(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20221130BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
(21)【出願番号】P 2018241506
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 康之
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-039227(JP,A)
【文献】特開平04-127551(JP,A)
【文献】特開平11-026333(JP,A)
【文献】特開平04-171709(JP,A)
【文献】特開2016-131172(JP,A)
【文献】特開2019-113841(JP,A)
【文献】特開2000-138146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0039687(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103708406(CN,A)
【文献】特開2015-211072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00-26/12
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-99/00
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を介して前記ミラー部を支持する固定枠と、
を有し、
前記固定枠には、前記ミラー部又は前記駆動部の製造時に形成された検査用パターンが設けられ
、
前記検査用パターンには、外観検査装置が検査領域を認識するための第1認識用パターンが含まれ、
前記第1認識用パターンは、前記ミラー反射面を形成するための金属膜により形成されている光走査装置。
【請求項2】
ミラー反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を介して前記ミラー部を支持する固定枠と、
を有し、
前記固定枠には、前記ミラー部又は前記駆動部の製造時に形成された検査用パターンが設けられ
、
前記検査用パターンには、チップソータが位置を特定するための第2認識用パターンが含まれ、
前記第2認識用パターンは、前記駆動部に接続される配線を形成するための導電性層により形成されている光走査装置。
【請求項3】
ミラー反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を介して前記ミラー部を支持する固定枠と、
を有し、
前記固定枠には、前記ミラー部又は前記駆動部の製造時に形成された検査用パターンが設けられ
、
前記検査用パターンには、製品の種別を表す第1識別用パターンが含まれ、
前記第1識別用パターンは、前記駆動部を構成する圧電素子の下部電極を形成するための金属層により形成されている光走査装置。
【請求項4】
ミラー反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を介して前記ミラー部を支持する固定枠と、
を有し、
前記固定枠には、前記ミラー部又は前記駆動部の製造時に形成された検査用パターンが設けられ
、
前記検査用パターンには、ウェハ内におけるアドレスを表す第2識別用パターンが含まれ、
前記第2識別用パターンは、前記駆動部を構成する圧電素子の下部電極を形成するための金属層により形成されている光走査装置。
【請求項5】
ミラー反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を介して前記ミラー部を支持する固定枠と、
を有し、
前記固定枠には、前記ミラー部又は前記駆動部の製造時に形成された検査用パターンが設けられ
、
前記検査用パターンには、エッチング装置によるエッチングの精度を管理するため第1管理用パターンが含まれ、
前記第1管理用パターンは、エッチングにより形成されたエッチング穴である光走査装置。
【請求項6】
ミラー反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を介して前記ミラー部を支持する固定枠と、
を有し、
前記固定枠には、前記ミラー部又は前記駆動部の製造時に形成された検査用パターンが設けられ
、
前記検査用パターンには、ダイシング装置によるダイシングの精度を管理するための第2管理用パターンが含まれ、
前記第2管理用パターンは、前記駆動部に基板コンタクトを形成するエッチング工程により形成されたエッチング溝である光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミラー部を両側からトーションバーにより支持し、トーションバーを軸としてミラー部を揺動させることにより、ミラー部で入射光を偏向して走査する光走査装置が知られている。このような光走査装置は、例えばSOI(Silicon On Insulator)ウェハを加工することにより形成される。
【0003】
光走査装置は、全体としてチップ状であり、外周を囲うように、外部装置と電気的に接続するための端子等が設けられた固定枠が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、光走査装置の固定枠には端子や、端子と接続するための配線が設けられるが、その他の部分は単に固定部としてのみ機能し、十分に活用されていない。
【0006】
開示の技術は、製造コストを上げることなく、固定枠を有効活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術は、ミラー反射面を有するミラー部と、前記ミラー部を駆動する駆動部と、前記駆動部を介して前記ミラー部を支持する固定枠と、を有し、前記固定枠には、前記ミラー部又は前記駆動部の製造時に形成された検査用パターンが設けられ、前記検査用パターンには、外観検査装置が検査領域を認識するための第1認識用パターンが含まれ、前記第1認識用パターンは、前記ミラー反射面を形成するための金属膜により形成されている光走査装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造コストを上げることなく、固定枠を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の光走査装置の上面側の斜視図である。
【
図2】ウェハに形成された複数の光走査装置を例示する図である。
【
図3】ミラー部、圧電センサ、及び基板コンタクト部の断面図である。
【
図4】固定枠の第1認識用パターンの形成領域と、ミラー部の形成領域との断面構造を示す図である。
【
図5】固定枠の第2識別用パターンの形成領域と、基板コンタクト部の形成領域との断面構造を示す図である。
【
図6】固定枠の第1識別用パターンの形成領域と、圧電センサの形成領域との断面構造を示す図である。
【
図7】固定枠の第1管理用パターンの形成領域と、コンタクトホールの形成領域との断面構造を示す図である。
【
図8】固定枠の第2管理用パターンの形成領域と、基板コンタクト部の形成領域との断面構造を示す図である。
【
図10】電気的特性評価用パターンを例示する図である。
【
図12】位置決め用パターンを固定枠に形成した例を示す図である。
【
図13】ウェハ内のダミーチップの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下に、図面を参照して第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の光走査装置の上面側の斜視図である。
【0011】
図1において、第1実施形態に係る光走査装置1は、ミラー部40と、トーションバー50と、連結部60と、水平駆動部70と、可動枠80と、垂直駆動部110と、固定枠120と、端子130と、配線140とを有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)である。
【0012】
ミラー部40は、ミラー反射面10と、応力緩和領域20とを有する。水平駆動部70は、水平駆動梁71と、駆動源72とを有する。垂直駆動部110は、垂直駆動梁90と、駆動源91と、連結部100とを有する。
【0013】
ミラー部40は、垂直方向に延在する2本のトーションバー50により、垂直方向の両外側から挟持されている。ミラー部40は、中心にミラー反射面10を有し、ミラー反射面10とトーションバー50との間に応力緩和領域20を有する。各応力緩和領域20には、2つのスリット30が形成されている。また、トーションバー50は、基端部50aが連結部60を介して水平駆動梁71の内側の角に連結されている。水平駆動梁71は、表面に駆動源72を備え、外側の辺が可動枠80に連結されている。
【0014】
駆動源72には、例えば、電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子等が用いられる。圧電素子には、例えば、ピエゾ素子が用いられる。
【0015】
また、トーションバー50の基端部50aには、圧電センサ51が設けられている。圧電センサ51は、ミラー部40が水平方向に遥動している状態におけるミラー反射面10の水平方向の振角を検出するための振角センサである。圧電センサ51には、圧電素子等が用いられ、例えばピエゾ素子が用いられる。
【0016】
可動枠80は、水平駆動梁71を介して連結部60、トーションバー50、及びミラー部40を支持するとともに、これらの周囲を囲んでいる。可動枠80は、垂直駆動梁90の可動枠80に連結されている。
【0017】
垂直駆動梁90は、可動枠80の水平方向の両側に、可動枠80を挟むように配置されている。垂直駆動梁90は、トーションバー50と平行に複数設けられている。可動枠80の各片側には、2つの垂直駆動梁90が水平方向に隣接するように配置されている。隣接する2つの垂直駆動梁90は、連結部100により連結されている。
【0018】
内側の垂直駆動梁90は、一端が可動枠80に連結され、他端が外側の垂直駆動梁90に連結されている。また、外側の垂直駆動梁90は、一端が固定枠120に連結され、他端が内側の垂直駆動梁90に連結されている。また、垂直駆動梁90には、駆動源91が設けられている。駆動源91には、駆動源72と同様に圧電素子等が用いられ、例えばピエゾ素子が用いられる。
【0019】
また、外側の垂直駆動梁90の一端には、圧電センサ92が設けられている。圧電センサ92は、ミラー部40が垂直方向に遥動している状態におけるミラー反射面10の垂直方向の振角を検出するための振角センサである。圧電センサ92には、圧電センサ51と同様に圧電素子等が用いられ、例えばピエゾ素子が用いられる。
【0020】
固定枠120は、外側の垂直駆動梁90を介して垂直駆動部110を支持する。すなわち、固定枠120は、駆動部(垂直駆動部110及び水平駆動部70)を介してミラー部40を支持している。垂直駆動部110及び可動枠80を取り囲んでおり、外形が矩形状である。本実施形態では、固定枠120の外形は、ほぼ正方形である。
【0021】
固定枠120の表面には複数の端子130が設けられている。各端子130には配線140が接続されている。配線140は、駆動源72、91、及び圧電センサ51、92に接続されている。また、配線140には、グランド電位が付与された基板としてのシリコン活性層303に配線140をコンタクトさせるための基板コンタクト部140aが形成されている。
【0022】
以下、各部のより詳細な説明を行う。
【0023】
ミラー部40は、ほぼ円形のミラー反射面10を中心に備える。ミラー反射面10は、銀、銅、アルミニウム等の反射率の高い金属膜により形成されている。
【0024】
応力緩和領域20は、トーションバー50の捻れ応力を緩和させ、ミラー反射面10に加わる応力を低減させるために、ミラー反射面10との間に設けられたスペーサ部である。応力緩和領域20は、トーションバー50の捻れ運動で発生する応力を分散させ、ミラー反射面10に加わる応力を緩和することができる。
【0025】
スリット30は、応力緩和領域20に印加された応力を分散させるための穴であり、応力緩和領域20内に設けられている。
【0026】
トーションバー50は、ミラー部40を両側から支持するとともに、ミラー部40を水平方向に揺動させるための手段である。ここで、水平方向とは、ミラー反射面10により反射される光が高速に走査して移動する方向であり、投影面の横方向を意味する。つまり、ミラー反射面10が横方向に揺動する方向であり、トーションバー50が軸となる方向である。トーションバー50は、左右に交互に捻れることにより、ミラー部40を水平方向に揺動させる。
【0027】
連結部60は、水平駆動梁71で発生した水平方向の駆動力をトーションバー50に伝達するための伝達手段である。
【0028】
水平駆動梁71は、ミラー部40を水平方向に揺動させ、ミラー反射面10により反射された光を投影面の水平方向に走査させるための駆動手段である。2つの駆動源72に異なる位相の電圧を交互に印加することにより、2つの水平駆動梁71を交互に反対方向に反らせることができる。これにより、トーションバー50に捻れ力を与え、トーションバー50に平行な水平回転軸周りにミラー部40を揺動させることができる。
【0029】
また、水平駆動梁71による駆動は、例えば、共振駆動が用いられる。本実施形態の光走査装置1をプロジェクタ等に適用した場合には、例えば30kHzの共振駆動によりミラー部40が駆動される。
【0030】
また、隣接する垂直駆動梁90に異なる位相の電圧を印加することにより、可動枠80を垂直方向に揺動させることができる。なお、ミラー部40は、可動枠80に支持されているので、可動枠80の揺動に伴い、垂直方向に揺動する。
【0031】
なお、垂直駆動部110は、例えば、非共振駆動により可動枠80を揺動させる。垂直駆動は、水平駆動と比較して高速駆動は要求されず、駆動周波数は、例えば、60Hz程度である。
【0032】
以上の構成の光走査装置1は、例えばSOIウェハを用いて製造される。
【0033】
図2は、ウェハ2に形成された複数の光走査装置1を例示する図である。光走査装置1は、ウェハプロセス技術を用いて、ウェハ2上にマトリクス状に形成される。光走査装置1は、ウェハ2上に形成され、ウェハ状態での検査が行われた後、ダイシングによりチップ状に個片化される。そして、光走査装置1は、チップ状態においても各種の検査が行われ、回路基板等に実装される。
【0034】
図1に戻り、固定枠120の表面には、端子130及び配線140以外に、検査用パターンが形成されている。検査用パターンには、第1認識用パターン210、第2認識用パターン220、第1識別用パターン230、第2識別用パターン240、第1管理用パターン250、第2管理用パターン260が含まれる。
【0035】
これらの検査用パターンは、ミラー部40、水平駆動部70、垂直駆動部110等を形成する際の製造工程を利用して形成されたものである。
【0036】
第1認識用パターン210は、ウェハ状態又はチップ状態での外観検査において、外観検査装置が各光走査装置1の検査領域を認識するためのマーカである。第1認識用パターン210は、固定枠120の四隅に配置されている。
【0037】
外観検査装置は、カメラで撮影した撮影画像から第1認識用パターン210に基づいてより検査領域を特定し、特定した検査領域から外観欠陥を検出する。外観欠陥は、ウェハ状態での製造工程や、ダイシング工程で発生する可能性がある。
【0038】
第2認識用パターン220は、ダイシングにより個片化されたチップ状態の光走査装置1の位置をチップソータが認識するためのマーカである。チップソータは、カメラで撮影した撮影画像から第2認識用パターン220に基づいて、ダイシング後のウェハ2から各光走査装置1の位置を特定し、特定した光走査装置1を吸着してチップトレイ等に移送する。
【0039】
第1識別用パターン230は、光走査装置1の製品の種別を識別する情報である。本実施形態では、第1識別用パターン230は、製品の型番を表す文字情報である。第1識別用パターン230により、不具合の発生により顧客等から返却された光走査装置1を解析する際に、製品の種別を容易に把握することができる。
【0040】
第2識別用パターン240は、ウェハ2内における各光走査装置1の位置(アドレス)を表す情報である。本実施形態では、ウェハ2内におけるアドレスを表す文字情報である。第2識別用パターン240により、上記外観検査や不良解析を含む各種の検査結果と、ウェハ2内の位置との相関関係の有無を検出することができる。これにより、不具合等の原因がウェハプロセスであるか否かを容易に特定することができ、原因がウェハプロセスの場合には、原因が存在する製造工程を容易に特定することができる。
【0041】
第1管理用パターン250は、光走査装置1の製造時に使用されるエッチング装置によるエッチングの精度を管理するためのパターンである。この光走査装置1の製造後に第1管理用パターン250を観察することにより、コンタクトホールや開口を形成するために行われたエッチングの深さ等のエッチング精度を管理することができる。
【0042】
第2管理用パターン260は、光走査装置1の製造時に使用されるダイシング装置によるダイシングの精度を管理するためのパターンである。第2管理用パターン260は、光走査装置1の外周に沿って形成されている。ダイシングされた後のチップ状態の光走査装置1において第2管理用パターン260を観察し、光走査装置1の外周から第2管理用パターン260までの距離を計測することにより、ダイシングの精度を管理することができる。
【0043】
以下に、各検査用パターンのより詳細な構成について説明する。
【0044】
まず、光走査装置1の断面構造について説明する。
図3は、ミラー部40、圧電センサ51、及び基板コンタクト部140aの断面図である。
図3に示すように、光走査装置1は、SOI基板300を用いて形成されている。SOI基板300は、シリコン(Si)からなる支持基板301、BOX(Buried Oxide)層302、シリコン活性層303が、この順に積層されたものである(
図4参照)。BOX層302は、二酸化シリコン(SiO
2)により形成された酸化絶縁膜である。シリコン活性層303は、単結晶シリコンからなる。
【0045】
ミラー部40、固定枠120及び可動枠80以外の領域では、弾性を付与するために支持基板301がエッチングにより除去されている。固定枠120及び可動枠80においては、支持基板301は残存している。
【0046】
ミラー部40の形成領域においては、シリコン活性層303上に表面酸化膜304が形成されている。表面酸化膜304は、シリコン活性層203に対して熱酸化処理を行うことによりシリコン活性層303の表面に形成されたシリコン熱酸化膜(SiO2)である。
【0047】
表面酸化膜204上には、層間絶縁膜305が形成されている。層間絶縁膜305は、アルミナ(Al2O3)等からなる。層間絶縁膜305上には、上述のミラー反射面10を形成するための金属膜306が形成されている。金属膜306は、例えば銀(Ag)合金からなる。層間絶縁膜305は、金属膜306との密着性が高い。金属膜306は、層間絶縁膜305上にスパッタ法等により形成されている。
【0048】
ミラー反射面10として機能する金属膜306上には、増反射膜307が形成されている。増反射膜307は、屈折率の異なる誘電体膜が積層された積層誘電体膜である。積層誘電体膜は可視光域中の低波長域(波長550nmよりも低波長側の領域)の反射率を上げる増反射膜として機能する。増反射膜307は、例えば、アルミナ等からなる低屈折率膜上に、酸化チタン等からなる高屈折率膜が積層された積層誘電体膜である。低屈折率膜と高屈折率膜とは屈折率差が大きいことが好ましい。
【0049】
圧電センサ51の形成領域においては、シリコン活性層303上に表面酸化膜304が形成されている。この表面酸化膜304上に下部電極311、圧電体312、上部電極313が順に積層されている。駆動源72は、下部電極311、圧電体312、及び上部電極313により構成されている。
【0050】
下部電極311と上部電極313とは、例えば、白金(Pt)により形成されている。圧電体312は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)薄膜である。上部電極313上には、層間絶縁膜305が形成されている。層間絶縁膜305上には、増反射膜307が形成されている。なお、圧電センサ92及び駆動源72,91は、圧電センサ51と同様の構成である。
【0051】
基板コンタクト部140aの形成領域においては、シリコン活性層303上に表面酸化膜304が形成され、表面酸化膜304上に層間絶縁膜305が形成されている。層間絶縁膜305及び表面酸化膜304には、基板としてのシリコン活性層303に達するコンタクトホールが形成されており、このコンタクトホールを埋めるように導電性層320が形成されている。コンタクトホールに埋入された導電性層320により基板コンタクト部140aが形成されている。また、導電性層320を、エッチングしてパターニングすることで配線140が形成されている。導電性層320は、例えば、金(Au)により形成されている。
【0052】
図4は、固定枠120の第1認識用パターン210の形成領域と、ミラー部40の形成領域との断面構造を示す図である。
【0053】
図4に示すように、固定枠120は、支持基板301をベースとして形成されている。シリコン活性層303上には、表面酸化膜304と層間絶縁膜305が積層されている。第1認識用パターン210は、ミラー反射面10を形成するために層間絶縁膜305上に形成される金属膜306を、ミラー反射面10の形成時に同時にパターニングすることにより形成されたものである。第1認識用パターン210上には増反射膜307が形成されている。
【0054】
光走査装置1は、アルミナやチタン酸化膜といった特殊な膜を用いて形成されるため、チップ全体の色合いが複雑であるが、第1認識用パターン210を、光反射率の高い金属膜306で形成することにより、認識精度が向上する。
【0055】
図5は、固定枠120の第2認識用パターン220の形成領域と、基板コンタクト部140aの形成領域との断面構造を示す図である。
【0056】
図5に示すように、層間絶縁膜305上の導電性層320により形成されている。第2認識用パターン220は、配線140を形成するために層間絶縁膜305上に形成される導電性層320を、配線140の形成時に同時にパターニングすることにより形成されたものである。第2認識用パターン220上には増反射膜307が形成されている。
【0057】
このように、第2認識用パターン220を、光反射率の高い導電性層320で形成することにより、認識精度が向上する。
【0058】
図6は、固定枠120の第1識別用パターン230の形成領域と、圧電センサ51の形成領域との断面構造を示す図である。
【0059】
図6に示すように、第1識別用パターン230は、表面酸化膜304上の金属層321により形成されている。第1識別用パターン230は、圧電センサ51の下部電極311を形成するために表面酸化膜304上に形成される金属層321を、下部電極311の形成時に同時にパターニングすることにより形成されたものである。
【0060】
なお、圧電センサ92及び駆動源72,91の下部電極についても、第1識別用パターン230と同時に金属層321をパターニングすることにより形成される。また、第2識別用パターン240も金属層321で形成されている。第2識別用パターン240についても、第1識別用パターン230と同時に金属層321をパターニングすることにより形成される。
【0061】
このように、第1識別用パターン230及び第2識別用パターン240を光反射率の金属層321で形成することにより、識別精度が向上する。
【0062】
図7は、固定枠120の第1管理用パターン250の形成領域と、コンタクトホール400の形成領域との断面構造を示す図である。
【0063】
コンタクトホール400は、例えば、配線140を下部電極311に接続するために層間絶縁膜305に形成されたエッチング穴である。
【0064】
第1管理用パターン250は、シリコン活性層303上に積層された表面酸化膜304及び層間絶縁膜305に形成されたエッチング穴である。第1管理用パターン250は、コンタクトホール400を形成するためのエッチング工程において、コンタクトホール400の形成時に同時に形成されたものである。
【0065】
コンタクトホール400のエッチング形成時には下部電極311がエッチングストッパとして機能するが、第1管理用パターン250に対しては、エッチングストッパとして機能する膜は存在しない。このため、第1管理用パターン250の深さDは、コンタクトホール400の深さとは異なる。
【0066】
コンタクトホール400の深さが十分でない場合には、配線140と下部電極311との間でコンタクト不良が生じる。第1管理用パターン250の深さDを測定し、層間絶縁膜305の膜厚との差分を求めることにより、エッチングが層間絶縁膜305の膜厚を超える十分な深さまで達していることを確認することができる。
【0067】
図8は、固定枠120の第2管理用パターン260の形成領域と、基板コンタクト部140aの形成領域との断面構造を示す図である。
【0068】
第2管理用パターン260は、シリコン活性層303上に積層された表面酸化膜304及び層間絶縁膜305に形成されたエッチング穴である。第2管理用パターン260は、基板コンタクト部140aを形成するためのエッチング工程において、基板コンタクト部140aの形成時に同時に形成されたエッチング溝である。
【0069】
以上のように、本実施形態の光走査装置1は、固定枠120に各種の検査用パターンが形成されている。これらの検査用パターンは、光走査装置1の各種素子の形成時に同時に形成されるものであるので、製造コストが増大することはない。
【0070】
なお、これらの検査用パターンのうち管理用パターンをチップ形成領域間のスクライブラインに設けることも考えられる。しかし、スクライブラインに管理用パターンを設けると、スクライブライン幅が大きくなり、1枚のウェハ2から製造される光走査装置1の個数が減少してしまう。このため、スクライブラインに管理用パターン等を設けることは好ましくない。
【0071】
このように、本実施形態によれば、製造コストを上げることなく、固定枠を有効活用することができる。
(変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態では、検査用パターンとして、第1認識用パターン210、第2認識用パターン220、第1識別用パターン230、第2識別用パターン240、第1管理用パターン250、第2管理用パターン260を固定枠120に設けているが、固定枠120にその他のパターンを設けてもよい。
【0072】
例えば、上記以外のパターンとして、フォトマスクの位置決め用パターン(アライメントマーク)、電気的特性評価用パターン(TEG:Test Element Group)、断面評価用パターンが挙げられる。
【0073】
図9は、位置決め用パターンを例示する図である。
図9に示す位置決め用パターン270は、ウェハプロセス時に形成される各種の層をパターニングすることにより形成される。位置決め用パターン270は、フォトマスクをアライメントする際に用いられる。
【0074】
図10は、電気的特性評価用パターンを例示する図である。
図10に示す電気的特性評価用パターン280は、ウェハプロセス時に形成される各種の層をパターニングすることにより形成される。電気的特性評価用パターン280は、プロセスや設計による問題を検出するための各種電気的特性の評価に用いられる。
【0075】
図11は、断面評価用パターンを例示する図である。
図11に示す断面評価用パターン290は、ウェハプロセス時に形成される各種の層をパターニングすることにより形成される。断面評価用パターン290は、断面形状の出来栄えの評価に用いられる。例えば、ダイシングにより個片化された光走査装置1を断面評価用パターン290が形成された領域で劈開させることにより生じた断面を観察することにより、各層の形状等が評価される。
【0076】
図12は、位置決め用パターン270を固定枠120に形成した例を示す図である。なお、位置決め用パターン270等を形成する位置は、この例には限定されず、いずれの位置に設けてもよい。
【0077】
また、位置決め用パターン270、電気的特性評価用パターン280、及び断面評価用パターン290は、ウェハ2内において光走査装置1を形成しないダミーチップ内に設けてもよい。
【0078】
図13は、ウェハ2内のダミーチップの配置例を示す図である。例えば、位置決め用パターン270は、ウェハ2の中心に対して左右対称となる位置に配置されたダミーチップD1に設けられる。また、電気的特性評価用パターン280は、ウェハ2の中心と、ウェハ2の中心に対して上下左右対称となる位置に配置されたダミーチップD2に設けられる。そして、断面評価用パターン290は、角部に配置されたダミーチップD3に設けられる。
【0079】
上記実施形態の光走査装置1は、例えば、アイウェアやプロジェクタ等の二次元走査型の光走査装置に適用することができる。
【0080】
また、上記各実施形態では、光走査装置として、トーションバーを用いた光走査装置を例に挙げて説明しているが、本発明は、トーションバーを用いない光走査装置に対しても適用可能である。また、上記各実施形態では、二次元走査型の光走査装置を例に挙げて説明しているが、二次元走査型に限られず、1方向にミラー部を揺動させる一次元走査型の光走査装置であってもよい。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0082】
1:光走査装置、2:ウェハ、10:ミラー反射面、40:ミラー部、50:トーションバー、51:圧電センサ、70:水平駆動部、71:水平駆動梁、72:駆動源、80;可動枠、90:垂直駆動梁、91:駆動源、92:圧電センサ、110:垂直駆動部、120:固定枠、130:端子、140:配線、140a:基板コンタクト部、203:シリコン活性層、204:表面酸化膜、210:第1認識用パターン、220:第2認識用パターン、230:第1識別用パターン、240:第2識別用パターン、250:第1管理用パターン、260:第2管理用パターン、270:位置決め用パターン、280:電気的特性評価用パターン、290:断面評価用パターン、300:SOI基板、301:支持基板、302:BOX層、303:シリコン活性層、304:表面酸化膜、305:層間絶縁膜、306:金属膜、307:増反射膜、311:下部電極、312:圧電体、313:上部電極、320:導電性層、321:金属層、400:コンタクトホール