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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】JCO成形プレスの拡張された制御
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/01 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B21D5/01 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021500293
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019068370
(87)【国際公開番号】W WO2020011772
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】102018211311.4
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】トーメ・マリオ
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-250285(JP,A)
【文献】特表2014-508042(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192043(WO,A1)
【文献】特表2015-513371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板(3)からスリット管(4、104)を製造する方法であって、
金属板(3)を管成形プレス(1)に供給し、管成形プレス(1)において、金属板(3)を、下型(6)に載置して、昇降可能な上型(9)によって、曲げ力を加えることにより、漸進的に、後の縦シーム溶接のために間隙(11、111)を置いて相互に対向する長手方向縁を有するスリット管(4、104)へと成形し、
漸進的に成形される金属板(3)に進入する上型(9)の縦軸線によって設定された中央に対してそれぞれ左右で金属板(3)の内側面に作用する少なくとも1回の曲げ加工ステップで成形を行うことによって、非円形のプリフォーム(13)を有するスリット管(4、104)を製造する、方法において、
各々の金属板(3)の現時点での形状を求め、求めた形状に基づいて、スリット管(4、104)の左右側における幾何学モデルを用いて、回動角度回動長さとの少なくとも一方、又はプリフォーム(13)の位置決めのための変数を求め、
プリフォーム(13)への変形加工時における上型(9)のピストンシリンダユニットの圧力及びストロークの経過のオンラインでの測定及び評価によって、金属板(3)左右側で要求されるプレスストロークの変数を求め、位置決めのための変数とプレスストロークの変数とに基づいて、それぞれ左右で金属板(3)の内側面に作用する曲げ加工ステップの程度を決定することを特徴とする、金属板(3)からスリット管を製造する方法。
【請求項2】
続いて、外側から非円形のプリフォーム(13)に、それぞれ適切に、予め中央から両側で比較的わずかに成形された領域に作用する押付け力を加えることによって、完成したスリット管(4、104)の仕上げ成形を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非円形プリフォーム(13)を、仕上げ段階で、押付け力(F)を加える前に、時計回り方向又は反時計回り方向の回動によって位置決めすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
求項1から3のいずれか1項に記載の方法を実施するための、金属板(3)からスリット管(4、104)を製造する装置であって、
金属板(3)を管成形プレス(1)に供給し、管成形プレス(1)において、金属板(3)を、下型(6、15)に載置して、昇降可能な上型(9)によって、曲げ力を加えることにより、漸進的に、後の縦シーム溶接のために間隙(11、111)を置いて相互に対向する長手方向縁を有するスリット管(4、104)へと成形し、
金属板(3)を非円形のプリフォーム(13)へと変形加工し、その後で、スリット管(104)へと変形加工するために、回動方向を逆転可能な手段を有して構成された下型(15)と、外側から、位置決めされたプリフォーム(13)に力を印加可能なパンチ(19)とが設けられている、装置において、
成形された金属板(3)の現時点での形状を測定する手段が設けられていて、測定する手段は、オンライン測定及び評価された、プリフォーム(13)への変形加工時における上型(9)のピストンシリンダユニットの圧力及びストローク経過に関する値を提供することができる制御のための装置に接続されていることを特徴とする、金属板(3)からスリット管(4、104)を製造する装置。
【請求項5】
制御部は、金属板(3)の個々の全ての変形加工ステップを個別に制御するように設計されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
非円形のプリフォーム(13)を作製する少なくとも1つの管成形プレス(1)に押付けプレス(14)が後置されていて、押付けプレス(14)は、回動方向を逆転可能な手段を有して構成された下型(15)と、上型(20)として、外側から、位置決めされた非円形のプリフォーム(13)に力を印加可能なパンチ(19)とを有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
下型(15)が、相互に間隔を置いて配置された、回動可能な被駆動の2本のローラ(16a16b)と、ローラ(16a16b)の間に設けられた設置体(17)とを有することを特徴とする、請求項4から6のいずれか1項に記載の設備。
【請求項8】
ローラ(16a16b)が、ばね手段(18)を介して支持されていることを特徴とする、請求項7に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板、特に厚い金属板からスリット管を製造する方法であって、金属板を管成形プレスに供給し、管成形プレスにおいて、金属板を、下型に載置して、昇降可能な上型によって、曲げ力を加えることにより、漸進的に、後の縦シーム溶接のために間隙を置いて相互に対向する長手方向縁を有するスリット管へと成形する、方法に関する。さらに、本発明は、方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板から管を製造するための、実地において用いられる方法に、管成形プレスに基づく、漸進的な成形ステップ又は曲げ加工ステップを有する管成形プレス法が挙げられる。管成形プレス又は管曲げ加工プレスは、通常、ベースフレームに、側方に間隔をおいて相並んで配置された2つの支持体又は曲げ加工体からなる下型と、鉛直方向に上方から下型に当接可能な、昇降可能な曲げ加工ブレードによって支持された、金属板の全長にわたって延在する上型とを有し、上型によって、曲げ力を、下型に載置された金属板に加えることができる。
【0003】
漸進的な成形法による管又は大径管の製造には、連続する複数の作業ステップが必要である。金属板は、第1のステップで、通常、独立した縁曲げ加工プレスにおいて長手方向縁で粗曲げ加工される。長手方向縁の粗曲げ加工が行われ、これにより、後でシームとなる領域においてスリット管へと変形加工するとき、管径が均一に仕上げ成形される。後でシームとなる領域では、管へと曲げ加工される金属板の長手方向縁が、相互に間隙を置いて縦シーム溶接のために対向する。そのように粗曲げ加工された金属板は、次いで、管成形プレスに導入され、そこで、実際に曲げ加工プロセスにさらされる。この場合、プレス上部を下方へ押し付けることによって、曲げ力が金属板に加えられ、その際、曲げ加工ブレード及び曲げ加工ブレードによって支持された上側の成形工具の作用のもとで、金属板の変形加工が調整される。このような経過が、金属板がスリット管へと変形加工されるまで複数回繰り返される。
【0004】
独国特許発明第4215807号明細書によって、フレーム構造式に構成された管曲げ加工プレス又は管成形プレスが知られている。曲げ加工工具として構成されたブレードは、フレームのサイドスタンドに鉛直方向にガイドされている。この上部曲げ加工工具は、ピストン・シリンダ・ユニットにわずかに自在継手式に可動に取り付けられていて、ピストン・シリンダ・ユニットを介して上部フレーム横材に支持されている。下部曲げ加工工具の支持体は、テーブルに支持され、このテーブルを同様に、上部ピストンシ・シリンダ・ユニットに対して同軸に作用するピストン・シリンダ・ユニットによって支持されている。互いに対して作用するこれらのピストン・シリンダ・ユニットは、たとえ下部フレーム横材がプレスの作動荷重を受けてたわんだとしても、テーブルのたわみを防止するはずである。そのために個々のピストン・シリンダ・ユニットに大小の圧力が加えられる。
【0005】
漸進的な成形法では、ブレード幅によって大きな影響を受け、特に、例えば40mmの厚肉の管の場合に残存する、約130mm~170mmのスリットの大きな残留間隙と、さらにスリット管における応力とが、極めて問題であることが分かっている。大きなスリット幅が、タック溶接装置に大きな閉鎖力を必要とし、タック溶接された管における高い応力のみならず仕上げ溶接された管における残留応力によっても、タック溶接シーム又は溶接シームが裂開するおそれがある。スリット幅が大きすぎると認識されると、熟練の機械オペレータが、管成形プレスの手動操作を繰り返すことによって、可能な限りスリットを閉じることによる対策を講じる。この処理方式は、時間がかかり、これに相応して処理能力が低下するだけでなく、再現可能な良好な品質で実施することもできない。
【0006】
欧州特許出願公開第2529849号明細書において、まず漸進的に成形される金属板にまで進入する上型の縦軸線によって設定された中央に対してそれぞれ左右で、金属板の内側面に作用する曲げ加工ステップで、別の曲げ加工ステップよりもわずかな成形が行われることによって、非円形のプリフォームを有するスリット管が作製され、その際、外側から非円形のプリフォームに、それぞれ、予め中央から両側で比較的わずかに成形された領域において作用する押付け力を適切に加えることによって、完成したスリット管が仕上げ成形される。装置側では、金属板を非円形のプリフォームへと変形加工し、その後でスリット管へと変形加工するために、回動方向を逆転可能な手段を有して構成された下型と、外側から、位置決めされたプリフォームに力を印加可能なパンチとが設けられている。
【0007】
さらに、ロシア国特許出願公開第2543657号明細書において、縦シーム溶接された導管に用いられる製造方法が公知である。この方法では、粗圧延材から粗管の主要輪郭を成形すること、これに続いて成形された粗管の長手方向縁を結合すること、タブを溶接すること、この側縁を閉位置で縦結合シームを形成しつつ溶接すること、外側輪郭を得るために、作製された管を拡張することが含まれ、その際、粗管の外側輪郭の成形の後で、粗管の後変形加工が少なくとも2段階で行われ、その際、第1の段階では、粗管の側縁の、周の上側の点に位置する間隙を有する出発位置から、50°~60°の角度だけ回動され、この位置で固定され、その後で、外側面の上側の領域で、粗管の長さにわたって均一に分配された圧力が加えられ、この圧力は、大きさΔ=0.1S-0.4Sだけ粗管軸線の方へこの領域の鉛直方向の変位をもたらす。この場合、Sは、粗管の側縁の間の間隙の大きさであり、間隙は、主要輪郭の成形後に生じ、これに続いて力が解消され、第2の後成形段階では、軸周りに反対方向に、粗管の回動が、隙間の鉛直方向位置に対して第1の段階のときと同一の角度だけ行われ、粗管は、この位置で固定され、次いで、外側面の上側の領域で、粗管の全長にわたって均一に分配された圧力が加えられる。圧力は、第1の段階と同一の大きさΔだけ粗管軸線の方へこの領域の鉛直方向の変位をもたらし、その際、粗管の両方の後成形段階の後で、側縁間の隙間サイズは、この物品にとって許容される最大値よりも大きく、粗管のさらに少なくとも2つの後成形段階が、第1の両段階と同様に実行される。
【0008】
しかし実際には、金属板にわたる降伏点のばらつきによって、成形後に、それぞれわずかに異なるスリット管が閉鎖プレスに到来するようになることが判明した。スリット管は、一部でより大きい又はより小さい半径を有し、これにより、様々なスリット幅が認められる。しかも、半径が左右で異なる大きさであり得、これは、閉鎖プレスの最適な運転が管ごとのみならず左右でも適合されたパラメータを要するほどに問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許発明第4215807号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2529849号明細書
【文献】ロシア国特許出願公開第2543657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた様式の方法及び設備を、前述の欠点なく提供することであり、特に肉厚で直径が小さな、例えば約800mmの管であっても、容易に、再現可能な品質で円筒形のスリット管の製造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項5の特徴を有する装置とによって解決される。
【0012】
したがって、まずは部分的にわずかな成形、例えば24°の曲げ加工の代わりに12°の曲げ加工で、要求に合わせた非円形のプリフォームを意図的に作製することで、最小限のスリットを有する、略円形のスリット管形状を成形することができる。要するに、続いて外側から加えられる押付け力が、その際にも、わずかに形成された領域において、他の管部分よりも顕著により持続的に作用し、その結果、所望のように狭幅に閉じられた間隙を有する略円形のスリット管が得られるという条件が、比較的わずかに成形された領域によって作り出される。機械オペレータの経験に依存するときとは違い、一定の品質が維持され、再現性が改善されるのみならず、処理能力も高まる。
【0013】
部分的に非円形のプリフォームのみならず最終成形又は仕上げ成形のためにも、2つの曲げ加工ステップ又は2つの押付け動作で十分であり得、これは、それぞれ間隙又はスリットの左右に加えられる押付け力による最終成形のときにもいえる。
【0014】
本発明によれば、個々の全ての管について、そして成形されるべき金属板のそれぞれ両側について、個別の回動パラメータ及びプレスパラメータが求められる。スリット管において個別の輪郭が求められるべきであり、これにより、スリット管の左右の側についての相応の幾何学モデルを介して、スリット管の位置決めのための、特にそれぞれ目下の管位置を起点とする回動角度及び回動長さの、要求に合わせたパラメータが求められる。さらに、本発明によれば、圧力距離経過の実時間評価によって、目下の降伏点、ひいては金属板の左右の側について要求されるストロークの推測を行うことができる。これにより、通常、位置決め及び押付けの両方に際して、管ごとにそして左右で異なる、回動又はプレスストロークに関するパラメータが用いられ、例外的に、金属板の全体にわたって材料の降伏点が絶対的に同一であるときにだけ、回動又はプレスストロークに関する同一のパラメータが用いられる。
【0015】
そのために、目下の幾何学形状を求める測定装置が必要である。測定装置は、好適には、測定ロボットの形態で、閉鎖プレス時に管端部に配置することができる。本発明によれば、制御部が、距離と圧力とに関して算出された値の実時間出力を提供するはずであり、これにより、降伏点に依存したストローク制御が実現される。
【0016】
本発明による好適な一実施形態では、成形プレスにおいて偶数のステップが選択されるので、閉鎖を、場合によっては単一の押付けステップだけによって行うことができる。そのために、先行技術において既知のように、第1の側は、非円形性を得るために低減された進入深さで作製され、しかしこの場合、第2の側は、好適には従来慣用の管、特に丸管のように成形されるべきである。偶数の合計ステップ数での第2の側の最後のステップは、管中央ではなく、管中央に対して側方に変位して位置するので、支持管を変形加工ブレードに過度に強く当接することなく幾何学形状的な実現性を実現することが可能である。この場合、好適には、最終間隙は、変形加工ブレードと支持管部分との所望されない接触を回避するために、過度に小さく選択されるべきではない。
【0017】
本発明のさらに好適な一実施形態では、JCO成形プレスで、偶数のステップ数で非対称のプリフォームを生産することもできる。これは、従来では奇数の変形加工ステップで行うことしかできなかった。これにより、最後の変形加工ステップが、もはやスリット管の中央に位置せず、スリット管の縁と変形加工ブレードとの衝突を防止することができる。
【0018】
本発明の利点は、金属板をスリット管へと変形加工する際にできるだけ均一の結果を得るために、閉鎖プロセスにおいて、個々の全ての管に合わせて個別に反応することができる、つまり要求に合わせた回動及びプレスストローク実行することができることにある。これによって、総じて、より良い品質が達成される。というのも、スリット管が、より均一な形でタック溶接機に進入し、相応してタック溶接プロセスでより均一な管が生産されるからである。固定の機械パラメータを用いるときに生じ得たようなスリット管輪郭のばらつきは、十分に最小限に抑えられる。先行技術において知られていて、必要とされていたような、複数回の押付けを回避することができるので、本発明に係る装置の処理能力を高めることができる。成形プレスにおいて非対称プリフォームが偶数のステップ数で作製されるとき、閉鎖は、場合によっては単一のステップへと減らすこともできる。
【0019】
本発明による有利な構成手段は、非円形のプリフォームが、仕上げステップで押付け力を加える前に、時計回り方向又は反時計回りの回動によって位置決めされることを想定している。したがって、位置決めに応じて、押付け力が、スリット又は間隙の左右横で非円形のプリフォームに導入される。
【0020】
本発明の好適な提案によれば、中央より右で比較的わずかに成形された領域が、ほぼ3時頃の位置へと回動され、中央より左で比較的わずかに成形された領域が、ほぼ9時の位置へと回動される。下型の支持体上での非円形のプリフォームのそのような前位置決めされた位置で、仕上げ成形のために、最大の曲げモーメントを達成することができる。
【0021】
本発明の根底をなす課題は、装置において、成形された金属板の目下の形状を測定する手段が設けられていて、測定する手段は、オンライン測定された、変形加工圧力及び成形距離の両方に関する値を提供することができる制御のための装置に接続されていて、これにより、降伏点に依存するストローク制御を行うことができることによって解決される。
【0022】
好適には、金属板を非円形のプリフォームへと変形加工し、その後で、スリット管へと変形加工するために、回動方向を逆転可能な手段を有して構成された下型と、外側から、位置決めされたプリフォームに力を印加可能なパンチとが設けられている。
【0023】
したがって、完成したスリット管は、金属板から出発して、単一の管成形プレス又は機械で製造することができる。この場合、回動方向の逆転は、非円形のプリフォームを、正確に、押付け力が実行位置、つまりスリットの両側に作用するように、位置決めすることを可能にする。この場合、直ちに、管状成形プレスの曲げ加工ブレードを、外側からプリフォームに押付け力を加えるために用いることもできる。任意選択的に、プレスを、押付けパンチに装備変更することができる。
【0024】
生産能力を向上させるために好適な本発明の一実施形態は、非円形のプリフォームを作製する少なくとも1つの管成形プレスに押付けプレスが後置されていて、押付けプレスは、回動方向を逆転可能な手段を有して構成された下型と、上型として、外側から、位置決めされた非円形のプリフォームに力を印加可能なパンチとを有することを想定している。したがって、生産フローで見て、管成形プレス(そこから非円形のフォームが送り出される)に、押付けプレスが続き、押付けプレスでは、供給された非円形のプリフォームが、連続する少なくとも2つのステップで、それぞれスリット又は間隙の左右横で、完成したスリット管へと変形加工される。したがって、金属板の非円形の予備成形は、スリット管への最終成形に関係しない位置で実施することができる。
【0025】
下型の回動可能な手段は、本発明の一提案によれば、相互に間隔を置いて配置された、回動可能な被駆動の2本のローラとして構成されている。ローラの回動方向の逆転は、非円形のプリフォームを最適化された力の印加によって仕上げ成形するために位置決めすることを可能にする。一方では、管成形プレスにおける予備成形における、他方では、押付けプレスにおける仕上げにおける時間経過は、後置の押付けプレスを2つの管成形プレスに用いることができることを可能にする。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、回動可能なローラは、ばね装置によって支持されていることを想定している。押付けプレスの下型における非円形のプリフォームの支持は、ローラ間に設けられた位置固定の載置体によって改善することができる。
【0027】
本発明の別の特徴及び詳細は、特許請求の範囲及び個別の2つのプレスを基に図面に示された本発明の実施例の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】通常の管成形プレスで、要求に合わせてまずは非円形のプリフォームを作製することによる、本発明によるスリット管の製造を概略的に示し(a)、管成形プレスに後置された押付けプレスにおける、非円形のプリフォームから完成したスリット管の製造を概略的に示し(b)、図1のcに予め示されたような寸法で本発明に従って製造された完成したスリット管をグラフに示す(c)。
図2図1の詳細図として、押付けプレスを、押付けプレスに導入された非円形のプリフォームとともに示す。
図3】A及びBは、スリット又は間隙の右横で非円形のプリフォームに力を加えることによる第1の曲げ加工ステップ(図3A)で、そして非円形のプリフォームの回動後に、スリット又は間隙の左横で力を加えることによる第2の曲げ加工ステップ(図3B)で、押付けプレスの少なくとも2つの曲げ加工ステップにおける、管成形プレスから到来する非円形のプリフォームの後成形又は変形加工を概略的に示す。
図4】A及びBは、変形加工ステップの偶数のステップ数を用いる本発明に係る方法を用いた、非対称のプリフォームを作製する2つの代替的な形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
顕著により小さなスリット又は間隙111を有する(図1のc参照)スリット管104への金属板3の変形加工は、図1のaによれば、管成形プレス1で行われる。ただしこれは、金属板の、曲げ加工ブレード7の縦軸線のそれぞれ左右に、ひいてはスリット又は間隙11の横に位置する領域で、曲げ加工ステップが、他の曲げ加工ステップよりも小さな、金属板の曲げ加工をもって行われる、という条件のもとで行われる。これにより、図2に示唆されているように、各々の曲げ加工ステップに対応して比較的わずかに成形された所定の2つの領域が存在するので、適切に、非円形にもかかわらず仕上げ変形加工のために要求に合わせたプリフォーム13が達成される。
【0030】
そのようにして第1段階で管成形プレス1において作製された非円形のプリフォーム13は、管成形プレス1から搬出された又は送り出された後で、図1のbに示されているように、仕上げプロセスで見て後置された押付けプレス14に供給される。押付けプレス14は、下型15を有し、下型15は、図1のbにおいて両矢によって示唆されたように、相互に間隔を置いて設けられた、回動方向を逆転可能な被駆動の2本のローラ16a、16bと、ローラ16a、16bの間の間隔をブリッジする位置固定の設置体17とからなる。回動可能なローラ16a、16bは、ばね手段18を介して支えられるように支持することができる(図3参照)。下型15に対向して、パンチ19を有して構成された上型20が配置されている。パンチ19を介して、完成した略円形のスリット管104を製造するための押付け力が、外側から非円形のプリフォーム13に加えられる。
【0031】
そのために、非円形のプリフォーム13は、回動可能なローラ16a、16bを介して、図3に水平の一点鎖線によって示唆されているように、スリット又は間隙11の右横に位置する、比較的わずかに成形された領域12bが3時の位置にあるように位置決めされる。
【0032】
左を起点として右へ、位置決めされた非円形のプリフォーム13と、パンチ19による押付け力の印加と、力を加えた後に持ち上げられたパンチ19とによって、第1の押付け曲げ加工ステップの進行が、図3Aに示されている。
【0033】
第2の押付け曲げ加工ステップは、以前と同じ順序で、図3Bに具体的に示されている。曲げモーメントを最適化するために、ここでは左半部で変化されていない非円形のプリフォーム13が、スリット又は間隙11の左横に比較的わずかに成形された領域12aが9時の位置を占めるように位置決めされている。そこでパンチ19によってプリフォーム13のその左側に加えられた押付け力F(中図)は、次いで、非円形のプリフォーム13を、その際に達成される著しくより小さなスリット又は間隙111を有する完成したスリット管104の最終的な略円形の形状にする(右端図)。
【0034】
図4A及び図4Bは、偶数(図4B)又は奇数(図4A)のステップ数を有する非対称のプリフォームの製造を示す。図4Aでは、金属板3への、曲げ加工ブレード7による21回のステップで、つまり21回の成形動作で、A側ではいわゆるジャガイモ形状が、そしてB側では半円形状が金属板3にもたらされる。A側でのいわゆるジャガイモ形状は、金属板3と曲げ加工ブレード7との衝突をもたらさないが、その一方で、略円形の形状が金属板3にもたらされたB側で、金属板3は、曲げ加工ブレード7に衝突する。図4Bでは、20回のステップで、したがって偶数のステップ数で非対称のプリフォームを製造する利点が具体的に示されている。いわゆるジャガイモ形状が金属板3にもたらされたA側でも、変形加工ブレード7によって略円形のプリフォームに変形加工されたB側でも、金属板3と変形加工ブレード7との衝突が生じない。というのも、最後の変形加工ステップが、一点鎖線21に沿って、したがって管中央から変位して行われるからである。これにより、スリット管4がブレード7に強く衝突することを回避することができる。これにより、最後の変形加工ステップがもはやスリット管4の中央に位置せず、スリット管4の縁とブレード7との衝突を防止することができる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.金属板(3)、特に厚い金属板からスリット管(4、104)を製造する方法であって、
金属板を管成形プレス(1)に供給し、管成形プレス(1)において、金属板を、下型(6)に載置して、昇降可能な上型(9)によって、曲げ力を加えることにより、漸進的に、後の縦シーム溶接のために間隙(11、111)を置いて相互に対向する長手方向縁を有するスリット管(4、104)へと成形し、漸進的に成形される金属板(3)に進入する上型(9)の縦軸線によって設定された中央に対してそれぞれ左右で金属板(3)の内側面に作用する少なくとも1回の曲げ加工ステップで成形を行うことによって、非円形のプリフォーム(13)を有するスリット管を製造する、方法において、
各々の金属板について、個別の輪郭を求め、これに基づいて、スリット管の左右側における幾何学モデルを用いて、特に回動角度及び/又は回動長さの、支持管の位置決めのためのパラメータを求め、変形加工時における圧力距離経過のオンライン記録及び評価によって、金属板の各々の側で降伏点を求め、これに基づいて、それぞれ左右で金属板の内側面に作用する曲げ加工ステップの程度を決定する
ことを特徴とする、金属板からスリット管を製造する方法。
2.続いて、外側から非円形のプリフォームに、それぞれ適切に、予め中央から両側で比較的わずかに成形された領域に作用する押付け力を加えることによって、完成したスリット管の仕上げ成形を行うことを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.非円形プリフォーム(13)を、仕上げ段階で、押付け力(F)を加える前に、時計回り方向又は反時計回り方向の回動によって位置決めすることを特徴とする、上記1又は2に記載の方法。
4.特に上記1から3のいずれか1つに記載の方法を実施するための、金属板(3)、特に厚い金属板からスリット管(4、104)を製造する装置であって、
金属板を管成形プレス(1)に供給し、管成形プレス(1)において、金属板を、下型(6)に載置して、昇降可能な上型(9)によって、曲げ力を加えることにより、漸進的に、後の縦シーム溶接のために間隙(11、111)を置いて相互に対向する長手方向縁を有するスリット管(4、104)へと成形し、
金属板(3)を非円形のプリフォーム(13)へと変形加工し、その後で、スリット付き管(104)へと変形加工するために、回動方向を逆転可能な手段を有して構成された下型(15)と、外側から、位置決めされたプリフォーム(13)に力を印加可能なパンチ(19)とが設けられている、装置において、
成形された金属板(3)の目下の形状を測定する手段が設けられていて、測定する手段は、オンライン測定された、変形加工圧力及び成形距離の両方に関する値を提供することができる制御のための装置に接続されていて、これにより、降伏点に依存するストローク制御を行うことができることを特徴とする、金属板(3)からスリット管(4、104)を製造する装置。
5.制御部は、金属板の個々の全ての変形加工ステップを個別に制御するように設計されていることを特徴とする、上記4に記載の装置。
6.非円形のプリフォーム(13)を作製する少なくとも1つの管成形プレス(1)に押付けプレス(14)が後置されていて、押付けプレス(14)は、回動方向を逆転可能な手段を有して構成された下型(15)と、上型(20)として、外側から、位置決めされた非円形のプリフォーム(13)に力を印加可能なパンチ(19)とを有することを特徴とする、上記4又は5に記載の装置。
7.下型(15)が、相互に間隔を置いて配置された、回動可能な被駆動の2本のローラ(12a、12b)と、ローラ(12a、12b)の間に設けられた設置体(17)とを有することを特徴とする、上記4から6のいずれか1つに記載の設備。
8.ローラ(12a、12b)が、ばね手段(18)を介して支持されていることを特徴とする、上記7に記載の設備。
【符号の説明】
【0035】
1 管成形プレス
2 縁曲げ部
3 金属板
4、104 スリット管
5a、b 支持体
6 下型
7 曲げ加工ブレード
8 成形工具
9 上型
10a、b カウンタホルダ
11、111 スリット/間隙
12a、b 比較的わずかに成形された領域
13 非円形のプリフォーム
14 押付けプレス
15 下型
16a、b 回動可能なローラ
17 設置体
18 ばね手段
19 パンチ
20 上型
21 一点鎖線
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図2
図3A
図3B
図4A
図4B