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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】短絡接地器具
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/64 20060101AFI20221130BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20221130BHJP
   H01R 11/24 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01R4/64 A
H01R11/01 B
H01R11/01 W
H01R11/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022113445
(22)【出願日】2022-07-14
【審査請求日】2022-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592175863
【氏名又は名称】一般財団法人中部電気保安協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000142861
【氏名又は名称】株式会社古川電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】武村 順三
(72)【発明者】
【氏名】安立 昌司
(72)【発明者】
【氏名】藤川 純
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057506(JP,A)
【文献】実開平05-061958(JP,U)
【文献】特開2002-152935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/64
H01R 11/01
H01R 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップを有する短絡接地器具であって、
前記クリップは、
先端側に配置された、挟持対象を挟持する挟持部と、
基端側に配置された、前記挟持部を開閉するためのグリップ部と、
を備えており、
前記挟持部は、
挟持方向と同様な方向に延びるフック部と、
窪み部の組合せであり、前記挟持対象の外形に合っている第1の窪み部セットと、
を備えており、
前記挟持対象には、電線が含まれており、
前記第1の窪み部セットは、前記電線の外形に合っていると共に、前記フック部に基端側で隣接しており、
前記電線が、前記第1の窪み部セットに挟持された状態において、前記挟持部に対し相対的に先端側に移動する場合、前記クリップは、前記第1の窪み部セット及び前記フック部による案内作用に基づいて、前記第1の窪み部セット及び前記フック部の少なくとも何れかで囲んでいる前記電線の周りで回転する
ことを特徴とする短絡接地器具。
【請求項2】
クリップを有する短絡接地器具であって、
前記クリップは、
先端側に配置された、挟持対象を挟持する挟持部と、
基端側に配置された、前記挟持部を開閉するためのグリップ部と、
を備えており、
前記挟持部は、
挟持方向と同様な方向に延びるフック部と、
窪み部の組合せであり、前記挟持対象の外形に合っている第2の窪み部セットと、
を備えており、
前記挟持対象には、ボルト又はナットが含まれており、
前記第2の窪み部セットは、前記ボルト又は前記ナットの外形に合っていると共に、前記フック部の基端側に配置されており、
前記ボルト又は前記ナットが、前記第2の窪み部セットに挟持された状態において、前記挟持部に対し相対的に先端側に移動する場合、前記クリップは、前記フック部による案内作用に基づいて、前記フック部が接触している前記ボルト又は前記ナットの周りで回転する
ことを特徴とする短絡接地器具。
【請求項3】
前記グリップ部は、弾性体を有しており、
前記弾性体のバネ定数は、2.4kgf/mm以上3.0kgf/mm以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の短絡接地器具。
【請求項4】
前記グリップ部は、互いに同様な方向を向く第1握り部及び第2握り部を有しており、
前記第1握り部の中心軸は、前記第2握り部の側に凸であり、あるいは、前記第2握り部の中心軸は、前記第1握り部の側に凸である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の短絡接地器具。
【請求項5】
前記クリップの材質は、アルミ合金である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の短絡接地器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電設備の点検等において作業者の感電を防止するための短絡接地器具に関する。
【背景技術】
【0002】
実開平5-61958号公報(特許文献1)の請求項1、[0009]及び図1には、3個の高圧電線クリップ2を有する短絡接地器具が開示されている。
各高圧電線クリップ2は、電線路1を把持(挟持)するクリップ部24を有している。各クリップ部24の電線路把持面21は、複数の穏やかな凹凸をなす曲面で構成される。更に、クリップ部24は、先端部の片方においてフック22を有しており、他方においてフック22より短い突部23を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-61958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記短絡接地器具では、[0007],[0011]に記載される通り、電線路把持面2が複数の穏やかな凹凸をなす曲面で構成されることにより、電線路1が広い面積で確実に保持され、且つフック22が電線路1の上端に係止されることにより、クリップ部24の離脱が防止される。
しかし、上記短絡接地器具では、短絡電流の流下時、短絡電流の電磁反発力により吹き飛ぶ可能性が、短絡電流の大きさによっては存在する。
かような吹き飛ぶ可能性をより一層低減するため、各高圧電線クリップ2を電線路把持面21の挟持側に付勢するバネの付勢力が強められると、作業者が各高圧電線クリップ2を握って電線路把持面21を開く際に大きな力を要することとなり、作業性が低下する。
【0005】
そこで、本発明の主な目的の一つは、短絡電流の流下時に吹き飛ぶ可能性が更に低減された短絡接地器具を提供することである。
又、本発明の別の主な目的の一つは、作業性が更に向上した短絡接地器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、短絡接地器具を開示する。この短絡接地器具は、クリップを有している。クリップは、挟持対象を挟持する挟持部と、挟持部を開閉するためのグリップ部と、を備えている。挟持部は、挟持方向と同様な方向に延びるフック部を備えていても良い。挟持部は、窪み部の組合せであり、挟持対象の外形に合っている、複数の窪み部セットを備えていても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の主な効果の一つは、短絡電流の流下時に吹き飛ぶ可能性が更に低減された短絡接地器具が提供されることである。
又、本発明の別の主な効果の一つは、作業性が更に向上した短絡接地器具が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る短絡接地器具を示す図である。
図2図1における1つのクリップを示す図である。
図3図2の右側面図である。
図4図2の先端部拡大図である。
図5図2の状態から先端部を最大に開いた場合の図である。
図6図5の先端部拡大図である。
図7図1の変更例に係る短絡接地器具における1つのクリップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。
本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0010】
図1は、当該形態の短絡接地器具1を示す図である。
短絡接地器具1は、例えば、高圧電線路を開路して、高圧電線路及びこれに接続された設備機器の点検、試験、修理等を実施する際に、高圧電線路からの誤通電、高圧電線路との混触、高圧電線路からの誘導による感電の発生を抑制するために用いられる。
短絡接地器具1は、3つのクリップ2と、接地クリップ4と、コード部6と、連結部8と、を有する。
【0011】
3つのクリップ2は、挟持対象を挟む。各クリップ2の挟持対象は、短絡接地対象であり、例えば高圧電線路であって、より具体的には、例えば電線(一般に断面積8mm(平方ミリメートル)以上80mm以下)、銅バー等の板状の端子、ブッシング、ナット、ボルト、及び圧着端子の少なくとも何れかである。
3つのクリップ2は、それぞれ同様に成るため、以下特に断りのない限り1つのクリップ2が説明される。
図2は、1つのクリップを示す図である。図3は、図2の右側面図である。図4は、図2の先端部拡大図である。
クリップ2は、第1挟持体11と、第2挟持体12と、軸体14と、弾性体の一例としてのバネ16と、を有する。
第1挟持体11及び第2挟持体12は、何れも全体として棒状であり、同様な方向を向いた状態で並んでいる。以下、説明の容易化の観点から、コード部6に近い側の端部を基端部として図2の下側を基端側とし、又コード部6から遠い側の端部を先端部として図2の上側を先端側とし、更に第1挟持体11の配置された側を図2に図示される通り左側とし、第2挟持体12の配置された側を図2に図示される通り右側とする。尚、短絡接地器具1の方向は、各種の部材及び部分の作動状況、並びに作業の状況の少なくとも何れかにより、変化し得る。
【0012】
第1挟持体11は、アルミ合金製である。第1挟持体11の材質は、強度を十分としつつより軽量化する観点から、好ましくはAC7A及びAC4Cの少なくとも一方である。尚、第1挟持体11の材質は、アルミ合金以外の金属であっても良いし、金属以外であっても良い。
第1挟持体11は、先端部から順に、フック部20と、第1-1窪み部21と、第1-2窪み部22と、第1屈曲部24と、第1組部25と、第1バネ受け部26と、第1突部27と、第1握り部28と、を有する。
【0013】
フック部20は、第1挟持体11の先端部に配置される。フック部20は、そのすぐ基端側に対して、右方(第2挟持体12側)に突出していて、第2挟持体12の先端部に対し、先端側において隣接している。
【0014】
第1-1窪み部21は、第1挟持体11の先端右部に配置されており、フック部20に対し基端側で隣接している。第1-1窪み部21は、フック部20との間の部分、及びすぐ基端側の部分に対して、左方に窪んでいる。第1-1窪み部21を形成する面は、左に凸であり、円筒面の一部となっている。
【0015】
第1-2窪み部22は、第1挟持体11の先端右部に配置されており、第1-1窪み部21に対し基端側で隣接している。第1-2窪み部22は、第1-1窪み部21との間の部分、及びすぐ基端側の部分に対して、左方に窪んでいる。第1-2窪み部22を形成する面は、左に凸であり、六角柱の隣り合う2側面に相当している。
【0016】
第1屈曲部24は、第1-2窪み部22の基端側に配置されている。第1屈曲部24は、自身より基端側の部分に対し、先端側の部分を、図2の紙面に垂直な方向(手前奥方向)における手前側に起こすように屈曲している。
【0017】
第1組部25は、第1挟持体11の中央右部に配置されており、第1屈曲部24より基端側に配置されている。第1組部25は、周囲の部分に対して、2箇所(図2に図示された箇所及びその裏側の箇所)で“b”字状に膨出している。
第1組部25の右下部は、その左部を根元として手前及び奥からそれぞれ右方へ延びて二股になる二股部25Tとなっている。二股部25Tの手前及び奥の各中央部には、手前奥方向に延びる透孔が設けられている。
【0018】
第1バネ受け部26は、第1挟持体11の中央部に配置されており、二股部25Tより左方に配置されている。第1バネ受け部26は、右から見て有底の筒状である。
【0019】
第1突部27は、第1バネ受け部26の左面から左方へ突出している。第1突部27の下面は、右又は右上に凸の曲面である。尚、第1突部27の下面は、右又は右上に凸の曲面以外の面とされても良い。又、第1突部27は、省略されても良い。
第1握り部28は、第1挟持体11の中央部から基端部にかけて配置されている。第1握り部28の左面、右面及び仮想的な中心軸は、何れも右又は右下に凸である。尚、第1握り部28の左面、右面及び仮想的な中心軸の少なくとも何れかは、右又は右下に凸でなくても良い。
第1突部27の下面から第1握り部28の左面にかけて、右側に凸の滑らかな曲面が形成される。
【0020】
第2挟持体12は、第1挟持体11と同様、アルミ合金製である。第1挟持体11及び第2挟持体12を含む1つのクリップ2の重さは、0.6kg(キログラム)程度の従来の銅合金製のものの重さに対して十分な強度を保持しつつ軽量化を図る観点から、好ましくは0.18kg以上0.22kg以下であり、より好ましくは0.19kg以上0.21kg以下である。尚、第2挟持体12の材質は、アルミ合金以外の金属であっても良いし、金属以外であっても良いし、第1挟持体11の材質と異なっていても良い。
第2挟持体12は、概ね第1挟持体11と左右対称であり、先端部から順に、第2-1窪み部31と、第2-2窪み部32と、第2屈曲部34と、第2組部35と、第2バネ受け部36と、第2突部37と、第2握り部38と、を有する。
【0021】
第2-1窪み部31は、第2挟持体12の先端左部に配置されている。第2-1窪み部31は、すぐ先端側の部分及びすぐ基端側の部分に対して、右方に窪んでいる。第2-1窪み部31を形成する面は、右に凸であり、円筒面の一部となっている。
【0022】
第2-2窪み部32は、第2挟持体12の先端左部に配置されており、第2-1窪み部31に対し基端側で隣接している。第2-2窪み部32は、第2-1窪み部31との間の部分、及びすぐ基端側の部分に対して、右方に窪んでいる。第2-2窪み部32を形成する面は、右に凸であり、六角柱の隣り合う2面に相当している。
【0023】
第2屈曲部34は、第2-2窪み部32の基端側に配置されている。第2屈曲部34は、自身より基端側の部分に対し、先端側の部分を、手前側に起こすように屈曲している。第2屈曲部34の屈曲の角度は、第1挟持体11の屈曲の角度と同様である。
【0024】
第2組部35は、第2挟持体12の中央左部に配置されており、第2屈曲部34より基端側に配置されている。第2組部35は、周囲の部分に対して、手前奥方向を軸方向とした半円柱状に左方へ突出している。
第2組部35は、手前奥方向に延びる透孔を有している。第2組部35の大部分は、第1組部25の二股部25T内に入っている。第2組部35の透孔は、手前から見て、二股部25Tの透孔と重なっている。
【0025】
第2バネ受け部36は、第2挟持体12の中央部に配置されており、第2組部35より右方に配置されている。第2バネ受け部36は、左から見て有底の筒状である。
【0026】
第2突部37は、第2バネ受け部36の右面から右方へ突出している。第2突部37の下面は、左又は左上に凸の曲面である。尚、第2突部37の下面は、左又は左上に凸の曲面以外の面とされても良い。又、第2突部37は、省略されても良い。
第2握り部38は、第2挟持体12の中央部から基端部にかけて配置されている。第2握り部38の右面、左面及び仮想的な中心軸は、何れも右又は右下に凸である。第2握り部38は、第1握り部28と同様な方向(先端基端方向)を向いている。尚、第2握り部38の右面、左面及び仮想的な中心軸の少なくとも何れかは、右又は右下に凸でなくても良い。
第2突部37の下面から第2握り部38の右面にかけて、左側に凸の滑らかな曲面が形成される。
第2握り部38の基端部には、コード部6と接続するための、左右方向の孔38Hが設けられている。第2握り部38は、第1握り部28より長く、第2握り部38の基端、及び孔38Hは、第1握り部28の基端より基端側に配置されている。尚、第2握り部38の基端、及び孔38Hの少なくとも一方は、第1握り部28の基端より基端側に配置されていなくても良い。
【0027】
軸体14は、頭部を有する有頭のピンであり、第1組部25の二股部25T及び第2組部35の各透孔に共通する状態で入っている。
かような軸体14の挿通により、第1挟持体11及び第2挟持体12は、互いに組み合わせられ、又、互いの先端部が閉じた状態(図2図3図4参照)から最大に開いた状態(図5図6参照)にかけて開閉可能である。最大に開いた状態では、第1握り部28と第2握り部38とが互いに接触する。第1挟持体11及び第2挟持体12は、一般的な挟持対象の挟持において、最大に開いた状態とすることを要せず、最大に開いた状態と閉じた状態の間の状態とすれば足りる。
尚、図1図4において、明瞭性の観点から、第1挟持体11及び第2挟持体12は、互いの先端部が閉じた状態であっても、先端部同士が接触せず隙間が存在するように描かれている。実際には、互いの先端部が閉じた状態では、軸体14より先端側の部分の一部同士が接触する。
【0028】
バネ16は、第1バネ受け部26と第2バネ受け部36との間に渡されている。
バネ16の左端部は、第1挟持体11の第1バネ受け部26に保持される。バネ16の右端部は、第2挟持体12の第2バネ受け部36に保持される。
バネ16は、第1挟持体11及び第2挟持体12を、これらの先端部が閉じる方向(挟持方向)に付勢する。
バネ16のバネ定数は、短絡接地器具1における短絡時の外れ難さと作業性との両立の観点から、好ましくは2.4kgf/mm(キログラム重毎ミリメートル)以上3.0kgf/mm以下とされ、より好ましくは2.6kgf/mm以上2.8kgf/mm以下とされる。
尚、バネ16の形状は、図示されたらせん形状以外であっても良い。又、弾性体として、バネ16に代えて、あるいはバネ16と共に、ゴムブロック等が用いられても良い。
【0029】
第1挟持体11及び第2挟持体12における軸体14より先端側の部分は、挟持対象を挟持可能な挟持部Pである。
挟持部Pでは、フック部20が、挟持方向と同様な方向である左右方向に延びている。
更に、挟持部Pでは、一部円筒面状の第1-1窪み部21と一部円筒面状の第2-1窪み部31とが向かい合っており、これらは、挟持対象のうち円柱状の電線の外形に合う第1の窪み部セットD1となっている。第1の窪み部セットD1は、フック部20に隣接している。尚、第1-1窪み部21及び第2-1窪み部31の少なくとも一方は、一部楕円筒面状等であっても良い。
又、挟持部Pでは、一部六角柱面状の第1-2窪み部22と一部六角柱面状の第2-2窪み部32とが向かい合っており、これらは、挟持対象のうち六角柱状のボルト頭及びナットの外形に合う第2の窪み部セットD2となっている。第2の窪み部セットD2は、第1の窪み部セットD1に隣接している。第2の窪み部セットD2の(閉じた状態における)断面積は、第1の窪み部セットD1の(閉じた状態における)断面積より大きい。尚、第1-2窪み部22及び第2-2窪み部32の少なくとも一方は、一部四角柱面状を始めとする、一部六角柱面状以外の一部多角柱面状等であっても良い。
更に、挟持部Pでは、第1屈曲部24及び第2屈曲部34により、屈曲部Nが形成される。屈曲部Nより先端側に、第1,第2の窪み部セットD1,D2が配置される。尚、屈曲部Nにおける窪み部セットの配置は、様々に変更可能であり、例えば第1の窪み部セットD1のみ屈曲部Nより先端側に配置されても良い。又、屈曲部Nは、省略されても良い。
【0030】
第1挟持体11及び第2挟持体12における軸体14より基端側の部分は、作業者が把持可能なグリップ部Gである。
グリップ部Gでは、第1突部27及び第2突部37が設けられるため、グリップ部Gを握った作業者の指が周囲の物に近づいたとしても、第1突部27又は第2突部37が指より先に周囲の物に衝突する。よって、作業者の指が保護される。
更に、グリップ部Gでは、第1握り部28が第2握り部38側へ凸となる形状(逆反り形状)を有しており、又第2握り部38が第1握り部28側へ凸となる形状(逆反り形状)を有している。よって、第1握り部28の中央部が第2握り部38へ近づき、又第2握り部38の中央部が第1握り部28へ近づく。従って、作業者は、グリップ部Gを握り易くなり、グリップ部Gに対して力をかけ易くなって、より少ない力で挟持部Pを十分に開くことができる。
【0031】
クリップ2の長さ、即ちフック部20の先端から第2握り部38の下端までの距離は、例えば215mm(ミリメートル)である。
又、最大に開いた状態の挟持部Pにおいて、第1挟持体11のフック部20右端から第2挟持体の先端左までの距離は、例えば27mmである。
【0032】
接地クリップ4は、挟持対象を挟む。接地クリップ4の挟持対象は、接地端である。
図1に示されるように、接地クリップ4は、挟持部PEと、グリップ部GEと、軸体SEと、図示されない弾性部(例えば板バネ)と、を有する。
挟持部PEは、挟持対象を挟持する。
作業者がグリップ部GEを握ると、挟持部PEが軸体SEの周りで開く。
弾性部は、挟持部PEを、挟持する方向に付勢する。
【0033】
コード部6は、分岐端子部40と、3本のクリップ側コード42と、接地側コード44と、を有する。
分岐端子部40には、各クリップ側コード42の第1端部と、接地側コード44の第1端部と、が接続される。
各クリップ側コード42の第2端部には、対応するクリップ2が、孔38H、及びこれに入るボルトBを介して接続される。尚、3つのクリップ2の少なくとも何れかは、溶接等、ボルトB止め以外の態様で、クリップ側コード42に接続されても良い。
接地側コード44の第2端部には、接地クリップ4が接続される。
コード部6により、各クリップ側コード42と、接地側コード44とが、電気的に接続される。
各クリップ側コード42の長さは、例えば1000mmである。
接地側コード44の長さは、例えば2000mmである。
【0034】
連結部8は、カラビナ50と、紐部52と、を有する。
カラビナ50は、接地クリップ4の挟持対象の側にある孔部等に掛止可能である。
紐部52は、カラビナ50と接地側コード44とをつなぐ。紐部52の長さは、例えば1000mmである。
連結部8は、短絡接地器具1の設置箇所からの離隔を防止する。
尚、連結部8において、カラビナ50に代えて、あるいはカラビナ50と共に、カン金具等が用いられても良い。紐部52は、分岐端子部40等、接地側コード44以外の部分につなげられても良い。
【0035】
かような短絡接地器具1の使用例が、以下説明される。
作業者は、接地クリップ4のグリップ部GEを握って、挟持部PEを開き、接地端に近づけて、挟持部PEで接地端を挟持する。一般に、接地端は高圧電線路等の短絡接地対象より低い位置にあり、接地クリップ4の姿勢は、挟持部PEが下でグリップ部GEが上に位置するものとなる。
又、作業者は、1つのクリップ2のグリップ部Gを握って、挟持部Pを開き、対応する短絡接地対象に近づけて、挟持部Pで短絡接地対象を挟持する。作業者は、かような挟持を、残り2つのクリップ2において繰り返す。作業者は、多くの場合、短絡接地対象から電線等が手前側に延びており又短絡接地対象の正対側の空間よりその側方側の空間の方が広くなっていることにより短絡接地対象の側方側から作業を行うところ、第1屈曲部24及び第2屈曲部34により挟持部Pの先端側に屈曲部Nが形成されるため、短絡接地対象の側方からの挟持が、屈曲部Nがない場合に比べ、より一層行い易い。
更に、作業者は、連結部8のカラビナ50を短絡接地対象に隣接する孔部等に掛けて、短絡接地器具1を短絡接地対象の隣接部位に対し連結する。
そして、作業者は、短絡接地対象に係る設備の点検等を実施する。
作業者は、点検等の完了後、短絡接地器具1を外す。
【0036】
ここで、短絡接地対象が電線である場合、作業者は、電線を第1の窪み部セットD1において挟持する。
万が一、短絡接地器具1に短絡電流が流下した場合、短絡電流の電磁反発力により短絡接地器具1が激しく移動することがあり、電線が少なくとも何れかのクリップ2の先端側に相対的に移動した場合、短絡接地器具1が電線から離脱して吹き飛ぶ可能性がある。
短絡接地器具1の各クリップ2では、第1の窪み部セットD1の先端側の隣接位置に、先端基端方向に交わる方向(挟持方向と同様な方向)に延びるフック部20が設けられる。よって、電線がクリップ2の先端側に相対的に移動したとしても、各クリップ2は、第1の窪み部セットD1及びフック部20による案内作用に基づいて、第1の窪み部セットD1及びフック部20の少なくとも何れかで囲んでいる電線の周りで回転する。各クリップ2は、かような回転により、短絡電流の電磁反発力に基づく激しい移動に対し、電磁反発力から生じた運動エネルギーの方向を先端基端方向から回転方向(回転モーメント)とすることで、電線からの離脱を生じることなく、接続を維持したまま対処することができる。
かような案内作用及び回転は、第1の窪み部セットD1の直径(形状)と電線の直径(外形)とが完全に一致していなくても、第1の窪み部セットD1への電線の一部の進入により、第1の窪み部セットD1において行われる。
【0037】
又、短絡接地対象がボルト又はナットである場合、作業者は、ボルト又はナットの左右両側部を第2の窪み部セットD2において挟持する。第2の窪み部セットD2に対し、ボルト又はナットの左右両側部がフィットする。
万が一、短絡接地器具1に短絡電流が流下した場合、短絡電流の電磁反発力によりクリップ2が激しく移動しようとしても、角柱状の第2の窪み部セットD2に角柱状のボルト又はナットの左右両側部がフィットしているため、かような移動が抑制される。
又、ボルト又はナットがクリップ2の先端側に相対的に移動したとしても、第2の窪み部セットD2より先端側にフック部20が設けられることにより、クリップ2は、フック部20(及び第1の窪み部セットD1)による案内作用に基づいて、フック部20(及び第1の窪み部セットD1の少なくとも何れか)が接触しているボルト又はナットの周りで回転する。各クリップ2は、かような回転により、短絡電流の電磁反発力に基づく激しい移動につき、電線からの離脱を生じることなく、接続を維持したまま対処することができる。
【0038】
更に、短絡接地器具1は、複数の短絡接地対象に係る第1,第2の窪み部セットD1,D2を有している。
よって、短絡接地器具1は、多様な短絡接地対象に対し、離脱が防止された状態で取り付け可能である。
【0039】
以上の短絡接地器具1は、3つのクリップ2を有している。各クリップ2は、挟持対象を挟持する挟持部Pと、挟持部Pを開閉するためのグリップ部Gと、を備えている。挟持部Pは、挟持方向と同様な方向に延びるフック部20と、第1-1窪み部21と第2-1窪み部31との組合せであり、挟持対象(電線)の外形に合っている、第1の窪み部セットD1と、第1-2窪み部22と第2-2窪み部32との組合せであり、挟持対象(ボルト又はナット)の外形に合っている、第2の窪み部セットD2と、を備えている。
よって、短絡接地器具1では、フック部20及び第1の窪み部セットD1、あるいはフック部20、第1の窪み部セットD1及び第2の窪み部セットD2により、短絡時における挟持対象のクリップ2先端側へ抜けようとする相対的な移動が回転移動に変更される。従って、短絡接地器具1では、短絡電流の流下時に吹き飛ぶ可能性が更に低減される。
更に、短絡接地器具1では、挟持対象を第1の窪み部セットD1又は第2の窪み部セットD2に当て嵌めれば良く、作業性が更に向上する。又、短絡接地器具1では、第1,第2の窪み部セットD1,D2により、少なくとも2種類の挟持対象に適切に対応可能である。
【0040】
又、第1の窪み部セットD1は、フック部20に隣接している。よって、短絡接地器具1のクリップ2では、短絡時の回転移動への変換がより一層円滑になる。従って、短絡接地器具1において、短絡電流の流下時に吹き飛ぶ可能性が更に低減される。
加えて、グリップ部Gは、バネ16を有しており、バネ16のバネ定数は、2.4kgf/mm以上3.0kgf/mm以下である。よって、フック部20、第1の窪み部セットD1及び第2の窪み部セットD2の少なくとも何れかを有する短絡接地器具1のクリップ2において、抜け止め防止のための挟持力が十分に得られた状態で、挟持部Pを開くための力が低減され、作業性が向上する。
【0041】
又、グリップ部Gは、互いに同様な方向を向く第1握り部28及び第2握り部38を有しており、第1握り部28の中心軸は、第2握り部38の側に凸であり、第2握り部38の中心軸は、第1握り部28の側に凸である。よって、作業者は、クリップ2の挟持部Pをより開き易い。従って、短絡接地器具1の作業性が向上する。
更に、各クリップ2の材質は、アルミ合金である。よって、フック部20、第1の窪み部セットD1及び第2の窪み部セットD2の少なくとも何れかを有する短絡接地器具1のクリップ2における強度が十分に得られた状態で、より一層の軽量化が図られる。
又更に、挟持対象は、電線、ボルト及びナットを含む。よって、短絡接地器具1のクリップ2において、電線、ボルト及びナットに十分に対応可能である。
【0042】
尚、本発明は、上記の形態及び変更例に限定されず、次に示すような更なる変更例を適宜有する。
図7に示される変更例に係るクリップ102のように、第1挟持体111及び第2挟持体112において、更に第3の窪み部セットD3が設けられても良い。尚、図7において、上記形態と同様に成る部材又は部分には、同じ符号が付される。又、この短絡接地器具の変更例において、3つのクリップ102以外の部材は、上記形態と同様に成る。
第3の窪み部セットD3は、第2の窪み部セットD2と同様に、一部六角柱面状の第1-3窪み部122と一部六角柱面状の第2-3窪み部132とが向かい合うことで、ボルト又はナットの外形に合うように形成される。第3の窪み部セットD3は、挟持部PPにおける屈曲部Nより基端側に配置される。尚、第3の窪み部セットD3は、ボルト又はナット以外の外形に合うように形成されても良いし、屈曲部Nより先端側に配置されても良い。
【0043】
各種の部材の全部又は一部は、同等なあるいは類似する他のものに置換されても良い。
1つの窪み部セットは、1つの窪み部で形成されても良いし、3つ以上の窪み部で形成されても良い。複数の窪み部セットは、細い電線の形状に合うもの及び太い電線の形状に合うもの等とされても良い。複数の窪み部セットは、4組以上設けられても良く、3種類以上の挟持対象に合う各形状とされても良い。
【符号の説明】
【0044】
1・・短絡接地器具、2,102・・クリップ、16・・バネ(弾性体)、20・・フック部、21・・第1-1窪み部、22・・第1-2窪み部、28・・第1握り部、31・・第2-1窪み部、32・・第2-2窪み部、38・・第2握り部、122・・第1-3窪み部、132・・第2-3窪み部、D1・・第1の窪み部セット、D2・・第2の窪み部セット、D3・・第3の窪み部セット、G・・グリップ部、P,PP・・挟持部。
【要約】
【課題】短絡電流の流下時に吹き飛ぶ可能性が更に低減され、作業性が更に向上した短絡接地器具を提供する。
【解決手段】短絡接地器具は、3つのクリップ2を有している。各クリップ2は、挟持対象を挟持する挟持部Pと、挟持部Pを開閉するためのグリップ部Gと、を備えている。挟持部Pは、挟持方向と同様な方向に延びるフック部20と、第1-1窪み部21と第2-1窪み部31との組合せであり、挟持対象(電線)の外形に合っている、第1の窪み部セットD1と、第1-2窪み部22と第2-2窪み部32との組合せであり、挟持対象(ボルト又はナット)の外形に合っている、第2の窪み部セットD2と、を備えている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7