(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ローディング装置及びそれを機内に備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/04 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
B23Q7/04 A
B23Q7/04 Q
B23Q7/04 F
(21)【出願番号】P 2018213360
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 大希
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-153425(JP,A)
【文献】特開2016-175152(JP,A)
【文献】特開昭62-068248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主軸台と第2主軸台とがZ軸方向に対向配置された工作機械内に設けられたローディング装置であって、
前記Z軸方向のレール部と、前記レール部に沿って走行するローダーとを備え、
前記ローダーは前記レール部に沿って走行する走行部と、
前記走行部の走行する方向の前後のうちの一方の側面に旋回可能な旋回部が取り付けられ、前記旋回部はZ軸方向と直行する面に沿って旋回可能であり、
前記旋回部
は先端部に伸縮自在のアーム部を有し、
前記アーム部は先端部に第1ハンドと第2ハンドとが取り付けられ、
前記第1ハンドと第2ハンドとは、一方のハンドが前記アーム部の伸長方向、他方のハンドが前記一方のハンドとはZ軸方向であって直角に配置されるとともに前記アーム部の伸縮方向の面に沿って前記第1ハンドと第2ハンドとが相互に90°旋回可能であることを特徴とするローディング装置。
【請求項2】
請求項1記載のローディング装置を機内に備えた工作機械であって、
ワークの加工領域と前記ワークのストッカー部を有し、前記レール部は前記加工領域と前記ストッカー部とに跨がって配置され、
前記加工領域と前記ストッカー部は開閉制御されたシャッター手段にて仕切ってあることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械内に設けたローディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤,複合加工機等の工作機械においては、加工するワークをこの工作機械に搬入及び搬出するのに、ガントリーローダー等のローディング装置が備えられている。
これらのローディング装置は、工作機械の上部を横断するように配置したZ軸レールに沿ってローダーが走行し、Y軸方向に上下移動するアームからなるものが一般的であり、構造が大型になり、ワークの移動サイクルタイムも長くなる課題があった。
例えば、特許文献1にはワークの表面を加工する第1のNC旋盤とワークの裏面を加工する第2のNC旋盤との間に機上ローディング装置を設けるとともに、搬送途中にワークを反転させて引き渡すためのローディングハンドとアンローディングハンドを接近離間可能に配置した構造を開示する。
この場合も2台のNC旋盤の上部を横断するように配置したレール部をハンドが走行するものであり、構造が大型でワークの引き渡しサイクルが長いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、工作機械の機内に据え付けが可能なコンパクト構造で、加工サイクルタイムの短縮化に有効なローディング装置及びそれを機内に設けた工作機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るローディング装置は、工作機械の機内に設けられたローディング装置であって、レール部と、前記レール部に沿って走行するローダーとを備え、前記ローダーは旋回部と、前回旋回部から伸縮するアーム部とを有し、前記アーム部はワークを保持するハンド部を有することを特徴とする。
ここで機内とは、主軸台及び刃物台を備えた加工領域の周囲を囲んだカバー類の内側をいう。
【0006】
本発明において、ハンド部は複数有し、相互に選択使用可能であってもよい。
このようにすると、加工前のワーク(素材)と加工済み等のワーク(半完成品,完成品)等を同時に保持及び切り換えることが可能になり、加工サイクルが短くなる。
【0007】
本発明に係る工作機械は、請求項1又は2記載のローディング装置を機内に備えた工作機械であって、ワークの加工領域と前記ワークのストッカー部とを有し、前記レール部は前記加工領域と前記ストッカー部とに跨がって配置されていることを特徴とする。
ここで、加工領域と前記ストッカー部は開閉制御されたシャッター手段にて仕切ってあるのが好ましい。
これにより、加工領域内で発生する切粉等のエリア外への飛散を防止できる。
【0008】
本発明において、ストッカー部はワークの搬入及び搬出手段を有するようにしてもよい。
例えば、機内のストッカー部にワークを連続投入あるいは、連続搬出できるベルトコンベアや複数のローラーを平行に配置したローラーコンベア等を設けることで、ワークの連続加工の自動運転も可能になる。
【0009】
本発明において、さらにアーム部は各種アタッチメントの装着手段を有するようにしてもよい。
例えば、メンテナンス用のエアノズル,洗浄ノズル等のアタッチメント,ワークの加工寸法等を計測するための計器アタッチメント,溶接トーチ等の付加加工アタッチメント等である。
これにより、工作機械にいろいろな機能を組み込むこともできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るローディング装置は、ローダーに旋回部とこの旋回部から伸縮するアーム部を備え、このアーム部にワークを保持するハンド部を有するので、工作機械内に設けた主軸台等にワークを引き渡し、あるいは引き取りを行うスペースの省スペース化が可能にあり、コンパクトな構造になる。
また、機内にワークのストッカー部を備えることにより、連続加工運転も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るローディング装置を機内に備えた工作機械の例を示す。
【
図2】ローダーの構造例を示し、(a)は旋回状態、(b)はアーム部の伸縮を示す。
【
図4】ローダーがワークのストッカー部に位置する。
【
図5】ローダーがワークをローディングしている状態を示す。
【
図6】ローダーが第2主軸から完成品P
2を引き取る状態を示す。
【
図7】ローダーが第1主軸側に移動する状態を示す。
【
図8】第2主軸が第1主軸から半加工品P
1を引き取る状態を示す。
【
図9】ローダーが素材のワークWを第1主軸に引き渡す状態を示す。
【
図10】ローダーが完成品のストッカー部に移動する状態を示す。
【
図11】ローダーが完成品をストッカー部にアンローディングする状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るローディング装置10を工作機械の機内に組み込んだ例を以下図に基づいて説明する。
【0013】
図1は、ワークを保持し、回転制御できる第1主軸台4と第2主軸台5とをZ軸方向に対向配置した複合加工機の例を示すが、工作機械はこれに限定されない。
本実施例は、第1刃物台6と第2刃物台7とを備えた2タレットタイプを示すが、刃物台の構造や配置等にも制限がない。
【0014】
工作機械の機内は、加工領域1とストッカー部2とが開閉制御されたシャッター3にて仕切られている。
ストッカー部2の底部側には、ワーク(素材)Wの搬入部2aと、加工が終了した完成品P
2の搬出部2bを有している。
搬入部2a及び搬出部2bは図示を省略したが、
図1の右側であって工作機械の奥行き方向に沿ってベルトコンベアを設けてあり、ベルトコンベアに載置された複数のワークWが自動搬入され、加工が終了した完成品P
2がベルトコンベアにて搬出される。
【0015】
工作機械の機内であって、上部側に加工領域1とストッカー部2との間の全長にわたってローダー10Aが走行するレール部11を取り付けてある。
このレール部に沿って、例えばサーボ制御された駆動部12によりローダー10Aが走行可能に取り付けられている。
ローダー10Aは、走行部13と、
図2に示すようにこの走行部13の
走行方向の前後のうち一方の側面に旋回部14が旋回可能に取り付けられている。
旋回部14の先端部から伸縮自在のアーム部15を有し、このアーム部15の先端部にワークをハンド保持するためのハンド部16を有する。
また、ハンド部16は
図3に示すように、開閉自在の3点把持爪からなる第1ハンド16aと、第2ハンド16bとが相互に90°旋回可能に取り付けられている。
例えば図3にて説明すると、第2ハンド16bはアーム部の伸長方向の先端部に配置され、第1ハンド16aは第2ハンド16bとはZ軸方向の直角に配置され、図3(a)と(b)のように相互に90°旋回可能になっている。
ハンド部16は、加工前のワークWと加工後の半完成品P
1,完成品P
2を保持可能であれば、その構造や数に制限がない。
これにより、例えば
図2に示すように、紙面の奥側に設けた第2ハンド16bにてハンドリングしたワークWの場合には、第2主軸台5の方向に旋回部14が旋回し、その後に又はそれと同期してアーム部15が伸長し、第2主軸台5のチャック部5aにワークWを引き渡すことができる。
【0016】
次に、自動運転された加工手順の例を説明する。
図4に示すように、ローダー10Aがストッカー部2に移動し、アーム部15が伸長することでハンド部16が搬入部2aから搬入されたワークWを取りに行く。
この工程においては、シャッター3が閉じられている。
図6に示すように、ハンド部16がワークWに近づくと速度が遅くなり、センサー等によりワークの位置を感知し、例えば第1ハンド16aにてワークをチャック保持する。
その状体を
図5に示す。
この間に第1主軸台4のチャック部4aにチャックされたワークは、第1刃物台6にて一部機械加工された半完成品P
1になり、第2主軸台5のチャック部5aにチャックされた半完成品は、完成品P
2に加工されている。
【0017】
次に、ハンド部16は上昇し、シャッター3が開き、ローダー10Aが
図6に示すように第2主軸台5のチャック部5aの斜め奥側の上部まで移動する。
次に、
図2に示したように旋回部14の旋回とアーム部15の伸長により、ワークWを保持していない空の第2ハンド16bにて第2主軸台5から加工が完了している完成品P
2を受け取る。
完成品P
2を受け取ったハンド部16は、
図7に示すように一旦旋回部14が奥行きに避難する。
その間に
図8に示すように、第2主軸台5はZ軸方向に前進し、第1主軸台4にて一部加工が終わった半完成品P
1を引き取る。
すると、第1主軸台4のチャック部4aは空になるので、
図8に示すようにハンド部16が90°旋回し、
図9に示すように第1ハンド16aに有していたワークWを第1主軸台4側に引き渡す。
ワークWを第1主軸台4に引き渡したローダー10Aは、
図10に示すようにストッカー部2に移動し、
図11に示すように完成品P
2を搬出部2b側に渡す。
【0018】
本発明における工作機械の仕様は、これに限定されるものではなく、各種工作機械に適用される。
その際に、ハンド部16に各種アタッチメントを取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 加工領域
2 ストッカー部
2a 搬送部
2b 搬出部
3 シャッター
4 第1主軸台
5 第2主軸台
6 第1刃物台
7 第2刃物台
10 ローディング装置
10A ローダー
11 レール部
12 駆動部
13 走行部
14 旋回部
15 アーム部
16 ハンド部
16a 第1ハンド
16b 第2ハンド