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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20221130BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20221130BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20221130BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20221130BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20221130BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20221130BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01L29/78 301B
H01L29/80 H
H01L29/78 301G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
H01L21/316 X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018219473
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020088128
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業「省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発(パワーデバイス・システム領域及び評価基盤領域)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】成田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】生田目 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】色川 芳宏
(72)【発明者】
【氏名】三石 和貴
(72)【発明者】
【氏名】加地 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 誠一
(72)【発明者】
【氏名】大田 晃生
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-183597(JP,A)
【文献】特開2007-273951(JP,A)
【文献】国際公開第2017/123999(WO,A1)
【文献】特開2016-018888(JP,A)
【文献】特開2007-250955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/812
H01L 29/12
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶の窒化物半導体上に設けられたゲート絶縁膜を有する半導体装置であって、
前記ゲート絶縁膜のうち、前記窒化物半導体と接する部分が、前記窒化物半導体の結晶構造に倣った結晶構造を備え、
前記ゲート絶縁膜は、第1元素と、前記第1元素とは異なる第2元素と、を含み、
前記第1元素の酸化物は、前記第2元素の酸化物よりも結晶性が高い、半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜は、
前記窒化物半導体上に設けられており、前記窒化物半導体の結晶構造に倣った結晶構造を備える前記窒化物半導体と接する部分を含む第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に設けられており、前記窒化物半導体に倣った結晶構造とは異なる結晶構造を有する第2絶縁層と、を備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1元素と前記第2元素の組み合わせは、AlとSi、HfとAl、又は、HfとSiである、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体装置の製造方法であって、
単結晶の窒化物半導体上に、第1元素と第2元素とを含むゲート絶縁膜を成膜する工程であって、前記第1元素の酸化物は、前記第2元素の酸化物よりも結晶性が高い、工程と、
前記窒化物半導体上に成膜されている前記ゲート絶縁膜を、700℃以上の温度で熱処理する工程であって、前記ゲート絶縁膜のうち、前記窒化物半導体と接する部分を、前記窒化物半導体の結晶構造に倣った結晶構造にする、工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、窒化物半導体上にゲート絶縁膜を有する半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-16888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒化物半導体上にゲート絶縁膜を有する半導体装置では、ゲート絶縁膜中における欠陥が多いと、当該欠陥が膜中電荷量の変動を引き起こしてしまう結果、ゲート閾値電圧の再現性が低下してしまう。本明細書は、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する半導体装置の一実施形態は、単結晶の窒化物半導体上に設けられたゲート絶縁膜を有する半導体装置である。前記ゲート絶縁膜のうち、前記窒化物半導体と接する部分が、前記窒化物半導体の結晶構造に倣った結晶構造を備える。
【0006】
上記実施形態の半導体装置では、ゲート絶縁膜のうち、窒化物半導体と接する部分が、窒化物半導体の結晶構造に倣った結晶構造である。このような構成によると、窒化物半導体と接する部分がアモルファスである場合と比較して、窒化物半導体と接する部分における欠陥を低減することができる。これにより、膜中電荷量の変動が抑制できる結果、ゲート閾値電圧の再現性を高めることが可能となる。
【0007】
ゲート絶縁膜は、窒化物半導体上に設けられており、窒化物半導体の結晶構造に倣った結晶構造を備える窒化物半導体と接する部分を含む第1絶縁層と、第1絶縁層上に設けられており、窒化物半導体に倣った結晶構造とは異なる結晶構造を有する第2絶縁層と、を備えてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0008】
ゲート絶縁膜は、第1元素と、第1元素とは異なる第2元素と、を含み、第1元素の酸化物は、第2元素の酸化物よりも結晶性が高くてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0009】
第1元素と第2元素の組み合わせは、AlとSi、HfとAl、又は、HfとSiであってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0010】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、単結晶の窒化物半導体上に、第1元素と2元素とを含むゲート絶縁膜を成膜する工程であって、前記第1元素の酸化物は、前記第2元素の酸化物よりも結晶性が高い、工程と、窒化物半導体上に成膜されている前記ゲート絶縁膜を、700℃以上の温度で熱処理する工程であって、前記ゲート絶縁膜のうち、前記窒化物半導体と接する部分を、前記窒化物半導体の結晶構造に倣った結晶構造にする、工程と、備える。効果の詳細は実施例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2】第1実施例の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図3】第1実施例の半導体装置の製造工程を示す図である。
図4】第1実施例の半導体装置の製造工程を示す図である。
図5】比較例のゲート絶縁膜を模式的に示す。
図6】フラットバンド電圧の変動電圧と熱処理温度の相関図である。
図7】第2実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図8】第3実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図9】第4実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図10】第5実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施例)
(半導体装置1の構造)
図1の要部断面図に示されるように、半導体装置1は、横型のMOSFETである。半導体装置1は、半導体基板10、窒化物半導体20、ドレイン電極32、ソース電極34、及び、絶縁ゲート40を備えている。
【0013】
半導体基板10は、窒化物半導体20の下地基板であり、窒化物半導体20が結晶成長可能な組成の材料で構成されている。半導体基板10は、いわゆる窒化物半導体基板であり、例えばGaNの単結晶基板である。
【0014】
窒化物半導体20は、半導体基板10の表面上に設けられている。窒化物半導体20は、GaNの単結晶からなる。窒化物半導体20は、p型のボディ領域22、n型のドレイン領域24、及び、n型のソース領域26を有している。
【0015】
ボディ領域22は、GaNのエピ成長層であり、ドレイン領域24とソース領域26を隔てるように設けられている。ドレイン領域24は、ボディ領域22上に設けられており、窒化物半導体20の表層部の一部に設けられており、窒化物半導体20の表面に露出している。ドレイン領域24は、窒化物半導体20の表面上の一部に設けられているドレイン電極32にオーミック接触している。ソース領域26は、ボディ領域22上に設けられており、窒化物半導体20の表層部の一部に設けられており、窒化物半導体20の表面に露出している。ソース領域26は、窒化物半導体20の表面上の一部に設けられているソース電極34にオーミック接触している。このように、ボディ領域22の一部は、ドレイン領域24とソース領域26の間に配置されており、窒化物半導体20の表面に露出している。なお、ボディ領域22は、p型に代えてi型であってもよい。
【0016】
絶縁ゲート40は、ドレイン領域24とソース領域26の間に位置するボディ領域22に対向するように、窒化物半導体20の表面上に設けられており、ゲート絶縁膜42及びゲート電極44を有している。ゲート絶縁膜42は、窒化物半導体20(詳細にはボディ領域22)の表面に接しており、窒化物半導体20とゲート電極44の間に配置されている。ゲート絶縁膜42は、AlSiOからなる。ゲート絶縁膜42は、第1絶縁層42aと第2絶縁層42bとを有している。第1絶縁層42aは、ゲート絶縁膜42のうち窒化物半導体20に接している部分であり、窒化物半導体20の結晶構造に倣った結晶構造を有している。なお、窒化物半導体20の結晶構造に倣った結晶構造とは、単結晶である窒化物半導体20の表面の原子配列に倣って再結晶化された結晶構造をいう。例えば、窒化物半導体20の結晶構造に倣った結晶構造とは、単結晶構造、多結晶構造等である。第2絶縁層42bは、第1絶縁層42a上に設けられており、第1絶縁層42aとは異なる結晶構造であるアモルファス構造を有している。ゲート電極44は、ゲート絶縁膜42を介してドレイン領域24とソース領域26の間に位置するボディ領域22に対向している。ゲート電極44は、例えばアルミニウムである。
【0017】
次に、半導体装置1の動作を説明する。ゲート電極44にオン電圧が印加されると、ゲート絶縁膜42の下方のボディ領域22に反転層が形成される。これにより、ドレイン電極32に接続するドレイン領域24とソース電極34に接続するソース領域26が反転層を介して接続され、ドレイン電極32とソース電極34が導通する。以下では、ドレイン電極32とソース電極34との間の導通が開始される際に、ゲート電極44に印加される電圧をゲート閾値電圧と呼ぶ。
【0018】
(第1絶縁層42aの効果)
一般的に、MOSFET等の半導体装置では、ゲート閾値電圧の再現性が高いことが望ましい。ゲート閾値電圧の再現性は、ゲート絶縁膜42内の欠陥の量、及び、窒化物半導体20とゲート絶縁膜42との界面にできる界面トラップに依存する。そこで、本実施例の半導体装置1では、ゲート絶縁膜42のうち、窒化物半導体20と接する部分(即ち第1絶縁層42a)は、窒化物半導体20の結晶構造に倣った結晶構造、即ち多結晶構造を備える。第1絶縁層42aが多結晶構造であるため、ゲート絶縁膜42内の欠陥の量を低減することができる。また、第1絶縁層42aが多結晶構造であるために、第1絶縁層42aがアモルファス構造である場合に比して窒化物半導体20とゲート絶縁膜42との界面にできる界面トラップを低減することができる。従って、ゲート閾値電圧の再現性が高めることができる。この結果、半導体装置1の信頼性を向上させることができる。
【0019】
(第2絶縁層42bの効果)
また、一般的に、MOSFET等の半導体装置では、ゲート閾値電圧の再現性が高く、かつ、ゲート電極44からのリーク電流が小さいことが望ましい。ゲート絶縁膜中の欠陥を少なくする方法として、ゲート絶縁膜をAlОで形成する方法が考えられる。AlОは、SiO等と比較して、多結晶構造になり易いため、ゲート絶縁膜全体を多結晶化させることができ、ゲート絶縁膜内の欠陥を低減することができる。これにより、ゲート閾値電圧の再現性を高めることができる。しかしながら、図5に示すように、AlОで形成されるゲート絶縁膜142には、結晶粒界Bが形成される。この場合、ゲート電極44から、ゲート絶縁膜142内の結晶粒界Bを通って、窒化物半導体20にリーク電流が流れてしまう。そこで、本実施例のゲート絶縁膜42は、窒化物半導体20上に設けられており、多結晶構造を備える窒化物半導体20と接する部分を含む第1絶縁層42aと、第1絶縁層42a上に設けられており、アモルファス構造を備える第2絶縁層42bと、を備えている。この場合、第1絶縁層42a内には、結晶粒界が生成される。しかしながら、第2絶縁層42b内には、結晶粒界が生成されず、これにより、ゲート電極44から、ゲート絶縁膜42を介して、窒化物半導体20にリーク電流が流れることを抑制することができる。従って、ゲート閾値電圧の再現性が高めることができ、かつ、ゲート電極44からのリーク電流を小さくすることができる。この結果、半導体装置1の信頼性をより向上させることができる。
【0020】
(半導体装置1の製造方法)
図2図4を参照して、半導体装置1の製造方法について説明する。図2のフローチャートのステップS1において、窒化物半導体形成工程が行われる。具体的には、GaNの単結晶基板である半導体基板10を用意し、周知の有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、半導体基板10上に、2~4μm程度の窒化物半導体20を成長させる。
【0021】
ステップS2において、窒化物半導体20に、ドレイン領域24及びソース領域26を形成する(ドレイン領域、ソース領域形成工程)。具体的には、周知のフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング加工を用いて、窒化物半導体20上に、ドレイン領域24及びソース領域26が開口しているマスクを加工する。次いで、マスクを介してSiイオンを注入する。次いで、窒化物半導体20上のマスクを除去し、窒化物半導体20上に、保護膜(例えば、SiO、AlN膜)を成膜し、窒素中において、1000℃で熱処理する。熱処理の時間は20分程度である。これにより、窒化物半導体20に注入されたSiイオンが活性化され、ドレイン領域24及びソース領域26が形成される。その後、窒化物半導体20上の保護膜を除去する。
【0022】
ステップS3において、窒化物半導体20の表面に形成される酸化膜(GaO膜)を洗浄する(表面洗浄工程)。表面洗浄工程では、希フッ酸(DHF)が利用される。
【0023】
ステップS4において、原子層堆積法(ALD法)を利用して、窒化物半導体20上に、50nmのゲート絶縁膜42を成膜する(成膜工程)。原子堆積法では、AlとSiの組成比が所定比率となるゲート絶縁膜42(AlSi(1-x)O)が成膜される。原子堆積法で行われるAl層を成膜する工程(Al成膜工程)のサイクル数とSiO層を成膜する工程(SiO層成膜工程)のサイクル数とを調整することで、ゲート絶縁膜42内のAlとSiの組成比が所定比率となるようにすることができる。なお、所定比率の一例は、x=0.78である。Al成膜工程を2サイクル実行し、その後に、SiO層成膜工程を1サイクル実行する工程を繰り返し実行することによって、x=0.78となるゲート絶縁膜42が生成することができる。これにより、図3に示す構造が形成される。この時点において、ゲート絶縁膜42は、アモルファス構造を有する。なお、変形例では、ゲート絶縁膜42は、化学気相堆積法(CVD法)やスパッタリング法等の公知の方法を用いて成膜されてもよい。
【0024】
ステップS5において、700℃以上の温度で熱処理する(熱処理工程)。これにより、ゲート絶縁膜42のうち窒化物半導体20と接する部分が、アモルファス構造から多結晶構造に変化する。これは、ゲート絶縁膜42のうち窒化物半導体20と接する部分が、単結晶である窒化物半導体20の表面に倣って再結晶化するためである。一方、ゲート絶縁膜42のうち、窒化物半導体20から比較的に離間している部分は、アモルファス構造の状態が維持される。これは、ゲート絶縁膜42の再結晶化が、窒化物半導体20とゲート絶縁膜42の界面から進むためであり、かつ、ゲート絶縁膜42が、Alだけではなく、Siを含むためである。ゲート絶縁膜42に含まれるAlの酸化物は、Siの酸化物よりも結晶性が高い。ここで、「結晶性」は、アモルファス構造である酸化物が、多結晶構造である酸化物への変化のしやすさを意味する。例えば、結晶性が高いとは、アモルファス構造である酸化物が、多結晶構造である酸化物に変化しやすいことを意味する。Siの酸化物の結晶性が、Alの酸化物の結晶性よりも低いために、窒化物半導体20から比較的に離間している部分まで、再結晶化が進まない。これにより、ゲート絶縁膜42に、多結晶構造を有する第1絶縁層42aとアモルファス構造を有する第2絶縁層42bとが形成される。
【0025】
ステップS6において、ゲート絶縁膜42上に、ゲート電極44を形成する(ゲート電極形成工程)。具体的には、窒化物半導体20上に、200nmのAl層を堆積する。次いで、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、絶縁ゲート40以外の領域に形成されているAl層を除去する。これにより、ゲート電極44が形成される。
【0026】
ステップS7において、窒化物半導体20上に、ドレイン電極32及びソース電極34を形成する(ドレイン電極、ソース電極形成工程)。具体的には、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、ドレイン電極32及びソース電極34を形成する領域のゲート絶縁膜42を除去する。次いで、20nmのTi層及び200nmのAl層の積層膜を成膜する。次いで、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、Ti層およびAl層を、ドレイン電極32及びソース電極34に加工する。次いで、窒素中で450℃の熱処理を行う。熱処理の時間は10分程度である。これにより、図1に示す半導体装置1が形成される。
【0027】
(MOSキャパシタを利用したフラットバンド電圧Vfbの再現性評価)
図6に、半導体装置1と同様のゲート絶縁膜42を有するMOSキャパシタにおけるフラットバンド電圧Vfbの変動電圧を計測した結果を示す。図6の縦軸は、フラットバンド電圧Vfbの変動量である。フラットバンド電圧Vfbの変動電圧は、初期状態のMOSキャパシタのフラットバンド電圧Vfbと、MOSキャパシタのゲート電極に、300秒の間、3.9[MV/cm]のストレス電圧を印加した後のMOSキャパシタのフラットバンド電圧Vfbと、の差分である。なお、フラットバンド電圧Vfbは、ゲート電極の仕事関数とチャネル領域の仕事関数の差であり、ゲート閾値電圧との間に相関関係を有する。即ち、フラットバンド電圧Vfbの変動電圧が大きいことは、ゲート閾値電圧の変動電圧が大きいことを意味する。図6の横軸は、MOSキャパシタのゲート絶縁膜を熱処理した温度(以下では、「熱処理温度」と呼ぶ)である。
【0028】
図6に示すように、熱処理温度が700℃未満の場合(図6の破線Aよりも左側)のフラットバンド電圧Vfbの変動量は、熱処理温度が700℃以上の場合(図6の破線Aよりも右側)のフラットバンド電圧Vfbの変動量の半分以下となる。これは、熱処理温度が700℃以上の場合、ゲート絶縁膜42のうち窒化物半導体20と接する部分が、アモルファス構造から多結晶構造に変化するが、熱処理温度が700℃未満の場合、ゲート絶縁膜42のうち窒化物半導体20と接する部分の再結晶化が進まないためである。従って、ゲート絶縁膜42を700℃以上で熱処理することによって、ゲート閾値電圧の再現性を高めることが可能であることが確認された。
【0029】
(Al及びSiを有する効果)
本実施例では、ゲート絶縁膜42は、Alだけではなく、Siを含む。仮に、ゲート絶縁膜がSiを含まない場合、当該ゲート絶縁膜を熱処理すると、ゲート絶縁膜の大部分が多結晶構造となる(例えば図5のゲート絶縁膜142)。この場合、ゲート電極44から、ゲート絶縁膜142を介して、窒化物半導体20に流れるリーク電流が多くなってしまう。一方、ゲート絶縁膜42は、結晶性の異なるAl及びSiを含むために、熱処理が行われた後においても、ゲート絶縁膜42のうち窒化物半導体20から離間している部分まで再結晶化が進まず、アモルファス構造が維持される(図1参照)。従って、結晶性の異なるAl及びSiを含むゲート絶縁膜42を成膜することで、ゲート絶縁膜42内に、多結晶構造を有する第1絶縁層42aとアモルファス構造を有する第2絶縁層42bとを形成することができる。この結果、ゲート閾値電圧の再現性を高めることができ、かつ、ゲート電極44からのリーク電流を小さくすることができる。なお、ゲート絶縁膜42に含まれる元素の組み合わせは、AlとSiに限定されない。変形例では、ゲート絶縁膜42に含まれる元素の組み合わせは、HfとAlであってもよい。Hfの酸化物は、Alの酸化物よりも結晶性が高い。また、別の変形例では、ゲート絶縁膜42に含まれる元素の組み合わせは、HfとSiであってもよい。Hfの酸化物は、Siの酸化物よりも結晶性が高い。一般的に言うと、ゲート電極44は、第1元素及び第1元素とは異なる第2元素を含んでおり、かつ、第1元素の酸化物が第2の元素の酸化物よりも結晶性が高ければよい。
【0030】
(表面洗浄工程の効果)
半導体装置1を製造する過程において、窒化物半導体20とゲート絶縁膜42との間に酸化膜が生成され得る。窒化物半導体20とゲート絶縁膜42との間に酸化膜が生成されていると、熱処理が行われても、ゲート絶縁膜42の再結晶化が進みにくくなる。そこで、本実施例では、窒化物半導体20上にゲート絶縁膜42を生成する前に、表面洗浄工程(図2のステップS3)が実行される。この表面洗浄工程において、窒化物半導体20上の酸化膜が洗浄(除去)される。このため、半導体装置1では、窒化物半導体20とゲート絶縁膜42との間に、アモルファスの酸化膜は存在しない。従って、表面洗浄工程の後に熱処理(ステップS5)を行うことで、ゲート絶縁膜42のうち窒化物半導体20と接する部分が再結晶化され、ゲート絶縁膜42内の欠陥を低減させることができる。従って、ゲート閾値電圧の再現性を向上させることができる。
【0031】
(第2実施例)
図7に、第2実施例の半導体装置201の要部断面図を模式的に示す。半導体装置201は、縦型のMOSFETであり、トレンチゲート型である。半導体装置201は、半導体基板210、窒化物半導体220、シリコン酸化膜からなる絶縁膜228、ドレイン電極232、ソース電極234、及び、絶縁ゲート240を備える。半導体基板210は、GaNの単結晶基板である。窒化物半導体220は、n型のドリフト領域222と、p型のボディ領域224と、n型のソース領域226と、を備える。
【0032】
半導体装置201の表層部には、トレンチ型の絶縁ゲート240が形成されている。絶縁ゲート240は、トレンチ240T内に設けられている。トレンチ240Tは、絶縁膜228、ソース領域226、及び、ボディ領域224を貫通してドリフト領域222の一部に到達している。絶縁ゲート240は、ゲート絶縁膜242及びゲート電極244を有している。ゲート絶縁膜242は、AlSiOからなる。ゲート絶縁膜242は、第1絶縁層242aと第2絶縁層242bとを有している。第1絶縁層242a、第2絶縁層242bは、それぞれ、第1実施例の第1絶縁層42a、第2絶縁層42bと同様の構造を有する。
【0033】
ソース領域226の表面の一部には、ソース電極234が配置されている。ソース電極234とゲート電極244とは、絶縁膜228によって絶縁されている。上述のように、絶縁ゲート240のうち、窒化物半導体220と接する部分、即ち、第1絶縁層242aは、窒化物半導体220の結晶構造(単結晶構造)に倣った結晶構造(多結晶構造)を有する。また、第1絶縁層242a上に、アモルファス構造を有する第2絶縁層242bが形成されている。従って、半導体装置201は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0034】
(第3実施例)
図8に、第3実施例の半導体装置301の要部断面図を模式的に示す。半導体装置301は、HEMT(High Electron Mobility Transistor)であり、ノーマリオン型である。半導体装置301は、半導体基板310、窒化物半導体320、シリコン酸化膜からなる絶縁膜326、ドレイン電極332、ソース電極334、及び、絶縁ゲート340を備える。半導体基板310は、Siの単結晶基板である。窒化物半導体320は、超格子(AlN/GaN)又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなるバッファ層321、アンドープのGaNからなる電子走行層322、AlGaNからなる電子供給層324が積層している構造を備える。窒化物半導体320の表面には、ドレイン電極332及びソース電極334が配置されている。ドレイン電極332、ソース電極334は、絶縁膜326によって絶縁されている。
【0035】
半導体装置301の表層部には、トレンチ型の絶縁ゲート340が形成されている。絶縁ゲート340は、トレンチ340T内に設けられている。トレンチ340Tは、絶縁膜326を貫通し、窒化物半導体320の表面に到達している。絶縁ゲート340は、ゲート絶縁膜342及びゲート電極344を有している。ゲート絶縁膜342は、AlSiOからなる。ゲート絶縁膜342は、第1絶縁層342aと第2絶縁層342bとを有している。第1絶縁層342a、第2絶縁層342bは、それぞれ、第1実施例の第1絶縁層42a、第2絶縁層42bと同様の構造を有する。即ち、絶縁ゲート340のうち、窒化物半導体320と接する部分、即ち、第1絶縁層342aは、窒化物半導体320の結晶構造(単結晶構造)に倣った結晶構造(多結晶構造)を有する。また、第1絶縁層342a上に、アモルファス構造を有する第2絶縁層342bが形成されている。従って、半導体装置301は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0036】
(第4実施例)
図9に、第4実施例の半導体装置401の要部断面図を模式的に示す。半導体装置401は、HEMTであり、ノーマリオフ型である。第4実施例の半導体基板410、窒化物半導体420(バッファ層421、電子走行層422、電子供給層424)、ドレイン電極432、ソース電極434は、それぞれ、第3実施例の半導体基板310、窒化物半導体320(バッファ層321、電子走行層322、電子供給層324)、ドレイン電極332、ソース電極334と同様の構造を有する。
【0037】
半導体装置401の表層部には、トレンチ型の絶縁ゲート440が形成されている。絶縁ゲート440は、トレンチ440T内に設けられている。トレンチ440Tは、絶縁層426、電子供給層424を貫通し、電子走行層422の一部に到達している。絶縁ゲート440は、ゲート絶縁膜442及びゲート電極444を有している。ゲート絶縁膜442は、AlSiOからなる。ゲート絶縁膜442は、第1絶縁層442aと第2絶縁層442bとを有している。第1絶縁層442a、第2絶縁層442bは、それぞれ、第1実施例の第1絶縁層42a、第2絶縁層42bと同様の構造を有する。即ち、絶縁ゲート440のうち、窒化物半導体420と接する部分、即ち、第1絶縁層442aは、窒化物半導体420の結晶構造(単結晶構造)に倣った結晶構造(多結晶構造)を有する。また、第1絶縁層442a上に、アモルファス構造を有する第2絶縁層442bが形成されている。従って、半導体装置401は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0038】
(第5実施例)
図10に、第5実施例の半導体装置501の要部断面図を模式的に示す。半導体装置501は、横型のMOSFETの一実施形態である。半導体装置501は、半導体基板510、窒化物半導体520、シリコン酸化膜からなる絶縁膜528、ドレイン電極532、ソース電極534、及び、絶縁ゲート540を備える。
【0039】
窒化物半導体520は、バッファ層521と、p型のボディ領域522、n型の第1ドレイン領域524、n型の第2ドレイン領域525、n型のソース領域526を有している。窒化物半導体520の表面には、ドレイン電極532、ソース電極534、及び、絶縁膜528が設けられている。ドレイン電極532、ソース電極534は、絶縁膜528によって絶縁されている。
【0040】
半導体装置501の表層部には、トレンチ型の絶縁ゲート540が形成されている。絶縁ゲート540は、トレンチ540T内に設けられている。トレンチ540Tは、絶縁膜528を貫通し、窒化物半導体520の表面に到達している。絶縁ゲート540は、ゲート絶縁膜542及びゲート電極544を有している。ゲート絶縁膜542は、AlSiOからなる。ゲート絶縁膜542は、第1絶縁層542aと第2絶縁層542bとを有している。第1絶縁層542a、第2絶縁層542bは、それぞれ、第1実施例の第1絶縁層42a、第2絶縁層42bと同様の構造を有する。即ち、絶縁ゲート540のうち、窒化物半導体520と接する部分、即ち、第1絶縁層542aは、窒化物半導体520の結晶構造(単結晶構造)に倣った結晶構造(多結晶構造)を有する。また、第1絶縁層542a上に、アモルファス構造を有する第2絶縁層542bが形成されている。従って、半導体装置501は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0041】
第2実施例~第5実施例に示すように、本明細書が開示するゲート絶縁膜は、種々の半導体装置に用いることができる。これらの半導体装置においても、電極と半導体層との間に本明細書が開示するゲート絶縁膜を配置することによって、ゲート閾値電圧の再現性を向上させることができ、かつ、ゲート電極から窒化物半導体に流れるリーク電流を小さくすることができる。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
1:半導体装置、10:半導体基板、20:窒化物半導体、22:ボディ領域、24:ソース領域、26:ドレイン領域、32:ソース電極、34:ドレイン電極、40:絶縁ゲート、42:ゲート絶縁膜、42a:第1絶縁層、42b:第2絶縁層、44:ゲート電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10