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  • 特許-車両用照明装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221130BHJP
   B60Q 1/26 20060101ALI20221130BHJP
   B60Q 1/44 20060101ALI20221130BHJP
   B60Q 3/16 20170101ALI20221130BHJP
   G01D 11/28 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
B60Q1/26 Z
B60Q1/44 B
B60Q3/16
G01D11/28 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018116722
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019217907
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山野上 耕一
(72)【発明者】
【氏名】久本 尚文
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136895(JP,A)
【文献】特開2003-178893(JP,A)
【文献】特開2007-196957(JP,A)
【文献】実開昭56-075040(JP,U)
【文献】特開2015-020460(JP,A)
【文献】特開2005-231429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60Q 1/44,3/16
G01D 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電球、LEDのいずれも点灯させ得る車両用照明装置であって、
電球への供給電圧を安定させるPWM制御回路と、
当該車両用照明装置に接続されているのが電球かLEDかを判断し、LEDが接続されている場合には、前記PWM制御回路を介さずにバッテリからの電力を前記LEDに供給し、電球が接続されている場合には、前記PWM制御回路を介してバッテリからの電力を前記電球に供給するLED/電球判定回路と、を備え
前記LED/電球判定回路は、負荷電流が相対的に小さいときにLEDが接続されていると判定し、負荷電流が相対的に大きいときに電球が接続されていると判定し、
複数の車両用照明装置が、共通の電力線によりバッテリに接続されている。
【請求項2】
請求項1の車両用照明装置であって、
前記LED/電球判定回路は、定電圧電源回路を介してバッテリからの電力が供給され、
前記LED/電球判定回路は、LEDが接続されている場合には、前記定電圧電源回路からの電圧を前記LEDに供給し、
前記LED/電球判定回路は、電球が接続されている場合には、前記PWM制御回路を介してバッテリからの電力を前記電球に供給する。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の車両用照明装置であって、
前記車両用照明装置は車幅灯を点灯させる。
【請求項4】
請求項1又は請求項2の車両用照明装置であって、
前記車両用照明装置はブレーキランプを点灯させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電球、LEDのいずれも点灯させ得る車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の周囲外光の照度と周囲外光のうちの赤外線成分を検出し、照明の出力輝度を調整する照明装置を開示している。特許文献2は、所定条件下でPWM制御に切り替えて照明に電力を供給する照明回路制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-85244号公報
【文献】特開2013-104822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電球を点灯する瞬間、突入電流により電圧が変動し、明るさが変化する(ちらつく)ことがある。また、複数の電球に共通の電源ハーネスを用いた場合、一方の電球の点灯により、他方の電球への供給電力が下がり、ちらつくことがある。
【0005】
特許文献1、特許文献2は、構成が複雑で製造コストが高いという課題がある。
ここで、ちらつきを抑えるためには、ランプ毎に電源ハーネスを準備して相互の影響を回避することも考え得るが、ランプが増えるとハーネスも増え、コストが高くなる。昇圧コンバータを付加することも考え得るが、コンバータは発振回路、コンデンサ、コイル等が必要でコストが高い。また、リニアレギュレータを追加して電圧を安定させることも考え得るが、リニアレギュレータは熱が出てエネルギー効率が低い。
【0006】
更に、現在、車両は生産国において、また、仕様によって、ランプに電球が用いられたり、LEDが用いられたりすることがあり、電球、LEDのいずれにも対応可能であることが望ましい。
【0007】
本発明の目的は、LED、電球のいずれも点灯させ、電球の明るさをちらつかせない車両用照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用照明装置は電球、LEDのいずれも点灯させ得る。そして、電球への供給電圧を安定させるPWM制御回路と、当該車両用照明装置に接続されているのが電球かLEDかを判断し、LEDが接続されている場合には、前記PWM制御回路を介さずにバッテリからの電力を前記LEDに供給し、電球が接続されている場合には、前記PWM制御回路を介してバッテリからの電力を前記電球に供給するLED/電球判定回路と、を備え、前記LED/電球判定回路は、負荷電流が相対的に小さいときにLEDが接続されていると判定し、負荷電流が相対的に大きいときに電球が接続されていると判定し、複数の車両用照明装置が、共通の電力線によりバッテリに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用照明装置は、電球が接続されている場合には、LED/電球判定回路が、供給電圧を安定させるPWM制御回路を介してバッテリからの電力を電球に供給するため、電球のちらつきを抑えることができる。LEDが接続されている場合には、LED/電球判定回路が、PWM制御回路を介さずに電力をLEDに供給するため、PWM制御回路による効率の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車両用照明装置の構成を示す説明図
図2】実施形態の車両用照明装置によるPWM制御の波形図
図3】実施形態の車両用照明装置の回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用照明装置の構成を示す説明図である。
バッテリBattからの電力が共通の電源ハーネス12を介して2台の車両用照明装置10A、10Bに供給されている。車両用照明装置10Aには電球14Aが接続されている。車両用照明装置10Bには電球14Bが接続されている。
【0012】
図2は、実施形態の車両用照明装置10A、10BによるPWM制御の波形図である。
車両用照明装置10A、10Bは、出力をPWM駆動し、バッテリからの電圧が高いときオン-dutyを小さくし、電圧が低いときオン-dutyを大きくし、電圧を平均値が一定になるように調整することで、それぞれ、電球14A、電球14Bの明るさが一定になるようにする。即ち、電球を点灯する瞬間、突入電流による電圧変動を抑制し、明るさが変化することを防ぐ。また、複数の電球14A、14Bに共通の電源ハーネス12が用いられ、例えば一方の電球14Aの点灯により、電源ハーネス12の抵抗分による電圧降下によって、他方の電球14B側への供給電力が下がる。車両用照明装置10BによるPWM制御で、電圧を平均値が一定になるように調整することで、電球14Bの明るさが一定になるようにする。実施形態では、2個の車両用照明装置10A、10Bに共通の電源ハーネス12を用いるため、ハーネスの数を削減し、コストを低下させることができる。また、ハーネスを太くすることで、抵抗損失を低減することができる。この例では、2個の車両用照明装置10A、10Bで、共通の電源ハーネス12を用いたが、3個以上の車両用照明装置で、共通の電源ハーネスを用いることも勿論可能である。
【0013】
図3は、実施形態の車両用照明装置の回路図である。
車両用照明装置10は、輝度安定用のPWM制御回路20と、MOSFETと、LED/電球の判定用電流リミッタ30とを備える。PWM制御回路20は、第1トランジスタQ1とオペアンプU1とを備える。判定用電流リミッタ30は、第2トランジスタQ2と第3トランジスタQ3とを備える。
【0014】
PWM制御回路20の第1トランジスタQ1のエミッタはアース側に接続され、コレクタは抵抗R11を介してMOSFETのゲート側に接続されている。ベースは、抵抗R10を介して、オペアンプU1の出力に接続されている。オペアンプU1の正電源はバッテリV4に接続され、負電源はアースに接続されている。オペアンプU1の非反転入力は、抵抗R8を介して5.4Vの基準電圧V3に接続されると共に、抵抗R4を介してアースに接続されている。オペアンプU1の反転入力には、抵抗R7、抵抗R9を介して判定用電流リミッタ30の第3トランジスタQ3のコレクタに接続され、第2トランジスタQ2のベースに接続されている。更に、オペアンプU1の反転入力には抵抗R3、抵抗R2、ダイオードD1を介して、MOSFETのソース、負荷(LED/電球)R1に接続されている。抵抗R3と抵抗R2との間には、アースに落とされ、時定数を形成する抵抗R6とコンデンサC1の並列回路が接続されている。抵抗R9と抵抗R7の間には、車両用照明装置による電球/LEDのオン、オフを制御する制御入力Contに接続される。制御入力Contがローレベルにされることで、電球/LEDがオンになる。
【0015】
判定用電流リミッタ30の第3トランジスタQ3のエミッタは、定電圧電源回路V1に接続されている。定電圧電源回路V1は、バッテリV4の電圧よりもわずかに低い11.8Vの定電圧を発生させている。第3トランジスタQ3のベースは、抵抗R13を介して定電圧電源回路V1に接続されると共に、第2トランジスタQ2のエミッタに接続されている。第2トランジスタQ2のベースは、上述したように第3トランジスタQ3のコレクタに接続されている。第2トランジスタQ2のコレクタは、負荷R1側に接続されている。
【0016】
MOSFETのドレーンはバッテリV4に接続されている。上述したように、MOSFETのゲートは、PWM制御回路20の第1トランジスタQ1のコレクタに抵抗R11を介して接続されると共に、バッテリV4からの電圧が抵抗R12を介してバイアスされる。MOSFETのソースは、負荷R1側に接続されている。
【0017】
次ぎに、車両用照明装置10の回路動作について、先ず、負荷としてLEDが接続された場合から説明する。
車両用照明装置10にLEDが接続された場合、負荷(LED)R1に流れる電流が相対的に小さいため、判定用電流リミッタ30の第3トランジスタQ3がオフとなり、第2トランジスタQ2がオンとなり、定電圧電源回路V1の電圧が、抵抗R13、第2トランジスタQ2を介して負荷(LED)R1に加えられる。即ち、判定用電流リミッタ30が負荷がLEDであると判定した際には、PWM制御回路20を介することなく、定電圧電源回路V1の電圧が負荷(LED)R1に加えられる。このため、PWM制御回路20、及び、MOSFETでの電力消費が回避される。
【0018】
車両用照明装置10に電球が接続された場合、負荷(電球)R1に流れる電流が相対的に大きいため、判定用電流リミッタ30の第3トランジスタQ3がオンとなり、第2トランジスタQ2がオフとなり、PWM制御回路20によりPWM制御されたMOSFETからのバッテリV4の電圧が負荷(電球)R1に加えられる。オペアンプU1の反転入力に加えられた負荷(電球)R1側に印加されている電圧と、非反転入力に加えられた基準電圧V3との比較で、オペアンプU1の出力が切り替わり、第1トランジスタQ1を介してMOSFETをオン、オフする。即ち、負荷(LED)R1に印加されている電圧が高いときオン-dutyを小さくし、電圧が低いときオン-dutyを大きくし、電圧を平均値が一定になるように調整することで、負荷(電球)R1の明るさを一定に保つ。
【0019】
実施形態の車両用照明装置10は、電球が接続されている場合には、判定用電流リミッタ30が、供給電圧を安定させるPWM制御回路20を介してバッテリV4からの電力を電球に供給するため、電球のちらつきを抑えることができる。LEDが接続されている場合には、判定用電流リミッタ30が、PWM制御回路20、MOSFETを介さずに電力をLEDに供給するため、PWM制御回路、MOSFETによる効率の低下を回避することができる。
【0020】
判定用電流リミッタ30は、定電圧電源回路V1を介してバッテリからの電力が供給されるため、バッテリの電圧変動があっても動作が安定している。判定用電流リミッタ30は、消費電流の相対的に小さなLEDが接続されている場合には、定電圧電源回路V1からの電圧をLEDに供給するため、LEDの明るさを一定に保つことができる。判定用電流リミッタ30は、消費電流の相対的に大きな電球が接続されている場合には、PWM制御回路20を介してバッテリV4からの電力を電球に供給する。これにより明るさを一定に保つことができる。
【0021】
実施形態の車両用照明装置10はメータ照明を点灯させる。これにより、メータ照明のちらつきを防ぎ、運転者の疲労を軽減することができる。また、実施形態車両用照明装置は車幅灯を点灯させる。これにより、車幅灯のちらつきを防ぐことができる。また、実施形態の車両用照明装置はブレーキランプを点灯させる。これにより、ブレーキランプのちらつきを防ぐことができる。
【0022】
実施形態の車両用照明装置はPWM制御を用いて電球への供給電圧を安定化させる。このため、発振回路、コンデンサ、コイル等の必要な昇圧コンバータを用いるよりも廉価に構成することができる。更に、リニアレギュレータを用いるのと比較し、熱が出にくいのでエネルギー効率が高い。
【0023】
なお、実施形態の車両用照明装置10は前照灯には用いられないことが望ましい。前照灯は消費電流が大きいため、PWM制御では効率を高めることが難しいからである。また、実施形態の車両用照明装置10はウインカーランプ等の点滅するランプには用いる優位性が低い。
【符号の説明】
【0024】
10、10A、10B 車両用照明装置
12 電源ハーネス
14A、14B 電球
20 PWM制御回路
30 判定用電流リミッタ(LED/電球判定回路)
図1
図2
図3