(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/04 20060101AFI20221130BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20221130BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B29C49/04
C08L23/04
C08L23/12
(21)【出願番号】P 2018033157
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直幸
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030802(JP,A)
【文献】特開平05-262897(JP,A)
【文献】特開平05-329992(JP,A)
【文献】特開平06-228382(JP,A)
【文献】特開平11-293048(JP,A)
【文献】特開平08-325414(JP,A)
【文献】特開平07-109386(JP,A)
【文献】特開平06-100738(JP,A)
【文献】特開昭62-277450(JP,A)
【文献】特開昭60-015445(JP,A)
【文献】特開2000-230087(JP,A)
【文献】特開2015-139893(JP,A)
【文献】特開平10-315358(JP,A)
【文献】特開平09-052984(JP,A)
【文献】特開平05-262879(JP,A)
【文献】特開2001-246710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形用樹脂を押出機内で溶融混練してなる溶融樹脂を押出成形する工程と、
前記押出成形によってパリソンを形成し、前記パリソンが冷却される前に金型を用いて前記パリソンをブロー成形する工程を備える、成形体の製造方法であって、
前記押出成形用樹脂は、成分Aと、成分Bと、成分Cを含有し、
前記成分Aは、ポリプロピレンであり、
前記成分Bは、低密度ポリエチレンであり、
前記成分Cは、高密度ポリエチレンであり、
前記成分Aは、230℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが0.10~
1.00g/10分であり、
前記成分Bは、190℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが
1.00~3.00g/10分であり、
前記成分Cは、190℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが
0.20~0.30g/10分以下であり、
前記成分Aに対する前記成分Bの質量割合は、
0.20~0.30であり、
前記成分Aに対する前記成分Cの質量割合は、
0.20~0.30である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形用樹脂、及び成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂を押出成形して樹脂シートを形成し、この樹脂シートを用いて樹脂製パネルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者が、特許文献1の樹脂製パネルについて検討を行ったところ、樹脂製パネルの光沢度が高すぎるために、樹脂製パネルの表面についた傷が目立ちやすい等の問題があることに気がついた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、成形体の光沢度の低減が可能な押出成形用樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、成分Aと、成分Bと、成分Cを含有する、押出成形用樹脂であって、前記成分Aは、ポリプロピレン(以下、「PP」)であり、前記成分Bは、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」)であり、前記成分Cは、高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」)であり、前記成分Cは、190℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが0.10~1.00g/10分である、押出成形用樹脂が提供される。
【0007】
本発明者は鋭意検討を行ったところ、押出成形用樹脂として、上記成分A~Cを含有する樹脂を用いることによって、成形体の光沢度を低減させることができることを見出し、本発明の完成に到った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の押出成形用樹脂であって、前記成分Aは、190℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが0.10~5.00g/10分である、押出成形用樹脂である。
好ましくは、前記記載の押出成形用樹脂であって、前記成分Bは、190℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが0.10~10.00g/10分である、押出成形用樹脂である。
好ましくは、前記記載の押出成形用樹脂であって、前記成分Aに対する前記成分Bの質量割合は、0.10~0.50であり、前記成分Aに対する前記成分Cの質量割合は、0.10~0.50である、押出成形用樹脂である。
本発明の別の観点によれば、前記記載の押出成形用樹脂を押出機内で溶融混練してなる溶融樹脂を押出成形する工程を備える、成形体の製造方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記押出成形によってパリソンを形成し、前記パリソンを成形する工程を備える、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記パリソンの成形は、ブロー成形又は真空成形である、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の成形体の製造方法で利用可能な成形機1の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.押出成形用樹脂
本発明の一実施形態の押出成形用樹脂は、成分Aと、成分Bと、成分Cを含有する。この押出成形用樹脂は、成分A~Cのみを含んでもよく、成分A~C以外の樹脂を含んでもよい。成分A~C以外の樹脂を含む場合、その含有量は、樹脂全体に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0012】
以下、各成分について詳細に説明する。以下の説明では、ポリプロピレンをPP、低密度ポリエチレンをLDPE、高密度ポリエチレンをHDPE、メルトフローレートをMFRと表記する。MFRは、特記しない限り、JIS K7210:1999に準拠した方法で、190℃、2.16kgで測定した値を意味する。PPのMFRは、230℃、2.16kgで測定した値を意味する。
【0013】
<成分A:PP>
成分Aは、PPである。PPとしては、ホモPP、ブロックPP、ランダムPPなどが挙げられ、ホモPPが好ましい。PPの製造方法は、特に限定されないが、例えばスラリー法で製造可能である。
【0014】
成分AのMFRは、特に限定されないが、0.10~5.00g/10分が好ましく、0.30~2.00g/10分が好ましい。MFRは、具体的には例えば、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00、2.00、3.00、4.00、5.00g/10分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0015】
<成分B:LDPE>
成分Bは、LDPEである。LDPEの密度(g/cm3)は、0.910以上0.930未満であり、0.915以上0.925以下が好ましい。この密度は、具体的には例えば、0.910、0.915、0.920、0.925、0.929であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。成分BのMFRは、特に限定されないが、0.10~10.00g/10分が好ましく、0.30~2.00g/10分がさらに好ましい。MFRは、具体的には例えば、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00、2.00、3.00、4.00、5.00、6.00、7.00、8.00、9.00、10.00g/10分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
成分Aに対する成分Bの質量割合は、0.10~0.50であることが好ましく、0.15~0.40であることがさらに好ましい。この質量割合は、具体的には例えば、具体的には例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
<成分C:HDPE>
成分Cは、HDPEである。HDPEの密度(g/cm3)は、0.942以上であり、0.942以上0.965以下が好ましい。この密度は、具体的には例えば、0.942、0.945、0.950、0.955、0.960、0.965であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。成分CのMFRは、0.10~1.00g/10分であり、0.20~0.80g/10分が好ましい。MFRは、具体的には例えば、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00g/10分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
成分Aに対する成分Cの質量割合は、0.10~0.50であることが好ましく、0.15~0.40であることがさらに好ましい。この質量割合は、具体的には例えば、具体的には例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
2.成形体の製造方法
本発明の一実施形態の成形体の製造方法は、上記記載の押出成形用樹脂を押出機内で溶融混練してなる溶融樹脂を押出成形する工程を備える。
【0020】
本実施形態の方法は、例えば、
図1に例示される成形機1を用いて実施可能である。成形機1は、樹脂供給装置2と、ヘッド18と、分割金型19を備える。樹脂供給装置2は、ホッパー12と、押出機13と、アキュームレータ17を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とヘッド18は、連結管27を介して連結される。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0021】
<ホッパー12,押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、上記の押出成形用樹脂である。
【0022】
原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリューの基端にはギア装置が設けられており、ギア装置によってスクリューが回転駆動される。
【0023】
<アキュームレータ17、ヘッド18>
溶融樹脂は、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に樹脂が貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に樹脂が所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて樹脂をヘッド18内に設けられたスリットから押し出して垂下させてパリソン23を形成する。このように、溶融樹脂の押出成形によってパリソン23が形成される。パリソン23の形状は、特に限定されず、筒状であってもよく、シート状であってもよい。なお、アキュームレータ17は、ヘッド18に内蔵することもでき、ピストン17bを鉛直方向に押し下げるものであってもよい。アキュームレータ17は不要な場合には省略してもよい。
【0024】
<分割金型19>
パリソン23は、一対の分割金型19間に導かれる。分割金型19を用いてパリソン23の成形を行うことによって成形体が得られる。分割金型19を用いた成形の方法は特に限定されず、分割金型19のキャビティ内にエアを吹き込んで成形を行うブロー成形であってもよく、分割金型19のキャビティの内面からキャビティ内を減圧してパリソン23の成形を行う真空成形であってもよく、その組み合わせであってもよい。ブロー成形の場合、エアは、例えば0.05~0.15MPaの圧力範囲で吹き込む。
【0025】
なお、上記実施形態では、パリソン23が冷却される前に分割金型19を用いた成形を行っているが、パリソン23が冷却された後に、パリソン23を再加熱して成形するようにしてもよい。
【実施例】
【0026】
1.成形体の製造
図1に示す成形機1を用いて、樹脂を押出成形して成形体を作成した。押出機13は、日本製鋼所製の電動式小型中空成形機「JEB‐7」を用いた。スクリューは、ピン付きフルフライトを用い、L/D=26.5とした。ダイコア径は、ダイ:Φ34、コア:Φ40とした。温度を230℃にし、スクリューの回転数を36rpmとした。原料樹脂には、表1~表3に示す配合比率で樹脂を配合したものを用いた。また、樹脂100質量部に対して、着色剤として40wt%のカーボンブラックを含むLLDPEベースマスターバッチ1.0重量部を添加した。
【0027】
以上の条件で形成されたパリソン23を分割金型19の間に配置した後に、分割金型19の型締めを行い、エアを圧力0.5Paで15秒間吹き込むことによって、寸法が60mm×80mm×230mmの略直方体の中空の成形体を製造した。
【0028】
2.評価
製造した成形体について、光沢度(グロス値)を測定した。光沢度は、以下の測定条件で、成形体の側面(寸法が60mm×230mmの面)の平坦な部位について測定した。各成形体について、5箇所において光沢度の測定を行い、その平均値をその成形体の光沢度とした。その結果を表1~表3に示す。
【0029】
<光沢度測定条件>
光沢計:日本電色工業株式会社製、ハンディー光沢計 PG-1
測定角度:60°
光学系:JIS Z 8741,ISO 2813,ASTM D 523,DIN 67530準拠
光源:タングステンランプ
検出器:フォトダイオード
測定サイズ:10.0×20.0mm
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
表1~表3で用いた樹脂の詳細は、以下の通りである。
【0034】
<PP>
EC9:ノバテックPP、日本ポリプロ株式会社製
【0035】
<LDPE>
M2170:サンテック-LD、旭化成株式会社製
M1820:サンテック-LD、旭化成株式会社製
F108-1:スミカセン、住友化学株式会社製
【0036】
<HDPE>
J240:サンテック-HD、旭化成株式会社製
A260:サンテック-HD、旭化成株式会社製
B970:サンテック-HD、旭化成株式会社製
B980:サンテック-HD、旭化成株式会社製
【0037】
表1に示すように、PP、LDPE、及びHDPEを含み、且つHDPEのMFRが0.10~1.00g/10分である場合には、光沢度が5.4~6.1という低い値であった。また、実施例1~6に示すように、LDPEのMFRを変化させても光沢度は大きくは変化しなかった。
【0038】
表2の比較例1~8に示すように、PP、LDPE、及びHDPEの何れかが欠けている場合には、光沢度が6.9~11.2という高い値であった。また、表3の比較例9~14に示すように、PP、LDPE、及びHDPEを含んでいても、HDPEのMFRが1.00を超えている場合には、光沢度が7.4~8.5という高い値であった。
【0039】
以上より、PP、LDPE、及びHDPEを含み、且つHDPEのMFRが0.10~1.00g/10分である場合に、光沢度が低減されることが実証された。
【符号の説明】
【0040】
1 :成形機
2 :樹脂供給装置
10 :ダクト
11 :原料樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a:シリンダ
17 :アキュームレータ
17a:シリンダ
17b:ピストン
18 :ヘッド
19 :分割金型
23 :パリソン
25 :連結管
27 :連結管