(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 17/16 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
H02K17/16 Z
(21)【出願番号】P 2021560031
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007339
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 昂歳
(72)【発明者】
【氏名】池口 康弘
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/055701(WO,A1)
【文献】特開平9-46988(JP,A)
【文献】特開昭59-41161(JP,A)
【文献】実開昭57-21275(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸の外周に固定されたロータと、前記ロータの外周に配置されたステータと、を備え、
前記ロータは、コアクランプで固定された複数の積層鉄心で構成されるロータコアと、前記ロータコアに設けられたロータスロットと、前記ロータスロットに配置されたロータバーと、を有し、
前記ロータバーの端部に配置され、一部が前記ロータバーにろう付けされており、他の一部が前記コアクランプに固定されている金属環を有し、
前記コアクランプ
は回転電機の外径側が環状であり、前記金属環の前記他の一部が環状の突起部を有し、前記環状の突起部が前記コアクランプの外側に対して隙間嵌めされていることを特徴とす
る回転電機。
【請求項2】
前記コアクランプは薄肉部を有し、
前記金属環の前記環状の突起部と前記コアクランプの前記薄肉部とが隙間嵌めされていることを特徴とする請求項
1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記金属環は、前記ロータバーより内側、かつ、前記ロータコアに対向する面にテーパを有することを特徴とする請求項1
または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記金属環は、前記ロータコアに対向する面の反対面にテーパを有することを特徴とする請求項1
または2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機において、回転子を構成する回転子バー(ローターバー)をエンドリングで固定する方法が知られている。例えば、特許文献1(明細書段落0010)には、「…各々の回転子鉄心12には周方向に所定の間隔で配置された複数の回転子スロット13が設けられており、それらを貫通する回転子バー14の両端を環状のエンドリング16で固定することで、複数の回転子バー14がシャフト17と平行に配置されるように固定している。」と記載されている。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、回転子バーとエンドリングとをろう付けして固定する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-42333号公報
【文献】特開平7-131962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2のように、回転子バーとエンドリングとを突き合わせろう付けする際に、ろう付け前の加熱時の両部品の熱膨張の方向が異なることにより、ろう付け後の冷却時に、両部品が内側に引っ張られ、変形し、偏心が生じる。その結果、回転子のアンバランスおよび回転電機全体の振動増大の可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、回転子のアンバランスおよび回転電機全体の振動を抑制することが可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、回転軸と、回転軸の外周に固定されたロータと、ロータの外周に配置されたステータと、を備え、ロータは、コアクランプで固定された複数の積層鉄心で構成されるロータコアと、ロータコアに設けられたロータスロットと、ロータスロットに配置されたロータバーと、を有し、ロータバーの端部に配置され、一部がロータバーにろう付けされており、他の一部がコアクランプに固定されている金属環を有し、コアクランプは回転電機の外径側が環状であり、金属環の他の一部が環状の突起部を有し、この環状の突起部がコアクランプの外側に対して隙間嵌めされていることを特徴とする回転電機である。
【0008】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転子のアンバランスおよび回転電機全体の振動を抑制することが可能な回転電機を提供すること。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】実施例2の回転電機のロータバー、金属環およびコアクランプを示す図
【
図4】ロータコアクランプと固定部材のろう付けによる変形のメカニズムを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す図面において、同一の部材または相当する部材には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材のサイズおよび形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
【実施例1】
【0013】
図1は実施例1の回転電機の軸方向断面図である。
図1は回転電機として、誘導電動機の例を示している。
図1に示すように、回転電機100は、回転軸となるシャフト(軸)17と、シャフト17の外周に固定されたロータ1、と、ロータ1の外周を囲むように配置されたステータ2とを備える。シャフト17を回転軸としてロータ1が回転することで、回転電機(誘導電動機)100が機能する。
【0014】
ロータ1を構成するロータコア12は、複数の電磁鋼板が積層されたものであり、その両端を環状のロータコアクランプ18で抑えて一体化されている。ロータコア12には、シャフト17の周方向(円周方向)に所定の間隔で配置された複数のロータスロット(貫通孔)13が設けられており、複数のロータスロット(貫通孔)13のそれぞれにロータバー14が圧入固定されている。このロータバー(かご形導体とも称される。)14の各両端が、環状の金属環15(「内環」、「短絡環」とも称する。)と環状の保持環16(「外環」とも称する。)が銀等でろう付け固定されることで、かご形ロータが構成される。
【0015】
ステータ2は、ロータ1の外側に隙間を介してフレームに固定された環状のステータコア22を有している。ステータコア22は、複数の電磁鋼板が積層されたものであり、その両端を環状のステータコアクランプ26で抑えて一体化されている。ステータコア22は周方向に所定の間隔で複数の貫通孔が配置されたステータスロット23を有している。このステータスロット23にはステータ巻線24が挿入されている。
【0016】
図2は
図1の破線部分Xを拡大する図である。
図2に示すように、ロータコアクランプ18は、ロータコア12の両端で、ロータスロット13の内側に配置されている。そして、本実施例のロータコアクランプ18は、外周側に環状の凹部(薄肉部)19を有している。
【0017】
前述のとおり、ロータバー14には金属環15の側面がろう付けされているが、本実施例の金属環15は、環状の突起部20を備え、この突起部20がロータコアクランプ18の環状の凹部19に隙間嵌めされて、実質上両者の隙間が無いように固定されている。さらに、ロータバー14および金属環15を保持環16で固定している。このようにロータコアクランプ18と金属環15の環状の凹部19とを固定することで、両者に隙間が生じることなく、回転子のアンバランス低減と、回転電機全体の振動を抑制することができる。
【0018】
本実施例の構成と従来技術の構成との相違を、より詳細に説明する。
図4はロータバーと金属環のろう付けによる変形のメカニズム示す模式図である。
図4(a)はろう付け前の常温でのロータバー14、金属環15およびコアクランプ18の状態を示している。
図4(b)はロータバー14と金属環15のろう付け時の状態を示す図である。ロータバー14と金属環15の突き合わせろう付け時、ロータバー14と金属環15とを加熱すると、ロータバー14は回転軸の軸方向(図中矢印40)に伸び、金属環15は回転軸の軸方向に垂直な径方向(図中矢印41)に伸び、両者は常温時の位置からずれた状態で固定部分45で固定される。この後、冷却すると、ロータバー14の縮む方向(図中矢印42)と金属環15の縮む方向(図中矢印43)の合成ベクトル方向(図中矢印44)の力がロータバー14、金属環15およびコアクランプ18に作用し、ロータバー14および金属環15が変形する。
【0019】
上述したように、従来の構成では、ロータバー14と金属環15のろう付けの際の加熱冷却プロセスによって、ロータバー14および金属環15が変形するが、本実施例の構成では、金属環15の突起部20がロータコアクランプ18の凹部に嵌合して両者の隙間を埋めているため、加熱冷却プロセスを経てロータバー14および金属環15が
図4のように変形しようとしても、金属環15とロータコアクランプ18とが接触していることで変形を食い止めることができる。この結果、回転子のアンバランスおよび回転電機全体の振動を抑制することが可能な回転電機を実現できる。
【0020】
本実施例では、ロータコアクランプ18の環状の凹部19に対して金属環15の突起部20を隙間嵌めをしているため、ロータコアクランプ18による抑える力を損なうことなく、ロータ―バー14の変形を防止することができる。
【0021】
また、本実施例の金属環15は、ローターバー14より内側、かつ、ロータコア12に対向する面(内側)にテーパを有するするとともに、ロータコア12に対向する面の反対面(外側)にテーパを有している。このようにテーパを設けることにより、軽量化を実現できる。
【実施例2】
【0022】
図3は実施例2の回転電機のロータバー、金属環およびコアクランプを示す図である。実施例1の構成と異なる点は、保持環16が金属環15のみを固定している点である。このような構成でも、実施例1と同様に、ロータバー14と金属環15の変形を抑制することができる。
【0023】
以上、説明した通り、本発明によれば、回転子のアンバランス低減と、回転電機全体の振動抑制を実現する回転電機を提供することができることが示された。
【0024】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1…ロータ、2…ステータ、12…ロータコア、13…ロータスロット、14…ロータバー(かご形導体)、15…短絡環、16…保持環、17…シャフト(軸)、18…ロータコアクランプ、22…ステータコア、24…ステータ巻線、26…ステータコアクランプ、40,41,42,43,44…変形方向、45…ロータバー14と金属環15の固定部分。100…回転電機。
【要約】
回転子のアンバランスおよび回転電機全体の振動を抑制することが可能な回転電機を提供する。
本発明の回転電機は、回転軸と、回転軸の外周に固定されたロータと、ロータの外周に配置されたステータと、を備え、ロータは、コアクランプで固定された複数の積層鉄心で構成されるロータコアと、ロータコアに設けられたロータスロットと、ロータスロットに配置されたロータバーと、を有し、ロータバーの端部に配置され、一部がロータバーにろう付けされており、他の一部がコアクランプに固定されている金属環を有することを特徴とする。