(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電解装置システムまたは燃料電池システム用の触媒装置、電解装置システム、燃料電池システム、触媒装置の使用および触媒装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C25B 11/091 20210101AFI20221129BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20221129BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20221129BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20221129BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20221129BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20221129BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20221129BHJP
C01B 13/02 20060101ALI20221129BHJP
C01B 15/027 20060101ALI20221129BHJP
C25B 11/031 20210101ALI20221129BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20221129BHJP
C25B 11/061 20210101ALI20221129BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20221129BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C25B11/091
B01J23/42 M
B01J23/46 M
B01J23/46 301M
B01J23/89 M
B01J35/04 331A
B01J35/04 351
B01J37/02 301P
C01B3/02 H
C01B13/02 B
C01B15/027
C25B11/031
C25B11/052
C25B11/061
H01M4/86 B
H01M4/86 M
H01M4/88 K
(21)【出願番号】P 2021500140
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 DE2019100471
(87)【国際公開番号】W WO2020007392
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】102018116373.8
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジヴァンシ ヴィヴェカナンサン
(72)【発明者】
【氏名】ヤシャール ムサイェフ
(72)【発明者】
【氏名】エトガー シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】モーリッツ ヴェーゲナー
(72)【発明者】
【氏名】ラディスラウス ドブレニツキ
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152296(JP,A)
【文献】米国特許第06306270(US,B1)
【文献】特表2009-534175(JP,A)
【文献】特開2017-179408(JP,A)
【文献】特開2011-184767(JP,A)
【文献】特表2015-525286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/147680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C25B 1/00-15/08
H01M 4/86- 4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解装置システムまたは燃料電池システム用の触媒装置(1)であって、触媒担体ユニット(2)および触媒層(3)を含み、前記触媒担体ユニット(2)がステンレス鋼、または第4~第6の周期の1つ以上の遷移金属を含む発泡体もしくはメッシュを有し、前記触媒層(3)
は、前記触媒担体ユニット(2)上に形成され、金属、非金属および/または半金属のドーピング(4)を含む炭素マトリックス(5)を有
する物理蒸着
層であることを特徴とする、触媒装置(1)。
【請求項2】
前記炭素マトリックス(5)は非晶質炭素から形成されるまたは黒鉛マトリックスの形態で存在することを特徴とする、請求項1に記載の触媒装置(1)。
【請求項3】
前記ドーピング(4)が、前記触媒層の0.1原子%以上20原子%以下を構成することを特徴とする、請求項1または2に記載の触媒装置(1)。
【請求項4】
前記ドーピング(4)が、ルテニウム:Ru、イリジウム:Ir、および白金:Ptのうち少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒装置(1)。
【請求項5】
前記ドーピング(4)が、ニッケル:Ni、マンガン:Mn、コバルト:Co、鉄:Fe、およびモリブデン:Moのうち少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒装置(1)。
【請求項6】
前記ドーピング(4)が、アルミニウム:Al、およびスズ:Snのうち少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒装置(1)。
【請求項7】
前記ドーピング(4)が、硫黄:S、リン:P、窒素:N、酸素:O、およびホウ素:Bのうち少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の触媒装置(1)。
【請求項8】
水分解および/または過酸化水素発生用の電解装置システムであって、前記電解装置システムが請求項1から7いずれか一項に記載の触媒装置(1)を含むことを特徴とする、電解装置システム。
【請求項9】
酸素還元反応用の燃料電池システムであって、前記燃料電池システムが請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒装置(1)を備えることを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項10】
水分解および/または過酸化水素発生用の電解装置システムの一部として、または酸素還元反応用の燃料電池システムの一部としての、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒装置(1)の使用。
【請求項11】
電解装置システムまたは燃料電池システム用の触媒装置(1)を製造する方法であって、前記触媒装置(1)が、ステンレス鋼、または第4~第6の周期の1つ以上の遷移金属を含む発泡体もしくはメッシュを有する触媒担体ユニット(2)と、触媒層(3)とを含み、前記触媒層(3)が、金属、非金属および/または半金属のドーピング(4)を含む炭素マトリックス(5)を有するように物理蒸着方法を用いて前記触媒担体ユニット(2)上に堆積されることを特徴とする、触媒装置(1)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体ユニットおよび触媒層を含む、電解装置システムまたは燃料電池システム用の触媒装置に関する。本発明はまた、水分解および/または過酸化水素発生用の電解装置システム、ならびに酸素還元反応用の燃料電池システムに関する。さらに、本発明は、水分解および/または過酸化水素発生用の電解装置システムの一部として、または酸素還元反応用の燃料電池システムの一部としての触媒装置の使用に関する。本発明はさらに、触媒装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような触媒装置は既知であり、電解装置または燃料電池の電極として使用されている。
【0003】
電解装置では、とりわけ、チタンまたは炭素に担持された貴金属、例えばIr、Ru、またはPtが使用される。さらに、Kjartansdoettir et al.,International Journal of Hydrogen Energy,38(2013),9221-8231は、ニッケル、ステンレス鋼、またはニッケル基合金でコーティングされたステンレス鋼の電極としての使用を開示している。炭素に担持された貴金属触媒は、燃料電池でよく使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高価な材料、特に貴金属の使用により、そのような触媒装置は高価であることが多い。電解装置と燃料電池の長期安定性および効率もまた、使用される触媒装置によって主に決定される。したがって、これらの分野でのさらなる開発は、コストを削減し、効率を高めることができる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この背景に対して、材料コストを低減して製造でき、および/または耐用年数が長い電解装置システムまたは燃料電池システム用の耐食性触媒装置を提供するという目的が生じる。
【0006】
この目的は、触媒担体ユニットおよび触媒層を含む、電解装置システムまたは燃料電池システム用の触媒装置によって達成され、触媒層は、金属、非金属および/または半金属のドーピングを含む炭素マトリックスを有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、特定の貴金属などの大量の高価な材料を省くことができるので、比較的経済的に製造することができる、有利な耐食性触媒コンバータ装置を提供することが可能である。同時に、特に本発明による触媒層の使用により、改善された長期安定性を達成することができる。特に、触媒層は、反応および/または逆反応(例えば、水の酸化)を加速し、反応速度(すなわち、速度論の変化)を増加させる機能を有する。
【0008】
特に、ドーピングは、触媒層または炭素マトリックスの0.1原子%~20原子%を構成する(または触媒層または炭素マトリックス中にそのような比率を有する)と考えられる。
【0009】
好ましくは、触媒層がドープされた炭素マトリックスからなり、さらなる(より多い)量のさらなる(高価な)材料を含まないことが考えられる。
【0010】
炭素マトリックスは、例えば、非晶質炭素から形成することができる。あるいは、炭素マトリックスは、黒鉛マトリックスの形態で存在することができる。例えば、Triondur(登録商標)コーティングは触媒層と見なすことができる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、触媒担体ユニットは、例えば、触媒層への接着を改善するために、中間層を含むことが考えられる。
【0012】
本発明によれば、触媒層がいくつかの部分層を含むことが考えられる。例えば、それぞれが炭素マトリックスに基づくいくつかの部分層を上下に配置して、異なるドーピングまたはドーピング元素を有することができる。あるいは、部分層が同じドーピング特性を有することが考えられる。
【0013】
本発明によれば、触媒層は、触媒装置のカバー層、すなわち外層であることが好ましい。したがって、触媒層の触媒特性および耐食性が特に有利な効果を有することが可能である。
【0014】
有利な実施形態によれば、触媒担体ユニットはステンレス鋼を有するように提供される。特に、触媒担体ユニットは、少なくとも基本的に鋼、特にステンレス鋼からなることが考えられる。
【0015】
本発明の一実施形態は、触媒担体ユニットが、第4~第6の周期の1つ以上の遷移金属を含む発泡体またはメッシュを有するように提供する。触媒担体ユニットが、第4~第6の周期の1つ以上の遷移金属から構成される発泡体またはメッシュからなることが特に考えられる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、ドーピングは、1つ以上の貴金属、特にルテニウム:Ru、イリジウム:Ir、および/または白金:Ptを有するように提供される。特に、貴金属(単数または複数)が触媒層または炭素マトリックスの0.1重量%~2重量%を構成する(または触媒層または炭素マトリックス中にそのような比率を有する)ことが考えられる。ドーピングがルテニウムおよび/またはイリジウムを有することが特に好ましい。
【0017】
一実施形態によれば、ドーピングは、好ましくは、第4~第6の周期の1つ以上の遷移金属、特にニッケル:Ni、マンガン:Mn、コバルト:Co、鉄:Fe、および/またはモリブデン:Moを有することが考えられる。第4から第6の周期の遷移金属は、触媒層または炭素マトリックスの0.1原子%~5原子%を構成する(または触媒層または炭素マトリックス中にそのような比率を有する)と考えられる。ドーピングはニッケルおよび/またはマンガンを有することが特に好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態は、ドーピングが、1つ以上のさらなる金属、特にアルミニウム:Al、および/またはスズ:Snを有するように提供する。特に、さらなる金属(単数または複数)は、触媒層または炭素マトリックスの0.1原子%~3原子%を構成する(または触媒層または炭素マトリックス中にそのような比率を有する)と考えられる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、ドーピングは、1つ以上の非金属および/または1つ以上の半金属、特に硫黄:S、リン:P、窒素:N、酸素:O、および/またはホウ素:Bを有するように提供される。特に、半金属(単数または複数)および/または非金属(単数または複数)は、触媒層または炭素マトリックスの0.1原子%~8原子%を構成する(または触媒層または炭素マトリックス中にそのような比率を有する)と考えられる。ドーピングが窒素および/または酸素を有することが特に好ましい。
【0020】
本発明の別の主題は、水分解および/または過酸化水素発生用の電解装置システムであり、電解装置システムは、本発明のいずれか一実施形態による触媒装置を備えることを特徴とする。
【0021】
これにより、本発明によれば、長期安定性が向上した電解装置システムを提供すると同時に、貴金属などの高価な材料成分の使用を削減することが有利に可能である。したがって、酸素発生反応および水素発生反応(ODRおよびHDR)ならびに過酸化水素発生反応を特に効率的に行うことができる。
【0022】
本発明の別の主題は、酸素還元反応用の燃料電池システムであり、燃料電池システムは、本発明のいずれか一実施形態による触媒装置を備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、長期安定性が向上した燃料電池システムを提供すると同時に、貴金属などの高価な材料成分の使用を削減し、酸素還元反応(ORR)を効率的に実施できるという利点がある。
【0024】
上記の目的を達成するために、本発明のいずれか一実施形態による触媒装置の使用が、水分解および/または過酸化水素発生用の電解装置システムの一部として、または酸素還元反応用の燃料電池システムの一部として提案される。
【0025】
さらに、上記の目的を達成するために、本発明のいずれか一実施形態による触媒装置を製造する方法が提案され、触媒層は、物理的蒸着方法または薬液塗布方法を用いて触媒担体ユニット上に堆積されることを特徴とする。
【0026】
さらに、触媒装置に関連して説明された有利な構成、実施形態および特徴は、電解装置システム、燃料電池システム、触媒装置の使用および触媒装置を製造する方法において、単独でまたは組み合わせて使用することもできる。
本発明のさらなる詳細および利点は、図面に示される例示的な実施形態を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】電解装置システムまたは燃料電池システム用の本発明による触媒装置の例示的な実施形態を概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、電解装置システムまたは燃料電池システム用の本発明による触媒装置1の例示的な実施形態を概略図で示す。触媒装置1は、触媒担体ユニット2および触媒層3を含む。触媒担体ユニット2は、例えば、ステンレス鋼から、または第4~第6の周期の1つ以上の遷移金属を含む発泡体もしくはメッシュからなることができる。触媒層3は、触媒担体ユニット2の上方に配置されている。これは、典型的には、触媒装置1の外側部分を表す、すなわち、それは、触媒担体ユニット2から反対に面している側に自立しており、したがって、流体と接触させることができる。図示された触媒層3は、ドーピング4を有する炭素マトリックス5から基本的になる。触媒層3がいくつかの部分層を含む、すなわち、層システムとして設計されることが考えられる。ドーピング4は、金属、半金属、および/または非金属を含むことができる。例えば、ドーピング4は、ルテニウム、イリジウム、および/または白金などの1つ以上の貴金属を有することができる。代替的または追加的に、ドーピングは、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄、および/またはモリブデンなどの第4~第6の周期の1つ以上の遷移金属を有することができる。代替的または追加的に、ドーピングは、硫黄、リン、窒素、酸素、および/またはホウ素などの1つ以上の非金属および/または1つ以上の半金属を有することができる。この場合も、代替的または追加的に、ドーピングは、アルミニウムおよび/またはスズなどの1つ以上のさらなる金属を含むことができる。
【0029】
触媒担体ユニット2は、触媒層3(図示せず)に隣接する1つ以上の中間層を含むことが考えられる。
【0030】
触媒担体ユニット2および触媒層3を含む、電解装置システムまたは燃料電池システム用の触媒装置1の例示的実施形態が説明され、触媒層3は、金属、非金属および/または半金属のドーピング4を含む炭素マトリックス5を有する。
【符号の説明】
【0031】
1 触媒装置
2 触媒担体ユニット
3 触媒層
4 ドーピング
5 炭素マトリックス