工程と、
(iii)疎水性内相に隣接する水性ビヒクルの界面に複合コアセルベートノジュールを堆積させてマイクロカプセルの外側シェルを形成する工程であって、疎水性内相がコアを形成し、該コア中にポリイソシアネートと疎水性活性成分とを含有する工程と、
(iv)外側シェルの内側でポリイソシアネートの界面重合を誘発して、内相と外側シェルとの間の界面に内側シェルを形成し、かつコア-複合シェルマイクロカプセルスラリーを形成するために十分な条件を提供する工程とを
含む、コア-複合シェルマイクロカプセルスラリーの製造方法において、この方法のいずれの段階においても、ポリイソシアネートと重合して内側シェルを形成しやすいアミンまたはポリアミンを添加しないことを特徴とする方法に関する。
【0030】
特定の実施形態によれば、この方法のいずれの段階においても、グアニジン塩、トリス-(2-アミノエチル)アミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン、グアナゾール、リジンからなる群から選択されるアミンまたはポリアミンは添加されない。
【0031】
1つの実施形態によれば、この方法のいずれの段階においても、ポリイソシアネートと重合しやすいアミンまたはポリアミン以外に、ポリオール、チオール、ウレア、ウレタンおよびそれらの混合物からなる群において選択される他の水溶性反応物が本質的な量で添加されることはない。
【0032】
本発明のマイクロカプセルを製造するための一般的な方法は、以下の工程を含み、図1に図式化されている。
【0033】
複合コアセルベーションによる外側ヒドロゲルシェルの形成
反対に帯電した2種類の高分子電解質を、特定の温度、pHおよび濃度条件下で混合して、複合コアセルベートノジュールの懸濁液が生成するようにポリマー相分離を誘導する。当業者は、高分子電解質の性質に従って、最適条件(pH、条件)を選択することができるであろう。複合コアセルベートノジュールは、コア-シェルカプセルを形成するために活性界面に堆積させなければならない。任意に、カプセルは化学的または酵素的架橋工程を経る。さらに、カプセル化されるべき疎水性活性剤、典型的には香油などの芳香物質は、内側シェルを形成するために重合される適切なポリイソシアネートを既に含有していなければならない。
【0034】
コアセルベート/油界面での重合による内側シェルの形成
本発明によれば、カプセルのコア内に含まれるポリイソシアネートの重合は、水性ビヒクル中にいかなるアミンまたはポリアミンも添加する必要なしに誘導される。
【0035】
実際、少なくとも3つのイソシアネート官能基を含むポリイソシアネート-好ましくは芳香族-は、疎水性内相中に限られた量でも存在さえしていれば、良好な特性を有するカプセル壁を提供するのに十分な効率で重合できることがわかった。
【0036】
理論に縛られることなく、ポリイソシアネートの高い反応性のために、内相(油相)と水性ビヒクル(水相)とが経時的に混合されるとすぐに内相中に存在するポリイソシアネートの重合がプロセスの開始時に起こると考えられ、それによってプロセス時間が短縮される。
【0037】
1つの実施形態によれば、ポリイソシアネートの重合は、コアセルベートの形成のための条件と同じ条件下(pH、温度)で行われる。
【0038】
しかしながら、プロセス中に温度および/またはpHを調整して、界面重合速度を制御してもよい。
【0039】
特定の実施形態によれば、工程(iv)で得られるマイクロカプセルスラリーのpHは、シェルの構造を保つために7を超える値には調整されない。
【0040】
実際、アルカリ性pHでは、ヒドロゲルシェルを構成するコアセルベートは可溶化してシェルを破壊し、最終的にマイクロカプセルの構造を崩壊させる可能性がある。
【0041】
1つの実施形態によれば、全プロセス中の溶液のpHは7以下である。
【0042】
理論に縛られることなく、コアセルベートまたはヒドロゲルシェルは、ポリイソシアネートを重合させることができ、それによって内側のポリウレアシェルを形成することができるスカフォードとして作用すると考えられる。
【0043】
本発明のマイクロカプセルは、以下の成分から製造される:
(a)第1の高分子電解質(高分子電解質I)
(b)第2の高分子電解質(高分子電解質II)
(c)少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する1種のポリイソシアネート
(d)マイクロカプセル内にカプセル化された疎水性活性剤。
【0044】
(a)1電荷の第1の高分子電解質(高分子電解質I)であって、好ましくは反対の電荷を有する電解質または高分子電解質と相互作用することで、カプセルを形成するために疎水性界面を被覆する能力を有するコアセルベート相を形成することができるタンパク質の中から選択される。好ましい実施形態では、高分子電解質Iは、ゲル化温度未満の水中でゲルまたは高粘性溶液を形成し、かつゲルの融点を超える温度にて水中でより低粘度の溶液を形成するように、pH<8で正に帯電する。ゲル化温度を超える温度での粘度は、典型的には0.1Pa・sよりも低い;ゲル化温度未満では、ゲルの弾性率G’は、剪断レオメトリーに基づく測定方法(そのような方法は、ゲル化温度に関連する規定と共に、例えば、Parker,A.and Normand,V.,Soft Matter,6,pp.4916-4919(2010)に記載されている)を用いて、ゲル形成後の最初の24時間の間に測定した場合、典型的には0.1~15kPaの範囲である。好ましくは、高分子電解質Iはゼラチン物質である。
【0045】
(b)高分子電解質Iと比較して反対極性の電荷を持つ多糖類または他のポリマーの中から好ましく選択される第2の高分子電解質(高分子電解質II)。一般的に、高分子電解質IIは、pH>2で負に帯電する。好ましくは、高分子電解質IIは、pH>2で弱く負に帯電しているにすぎない高分子電解質である;そのような高分子電解質は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルグアーガム、またはキサンタンガム、またはさらにアラビアガムなどの植物ガムである。最も好ましくは、それはアラビアガム(gum arabic)である。高分子電解質1と高分子電解質2との間の比は、好ましくは10/0.1から0.1/10までの間に含まれる。
【0046】
1つの実施形態によれば、pHが8未満の場合、第1の高分子電解質は、正の実効電荷を帯び、pHが2よりも大きい場合、第2の高分子電解質は、負の実効電荷を帯びる。
【0047】
1つの実施形態によれば、第1の高分子電解質はゼラチンであり、第2の高分子電解質は、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルグアーガム、キサンタンガムおよび植物ガムからなる群から選択される。
【0048】
好ましい実施形態によれば、第1の高分子電解質はゼラチンであり、第二の高分子電解質はアラビアガムである。
【0049】
(c)本発明に従って使用される適切なポリイソシアネートには、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよびそれらの混合物が含まれる。本発明によれば、内相は、少なくとも3つのイソシアネート基を有するが、最大6つの、またはさらに4つのみのイソシアネート官能基を有していてもよい少なくとも1種のポリイソシアネートを含む。
【0050】
特定の実施形態によれば、トリイソシアネート(イソシアネート官能基が3つ)が使用される。
【0051】
1つの実施形態によれば、ジイソシアネート(イソシアネート官能基が2つ)とトリイソシアネート(イソシアネート官能基が3つ)との混合物が使用される。
【0052】
特定の実施形態によれば、疎水性内相は、本質的にジイソシアネートを含まない。
【0053】
特定の実施形態によれば、前記ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートである。
【0054】
「芳香族ポリイソシアネート」という用語は、本明細書では、芳香族部分を含む任意のポリイソシアネートを包含することを意味する。芳香族部分は好ましくは、フェニル、トルイル、キシリル、ナフチルまたはジフェニル部分、より好ましくはトルイルまたはキシリル部分を含む。好ましい芳香族ポリイソシアネートは、ジイシアネートのビウレット、ポリイソシアヌレートおよびトリメチロールプロパン付加物であって、より好ましくは上記の特定の芳香族部分の1つを含む。より好ましくは、芳香族ポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(商品名Desmodur(登録商標)RCでバイエル社から市販されている)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名Desmodur(登録商標)L75でバイエル社から市販されている)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンの付加物(商品名Takenate(登録商標)D-110Nで三井化学株式会社から市販されている)である。最も好ましい実施形態では、芳香族ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物である。
【0055】
他の実施形態によれば、前記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートである。「脂肪族ポリイソシアネート」という用語は、いかなる芳香族部分も含まないポリイソシアネートとして規定される。好ましい脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社から入手可能)またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(商品名Desmodur(登録商標)N 100でバイエル社から市販されている)であり、その中でもヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットがさらに好ましい。
【0056】
別の実施形態によれば、前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、いずれも少なくとも2つまたは3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートとの混合物、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレートとの混合物、およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物の形態である。最も好ましくは、それはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物である。好ましくは、混合物として使用される場合、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとの間のモル比は、80:20~10:90の範囲である。
【0057】
1つの実施形態によれば、本発明の方法で使用される少なくとも1種のポリイソシアネートは、疎水性内相の好ましくは0.1~30質量%、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~10質量%、さらにより好ましくは2~8質量%を占める量で存在する。
【0058】
当業者は、所望の用途の性質に従って、適切な量のポリイソシアネートを選択することができるであろう。
【0059】
特定の実施形態によれば、疎水性内相は、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートを有する疎水性活性成分から本質的になる。
【0060】
内側シェルの体積は、典型的には、シェルの全体積の0.1~99%、好ましくは0.1~80%を占める。
【0061】
(d)「疎水性活性成分」とは、水中で二相溶液を形成する任意の活性成分-単一成分または成分の混合物-を意味する。
【0062】
疎水性活性成分は、好ましくは、香味料、香味成分、香料、香料成分、栄養補助食品、化粧品、昆虫防除剤、殺生物活性物質およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0063】
疎水性内相中に存在する昆虫防除剤の性質と種類は、ここではより詳細な説明を保証するものではなく、それらはいずれにせよ網羅的なものではなく、当業者はその一般的知識に基づいてと、意図された使用または用途に従ってそれらを選択することができる。
【0064】
そのような昆虫防除剤の例は、カバノキ、DEET(N,N-ジエチル-m-トルアミド)、レモンユーカリの精油(Corymbia citriodora)およびその活性化合物であるp-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、イカリジン(ヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシレート)、ネペラクトン、シトロネラ油、ニーム油、ヤチヤナギ(Myrica Gale)、ジメチルカルバメート、トリシクロデセニルアリルエーテル、IR3535(3-[N-ブチル-N-アセチル]-アミノプロピオン酸、エチルエステル、エチルヘキサンジオール、ジメチルフタレート、メトフルトリン、インダロン、SS220、アントラニル酸塩系防虫剤、およびそれらの混合物である。
【0065】
特定の実施形態によれば、疎水性活性成分は、香料と、栄養補助食品、化粧品、昆虫防除剤および殺生物活性物質からなる群から選択される別の成分との混合物を含む。
【0066】
特定の実施形態によれば、疎水性活性成分は香料を含む。
【0067】
特定の実施形態によれば、疎水性活性成分は香料からなる。
【0068】
「香油」(または「香料」とも)とは、本明細書では、約20℃で液体である成分または組成物を意味する。上記実施形態のいずれか1つによれば、前記香油は、付香成分単独または付香組成物の形態の成分の混合物であり得る。「付香成分」とは、本明細書では、匂いを付与または調節するという主な目的のために使用される化合物を意味する。言い換えれば、そのような成分は、付香するものとしてみなされるべきであり、匂いを有するだけでなく、少なくとも組成物の匂いをポジティブに、または心地良いものとして付与または改変することができるものとして当業者によって認識されなければならない。本発明の目的のために、香油には、付香成分と、香料前駆体、エマルジョンまたは分散液などの付香成分の送達を一緒に改善、増強または改変する物質との組合せのほか、長期持続、ブルーミング、悪臭防止、抗菌効果、微生物安定性、昆虫防除など、匂いを改変または付与すること以上の追加の利益を付与する組合せも含まれる。
【0069】
疎水性内相中に存在する付香成分の性質と種類は、ここではより詳細な説明を保証するものではなく、それらはいずれにせよ網羅的なものではなく、当業者は自身の一般的知識に基づき、かつ意図された使用または用途および所望の官能効果に従って、それらを選択することができる。一般的観点からは、これらの付香成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫黄複素環式化合物および精油のような多種多様の化学種に属し、かつ前記付香共成分は、天然起源または合成起源のものであり得る。これらの共成分の多くは、いずれの場合も、参照テキスト、例えば、S.Arctanderによる書籍「Perfume and Flavor Chemicals(1969,Montclair,New Jersey,USA)」、またはそのより最近の版、または類似の他の著作物のほか、香料の分野における豊富な特許文献にも記載されている。前記成分は、様々な種類の付香化合物を制御して放出することで知られている化合物でもあり得ることも理解される。
【0070】
付香成分は、香料産業において現在使用されている溶媒に溶解することができる。溶媒は、好ましくはアルコールではない。そのような溶媒の例は、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(イーストマン社から入手可能なロジン樹脂)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネンもしくは他のテルペン、またはイソパラフィンである。好ましくは、溶媒は、例えばAbalyn(登録商標)または安息香酸ベンジルのように、非常に疎水性で、かつ高度に立体障害である。好ましくは、香料は、30%未満の溶媒を含む。より好ましくは、香料は、20%未満、さらにより好ましくは10%未満の溶媒を含み、ここで、これら全ての百分率は、香料の総質量に対する質量で規定される。最も好ましくは、香料は、本質的に溶媒を含まない。
【0071】
本発明による方法は、工程(iv)で得られたスラリーを乾燥させて、乾燥コア-複合シェルマイクロカプセルを得る更なる工程を含むことができる。
【0072】
内側シェルが、ポリアミンまたはアミンからなる反応物の不存在下で少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートから形成された重合ポリイソシアネートから本質的になる、上記実施形態のいずれかに規定される方法によって得られるコア-複合シェルマイクロカプセルスラリーまたはコア-複合シェルマイクロカプセルが、本発明の別の対象である。
【0073】
「本質的に」とは、内側シェル中に存在するアミンまたはポリアミンの量が、それがポリイソシアネートと反応した場合にマイクロカプセルの特性を著しく変えることができないように十分に少ないことを意味する。
【0074】
本発明の別の対象は、コアセルベートの外側シェルと、ポリアミンまたはアミンからなる反応物の不存在下で少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートから形成された重合ポリイソシアネートから本質的になる内側シェルと、疎水性活性成分を含む内相とを含み、ここで、内側シェルと外側シェルとが複合構造を形成するコア-複合シェルマイクロカプセルである。
【0075】
本発明によるマイクロカプセルは、単純化された方法で調製され、特にポリイソシアネートと重合するアミンまたはポリアミンである反応物が存在しないにもかかわらず、特に、類似の方法で調製された(ただしアミンまたはポリアミンが存在する)カプセルと比較して安定性に関して同等以上の性能を示す。
【0076】
本発明のマイクロカプセルは、典型的にはゼラチン、アラビアガムおよび水を含有する膜と、ポリイソシアネートと疎水性活性成分(例えば香油)を含有する内相とを含むコア/複合シェル系である。
【0077】
典型的には、本発明のマイクロカプセルは、1μm~5,000μm、好ましくは5μm~1,000μmの平均コア半径サイズを有する。100μm~500μmの平均コア半径サイズを有するマイクロカプセルは、特定のボディケア製品に有用であることが証明された。他の場合では、平均コア半径サイズが10~40μmのマイクロカプセルもまた有用であることが証明された。マイクロカプセルのサイズは、所望の用途の性質に応じて当業者によって容易に調整されることができる。
【0078】
内側シェルの体積は、典型的には、シェルの全体積の0.1~99%、好ましくは0.1~80%を占める。
【0079】
最終的な複合膜特性は、カプセルコア内のポリイソシアネートの濃度などの複数の要因に依存する。カプセル膜の初期厚さも最終複合膜特性に影響を与える。ポリイソシアネートの濃度は、最終生成物中の遊離ポリイソシアネートの濃度が安全要件を確実に下回るように調整される。
【0080】
本発明の他の対象は、
(i)本発明において規定されるマイクロカプセルスラリーと、
(ii)香料担体および香料共成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
(iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤と
を含む付香組成物である。
【0081】
液体香料担体として、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、または香料に一般的に使用される溶媒を挙げることができる。香料に一般的に使用される溶媒の性質と種類の詳細な説明は網羅的になり得ない。しかしながら、最も一般的に使用されているジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノールまたはクエン酸エチルなどの溶媒を非限定的な例として挙げることができる。香料担体および香料共成分の両方を含む組成物については、上記で特定したもの以外の他の適切な香料担体が、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、イソパラフィン、例えば商品名Isopar(登録商標)(製造元:エクソンケミカル社)として知られているもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えば商品名Dowanol(登録商標)(製造元:ダウケミカルカンパニー社)として知られているものなどであってもよい。「香料共成分」とは、本明細書では、快楽効果を付与するために付香調製物または組成物において使用され、上記で規定されるマイクロカプセルではない化合物を意味する。言い換えれば、そのような共成分は、付香するものとしてみなされるべきであり、匂いを有するだけでなく、組成物の匂いをポジティブに、または心地良いものとして付与または改変することができるものとして当業者によって認識されなければならない。
【0082】
付香組成物中に存在する付香共成分の性質と種類は、ここではより詳細な説明を保証するものではなく、それらはいずれにせよ網羅的なものではなく、当業者はその一般的知識に基づき、かつ意図された使用または用途および所望の官能効果に従ってそれらを選択することができる。一般的観点からは、これらの付香共成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫黄複素環式化合物および精油のような多種多様の化学種に属し、かつ前記付香共成分は、天然起源または合成起源のものであり得る。これらの共成分の多くは、いずれの場合も、参照テキスト、例えば、S.Arctanderによる書籍「Perfume and Flavor Chemicals(1969,Montclair,New Jersey,USA)」、またはそのより最近の版、または類似の他の著作物のほか、香料の分野における豊富な特許文献にも記載されている。前記共成分は、様々な種類の付香化合物を制御して放出することで知られている化合物でもあり得ることも理解される。
【0083】
「香料補助剤」とは、本明細書において、色、特定の耐光性、化学安定性などの更なる追加の利益を付与することができる成分を意味する。香料基剤において一般的に使用される補助剤の性質と種類の詳細な説明は網羅的になり得ないが、前記成分は当業者に周知であることを述べておく必要がある。
【0084】
好ましくは、本発明による付香組成物は、上記で規定されるマイクロカプセル0.1~30質量%を含む。
【0085】
本発明のマイクロカプセルは複数の用途を有する。例えば、本発明のマイクロカプセルは、以下のものに限定されないが、ボディウォッシュ、ボディケア、エアケアおよびファインフレグランスなどの消費者製品を含む、コアセルベーションまたは界面重合によって製造されたカプセルを使用することができる香料用途に含めることができる。1つの実施形態では、強い接着特性を有するカプセルが好ましい。タンパク質と弱アニオン性高分子電解質とによって形成されるシェルのコアセルベート成分の存在が、本発明のカプセルに優れた接着特性を提供する。
【0086】
本明細書に記載される本発明のマイクロカプセルは、ホームケアまたはパーソナルケア用の消費者製品中の付香成分として使用することができる。
【0087】
実際、本発明によるマイクロカプセルは、単純化された方法で調製され、特にポリイソシアネートと重合するアミンまたはポリアミンである反応物が存在しないにもかかわらず、他の類似の先行技術のカプセルの安定性および性能を著しく低下させることが知られている、多量(典型的には自重の10%超)の特定の種類の界面活性剤/張力活性剤/溶媒を含有する消費者製品においてさえ良好な安定性を示す。
【0088】
本明細書中に開示されるマイクロカプセルの使用は、化学的に攻撃的な環境において満足のいく安定性を提供する。言い換えれば、様々な用途におけるカプセルの使用は、他の類似の先行技術のカプセルの同じ使用よりも予測不可能な利点を提供する。
【0089】
本発明はまた、好ましくはホームケア製品またはパーソナルケア製品の形態である消費者製品におけるそのようなマイクロカプセルまたは付香組成物の使用に関する。そのような製品は、固体製品または液体製品のいずれであってもよい。特定の実施形態によれば、液体製品が好ましい。「ホームケアまたはパーソナルケア」という表現は、ここでは当技術分野における通常の意味を有し、特に、ボディケア、ヘアケアまたはホームケア製品などの製品を含む。本発明による液体製品の例は、シャンプーまたはヘアコンディショナー、液体洗剤、柔軟仕上げ剤、シャワーまたはバスムース、オイルまたはジェル、制臭剤または制汗剤からなる群から選択することができる。好ましくは、液体着香製品は、シャワージェル、シャンプー、液体洗剤または柔軟仕上げ剤である。本発明による固形製品の例は、棒状石鹸、粉末洗剤またはエアフレッシュナーからなる群から選択することができる。洗剤製品として、洗剤組成物または様々な表面、例えば、テキスタイル品、皿もしくは硬質表面(床、タイル、石敷など)向けの表面を洗浄もしくは清浄するための洗浄製品などの用途が考えられる。好ましくは、表面はテキスタイルである。
【0090】
好都合には、本発明のマイクロカプセルは、消費者製品を着香するためにそのまま使用することができる。例えば、マイクロカプセルは、消費者製品に0.1~30質量%の量で直接添加することができ、例えば、その結果、香料の全含有量は約0.0333~10質量%となる。好ましくは、本発明による消費者製品は、上記で規定され、かつ香油成分を含有するカプセル中で、約0.01~4質量%、さらには4.5%の自重を含む。もちろん、上記の濃度は、各製品に望まれる嗅覚効果に従って適合させることができる。
【0091】
本発明はまた、本発明のマイクロカプセルと洗浄性成分を含む洗濯用および洗浄用組成物などの消費者製品を提供する。好ましくは、洗濯用および洗浄用組成物は、洗剤組成物、硬質表面洗浄組成物、および食器洗い用組成物からなる群から選択される。本発明はまた、噴霧、乾式混合、およびそれらの組合せから選択される手段によって、本発明のマイクロカプセルを洗浄性成分と混合する工程を含む、そのような洗濯用および洗浄用組成物の製造方法を提供する。
【0092】
最も好ましくは、洗濯用および洗浄用組成物は、ファブリック洗剤または柔軟剤組成物である。本発明のマイクロカプセルを組み込むことができるファブリック洗剤または柔軟剤組成物の典型的な例は、国際公開第97/34986号(WO97/34986)または米国特許第4,137,180号明細書(U.S.Pat.No.4,137,180)および米国特許第5,236,615号明細書(U.S.Pat.No.5,236,615)または欧州特許出願公開第799885号明細書(EP799885)に記載されている。使用することができる他の典型的な洗剤および柔軟剤組成物は、Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,vol.A8,pp.315-448(1987)およびvol.A25,pp.747-817(1994);Flick,Advanced Cleaning Product Formulations,Noye Publication,Park Ridge,N.J.(1989);Showell,Surfactant Science Series,vol.71:Powdered Detergents,Marcel Dekker,New York(1988);Proceedings of the World Conference on Detergents(4th,1998,Montreux,Switzerland),AOCS printなどの刊行物に記載されている。
【0093】
したがって、本発明の方法は、カプセルの接着性および機械的特性を改善するヒドロゲルシェル(コアセルベート)と、追加の優れたバリア特性を提供する内側シェル(ポリウレア)とを含む、強固で安定したマイクロカプセルを提供するための費用対効果の高い解決策である。
【0094】
本発明の方法によって得られたマイクロカプセルは、カプセルが乾燥状態にある場合の活性剤の蒸発に対する非常に優れた耐性のほか、過酷な環境、例えば洗剤または界面活性剤溶液中でのカプセルの不安定化に対する非常に優れた耐性も示す。
【0095】
最終製品の安全状態に応じて、本発明のマイクロカプセルは、コアセルベーションによって製造されたカプセルが一般的に使用される食品用途にも使用され得る。
【0096】
以下では、本発明を実施例によってさらに説明する。特許請求の範囲に記載の本発明は、これらの実施例によって決して限定されることを意図するものではないことを理解されたい。
【実施例
【0097】
例1
グルタルアルデヒドで架橋された複合ポリウレア/コアセルベートカプセル:本発明によるカプセルX1(プロセス中にアミンもポリアミンも添加しない)
豚ゼラチン10質量%の水溶液(A)(250ブルーム、供給元:ノーランド社)とアラビアガム15質量%(B)(Efficacia(登録商標)、CNI社)を別々に調製する。
【0098】
カプセル化されるフレグランスを、10%のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、三井化学株式会社)(C)と混合する。40℃の容器中で、31.8gの溶液(A)と21.2gの溶液(B)を、165.3gの温かい脱塩水に機械的剪断下で添加する。1M HClを用いてpHを4.5に調整する。混合物を15分間40℃に維持する。
【0099】
31.8gの溶液(C)をゆっくりと混合物に添加し、600μmの平均液滴サイズに達するように5分間230rpmで均質化する。溶液を0.2~0.3℃/分の速度で10℃に冷却させながら、機械的剪断を維持する。撹拌速度をわずかに低下させ、0.102gのグルタルアルデヒド(水性50質量%、供給元:シグマアルドリッチ社)を混合物に添加する。カプセル懸濁液を20~25℃で4~10時間混合する。
【0100】
その結果、マイクロカプセルの水性懸濁液またはスラリーが得られる。
【0101】
例2
グルタルアルデヒドで架橋された複合ポリウレア/コアセルベートカプセル:本発明によるカプセルX1’(プロセス中にアミンもポリアミンも添加しない)
豚ゼラチン10質量%の水溶液(A)(250ブルーム、供給元:ノーランド社)とアラビアガム15質量%(B)(Efficacia(登録商標)、CNI社)を別々に調製する。
【0102】
カプセル化されるフレグランスを、8%のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、三井化学株式会社)(C)と混合する。40℃の容器中で、29.2gの溶液(A)と14.4gの溶液(B)を、130.9gの温かい脱塩水に機械的剪断下で添加する。1M HClを用いてpHを4.5に調整する。混合物を15分間40℃に維持する。
【0103】
24.5gの溶液(C)をゆっくりと混合物に添加し、600μmの平均液滴サイズに達するように5分間230rpmで均質化する。溶液を0.2~0.3℃/分の速度で10℃に冷却させながら、機械的剪断を維持する。撹拌速度をわずかに低下させ、0.102gのグルタルアルデヒド(水性50質量%、供給元:シグマアルドリッチ社)を混合物に添加する。カプセル懸濁液を20~25℃で4~10時間混合する。
【0104】
その結果、マイクロカプセルの水性懸濁液またはスラリーが得られる。
【0105】
比較例3
グルタルアルデヒドで架橋された多層ポリウレア/コアセルベートカプセル:プロセス中にアミンを使用した対照カプセルX2
(A)豚ゼラチン10質量%の水溶液(250ブルーム、供給元:ノーランド社)と(B)アラビアガム10質量%(Efficacia(登録商標)、CNI社)と(C)グアナゾール3質量%を別々に調製する。カプセル化されるフレグランスを、(D)8%のイソシアネート(トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Desmodur(登録商標)N4、供給元:バイエルマテリアルサイエンス社)と混合する。
【0106】
40℃の容器中で、25.4gの溶液(A)と12.7gの溶液(B)を、92.8gの温かい脱塩水に機械的剪断下で添加する。1M HClを用いてpHを4.5に調整する。混合物を15分間40℃に維持し、次いで0.5℃/分の速度で35~31℃に冷却する。
【0107】
19.1gの溶液(D)をゆっくりと混合物に添加し、600μmの平均液滴サイズに達するように5分間250rpmで均質化する。溶液を0.5℃/分の速度で10℃に冷却させながら、機械的剪断を維持する。撹拌速度をわずかに低下させ、0.102gのグルタルアルデヒド(水性50質量%、供給元:シグマアルドリッチ社)を混合物に添加する。架橋は20℃で4~10時間進行させる。
【0108】
次いで、20gの溶液(C)を1ml/分の速度でマイクロカプセルの水性懸濁液に添加する。混合物を室温で1~4時間撹拌下に維持するか、または任意に40~70℃の温度に加熱する。
【0109】
その結果、複合ポリウレア/コアセルベートシェルを有するカプセルの水性懸濁液またはスラリーが得られ、ここで、コアセルベート成分は、ゼラチンとアラビアガムによって形成される。
【0110】
例4
シャワージェル用途における安定性
例3に従って調製したコアセルベート化カプセル(X2)と、例1および2に従って調製した本発明のヒドロゲル/ポリウレアカプセル(X1およびX1’)の安定性を、シャワージェル中で比較した。使用したシャワージェルベースモデルは、50%脱イオン水、5%増粘剤(ルブリゾール社から入手可能なアクリレート/ベヘネス-25メタクリレートコポリマー)、43%界面活性剤(パレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタイン)、0.5%防腐剤(安息香酸ナトリウム)から構成されていた;水酸化ナトリウムとクエン酸をpH値の調整のために使用する。
【0111】
対照カプセル(X2)は、本発明によるヒドロゲル/ポリウレアカプセルの内相と同じ活性剤を含有していた。図2に示すように、例1および2に記載したように(すなわちアミンを使用せずに)調製したヒドロゲル/ポリウレアカプセルは、アミンを使用して調製した対照コアセルベートカプセルと同程度に安定である。この結果は、驚くべきことに、プロセス中にアミンが存在しなくても、高濃度の界面活性剤媒体にさらされたときにカプセルの安定性に影響が生じないことを実証している。
【0112】
したがって、本発明は、費用対効果が高いだけでなく、時間がかからない最適化された方法を提供する。
図1
図2