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特許7185277水素ステーション、及びその水素ステーションの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】水素ステーション、及びその水素ステーションの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20221130BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 301A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018240907
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020101255
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】内本 亮輔
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-002635(JP,A)
【文献】特開2016-084902(JP,A)
【文献】特開平08-109999(JP,A)
【文献】特開2016-153656(JP,A)
【文献】特開2018-151043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を昇圧する昇圧部と、昇圧部で昇圧された水素を蓄圧する蓄圧部と、蓄圧部に蓄圧された水素を充填対象に供給する供給部とを備えて、
前記蓄圧部が、少なくとも3つの蓄圧タンクを備え、そのうち第一の蓄圧タンクが第一蓄圧圧力域で水素を蓄圧する高圧バンクとして設定され、第二の蓄圧タンクが前記第一蓄圧圧力域よりも低い第二蓄圧圧力域で水素を蓄圧する低圧バンクとして設定され、第三の蓄圧タンクが前記第二蓄圧圧力域よりも低い第三蓄圧圧力域から前記第一蓄圧圧力域に圧力を回復する回復・待機バンクとして設定されており
前記供給部から最初の充填対象に水素を供給する際には、はじめに低圧バンクとして設定された前記第二の蓄圧タンクから第二蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第二の蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域になると、次に高圧バンクとして設定された前記第一の蓄圧タンクから第一蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第一の蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域になるまで水素を供給するように制御すると共に回復・待機バンクとして設定された前記第三の蓄圧タンクに対しては、予め前記昇圧部で昇圧された水素を第一蓄圧圧力域まで蓄圧するように供給しておくように制御して、
前記供給部から次の充填対象に水素を供給する際には、前記第三の蓄圧タンクが第一蓄圧圧力域で水素を蓄圧する高圧バンクとして設定され、前記第一蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域で水素を蓄圧する低圧バンクとして設定され、前記第二蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域から第一蓄圧圧力域に圧力を回復する回復・待機バンクとして設定されて、はじめに低圧バンクとして設定された第一の蓄圧タンクから第二蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第一の蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域になると、次に高圧バンクとして設定された第三の蓄圧タンクから第一蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第三の蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域になるまで水素を供給するように制御すると共に回復・待機バンクとして設定された第二の蓄圧タンクに対しては、予め前記昇圧部で昇圧された水素を第一蓄圧圧力域まで蓄圧するように供給しておくように制御する蓄圧部制御手段と、を備えた水素ステーションであって、
前記供給部の充填対象への水素供給は、前記蓄圧部と前記充填対象との圧力差を利用して水素を供給して、該蓄圧部と該充填対象との間で圧力が均衡すると水素の供給を終了する差圧充填で行い、
該差圧充填で、前記低圧バンクとして設定された蓄圧タンクから水素を供給している際に、水素を圧縮する圧縮部からも同時に水素を供給するように制御するアシスト制御手段を備えている
ことを特徴とする水素ステーション。
【請求項2】
前記アシスト制御手段は、前記供給部に対して前記蓄圧部からの水素の供給が終了した後も、該供給部に対して圧縮部からの水素を供給するように制御する
ことを特徴とする請求項1記載の水素ステーション。
【請求項3】
前記圧縮部は、前記水素を昇圧する昇圧部と兼用している
ことを特徴する請求項1又は2記載の水素ステーション。
【請求項4】
水素を昇圧する昇圧部と、昇圧部で昇圧された水素を蓄圧する蓄圧部と、蓄圧部に蓄圧された水素を充填対象に供給する供給部とを備えている水素ステーションの運転方法であって
前記蓄圧部には、少なくとも3つの蓄圧タンクが備えられ、そのうち第一の蓄圧タンクが第一蓄圧圧力域で水素を蓄圧する高圧バンクとして設定され、第二の蓄圧タンクが前記第一蓄圧圧力域よりも低い第二蓄圧圧力域で水素を蓄圧する低圧バンクとして設定され、第三の蓄圧タンクが前記第二蓄圧圧力域よりも低い第三蓄圧圧力域から前記第一蓄圧圧力域に圧力を回復する回復・待機バンクとして設定されており
前記供給部から最初の充填対象に水素を供給する第1水素供給工程では、はじめに低圧バンクとして設定された前記第二の蓄圧タンクから第二蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第二の蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域になると、次に高圧バンクとして設定された前記第一の蓄圧タンクから第一蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第一の蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域になるまで水素を供給するようにすると共に回復・待機バンクとして設定された前記第三の蓄圧タンクに対しては、予め前記昇圧部で昇圧された水素を第一蓄圧圧力域まで蓄圧するように供給しておくようにして、
前記供給部から次の充填対象に水素を供給する第2水素供給工程では、前記第三の蓄圧タンクが第一蓄圧圧力域で水素を蓄圧する高圧バンクとして設定され、前記第一蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域で水素を蓄圧する低圧バンクとして設定され、前記第二蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域から第一蓄圧圧力域に圧力を回復する回復・待機バンクとして設定されて、はじめに低圧バンクとして設定された第一の蓄圧タンクから第二蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第一の蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域になると、次に高圧バンクとして設定された前記第三の蓄圧タンクから第一蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第三の蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域になるまで水素を供給するようにすると共に回復・待機バンクとして設定された第二の蓄圧タンクに対しては、予め前記昇圧部で昇圧された水素を第一蓄圧圧力域まで蓄圧するように供給しておくようにして、
前記第1水素供給工程と前記第2水素供給工程での、前記供給部からの充填対象への水素供給は、前記蓄圧部と前記充填対象との圧力差を利用して水素を供給して、該蓄圧部と該充填対象との間で圧力が均衡すると水素の供給を終了する差圧充填で行い、
該差圧充填で、前記低圧バンクとして設定された蓄圧タンクから水素を供給している際に、水素を圧縮する圧縮部からも同時に、前記供給部に対して水素を供給するようにした
ことを特徴とする水素ステーションの運転方法。
【請求項5】
前記供給部に対して前記蓄圧部から水素を供給が終了した後も、該供給部に対して圧縮部からの水素を供給する
ことを特徴とする請求項4記載の水素ステーションの運転方法。
【請求項6】
前記圧縮部は、前記昇圧部と兼用されて、前記供給部に水素を供給する
ことを特徴とする請求項4又は5記載の水素ステーションの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃料電池自動車等の充填対象に水素を供給する水素ステーション、及びその水素ステーションの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、燃料電池自動車等の充填対象に水素を供給する水素ステーションにおいては、水素を昇圧する昇圧部と、その昇圧された水素を蓄圧する蓄圧部と、その蓄圧部等に蓄圧された水素を充填対象に供給する供給部と、を備えている。
【0003】
こうした水素ステーションの普及を図るためには、水素ステーションの管理維持コストを低減する必要がある。そして、この管理維持コストとして大きなものとして、水素を蓄圧する蓄圧部で使用される蓄圧器たる蓄圧タンクの交換費用がある。そこで、蓄圧タンクの交換回数をできるだけ少なくすることが求められる。
【0004】
この蓄圧タンクには、耐久性から使用可能な蓄圧サイクルの総数に上限値が設定されており、この蓄圧サイクルの総数が上限値を超える前に交換しなければならない。こうしたことから、交換回数を少なくするため、この蓄圧サイクルの総数をいかに少なくするかが問題となる。
【0005】
この問題に対して、下記特許文献1においては、複数の蓄圧タンクを準備して、その蓄圧タンクの供給時の圧力変化の幅に差を設けて、例えば、4つの蓄圧タンクに、低圧バンク、中圧バンク、高圧バンク、さらに圧力回復(・待機)バンク、という4つの役割を持たせて、供給回ごとに、その蓄圧タンクの役割を順に変更していく、いわゆる「バンクローテーション」方式という運転方法で、水素ステーションを運転する技術が提案されている。
【0006】
この特許文献1のように「バンクローテーション」方式で水素ステーションを運転すると、例えば、各蓄圧タンクに4つの役割を持たせた場合、各蓄圧タンクの蓄圧する回数が、4回の供給回毎に1回の蓄圧(圧力回復)をするだけで良いため、供給回毎に全ての蓄圧タンクを蓄圧する場合に比較して、蓄圧サイクルの総数を1/4にすることができる。このため、この「バンクローテーション」方式で運転すると、蓄圧タンクの交換費用を削減でき、水素ステーションの管理維持コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-84902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この「バンクローテーション」方式で水素ステーションを運転する場合には、通常、低圧バンクの役割を持った蓄圧タンクから順番に、燃料電池自動車等の充填対象側のタンク(以下、充填タンク)に水素を供給して行くが、このときの水素の供給は、いわゆる「差圧充填」で行われる。
【0009】
この「差圧充填」とは、蓄圧タンクと充填タンクとの圧力差を利用して水素を供給して、蓄圧タンクと充填タンクとの間で圧力が均衡すると、水素の供給を終了するという水素の充填方法である。
【0010】
例えば、仮に、蓄圧タンクと充填タンクの容量が同じであるとして、充填前、蓄圧タンクが100MPaで充填タンクが0MPaの場合、蓄圧タンクも充填タンクも共に約50MPaで圧力が均衡して、水素の供給(充填)が終了することになる。また、蓄圧タンクが60MPaで、充填タンクが0MPaの場合には、蓄圧タンクも充填タンクも共に約30MPaで圧力が均衡して、水素の供給(充填)が終了することになる。こうした圧力差を利用して水素を供給する充填方法が「差圧充填」である。
【0011】
そして、こうした差圧充填で水素を供給すると、上記のように、充填前の蓄圧タンクの圧力値が低い方が、圧力が均衡して水素充填が終了するときの圧力値が低くなるという現象が生じる。
【0012】
こうしたことから、差圧充填によって「バンクローテーション」方式で水素ステーションを運転すると、新たな問題が生じることになる。それは、「バンクローテーション」方式では、低圧バンクの蓄圧タンクの圧力値が通常の蓄圧タンクの圧力値よりも低いことから、充填終了後の圧力値が通常の蓄圧タンクの圧力値よりも低くなってしまうという問題である。
【0013】
このように、低圧バンクの蓄圧タンクの充填終了時の圧力値が低くなってしまうと、その後、圧力回復バンクとして蓄圧タンクに水素を昇圧して蓄圧する場合、圧力回復する際の昇圧する圧力値(最大圧力値)までの圧力差、すなわち「圧力変動の幅(圧力振幅)」が、従来よりも大きくなってしまい、蓄圧タンクのいわゆるS-N線図(応力-繰返し数線図)の繰り返し回数の回数を低下させてしまうという新たな問題を招来してしまうのである。
【0014】
すなわち、「バンクローテーション」方式によって、蓄圧サイクルの総数を、少なくしたにも関わらず、「圧力変動の幅(圧力振幅)」が、従来の方式に比べて大きくなってしまうため、結果的に、蓄圧タンクに大きな負担を与えることになり、蓄圧タンクのS-N線図の繰り返し回数の回数を低下させてしまい、バンクローテーション方式の蓄圧タンクの交換回数を少なくするという目標を、充分に果たせない可能性があるのである。
【0015】
実際、蓄圧タンクの設計を行なう場合、設計の前提とした圧力変動の幅(圧力振幅)の範囲内に、実際の圧力変動の幅が入っていれば、圧力変動の幅(圧力振幅)が大きかったとしても、蓄圧タンクの交換回数を変える必要はない。しかし、「バンクローテーション」方式では、前述のように、蓄圧タンクの圧力変動の幅(圧力振幅)がかなり大きくなってしまうので、設計の前提とした圧力変動の幅を超過してしまう可能性がある。このように、設計の前提とした圧力変動の幅が大きくなると、蓄圧タンクの交換回数を増やす必要が生じたり、また、疲労性能を高めた高価な蓄圧タンクを準備しなければならないという問題も生じ得る。
【0016】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、いわゆるバンクローテーション方式で運転される水素ステーション、及びその水素ステーションの運転方法に関し、低圧バンクの蓄圧タンクの充填終了時の圧力値が低くなることを防いで、蓄圧タンクの交換回数を少なくするという目標を確実に達成できる水素ステーション、及びその水素ステーションの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
その目的を達成するために、この発明では、いわゆるバンクローテーション方式で運転される水素ステーション及びその水素ステーションの運転方法であって、水素の供給をバンクローテンション方式で運転される蓄圧タンクだけではなくて、同時に、水素を圧縮する圧縮機からも行うようにすることで、低圧バンクの蓄圧タンクの充填終了時の圧力値が低くなることを防いでいる。
【0018】
具体的に第1の発明では、水素を昇圧する昇圧部と、昇圧部で昇圧された水素を蓄圧する蓄圧部と、蓄圧部に蓄圧された水素を充填対象に供給する供給部とを備えて、前記蓄圧部が、少なくとも3つの蓄圧タンクを備え、そのうち第一の蓄圧タンクが第一蓄圧圧力域で水素を蓄圧する高圧バンクとして設定され、第二の蓄圧タンクが前記第一蓄圧圧力域よりも低い第二蓄圧圧力域で水素を蓄圧する低圧バンクとして設定され、第三の蓄圧タンクが前記第二蓄圧圧力域よりも低い第三蓄圧圧力域から前記第一蓄圧圧力域に圧力を回復する回復・待機バンクとして設定されており、前記供給部から最初の充填対象に水素を供給する際には、はじめに低圧バンクとして設定された前記第二の蓄圧タンクから第二蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第二の蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域になると、次に高圧バンクとして設定された前記第一の蓄圧タンクから第一蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第一の蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域になるまで水素を供給するように制御すると共に回復・待機バンクとして設定された前記第三の蓄圧タンクに対しては、予め前記昇圧部で昇圧された水素を第一蓄圧圧力域まで蓄圧するように供給しておくように制御して、前記供給部から次の充填対象に水素を供給する際には、前記第三の蓄圧タンクが第一蓄圧圧力域で水素を蓄圧する高圧バンクとして設定され、前記第一蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域で水素を蓄圧する低圧バンクとして設定され、前記第二蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域から第一蓄圧圧力域に圧力を回復する回復・待機バンクとして設定されて、はじめに低圧バンクとして設定された第一の蓄圧タンクから第二蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第一の蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域になると、次に高圧バンクとして設定された第三の蓄圧タンクから第一蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第三の蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域になるまで水素を供給するように制御すると共に回復・待機バンクとして設定された第二の蓄圧タンクに対しては、予め前記昇圧部で昇圧された水素を第一蓄圧圧力域まで蓄圧するように供給しておくように制御する蓄圧部制御手段と、を備えた水素ステーションであって、前記供給部の充填対象への水素供給は、前記蓄圧部と前記充填対象との圧力差を利用して水素を供給して、該蓄圧部と該充填対象との間で圧力が均衡すると水素の供給を終了する差圧充填で行い、該差圧充填で、前記低圧バンクとして設定された蓄圧タンクから水素を供給している際に、水素を圧縮する圧縮部からも同時に水素を供給するように制御するアシスト制御手段を備えているものである。
【0019】
この構成によれば、蓄圧部制御手段によって、少なくとも3つの蓄圧タンクが、第一の蓄圧タンク、第二の蓄圧タンク、第三の蓄圧タンクとして、充填対象ごとに順番に蓄圧圧力域を変化させて、供給部から充填対象に水素を供給することで、複数の蓄圧タンクがいわゆるバンクローテンション方式で運転されることになる。そして、同じ供給部に対して水素を圧縮する圧縮部からも同時に水素を供給されることで、供給部には、水素がアシスト供給されることになる。
【0020】
このため、蓄圧タンクからだけではなく、圧縮部からも同時に、充填対象に水素が供給されるため、充填対象には蓄圧タンクからだけよりも多くの水素が供給されることになり、差圧充填した際のタンク圧力が均衡する圧力値(充填終了時の圧力値)を、蓄圧タンクから水素を供給するだけの場合よりも、高くすることができる。
【0021】
よって、バンクローテンション方式によると低下してしまう、低圧バンクの蓄圧タンクの充填終了時の圧力値を、できるだけ高くすることができる。
【0022】
なお、蓄圧タンクの数については、3つ以上であれば、4つであっても、5つであっても良く、各蓄圧タンクが、ローテーションで役割を変化させるものであれば、特に限定するものではない。
【0023】
さらに、アシスト制御手段で制御される水素を圧縮する圧縮部については、このアシスト制御のためだけに水素を圧縮するようにしても良いし、他の機能のために水素を圧縮するように構成してもよい。
【0024】
また、水素を充填する充填対象については燃料電池自動車が考えられるが、その他、水素を燃料とする燃焼器具や線路を走行する軌道走行車等であってもよい。
【0025】
第2の発明では、前記アシスト制御手段は、前記供給部に対して前記蓄圧部からの水素の供給が終了した後も、該供給部に対して圧縮部からの水素を供給するように制御してい
るものである。
【0026】
この構成によれば、蓄圧部からの水素の供給が終了した後も、圧縮部からの水素が供給されるため、蓄圧部で蓄圧タンクの最大圧力値をさほど高めることなく、充填対象に対して高い圧力の水素を供給することができる。
【0027】
このため、蓄圧タンクの最大圧力値を高くする必要がなく、圧力変動の幅(圧力振幅)をより小さくすることができる。
【0028】
よって、蓄圧タンクの圧力振幅をより小さくすることで、蓄圧タンクの負担を小さくすることができ、蓄圧タンクの耐久性をより高めることができる。
【0029】
第3の発明では、前記圧縮部は、前記水素を昇圧する昇圧部と兼用するようにしているものである。
【0030】
この構成によれば、水素を圧縮する圧縮部と水素を昇圧する昇圧部とを、一つの圧縮手段(圧縮機)で兼用することにより、別々に設定するよりも、設備コストを削減できる。
【0031】
よって、水素ステーションを、設置維持管理する際のコストをさらに低減することができる。
【0032】
第4の発明では、水素を昇圧する昇圧部と、昇圧部で昇圧された水素を蓄圧する蓄圧部と、蓄圧部に蓄圧された水素を充填対象に供給する供給部とを備えている水素ステーションの運転方法であって、前記蓄圧部には、少なくとも3つの蓄圧タンクが備えられ、そのうち第一の蓄圧タンクが第一蓄圧圧力域で水素を蓄圧する高圧バンクとして設定され、第二の蓄圧タンクが前記第一蓄圧圧力域よりも低い第二蓄圧圧力域で水素を蓄圧する低圧バンクとして設定され、第三の蓄圧タンクが前記第二蓄圧圧力域よりも低い第三蓄圧圧力域から前記第一蓄圧圧力域に圧力を回復する回復・待機バンクとして設定されており
前記供給部から最初の充填対象に水素を供給する第1水素供給工程では、はじめに低圧バンクとして設定された前記第二の蓄圧タンクから第二蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第二の蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域になると、次に高圧バンクとして設定された前記第一の蓄圧タンクから第一蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第一の蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域になるまで水素を供給するようにすると共に回復・待機バンクとして設定された前記第三の蓄圧タンクに対しては、予め前記昇圧部で昇圧された水素を第一蓄圧圧力域まで蓄圧するように供給しておくようにして、前記供給部から次の充填対象に水素を供給する第2水素供給工程では、前記第三の蓄圧タンクが第一蓄圧圧力域で水素を蓄圧する高圧バンクとして設定され、前記第一蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域で水素を蓄圧する低圧バンクとして設定され、前記第二蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域から第一蓄圧圧力域に圧力を回復する回復・待機バンクとして設定されて、はじめに低圧バンクとして設定された第一の蓄圧タンクから第二蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第一の蓄圧タンクが第三蓄圧圧力域になると、次に高圧バンクとして設定された前記第三の蓄圧タンクから第一蓄圧圧力域の水素の供給をして、該第三の蓄圧タンクが第二蓄圧圧力域になるまで水素を供給するようにすると共に回復・待機バンクとして設定された第二の蓄圧タンクに対しては、予め前記昇圧部で昇圧された水素を第一蓄圧圧力域まで蓄圧するように供給しておくようにして、前記第1水素供給工程と前記第2水素供給工程での、前記供給部からの充填対象への水素供給は、前記蓄圧部と前記充填対象との圧力差を利用して水素を供給して、該蓄圧部と該充填対象との間で圧力が均衡すると水素の供給を終了する差圧充填で行い、該差圧充填で、前記低圧バンクとして設定された蓄圧タンクから水素を供給している際に、水素を圧縮する圧縮部からも同時に、前記供給部に対して水素を供給する運転方法である。
【0033】
この構成によれば、第1水素供給工程と第2水素供給工程とで、少なくとも3つの蓄圧タンクが、第一の蓄圧タンク、第二の蓄圧タンク、第三の蓄圧タンクとして、充填対象ごとに順番に蓄圧圧力域を変化させて、供給部から充填対象に水素を供給することで、複数の蓄圧タンクがいわゆるバンクローテンション方式で運転されることになる。そして、同じ供給部に対して水素を圧縮する圧縮部からも同時に水素を供給されることで、供給部には、水素がアシスト供給されることになる。
【0034】
このため、蓄圧タンクからだけではなく、圧縮部からも同時に、充填対象に水素が供給されるため、充填対象には蓄圧タンクからだけよりも多くの水素が供給されることになり
、差圧充填した際のタンク圧力が均衡する圧力値(充填終了時の圧力値)を、蓄圧タンクから水素を供給するだけの場合よりも、高くすることができる。
【0035】
よって、バンクローテンション方式によると低下してしまう、低圧バンクの蓄圧タンクの充填終了時の圧力値を、できるだけ高くすることができる。
【0036】
第5の発明では、前記供給部に対して前記蓄圧部から水素を供給が終了した後も、該供給部に対して圧縮部からの水素を供給する運転方法である。
【0037】
この構成によれば、蓄圧部からの水素の供給が終了した後も、圧縮部からの水素が供給されるため、蓄圧部で蓄圧タンクの最大圧力値をさほど高めることなく、充填対象に対して高い圧力の水素を供給することができる。
【0038】
このため、蓄圧タンクの最大圧力値を高くする必要がなく、圧力変動の幅(圧力振幅)をより小さくすることができる。
【0039】
よって、蓄圧タンクの圧力振幅をより小さくすることで、蓄圧タンクの負担を小さくすることができ、蓄圧タンクの耐久性をより高めることができる。
【0040】
第6の発明では、前記圧縮部は、前記昇圧部と兼用されて、前記供給部に水素を供給する運転方法である。
【0041】
この構成によれば、圧縮部が昇圧部と兼用されて、供給部に水素を供給するため、別途、のアシスト供給のための圧縮手段を設定しなくても良いため、設備コストを削減できる。
【0042】
よって、水素ステーションを、設置維持管理する際のコストをさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、蓄圧タンクからだけではなく、圧縮部からも同時に、充填対象に水素が供給されるため、充填対象には蓄圧タンクからだけよりも多くの水素が供給されることになり、差圧充填した際のタンク圧力が均衡する圧力値(充填終了時の圧力値)を、蓄圧タンクから水素を供給するだけの場合よりも、高くすることができる。
【0044】
よって、いわゆるバンクローテーション方式で運転される水素ステーション、及びその水素ステーションの運転方法に関し、低圧バンクの蓄圧タンクの充填終了後の圧力値が低くなることを防いで、蓄圧タンクの交換回数を少なくするという目標を確実に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の実施形態1に係る水素ステーションの全体構成を示すシステム構成図である。
図2】実施形態1に係る水素ステーションの運転状態を説明するフローチャートである。
図3】バンクローテーション方式の低圧バンク工程の概略図である。
図4】バンクローテーション方式の中圧バンク工程の概略図である。
図5】バンクローテーション方式の高圧バンク工程の概略図である。
図6】バンクローテーション方式の直充填工程の概略図である。
図7】バンクローテーション方式の昇圧回復工程の概略図である。
図8】FCVごとにバンクの役割が変化するバンクローテーション方式の表である。
図9】従来方式とバンクローテーション方式を比較する圧力変化のタイムチャートである。
図10】本発明の方式の効果を説明する圧力変化のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0047】
(実施形態1)
まず、図1を使って、本実施形態1の水素ステーションの全体構成について説明する。
【0048】
本実施形態の水素ステーションPは、図1のシステム構成図に示すように、内部に大量の水素を保有する保有部であるカードル1と、カードル1から取り出した水素を昇圧する昇圧部である圧縮機2と、その昇圧された水素を蓄圧する蓄圧部である複数の蓄圧タンク3と、その蓄圧タンク3で蓄圧された水素を充填対象である燃料電池自動車、いわゆるFCV(Fuel Cell Vehicle)に供給する供給部であるディスペンサー4とを備えている。
【0049】
そして、これらの構成部位は、それぞれ水素供給ライン5で接続されており、各水素供給ラインの途中に各電磁開閉弁6と各減圧弁7が設けられている。そして、これらの構成部位が適切に運転されるように各電磁開閉弁等を制御する制御部8が設けられている。
【0050】
この制御部8には、詳細には図示しないが、各種情報を取り込む情報入力部と、各種制御プログラムを記憶する記憶部と、取り込んだ情報を制御プログラムで演算する演算部と、演算部で得られた各制御信号を出力する出力部とを備えている。
【0051】
前記カードル1は、周知の容器で構成されており、内部に大量の水素を保有している。そして、このカードル1内部の圧力は、例えば約20MPaに設定されている。このカードル1の下流の第一水素供給ライン5aには、第一電磁開閉弁6aと第一減圧弁7aが設置されており、このうち、第一電磁開閉弁6aを制御部8からの開放信号によって開放することで、カードル1から下流に水素が取り出される。
【0052】
前記圧縮機2は、周知の圧縮ポンプ20で構成されており、例えば、約340Nm3/hの圧縮性能を有する圧縮ポンプ20で構成される。この圧縮機2によって、カードル1から取り出された水素は昇圧されて、高圧の水素が圧縮機2の下流の第二水素供給ライン5bに流される。そして、この第二水素供給ライン5bには、さらに第二電磁開閉弁6bと第二減圧弁7bが設置されており、このうち第二電磁開閉弁6bが制御部8からの開閉信号で開閉するように構成されている。
【0053】
前記複数の蓄圧タンク3a~3dは、それぞれ同じタンクで構成されており、例えば、ライナーを金属材料で構成してFRP材料で補強した複合蓄圧タンクで構成され、最高圧力が約82MPa、容量が約300リットルのタンク3a~3dの4つで構成される。これら4つの蓄圧タンク3a~3dは、例えば、上から蓄圧タンクA3a、蓄圧タンクB3b、蓄圧タンクC3c、蓄圧タンクD3dとして定義されて、それぞれの蓄圧タンク3a~3dには、昇圧された水素が蓄圧されるように構成されている。
【0054】
そして、これらの蓄圧タンク3a~3dは、圧力変化の変化幅を、例えば、82MPaから45MPaの範囲に設定されており、内部に蓄圧される水素の量によって、その圧力値が決まるようになっている。
【0055】
本実施形態のこれら複数の蓄圧タンク3a~3dは、各蓄圧タンクごとに、圧力値が異なるように制御されており、その圧力値も、充填対象の車ごとに変化する、いわゆる「バンクローテーション」方式で運転される。
【0056】
この「バンクローテーション」方式とは、複数の蓄圧タンク、例えば、4つの蓄圧タンク3a~3dを準備して、その蓄圧タンクごとに、供給のスタート時点の圧力値に差を設けて、各蓄圧タンク3a~3dに、低圧バンク、中圧バンク、高圧バンク、さらに回復・待機バンク、というそれぞれの役割を持たせて、その役割を供給回ごと(充填対象のFCVごと)に順に変更していく、という、水素ステーションPの運転方法である。
【0057】
この運転方法によると、例えば、4つの蓄圧タンク3a~3dに4つの役割を持たせた場合には、各蓄圧タンク3a~3dの昇圧する回数は、4回の供給回毎に1回の昇圧(圧力回復)だけで良いため、蓄圧サイクルの総数を少なくできるという効果が得られる。
【0058】
なお、この「バンクローテーション」方式の具体的な運転方法については、後述する。
【0059】
前記複数の蓄圧タンク3a~3dの一端には、各々水素を供給排出する分岐水素供給ライン9a~9dが接続されており、この分岐水素供給ライン9a~9dには各電磁開閉弁10a~10dと各減圧弁11a~11dが設けられている。例えば、上から、分岐水素供給ラインA9aには、電磁開閉弁A10aと減圧弁A11aが設けられて、分岐水素供給ラインB9bには、電磁開閉弁B10bと減圧弁B11bが設けられて、分岐水素供給ラインC9cには、電磁開閉弁C10cと減圧弁C11cが設けられて、分岐水素供給ラインD9dには、電磁開閉弁D10dと減圧弁D11dが設けられている。
【0060】
このうち、電磁開閉弁A10a~電磁開閉弁D10dは、制御部8から開閉制御信号によって開閉制御することにより、分岐水素供給ラインA9a~分岐水素供給ラインD9dから蓄圧タンクA3a~蓄圧タンクD3dに対して、水素を供給・排出できるように構成されている。
【0061】
なお、この分岐水素供給ラインAa~分岐水素供給ラインDdについては、それぞれ、供給用ラインと排出用ラインを別々設けて、それぞれのラインに、電磁開閉弁10と減圧弁11を設けるように構成してもよい。そのように構成した場合には、より緻密に水素の供給・排出制御を行なうことができる。
【0062】
前記ディスペンサー4は、前述の複数の蓄圧タンク3a~3d等から水素の供給を受けて、充填対象であるFCVに水素を充填するように構成されている。
【0063】
具体的には、このディスペンサー4の上流に、複数の分岐水素供給ライン9a~9dと第二水素供給ライン5bとを纏めるメイン水素供給ライン12が設けられ、このメイン水素供給ライン12から水素の供給を受けるように、メイン水素供給ライン12の中間位置に接続される第三水素供給ライン5cが設けられている。
【0064】
そして、前述のディスペンサー4には、FCVに接続される水素供給ホース13が設けられている。この水素供給ホース13の先端には、図示しないカプラを設けて、このカプラを介してFCVに水素供給ホース13を接続するようにしている。なお、このディスペンサー4には、図示しないものの、流量制御弁等を設けてFCVに供給する水素の流量や
流速等を制御するようにしている。
【0065】
また、ディスペンサー4には、図示しないが、FCV側の情報を検出する情報検出手段と、FCVとの情報交換を行なう情報通信手段等が設けられている。
【0066】
この情報検出手段と情報通信手段等で得られたFCV側の情報は、前記制御部8に通信回線等を介して送信される。そして、このFCV側の情報は、制御部8で後述する水素ステーションPの運転制御に用いられる。
【0067】
また、この制御部8には、図示はしないが、様々な部位や場所に設置されたセンサ等の検出手段からの検出情報が、多数入力されるように構成されている。
【0068】
次に、このように構成される水素ステーションPの運転方法について、図2の水素ステーションの運転制御フローチャートによって説明する。
【0069】
まず、S1で、ディスペンサー4に充填対象であるFCVを接続する。この接続は、水素供給ホース13の先端をFCVに接続して行なう。次に、S2で、FCVから車両情報を検出する。例えば、FCVの充填タンク(図示せず)のタンク容量やタンクの最高充填圧力、またタンクの種別等を検出する。また、同時に、現在の外部環境状況も検出する。例えば、外部圧力(大気圧)や、外気温等を検出する。
【0070】
そして、S3で、予め少量の水素をFCVの充填タンクに充填(噴射)する、いわゆるプレショット充填を行なう。このプレショット充填を行なうことで、現在のFCVの充填タンクの圧力及び内容量を検出する。
【0071】
その後、S4で、現在のFCVの充填タンクの圧力が所定値以下か、又は上限基準値以上かを判断する。この判断によって、今から充填するFCVの充填タンクが、充填に耐えうる適正な圧力状態かを判断する。すなわち、圧力が所定値以下の場合は、充填タンクが破損してタンク内部に高圧な水素を充填できないことが考えられる。又、圧力が上限基準値以上の場合は、充填タンクには既に高圧の水素が入っているため、これ以上の水素を充填できないことが考えられる。こうしたことから、水素を充填する前にこれらの判断を行なうのである。
【0072】
そして、このS4で、YESの判断がされた場合には、S5に移行して、水素の供給を中止する。具体的には、水素の供給を行わないようにする。そして、ディスペンサー4の表示部には、警告表示等を行い、作業者等に水素を供給できないことを認識させる。そして、その後は、そのまま、S50のリターンに移行して、制御は終了する。
【0073】
一方、S4で、NOの判断がされた場合には、S6に移行して、FCVの充填タンクの圧力が低圧バンクの圧力以下かを判断する。これは仮に、FCVの充填タンクの圧力が低圧バンクの圧力よりも高い場合には、差圧充填で水素を充填する際、低圧バンクから充填タンクに水素を供給できないため、予め、低圧バンクの圧力よりも充填バンクの圧力が低いかどうかを判断するのである。例えば、低圧バンクの圧力値が63MPaであれば、その63MPaよりFCVの充填バンクの圧力値が低いか否かを判断する。
【0074】
S6でYESと判断された場合は、S7に移行する。S7では、低圧バンクと圧縮機2の併用充填が行なわれる。この低圧バンクと圧縮機2の併用充填とは、低圧バンクに蓄圧された水素と、圧縮機2で圧縮された水素を、同時にFCVの充填タンクに充填する方法である。この低圧バンクと圧縮機の併用充填の詳細については、後述する。
【0075】
その後、S8で、FCVの充填タンクの圧力と外気温から決まる第一目標圧力まで低圧バンクで充填する。この第一目標圧力は、低圧バンクの圧力値よりも低い値で設定される。例えば、低圧バンクの圧力値が63MPaのときに45MPaに第一目標圧力が設定される。この第一目標圧力まで水素を充填すると、低圧バンクの圧力では、FCVの充填タンクの圧力と均衡して、水素を供給できなくなるため、低圧バンクによる充填を終了する。
【0076】
なお、この第一目標圧力に替えて、目標圧力上昇率(時間当たりの圧力上昇量)を所定の標準テーブルから算出して、その目標圧力上昇率の変動許容範囲内で、充填タンクの圧力が上昇するか否かを検出して、圧力上昇が鈍化して変動許容範囲を下回るような状態になった場合には、その直前で、低圧バンクによる充填を終了しても良い。
【0077】
そして、その後、S9に移行する。またS6でNOと判断された場合、すなわち、FCVの充填バンクの圧力が低圧バンクの圧力よりも高いと判断された場合も、S9に移行する。
【0078】
S9では、中圧バンクと圧縮機2の併用充填が行なわれる。この中圧バンクと圧縮機2の併用充填とは、中圧バンクに蓄圧された水素と、圧縮機2で圧縮された水素を、同時にFCVの充填タンクに充填する方法である。この中圧バンクと圧縮機2の併用充填の詳細についても、後述する。
【0079】
その後、S10で、FCVの充填タンクの圧力と外気温から決まる第二目標圧力まで中圧バンクで充填する。この第二目標圧力は、中圧バンクの圧力値よりも低い値で設定される。例えば、中圧バンクの圧力値が72MPaのときに、63MPaに第二目標圧力が設定される。この第二目標圧力まで水素を充填すると、中圧バンクの圧力では、FCVの充填タンクの圧力と均衡して、水素が供給できなくなるため、中圧バンクによる充填を終了する。
【0080】
なお、この第二目標圧力についても、この第二目標圧力に替えて、目標圧力上昇率(時間当たりの圧力上昇量)を所定の標準テーブルから算出して、その目標圧力上昇率の変動許容範囲内で、充填タンクの圧力が上昇するか否かを検出して、圧力上昇が鈍化して変動許容範囲を下回るような状態になった場合には、その直前で、中圧バンクによる充填を終了しても良い。
【0081】
そして、さらにその後、S11に移行する。このS11では、高圧バンクと圧縮機2の併用充填が行なわれる。この高圧バンクと圧縮機2の併用充填とは、高圧バンクに蓄圧された水素と、圧縮機2で圧縮された水素を、同時にFCVの充填タンクに充填する方法である。この高圧バンクと圧縮機2の併用充填の詳細についても、後述する。
【0082】
その後、S12で、FCVの充填タンクの圧力と外気温から決まる第三目標圧力まで高圧バンクで充填する。この第三目標圧力は、高圧バンクの圧力値よりも低い値で設定される。例えば、高圧バンクの圧力値が82MPaのときに72MPaに第三目標圧力が設定される。この第三目標圧力まで水素を充填すると、高圧バンクの圧力では、FCVの充填タンクの圧力と均衡して、水素が供給できなくなるため、高圧バンクによる充填を終了する。
【0083】
なお、この第三目標圧力についても、この第三目標圧力に替えて、目標圧力上昇率(時間当たりの圧力上昇量)をある標準テーブルから算出して、その目標圧力上昇率の変動許容範囲内で、充填タンクの圧力が、上昇するか否かを検出して、圧力上昇が鈍化して変動許容範囲を下回るような状態になった場合には、その直前で、高圧バンクによる充填を終
了しても良い。
【0084】
その後、S13で、最終目標圧まで、圧縮機2で圧縮された水素だけで充填(直充填)を行なう。例えば、これまでの蓄圧タンクの充填によって、FCVの充填タンクに68MPaの水素が充填されていた場合には、最終目標圧の70MPaとなるまで、FCVの充填タンクに対して、圧縮機2で水素を圧縮供給する。この直充填の詳細についても、後述する。
【0085】
そして、これら一連の充填が終了すると、S14に移行して、ディスペンサー4からFCVを取り外す。これにより1台目のFCVの充填作業は終了する。
【0086】
その後、この水素ステーションPの制御方法では、S15に移行する。S15では、各4つの蓄圧タンク3a~3dの役割を順次送る。すなわち、低圧バンクは回復・待機バンクに役割が変わり、中圧バンクは低圧バンクに役割が変わり、高圧バンクは中圧バンクに役割が変わり、回復・待機バンクは高圧バンクに役割が変わる。このステップがあることで、次のFCVの充填時には、前回の役割と異なる次の役割で、各蓄圧タンク3a~3dが使われることになる。このように、FCVの充填ごとに蓄圧タンク3a~3dの役割がローテーションで変わるため、この運転方式を「バンクローテーション」方式というのである。
【0087】
そして、次にS16では、回復・待機バンクについて昇圧を開始する。この昇圧は前述の圧縮機2で行なう。この回復・待機バンクの昇圧の詳細についても、後述する。
【0088】
その後、S17で、昇圧途中にFCVが来たかを判断する。もし、FCVが来たら、YESとなり、S18に移行して圧縮機の昇圧を中断して、S1に戻り、次のFCVの水素充填に備える。これは、1つの圧縮機2を、回復・待機バンクの昇圧用として用いつつ、FCVの充填タンクへの水素供給(充填)にもアシスト手段としても用いている(兼用している)ためである。こうして、昇圧の途中に、次のFCVが来たら、回復・待機バンクの昇圧を中断して、FCVへの水素充填(アシスト手段としての充填)を優先する。
【0089】
S17でNOと判断された場合、すなわち昇圧の途中にFCVが来なかった場合には、S19に移行して、回復・待機バンクである蓄圧タンク3a~3dの最大値である、例えば82MPaまで昇圧する。
【0090】
その後、回復・待機バンクの昇圧が終了すると、S50のリターンに移行して、制御は終了する。
【0091】
次に、図3図7の概略図で、前述した「低圧バンクと圧縮機の併用充填」と、「中圧バンクと圧縮機の併用充填」と、「高圧バンクと圧縮機の併用充填」と、「圧縮機による直充填」と、「回復・待機バンクの昇圧」について、詳述する。
【0092】
図3は、バンクローテーション方式の低圧バンク工程(低圧バンクから充填する工程)を示す概略図である。すなわち、左上の表に示すように、複数の蓄圧タンク3a~3dのうち低圧バンクを使って、例えば63MPaから45MPaまで、水素を充填する工程である。そして、この低圧バンク工程が、「低圧バンクと圧縮機の併用充填」の工程でもある。
【0093】
この図3に示すように、例えば、蓄圧タンクA3aを低圧バンクとして使用する場合には、蓄圧タンクA3a内の水素を、FCVの充填タンク(図示ぜず)へ供給できるように、制御部8(図1参照)から、電磁開閉弁A10aへ開放制御信号を送り、電磁開閉弁A
10aを開放する。また、それと並行して圧縮機2からも水素をFCVの充填タンクへ供給できるように、制御部8から、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bへ開放制御信号を送り、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bを開放する。
【0094】
このように制御することで、低圧バンクである蓄圧タンクA3aからは、分岐水素供給ラインA9aとメイン水素供給ライン12と第三水素供給ライン5cを通じて、ディスペンサー4に水素が供給される。また、圧縮機2からも、カードル1の水素が圧縮されて、第一水素供給ライン5aと第二水素供給ライン5bとメイン水素供給ライン12と第三水素供給ライン5cを通じて、ディスペンサー4に供給される(太字が水素の流れているライン)。こうして、低圧バンクと圧縮機2の併用充填が行なわれる。
【0095】
そして、この低圧バンクと圧縮機2からそれぞれディスペンサー4に供給される水素が、水素供給ホース13を通じてFCVに供給される。このとき、FCVの充填タンクの圧力が、例えば2MPaから40MPaまで上昇するように、水素が充填される。
【0096】
このように、低圧バンクだけではなく圧縮機2からも水素が供給されることによって、単に低圧バンクからだけ水素を供給される場合よりも早い時間で水素を充填することができる。また、低圧バンクだけでなく、圧縮機2でアシスト的に水素を供給することで、低圧バンクだけで差圧充填するよりも、低圧バンクの下限圧を高めることができる。このことについては、後ほど詳述する。
【0097】
こうして、低圧バンク工程で低圧バンクと圧縮機2の併用充填が終わると、次に、中圧バンク工程で中圧バンクと圧縮機2の併用充填が開始される。
【0098】
図4は、バンクローテーション方式の中圧バンク工程(中圧バンクから充填する工程)を示す概略図である。すなわち、左上の表に示すように、複数の蓄圧タンクのうち中圧バンクを使って、例えば72MPaから63MPaまで、水素を充填する工程である。そして、この中圧バンク工程が、「中圧バンクと圧縮機の併用充填」の工程でもある。
【0099】
この図4に示すように、例えば、蓄圧タンクB3bを中圧バンクとして使用する場合には、蓄圧タンクB3b内の水素を、FCVの充填タンクへ供給できるように、制御部8(図1参照)から、電磁開閉弁B10bへ開放制御信号を送り、電磁開閉弁B10bを開放する。また、それと並行して圧縮機2からも水素をFCVの充填タンクへ供給できるように、制御部8から、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bへ開放制御信号を送り、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bを開放する。なお、これらの信号に先立って、低圧バンクからの水素供給を停止し、低圧バンク側への水素の流入(逆流)を防ぐため、電磁開閉弁A10aに閉鎖信号を送り、電磁開閉弁A10aを閉鎖しておく。
【0100】
このように制御することで、中圧バンクである蓄圧タンクB3bからは、分岐水素供給ラインB9bとメイン水素供給ライン12と第三水素供給ライン5cを通じて、ディスペンサー4に水素が供給される。また、圧縮機2からは、カードル1からの水素が圧縮されて、第一水素供給ライン5aと第二水素供給ライン5bとメイン水素供給ライン12と第三水素供給ライン5cを通じて、ディスペンサー4に供給される(図3同様に、太字が水素の流れているライン)。こうして、中圧バンクと圧縮機2の併用充填が行なわれる。
【0101】
そして、この中圧バンクと圧縮機2からそれぞれディスペンサー4に供給される水素が、水素供給ホース13を通じてFCVに供給される。このとき、FCVの充填タンクの圧力が、例えば40MPaから58MPaまで上昇するように、水素が充填される。
【0102】
このように、また、中圧バンクだけではなく圧縮機2からも水素が供給されることによ
って、単に中圧バンクからだけ水素を供給される場合よりも早い時間で水素を充填することができる。また、この場合も、中圧バンクだけでなく、圧縮機2でアシスト的に水素を供給することで、中圧バンクだけで差圧充填するよりも、中圧バンクの下限圧を高めることができる。
【0103】
こうして、中圧バンク工程で中圧バンクと圧縮機2の併用充填が終わると、次に、高圧バンク工程で高圧バンクと圧縮機2の併用充填が開始される。
【0104】
図5は、バンクローテーション方式の高圧バンク工程(高圧バンクから充填する工程)を示す概略図である。すなわち、左上の表に示すように、複数の蓄圧タンクのうち高圧バンクを使って、例えば82MPaから72MPaまで、水素を充填する工程である。そして、この高圧バンク工程が、「高圧バンクと圧縮機の併用充填」の工程でもある。
【0105】
この図5に示すように、例えば、蓄圧タンクC3cを高圧バンクとして使用する場合には、蓄圧タンクC3c内の水素を、FCVの充填タンクへ供給できるように、制御部8(図1参照)から、電磁開閉弁C10cへ開放制御信号を送り、電磁開閉弁C10cを開放する。また、それと並行して圧縮機2からも水素をFCVの充填タンクへ供給できるように、制御部8から、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bへ開放制御信号を送り、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bを開放する。なお、これらの信号に先立って、中圧バンクからの水素供給を停止し、中圧バンク側への水素の流入(逆流)を防ぐため、電磁開閉弁B10bに閉鎖信号を送り、電磁開閉弁B10bを閉鎖しておく。
【0106】
このように制御することで、高圧バンクである蓄圧タンクC3cからは、分岐水素供給ラインC9cとメイン水素供給ライン12と第三水素供給ライン5cを通じて、ディスペンサー4に水素が供給される。また、圧縮機2からは、カードル1の水素が圧縮されて、第一水素供給ライン5aと第二水素供給ライン5bとメイン水素供給ライン12と第三水素供給ライン5cを通じて、ディスペンサー4に供給される(図3、4同様に、太字が水素の流れているライン)。こうして、高圧バンクと圧縮機2の併用充填が行なわれる。
【0107】
そして、この高圧バンクと圧縮機2からそれぞれディスペンサー4に供給される水素が、水素供給ホース13を通じてFCVに供給される。このとき、FCVの充填タンクの圧力が、例えば58MPaから68MPaまで上昇するように、水素が充填される。
【0108】
このように、また、高圧バンクだけではなく圧縮機2からも水素が供給されることによって、単に高圧バンクからだけ水素を供給される場合よりも早い時間で水素を充填することができる。また、この場合も、高圧バンクだけでなく、圧縮機2でアシスト的に水素を供給することで、高圧バンクだけで差圧充填するよりも、高圧バンクの下限圧を高めることができる。
【0109】
こうして、高圧バンク工程で高圧バンクと圧縮機2の併用充填が終わると、次に、圧縮機2だけの充填、すなわち、直充填工程が開始される。
【0110】
図6は、バンクローテーション方式の直充填工程(圧縮機2だけの充填工程)を示す概略図である。すなわち、左上の表に示すように、蓄圧タンクからは充填せず、圧縮機だけで水素を充填する工程である。この工程が「圧縮機による直充填」の工程でもある。
【0111】
この図6に示すように、例えば、圧縮機2だけで水素を充填する場合には、圧縮機2から水素をFCVの充填タンクへ供給できるように、制御部8(図1参照)から、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bへ開放制御信号を送り、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bを開放する。なお、これらの信号に先立って、高圧バンクからの水素供給を停
止し、高圧バンク側への水素の流入(逆流)を防ぐため、電磁開閉弁C10cに閉鎖信号を送り、電磁開閉弁C10cを閉鎖しておく。
【0112】
このように制御することで、蓄圧タンク3a~3dからは、ディスペンサー4に対して全く水素が供給されない一方、圧縮機2からは、カードル1の水素が圧縮されて、第一水素供給ライン5aと第二水素供給ライン5bとメイン水素供給ライン12と第三水素供給ライン5cを通じて、ディスペンサー4に供給される(図3、4、5同様に、太字が水素の流れているライン)。
【0113】
そして、この圧縮機2からディスペンサー4に供給される水素が、水素供給ホース13を通じてFCVに供給される。このとき、FCVの充填タンクの圧力が、例えば68MPaから70MPaまで上昇するように、水素が充填される。
【0114】
このように、圧縮機2からだけで水素が充填される直充填モードを有することによって、最高圧力値の値が高い高価な蓄圧タンクを準備しなくても、FCVの充填タンクを確実に満タンにすることができる。
【0115】
こうして、直充填工程でFCVの充填タンクが満タンになると、FCVへの水素充填の作業が終了する。そしてその後、昇圧回復工程で、回復・待機バンクの昇圧が開始される。
【0116】
図7は、バンクローテーション方式の昇圧回復工程(圧縮機で回復・待機バンクを昇圧する工程)を示す概略図である。すなわち、左上の表に示すように、回復・待機バンクを昇圧することで、例えば、回復・待機バンクが45MPaから82MPaに昇圧するように、水素を供給する工程である。
【0117】
なお、図7においては、図6等と異なり、蓄圧タンクAが、低圧バンクから回復・待機バンクに変更されている。このように役割が変更されたのは、FCV一台を充填したことで、各蓄圧タンクの役割が、ローテーションで変わったためである(図2のS15参照)。そして、この工程が「回復・待機バンクの昇圧」の工程である。
【0118】
この図7に示すように、回復・待機バンクを昇圧する場合には、圧縮機2で昇圧した水素を回復・待機バンクに供給できるように、制御部8(図1参照)から、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bへ開放制御信号を送り、第一電磁開閉弁6aと第二電磁開閉弁6bを開放する。また、電磁開閉弁A10aへ開放信号を送り、電磁開閉弁A10aも開放する。なお、それらの信号に先立って、ディスペンサー4には、図示しない開閉弁を閉鎖する閉鎖信号を送り、ディスペンサー4側に水素が流れ込まないように制御する。
【0119】
このように制御することで、蓄圧タンクA3aの回復・待機バンクには、圧縮機2で昇圧された水素が、第一水素供給ライン5aと第二水素供給ライン5bとメイン水素供給ライン12、さらに、分岐水素供給ラインA9aを通じて供給される(他の図同様に、太字が水素の流れているライン)。
【0120】
こうすることで、蓄圧タンクA3aには、高圧の水素を充填することができ、前回のFCVへの水素充填で低下した圧力を高圧に昇圧することができる。
【0121】
こうして、蓄圧タンクA3aの回復・待機バンクを昇圧することによって、次回のFCVの充填時には蓄圧タンクA3aに高圧バンクとして役割を持たせることができる。
【0122】
以上の流れによって、一連のバンクローテーション方式の各工程が終了する。
【0123】
図8に、このバンクローテーション方式でFCVごとに蓄圧タンクの役割が変化することを現す表を示す。
【0124】
この表の見方を説明すると、縦軸が水素の供給源である各蓄圧タンクと圧縮機を示し、横軸が水素を充填するFCVの各順番の台数を示している。また、各マス目内に記載される数値は、各蓄圧タンクの圧力変化を示したものであり、カッコ内に記載される数値は、各工程におけるFCV側の充填タンクの圧力変化を示したものである。
【0125】
まず、1台目のFCV時では、蓄圧タンクA3aが、充填順が1番目の低圧バンクとして機能し、蓄圧タンクB3bが、充填順が2番目の中圧バンクとして機能し、蓄圧タンクC3が、充填順が3番目の高圧バンクとして機能し、さらに、圧縮機2が、充填順が4番目の直充填する手段として機能する。なお、この1台目のFCV時には、蓄圧タンクD3dは、回復・待機バンクとしてFCVの充填には関与しない。
【0126】
そして、1台目のFCVと2台目のFCVの間には、低圧バンクだった蓄圧タンクA3aを昇圧するため、蓄圧タンクA3aに対して圧縮水素を供給して昇圧する工程が行われる。なお、この昇圧は圧縮機2で行われる。
【0127】
次に、2台目のFCV時では、蓄圧タンクB3bが、充填順が1番目の低圧バンクとして機能し、蓄圧タンクC3cが、充填順が2番目の中圧バンクとして機能し、蓄圧タンクD3dが、充填順が3番目の高圧バンクとして機能し、さらに、圧縮機2が、充填順が4番目の直充填する手段として機能する。なお、この2台目のFCV時には、蓄圧タンクA3aは、回復・待機バンクとしてFCVの充填には関与しない。
【0128】
そして、2台目のFCVと3台目のFCVの間には、低圧バンクだった蓄圧タンクB3bを昇圧するため、蓄圧タンクB3bに対して圧縮水素を供給して昇圧する工程が行われる。なお、この昇圧も圧縮機2で行われる。
【0129】
また、3台目のFCV時には、蓄圧タンクC3cが、充填順が1番目の低圧バンクとして機能し、蓄圧タンクD3dが、充填順が2番目の中圧バンクとして機能し、蓄圧タンクA3aが、充填順が3番目の高圧バンクとして機能し、さらに、圧縮機2が、充填順が4番目の直充填する手段として機能する。なお、この3台目のFCV時には、蓄圧タンクB3bは、回復・待機バンクとしてFCVの充填には関与しない。
【0130】
そして、3台目のFCVと4台目のFCVの間には、低圧バンクだった蓄圧タンクC3cを昇圧するため、蓄圧タンクC3cに対して圧縮水素を供給して昇圧する工程が行われる。なお、この昇圧も圧縮機2で行われる。
【0131】
最後、4台目のFCV時には、蓄圧タンクD3dが、充填順が1番目の低圧バンクとして機能し、蓄圧タンクA3aが、充填順が2番目の中圧バンクとして機能し、蓄圧タンクB3bが、充填順が3番目の高圧バンクとして機能し、さらに、圧縮機2が、充填順が4番目の直充填する手段として機能する。なお、この4台目のFCV時には、蓄圧タンクC3cは、回復・待機バンクとしてFCVの充填には関与しない。
【0132】
そして、図示しないが、4台目のFCVと5台目のFCVの間には、低圧バンクだった蓄圧タンクD3dを昇圧するため、蓄圧タンクD3dに対して圧縮水素を供給して昇圧する工程が行われる。なお、この昇圧も圧縮機2で行われる。
【0133】
このように、バンクローテーション方式によると、FCVの各台ごとで蓄圧タンク3a
~3dの役割が順番に変わって行き、蓄圧タンク3a~3dの昇圧回数については、FCV4台を充填する間に1回しか行わないことが分かる。すなわち、蓄圧タンク3a~3dの役割が順番に1台ごとに変わって行き、4台充填する間に1回しか昇圧を行わないのである。
【0134】
このことを、さらに図9を使って詳細に説明する。この図は、各バンクの圧力変化を、縦軸を圧力値、横軸を時間として表したものである。この図において、従来方式では、実線が1つ目の蓄圧タンク、点線が2つ目の蓄圧タンク、1点鎖線が3つ目の蓄圧タンクの圧力変化を示したもので、細線がFCVの圧力変化を示したものである。一方、バンクローテーション方式では、実線が蓄圧タンクA3a、点線が蓄圧タンクB3b、1点鎖線が蓄圧タンクC3c、破線が蓄圧タンクD3dの圧力変化をそれぞれ示したもので、細線がFCVの充填タンクの圧力変化を示したものである。
【0135】
まず、従来方式では、例えば、3つの蓄圧タンクを備える場合、通常3つの蓄圧タンクは、全て最大圧力まで充填されているため、最初に、全ての蓄圧タンクの圧力値は最大となっている。
【0136】
そして、まず、1台目のFCVに対して充填が始まると、1つ目の蓄圧タンクから水素の充填が開始され、FCVの充填タンクの圧力とほぼ均衡するまで充填が行なわれる。これは、水素の充填が「差圧充填」で行われるため、圧力が均衡した時点でそれ以上の圧力を充填することができないためである。
【0137】
次に、2つ目の蓄圧タンクから水素の充填が行なわれる。この2つ目の蓄圧タンクについても、FCVの充填タンクの圧力と蓄圧タンクの圧力が均衡した時点で充填が終了する。そして、最後に、3つ目の蓄圧タンクから水素が充填されて、FCVの充填タンクの圧力と蓄圧タンクの圧力が最終的に均衡するとFCVの充填が終了する。
【0138】
充填終了後には、次の2台目のFCVの充填に備えて、各蓄圧タンクに対して昇圧が行なわれる。具体的には、初めに3つ目に充填した蓄圧タンクから昇圧されて、次に2つ目に充填した蓄圧タンク、最後に1つ目に充填した蓄圧タンクが昇圧される。こうして、全ての蓄圧タンクが最大圧力まで昇圧される。
【0139】
このように、従来方式によると、1台充填するごとに全ての蓄圧タンクを昇圧するため、1回の供給回で1回の蓄圧(昇圧)が必要となり(黒い矢印と白い矢印参照)、耐久性に関連する「蓄圧サイクルの総数」が増加する。このため、蓄圧タンクの交換頻度が必然的に増加することになる。
【0140】
これに対して、本実施形態で採用しているバンクローテーション方式の場合には、1台目のFCVに対して、最初に低圧バンクとなった蓄圧タンクA3aから充填が開始され、その後、中圧バンクとなった蓄圧タンクB3b、高圧バンクとなった蓄圧タンクC3c、という順番で充填が行なわれる。
【0141】
もちろん、FCVの充填タンクの圧力と均衡した圧力で、各蓄圧タンク3a~3dの充填が終了するが、各蓄圧タンク3a~3dの初期の圧力値が異なるため、FCVの充填タンクの圧力と均衡する値(下限値)も各蓄圧タンク3a~3dで異なる。このため、低圧バンク、中圧バンク、高圧バンクという順番に蓄圧すれば、最適な状態で、FCVを充填して行くことができる。こうして、1台目のFCVは、各役割を持った複数の蓄圧タンク3a~3dによって順番に充填が行なわれることになる。
【0142】
そして、1台目のFCVの充填が終わると、低圧バンクだった蓄圧タンクA3aが、ロ
ーテーションによって、回復・待機バンクに切り替わり(S15参照)、次のFCVの充填に備えて、昇圧されることになる。この昇圧によって、蓄圧タンクA3aの圧力は最大圧力まで充填される。
【0143】
また、2台目以降のFCVの充填については、各蓄圧タンク3a~3dがそれぞれ役割を順番に変えながらFCVの充填を行なうように構成されている。
【0144】
こうした中で、破線で示す蓄圧タンクD3dの圧力変化を見てみると、1台目のFCVの時には、回復・待機バンクなので圧力変化はなく(黒い矢印参照)、2台目のFCVの時には、高圧バンクとして高圧域で充填を行ない(黒い矢印参照)、3台目のFCVの時には、中圧バンクとして中圧域で充填を行ない(黒い矢印参照)、4台目のFCVの時には、低圧バンクとして低圧域で充填を行ない(黒い矢印参照)、その後、回復・待機バンクとして、蓄圧タンクD3dだけが昇圧される(白い矢印参照)。
【0145】
この蓄圧タンクD3dのように、こうしたバンクローテーション方式によると、1つの蓄圧タンクだけで見てみると、4台のFCVを充填する間に1回だけしか蓄圧しないため、蓄圧サイクルの総数を少なくできる。このため、従来方式と異なり、蓄圧タンクの交換回数を少なくすることができる。
【0146】
すなわち、バンクローテーション方式によると、蓄圧タンク3a~3dの蓄圧する回数を少なくすることができるため、蓄圧サイクルの総数を低下させることができる。このため、蓄圧タンク3a~3dの交換費用を削減でき、水素ステーションPの管理維持費用を削減することができるのである。
【0147】
もっとも、単にバンクローテーション方式で、水素ステーションを運転しても、蓄圧タンク3a~3dの耐久性を向上するには十分ではない。そこで、本実施形態では、さらに圧縮機による充填アシストを行なうことで、この耐久性を向上するようにしている。このことについて、図10を使って詳細に説明する。
【0148】
図10は、従来方式と、バンクローテーション方式と、それと本実施形態のバンクローテーション方式+アシスト方式の圧力変化を示した図である。図9同様に、縦軸を圧力値
、横軸を時間として表したものである。
【0149】
この図に示すように、まず、従来方式の場合は、FCVに対して水素を充填するときには、1つ目の蓄圧タンクに大きな圧力変化が生じ、最大圧力から最小圧力まで一気に圧力低下が生じて、その後、昇圧することで、最小圧力から最大圧力まで圧力が一気に上昇する。そして、この蓄圧タンクの圧力変動の幅PW1は、例えば、82Mpaから60MPaの幅となる。
【0150】
このときの最小圧力値(60Mpa)は、差圧充填で充填を行なうことから、蓄圧タンクの充填開始時の圧力値によって決まるが、従来方式の場合、初期圧力が、最大圧力(82Mpa)であるため、比較的高い圧力値(60MPa)に維持されることになる。
【0151】
これに対して、バンクローテーション方式の場合は、低圧バンクの役割をもった蓄圧タンクの充填終了時の圧力が、最小圧力値になるため、蓄圧タンクの圧力変動の幅PW2は、例えば、82MPaから40MPaの幅となる。
【0152】
これは、低圧バンクの蓄圧タンクの充填開始時の圧力値が、従来方式に比べて、低いものになるため(例えば、82Mpaに対して63MPa)、どうしても、最小圧力値(40MPa)が低くなってしまい、蓄圧タンクの圧力変動の幅PW2が大きくなってしまう
のである。
【0153】
しかし、このように、圧力変動の幅が大きくなると、蓄圧タンクに対する負荷変動が大きくなってしまうため、蓄圧タンク自身に大きな負荷が生じてしまい、折角、蓄圧サイクルの総数を少なくすることができても、蓄圧タンクの耐久性を悪化させてしまうおそれがある。言い換えると、蓄圧タンクのいわゆるS-N線図の繰り返し回数の回数を低下させてしまう可能性があるのである。
【0154】
そこで、本実施形態では、バンクローテーション方式+アシスト方式とすることで、こ
の問題を解決している。すなわち、低圧バンクの蓄圧タンク3によって、FCVを充填する際に、同時に圧縮機2でも水素も供給することにより、差圧充填で決まる最小圧力値(40MPa)を、上昇させているのである。
【0155】
要は、低圧バンクの蓄圧タンク3a~3dだけでなく、圧縮機2からも水素も供給することで、多くの水素でFCVの充填タンクを充填することで、差圧充填によって均衡する圧力値を高くして、最小圧力値を上昇させているのである。
【0156】
具体的には、最小圧力値は、例えば、45MPa程度にすることができるため、蓄圧タンク3a~3dの圧力変動の幅PW3は、例えば、82Mpaから45MPaの幅となる。この値は、従来方式と比較すると大きな値であるが、通常のバンクローテーション方式に比べると、最小圧力値が上昇している分、小さな値にすることができる。
【0157】
こうして、本実施形態によると、バンクローテーション方式によって、蓄圧タンクの圧力変動の幅が比較的大きくなったとしても、圧縮機2で圧縮した水素を供給(アシスト)することによって、低圧バンクの蓄圧タンク3の最小圧力値を、上昇させることができるため、圧力変動の幅PW3を小さくすることができる。
【0158】
このため、バンクローテーション方式であっても、圧縮機2からも水素を供給して、アシストすることにより、圧力変動の幅を小さなものにして、蓄圧タンク3a~3dに係る負荷を軽減して、バンクローテーション方式の蓄圧サイクルの総数の減少というメリットを活かして、蓄圧タンク3a~3dの耐久性を向上することができる。
【0159】
よって、本実施形態によると、バンクローテーション方式で運転される水素ステーションP、及びその水素ステーションPの運転方法に関し、低圧バンクの蓄圧タンク3a~3dの充填終了時の圧力値(最小圧力値)ができるだけ低くなることを防いで、蓄圧タンク3a~3dの交換回数を少なくするという目標を確実に達成することができるという効果を得ることができる。
【0160】
また、本実施形態では、バンクローテーション方式で各蓄圧タンク3a~3dで充填した後、さらにFCVに対して、圧縮機2からだけで水素を供給するように(直充填)制御している。
【0161】
これによれば、各蓄圧タンク3a~3dからの水素の供給が終了した後も、圧縮機からの水素が供給されるため、蓄圧タンク3a~3dの最大圧力値をさほど高めなくても、FCVに対して高い圧力で水素を供給できる。
【0162】
このため、各蓄圧タンク3a~3dの最大圧力値を高くする必要がなく、蓄圧タンク3a~3dの圧力変動の幅(圧力振幅)を小さくすることができる。
【0163】
よって、蓄圧タンク3a~3dの圧力変動の幅(圧力振幅)をより小さくすることがで
き、蓄圧タンク3a~3dの負担をさらに小さくすることができ、蓄圧タンク3a~3dの耐久性を高めることができる。
【0164】
また、蓄圧タンク3a~3dの最大圧力値が高くなくても良いため、蓄圧タンク3a~3dの単価も比較的安価にすることができるため、蓄圧タンク3a~3dを交換する場合でも設備管理費用を抑えることができる。
【0165】
また、本実施形態では、一つの圧縮機2で、蓄圧タンク3a~3dを昇圧する機能と、蓄圧タンク3a~3dの水素供給(FCVの充填作業)をアシストする機能とを有するように構成している。
【0166】
これによれば、蓄圧タンク3a~3dの昇圧機能と、FCVへの充填アシスト機能を一つの圧縮機で兼用しているため、別々に設定するよりも、設備コストを削減できる。
【0167】
よって、本実施形態によると、水素ステーションPを設置維持管理する際のコストをさらに低減することができる。
【0168】
(その他の実施形態)
次に、その他の実施形態について説明する。
【0169】
まず、蓄圧タンクについては、4つでなくとも、3つで構成しても良い。この場合、例えば、低圧バンク、高圧バンク、回復・待機バンクとして、役割をローテーションしてもよい。また、蓄圧タンクを5つで構成しても良い。この場合、例えば、低圧バンク、中低圧バンク、中高圧バンク、高圧バンク、回復・待機バンクとして、役割をローテーションしても良い。さらに、同様に、6つ、7つと増やしても構わない。
【0170】
さらに、圧縮機2についても、アシスト制御を行なう圧縮機と、蓄圧タンクの昇圧を行なう圧縮機を別々に設定しても良い。このように圧縮機を別々に設定した場合には、蓄圧タンクを昇圧している途中に、FCVに充填する必要が生じた場合でも、蓄圧タンクの昇圧を止める必要がなくなる。また、このように、アシスト制御を行なう圧縮機と、蓄圧タンクの昇圧を行なう圧縮機を別々に設定した場合には、それぞれの圧縮圧力や運転状況に合わせた圧縮機を設定することが可能となるため、水素ステーションのとしての性能もより高めることもできる。
【0171】
また、本実施形態1は、バンクローテーション方式の水素ステーションを説明したが、このバンクローテーション方式の運転状態が一つの運転モードとして使われる水素ステーションで使用されるように構成しても良い。
【0172】
その他、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、構造を変更、又は追加しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0173】
以上説明したように、本発明にかかる水素ステーション、及びその水素ステーションの運転方法は、例えば、複数の蓄圧タンクを備えて、いわゆるバンクローテーション方式と言われる運転状態で運転される、水素ステーション、及びその水素ステーションの運転方法において有用である。
【符号の説明】
【0174】
…水素ステーション
2…圧縮機
3…蓄圧タンク
3a…蓄圧タンクA
3b…蓄圧タンクB
3c…蓄圧タンクC
3d…蓄圧タンクD
4…ディスペンサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10