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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】メッキ量制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/20 20060101AFI20221129BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C23C2/20
C23C2/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021516353
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 KR2019012215
(87)【国際公開番号】W WO2020060273
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0114320
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ノ、 イルファン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 テイン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ウォン-ホ
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176107(JP,A)
【文献】中国特許第106167887(CN,B)
【文献】特開2010-126746(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0053816(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/20
C23C 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアーナイフを用いた鋼板のメッキ量制御装置において、
目標メッキ量に対する第1エアーナイフギャップおよび最終エアーナイフ圧力を導出し、現在エアーナイフ圧力で前記目標メッキ量を達成するための第2エアーナイフギャップを導出するエアーナイフ条件導出部、および
前記第2エアーナイフギャップと前記第1エアーナイフギャップとの間の差であるギャップ補償量と制御周期中のエアーナイフ圧力変動量に基づいたギャップ補償比率によって最終エアーナイフギャップを決定するエアーナイフ圧力応答補償部を含み、
前記制御周期は、前記目標メッキ量に対するエアーナイフ条件を更新する周期であることを特徴とするメッキ量制御装置。
【請求項2】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、
前記制御周期が圧力応答期間以下である場合、前記制御周期中の前記エアーナイフ圧力変動量に基づいて前記ギャップ補償比率を算出し、
前記制御周期が前記圧力応答期間より長い場合、前記ギャップ補償比率は零に設定し、
前記圧力応答期間は、前記現在エアーナイフ圧力が前記最終エアーナイフ圧力に到達する期間であることを特徴とする、請求項1に記載のメッキ量制御装置。
【請求項3】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、
前記制御周期が前記圧力応答期間以下である場合、
前記制御周期を前記圧力応答期間で割った値に基づいて前記ギャップ補償比率を算出することを特徴とする、請求項2に記載のメッキ量制御装置。
【請求項4】
前記ギャップ補償比率は下記数式に従い、
(ギャップ補償比率)=1-Tc/2Tp、(Tp>=Tc)
(ギャップ補償比率)=0、(Tp<Tc)、
Tcは前記制御周期であり、Tpは前記圧力応答期間であることを特徴とする、請求項3に記載のメッキ量制御装置。
【請求項5】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、
前記ギャップ補償量に前記ギャップ補償比率をかけ、前記かけた値を前記第1エアーナイフギャップに足して前記最終エアーナイフギャップを算出することを特徴とする、請求項1に記載のメッキ量制御装置。
【請求項6】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、
前記ギャップ補償量に前記ギャップ補償比率をかけ、前記かけた値の量子化した結果を前記第1エアーナイフギャップに足して前記最終エアーナイフギャップを算出することを特徴とする、請求項1に記載のメッキ量制御装置。
【請求項7】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、
一制御周期内でエアーナイフ圧力変化率が所定の臨界比率以上である場合、
現在エアーナイフ圧力で前記目標メッキ量に到達するための第3エアーナイフギャップを導出し、前記第3エアーナイフギャップと前記第1エアーナイフギャップとの間の差であるギャップ補償量と前記ギャップ補償比率によって最終エアーナイフギャップを決定することを特徴とする、請求項1に記載のメッキ量制御装置。
【請求項8】
エアーナイフを用いた鋼板のメッキ量制御方法において、
メッキ量制御装置が、目標メッキ量に対する第1エアーナイフギャップおよび最終エアーナイフ圧力を導出する段階、
前記メッキ量制御装置が、現在エアーナイフ圧力で前記目標メッキ量を達成するための第2エアーナイフギャップを導出する段階、
前記メッキ量制御装置が、前記第2エアーナイフギャップと前記第1エアーナイフギャップとの間の差であるギャップ補償量を算出する段階、
前記メッキ量制御装置が、制御周期中のエアーナイフ圧力変動量に基づいたギャップ補償比率を算出する段階、
前記メッキ量制御装置が、前記ギャップ補償量および前記ギャップ補償比率に基づいて最終エアーナイフギャップを決定する段階を含み、
前記制御周期は、前記目標メッキ量に対するエアーナイフ条件を更新する周期であることを特徴とするメッキ量制御方法。
【請求項9】
前記ギャップ補償比率を算出する段階は、
前記制御周期が圧力応答期間以下である場合、前記制御周期中の前記エアーナイフ圧力変動量に基づいて前記ギャップ補償比率を算出する段階、および
前記制御周期が前記圧力応答期間より長い場合、前記ギャップ補償比率は零に設定する段階を含み、
前記圧力応答期間は、前記現在エアーナイフ圧力が前記最終エアーナイフ圧力に到達する期間であることを特徴とする、請求項8に記載のメッキ量制御方法。
【請求項10】
前記制御周期が前記圧力応答期間以下である場合での前記ギャップ補償比率を算出する段階は、
前記制御周期を前記圧力応答期間で割った値に基づいて前記ギャップ補償比率を算出する段階を含むことを特徴とする、請求項9に記載のメッキ量制御方法。
【請求項11】
前記ギャップ補償比率は、下記数式に従い、
(ギャップ補償比率)=1-Tc/2Tp、(Tp>=Tc)
(ギャップ補償比率)=0、(Tp<Tc)、
Tcは前記制御周期であり、Tpは前記圧力応答期間であることを特徴とする、請求項10に記載のメッキ量制御方法。
【請求項12】
前記最終エアーナイフギャップを決定する段階は、
前記ギャップ補償量に前記ギャップ補償比率をかけ、前記かけた値を前記第1エアーナイフギャップに足して前記最終エアーナイフギャップを算出する段階を含むことを特徴とする、請求項8に記載のメッキ量制御方法。
【請求項13】
前記最終エアーナイフギャップを決定する段階は、
前記ギャップ補償量に前記ギャップ補償比率をかけ、前記かけた値の量子化した結果を前記第1エアーナイフギャップに足して前記最終エアーナイフギャップを算出することを特徴とする、請求項8に記載のメッキ量制御方法。
【請求項14】
一制御周期内でエアーナイフ圧力変化率が所定の臨界比率以上である場合、
現在エアーナイフ圧力で前記目標メッキ量に到達するための第3エアーナイフギャップを導出する段階、および
前記第3エアーナイフギャップと前記第1エアーナイフギャップとの間の差であるギャップ補償量と前記ギャップ補償比率によって最終エアーナイフギャップを決定する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載のメッキ量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メッキ量制御装置およびメッキ量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融メッキ工程は、熱延あるいは冷延鋼板表面に溶融金属をメッキ処理して耐食性/耐摩耗性/耐熱性などを向上させたメッキ鋼板を生産する工程である。一例として、亜鉛メッキ鋼板があり、亜鉛メッキ鋼板は家電機器、自動車、建築などに多様に使用される。
【0003】
亜鉛溶融メッキ工程は、熱処理、メッキなどを目的とするいくつかの単位セクション(section)から構成される。このうち、メッキセクションで鋼板は溶融亜鉛が入っているメッキポット(Zinc Pot)、エアーナイフ、冷却装置を順次に通過し、鋼板の表面に亜鉛メッキ層が形成される。メッキセクションでエアーナイフは表面のメッキ層の厚さまたはメッキ量を制御する設備であって、メッキ量を正確に制御するために噴射される気体(Air Jet)の圧力と鋼板とエアーナイフの間隔を調整する。
【0004】
メッキ量制御が正確でない場合、注文メッキ量より実際メッキ量が少ないことを防止するために注文メッキ量よりさらに高い目標メッキ量でメッキ工程が行われ、不必要な亜鉛消耗が発生する。これを防止するためにはメッキ量制御が正確でなければならないが、メッキ量はメッキ層が凝固した以後に測定されるため非常に大きな測定遅延が発生する。したがって、一般的なフィードバック制御性能に限界がある。
【0005】
従来のメッキ量制御は主に操業者の手動操業で行われた。最近では予測モデルなどを用いたエアーナイフ制御で自動化が行われる傾向にある。メッキ量制御の自動化のためには制御システムで指示したエアーナイフ運転条件が設備に迅速正確に反映されなければならない。しかし、エアーナイフの操業条件、そのうちの特に目標メッキ量が変更される時、圧力は現在の値と制御目的値によって反応が遅くて指示値を追従するのに時間がかかり、制御誤差も比較的大きい方である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアーナイフ導出圧力の制御反応を補償することができるメッキ量制御装置および制御方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の一特徴によるエアーナイフを用いた鋼板のメッキ量制御装置は、目標メッキ量に対する第1エアーナイフギャップおよび最終エアーナイフ圧力を導出し、現在エアーナイフ圧力で前記目標メッキ量を達成するための第2エアーナイフギャップを導出するエアーナイフ条件導出部、および前記第2エアーナイフギャップと前記第1エアーナイフギャップ間の差であるギャップ補償量と制御周期中のエアーナイフ圧力変動量に基づいたギャップ補償比率によって最終エアーナイフギャップを決定するエアーナイフ圧力応答補償部を含み、前記制御周期は前記目標メッキ量に対するエアーナイフ条件を更新する周期である。
【0008】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、前記制御周期が圧力応答期間以下である場合、前記制御周期中の前記エアーナイフ圧力変動量に基づいて前記ギャップ補償比率を算出し、前記制御周期が前記圧力応答期間より長い場合、前記ギャップ補償比率は零に設定し、前記圧力応答期間は前記現在エアーナイフ圧力が前記最終エアーナイフ圧力に到達する期間であり得る。
【0009】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、前記制御周期が前記圧力応答期間以下である場合、前記制御周期を前記圧力応答期間で割った値に基づいて前記ギャップ補償比率を算出することができる。
【0010】
前記ギャップ補償比率は下記数式に従い、
(ギャップ補償比率)=1-Tc/2Tp、(Tp>=Tc)
(ギャップ補償比率)=0、(Tp<Tc)、
【0011】
Tcは前記制御周期であり、Tpは前記圧力応答期間であり得る。
【0012】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、前記ギャップ補償量に前記ギャップ補償比率をかけ、前記かけた値を前記第1エアーナイフギャップに足して前記最終エアーナイフギャップを算出することができる。
【0013】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、前記ギャップ補償量に前記ギャップ補償比率をかけ、前記かけた値の量子化した結果を前記第1エアーナイフギャップに足して前記最終エアーナイフギャップを算出することができる。
【0014】
前記エアーナイフ圧力応答補償部は、一制御周期内でエアーナイフ圧力変化率が所定の臨界比率以上である場合、現在エアーナイフ圧力で前記目標メッキ量に到達するための第3エアーナイフギャップを導出し、前記第3エアーナイフギャップと前記第1エアーナイフギャップ間の差であるギャップ補償量と前記ギャップ補償比率によって最終エアーナイフギャップを決定することができる。
【0015】
本発明の他の特徴によるエアーナイフを用いた鋼板のメッキ量制御方法は、メッキ量制御装置が、目標メッキ量に対する第1エアーナイフギャップおよび最終エアーナイフ圧力を導出する段階、前記メッキ量制御装置が、現在エアーナイフ圧力で前記目標メッキ量を達成するための第2エアーナイフギャップを導出する段階、前記メッキ量制御装置が、前記第2エアーナイフギャップと前記第1エアーナイフギャップ間の差であるギャップ補償量を算出する段階、前記メッキ量制御装置が、制御周期中のエアーナイフ圧力変動量に基づいたギャップ補償比率を算出する段階、前記メッキ量制御装置が、前記ギャップ補償量および前記ギャップ補償比率に基づいて最終エアーナイフギャップを決定する段階を含み、前記制御周期は前記目標メッキ量に対するエアーナイフ条件を更新する周期であり得る。
【0016】
前記ギャップ補償比率を算出する段階は、前記制御周期が圧力応答期間以下である場合、前記制御周期中の前記エアーナイフ圧力変動量に基づいて前記ギャップ補償比率を算出する段階、および前記制御周期が前記圧力応答期間より長い場合、前記ギャップ補償比率は零に設定する段階を含み、前記圧力応答期間は前記現在エアーナイフ圧力が前記最終エアーナイフ圧力に到達する期間であり得る。
【0017】
前記制御周期が前記圧力応答期間以下である場合での前記ギャップ補償比率を算出する段階は、前記制御周期を前記圧力応答期間で割った値に基づいて前記ギャップ補償比率を算出する段階を含むことができる。
【0018】
前記ギャップ補償比率は、下記数式に従い、
(ギャップ補償比率)=1-Tc/2Tp、(Tp>=Tc)
(ギャップ補償比率)=0、(Tp<Tc)、
【0019】
Tcは前記制御周期であり、Tpは前記圧力応答期間であり得る。
【0020】
前記最終エアーナイフギャップを決定する段階は、前記ギャップ補償量に前記ギャップ補償比率をかけ、前記かけた値を前記第1エアーナイフギャップに足して前記最終エアーナイフギャップを算出する段階を含むことができる。
【0021】
前記最終エアーナイフギャップを決定する段階は、前記ギャップ補償量に前記ギャップ補償比率をかけ、前記かけた値の量子化した結果を前記第1エアーナイフギャップに足して前記最終エアーナイフギャップを算出することができる。
【0022】
前記メッキ量制御方法、一制御周期内でエアーナイフ圧力変化率が所定の臨界比率以上である場合、現在エアーナイフ圧力で前記目標メッキ量に到達するための第3エアーナイフギャップを導出する段階、および前記第3エアーナイフギャップと前記第1エアーナイフギャップ間の差であるギャップ補償量と前記ギャップ補償比率によって最終エアーナイフギャップを決定する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
実施形態を通じてエアーナイフ圧力の制御反応を補償することができ、これによって注文メッキ量にさらに近く作業が可能で亜鉛消耗を減らすことができる効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態によるメッキ装置およびメッキ量制御装置を示した図である。
図2】実施形態によるメッキ量制御方法を示したフローチャートである。
図3】ギャップ補償比率を算出する方法を説明するためにエアーナイフ圧力変化を示したグラフである。
図4】量子化に関する一例を示したグラフである。
図5】実施形態を通じて改善された効果を示したメッキ量、エアーナイフ圧力、およびエアーナイフギャップのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参考として本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な相異な形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。そして、図面で本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって類似の部分については類似の図面符号を付けた。
【0026】
メッキ量制御システムでメッキ量制御のために調整する因子はエアーナイフのギャップと圧力である。このうち、エアーナイフのギャップはモータ-スクリュー方式などの機械装置で制御されてメッキ量制御システムで提供するギャップの指示値を速い応答速度で正確に追従する。しかし、圧力の場合、使用流体によって制御方式が多様であり、制御反応性が遅く誤差も比較的大きい。GI鋼板生産方式のうち、N2を使用する場合、N2の圧力応答が遅くて圧力よりギャップにさらに比重をおいて制御することができる。GI生産時、N2を使用することが通常的であるが、空気(AIR)を使用する場合もある。しかし、この場合にも圧力応答が必要な応答速度に比べて遅く、性能が改善されたブロワーを通じてN2を使用する場合にも圧力応答が必要な応答速度に比べて依然として遅い。
【0027】
実施形態では、メッキ量制御のための圧力制御において発生する応答遅延および誤差を、ギャップを用いて補償する。
【0028】
図1は、実施形態によるメッキ装置およびメッキ量制御装置を示した図である。
【0029】
メッキ装置100は、メッキポット110、ワイピング部120、および冷却部130を含む。実施形態で、メッキ装置100は溶融亜鉛メッキ装置であってもよい。
【0030】
メッキポット110は鋼板SSを溶融メッキするためのものであって、メッキポット110に案内された鋼板SSはメッキポット110内に配置されたシンクロール(sink roll)111を通過しながら溶融金属112に浸漬されて溶融メッキ工程が行われる。鋼板SSはシンクロール111によって進行方向が転換されてメッキポット110上部に移動する。メッキポット110内の溶融金属112によって表面がメッキされた鋼板SSはメッキポット110上部に引出される。鋼板SSは進行方向に沿って順次に配置されたワイピング部120および冷却部130を経てメッキ鋼板に製造される。冷却部130を経て冷却された鋼板SSはテンションロール140を経て後続工程に進行する。
【0031】
実施形態で、メッキ溶液は、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金などが使用できる。
【0032】
ワイピング部120は鋼板SSの進行方向に沿ってメッキポット110後端で鋼板の一面または両面に配置されて鋼板のメッキ付着量を制御する。ワイピング部120はエアーナイフ(air knife)121、122を含み、エアーナイフ121、122は鋼板SS表面に付着されたメッキ層にエアーナイフギャップだけ離隔した距離からエアーナイフ圧力で気体を噴射してメッキ付着量を調節する。例えば、エアーナイフ121、122は鋼板SS幅方向に延長され内部には極低温液体が循環するボディーを有し、ボディー先端には鋼板SSのメッキ層に対してエアーナイフ角度だけ傾いたチップ(図示せず)が形成されていてもよい。エアーナイフから噴射される気体は空気または窒素などであってもよい。
【0033】
エアーナイフ121、122それぞれは、メッキ量制御装置200から生成された制御信号AFC1、AFC2によってエアーナイフギャップおよび圧力を制御することができる。
【0034】
冷却部130は、鋼板SS表面のメッキ層にミスト(mist)噴霧または空気(AIR)噴射を通じて鋼板SSを冷却することができる。例えば、冷却体131、132は、鋼板幅方向に延長され内部には極低温液体が循環し鋼板表面のメッキ層に加圧されて冷気を加える冷却ロール(図示せず)を含むことができる。このような冷却ロールは、複数個が鋼板SSの進行方向に沿って間隔をおいて多段に配置できる。
【0035】
メッキ量制御装置200は、エアーナイフ条件導出部210およびエアーナイフ圧力応答補償部220を含む。
【0036】
エアーナイフ条件導出部210は、目標メッキ量および操業条件の入力を受け、目標メッキ量に対する第1エアーナイフギャップg1および最終エアーナイフ圧力pfを導出し、現在エアーナイフ圧力で目標メッキ量を達成するための第2エアーナイフギャップg2を導出する。
【0037】
エアーナイフ圧力応答補償部220は、制御周期Tc、圧力応答期間Tp、第1および第2エアーナイフギャップg1、g2を受信し、第2エアーナイフギャップと第1エアーナイフギャップ間の差であるギャップ補償量g2-g1とギャップ補償比率に基づいて最終エアーナイフギャップを決定する。制御周期Tcは、目標メッキ量に対するエアーナイフ条件を更新する周期である。圧力応答期間Tpは、現在エアーナイフ圧力で目標メッキ量に対する最終エアーナイフ圧力まで到達するのにかかる期間である。
【0038】
ギャップ補償比率は、制御周期Tcが圧力応答期間Tp以下である場合、制御周期Tc中のエアーナイフ圧力変動量に基づいて算出される。制御周期Tcが圧力応答期間Tpより長い場合のギャップ補償率は「0」であり得る。例えば、エアーナイフ条件のうち、エアーナイフギャップおよびエアーナイフ圧力が制御周期Tcごとに更新され、直前制御周期と目標メッキ量が同一な場合、直前周期のエアーナイフギャップおよび圧力が導出できる。
【0039】
エアーナイフ条件導出部210はメッキ量予測モデルを用いて目標メッキ量に対する第1エアーナイフギャップg1および最終エアーナイフ圧力pfを導出することができる。
【0040】
メッキ量予測モデルは、ライン速度、エアーナイフギャップ、およびエアーナイフ圧力などのような操業条件を入力とし、メッキ量を出力とする関数で示すことができる。例えば、ライン速度V、エアーナイフ(air knife)ギャップG、エアーナイフ圧力Pなどを入力とし、予測メッキ量CPを出力として導出する関数である数式1で示す事ができる。
【数1】
【0041】
エアーナイフ条件導出部210は、目標メッキ量が適用されたメッキ量予測モデルを逆算して第1エアーナイフギャップg1および最終エアーナイフ圧力pfを導出することができる。
【0042】
しかし、発明がこれに限定されるのではなく、例えば、回帰モデルによる制御を通じて第1エアーナイフギャップg1および最終エアーナイフ圧力pfが導出されるか、蓄積された操業条件で現在操業条件と類似の操業条件に基づいて第1エアーナイフギャップg1および最終エアーナイフ圧力pfが導出できる。
【0043】
エアーナイフ圧力応答補償部200は、制御周期と圧力応答期間を比較した結果に基づいてギャップ補償比率を決定することができる。メッキ操業中エアーナイフ圧力は最終エアーナイフ圧力p1に向かって継続して変動しているので、制御周期Tcごとにギャップ補償量を100%適用すれば制御周期Tc中に変動するエアーナイフ圧力が反映されない。そうすれば、実際メッキ量が目標メッキ量に収斂せず、その差が増加することがある。したがって、制御周期と圧力応答を考慮してギャップ補償量を決定する。
【0044】
以下、図2を参照して実施形態によるメッキ量制御装置の最終エアーナイフギャップ算出方法を説明する。
【0045】
図2は、実施形態によるメッキ量制御方法を示したフローチャートである。
【0046】
まず、新たな制御周期Tcが開示されれば(S0段階)、エアーナイフ条件導出部210はメッキ量制御モデルを用いて目標メッキ量を達成するための第1エアーナイフギャップg1および最終エアーナイフ圧力pfを導出する(S1段階)。この時、エアーナイフ条件導出部210には目標メッキ量および操業条件に対するデータが入力できる。
【0047】
エアーナイフ条件導出部210は、メッキ量制御モデルを用いて現在エアーナイフ圧力条件で目標メッキ量を達成するための第2エアーナイフギャップg2を導出する(S2段階)。
【0048】
次いで、エアーナイフ圧力応答補償部220は、第2エアーナイフギャップg2から第1エアーナイフギャップg1を差し引きしてギャップ補償量g2-g1を算出する(S3段階)。
【0049】
一方、エアーナイフ圧力応答補償部220は、制御周期Tcと圧力応答期間Tpを比較する(S4段階)。S4段階の比較結果、制御周期Tcが圧力応答期間Tpより長い場合、ギャップ補償比率は「0」になる(S5段階)。そうすれば、最終エアーナイフギャップgfは第1エアーナイフギャップg1と設定される(S6段階)。
【0050】
S4段階の比較結果、制御周期Tcが圧力応答期間Tp以下である場合、エアーナイフ圧力応答補償部220は制御周期Tc中のエアーナイフ圧力の変動量に基づいてギャップ補償比率を算出する(S7段階)。
【0051】
図3は、ギャップ補償比率を算出する方法を説明するためにエアーナイフ圧力変化を示したグラフである。
【0052】
図3で「x」は制御周期Tc中のエアーナイフ圧力の変動量を示す。実施形態では制御周期Tcの中間時点Tc/2のエアーナイフ圧力が制御周期Tc中のエアーナイフ圧力の変動量と設定される。これは制御周期Tc中のエアーナイフ圧力の平均に該当する値であって、実施形態に適用される一例として発明がこれに限定されるのではない。
【0053】
図3で「y」は制御周期Tc中のエアーナイフ圧力変動とエアーナイフ圧力p1間の差であって、実施形態ではギャップ補償比率が「y」によって決定される。具体的に、ギャップ補償比率はy:p1であり、これを数式2のように示すことができる。
【数2】
【0054】
制御周期Tcと圧力応答期間Tpを比較した結果によってギャップ補償比率を整理すれば数式3の通りである。
【数3】
【0055】
エアーナイフ圧力応答補償部220は、S3段階で算出されたギャップ補償量とS7段階で算出されたギャップ補償比率をかけて最終エアーナイフギャップgfを算出する(S8段階)。S8段階で算出された最終エアーナイフギャップは数式4のように示すことができる。
【数4】
【0056】
このように決定された最終エアーナイフギャップgfは最終エアーナイフ圧力pfと共にエアーナイフ121、122のうちの対応する一つに適用できる。または二つのエアーナイフ121、122全てに同一に適用できる。または他の一つのエアーナイフに対しても同一な方式で生成された他の最終エアーナイフギャップおよび最終エアーナイフ圧力が適用できる。
【0057】
エアーナイフギャップ補償比率は、エアーナイフから噴射される気体の圧力応答性によって調節できる。例えば、圧力応答期間が相対的に短い空気を使用した場合ではギャップ補償比率が「0」であり、圧力応答期間が長い窒素を使用した場合ではギャップ補償比率が「1-Tc/2Tp」であり得る。
【0058】
メッキ量制御装置200はエアーナイフギャップ補償による逆効果を最少化するために、制御周期Tc内でエアーナイフ圧力変化率が臨界比率以上である場合、制御周期Tcと関係なく現在エアーナイフ圧力を基準にして目標メッキ量に到達するためのエアーナイフギャップを再び計算して適用することができる。
【0059】
エアーナイフ圧力が制御周期内で急激に変わって目標圧力に近くなる場合がある。この場合に現在エアーナイフギャップを維持する場合、ギャップ補償による逆効果が発生することがある。これを防止するために、制御周期Tc内でエアーナイフ圧力変化率が臨界比率以上である場合には、制御周期Tcがまだ経過しなくても、現在エアーナイフ圧力を基準にして再びエアーナイフギャップを計算することができる。即ち、まだ制御周期が経過しなかったが、エアーナイフ圧力変化率が臨界比率以上である場合、現在エアーナイフ圧力で目標メッキ量に到達するためのエアーナイフギャップを新たに導出し、第1エアーナイフギャップと新たに導出されたエアーナイフギャップ間の差であるギャップ補償量にギャップ補償比率をかけて最終エアーナイフギャップを算出することができる。
【0060】
また、ギャップ補償による最終エアーナイフギャップが頻繁に変化してエアーナイフギャップを調節するモータの負荷が過度なことがある。これを防止するために数式4で、「(g2-g1)*(1-Tc/2Tp)」項目を図4のように量子化(quantizing)してエアーナイフギャップ調節モータの負荷を低めることができる。
【0061】
図4は、量子化に関する一例を示すグラフである。
【0062】
図4に示されているように、入力である「(g2-g1)*(1-Tc/2Tp)」項目の値が0~△である時、出力は△/2であり、入力が△~2△である時、出力は3△/2であり、入力が2△~3△である時、出力は5△/2であり、入力が3△~4△である時、出力は7△/2である式の量子化が実施形態に適用できる。
【0063】
図5は、実施形態を通じて改善された効果を示したメッキ量、エアーナイフ圧力、およびエアーナイフギャップのグラフである。
【0064】
図5に示されているように、エアーナイフギャップ補償前に比べて、エアーナイフギャップ補償後のメッキ量偏差が急激に減少するのが分かる。
【0065】
特に、圧力ハンティングが発生する時点T2でも、目標メッキ量と実際メッキ量間の差CP2は従来のメッキ量差CP1に比べてはるかに小さい。これはエアーナイフギャップ補償によって時点T1からエアーナイフギャップがgf1であるためである。即ち、圧力ハンティングによってエアーナイフ圧力が減少する場合、エアーナイフギャップはこれを補償するための値として導出される。そうすれば、圧力ハンティングに関係なく目標圧力に合わせてエアーナイフギャップが導出される従来に比べて、圧力変化によってエアーナイフギャップが補償されるので、圧力ハンティングによる急激なメッキ量偏差をエアーナイフギャップ補償によって減少させることができる。
【0066】
従来メッキ量制御システムでは、エアーナイフのギャップは数秒内に指示値を追従し、エアーナイフ圧力は指示値まで応答性によって数十秒から数分がかかる問題がある。即ち、実際メッキ量が目標メッキ量を追従するのにかかる時間はエアーナイフ圧力が指示値を追従する時間だけかかる。そうすれば、目標メッキ量に対する最適エアーナイフギャップと圧力を計算しても、実際エアーナイフ圧力が正確に反映されずメッキ量制御整合性を低下させる結果が発生した。実施形態では別途の圧力制御設備を新設することなくメッキ量制御整合性を改善し、追加的な費用や管理を必要としない効果を提供することができる。
【0067】
以上で本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
図1
図2
図3
図4
図5