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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】タンク保護ユニット
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221130BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20221130BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B60K15/063 Z
B60K13/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018203018
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020069829
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】福永 浩二
(72)【発明者】
【氏名】榊原 春彦
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-070587(JP,U)
【文献】実開平03-055326(JP,U)
【文献】特開2010-052459(JP,A)
【文献】特開2017-094885(JP,A)
【文献】特開2003-285656(JP,A)
【文献】特開2012-066764(JP,A)
【文献】特開2005-112288(JP,A)
【文献】特開2006-015769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 15/063
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部のサスペンションクロスメンバと車両前後方向で隣り合って配設されるタンクと、
前記タンクの車両上下方向下方に位置し、車両左右方向に延設され左右両端が前記車体下部の骨格部材に取り付けられる第1保護部材と、
前記サスペンションクロスメンバから前記第1保護部材に亘って前記タンクの下面を覆うように配設される第2保護部材と、を備え
前記サスペンションクロスメンバは、車両後部に位置するリアサスペンションクロスメンバであり、
前記タンクは、前記リアサスペンションクロスメンバの車両前後方向後方に配設され、
前記第1保護部材は、前記タンクの車両上下方向下方かつ前記タンクの後端近傍に位置し車両左右方向へ延設する本体部と、当該本体部の左右両端から車両上下方向上方に延設され前記タンクの車両左右方向外側の位置で前記車体下部のサイドメンバに取り付けられる左右脚部とを有し、
前記第2保護部材は、前記タンクの下面と離間して配設され、前端が前記リアサスペンションクロスメンバに固定され、後端が前記第1保護部材の前記本体部に固定される、タンク保護ユニット。
【請求項2】
前記第2保護部材は、プレート状に形成され、後端が前記第1保護部材に固定されて前記タンクの下面を覆うタンク下面保護部と、前記タンク下面保護部の前端から屈曲されて前方斜め前方に延びて前記タンクの前面を覆い前記リアサスペンションクロスメンバに固定されるタンク前面保護部とを有する、請求項に記載のタンク保護ユニット。
【請求項3】
前記第2保護部材は、前記リアサスペンションクロスメンバから前記第1保護部材に亘って延びる複数のビード部が形成され、前記複数のビード部の間に複数の開孔が形成されている、請求項に記載のタンク保護ユニット。
【請求項4】
前記第1保護部材は、前記左右脚部が前記サイドメンバの固定位置から前方に傾斜している、請求項のいずれか一項に記載のタンク保護ユニット。
【請求項5】
前記第1保護部材は、前記左右脚部のうち少なくとも一方が前記車体下部の前記サイドメンバに設けられた牽引部を介して前記サイドメンバに取り付けられる、請求項のいずれか一項に記載のタンク保護ユニット。
【請求項6】
前記第1保護部材及び前記車体下部の車両左右方向に延びる骨格部材で最も後方に位置するリアエンドクロスメンバに固定され、車両後方視で前記第1保護部材と前記リアエンドクロスメンバで囲まれる領域を覆うカバー部材を備える、請求項のいずれか一項に記載のタンク保護ユニット。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記カバー部材と前記第1保護部材の前記本体部との間に前記第1保護部材に沿うように形成された開口部を有する、請求項に記載のタンク保護ユニット。
【請求項8】
前記第1保護部材の前記左右脚部は、前記タンクの車両左右方向側方に配設される排気部より車両左右方向外側に位置し、
前記第1保護部材の前記本体部は、前記排気部より車両上下方向下方に位置する、請求項のいずれか一項に記載のタンク保護ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンク保護ユニットに係り、特に車体下部に設けられたタンクを保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ディーゼルエンジンを搭載した車両には、排ガス中に含まれる窒素酸化物(Nox)を浄化する排気浄化システムが搭載されている。
この排気浄化システムは、尿素水溶液等の還元剤を貯留する尿素タンクを有しており、車体後側の下部に配設されることが一般的である。
したがって、車体後側の下部に配設された尿素タンクは、車両の後側を支持するリアサスペンションが上下方向に伸縮することで車体後側と共に上下方向に加振されることが考えられる。
【0003】
このように上下方向に加振された尿素タンクは、車体下部に位置するために路上に配置される輪留めや段差等の障害物に衝突する虞があった。
そこで、尿素タンク(タンク)の前方をスペアタイヤで覆い、下方をガードバーで覆うことで上記のような障害物に衝突することよる衝撃からタンクを保護する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-94885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、タンクの容量を増加して尿素水溶液の貯留量を増加させるためには、タンクの前方にスペアタイヤが位置するので、例えばタンクを上方に延ばすためにフロアパネルを上方に突出させるように形成する必要がある。
このようにフロアパネルを上方に突出させるように形成することは、タンクの容量を増やすために車室内の有効な空間を減少させることになる虞があり、さらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車体下部に配設されるタンクの容量を向上させつつ、障害物等による車体下方からの衝撃からタンクを保護することができるタンク保護ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のタンク保護ユニットは、車体下部のサスペンションクロスメンバと車両前後方向で隣り合って配設されるタンクと、前記タンクの車両上下方向下方に位置し、車両左右方向に延設され左右両端が前記車体下部の骨格部材に取り付けられる第1保護部材と、前記サスペンションクロスメンバから前記第1保護部材に亘って前記タンクの下面を覆うように配設される第2保護部材と、を備え、前記サスペンションクロスメンバは、車両後部に位置するリアサスペンションクロスメンバであり、前記タンクは、前記リアサスペンションクロスメンバの車両前後方向後方に配設され、前記第1保護部材は、前記タンクの車両上下方向下方かつ前記タンクの後端近傍に位置し車両左右方向へ延設する本体部と、当該本体部の左右両端から車両上下方向上方に延設され前記タンクの車両左右方向外側の位置で前記車体下部のサイドメンバに取り付けられる左右脚部とを有し、前記第2保護部材は、前記タンクの下面と離間して配設され、前端が前記リアサスペンションクロスメンバに固定され、後端が前記第1保護部材の前記本体部に固定される、ことを特徴とする。
【0008】
これにより、タンクの車両上下方向下側を第1保護部材によって保護し、該タンクの下面を覆うように配設される第2保護部材によって保護することで、タンクの下部における車両上下方向下側をサスペンションクロスメンバから第1保護部材に亘って的確に保護することが可能とされる。第1保護部材の本体部がタンクの車両上下方向下方かつタンクの後端近傍に位置し車両左右方向へ延設され、換言するとタンクからある程度下方向に離間して位置していることから、段差等の障害物から後輪が降りた後にタンクが受ける可能性がある衝撃を第1保護部材で確実に受けることが可能とされる。また、第2保護部材がタンクの下面と離間して配設されることで、衝撃によって第1保護部材が撓むような場合であってもタンクに衝撃が加わることを第2保護部材によって防止することが可能である。
【0010】
その他の態様として、前記第2保護部材は、プレート状に形成され、後端が前記第1保護部材に固定されて前記タンクの下面を覆うタンク下面保護部と、前記タンク下面保護部の前端から屈曲されて前方斜め前方に延びて前記タンクの前面を覆い前記リアサスペンションクロスメンバに固定されるタンク前面保護部とを有するのが好ましい。
これにより、プレート状に形成された第2保護部材のタンク前面保護部によってタンクの前面を覆うことで、タンクの前面についても的確に保護することが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記第2保護部材は、前記リアサスペンションクロスメンバから前記第1保護部材に亘って延びる複数のビード部が形成され、前記複数のビード部の間に複数の開孔が形成されているのが好ましい。
これにより、第2保護部材に複数のビード部を設けることで、例えば屈曲している部分や前後方向の剛性を確保することが可能とされる。また、複数のビード部の間に複数の開孔を設けることで、第2保護部材の剛性が低下することを抑制しつつ軽量化することが可能とされる。
【0012】
その他の態様として、前記第1保護部材は、前記左右脚部が前記サイドメンバの固定位置から前方に傾斜しているのが好ましい。
これにより、例えば車両の後輪が障害物を乗り越えた後に障害物が第1保護部材に衝突して衝撃が加わるとき、第1保護部材に加わる衝撃を障害物が衝突する方向に沿って真っ直ぐ受けることが可能とされる。
【0013】
その他の態様として、前記第1保護部材は、前記左右脚部のうち少なくとも一方が前記車体下部の前記サイドメンバに設けられた牽引部を介して前記サイドメンバに取り付けられるのが好ましい。
これにより、車両を牽引する牽引部に第1保護部材の左右脚部のうち少なくとも一方が設けられることで、第1保護部材の左右脚部を支持することに適した強度を備える牽引部を利用して左右脚部の一端を取り付けることが可能とされる。
【0014】
その他の態様として、前記第1保護部材及び前記車体下部の車両左右方向に延びる骨格部材で最も後方に位置するリアエンドクロスメンバに固定され、車両後方視で前記第1保護部材と前記リアエンドクロスメンバで囲まれる領域を覆うカバー部材を備えるのが好ましい。
これにより、車両後方視で第1保護部材とリアエンドクロスメンバで囲まれる領域をカバー部材によって覆うことで、車両後方視における車両の意匠性を向上させることが可能とされる。
【0015】
その他の態様として、前記カバー部材は、前記カバー部材と前記第1保護部材の前記本体部との間に前記第1保護部材に沿うように形成された開口部を有するのが好ましい。
これにより、カバー部材と第1保護部材の本体部との間に開口部を有することで、カバー部材に蓄積される虞のある小石等を開口部から排出することが可能とされる。
その他の態様として、前記第1保護部材の前記左右脚部は、前記タンクの車両左右方向側方に配設される排気部より車両左右方向外側に位置し、前記第1保護部材の前記本体部は、前記排気部より車両上下方向下方に位置するのが好ましい。
【0016】
これにより、排気部の下方及び左右方向外側に第1保護部材を位置させることで、第1保護部材によって排気部も保護することが可能とされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタンク保護ユニットによれば、タンクの車両上下方向下側を第1保護部材によって保護し、タンクの下面を該タンク覆うように配設される第2保護部材によって保護することで、タンクの下部における車両上下方向下側をサスペンションクロスメンバから第1保護部材に亘って的確に保護することができる。
これにより、車体の下部に配設されるタンクの容量を確保しつつ車体下方からの衝撃からタンクを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両の概略構成図である。
図2】車両の後部を右後方斜め下から視た斜視図である。
図3】タンク保護ユニットを車両左前方斜め上から視た分解斜視図である。
図4】タンク保護ユニットの取付け部分の説明図である。
図5】タンク保護ユニットの取付け部分の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、車両1の概略構成図が示されている。車両1は、モノコック構造のフレームにディーゼルエンジン(後述するエンジン61)を搭載した4輪駆動のワンボックスカーである。
この車両1のフロアパネル2より車両上下方向上側の車体上部3には、ボディサイド3b、ルーフ3r及びドア3d等のエクステリア等が形成及び配設されている。
【0020】
フロアパネル2より車両上下方向下側の車体下部4には、フレーム部10が形成され、フロントサスペンションユニット12及びリアサスペンションユニット14等が配設されている。
そして、車両1は、パワートレインユニット8を備えている。
フレーム部(車体下部)10は、フロアパネル2の背面に沿い設けられ、フロアパネル2の左右端に車両1の前後方向に延びて形成される左右一対のサイドメンバ(車体下部)25と後端に車両左右方向に延びて形成されるリアエンドクロスメンバ23等の複数のクロスメンバを含む骨格部である。これより、車両1の車体上部3は、フロアパネル2を介してフレーム部10に搭載されるようにして形成されている。
【0021】
フロントサスペンションユニット12は、フレーム部10の車両前後方向前側の下部に配設されるサスペンションユニットである。このフロントサスペンションユニット12は、フロントサスペンションメンバ31及び前部緩衝装置33を備えている。フロントサスペンションメンバ31は、フレーム部10の車両前後方向前側の下部に例えば溶接(或いは締結)される骨格部材であり、図示しないアームやハブが車両左右端に一対に配設されている。
【0022】
これにより、フロントサスペンションユニット12は、車両1の前側を支持することが可能である。また、前部緩衝装置33がコイルスプリングやショックアブソーバを備えているため、車両1の走行中に前輪5に加わる上下方向の振動を吸収及び減衰させることが可能である。
図2を参照すると、車両1の後部を右後方斜め下から視た斜視図が示されている。
【0023】
リアサスペンションユニット14は、フロントサスペンションユニット12と同様に車両1の後側を支持するとともに車両1の走行中に後輪6に加わる上下方向の振動を吸収及び減衰させることが可能なサスペンションユニットである。
このリアサスペンションユニット14は、リアサスペンションクロスメンバ(サスペンションクロスメンバ)41、リアサスペンションアーム43、リアショックアブゾーバ45及びリアコイル47を備えている。
【0024】
リアサスペンションクロスメンバ41は、フレーム部10の例えば左右のサイドメンバ25に懸架するように配設された骨格部材である。このリアサスペンションクロスメンバ41は、サイドメンバ25に例えば溶接(或いは締結)されることで固定されている。
したがって、リアサスペンションユニット14は、サイドメンバ25に固定されたリアサスペンションクロスメンバ41の回動軸42を軸にして上下方向に回動可能なリアサスペンションアーム43をリアコイル47によって下方に押圧することで、車両1の後側を支持しつつ車両1の走行による後輪6の上下方向の衝撃を吸収することができる。また、リアサスペンションユニット14は、リアショックアブゾーバ45が配設されることで、リアコイル47によって吸収した衝撃による車両上下方向の周期振動を減衰させることができる。
【0025】
図1に戻り、パワートレインユニット8は、内燃機関51及び駆動伝達機関53を備えており、車両1の駆動力の発生、調整及び伝達等をすることが可能である。
内燃機関51は、エンジン61、排気管63及び燃料タンク65を備えている。
エンジン61は、燃料タンク65から供給される軽油を燃焼することで駆動力を生成するディーゼルエンジンである。このエンジン61は、車両1における車体上部3の前側のエンジンルームに図示しないエンジンンマウントを介して搭載されている。
【0026】
排気管(排気部)63は、車両前後方向に延びる金属製の配管であり、一端がエンジン61に排ガスを流通可能に接続し、他端が車両1の後方に排ガスを排出するよう開口して形成されている。この排気管63の後方側には、サイレンサ(排気部)67が配設されており、エンジン61内での軽油の燃焼によって発生する燃焼音の抑制や排ガスの流速を低減させることが可能である。このサイレンサ67は、左右のサイドメンバ25の車両左右方向内側であって後述する尿素タンク85の右側に位置している。また、排気管63及びサイレンサ67は、フロアパネル2やフレーム部10等に適宜ゴム製のマウントを介して揺動可能に支持されている。
【0027】
燃料タンク65は、リアサスペンションクロスメンバ41の車両前後方向前方に位置し、サイドメンバ25に取付けられる燃料を貯留可能なタンクである。この燃料タンク65には、左右方向中央の下部に前後方向に延びる凹部65aが形成されている。
駆動伝達機関53は、トランスミッション71、フロントドライブシャフト73、トランスファ75、プロペラシャフト77、リアディファレンシャルユニット78及びリアドライブシャフト79等を備えている。
【0028】
このような構成により、パワートレインユニット8は、内燃機関51によって発生した駆動力を駆動伝達機関53を介して前輪5及び後輪6に伝達させることができる。また、内燃機関51のエンジン61が軽油を燃焼することで発生した排ガスは、排気管63を介して車両1の後方に排出することができる。
パワートレインユニット8には、排ガスを浄化する排ガス浄化装置80がさらに備えられている。排ガス浄化装置80は、SCR触媒83及び尿素タンク85を含んで構成されている。
【0029】
尿素タンク85は、SCR触媒83において還元剤として用いる尿素水を貯留するタンクであり、リアサスペンションクロスメンバ41の車両前後方向後方であってリアエンドビーム23の前方に配設されている。この尿素タンク85は、左右のサイドメンバ25の車両左右方向内側であってサイレンサ67の左側に位置している。また、尿素タンク85は、例えばフロアパネル2にボルトによって螺合して固定されている。またさらに、尿素タンク85の車両上下方向下方は、タンク保護ユニット90によって保護されている。
【0030】
図3を参照すると、タンク保護ユニット90を車両左前方斜め上から視た分解斜視図が示されている。また、図4及び図5を参照すると、タンク保護ユニット90の取付け部分の説明図が示されている。以下、図2~5に沿い、タンク保護ユニット90について詳しく説明する。
タンク保護ユニット90は、スキッドプレート(第2保護部材)91、ガードバー(第1保護部材)93及びガードバーカバー(カバー部材)95を備えている。
【0031】
スキッドプレート91は、例えば鉄製の矩形平板部材であり、リアサスペンションクロスメンバ41からガードバー(第1保護部材)93に亘って延びる複数のビード91aやビード間に形成された開孔91b等を形成することで剛性の向上や軽量化が施されている。このスキッドプレート91は、尿素タンク85を覆うようタンク下面保護部101及びタンク前面保護部102を備えている。タンク下面保護部101は、尿素タンク85の車両上下方向下側に尿素タンク85から所定距離離間して位置し、尿素タンク85の下面を保護している。タンク前面保護部102は、尿素タンク85の車両前後方向前側に尿素タンク85から一定距離離間して位置し、尿素タンク85の前側を保護している。
【0032】
さらに、スキッドプレート91には、前側の端部に第1取付部104、後側の端部に第2取付部105が形成されている。第1取付部104は、スキッドプレート91の前端の一部を折り曲げ形成し、貫通孔106が設けられた取付部である。この第1取付部104は、リアサスペンションクロスメンバ41の後側に形成された被取付部41aに設けられたボルト41bを貫通孔106に貫通させ、螺合することで固定されている。第2取付部105は、スキッドプレート91の後端のうち例えば2か所を凹ませて形成し、貫通孔107が設けられた取付部である。この第2取付部105は、ガードバー93の後述する第3取付部114に螺合されて固定されている。
【0033】
ガードバー93は、例えばパイプ部材であり、折り曲げることで下側水平部(本体部)111、右垂下部(左右脚部)112及び左傾斜部(左右脚部)113が形成されている。下側水平部111は、サイレンサ67及び尿素タンク85の車両上下方向下方かつ車両前後方向後側に位置し、尿素タンク85の下側を保護している(図2参照)。この下側水平部111には、第3取付部114及び第4取付部115が配設されている。
【0034】
第3取付部114は、下側水平部111に例えば溶接された平板部材であり、車両前後方向前端にネジ部114aが設けられている。したがって、スキッドプレート91は、第3取付部114に設けられたネジ部114aを貫通孔107に貫通させ、螺合することでガードバー93に固定されている。第4取付部115は、第3取付部114と同様に下側水平部111に溶接された平板部材であり、車両前後方向後端に貫通孔115aが設けられている。
【0035】
右垂下部112は、下端が上端より前方に位置するように第1角度R1を有して傾斜している(図2参照)。この右垂下部112には、上下方向中央から下側水平部111の右側にかけて延びる支持部材112aが設けられており、左右方向の剛性が高められている。さらに、右垂下部112の上端には、第5取付部116が取り付けられている。
図4によると、第5取付部116は、右垂下部112の姿勢を規定することでガードバー93における右側の姿勢を規定することが可能な部材である。この第5取付部116には、貫通孔116a(図3参照)が設けられており、ボルトを貫通させることによって第5取付部116をサイドメンバ25に螺合して固定することができる。さらに、第5取付部116には、係止部116bが設けられており、後述する態様によりガードバーカバー95の右端部を支持している。
【0036】
左傾斜部113は、右垂下部112と同様に下端が上端より前方に位置するように第1角度R1を有して傾斜している(図2参照)。さらに、左傾斜部113は、下端が上端より右方向に位置するように第2角度R2を有して傾斜している(図2参照)。この左傾斜部113の上端には、第6取付部117が取り付けられている。
右垂下部112及び左傾斜部113の前方への傾斜である第1角度R1は、後輪6が障害物を乗り越えた後に障害物がガードバー93の下側水平部111に対して加える可能性がある衝撃の方向に真っ直ぐ受けることができる角度を設定する。なお、第1角度R1は後輪6とガードバー93の下側水平部111の位置関係に応じて適宜変更してよい。
【0037】
図5によると、第6取付部117は、左傾斜部113の姿勢を規定することでガードバー93における左側の姿勢を規定することが可能な部材である。この第6取付部117には、貫通孔117a(図3参照)が設けられており、第6取付部117はボルトを貫通させることによって牽引部材(牽引部)118の側面に螺合して固定されている。この牽引部材118は、サイドメンバ25に取付けられた部材であり、例えば牽引穴118aに牽引ロープを取付けて他車両を牽引することや、他車両に牽引されて悪路等から車両1を脱出させることが可能な程度の強度を有している。さらに、第6取付部117には係止部117bが、牽引部材118には共締め部118bがそれぞれ設けられており、後述する態様によりガードバーカバー95の左端部を支持している。
【0038】
ガードバーカバー95は、例えば鉄製の矩形平板部材であり、ビードや開孔等を形成することで剛性の向上や軽量化が施されている。このガードバーカバー95は、ガードバー93、サイレンサ67及び尿素タンク85の後方を覆うよう、車両1の後端に設けられたリアバンパ9の前方に位置している(図2参照)。また、ガードバーカバー95は、ガードバー93の下側水平部111との間に開口部97を形成している。さらに、ガードバーカバー95には、第7取付部119、第8取付部120(説明の便宜上、右側を第8取付部120R、左側を第8取付部120Lとする)及び第9取付部121がそれぞれ形成されている。ガードバーカバー95に形成された開口部97は、ガードバー93の下側水平部111との間において、第7取付部119を除いた位置に車両左右方向にガードバー93に沿うように形成されている。
【0039】
第7取付部119は、ガードバーカバー95の車両前後方向前側の端部を凹ませて形成されている。この第7取付部119は、第4取付部115の貫通孔115aにボルト119aを貫通させて螺合することでガードバー93に固定されている(図3参照)。第8取付部120は、ガードバーカバー95の車両左右端部それぞれを折り曲げることで形成されている。右側の第8取付部120Rは、第5取付部116の係止部116bをボルト120aに係止させ、さらに螺合することで固定されている(図4参照)。このように係止部116bをボルト120aに係止させることで、右側の第8取付部120Rの取付け作業を容易にすることができる。
【0040】
左側の第8取付部120Lは、第6取付部117の係止部117bをボルト120bに係止させ、牽引部材118の共締め部118bを共締めするようにして螺合することで固定されている(図5参照)。このように係止部117bをボルト120bに係止させることで、左側の第8取付部120Lの取付け作業もまた容易にすることができる。
第9取付部121は、ガードバーカバー95の車両前後方向後側の端部に設けられている。この第9取付部121は、リアエンドクロスメンバ23及び貫通孔121aにボルトを貫通させて螺合することで固定されている(図2参照)。
【0041】
このように構成されたタンク保護ユニット90は、左右のサイドメンバ25の車両左右方向内側に位置するサイレンサ67及び尿素タンク85をガードバー93によって車両上下方向下方からの衝撃から保護することができる。以下、本発明に係るタンク保護ユニット90による作用及び効果を説明する。
例えば、車両1を前進させているとき、車両1の前方のある程度高さを有する段差等の障害物に乗り上げたあと、その障害物を乗り越え、そのままの勢いで障害物から降りると、リアサスペンションユニット14によって車両1に加わる上下方向の衝撃が緩和される一方、車両1の後側が下方に移動する。したがって、尿素タンク85と障害物との相対的な位置関係について鑑みると、障害物が車両前後方向前方斜め下方から尿素タンク85に向かって移動してくることになる。
【0042】
ここで、具体例として、サイレンサ67や尿素タンク85の下方に、レンガやブロック等のような上面が平面状に形成された障害物が位置する場合について鑑みると、ガードバー93の下側水平部111がサイレンサ67及び尿素タンク85の下方に位置するため、障害物がサイレンサ67や尿素タンク85に衝突するより先にガードバー93が衝突する。
【0043】
一方、車両前後方向について鑑みると、ガードバー93は、右垂下部112及び左傾斜部113が第1角度R1を有して傾斜しているため、下側水平部111が受けた衝撃に対してガードバー93の右垂下部112及び左傾斜部113が真っ直ぐ衝撃を受けて撓むため、衝撃を確実に受けることができ、サイレンサ67及び尿素タンク85を確実に保護することができる。
【0044】
ところで、ガードバー93は、上記したように、前側にスキッドプレート91が、後側にガードバーカバー95がそれぞれ取り付けられている。また、スキッドプレート91は前端がリアサスペンションクロスメンバ41に取り付けられ、ガードバーカバー95は後端がリアエンドクロスメンバ23に取り付けられている。したがって、ガードバー93は、スキッドプレート91及びガードバーカバー95によって車両前後方向についての剛性を高められているため、タンク保護ユニット90全体における前後方向の剛性を高めることができる。
【0045】
また、車両左右方向について鑑みると、ガードバー93は、右垂下部112が下方に垂直に延び、さらに右垂下部112には支持部材112aが設けられ、下側水平部111にはスキッドプレート91が設けられているため、上記衝撃は、下側水平部111と左傾斜部113との接続部分や牽引部材118に伝達する。ここで、上記の通り、牽引部材118は他車両を牽引等することができる程度の強度を備えた部材であり、左傾斜部113が第2角度R2を有して傾斜しているため、上記衝撃は牽引部材118に伝達する。したがって、上記のような構成により、ガードバー93の左右方向について剛性を高められているため、タンク保護ユニット90全体における左右方向の剛性を高めることができる。ゆえに、上記衝撃により伝達する衝撃に対するタンク保護ユニット90全体での強度を高めることができる。
【0046】
また、別の具体例として、岩等の上端が突起した障害物がサイレンサ67や尿素タンク85に衝突する場合を鑑みると、サイレンサ67に障害物が衝突する場合、排気管63及びサイレンサ67は、フロアパネル2やフレーム部10等に適宜ゴム製のマウントを介して揺動可能に支持されているため、上方や左右方向に移動するようにして障害物による衝撃を緩和させることができる。一方、尿素タンク85は、フロアパネル2に固定されているため、障害物が直接衝突すると、破損する虞がある。
【0047】
しかしながら、上記したように、スキッドプレート91のタンク下面保護部101は、尿素タンク85の車両上下方向下側に位置し、尿素タンク85の下面を保護している。すなわち、障害物の上端に形成された突起は、尿素タンク85より先にタンク下面保護部101に衝突する。これにより、尿素タンク85に障害物が直接衝突することを防止することができる。
【0048】
さらに、上記したように、スキッドプレート91は、第1取付部104及び第2取付部105がリアサスペンションクロスメンバ41及びガードバー93に尿素タンク85から上下方向について所定距離離間して取り付けられている。したがって、スキッドプレート91に加わる衝撃は、リアサスペンションクロスメンバ41及びガードバー93によって支持することができ、これらが撓む場合であっても、スキッドプレート91が尿素タンク85に所定距離近づくまでは尿素タンク85に伝達しないため、尿素タンク85を良好に保護することができる。
【0049】
そして、タンク保護ユニット90の後側には、ガードバーカバー95が位置しているため、車両1における、前後方向後方から視たリアバンパ9より下方の意匠性が低下することを抑制することができる。
さらに、タンク保護ユニット90を構成する各部品は、それぞれがボルト等によって螺合されている。すなわち、タンク保護ユニット90を構成する各部品は、上記衝撃によって変形した場合であっても、簡単に取り換えることができる。
【0050】
これにより、リアサスペンションクロスメンバ41より前方に燃料タンク65やリアディファレンシャルユニット78等が配設されることにより、リアサスペンションクロスメンバ41より後方に尿素タンク85を配設した場合であっても、尿素タンク85を保護することができる。
以上説明したように、本発明に係るタンク保護ユニットでは、車体下部4のリアサスペンションクロスメンバ41と車両前後方向で隣り合って配設される尿素タンク85と、尿素タンク85の車両上下方向下方に位置し、車両左右方向に延設され左右両端がフレーム部10のサイドメンバ25に取り付けられるガードバー93と、リアサスペンションクロスメンバ41からガードバー93に亘って尿素タンク85の下面を覆うように配設されるスキッドプレート91とを備える。
【0051】
従って、尿素タンク85の車両上下方向下側をガードバー93によって保護し、尿素タンク85の下面を覆うように配設されるスキッドプレート91によって保護するようにしたので、尿素タンク85の下部における車両上下方向下側をリアサスペンションクロスメンバ41からガードバー93に亘って的確に保護することができる。
特に、尿素タンク85は、車両後部に位置するリアサスペンションクロスメンバ41の車両前後方向後方に配設され、ガードバー93は、尿素タンク85の車両上下方向下方かつ尿素タンク85の後端近傍に位置し車両左右方向へ延設する下側水平部111と、当該下側水平部111の左右両端から車両上下方向上方に延設され尿素タンク85の車両左右方向外側の位置でフレーム部10のサイドメンバ25に取り付けられる右垂下部112及び左傾斜部113とを有し、スキッドプレート91は、尿素タンク85の下面と離間して配設され、前端がリアサスペンションクロスメンバ41に固定され、後端がガードバー93の下側水平部111に固定される。
【0052】
従って、ガードバー93の下側水平部111が尿素タンク85の車両上下方向下方かつ尿素タンク85の後端近傍に位置し車両左右方向へ延設され、換言すると尿素タンク85からある程度下方向に離間して位置していることから、段差等の障害物から後輪が降りた後に尿素タンク85が受ける可能性がある衝撃をガードバー93で確実に受けることが可能とされる。
【0053】
また、スキッドプレート91が尿素タンク85の下面と離間して配設されることで、衝撃によってガードバー93が撓むような場合であっても尿素タンク85に衝撃が加わることをスキッドプレート91によって防止することができる。
そして、スキッドプレート91は、プレート状に形成され、後端がガードバー93に固定されて尿素タンク85の下面を覆うタンク下面保護部101と、タンク下面保護部101の前端から屈曲されて前方斜め前方に延びて尿素タンク85の前面を覆いリアサスペンションクロスメンバ41に固定されるタンク前面保護部102とを有するようにしたので、尿素タンク85の前面についても的確に保護することができる。
【0054】
そして、スキッドプレート91は、リアサスペンションクロスメンバ41からガードバー93に亘って延びる複数のビード91aが形成されているので、例えば屈曲している部分や前後方向の剛性を確保することができる。また、複数のビード91aの間に複数の開孔91bが形成されているので、スキッドプレート91の剛性が低下することを抑制しつつ軽量化することができる。
【0055】
そして、ガードバー93は、右垂下部112及び左傾斜部113がサイドメンバ25の固定位置から前方に傾斜しているので、例えば車両1の後輪6が障害物を乗り越えた後に障害物がガードバー93に衝突して衝撃が加わるとき、ガードバー93に加わる衝撃を障害物が衝突する方向に沿って真っ直ぐ受けることができる。
そして、ガードバー93は、左傾斜部113の上端が車体下部4に設けられた牽引部材118に設けられたので、左傾斜部113の上端を支持することに適した強度を備える牽引部材118を利用して左傾斜部113の上端を取り付けることができる。
【0056】
そして、ガードバー93は、下側水平部111が右垂下部112の上端及び左傾斜部113の上端より車両前後方向前側に位置するよう形成されたので、例えば車両1が段差等の障害物を乗り越えて後輪6が障害物を降りた後にガードバー93の下側水平部111に障害物からの衝撃が加わるときにガードバー93の右垂下部112及び左傾斜部113を撓ませて確実に衝撃を受けることができる。
【0057】
そして、ガードバー93及びフレーム部10の車両左右方向に延びる骨格部材で最も後方に位置するリアエンドクロスメンバ23に固定され、車両1後方視でガードバー93とリアエンドクロスメンバ23で囲まれる領域を覆うガードバーカバー95を備える。
従って、車両後方視でガードバー93とリアエンドクロスメンバ23で囲まれる領域をガードバーカバー95によって覆うことで、車両後方視における車両1の意匠性を向上させることができる。
【0058】
そして、ガードバーカバー95は、ガードバーカバー95とガードバー93の下側水平部111との間に開口部97を有するようにしたので、ガードバーカバー95に蓄積される虞のある小石等を開口部97から排出することができる。
そして、ガードバー93の右垂下部112及び左傾斜部113は、尿素タンク85の車両左右方向側方に配設されるサイレンサ67より車両左右方向外側に位置し、ガードバー93の下側水平部111は、サイレンサ67より車両上下方向下側に位置するので、ガードバー93によってサイレンサ67も保護することができるとともに、ガードバーカバー95を備える場合には、車両後方視で尿素水タンク85及びサイレンサ67をガードバーカバー95によって覆われるため、車両後方視における車両1の意匠性を向上させることができる。
【0059】
以上で本発明に係るタンク保護ユニットの説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、モノコック構造のフレームを備える車両1について説明したが、所謂ラダーフレームを備える車両であってもよい。
また、本実施形態では、尿素タンク85は車両後側に配設されているが、例えばフロントバンパ等の内部に尿素タンクを設けるように車両前側に配置してもよく、この場合であっても上記同様のタンク保護ユニットを適用可能である。
【0060】
また、本実施形態では、尿素タンク85を保護するタンク保護ユニット90として説明したが、尿素以外の還元剤を貯留するタンクであってもよく、還元剤を貯留するタンクでなくてもよい。したがって、本実施形態では、エンジン61をディーゼルエンジンとして説明したが、ガソリンエンジンであってもよい。
また、本実施形態では、スキッドプレート91及びガードバーカバー95の材質や板厚について説明しているが、これらに限らず、適宜変更してもよい。
【0061】
また、本実施形態では、サイドメンバ25、第6取付部117及び牽引部材118をそれぞれ別の部材として説明したが、牽引部材118を第6取付部117と一体型にしてもよく、牽引部材118をサイドメンバ25と一体にしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
4 車体下部
10 フレーム部(車体下部)
23 リアエンドクロスメンバ
25 サイドメンバ(車体下部)
41 リアサスペンションクロスメンバ(サスペンションクロスメンバ)
63 排気管(排気部)
67 サイレンサ(排気部)
85 尿素タンク(タンク)
91 スキッドプレート(第2保護部材)
91a ビード(ビード部)
91b 開孔
93 ガードバー(第1保護部材)
95 ガードバーカバー(カバー部材)
97 開口部
111 下側水平部(本体部)
112 右垂下部(左右脚部)
113 左傾斜部(左右脚部)
118 牽引部材(牽引部)
図1
図2
図3
図4
図5