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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】無菌脱圧送液装置及び充填システム
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/02 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B67C3/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022082578
(22)【出願日】2022-05-19
【審査請求日】2022-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松原 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊太
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-264755(JP,A)
【文献】特開2001-219996(JP,A)
【文献】特開2001-287796(JP,A)
【文献】特開平04-072197(JP,A)
【文献】特開平09-002586(JP,A)
【文献】特開2002-211689(JP,A)
【文献】特開2021-066489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00
B65B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の圧力調整機構を備えた処理装置に液体を供給する無菌脱圧送液装置であって、
上流から加圧された液体が供給される第1流路と、
前記第1流路の下流側に接続された脱圧流路と、
前記脱圧流路と前記処理装置を接続する第2流路と、
前記脱圧流路に連通する無菌フィルターと、
前記脱圧流路に貯留されている液体の水位を測定する水位計と、
前記第1流路に設けられたコントロールバルブと、
前記水位計により測定された水位を所定水位に維持するように前記コントロールバルブ
の開度を調整する制御部と、
前記第1流路から分岐して前記第2流路に接続するバイパス流路と、を備え、
前記脱圧流路は前記処理装置よりも上方に配置され、
前記第1流路から前記脱圧流路に送液された液体を前記脱圧流路において脱圧し、自重
で前記第2流路に連続式で排出する
ことを特徴とする無菌脱圧送液装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無菌脱圧送液装置であって、
前記第1流路は、前記脱圧流路の側部に接続されている
ことを特徴とする無菌脱圧送液装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無菌脱圧送液装置であって、
前記第1流路は、前記脱圧流路の内面に沿うように液体を導入するように前記脱圧流路
に接続されている
ことを特徴とする無菌脱圧送液装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無菌脱圧送液装置であって、
前記脱圧流路は、前記脱圧流路に液体が満充填とされた状態において、液体の自重によ
る圧力が大気圧×+10%又は10Kpa以下となる容積である
ことを特徴とする無菌脱圧送液装置。
【請求項5】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の無菌脱圧送液装置と、
前記処理装置と、を備え、
前記圧力調整機構は、前記第2流路から供給された液体の圧力が実質大気圧であるとし
て目標圧力に調整する
ことを特徴とする充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された液体を脱圧して連続式で供給する無菌脱圧送液装置及び充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充填機は、上流工程にて調整された医薬、飲料などの液体を充填タンクに一時的に貯留し、当該液体の圧力を調整して所定量の液体を容器に充填している。他に、充填タンクを用いずに液体の圧力を調整する圧力調整機構を備えた充填機も知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような充填機には、液体が加圧された状態で供給される。このため、液体の圧力を目標圧力にするためには、圧送された元の液体の圧力変動を考慮した上で制御する必要があるので、目標圧力に制御することが複雑化してしまう。なお、液体の圧力が目標圧力からずれたりばらつくと、容器に充填される液体の量が所定量からずれたりばらついてしまう。
【0004】
特許文献1には、圧力調整機構の上流には比較的大きな容量の貯留タンクが設けられている。貯留タンクは、上部に気体を供給・排出することで貯留された液体に掛かる圧力を一定に保つように制御されている。一方、貯留タンクから充填機に液体を供給すると、貯留タンク内の液体が減少し、これに伴い液体の自重による圧力が減少する。この結果、貯留タンクにおける気体による圧力調整は、液体の自重の変化に伴う圧力変動を吸収するように制御する必要があり、その制御が複雑化してしまう。
【0005】
また、上流工程から充填機に至る液体の流路は外部に開放されておらず無菌状態に保つことが要請されている。したがって、無菌状態を維持し、かつ、圧力の変動が少ない、すなわち圧力調整をしやすい状態で液体を供給することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-133954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、液体の圧力調整を必要とする充填機などの装置に対して、圧力変動を抑えて無菌で液体を供給することができる無菌脱圧送液装置及び充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体の圧力調整機構を備えた処理装置に液体を供給する無菌脱圧送液装置であって、上流から加圧された液体が供給される第1流路と、前記第1流路の下流側に接続された脱圧流路と、前記脱圧流路と前記処理装置を接続する第2流路と、前記脱圧流路に連通する無菌フィルターと、前記脱圧流路に貯留されている液体の水位を測定する水位計と、前記第1流路に設けられたコントロールバルブと、前記水位計により測定された水位を所定水位に維持するように前記コントロールバルブの開度を調整する制御部と、前記第1流路から分岐して前記第2流路に接続するバイパス流路と、を備え、前記脱圧流路は前記処理装置よりも上方に配置され、前記第1流路から前記脱圧流路に送液された液体を前記脱圧流路において脱圧し、自重で前記第2流路に連続式で排出することを特徴とする無菌脱圧送液装置にある。
【0009】
本発明の他の態様は、上記態様の無菌脱圧送液装置と、前記処理装置と、を備え、前記圧力調整機構は、前記第2流路から供給された液体の圧力が実質大気圧であるとして目標圧力に調整することを特徴とする充填システムにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体の圧力調整を必要とする充填機などの装置に対して、圧力変動を抑えて無菌で液体を供給することができる無菌脱圧送液装置及び充填システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】充填システムの概略構成を示す図である。
図2】送液装置の概略構成を示す図である。
図3】送液装置の無圧送液工程を示す図である。
図4】送液装置の有圧送液工程を示す図である。
図5】送液装置の洗浄工程を示す図である。
図6】脱圧流路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る無菌脱圧送液装置(以下、送液装置とも称する)及び充填システムの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は充填システムの概略構成を示す図である。充填システム1は、液体の一例として液状の医薬品(以下、薬液)を製造するプラントの一部であり、送液装置10及び充填機20を備えている。
【0014】
送液装置10は、充填機20に液体を送液する装置である。特に図示しないが、送液装置10の上流には薬液を調製する装置等が設けられている。送液装置10にはその装置等から薬液が供給される。送液装置10に送液される薬液は、圧送されるため少なくとも大気圧以上の圧力が掛けられている。この加圧された状態で送液装置10に供給される薬液を加圧薬液と称する。送液装置10は加圧薬液を脱圧し(脱圧した加圧薬液を単に薬液と称する)、充填機20に供給する。
【0015】
充填機20は、送液装置10から供給された薬液を容器に充填する装置である。充填機20は、圧力調整機構21及び充填部22を備えている。充填部22は、薬液を容器に充填する装置等から構成されている。充填部22は公知の構成を採用できるので詳細な説明は省略する。なお、充填機20は、請求項に記載の圧力調整機構を備えた処理装置の一例である。
【0016】
圧力調整機構21は、送液装置10から供給された薬液の圧力を目標圧力にするための装置から構成されている。例えば、圧力調整機構21は、薬液を一時的に充填タンクに貯留し、充填タンク内にガスを供給する供給源を備えた構成とする。そして充填タンク内にガスを供給したり、充填タンク内からガスを排出させることで、充填タンク内で薬液に作用するガスの圧力を調整する制御部を圧力調整機構21(充填機20)に設ける。このような構成・制御により薬液に掛かる圧力を目標圧力とする構成を採用することができる。他にも圧力調整機構21としては、薬液が流通する流路に開度調整可能なバルブを設け、バルブの開度調整により薬液の圧力を調整する構成であってもよい。圧力調整機構21により圧力調整された薬液は充填部22に送られる。
【0017】
圧力調整機構21は、圧力調整の前後に薬液の圧力計を備えている。充填機20の制御部は2つの圧力計で得られた圧力値を元に薬液の圧力が目標圧力となるようにガスの圧力やバルブの開度を制御する。詳細は後述するが、送液装置10から供給される薬液の圧力は略大気圧で安定している。このため、圧力調整機構21は、薬液の圧力を目標圧力に制御しやすい。したがって、充填部22において容器に充填される薬液の量を所望量からばらつくことを抑制することができる。
【0018】
図2は送液装置の概略構成を示す図である。送液装置10は、供給流路11、脱圧流路12、排出流路13、無菌フィルター15、水位計16、コントロールバルブ40、及び不図示の制御部を備えている。
【0019】
供給流路11は、送液装置10の上流から加圧薬液が供給される流路である。供給流路11及び後述の各流路は、1本又は複数本の配管から構成されている。供給流路11は、脱圧流路12の側部に接続されている。供給流路11は脱圧流路12の中間よりも底部に近い位置に配置されている方が好ましい。もちろん、供給流路11が脱圧流路12に接続される部位は、そのような例に限定されず、任意の部位に接続してもよい。なお、供給流路11は請求項に記載の第1流路の一例である。
【0020】
脱圧流路12は、供給流路11の下流側に接続されている。また、脱圧流路12は、充填機20よりも上方に配置されている。本実施形態では、脱圧流路12は、鉛直方向に長尺となるように形成され、下端部が充填機20の頂部よりも上方となるように配置されている。
【0021】
脱圧流路12の形状は、管状に形成されており、具体的には次のような形状である。脱圧流路12の最小の口径は50~100mm程度、長さは500~1000mm程度、容積は1L~10Lである。また、脱圧流路12は、コントロールバルブ40の開度を全開、排出バルブ44の開度を全開としたときにおいて、加圧薬液がエア抜き流路17に溢れない程度の容積である。また、脱圧流路12は、脱圧流路12の内部に薬液が満充填となっても、薬液の自重による圧力が大気圧×+10%程度(又は10Kpa以下)となるような容積である。さらに、脱圧流路12の容積は、圧力調整機構21に備わる充填タンクの容積よりも小さい。送液装置10は連続式で送液するので、充填タンクの容積より小さい容積の脱圧流路12とすることができる。したがって、通常のバッチ式では必要となる充填タンクよりも大きな容積のタンクを、送液装置10では不要とすることができる。
【0022】
上記要件を満たせば、脱圧流路12の具体的な形状に特に限定はない。図2に示す脱圧流路12は、中央部分がほぼ円筒状であり、上下の部分の口径が漸減する管状に形成されている。なお、脱圧流路12は鉛直方向に立設している必要はなく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。
【0023】
排出流路13は、脱圧流路12と充填機20とを接続する流路である。排出流路13は、脱圧流路12の下端部に接続されており、脱圧流路12から、脱圧された薬液が流入するようになっている。薬液は、脱圧されたまま、排出流路13を経由して充填機20に送られる。排出流路13には、排出流路13を開閉する排出バルブ44が設けられている。排出バルブ44は制御部60によって制御することが可能になっている。なお、排出流路13は請求項に記載の第2流路の一例である。
【0024】
無菌フィルター15は、脱圧流路12を無菌で大気に連通させる装置である。具体的には、無菌フィルター15は、エアベントフィルターなどとも呼ばれ、微生物や微粒子を捕捉し、空気を通過するフィルターを備えている。また、脱圧流路12の上部にはエア抜き流路17が設けられており、エア抜き流路17の一端は大気開放している。無菌フィルター15はこのようなエア抜き流路17の途中に設けられている。無菌フィルター15により、脱圧流路12の内部は、微生物や微粒子が入り込まず、大気圧と同等の圧力に維持される。
【0025】
水位計16は、脱圧流路12に設けられており、脱圧流路12に貯留されている薬液の水位を測定する装置である。水位計16により計測された水位は、制御部60により読み取られることが可能となっている。
【0026】
コントロールバルブ40は、供給流路11に設けられ、供給流路11の開度を調節することで供給流路11から脱圧流路12へ流入する加圧薬液の流量を制御するバルブである。コントロールバルブ40は、制御部60により開度調整することが可能となっている。
【0027】
また、送液装置10は、供給流路11から分岐して充填機20に接続されるバイパス流路14を備えている。本実施形態では、バイパス流路14は供給流路11から分岐した後、排出流路13に接続されており、排出流路13を経由して充填機20に接続している。供給流路11から分岐するバイパス流路の基点には切替バルブ41が設けられている。切替バルブ41は、供給流路11から脱圧流路12への送液、又は供給流路11から排出流路13への送液、の何れか一方に切り替える。切替バルブ41は、どちらの送液に切り替えるかを制御部60によって制御することが可能となっている。
【0028】
エア抜き流路17は、上述したように脱圧流路12に接続された流路である。エア抜き流路17には、第1エア抜きバルブ42、第2エア抜きバルブ43が設けられている。これらはエア抜き流路17を開閉するバルブであり、制御部60によって制御することが可能となっている。
【0029】
特に図示しないが、充填システム1(又は送液装置10)は、洗浄ユニットを備えている。洗浄ユニットは、充填システム1を定置洗浄(CIP)する洗浄装置及び定置滅菌(SIP)する滅菌装置である。洗浄ユニットは、定置洗浄に用いる洗浄用液体の供給源、定置滅菌に用いる滅菌用流体の供給源、これらの洗浄用液体及び滅菌用流体を圧送するための装置(ポンプやガスによる圧送を行う装置)、定置洗浄及び定置滅菌を終えたあとの洗浄用液体及び滅菌用流体を廃棄又は再利用するための処理装置、洗浄用液体及び滅菌用流体の流れを制御するためのバルブ、送液を開始・停止させるために上記の各種装置を制御する制御部60等から構成されている。
【0030】
なお、洗浄用液体は、水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加したもの、水に酸性薬剤を添加したもの、界面活性剤を含む水、またはそれらの薬剤を含まない水などである。もちろん、これらは併用してもよい。滅菌用流体は、精製水などを加熱して得られた温水又は蒸気である。
【0031】
送液装置10は、上述の洗浄ユニットの一部を構成する第1洗浄用流路31、第2洗浄用流路32、第3洗浄用流路33、第1洗浄用バルブ51、第2洗浄用バルブ52、第3洗浄用バルブ53を備えている。第1洗浄用流路31は、供給流路11から分岐してエア抜き流路17の途中に接続する流路である。第2洗浄用流路32は、エア抜き流路17において無菌フィルター15よりも下流に接続されている。第3洗浄用流路33は、排出流路13の途中から分岐した流路である。第2洗浄用流路32及び第3洗浄用流路33は、洗浄ユニットの処理装置に接続されている。
【0032】
また、第1洗浄用バルブ51は第1洗浄用流路31を開閉し、第2洗浄用バルブ52は第2洗浄用流路32を開閉し、第3洗浄用バルブ53は第3洗浄用流路33を開閉するバルブであり、いずれも制御部60によって制御することが可能となっている。
【0033】
制御部60は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、又はシーケンサーとも呼ばれる装置である。制御部60は、充填システム1を構成する上記の各種装置を制御することで、加圧薬液を脱圧して送液する無圧送液工程、加圧薬液をそのまま送液する有圧送液工程、充填システム1を洗浄する洗浄工程を実行する。
【0034】
[無圧送液工程]
図3を用いて無圧送液工程を説明する。黒のコントロールバルブ40は全閉であることを示し、白のコントロールバルブ40は開度が調整された状態(非全閉)であることを示している。黒の切替バルブ41は加圧薬液を脱圧流路12側へ送液し、白の切替バルブ41は加圧薬液をバイパス流路14を介して充填機20へ送液することを示している。その他の黒のバルブは全閉であり、その他の白のバルブは全開であることを示している。図4図5についても同様である。
【0035】
制御部60は、第1洗浄用バルブ51を閉じ、切替バルブ41を脱圧流路12側に切り替える。そしてコントロールバルブ40を非全閉する。これにより、加圧薬液が供給流路11を経由して脱圧流路12に送液される。コントロールバルブ40の開度については後述する。
【0036】
制御部60は、第1エア抜きバルブ42、第2エア抜きバルブ43を開け、第2洗浄用バルブ52を閉じる。これにより、脱圧流路12は無菌状態で大気と連通し、脱圧流路12に貯留された薬液は圧力が大気圧と同等になる。つまり、加圧薬液が大気圧に脱圧される。また、第2洗浄用バルブ52が閉じられているので、洗浄ユニットには薬液や空気が流入することがない。
【0037】
制御部60は、排出バルブ44を開け、第3洗浄用バルブ53を閉じる。これにより脱圧流路12から、脱圧された薬液が充填機20に送液される。また、第3洗浄用バルブ53が閉じられているので、洗浄ユニットには薬液が流入することがない。
【0038】
ここで、コントロールバルブ40の開度の調整について説明する。まず、送液装置10の各流路には、一切薬液が流れておらず、CIP/SIPが終わった後の状態であるとする。
【0039】
この状態で加圧薬液の送液を開始する。制御部60は上述のとおり各バルブの開閉をするが、当初は排出バルブ44だけは閉じておく。また、制御部60は、コントロールバルブ40を小さな開度としておく。この結果、脱圧流路12には、少ない流量で薬液が供給され、水位がゆっくり上昇するので、薬液に気泡が発生しにくい。
【0040】
所定時間が経過すると、脱圧流路12の薬液は所定水位に達するので、制御部60は、排出バルブ44を開放する。これにより、脱圧流路12の薬液は自重(重力)により排出流路13を経由して充填機20へ送液される。なお、所定水位は、脱圧流路12の薬液がエア抜き流路17に達しないよう、適宜設定する。
【0041】
以後、制御部60は、上流から加圧薬液の供給が停止するまで、所定水位を維持するようにコントロールバルブ40の開度を調整する。このような制御により、無菌フィルター15を介して大気に連通した脱圧流路12で加圧薬液をほぼ大気圧にまで脱圧した上で、無菌状態を維持したまま充填機20に送液することが実現される。かつ、加圧薬液の供給が停止するまで、連続式で薬液が充填機20に送液される。連続式とは、送液装置10の上流の装置等から供給された薬液をバッチに分けずに、連続的に下流の充填機20へ送液することをいう。なお、制御部60は、上流から加圧薬液の供給が停止したことを検知したら、所定水位に維持する制御を停止し、コントロールバルブ40を全開としておく。
【0042】
[有圧送液工程]
図4を用いて有圧送液工程を説明する。
【0043】
制御部60は、第1エア抜きバルブ42、第2エア抜きバルブ43、第2洗浄用バルブ52を閉じる。また、制御部60は、第1洗浄用バルブ51、コントロールバルブ40を閉じ、切替バルブ41を充填機20側に切り替える。さらに制御部60は、排出バルブ44、第3洗浄用バルブ53を閉じる。これにより、加圧薬液が供給流路11、バイパス流路14、排出流路13(の一部)を経由して充填機20に送液される。
【0044】
制御部60は、上流から加圧薬液の供給が停止するまで、上述したバルブの開閉状態を維持する。このような制御により、上流から供給された加圧薬液をそのまま充填機20に送液することができる。これにより、無菌で脱圧した薬液と、無菌で加圧されたままの薬液を選択的に送液することができる。
【0045】
[洗浄工程]
図5を用いて洗浄工程を説明する。
【0046】
制御部60は、コントロールバルブ40、第1エア抜きバルブ42、排出バルブ44、第1洗浄用バルブ51、第2洗浄用バルブ52、第3洗浄用バルブ53を開け、第2エア抜きバルブ43を閉じる。切替バルブ41は、どちらに向けても構わないが、ここでは制御部60は脱圧流路12側に向ける。
【0047】
制御部60は、洗浄ユニットに対して、洗浄用液体を供給流路11に供給するよう制御する。これにより、送液装置10の各流路に洗浄用液体が流通し、CIPが行われる。CIPが完了したのち、制御部60は、洗浄ユニットに対して、滅菌用流体を供給流路11に供給するよう制御する。これにより、送液装置10の各流路に滅菌用流体が流通し、SIPが行われる。
【0048】
なお、特に図示しないが、排出流路13と充填機20との間にバルブを設け、このバルブを閉じておく。すなわち、洗浄用液体や滅菌用流体が充填機20に供給されないようにする。これにより送液装置10と充填機20とを個別にCIP/SIPすることができる。もちろん、そのようなバルブを設けない、又は開けておくことで、送液装置10と充填機20とを一緒にCIP/SIPしてもよい。
【0049】
以上に説明した送液装置10及びこれを備えた充填システム1は、脱圧流路12は無菌フィルター15を介して大気に連通している。これにより、有圧送液工程では、脱圧流路12に供給された加圧薬液は脱圧され、ほぼ大気圧と同等になる。また、脱圧流路12には所定水位に維持された薬液が貯留されることになるので、薬液の自重による圧力変動を抑えることができる。さらに、脱圧流路12は上述したように小口径であるため、脱圧流路12には少量の薬液が貯留される。このことから、脱圧流路12の薬液は、自重による圧力自体が小さく、ほぼ大気圧と同等の圧力にまで脱圧されている。したがって、送液装置10は、加圧薬液を、略大気圧と同等の圧力に脱圧し、かつ圧力変動が少ない状態で、連続式で充填機20に送液することができる。
【0050】
そして、充填機20に供給される薬液の圧力が略大気圧で圧力変動が少ないことから、圧力調整機構21における薬液の圧力調整が複雑化することを回避できる。すなわち、充填システム1としては、容器に充填する薬液の容量に合わせて薬液の圧力調整を行うが、この圧力調整を行い易くなるので容器に充填する薬液の量のバラツキを抑えることができる。
【0051】
供給流路11は、脱圧流路12の側部に接続している。これにより、供給流路11から送液される加圧薬液は、脱圧流路12に貯留された薬液中に投入されることになる。このため、薬液に気泡が発生することを抑制することができる。
【0052】
図6は、脱圧流路12の断面図である。同断面は、供給流路11を通り、鉛直方向に垂直である。同図に示すように、供給流路11は、脱圧流路の内面に沿うように加圧薬液を導入するように脱圧流路12に接続されている。脱圧流路12が空の状態、又は、供給流路11が脱圧流路12の側部に接続した部分(接続部)よりも下方に液面がある場合において、加圧薬液は脱圧流路12の内周面を沿うようにして流入することになる。これにより加圧薬液は静謐に脱圧流路12に貯留されるので、気泡が発生することを抑制することができる。
【0053】
また、送液装置10は、上流から供給された加圧薬液をそのまま充填機20に送液することができる。これにより、無菌で脱圧した薬液と、無菌で加圧されたままの薬液を選択的に送液することができる。
【0054】
また、送液装置10の脱圧流路12は、上述したように小容積である。これにより、脱圧流路12に貯留された薬液の圧力変動を抑制することができる。
【0055】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、薬液を送液する送液装置を一例として本発明を説明したが、本発明は、薬液以外の液体、例えば、化粧品、飲料、インク等を送液するための装置にも適用することができる。
【0057】
送液装置が液体を送液する対象は、充填機に限定されず、液体の圧力調整機構を備えた処理装置であればよい。
【符号の説明】
【0058】
1…充填システム、10…無菌脱圧送液装置(送液装置)、11…供給流路(第1流路)、12…脱圧流路、13…排出流路(第2流路)、14…バイパス流路、15…無菌フィルター、16…水位計、20…充填機(処理装置)、40…コントロールバルブ、60…制御部
【要約】
【課題】液体の圧力調整を必要とする充填機などの装置に対して、圧力変動を抑えて無菌で液体を供給することができる無菌脱圧送液装置及び充填システムを提供する。
【解決手段】 上流から加圧された薬液が供給される供給流路11と、脱圧流路12と、充填機20に接続した排出流路13と、脱圧流路12に連通する無菌フィルター15と、脱圧流路12に貯留されている薬液の水位を測定する水位計15と、供給流路11に設けられたコントロールバルブ40と、水位計15により測定された水位を所定水位に維持するようにコントロールバルブ40の開度を調整する制御部60と、を備え、脱圧流路12は充填機20よりも上方に配置され、供給流路11から脱圧流路12に送液された薬液を脱圧流路12において脱圧し、自重で排出流路13に連続式で排出する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6