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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】遮光装置
(51)【国際特許分類】
   B61D 25/00 20060101AFI20221130BHJP
   E06B 9/262 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B61D25/00 G
E06B9/262
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018198439
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020066260
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】391030686
【氏名又は名称】株式会社協和興業
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】橋本 克史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 宏次
(72)【発明者】
【氏名】伊東 聡
(72)【発明者】
【氏名】大関 洋之介
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204663357(CN,U)
【文献】特開2001-227263(JP,A)
【文献】中国実用新案第203488069(CN,U)
【文献】実開昭57-175690(JP,U)
【文献】特開2016-023514(JP,A)
【文献】特開2015-055145(JP,A)
【文献】特開平06-101388(JP,A)
【文献】中国特許第105556048(CN,B)
【文献】韓国登録特許第10-1305540(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 25/00
E06B 9/24 - 9/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体の窓枠に設けられた側窓の遮光装置であって、
前記窓枠に前記側窓の正面視で該側窓を挟むように対向して配置される一対のレール部材と、
該一対のレール部材間に延在する態様で、両端が前記一対のレール部材に沿って移動可能に該レール部材に係合する2本の端棒部材と、
該2本の端棒部材により該2本の端棒部材間に保持され、前記一対のレール部材間を接続するように延在し、前記2本の端棒部材が前記一対のレール部材に沿って該レール部材の両端部まで離間された状態において、前記2本の端棒部材と共に或いは単独で、少なくとも前記側窓を覆う大きさを有するシート状部材と、を含み、
該シート状部材は、前記2本の端棒部材の延在方向と平行な複数の折り目が形成されるようにプリーツ加工が施されており、
前記一対のレール部材は、車体上下方向に離間して車体長手方向に沿って設置され、
前記一対のレール部材のうち車体上方側に設置されるレール部材が、該レール部材の車体上下方向の厚さより大きい深さを有して前記窓枠の車体上方部分に設けられた、凹部に設置されることを特徴とする遮光装置。
【請求項2】
鉄道車両の車体の窓枠に設けられた側窓の遮光装置であって、
前記窓枠に前記側窓の正面視で該側窓を挟むように対向して配置される一対のレール部材と、
該一対のレール部材間に延在する態様で、両端が前記一対のレール部材に沿って移動可能に該レール部材に係合する2本の端棒部材と、
該2本の端棒部材により該2本の端棒部材間に保持され、前記一対のレール部材間を接続するように延在し、前記2本の端棒部材が前記一対のレール部材に沿って該レール部材の両端部まで離間された状態において、前記2本の端棒部材と共に或いは単独で、少なくとも前記側窓を覆う大きさを有するシート状部材と、を含み、
該シート状部材は、前記2本の端棒部材の延在方向と平行な複数の折り目が形成されるようにプリーツ加工が施されており、
前記一対のレール部材は、車体上下方向に離間して車体長手方向に沿って設置され、
前記窓枠の車体下方部分に沿ってテーブルが設けられ、
前記一対のレール部材のうち車体下方側に設置されるレール部材が、前記テーブルよりも車体上方側に設置されることを特徴とする遮光装置。
【請求項3】
鉄道車両の車体の窓枠に設けられた側窓の遮光装置であって、
前記窓枠に前記側窓の正面視で該側窓を挟むように対向して配置される一対のレール部材と、
該一対のレール部材間に延在する態様で、両端が前記一対のレール部材に沿って移動可能に該レール部材に係合する2本の端棒部材と、
該2本の端棒部材により該2本の端棒部材間に保持され、前記一対のレール部材間を接続するように延在し、前記2本の端棒部材が前記一対のレール部材に沿って該レール部材の両端部まで離間された状態において、前記2本の端棒部材と共に或いは単独で、少なくとも前記側窓を覆う大きさを有するシート状部材と、を含み、
該シート状部材は、前記2本の端棒部材の延在方向と平行な複数の折り目が形成されるようにプリーツ加工が施されており、
前記一対のレール部材の各々は、延在方向の断面が矩形の筒状を成し、前記矩形の、他方の前記レール部材に対向する第1の辺に相当する部位の、前記第1の辺の延在方向中央近傍に、前記レール部材の延在方向に沿って開口部が設けられると共に、前記矩形の車体内側に位置する第2の辺に相当する部位の、前記レール部材の内側面に、前記レール部材に沿って延在し、複数の歯を有するラックレールが設けられ、
前記2本の端棒部材の各々は、筒状の本体部と、該本体部に対して回転可能に前記本体部に挿通され、両端部が前記開口部から前記一対のレール部材の内部に突出した軸部と、該軸部の両端部に該軸部と共に回転可能に取り付けられ、前記一対のレール部材の内部において前記ラックレールの複数の歯と係合するギヤと、を含むことを特徴とする遮光装置。
【請求項4】
鉄道車両の車体の窓枠に設けられた側窓の遮光装置であって、
前記窓枠に前記側窓の正面視で該側窓を挟むように対向して配置される一対のレール部材と、
該一対のレール部材間に延在する態様で、両端が前記一対のレール部材に沿って移動可能に該レール部材に係合する2本の端棒部材と、
該2本の端棒部材により該2本の端棒部材間に保持され、前記一対のレール部材間を接続するように延在し、前記2本の端棒部材が前記一対のレール部材に沿って該レール部材の両端部まで離間された状態において、前記2本の端棒部材と共に或いは単独で、少なくとも前記側窓を覆う大きさを有するシート状部材と、を含み、
該シート状部材は、前記2本の端棒部材の延在方向と平行な複数の折り目が形成されるようにプリーツ加工が施されており、
前記一対のレール部材の双方の、少なくとも一方の延在方向端部に隣接して、前記レール部材の延在方向と平行な方向に係り、前記2本の端棒部材の各々よりも大きい長さを有する、着脱可能なストッパ部材が設けられることを特徴とする遮光装置。
【請求項5】
前記一対のレール部材は、車体上下方向に離間して車体長手方向に沿って設置されることを特徴とする請求項3又は4記載の遮光装置。
【請求項6】
前記一対のレール部材のうち車体上方側に設置されるレール部材が、該レール部材の車体上下方向の厚さより大きい深さを有して前記窓枠の車体上方部分に設けられた、凹部に設置されることを特徴とする請求項2又は5記載の遮光装置。
【請求項7】
前記窓枠の車体下方部分に沿ってテーブルが設けられ、
前記一対のレール部材のうち車体下方側に設置されるレール部材が、前記テーブルよりも車体上方側に設置されることを特徴とする請求項記載の遮光装置。
【請求項8】
前記一対のレール部材は、車体長手方向に離間して車体上下方向に沿って設置されることを特徴とする請求項3又は4記載の遮光装置。
【請求項9】
前記2本の端棒部材の各々は、前記一対のレール部材の任意の位置において静止するための静止構造を有することを特徴とする請求項記載の遮光装置。
【請求項10】
前記一対のレール部材の各々は、延在方向の断面が矩形の筒状を成し、前記矩形の、他方の前記レール部材に対向する第1の辺に相当する部位の、前記第1の辺の延在方向中央近傍に、前記レール部材の延在方向に沿って開口部が設けられると共に、前記矩形の車体内側に位置する第2の辺に相当する部位の、前記レール部材の内側面に、前記レール部材に沿って延在し、複数の歯を有するラックレールが設けられ、
前記2本の端棒部材の各々は、筒状の本体部と、該本体部に対して回転可能に前記本体部に挿通され、両端部が前記開口部から前記一対のレール部材の内部に突出した軸部と、該軸部の両端部に該軸部と共に回転可能に取り付けられ、前記一対のレール部材の内部において前記ラックレールの複数の歯と係合するギヤと、を含むことを特徴とする請求項記載の遮光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車体の窓枠に設けられた側窓の遮光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の側面に設けられる側窓には、日除けのためにカーテンやブラインド等の遮光装置が設置されている。この中で、特に高速用の鉄道車両には、側窓の上方に巻き上げられている遮光用シートを、使用時に降ろすタイプの遮光装置が設置されていることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-227263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来のタイプの遮光装置は、遮光用シートを巻き上げるためのバネ等の部品が必要であるため、特に、更なる高速化のために軽量化が求められる高速用の鉄道車両においては、主に重量の点で改善の余地がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、遮光装置の軽量化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)鉄道車両の車体の窓枠に設けられた側窓の遮光装置であって、前記窓枠に前記側窓の正面視で該側窓を挟むように対向して配置される一対のレール部材と、該一対のレール部材間に延在する態様で、両端が前記一対のレール部材に沿って移動可能に該レール部材に係合する2本の端棒部材と、該2本の端棒部材により該2本の端棒部材間に保持され、前記一対のレール部材間を接続するように延在し、前記2本の端棒部材が前記一対のレール部材に沿って該レール部材の両端部まで離間された状態において、前記2本の端棒部材と共に或いは単独で、少なくとも前記側窓を覆う大きさを有するシート状部材と、を含み、該シート状部材は、前記2本の端棒部材の延在方向と平行な複数の折り目が形成されるようにプリーツ加工が施されている遮光装置。
【0007】
本項に記載の遮光装置は、一対のレール部材、2本の端棒部材及びシート状部材を含んでおり、一対のレール部材は、側窓が設けられた窓枠に、鉄道車両の車体内側からの側窓の正面視で、側窓を挟むように対向して配置される。すなわち、一対のレール部材は、例えば車体長手方向や車体上下方向に沿って、互いに平行に配置される。2本の端棒部材の各々は、一対のレール部材間に延在する態様で、両端が一対のレール部材に沿って移動可能にレール部材に係合する。すなわち、各端棒部材は、一端が一方のレール部材に係合すると共に、他端がもう一方のレール部材に係合した状態で、一対のレール部材により保持される。この際、端棒部材の一端及び他端とレール部材とは、端棒部材がレール部材に沿って移動できるような状態で係合し、又、2本の端棒部材は、一対のレール部材間に互いに平行に配置される。
【0008】
一方、シート状部材は、レール部材には直接的に保持されずに、上述したように一対のレール部材間に互いに平行に配置される2本の端棒部材により、これら2本の端棒部材の間に保持される。そして、シート状部材は、2本の端棒部材が一対のレール部材に沿ってレール部材の両端部まで離間された状態において、2本の端棒部材と共に又は単独で、少なくとも側窓を覆う大きさを有している。すなわち、シート状部材は、レール部材の両端部まで離間された2本の端棒部材間を接続可能な、レール部材の延在方向と平行な方向の長さと、一対のレール部材間を接続するような、端棒部材の延在方向と平行な方向の長さとを有している。そして、シート状部材は、このように離間した2本の端棒部材により広げられると、車体の内側において、側窓を覆うように配置される。更に、シート状部材は、2本の端棒部材の延在方向と平行な複数の折り目が形成されるように、プリーツ加工が施されている。このため、2本の端棒部材が互いに接近すると、2本の端棒部材の間で折り畳まれるように縮小するものである。
【0009】
すなわち、本項に記載の遮光装置は、2本の端棒部材が離間されることで、広げられたシート状部材により側窓が覆われ、2本の端棒部材がレール部材の一方の端部側に寄せられることで、レール部材の一方の端部側において、シート状部材が2本の端棒部材の間で縮小されるものである。このように、必要に応じて側窓の遮光を行いながらも、従来の遮光装置と異なり、シート状部材を巻き上げるためのバネ等を使用せず、又、シート状部材をレール部材に係合させる部材等が不要であるため、遮光装置の軽量化が実現されるものである。更に、シート状部材を巻き上げるための巻上げ機構全体が不要になるため、従来は巻き上げ機構が設置されていたスペースが、別の用途に有効利用されるものとなる。
【0010】
又、2本の端棒部材は、一対のレール部材により保持されているため、レール部材が車体上下方向に対して傾きを持って設置される場合や、鉄道車両の走行中であっても、安定して保持されるものであり、延いては、2本の端棒部材間に保持されるシート状部材も、揺動が抑制されて安定して保持されるものである。加えて、2本の端棒部材は、レール部材に沿って任意の位置に移動されるため、レール部材の一方の端部側から他方の端部側へ、或いは、レール部材の他方の端部側から一方の端部側へと、任意の方向にシート状部材が開閉される。これにより、鉄道車両の進行方向(換言すれば座席の向き)の如何に関わらず、利用者が扱いやすい方向から、シート状部材が開閉されることとなる。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記一対のレール部材は、車体上下方向に離間して車体長手方向に沿って設置される遮光装置。
本項に記載の遮光装置は、一対のレール部材が、車体上下方向に離間して車体長手方向に沿って設置されるものである。すなわち、一対のレール部材は、車体内側からの側窓の正面視で、側窓を上下方向から挟むように対向して、窓枠の車体上方部分と下方部分とに設置される。このとき、車体下方側の部位よりも車体上方側の部位が車体内側に位置するように、側窓が車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されている場合は、その傾きと同じ大きさの車体上下方向に対する傾きを持って、一対のレール部材を対向させて設置してもよい。このような一対のレール部材に係合する2本の端棒部材は、車体長手方向に沿って移動されるものとなり、又、2本の端棒部材間に保持されるシート状部材は、車体長手方向に沿って開閉されるようになる。これにより、車両の進行方向に沿って開閉される遮光装置が提供されるものである。
【0012】
(3)上記(2)項において、前記一対のレール部材のうち車体上方側に設置されるレール部材が、該レール部材の車体上下方向の厚さより大きい深さを有して前記窓枠の車体上方部分に設けられた、凹部に設置される遮光装置(請求項)。
本項に記載の遮光装置は、車体上下方向に離間して設置される一対のレール部材のうち、車体上方側に設置されるレール部材が、窓枠の車体上方部分に設けられた凹部に設置されるものである。この凹部は、設置されるレール部材の、車体上下方向の厚さより大きい深さを有し、車体長手方向に延在する。このため、凹部に設置されるレール部材が車体内側から視認され難くなり、見栄えが向上する。更に、レール部材に係合する端棒部材の上端側の一部と、一対のレール部材間を接続するように延在するシート状部材の上端側の一部とが、凹部の中に位置することになる。これにより、シート状部材の上端側の一部は、凹部の中で車体幅方向についての移動が制限されるため、シート状部材が車体幅方向に弛むことが抑制されこととなる。
【0013】
(4)上記(2)(3)項において、前記窓枠の車体下方部分に沿ってテーブルが設けられ、前記一対のレール部材のうち車体下方側に設置されるレール部材が、前記テーブルよりも車体上方側に設置される遮光装置(請求項2、6)。
本項に記載の遮光装置は、窓枠の車体下方部分に沿ってテーブルが設けられている場合に、車体上下方向に離間して設置される一対のレール部材のうち、車体下方側に設置されるレール部材が、テーブルよりも車体上方側に設置されるものである。これにより、レール部材が、テーブルよりも車体下方側や、テーブルと同じ高さに設置される場合と比較して、テーブルの上面からレール部材の内部に異物が侵入し難くなるため、このような異物の侵入を抑制するものとなる。
【0014】
(5)上記(1)項において、前記一対のレール部材は、車体長手方向に離間して車体上下方向に沿って設置される遮光装置。
本項に記載の遮光装置は、一対のレール部材が、車体長手方向に離間して車体上下方向に沿って設置されるものである。すなわち、一対のレール部材は、車体内側からの側窓の正面視で、側窓を左右方向から挟むように対向して、窓枠の左部分と右部分とに設置される。このとき、車体下方側の部位よりも車体上方側の部位が車体内側に位置するように、側窓が車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されている場合は、その傾きと同じ大きさの車体上下方向に対する傾きを持って、一対のレール部材を対向させて設置してもよい。このような一対のレール部材に係合する2本の端棒部材は、車体上下方向に沿って、或いは、車体上下方向から僅かに傾いた方向に沿って移動されるものとなる。又、2本の端棒部材間に保持されるシート状部材は、車体上下方向に沿って、或いは、車体上下方向から僅かに傾いた方向に沿って開閉されるようになる。これにより、車体の上下方向に開閉される遮光装置が提供されるものである。
【0015】
(6)上記(5)項において、前記2本の端棒部材の各々は、前記一対のレール部材の任意の位置において静止するための静止構造を有する遮光装置。
本項に記載の遮光装置は、2本の端棒部材の各々が、一対のレール部材の任意の位置において静止するための静止構造を有するものである。すなわち、一対のレール部材が車体上下方向に沿って設置されるため、これらのレール部材に移動可能に係合する2本の端棒部材は、レール部材の下端以外の位置にあると、自重や車体の振動等の影響により、徐々に下方に移動する虞がある。そこで、例えば、レール部材と端棒部材との間の摩擦力や、専用の機構等を利用した静止構造が設けられていることにより、2本の端棒部材やそれらに保持されているシート状部材の、不本意な移動が防止されるものである。
【0016】
(7)上記(1)から(6)項において、前記一対のレール部材の各々は、延在方向の断面が矩形の筒状を成し、前記矩形の、他方の前記レール部材に対向する第1の辺に相当する部位の、前記第1の辺の延在方向中央近傍に、前記レール部材の延在方向に沿って開口部が設けられると共に、前記矩形の車体内側に位置する第2の辺に相当する部位の、前記レール部材の内側面に、前記レール部材に沿って延在し、複数の歯を有するラックレールが設けられ、前記2本の端棒部材の各々は、筒状の本体部と、該本体部に対して回転可能に前記本体部に挿通され、両端部が前記開口部から前記一対のレール部材の内部に突出した軸部と、該軸部の両端部に該軸部と共に回転可能に取り付けられ、前記一対のレール部材の内部において前記ラックレールの複数の歯と係合するギヤと、を含む遮光装置(請求項3、5~9)。
【0017】
本項に記載の遮光装置は、一対のレール部材の各々が、延在方向の断面が矩形の筒状を成している。このような一対のレール部材が対向するように窓枠に設置されると、レール部材の上述した矩形の4つの辺のうち、1つの辺(第1の辺)が他方のレール部材に対向する配置になり、その第1の辺と直交する2辺のうち一方の辺(第2の辺)が、車体内側に位置することになる。そして、一対のレール部材の各々は、上記の第1の辺に相当する部位の、この第1の辺の延在方向中央近傍に、レール部材の延在方向に沿って開口部が設けられている。すなわち、開口部が設けられたレール部材の延在方向の断面は、第1の辺の一部が開口した矩形になり、又、一対のレール部材に設けられた開口部が対向して配置される。更に、レール部材の各々には、上記の第2の辺に相当する部位の、レール部材の内側面に、ラックレールが設けられている。このラックレールは、レール部材に沿って延在し、その延在方向に並んだ複数の歯を有している。
【0018】
一方、2本の端棒部材の各々は、筒状の本体部と、本体部に挿通された軸部と、軸部の両端部に取り付けられたギヤとを含んでいる。本体部は、シート状部材を保持する部位であり、又、利用者による端棒部材の移動を補助するために、引手部分等が設けられることが好ましい。軸部は、本体部に対して回転可能に挿通され、その状態で軸部の両端部が、レール部材に設けられた開口部からレール部材の内部に突出している。すなわち、各端棒部材の軸部の一方の端部が、一方のレール部材の内部に突出していると共に、各端棒部材の軸部の他方の端部が、他方のレール部材の内部に突出している。そして、ギヤは、レール部材の内部に突出した軸部の両端部に、軸部と共に回転可能に取り付けられており、各レール部材の内部において、ラックレールの複数の歯と係合している。
【0019】
上記のような構成により、本項に記載の遮光装置は、利用者によりレール部材に沿って端棒部材が移動される際に、利用者により本体部が例えば把持された状態で移動される。すると、レール部材の内部に位置しているギヤは、係合先のラックレールの歯を、ラックレールの延在方向に隣接する歯に順次変更しながら、軸部を回転軸として回転され、レール部材の内部においてレール部材に沿って移動される。このとき、軸部は、ギヤと共に本体部に対して回転された状態で、本体部と共に移動される。更に、一対のレール部材の夫々の内部において回転するギヤは、双方とも軸部と共に回転するものであるため、一方のギヤが他方のギヤより遅れて回転することはない。このため、一対のレール部材との係合状態を維持したまま、端棒部材がレール部材に沿って円滑に移動されることになる。ここで、上記(2)項や(5)項に記載したように、車体下方側の部位よりも車体上方側の部位が車体内側に位置するように、レール部材が車体上下方向に対して僅かに傾いて設置される場合について言及する。このような場合であっても、レール部材の内部に配置されるギヤが、ラックレールが設置された、レール部材の上述した第2の辺に相当する部位の内側面に向かって、傾いて配置されることになるため、ラックレールの歯に問題なく係合するものとなる。
【0020】
(8)上記(1)から(7)項において、前記一対のレール部材の双方の、少なくとも一方の延在方向端部に隣接して、前記レール部材の延在方向と平行な方向に係り、前記2本の端棒部材の各々よりも大きい長さを有する、着脱可能なストッパ部材が設けられる遮光装置(請求項4~10)。
本項に記載の遮光装置は、一対のレール部材の双方の、少なくとも一方の延在方向端部に隣接して、着脱可能なストッパ部材が設けられるものである。このストッパ部材は、レール部材の延在方向と平行な方向の長さが、これと同方向の端棒部材の長さよりも大きくなっている。このため、ストッパ部材が取り外されると、ストッパ部材が配置されていたレール部材に隣接する位置に、上記の方向の長さが端棒部材よりも大きいスペースが確保される。これにより、このスペースを介して、端棒部材が一対のレール部材の各々から取り外され、同時に、端棒部材により保持されているシート状部材も取り外されることになる。従って、メンテナンス時等の必要に応じて、端棒部材及びシート状部材が容易に取り外されるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記のような構成であるため、遮光装置の軽量化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置が設置された窓枠近傍を、車体内側から示す正面図である。
図2図1のA-A線での断面図である。
図3】(a)は図1のB-B線での断面図であり、(b)は(a)に示した上側のレール部材近傍の拡大図である。
図4図1の遮光装置の使用例を示しており、(a)はシート状部材により側窓の左半分を覆った状態、(b)はシート状部材により側窓の左右方向中央付近を覆った状態、(c)はシート状部材を側窓の右側で折り畳んだ状態である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る遮光装置を示しており、(a)は図1のA-A線に相当する部分での断面図、(b)は図1のB-B線に相当する部分での断面図である。
図6図5の遮光装置の使用例を示しており、(a)はシート状部材により側窓の上半分を覆った状態、(b)はシート状部材により側窓の上下方向中央付近を覆った状態、(c)はシート状部材を側窓の下側で折り畳んだ状態である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体を通して、同一部分若しくは相当する部分は、同一の符号で示している。
図1図3は、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10の構造を模式的に示している。この遮光装置10は、鉄道車両の車体の窓枠50に設置された側窓54の日除けのために設置されるものである。なお、説明の便宜上、以下の説明における側窓54とは、側窓54を構成する窓ガラス全体を示しているのではなく、車体内側から視たときに窓として視認される部分、すなわち、窓ガラスの窓枠50により覆われている部分を除いた部分を示すものとする。
【0024】
図示のように、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、対向するように窓枠50の車体上方部分50a及び車体下方部分50bの夫々に固定された一対のレール部材12(12A、12B)と、一対のレール部材12に両端部が係合する2本の端棒部材30(30A、30B)と、2本の端棒部材30によりそれらの間に保持されているシート状部材44とを有している。一対のレール部材12の各々は、車体長手方向(図1及び図2における左右方向)に延在しており、側窓54の車体長手方向の長さよりも大きい同方向の長さを有している。そして、便宜上図示は省略するが、車体長手方向を左右方向とする図1の視点において、各レール部材12の左側の端部は、側窓54の左側の縁よりも左側に位置しており、各レール部材12の右側の端部は、側窓54の右側の縁よりも右側に位置している。
【0025】
又、図示の例では、各レール部材12は、図3(a)で確認できるように、下方側よりも上方側が車体内側(図中左側)に位置するように車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されている、側窓54に対応するように、側窓54と同様に車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されている。車体上方側のレール部材12Aは、窓枠50の車体上方部分50aに設けられた凹部52に設置されていることで、側窓54の車体上方側の縁よりも車体上方側に位置している。すなわち、凹部52は、レール部材12Aの上下方向の厚さよりも深く形成されている。同様に、車体下方側のレール部材12Bは、窓枠50の車体下方部分50bに、レール部材12Bの上下方向の厚さよりも深く設けられた段差部53に設置されていることで、側窓54の車体下方側の縁よりも車体下方側に位置している。一対のレール部材12は、例えばアルミ等の材料で形成される。
【0026】
図3(b)には、図3(a)の上側に設置されたレール部材12A近傍の拡大図を示しており、ここでは、レール部材12Aを例にして説明するが、レール部材12Aと対向するように図3(a)の下側に設置されたレール部材12Bも、レール部材12Aと同様の構造を有している。図示のように、レール部材12Aは、延在方向の断面が矩形の筒状を成しており、その矩形の上側の辺に相当する部位12dが、ネジ22により凹部52に取り付けられることで、レール部材12Aが窓枠50に固定されている。そして、レール部材12Aは、矩形の下側の辺(第1の辺)に相当する部位12aが、レール部材12Bに対向しており、この第1の辺に相当する部位12aに、レール部材12Aと同じ方向に延在する開口部14が設けられている。又、レール部材12Aは、矩形の左側(車体内側)の辺(第2の辺)に相当する部位12bの内側面12cに、レール部材12Aと同じ方向に延在するラックレール18が取り付けられている。このラックレール18には、レール部材12Aの内側(右側)に向けて突出した複数の歯20が、ラックレール18の延在方向に隣接して等間隔で設けられている。ラックレール18は、例えば樹脂製のものが用いられる。
【0027】
一方、2本の端棒部材30は、両端部が一対のレール部材12に沿って移動可能にレール部材12に係合しており、移動の際に利用者の手がかけられるように引手部分40が設けられている。図1及び図2に示す状態では、端棒部材30Aがレール部材12の図中左側端部まで移動され、端棒部材30Bがレール部材12の図中右側端部まで移動されている。この状態において、図中左側に位置している端棒部材30Aは、車体内側において窓枠50の左側部分50cを構成するパネル80の右側端部よりも、僅かに図中左側に位置していることで、図中左側の一部がパネル80により覆われている。同様に、図中右側に位置している端棒部材30Bは、車体内側において窓枠50の右側部分50dを構成するパネル82の左側端部よりも、僅かに図中右側に位置していることで、図中右側の一部がパネル82により覆われている。又、図2に示すように、レール部材12の図中右側端部まで移動された端棒部材30Bに隣接して、換言すれば、レール部材12の図中右側端部に隣接して、ストッパ部材66が設置されている。このストッパ部材66は、必要に応じて取り外し可能に設置されており、その図中左右方向の大きさが、端棒部材30A、30Bの図中左右方向の大きさよりも僅かに大きくなっている。
【0028】
図3(a)で確認できるように、2本の端棒部材30の各々は、一対のレール部材12間に延在しており、上述したように、一対のレール部材12が車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されているため、端棒部材30も同じ様に傾いた状態になっている。又、図3(b)に示すように、端棒部材30の各々は、本体部32、軸部34及びギヤ36を有している。本体部32は、例えばアルミ製で、一対のレール部材12間に延在する筒状を成しており、その内部に軸部34が挿通され、外面に上述した引手部分40(図1参照)が設けられている。軸部34は、本体部32に対して回転可能に挿通され、本体部32よりも長い棒状を成しており、その両端部34aが本体部32の両端部から突出している。更に、本体部32から突出した軸部34の端部34aは、レール部材12に設けられた開口部14から、レール部材12の内部に突出している。そして、その軸部34の端部34aに、軸部34を回転軸として回転するようにギヤ36が取り付けられている。ギヤ36は、レール部材12の内部において、レール部材12の内側面12cに設置されたラックレール18の複数の歯20に係合している。なお、図3(b)には、端棒部材30の図3(a)における上側の端部を図示しているが、端棒部材30の図3(a)における下側の端部も上側の端部と同様の構成を有している。
【0029】
他方、2本の端棒部材30により保持されているシート状部材44は、図1で確認できるように、その素材に適した任意の手法によってプリーツ加工が施されており、端棒部材30の延在方向(図中上下方向)と平行な複数の折り目46が形成されている。これらの複数の折り目46は、図2に示すように、隣接する折り目46同士で互い違いの方向に折られている。シート状部材44は、平面視で矩形を成し、折り目46の延在方向と直行する方向(図1及び図2における左右方向)の両端部が、2本の端棒部材30の本体部32(図3(b)参照)により保持されている。
【0030】
又、図3(a)に示すように、シート状部材44は、一対のレール部材12の間を接続するように延在している。このため、シート状部材44の図中上方側の端部は、窓枠50の車体上方部分50aに設けられた凹部52に入り込んで、側窓54の車体上方側の縁よりも車体上方側に位置し、シート状部材44の図中下方側の端部は、側窓54の車体下方側の縁よりも車体下方側に位置している。又、上述したように、2本の端棒部材30が車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されているため、2本の端棒部材30により保持されるシート状部材44も、2本の端棒部材30と同様に傾いた状態になっている。
【0031】
シート状部材44は、プリーツ加工が施されること、一対のレール部材12には保持されずに2本の端棒部材30によって保持されること、及び、遮光性や耐火性等を考慮した、適切な素材で形成されるものとする。すなわち、シート状部材44は、複数の折り目46が長期的に維持され、又、鉄道車両の振動等の影響を受けても弛み難い素材であることが好ましい。例えば、シート状部材44は、上記の要求を満たすような合成繊維で形成されてもよい。なお、図4には、2本の端棒部材30を図1及び図2とは異なる位置に移動して、シート状部材44を様々な配置にした例を示している。又、シート状部材44は、図1及び図2のように2本の端棒部材30がレール部材12の両端部まで離間された状態で、折り目46が一時的に形成されずにピンと張った状態(図2の視点で直線状態)になるような、図中左右方向の長さを有していてもよい。
【0032】
ここで、遮光装置10の周囲に設けられている複数の部材について言及すると、車体内側において窓枠50の車体上方部分50aを構成する窓キセ56には、側窓54の上方部分に、周囲より車体外側へ窪んだ装飾部58が形成されている。この装飾部58には、照明60と2つのコートフック62とが設けられている。又、図3(a)に示すように、装飾部58よりも図中上方の窓キセ56の内部には、空調ダクト70が配置されている。更に、図1図3に示すように、窓枠50の車体下方部分50bには、レール部材12Bよりも僅かに低い位置に、車体内側へせり出たテーブル64が設けられている。なお、図3(a)の符号72は、従来の遮光装置で使用していた巻上げ機構の位置を仮想的に示したものである。
【0033】
さて、上記構成をなす本発明の第1の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、図1図3に示すように、一対のレール部材12、2本の端棒部材30及びシート状部材44を含んでいる。一対のレール部材12は、側窓54が設けられた窓枠50に、鉄道車両の車体内側からの側窓54の正面視で、側窓54を挟むように対向して、互いに平行に配置される。2本の端棒部材30の各々は、一対のレール部材12間に延在する態様で、両端が一対のレール部材12に沿って移動可能にレール部材12に係合する。すなわち、各端棒部材30は、一端が一方のレール部材12Aに係合すると共に、他端がもう一方のレール部材12Bに係合した状態で、一対のレール部材12により保持される。この際、端棒部材30の一端及び他端とレール部材12とは、端棒部材30がレール部材12に沿って移動できるような状態で係合し、又、2本の端棒部材30は、一対のレール部材12間に互いに平行に配置される。
【0034】
一方、シート状部材44は、レール部材12には直接的に保持されずに、上述したように一対のレール部材12間に互いに平行に配置される2本の端棒部材30により、これら2本の端棒部材30の間に保持される。そして、シート状部材44は、2本の端棒部材30が一対のレール部材12に沿ってレール部材12の両端部まで離間された状態(図1及び図2の状態)において、2本の端棒部材30と共に又は単独で、少なくとも側窓54を覆う大きさを有している。すなわち、シート状部材44は、レール部材12の両端部まで離間された2本の端棒部材30間を接続可能な、レール部材12の延在方向と平行な方向(図1及び図2の左右方向)の長さと、一対のレール部材12間を接続するような、端棒部材30の延在方向と平行な方向(図1及び図3の上下方向)の長さとを有している。そして、シート状部材44は、このように離間した2本の端棒部材30により広げられると、車体の内側において、側窓54を覆うように配置される。更に、シート状部材44は、2本の端棒部材30の延在方向と平行な複数の折り目46が形成されるように、プリーツ加工が施されている。このため、2本の端棒部材30が互いに接近すると、2本の端棒部材30の間で折り畳まれるように縮小するものである(図4(c)参照)。
【0035】
すなわち、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、2本の端棒部材30が離間されることで、広げられたシート状部材44により側窓54を覆うことができ、2本の端棒部材30がレール部材12の一方の端部側に寄せられることで、レール部材12の一方の端部側において、シート状部材44を2本の端棒部材30の間で縮小させることができる。このように、必要に応じて側窓54の遮光を行いながらも、従来の遮光装置と異なり、シート状部材44を巻き上げるためのバネ等を使用せず、又、シート状部材44をレール部材12に係合させる部材等が不要であるため、遮光装置10の軽量化を実現することができる。更に、図3(a)に示すように、シート状部材44を巻き上げるための巻上げ機構72全体が不要になるため、従来は巻き上げ機構72が設置されていたスペースを、別の用途に有効利用することができる。例えば、図示の例では、空いたスペースを、照明60やコートフック62が設けられた装飾部58として利用しており、又、仮想線で示しているように、空調ダクト70を広げて設置することもできる。
【0036】
又、2本の端棒部材30は、一対のレール部材12により保持されているため、レール部材12が車体上下方向に対して傾きを持って設置される場合や、鉄道車両の走行中であっても、安定して保持することができ、延いては、2本の端棒部材30間に保持されるシート状部材44も、揺動が抑制されて安定して保持することが可能となる。加えて、2本の端棒部材30は、レール部材12に沿って任意の位置に移動されるため、レール部材12の一方の端部側から他方の端部側へ、或いは、レール部材12の他方の端部側から一方の端部側へと、任意の方向にシート状部材44を開閉することができる。これにより、鉄道車両の進行方向(換言すれば座席の向き)の如何に関わらず、利用者が扱いやすい方向から、シート状部材44を開閉することが可能となる。
【0037】
又、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、一対のレール部材12が、車体上下方向に離間して車体長手方向に沿って設置されるものである。すなわち、一対のレール部材12は、車体内側からの側窓54の正面視で、側窓54を上下方向から挟むように対向して、窓枠50の車体上方部分50aと下方部分50bとに設置される。このとき、図3(a)に示すように、車体下方側の部位よりも車体上方側の部位が車体内側に位置するように、側窓54が車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されている場合は、その傾きと同じ大きさの車体上下方向に対する傾きを持って、一対のレール部材12を対向させて設置する。このような一対のレール部材12に係合する2本の端棒部材30は、車体長手方向に沿って移動されるものとなり、又、2本の端棒部材30間に保持されるシート状部材44は、車体長手方向に沿って開閉されるようになる。これにより、車両の進行方向に沿って開閉される遮光装置10を提供することができる。
【0038】
又、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、車体上下方向に離間して設置される一対のレール部材12のうち、車体上方側に設置されるレール部材12Aが、窓枠50の車体上方部分50aに設けられた凹部52に設置されるものである。この凹部52は、設置されるレール部材12Aの、車体上下方向の厚さより大きい深さを有し、車体長手方向に延在する。このため、凹部52に設置されるレール部材12Aが車体内側から視認され難くなり、見栄えを向上することができる。更に、レール部材12Aに係合する端棒部材30の上端側の一部と、一対のレール部材12間を接続するように延在するシート状部材44の上端側の一部とが、凹部52の中に位置することになる。これにより、シート状部材44の上端側の一部は、凹部52の中で車体幅方向についての移動が制限されるため、シート状部材44が車体幅方向に弛むことを抑制することができる。特に、図3(a)の例では、レール部材12Aがレール部材12Bよりも車体内側(図中左側)に位置するように傾いて設置されているため、シート状部材44が図中左側に弛みやすい傾向にある。しかしながら、シート状部材44の上端側の一部が凹部52の中に位置していることで、シート状部材44が図中左側に弛んだとしても、シート状部材44の上端側が、窓枠50の車体上方部分50aを構成する窓キセ56の図中右側端部に接触するため、シート状部材44が大きく弛むことはない。
【0039】
更に、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、窓枠50の車体下方部分50bに沿ってテーブル64が設けられている場合に、車体上下方向に離間して設置される一対のレール部材12のうち、車体下方側に設置されるレール部材12Bが、テーブル64よりも車体上方側に設置されるものである。これにより、レール部材12Bが、テーブル64よりも車体下方側や、テーブル64と同じ高さに設置される場合と比較して、テーブル64の上面からレール部材12Bの内部に異物が侵入し難くなるため、このような異物の侵入を抑制することができる。
【0040】
又、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、図3(b)に示すように、一対のレール部材12の各々が、延在方向の断面が矩形の筒状を成している。このような一対のレール部材12が対向するように窓枠50に設置されると、レール部材12の上述した矩形の4つの辺のうち、1つの辺(第1の辺)が他方のレール部材12に対向する配置になり、その第1の辺と直交する2辺のうち一方の辺(第2の辺)が、車体内側に位置することになる。そして、一対のレール部材12の各々は、上記の第1の辺に相当する部位12aの、この第1の辺の延在方向中央近傍に、レール部材12の延在方向に沿って開口部14が設けられている。すなわち、開口部14が設けられたレール部材12の延在方向の断面は、第1の辺の一部が開口した矩形になり、又、一対のレール部材12に設けられた開口部14が対向して配置される。更に、レール部材12の各々には、上記の第2の辺に相当する部位12bの、レール部材12の内側面12cに、ラックレール18が設けられている。このラックレール18は、レール部材12に沿って延在し、その延在方向(図1及び図2における左右方向)に並んだ複数の歯20を有している。
【0041】
一方、2本の端棒部材30の各々は、筒状の本体部32と、本体部32に挿通された軸部34と、軸部34の両端部34aに取り付けられたギヤ36とを含んでいる。本体部32は、シート状部材44を保持する部位であり、又、利用者による端棒部材30の移動を補助するために、引手部分40(図1参照)等が設けられている。軸部34は、本体部32に対して回転可能に挿通され、その状態で軸部34の両端部34aが、レール部材12に設けられた開口部14からレール部材12の内部に突出している。すなわち、各端棒部材30の軸部34の一方の端部34aが、一方のレール部材12(12A)の内部に突出していると共に、各端棒部材30の軸部34の他方の端部34aが、他方のレール部材12(12B)の内部に突出している。そして、ギヤ36は、レール部材12の内部に突出した軸部34の両端部34aに、軸部34と共に回転可能に取り付けられており、各レール部材12の内部において、ラックレール18の複数の歯20と係合している。
【0042】
上記のような構成により、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、利用者によりレール部材12に沿って端棒部材30が移動される際に、利用者により引手部分40が把持された状態で本体部32が移動される。すると、レール部材12の内部に位置しているギヤ36は、係合先のラックレール18の歯20を、ラックレール18の延在方向に隣接する歯20に順次変更しながら、軸部34を回転軸として回転され、レール部材12の内部においてレール部材12に沿って移動される。このとき、軸部34は、ギヤ36と共に本体部32に対して回転された状態で、本体部32と共に移動される。更に、一対のレール部材12の夫々の内部において回転するギヤ36は、双方とも軸部34と共に回転するものであるため、一方のギヤ36が他方のギヤ36より遅れて回転することはない。このため、一対のレール部材12との係合状態を維持したまま、端棒部材30をレール部材12に沿って円滑に移動させることが可能となる。
【0043】
ここで、図3の例のように、車体下方側の部位よりも車体上方側の部位が車体内側に位置するように、レール部材12が車体上下方向に対して僅かに傾いて設置される場合について言及する。このような場合であっても、レール部材12の内部に配置されるギヤ36が、ラックレール18が設置された、レール部材12の上述した第2の辺に相当する部位12bの内側面12cに向かって、傾いて配置されることになるため、ラックレール18の歯20に問題なく係合させることができる。
【0044】
更に、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10は、一対のレール部材12の双方の、少なくとも一方の延在方向端部に隣接して、着脱可能なストッパ部材66が設けられるものである。図2には、2本の端棒部材30をレール部材12の図中左右方向(レール部材12の延在方向)の両端部まで移動させた状態において、図中右側の端棒部材30Bに隣接するストッパ部材66を例示している。このストッパ部材66は、レール部材12の延在方向と平行な方向の長さが、これと同方向の端棒部材30の長さよりも大きくなっている。このため、ストッパ部材66が取り外されると、ストッパ部材66が配置されていたレール部材12に隣接する位置に、上記の方向の長さが端棒部材30よりも大きいスペースが確保される。これにより、このスペースを介して、端棒部材30を一対のレール部材12の各々から取り外すことができ、同時に、端棒部材30により保持されているシート状部材44も取り外すことができる。従って、メンテナンス時等の必要に応じて、端棒部材30及びシート状部材44を容易に取り外すことが可能となる。
【0045】
続いて、図5及び図6を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る遮光装置10’について説明する。図5及び図6において、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第2の実施の形態に係る遮光装置10’について、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10との相違部分のみ説明をすることとし、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10と同様の部分の構成や作用効果等については、説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る遮光装置10’は、一対のレール部材12(12C、12D)の各々が、車体上下方向(図5(b)における上下方向)に延在しており、側窓54の車体上下方向の長さよりも大きい同方向の長さを有している。なお、図示の例では、車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されている側窓54に対応するように、一対のレール部材12も車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されている。又、便宜上図示は省略するが、車体上下方向を上下方向とする図5(b)の視点において、各レール部材12の上側の端部は、側窓54の上側の縁よりも上方に位置しており、各レール部材12の下側の端部は、側窓54の下側の縁よりも下方に位置している。更に、図5(a)に示すように、一方のレール部材12Cは、側窓54の図中左側の縁よりも図中左側に位置し、他方のレール部材12Dは、側窓54の図中右側の縁よりも図中右側に位置している。
【0047】
又、2本の端棒部材30(30C、30D)は、両端部が一対のレール部材12に沿って移動可能にレール部材12に係合しており、図5(a)における左右方向に延在している。図5(b)に示す状態では、端棒部材30Cがレール部材12の図中上側端部まで移動され、端棒部材30Dがレール部材12の図中下側端部まで移動されている。この状態において、図中上側に位置している端棒部材30Cは、側窓54の車体上方側の縁を車体内側から覆う位置にあり、図中下側に位置している端棒部材30Dは、側窓54の車体下方側の縁を車体内側から覆う位置にある。
【0048】
ここで、各端棒部材30の延在方向両端部は、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10の図3(b)に示した例と同じ様にして、一対のレール部材12に対して係合している。そして、本発明の第2の実施の形態に係る遮光装置10’の端棒部材30には、移動された位置において静止するための静止構造38が設けられている。この静止構造38は、例えば、図3(b)を参照して、軸部34が本体部32に対して回転する際の摩擦力や、端棒部材30がレール部材12に沿って移動される際の、端棒部材30とレール部材12との間の摩擦力等を利用したものが挙げられる。又、静止構造38は、レール部材12に対して端棒部材30を静止させるための、専用の機構を設けることによって実現してもよい。
【0049】
一方、シート状部材44は、図5(b)で確認できるように、プリーツ加工が施されていることで、端棒部材30の延在方向と平行な複数の折り目46が形成されている。又、シート状部材44は、2本の端棒部材30により2本の端棒部材30の間に保持されている。このため、図5(b)に示す状態では、2本の端棒部材30と共に側窓54を車体内側から覆うようにして、車体上下方向に延在している。更に、図5(a)に示すように、シート状部材44は、一対のレール部材12の間を接続するように延在している。このため、シート状部材44の図中左側の端部は、側窓54の図中左側の縁よりも図中左側に位置し、シート状部材44の図中右側の端部は、側窓54の図中右側の縁よりも図中右側に位置している。なお、図6には、2本の端棒部材30を図5とは異なる位置に移動して、シート状部材44を様々な配置にした例を示している。
【0050】
上記構成をなす本発明の第2の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第2の実施の形態に係る遮光装置10’は、図5に示すように、一対のレール部材12が、車体長手方向に離間して車体上下方向に沿って設置されるものである。すなわち、一対のレール部材12は、車体内側からの側窓54の正面視で、側窓54を左右方向から挟むように対向して、窓枠54の左部分と右部分とに設置される(図5(a)参照)。このとき、図5(b)に示すように、側窓54が車体上下方向に対して僅かに傾いて設置されている場合は、その傾きと同じ大きさの車体上下方向に対する傾きを持って、一対のレール部材12を対向させて設置させる。このような一対のレール部材12に係合する2本の端棒部材30は、車体上下方向から僅かに傾いた方向に沿って移動されるものとなる。又、2本の端棒部材30間に保持されるシート状部材44は、車体上下方向から僅かに傾いた方向に沿って開閉されるようになる。これにより、車体の上下方向に開閉される遮光装置10’を提供することができる。
【0051】
そして、本発明の第2の実施の形態に係る遮光装置10’のような構成においても、本発明の第1の実施の形態に係る遮光装置10と同様に、シート状部材44を巻き上げるためのバネ等を使用せず、又、シート状部材44をレール部材12に係合させる部材等が不要であるため、遮光装置10’の軽量化を実現することができる。更に、図5(b)に示すように、シート状部材44を巻き上げるための巻上げ機構72全体が不要になるため、従来は巻き上げ機構72が設置されていたスペースを、コートフック62等が設けられた装飾部58や、空調ダクト70を従来よりも広げて設置するためのスペースとして、有効に利用することができる。
【0052】
更に、本発明の第2の実施の形態に係る遮光装置10’は、2本の端棒部材30の各々が、一対のレール部材12の任意の位置において静止するための静止構造38を有するものである。すなわち、一対のレール部材12が車体上下方向に沿って設置されるため、これらのレール部材12に移動可能に係合する2本の端棒部材30は、レール部材12の下端以外の位置にあると、自重や車体の振動等の影響により、徐々に下方に移動する虞がある。そこで、例えば、レール部材12と端棒部材30との間の摩擦力や、専用の機構等を利用した静止構造38が設けられていることにより、2本の端棒部材30やそれらに保持されているシート状部材44の、不本意な移動を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10、10’:遮光装置、12(12A~12D):レール部材、12a:第1の辺に相当する部位、12b:第2の辺に相当する部位、12c:内側面、14:開口部、18:ラックレール、20:歯、30(30A~30D):端棒部材、32:本体部、34:軸部、34a:端部、36:ギヤ、38:静止構造、44:シート状部材、46:折り目、50:窓枠、50a:車体上方部分、50b:車体下方部分、52:凹部、54:側窓、66:ストッパ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6