(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】トイレシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20221130BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20221130BHJP
A47K 17/00 20060101ALI20221130BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20221130BHJP
G08B 21/04 20060101ALI20221130BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20221130BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
G01V3/12 A
A47K17/00
E03D9/00 Z
G08B21/04
A61B5/0245 Z
A61B5/113
(21)【出願番号】P 2017249212
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 安住
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-270570(JP,A)
【文献】特開2002-285624(JP,A)
【文献】特開2001-128948(JP,A)
【文献】特開2002-071825(JP,A)
【文献】特開2012-205669(JP,A)
【文献】特許第6041254(JP,B2)
【文献】特開2017-153850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
E03D 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ装置に設けられ、前記トイレ装置の前方に向けて照射した電波の反射波を検出する電波センサと、
前記反射波に基づいて使用者の生体情報を計測する生体情報計測部と、
前記電波センサから取得した前記反射波に基づいて、前記トイレ装置が設置されるトイレルーム内の人体の存在を検知する人体検知部と、
前記人体検知部により前記トイレルーム内における使用者の存在を検知された場合には、前記反射波に基づいて、前記トイレルーム内の使用者の行動を判別する行動判別部と、
を備え、
前記生体情報計測部は、前記行動判別部により判別された行動が、前記トイレ装置の使用に該当する行動である場合には、前記生体情報の計測を開始し、
前記人体検知部による人体検知が実行される場合には前記電波センサが
パルス方式又はFMCW方式として駆動し、前記生体情報計測部による前記生体情報の計測が行われる場合には前記電波センサの駆動方式が
ドップラー方式に切り替えられる、
トイレシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一人暮らしの高齢者等の健康状態や安否を見守れるようにした技術が提案されている(特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1には、非接触で生体情報を検出可能な電波センサを照明器具に内蔵し、生体情報が検出できない場合には、通信機能を用いて外部へ報知する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、被観察者の体に活動量計を装着し、当該活動量計からの生体情報を専用の通信機を使用して取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5582417号公報
【文献】特開2017-027574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、特許文献1に記載の技術では、照明器具の設置位置や照明器具と人の位置関係は部屋によって異なるため、人と照明器具との距離が長い場合には、安定して生体情報を検出できない場合がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、被観測者に活動量計等の生体センサを常に装着させる必要があり、被観測者に負担を強いるものである。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、被観測者に負担を強いることなく、安定的な生体情報を取得するのに好適なトイレシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、トイレ装置に設けられ、前記トイレ装置の前方に向けて照射した電波の反射波を検出する電波センサと、前記反射波に基づいて使用者の生体情報を計測する生体情報計測部と、前記電波センサから取得した前記反射波に基づいて、前記トイレ装置が設置されるトイレルーム内の人体の存在を検知する人体検知部と、前記人体検知部により前記トイレルーム内における使用者の存在を検知された場合には、前記反射波に基づいて、前記トイレルーム内の使用者の行動を判別する行動判別部と、を備え、前記生体情報計測部は、前記行動判別部により判別された行動が、前記トイレ装置の使用に該当する行動である場合には、前記生体情報の計測を開始し、前記人体検知部による人体検知が実行される場合には前記電波センサが第1の駆動方式として駆動し、前記生体情報計測部による前記生体情報の計測が行われる場合には前記電波センサの駆動方式が前記第1の駆動方式とは異なる第2の駆動方式に切り替えられる、トイレシステムである。
【0010】
本発明の一態様は、上述のトイレシステムであって、前記第1の駆動方式は、パルス方式又はFMCW方式であり、前記第2の駆動方式は、ドップラー方式であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、被観測者に負担を強いることなく、安定的な生体情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトイレシステムAの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置9の各種機能の実行するための概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る制御部12における、距離計測モード、生体情報計測モード、及び緊急対応モードを実行するための機能部を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るトイレルーム内における使用者の行動を判定する方法を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の距離計測モードにおける動作の流れを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の生体情報計測モードにおける動作の流れを示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の緊急対応モードにおける動作の流れを示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るトイレ装置1として機能するコンピュータ900のハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るトイレシステムを、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るトイレシステムAの概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、トイレシステムAは、トイレ装置1、リモコン装置2、及び音出力装置3を備える。
【0020】
トイレ装置1は、トイレルームに設けられており、リモコン装置2と有線又は無線通信することで情報を送受する。
【0021】
リモコン装置2は、トイレルームの所定位置に着脱可能に設置されている。例えば、この所定位置とは、トイレルームの壁面である。リモコン装置2には、複数の操作スイッチが設けられており、使用者は、例えば、便器洗浄や衛生洗浄の吐水に対応した操作スイッチを押下操作することで、トイレ装置1に対して便器洗浄や衛生洗浄の吐水を実行させることができる。
【0022】
音出力装置3は、トイレ装置1と無線又は有線により通信することで、情報を送受する。音出力装置3は、トイレ装置1による制御に応じて、楽器、自然、人等の音声を出力する装置である。例えば、音出力装置3は、いわゆるトイレ用の擬音装置である。なお、音出力装置3は、使用者の操作により音声(例えば、流水音)を出力してもよい。
【0023】
以下に、本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の構成について、説明する。
トイレ装置1は、便器本体4及び便座装置5を備える。
【0024】
便器本体4は、トイレルーム内の床面に設置されている。便器本体4の上部には、便座装置5が設置されている。
【0025】
便座装置5は、本体部6及び便座7を備える。
本体部6は、便器本体4の後部に設置されており、トイレ装置1を制御する装置等が内蔵されている。
便座7は、本体部6に対して上下方向に回動可能に支持されている。
【0026】
以下に、本発明の一実施形態に係る本体部6の構成について、説明する。
本体部6は、電波センサ8及び制御装置9を備える。
【0027】
電波センサ8は、トイレ装置1の前方に電波(例えば、マイクロ波やミリ波)を照射して、その電波の反射波を検出する。そして、電波センサ8は、その反射波の検出結果を制御装置9に送信する。なお、電波センサ8は、制御装置9により駆動が制御される。
【0028】
制御装置9は、使用者によるトイレ装置1の使用を契機として、電波センサ8からの検出結果から当該使用者の生体情報を抽出して、当該生体情報から使用者の安否や健康状態を見守る見守り機能を備える。
【0029】
また、制御装置9は、電波センサ8からの検出結果から、トイレルーム内の人体(使用者)を検出する人体検知機能及び使用者の行動を判別する行動判別機能を備える。
【0030】
制御装置9は、リモコン装置2と無線又は有線通信することで情報を送受する。また、制御装置9は、音出力装置3と無線又は有線通信することで情報を送受する。この無線通信とは、例えば、例えば赤外線通信やBluetooth(登録商標)通信等の電波による通信である。
制御装置9は、リモコン装置2からの操作信号に基づいて、便器洗浄や衛星洗浄の吐水を実行する。
【0031】
以下に、本発明の一実施形態に係る制御装置9の各種機能の実行するための構成について、説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置9の各種機能の実行するための概略構成図である。
【0032】
図2に示すように、制御装置9は、通信部10、駆動制御部11、及び制御部12を備える。
【0033】
通信部10は、リモコン装置2と通信することで、情報を送受する。また、通信部10は、音出力装置3と通信することで、情報を送受する。
【0034】
駆動制御部11は、制御部12の制御により、電波センサ8の駆動を制御する。具体的には、駆動制御部11は、電波センサ8の駆動方式(電波の放射方式)を制御する。例えば、駆動制御部11は、電波センサ8の駆動方式を、ドップラー式、パルス式、又はFMCW(周波数変調連続波)式に変更することができる。
【0035】
制御部12は、距離計測モード、生体情報計測モード、及び緊急対応モードの各モードに切り替わりながら動作する。まず、制御部12は、距離計測モードを実行する。この距離計測モードとは、電波センサ8の反射波の検出結果に応じて、トイレ装置1とトイレ装置1の周囲にある物体との距離を計測し、この計測した距離(以下、「計測距離」)Dから使用者の有無及び使用者の行動を判定するモードである。
【0036】
生体情報計測モードとは、電波センサ8の反射波の検出結果に応じて、使用者の呼吸や心拍等の生体情報を非接触で計測するモードである。制御部12は、距離計測モードにおいて判定された使用者の行動がトイレ装置1の使用に該当する場合には、生体情報計測モードに移行する。
【0037】
緊急対応モードとは、トイレルーム内の使用者に異常事態が発生した場合において、使用者に呼びかけを行い、当該呼びかけによる応答がない場合には、当該異常事態の発生を外部に報知するモードである。
【0038】
以下に、本発明の一実施形態に係る制御部12における、距離計測モード、生体情報計測モード、及び緊急対応モードを実行するための機能部について説明する。
図3は、制御部12における、距離計測モード、生体情報計測モード、及び緊急対応モードを実行するための機能部を示す図である。
【0039】
図3に示すように、制御部12は、距離計測部110、人体検知部111、行動判別部112、格納部113、生体情報計測部114、異常判定部115、及び報知部116を備える。
【0040】
(距離計測モード)
制御部12は、距離計測モードにおいて、トイレルーム内に使用者が存在するか否かを判別するとともに、当該使用者の利用状態を判別する。
【0041】
具体的には、距離計測部110は、電波センサ8を第1の駆動方式に変更させる。例えば、距離計測部110は、駆動制御部11に第1の制御信号を出力することで、電波センサ8を第1の駆動方式に変更する。この第1の駆動方式とは、例えば、パルス式又はFMCW式である。
【0042】
距離計測部110は、第1の駆動方式で電波センサ8を駆動することで得られた反射波の検出結果に基づいて、トイレ装置1と使用者との距離を計測する。例えば、距離計測部110は、電波センサ8から電波が送信されてから、当該電波が物体(例えば、使用者)で反射されて電波センサ8で受信されるまでの時間を計測することで、物体までの距離(以下、「計測距離」)Dを計測する。また、距離計測部110は、電波センサ8で受信した反射波の周波数の変化に応じて計測距離Dを計測してもよい。更に、距離計測部110は、電波センサ8で受信した反射波の強度に応じて計測距離Dを計測してもよい。
【0043】
人体検知部111は、距離計測部110が計測した電磁波の反射波に基づいて、トイレルーム内の人体(使用者)の存在を検知する。具体的には、人体検知部111は、計測距離Dが所定の範囲内H内でない場合には、トイレルーム内に使用者が存在しないと判定する。換言すれば、人体検知部111は、計測距離Dが所定の範囲内Hにある場合には、トイレルーム内における使用者の存在を検知する。なお、人体検知部111は、計測距離Dが計測さてない場合には、トイレルーム内に使用者が存在しないと判定してもよい。
【0044】
行動判別部112は、トイレルーム内に使用者が存在すると判定した場合において、計測距離Dに基づいて、トイレルーム内における使用者の行動を判別する。
図4は、本発明の一実施形態に係るトイレルーム内における使用者の行動を判定する方法を示す図である。
【0045】
図4に示すように、使用者の存在を検知する範囲である人体検知範囲Hは、複数の範囲に分割されており、その分割した範囲ごとに使用者の行動が割り当てられている。例えば、人体検知範囲Hは、トイレ装置1の前方方向において四つの領域(H1~H4)に分割され、トイレ装置1からの距離が遠い順に、「退室」、「入室」、「男子小」、「着座」の行動が割り当てられている。すなわち、人体検知範囲Hにおいて、トイレ装置1からの距離が遠い順に領域H1、H2、H3、H4の四つの領域に分割され、領域H1に「退室」、領域H2に「入室」、領域H3に「男子小」、領域H4に「着座」が割り当てられている。
【0046】
したがって、行動判別部112は、計測距離Dが、領域H1~H4のどの領域にあるかを判定することで、現在の使用者の行動を判定することができる。行動判別部112は、現在の使用者の行動を判定した場合には、その判定した行動の情報を、使用者の行動情報として格納部113に格納する。なお、行動判別部112は、この使用者の行動の判定処理(以下、「行動判定処理」という。)を、一定周期ごとに行い、その都度、格納部113内の行動情報を更新する。
【0047】
また、行動判別部112は、トイレルーム内に使用者が存在しないと判定した場合には、格納部113の行動情報を読み取り、読み取った行動情報が「退出」でなかった場合に、使用者がトイレルーム内に倒れている可能性があるとして、制御装置9を緊急対応モードに移行させる。
【0048】
(生体情報計測モード)
制御部12は、距離計測モードにおける行動判定処理において、使用者の行動がトイレ装置1の使用に該当すると判定した場合には、生体情報計測モードに移行する。本実施形態では、制御部12は、距離計測モードにおける行動判定処理において、使用者の行動が「着座」であると判定した場合には、生体情報計測モードに移行する。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、制御部12は、使用者の行動が「男子小」であると判定した場合であっても、生体情報計測モードに移行してもよい。
【0049】
具体的には、生体情報計測部114は、生体情報計測モードに移行すると、電波センサ8を第2の駆動方式に変更させて、使用者の生体情報を計測する。具体的には、生体情報計測部114は、駆動制御部11に第2の制御信号を出力することで、電波センサ8を第2の駆動方式に変更する。この第2の駆動方式とは、例えば、ドップラー式である。なお、第2の駆動方式は第1の駆動方式と異なる駆動方式であってもよいし、同一の駆動方式であってもよい。そして、生体情報計測部114は、電波センサ8から取得した反射波の検出結果から、生体情報に関連する特徴を抽出することで、使用者の生体情報を計測する。生体情報に関連する特徴とは、例えば、呼吸や心拍を示す周波数成分の情報である。
【0050】
異常判定部115は、生体情報計測部114で計測された生体情報が正常値であるか否かを判定する。そして、異常判定部115は、生体情報が正常値ではないと判定した場合には、異常事態が発生しているとして、制御装置9を緊急対応モードに移行させる。なお、異常判定部115は、生体情報計測部114により生体情報が計測できなかった場合には、制御装置9を距離計測モードに移行させる。
【0051】
(緊急対応モード)
制御部12は、異常事態が発生していると判定した場合において、所定時間内において使用者からの応答がない場合には、所定の報知動作を実行する。
【0052】
具体的には、報知部116は、異常事態が発生していると判定した場合には、トイレルーム内に設置さている音出力装置3に、異常事態が発生している旨を示す異常信号を出力する。これにより、報知部116は、音出力装置3から使用者に対する音声による呼びかけを実行させる。具体的には、音出力装置3は、異常信号を取得した場合には、「大丈夫ですか?問題なければリモコン装置の停止ボタンを押してください」等のように使用者に、所定の動作を実行させることを促す呼びかけを行い、異常事態の有無を確認する。
【0053】
報知部116は、音出力装置3の音声による呼びかけが行われてから所定時間が経過するまでに、停止スイッチが操作されたことを示す操作信号をリモコン装置2から取得しない場合には、使用者からの返答がないとして所定の報知動作を実行する。この報知動作とは、異常事態が発生している旨を外部装置に報知することでもよいし、音出力装置3から大音量で音や音声を出力させることでもよい。この外部装置とは、例えば、使用者を見守っている人(例えば、使用者の家族や使用者の介護者)の通信端末である。なお、報知部116は、使用者から呼びかけに対する応答があった場合(所定時間が経過するまでに停止スイッチが操作されたことを示す操作信号をリモコン装置2から取得した場合)には、異常事態ではないとして、報知操作を実行せず、制御装置9を距離計測モードに移行させる。なお、音出力装置3の音声による呼びかけを実行させる場合には、音出力装置3と報知部116とが、本発明の「報知部」となる。
【0054】
次に、本実施形態に係るトイレ装置1の動作の流れについて、説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の距離計測モードにおける動作の流れを示す図である。
【0055】
まず、トイレ装置1は、距離計測モードで動作する。具体的には、トイレ装置1は、電波センサ8を第1の駆動方式で駆動して、電波センサ8から電磁波を放射させる。そして、トイレ装置1は、その電磁波の反射波から計測距離Dを計測する(ステップS101)。
【0056】
トイレ装置1は、計測した計測距離Dに基づいて、トイレルーム内に使用者が存在するか否かを判定する(ステップS102)。例えば、トイレ装置1は、計測した計測距離Dが所定の範囲内H内である場合には、トイレルーム内に使用者が存在すると判定する。一方、トイレ装置1は、計測した計測距離Dが所定の範囲内H外である場合には、トイレルーム内に使用者が存在しないと判定する。なお、トイレ装置1は、計測距離Dを計測できない場合においても、トイレルーム内に使用者が存在しないと判定する。
【0057】
トイレ装置1は、トイレルーム内に使用者が存在すると判定した場合には、計測距離Dに基づいて、使用者が着座しているか否かを判定する(ステップS103)。具体的には、トイレ装置1は、計測距離Dが領域H4内であるか否かを判定する。トイレ装置1は、計測距離Dが領域H4内にあると判定した場合には、着座していると判定して、生体情報計測モードに移行する(ステップS104)。
【0058】
一方、トイレ装置1は、計測距離Dが領域H4内にないと判定した場合には、着座していないとして判定する。この場合には、トイレ装置1は、計測距離Dが領域H1~H3のどの領域に存在するかを判定することで使用者の行動を判別する。そして、トイレ装置1は、判別した使用者の行動に、格納部113内に格納されている行動情報を更新する(ステップS105)。
【0059】
トイレ装置1は、ステップS102において、トイレルーム内に使用者が存在しないと判定した場合には、格納部113内に格納されている行動情報が「退出」であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0060】
トイレ装置1は、格納部113内に格納されている行動情報が「退出」である場合には、ステップS105に移行する。一方、トイレ装置1は、格納部113内に格納されている行動情報が「退出」でない場合には、トイレルームの床に使用者が倒れている可能性があるとして、緊急対応モードに移行する(ステップS107)。
【0061】
次に、本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の生体情報計測モードにおける動作の流れについて説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の生体情報計測モードにおける動作の流れを示す図である。
【0062】
トイレ装置1は、電波センサ8を第2の駆動方式で駆動して、電波センサ8から電磁波を放射させる。そして、トイレ装置1は、その電磁波の反射波から便座7に着座している使用者の生体情報の計測を開始する(ステップS201)。そして、トイレ装置1は、電磁波の反射波から使用者の生体情報の計測できたか否かを判定する(ステップS202)。
【0063】
トイレ装置1は、使用者の生体情報が計測できた場合には、当該生体情報が正常値か否かを判定する(ステップS203)。トイレ装置1は、生体情報が正常値ではない、すなわち異常値であると判定した場合には、使用者の身に異常事態が発生していると判定し、緊急対応モードに移行する(ステップS204)。
【0064】
一方、トイレ装置1は、生体情報が正常値である場合には、使用者の着座が所定時間継続しているか否かを判定する(ステップS205)。トイレ装置1は、使用者の着座が所定時間継続していない場合には、ステップS201に移行する。一方、トイレ装置1は、使用者の着座が所定時間(例えば、数時間)継続している場合には、緊急対応モードに移行する。これは、使用者が便座7に長時間着座することはトイレ装置1に対する正常の使用とは考えられず、使用者の身に生体情報には表れない、何かしらの異常事態が発生したことが考えられるためである。
【0065】
トイレ装置1は、ステップS202において、使用者の生体情報が計測できなかった場合には、使用者が便座7から脱座したと判定して、距離計測モードに移行する(ステップS206)。
【0066】
なお、長時間、生体情報の計測と距離計測を交互に繰り返す場合も緊急対応モードに移行されることになる。例えば、長時間、生体情報の計測と距離計測を交互に繰り返す場合とは、座ったまま生体情報が得られない場合や、トイレ装置1の前に座って便座7に上半身を乗せている等を想定される。
【0067】
次に、本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の緊急対応モードにおける動作の流れについて説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係るトイレ装置1の緊急対応モードにおける動作の流れを示す図である。
【0068】
トイレ装置1は、トイレルーム内に設置さている音出力装置3に異常信号を出力する(ステップS301)。これにより、音出力装置3は、異常信号を取得した場合には、トイレルーム内にいる使用者に対して、所定の動作を実行させることを促すメッセージを音声により出力する。このメッセージは、異常事態の有無を確認するためのメッセージであって、例えば、リモコン装置2の操作スイッチの操作を促すメッセージである。
【0069】
トイレ装置1は、異常信号を出力してから所定時間経過する間に、上記メッセージに対する応答があるか否かを判定する(ステップS302)。例えば、トイレ装置1は、異常信号を出力してから所定時間経過する間に、リモコン装置2の操作スイッチの操作を示す操作信号をリモコン装置2から取得した場合には、使用者による応答があったと判定する。そして、トイレ装置1は、当該応答があると判定した場合には、異常事態が発生していないとして、報知動作を実行せずに、距離計測モードに移行する(ステップS303)。
【0070】
一方、トイレ装置1は、異常信号を出力してから所定時間経過する間に、リモコン装置2からの操作信号が得られない場合には、上記メッセージに対する応答がないと判定して、異常事態が発生している旨を、使用者の家族や使用者の介護者の通信端末に報知する(ステップS304)。これにより、使用者の家族や使用者の介護者は、トイレ装置1から異常事態が発生している旨の通知を取得した場合には、すみやかにトイレルームに駆けつけることができる。
【0071】
図8は、制御装置9として機能するコンピュータ900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ900は、ホストコントローラ901により相互に接続されるCPU(Central Processing Unit)902、RAM(Random Access Memory)903及びグラフィックコントローラ904を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ905によりホストコントローラ901に接続される通信I/F(interface)906を有する入出力部と、入出力コントローラ905に接続されるROM(Read Only Memory)909とを備える。
【0072】
CPU902は、ROM909及びRAM903に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィックコントローラ904は、CPU902等がRAM903内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、ディスプレイD上に表示させる。これに代えて、グラフィックコントローラ904は、CPU902等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0073】
通信I/F906は、有線又は無線によりネットワークを介して他の装置と通信する。また、通信I/F906は、通信を行うハードウェアとして機能する。
【0074】
ROM909は、コンピュータ900が起動時に実行するブート・プログラム、及びコンピュータ900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0075】
コンピュータ900にインストールされ、コンピュータ900を制御装置9として機能させるプログラムは、CPU902等に働きかけて、コンピュータ900を、制御装置9の各部としてそれぞれ機能させてよい。これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ900に読み込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である距離計測部110、人体検知部111、行動判別部112、格納部113、生体情報計測部114、異常判定部115、及び報知部116として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の制御装置9が構築される。
【0076】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0077】
(変形例1)上記実施形態では、音出力装置3は、トイレ装置1と別の構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、音出力装置3は、トイレ装置1に搭載されていてもよい。また、音出力装置3は、リモコン装置2に搭載されていてもよい。
【0078】
(変形例2)上記実施形態では、制御部12は、緊急対応モードにおいて、使用者からメッセージに対する応答がない場合には、トイレルーム内の温度を所定の温度にするように当該トイレルーム内の空調機を制御してもよい。これにより、例えば、制御部12は、使用者が便座7に着座したまま気を失っている場合には、当該使用者が低体温症になることを防止する。
【0079】
(変形例3)上記実施形態では、リモコン装置2における操作スイッチの操作を、使用者の応答動作としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、トイレ装置1に対する動作(着座や脱座)を、使用者の応答動作としてもよい。
【0080】
(変形例4)上記実施形態では、電波センサ8を用いて使用者の生体情報を計測したが、これに限定されない。例えば、トイレ装置1、例えば、便座7に接触型の生体情報センサを設置し、制御装置9は、使用者が便座7に着座した場合には当該生体情報センサで使用者の生体情報を計測してもよい。
【0081】
(変形例5)上記実施形態では、音声認識部を備え、緊急対応モードにおいて、呼びかけに対する使用者の音声による応答を音声認識部で認識してもよい。これにより、使用者は、所定の動作を実行しなくても、自身の体調や状況又は報知動作の停止を伝えることができる。
【0082】
(変形例6)上記実施形態では、報知部116は、緊急対応モードにおいて、音声出力部により促した所定の動作と異なる動作が使用者により実行された場合には、再度の音出力装置3の音声による呼びかけを実行させてもよいし、異常事態が発生しているとして外部に報知してもよい。
【0083】
(変形例7)上記実施形態では、トイレ装置1は、トイレ装置1の使用を契機として反射波に基づいて当該使用者の生体情報を計測したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、トイレ装置1は、使用者がトイレ装置1を使用していなくても、電波センサ8(トイレ装置1)と使用者との位置関係が近距離で且つ定まる位置に当該使用者が存在する場合にその使用者の生体情報を計測可能であればよい。
【0084】
(変形例8)上記実施形態では、トイレ装置1の使用を使用者が着座した場合としたが、これに限定されない。例えば、上述したように、制御部12は、使用者の行動が「男子小」であると判定した場合に、使用者がトイレ装置1を使用しているとみなして生体情報計測モードに移行してもよい。また、トイレ装置1の使用とは、例えば、使用者が便器洗浄や衛生洗浄の吐水を実行させるための操作(例えば、使用者がリモコン装置2を操作した場合)を行った場合である。また、トイレ装置1の使用とは、例えば、便座7や便蓋が開状態になったことを検出した場合である。
【0085】
(変形例9)上記実施形態では、電波センサ8が使用者に対して照射可能にトイレ装置1に搭載される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、電波センサ8は、浴室や洗面所内に設けられていてもよい。例えば、電波センサ8は、浴槽内にいる使用者に対して電波を照射可能な位置に設けられる。浴槽内にいる使用者は、常に一定の姿勢を維持しており、電波センサ8と使用者との位置関係が近距離且つ定まっている。これにより、被観測者に負担を強いることなく、安定的な生体情報を取得することができる。なお、使用者が浴槽内にいることを検知する方法とは、例えば、浴槽内の水位の上昇を検知する方法がある。
また、洗面所においては、例えば、電波センサ8は、手等を洗っている使用者、又は手等を洗う位置(洗面所を使用する位置)にいる使用者に対して電波を照射可能な位置に設置される。使用者が手を洗っている場合には、当該使用者と電波センサ8との位置関係が近距離且つ定まっている。これにより、被観測者に負担を強いることなく、安定的な生体情報を取得することができる。なお、手を洗っている使用者、又は手を洗う位置にいる使用者を検知する方法としては、例えば、電波センサ8において検知してもよいし、湯水が使用されたことを検知することでもよい。
【0086】
以上、説明したように、本実施形態に係るトイレシステムAは、トイレ装置1に設けられ、トイレ装置1の前方に向けて照射した電波の反射波を検出する電波センサ8と、反射波に基づいて当該使用者の生体情報を計測する生体情報計測部114と、を備える。このように、本実施形態では、トイレルーム内にいる使用者の位置が一定であることに着目し、トイレ装置1の前方に向けて電波を照射可能なトイレ装置1の位置に電波センサ8を取り付け、当該電波センサ8からの反射波に基づいて使用者の生体情報を計測する。
【0087】
このような構成によれば、トイレ装置1と使用者とが近距離で且つトイレ装置1と使用者との位置関係が定まっている場合に使用者の生体情報を計測することが可能となり、安定的な生体情報を取得することができる。また、被観測者(使用者)に活動量計等の生体センサを常に装着させる必要がないため、使用者に負担を強いることがない。
【0088】
また、このような構成によれば、本実施形態のトイレシステムAは、特に独り暮らしの高齢者世帯に対して、その高齢者を見守るためのシステムとして機能する。例えば、トイレ装置1は、日常において使用者により必ず使用されるため、そのトイレ装置1において電波センサ8を設け、その使用者の生体情報を取得することに、高齢者の安否を見守ることができる。また、トイレルームにおいては必ず一人になるため、例えば、トイレルーム内において高齢者が倒れてしまった場合には気づかれにくい。更に、季節によってはリビングとトイレルームとの温度差が激しく、ヒートショックが起きやすい。そのため、トイレルーム内において高齢者が倒れてしまう可能性がある。したがって、上述したように、トイレ装置1において電波センサ8を設け、その使用者の生体情報を取得することで、高齢者の安否を見守ることに意義を有する。
【0089】
また、生体情報計測部114は、使用者によるトイレ装置1の使用を契機として、反射波に基づいて当該使用者の生体情報を計測可能である。
【0090】
このような構成によれば、使用者がトイレ装置1の使用している場合、すなわち、トイレ装置1と使用者とが近距離で且つトイレ装置1と使用者との位置関係が定まっている場合に使用者の生体情報を計測するため、安定的な生体情報を取得することができる。また、被観測者(使用者)に活動量計等の生体センサを常に装着させる必要がないため、使用者に負担を強いることがない。
【0091】
また、電波センサ8から取得した反射波に基づいて、トイレ装置1が設置されるトイレルーム内の人体の存在を検知する人体検知部を更に備えることが可能である。すなわち、人体検知センサを電波センサ8で共用可能である。
【0092】
このような構成によれば、一の電波センサ8で人体検知機能と見守り機能の両方を行うことができる。そのため、例えば、人体検知センサとして電波センサを用いている場合には、生体情報を計測するための専用のセンサを設置する必要がなくなり、手間とコストが削減できる。
【0093】
また、電波センサ8から取得した反射波に基づいて入退室や着座の有無等のトイレルーム内の使用者の行動を判別する行動判別部112を更に備える。そして、行動判別部により判別された行動が、トイレ装置の使用に該当する行動(例えば、着座)である場合には、生体情報の計測を開始可能である。
【0094】
このような構成によれば、便座7への着座を検知する着座センサを削減することができる。
【0095】
また、使用者が退出していないにもかかわらず使用者の存在が検知されない場合、又は、生体情報が正常値ではない場合等の異常事態が発生していると判定した場合には、報知の要否を確認する報知部116を備えることが可能である。ここで、使用者が退出していないにもかかわらず使用者の存在が検知されない場合には、使用者がトイレルームの床に倒れている可能性がある。また、生体情報が正常値ではない場合には、使用者が便座7に着座したまま苦しんでいる可能性がある。
【0096】
このような構成によれば、異常事態の発生を誤検知した場合には、使用者の判断でトイレ装置1の報知操作を停止させることができる。すなわち、本実施形態に係るトイレシステムAは、使用者の意思を確認する機会を与え、誤って異常事態として報知動作を実行することを防止することができる。
【符号の説明】
【0097】
A トイレシステム
1 トイレ装置
2 リモコン装置
3 音出力装置
8 電波センサ
9 制御装置
12 制御部
110 距離計測部
111 人体検知部
112 行動判別部
113 格納部
114 生体情報計測部
115 異常判定部
116 報知部