(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】インテグラルイメージングおよびリレー光学部品を用いたヘッドマウント・ライトフィールド・ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20221130BHJP
G02B 30/10 20200101ALI20221130BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B30/10
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2019548961
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(86)【国際出願番号】 US2018021087
(87)【国際公開番号】W WO2018165117
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505167532
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】フア、ホン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ヘクン
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/184409(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/134740(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0035959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
G02B 30/00 - 30/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムであって、
当該システムの光軸に沿った選択された位置において、選択された3D場面のライトフィールドを生成するように構成された超小型InIユニット(マイクロInI)と、
リレー群であって、その内部に配置された可変焦点要素(VFE)を有し、前記光軸上において前記選択された位置が光学的に共役となる位置に配置され、前記超小型InIユニットによって生成された前記ライトフィールドを受け取って前記選択された3D場面の光軸上に中間3D場面を生成し、当該中間3D場面の光軸に沿って当該中間3D場面の位置を調整するように構成されているものである、前記リレー群と、
前記ヘッドマウント・ディスプレイ・システムのユーザによる観視のために、前記リレー群から受け取った前記中間3D場面を前記システムの射出瞳においてイメージングする接眼レンズ光学部品と
を有する、
ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項2】
請求項1記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記超小型InIユニット(マイクロInI)は、制約された視野ゾーンを有する3D場面の全方向視差ライトフィールドを再現するように構成されているものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項3】
請求項1または2記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記接眼レンズ光学部品と光学的に連通して、前記ヘッドマウント・ディスプレイ・
インテグラル・イメージング(InI)システムのユーザによる観視のために前記接眼レンズ光学部品に実世界視野を透過するシースルーユニットを有するものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記可変焦点要素(VFE)は、前記射出瞳と光学的に共役な位置に配置されているものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記リレー群は、前記システムの光軸に沿って、第1のレンズ群と、第2のレンズ群であって、前記第1のレンズ群と当該第2のレンズ群との間に配置された前記可変焦点要素(VFE)とを有する、前記第2のレンズ群とを有するものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項6】
請求項5記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記可変焦点要素(VFE)は、前記第1のレンズ群の後側焦点距離に位置するものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記システムの視野は、前記可変焦点要素(VFE)のオプティカルパワーとは独立しているものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項8】
請求項
5記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記リレー群の横倍率は、
【数17】
によって与えられ、式中、φ
1、φ
VFE、およびφ
2は、それぞれ前記第1のレンズ群、前記可変焦点要素(VFE)、および前記第2のレンズ群のオプティカルパワーであり、φ
Rは前記リレー群の複合パワーであり、z
0は、前記システムの光軸に沿った前記前部レンズ群と前記選択された位置との間の距離であり、t
1およびt
2はそれぞれ、前記システムの光軸に沿ったi)前記第1のレンズ群と前記可変焦点要素(VFE)との間の距離、およびii)前記可変焦点要素(VFE)と前記第2のレンズ群との間の距離である、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項9】
請求項
8記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、t
2=1/φ
2であり、式中、t
2は前記システムの光軸に沿った前記可変焦点要素(VFE)と前記第2のレンズ群との間の距離であり、φ
2は前記第2のレンズ群のオプティカルパワーである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記リレー群は対象空間においてテレセントリックである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記可変焦点要素(VFE)は、前記光軸上において、前記リレー群の複合オプティカルパワーが前記可変焦点要素(VFE)のオプティカルパワーから独立して一定に維持される位置に配置されるものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記超小型InIユニットは、マイクロディスプレイを含み、前記リレー群を通した前記マイクロディスプレイの対する画角は、前記可変焦点要素(VFE)
のオプティカルパワーから独立して一定に維持されるものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記リレー群はダブルテレセントリックである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記接眼レンズ光学部品はウェッジ形状の自由曲面プリズムを有するものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記リレー群は、接眼レンズを通して再構築された3D仮想場面の位置における前記光軸に沿った位置を最大で5ディオプトリまで調整するように構成されているものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記可変焦点要素(VFE)の焦点距離は、75~100mmであるヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記接眼レンズ光学部品の焦点距離は、27.5mmである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記システムの対角視野は35°である、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、1つの画素あたり2分(角度)の高さの光分解能を有するものである、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1つに記載のヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムにおいて、前記超小型InIユニットは、マイクロレンズアレイを有し、前記マイクロレンズアレイの少なくとも1つのレンズ表面は、式
【数18】
によって表され、式中、zは、局所x、y、z座標系のz軸に沿って測定された前記表面のサグ量であり、cは、頂点曲率であり、rは、半径方向距離であり、kは、円錐定数であり、A~Eは、それぞれ4次、6次、8次、10次、および12次変形係数である、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年3月9日付で出願された米国仮特許出願第62/469,097号明細書の優先権の利益を主張し、その出願の全内容は、この参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府許認可権
本発明は、NSFによる認可を受けた登録番号1422653の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイの分野に関し、より具体的には、排他的にではないが、インテグラルイメージング(integral imaging:InI)に基づくヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0004】
ニアアイディスプレイ(near-to-eye display:NED)または頭部装着型ディスプレイ(head-worn display:HWD)としても一般的に知られているヘッドマウントディスプレイ(head-mounted display:HMD)は、近年、大きい関心を得ており、広範囲の消費者向けアプリケーションのための技術推進に対する多大な努力を刺激している。例えば、ユーザの物質世界の直接視野へのデジタル情報の光学重畳を可能にし、現実世界へのシースルービジョンを維持する軽量の光学式シースルーHMD(optical see-through HMD:OST-HMD)は、拡張現実(augmented reality:AR)アプリケーションに対する技術を可能にする鍵の1つである。広視野(field-of-view:FOV)、没入型HMD(コンピュータが生成する仮想世界にユーザを没入させる)またはリモート操作による現実世界の高解像度映像捕捉は、仮想現実(virtual reality:VR)アプリケーションに対する技術を可能にする鍵である。HMDは、ゲーム、シミュレーションおよび訓練、防衛、教育、並びに他の分野において無数のアプリケーションを見出している。
【0005】
VRディスプレイとARディスプレイとの両方の開発に対する高い有望性および最近達成された多大な進歩にも関わらず、長時間のHMDの着用に関わる視覚的不快感を最小限に抑えることは、依然として未解決の課題である。視覚的不快感に対する主要な寄与要因の1つは、適正な焦点手がかり(調節手がかりおよび網膜像ぶれ効果を含む)をレンダリングする能力の不足による適合的眼球離反運動の不一致(vergence-accommodation conflict:VAC)である。HMDのVAC問題は、画像源が眼から固定距離に位置する2D平坦表面であるという事実に由来する。
図1は、典型的な単眼HMDの概略レイアウトを示し、主に、画像源としての2Dマイクロディスプレイと、マイクロディスプレイ上でレンダリングされた画像を拡大し、眼から固定距離に現れる虚像を形成する接眼レンズとを含む。OST-HMDは、仮想ディスプレイの光学通路と実際の場面の光学通路とを組み合わせるために眼の前に配置される光コンバイナ(例えば、ビームスプリッタ)を必要とする。従来のHMDは、単眼または両眼、シースルーまたは没入型に関わらず、虚像面に対応する距離以外の距離に現れる可能性があるデジタル情報に対する適正な焦点手がかりをレンダリングする能力が不足している。その結果、従来のHMDでは、自然な眼の調節反応および網膜ぼやけ効果を刺激することができない。HMDにおいて適正な焦点手がかりが欠如する問題によって、いくつかの視覚手がかりの不一致が起こる。例えば、従来の立体HMDでは、2つのわずかに異なる視線位置から観察される、両眼視差および3D場面の他の絵画的奥行き手がかりを伴う二次元(two-dimensional:2D)透視画像の対(それぞれの眼に対して1つずつ)によって、3D空間および形状の知覚が刺激される。したがって、従来の立体HMDは、調節手がかりおよび輻輳手がかりの不自然なデカップリングを強制する。調節深度に対する手がかりは、2D像面の奥行きによって決定され、3D場面の輻輳深度は、画像対によってレンダリングされる両眼視差によって決定される。ディスプレイによってレンダリングされる仮想オブジェクトに対する網膜像ぶれ手がかりは、自然な場面によって作成されるものと一致しない。多くの研究により、従来のHMDにおける不適正にレンダリングされた焦点手がかりに関連するこれらの視覚手がかりの不一致は、様々な視覚的アーチファクトおよび視覚的性能の劣化に寄与する強力な裏付けとなる証拠が提供されている。
【0006】
以前に提案されたいくつかの手法は、体積ディスプレイ、超多視点オート・ステレオスコピック・ディスプレイ、インテグラル・イメージング・ベースのディスプレイ、ホログラフィックディスプレイ、多焦点面ディスプレイ、および演算多層ディスプレイを含む従来のステレオスコピックディスプレイの欠点を克服することができる。それらの膨大なハードウェア複雑性により、これらの異なる表示方法の多くは、HMDシステムの実装に適さない。他方では、多焦点面ディスプレイ、インテグラルイメージング、および演算多層手法は、一般的に、ライトフィールドディスプレイであることを指し、ヘッドマウントアプリケーションに適している。HMDにおけるそれらの使用は、ヘッドマウント・ライトフィールド・ディスプレイと呼ばれる。
【0007】
ヘッドマウント・ライトフィールド・ディスプレイは、異なる奥行きの3D場面の投影または3D場面によって放射され且つ異なる眼位から観察されると考えられる光線の方向のいずれかをサンプリングすることにより、真の3D場面をレンダリングする。それらのディスプレイは、適正なまたはほぼ適正な焦点手がかりをレンダリングし、従来のVRおよびARディスプレイの適合的眼球離反運動の不一致問題に対処することができる。例えば、インテグラルイメージング(InI)ベースのディスプレイは、一見したところ3D場面によって放射され且つ異なる眼位から観察されると考えられる光線の方向を角度別にサンプリングすることにより、3D場面のライトフィールドを再構築する。
図2に例示されるように、簡単なInIベースのディスプレイは、典型的には、表示パネルと、マイクロレンズアレイ(microlens array:MLA)またはピンホールアレイである2Dアレイとを含む。ディスプレイは、2D要素画像の組をレンダリングし、その各々は、3D場面の異なる視点を表す。要素画像の対応する画素によって放射された円錐状の光線束は交差して光を放射し、3D空間を占めるように見える3D場面の知覚を一体化して作り上げる。2Dアレイを使用したInIベースのディスプレイは、水平方向と垂直方向との両方における全方向視差情報を有する3D形状の再構築を可能にし、それが、一次元視差バリアまたは円筒状のレンチキュラーレンズを使用した水平視差のみを有する従来のオート・ステレオスコピック・ディスプレイとの主な違いである。1908年のLippmannによるその刊行物以来、InIベースの技法は、実際の場面のライトフィールドの捕捉と、アイウェア・フリー・オート・ステレオスコピック・ディスプレイにおけるその使用との両方に対して幅広く探究されてきた。InIベースの技法は、低い横分解能および縦分解能、狭い被写界深度(depth of field:DOF)、並びに狭い視野角におけるその制限で知られている。他の全ての非ステレオスコピック3Dディスプレイ技法と比べて、InI技法の簡単な光学アーキテクチャは、HMD光学システムと統合して着用可能なライトフィールドディスプレイを作成するという魅力を有する。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2010/0289970号明細書
(特許文献2) 国際公開第2015/134740号
(特許文献3) 米国特許第3,632,184号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2013/0100524号明細書
(特許文献5) 米国特許出願公開第2015/0277129号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、他のインテグラル・イメージング・ベースのディスプレイおよびイメージング技術のように、現在のInIベースのHMD方法は、いくつかの主要な制限、すなわち(1)狭い視野(対角線上で<30°)、(2)低い横分解能(視覚空間において約10分(角度))、(3)低い縦分解能(視覚空間において約0.5ディオプトリ)、(4)狭い被写界深度(DOF)(10分(角度)の分解能基準に対して約1ディオプトリ)、(5)クロストーク・フリー・ビューに対する限られたアイボックス(<5mm)、および(6)視野角の限られた分解能(1ビューあたり>20分(角度))に直面している。これらの制限は、高性能ソリューションとして技術を取り入れることに対する深刻な障害をもたらすだけでなく、調節および輻輳の矛盾問題に対処するための技術の効力を潜在的に弱める。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本開示は、上記で要約される最先端技術の性能限界のいくつかの態様を克服する、インテグラルイメージングに基づく高性能ヘッドマウント・ライトフィールド・ディスプレイの方法、設計および実施形態を詳述する。
【0010】
上記で説明される課題に対応して、その観点の1つにおいて、本発明は、高い横分解能および縦分解能、大きい被写界深度、クロストーク・フリー・アイボックス、並びに視野角分解能の増加を提供するインテグラルイメージングに基づく高性能HMDを提供する。この目的のために、本発明は、ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムであって、当該システムの光軸に沿った選択された位置において、選択された3D場面のライトフィールドを生成するように構成された超小型InIユニット(マイクロInI)と、リレー群であって、その内部に配置された可変焦点要素(VFE)を有する、前記リレー群とを有する。前記リレー群は前記光軸上において前記選択された位置が光学的に共役となる位置に配置され、前記超小型InIユニットによって生成された前記ライトフィールドを受け取って前記選択された3D場面の光軸上に中間3D場面を生成するように構成することができる。また、前記リレー群は、前記中間3D場面の光軸に沿って前記中間3D場面の位置を調整するように構成することができる。さらに、前記ヘッドマウント・ディスプレイ・システムのユーザによる観視のために、前記リレー群から受け取った前記中間3D場面を前記システムの射出瞳においてイメージングする接眼レンズ光学部品が提供される。前記超小型InIユニット(マイクロInI)は、制約された視野ゾーンを有する3D場面の全方向視差ライトフィールドを再現するように構成することができる。さらに、前記接眼レンズ光学部品と光学的に連通して、前記ヘッドマウント・ディスプレイ・システムのユーザによる観視のために前記接眼レンズ光学部品に実世界視野を透過するシースルーユニットが提供されてもよい。前記可変焦点要素(VFE)は、前記射出瞳と光学的に共役な位置に配置することができる。さらに、前記システムの視野は、前記可変焦点要素(VFE)のオプティカルパワーとは独立しており、前記可変焦点要素(VFE)は、前記光軸上において、前記リレー群の複合オプティカルパワーが前記可変焦点要素(VFE)のオプティカルパワーから独立して一定に維持される位置に配置することができる。また、前記リレー群は対象空間においてテレセントリックであるか、若しくはダブルテレセントリックであってもよい。前記接眼レンズ光学部品はウェッジ形状の自由曲面プリズムを有してもよい。前記ヘッドマウント・ディスプレイ・インテグラル・イメージング(InI)システムの対角視野は35°であり、1つの画素あたり2分(角度)の高さの光分解能を有してもよい。
【0011】
本発明の例示的な実施形態の前述の概要および以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読み進めるとさらに理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、接眼レンズが、マイクロディスプレイ上でレンダリングされた画像を拡大し、眼から固定された遠距離に現れる仮想ディスプレイを形成する従来の単眼HMDを概略的に示すものである。
【
図2】
図2は、インテグラルイメージングに基づくニアアイ・ライトフィールド・ディスプレイを概略的に示すものである。
【
図3A】
図3Aは、本発明による高性能InIベースのヘッドマウント・ライトフィールド・ディスプレイの例示的な構成を概略的に示すものである。
【
図3B】
図3Bは、本発明によるマイクロInIユニットの例示的な構成を概略的に示すものである。
【
図4A】
図4A~4Dは、本発明による、アパーチャアレイ(
図4A)、プログラマブル空間光変調器(
図4B)、制御自在な指向性放射エンジン(controllable directional emissions engine)を有する表示源(
図4C)、および例示的な制御自在な指向性放射エンジンとしての空間光変調器を有するバックライト源(
図4D)を使用することにより、光線方向制御を提供するように構築されたマイクロInIユニットの例示的な構成を概略的に示すものである。
【
図4B】
図4A~4Dは、本発明による、アパーチャアレイ(
図4A)、プログラマブル空間光変調器(
図4B)、制御自在な指向性放射エンジン(controllable directional emissions engine)を有する表示源(
図4C)、および例示的な制御自在な指向性放射エンジンとしての空間光変調器を有するバックライト源(
図4D)を使用することにより、光線方向制御を提供するように構築されたマイクロInIユニットの例示的な構成を概略的に示すものである。
【
図4C】
図4A~4Dは、本発明による、アパーチャアレイ(
図4A)、プログラマブル空間光変調器(
図4B)、制御自在な指向性放射エンジン(controllable directional emissions engine)を有する表示源(
図4C)、および例示的な制御自在な指向性放射エンジンとしての空間光変調器を有するバックライト源(
図4D)を使用することにより、光線方向制御を提供するように構築されたマイクロInIユニットの例示的な構成を概略的に示すものである。
【
図4D】
図4A~4Dは、本発明による、アパーチャアレイ(
図4A)、プログラマブル空間光変調器(
図4B)、制御自在な指向性放射エンジン(controllable directional emissions engine)を有する表示源(
図4C)、および例示的な制御自在な指向性放射エンジンとしての空間光変調器を有するバックライト源(
図4D)を使用することにより、光線方向制御を提供するように構築されたマイクロInIユニットの例示的な構成を概略的に示すものである。
【
図5】
図5は、本発明による、接眼レンズの射出瞳と共役な位置にVFE(可変焦点要素)が配置されたリレー群の例示的な構成を概略的に示すものである。
【
図6A】
図6A~6Dは、本発明による、可変焦点リレー群の一部が接眼レンズに組み込まれた自由曲面導波路型プリズムを使用した光学式シースルーInI-HMD設計の例示的な構成を概略的に示すものであり、
図6Aは、ディスプレイ経路レイアウトを示すものであり、
図6Bは、シースルー・ビュー・レイアウトを示すものであり、
図6Cは、拡張シースルービューのための導波路プリズムの区分化された裏面を示すものであり、
図6Dは、導波路プリズムの裏面の正面図を示すものである。
【
図6B】
図6A~6Dは、本発明による、可変焦点リレー群の一部が接眼レンズに組み込まれた自由曲面導波路型プリズムを使用した光学式シースルーInI-HMD設計の例示的な構成を概略的に示すものであり、
図6Aは、ディスプレイ経路レイアウトを示すものであり、
図6Bは、シースルー・ビュー・レイアウトを示すものであり、
図6Cは、拡張シースルービューのための導波路プリズムの区分化された裏面を示すものであり、
図6Dは、導波路プリズムの裏面の正面図を示すものである。
【
図6C】
図6A~6Dは、本発明による、可変焦点リレー群の一部が接眼レンズに組み込まれた自由曲面導波路型プリズムを使用した光学式シースルーInI-HMD設計の例示的な構成を概略的に示すものであり、
図6Aは、ディスプレイ経路レイアウトを示すものであり、
図6Bは、シースルー・ビュー・レイアウトを示すものであり、
図6Cは、拡張シースルービューのための導波路プリズムの区分化された裏面を示すものであり、
図6Dは、導波路プリズムの裏面の正面図を示すものである。
【
図6D】
図6A~6Dは、本発明による、可変焦点リレー群の一部が接眼レンズに組み込まれた自由曲面導波路型プリズムを使用した光学式シースルーInI-HMD設計の例示的な構成を概略的に示すものであり、
図6Aは、ディスプレイ経路レイアウトを示すものであり、
図6Bは、シースルー・ビュー・レイアウトを示すものであり、
図6Cは、拡張シースルービューのための導波路プリズムの区分化された裏面を示すものであり、
図6Dは、導波路プリズムの裏面の正面図を示すものである。
【
図7A】
図7A~7Bは、本発明によるInI-HMD設計構成の2D光学レイアウトの例示的な構成を概略的に示すものであり、
図7Aは、ライトフィールドディスプレイ経路を示すものであり、
図7Bは、シースルー経路を示すものである。
【
図7B】
図7A~7Bは、本発明によるInI-HMD設計構成の2D光学レイアウトの例示的な構成を概略的に示すものであり、
図7Aは、ライトフィールドディスプレイ経路を示すものであり、
図7Bは、シースルー経路を示すものである。
【
図8A】
図8A~8Bは、軸上のフィールド(
図8A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA(マイクロレンズアレイ)要素のフィールド(
図8B)に対する3ディオプトリの再構築された中央奥行き面(central depth plane:CDP)深度の変調伝達関数(modulation transfer function:MTF)プロットを示すものである。
【
図8B】
図8A~8Bは、軸上のフィールド(
図8A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA(マイクロレンズアレイ)要素のフィールド(
図8B)に対する3ディオプトリの再構築された中央奥行き面(central depth plane:CDP)深度の変調伝達関数(modulation transfer function:MTF)プロットを示すものである。
【
図9A】
図9A~9Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図9A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図9B)に対する2ディオプトリの再構築されたCDP深度のMTFプロットを示すものである。
【
図9B】
図9A~9Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図9A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図9B)に対する2ディオプトリの再構築されたCDP深度のMTFプロットを示すものである。
【
図10A】
図10A~10Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図10A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図10B)に対する0ディオプトリの再構築されたCDP深度のMTFプロットを示すものである。
【
図10B】
図10A~10Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図10A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図10B)に対する0ディオプトリの再構築されたCDP深度のMTFプロットを示すものである。
【
図11A】
図11A~11Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図11A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図11B)に対するCDPから0.25ディオプトリだけシフトされた再構築ポイントのMTFプロットを示すものである。
【
図11B】
図11A~11Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図11A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図11B)に対するCDPから0.25ディオプトリだけシフトされた再構築ポイントのMTFプロットを示すものである。
【
図12A】
図12A~12Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図12A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図12B)に対するCDPから0.5ディオプトリだけシフトされた再構築ポイントのMTFプロットを示すものである。
【
図12B】
図12A~12Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図12A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図12B)に対するCDPから0.5ディオプトリだけシフトされた再構築ポイントのMTFプロットを示すものである。
【
図13A】
図13A~13Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図13A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図13B)に対するCDPから0.75ディオプトリだけシフトされた再構築ポイントのMTFプロットを示すものである。
【
図13B】
図13A~13Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図13A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図13B)に対するCDPから0.75ディオプトリだけシフトされた再構築ポイントのMTFプロットを示すものである。
【
図14A】
図14A~14Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図14A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図14B)に対するCDPから1ディオプトリだけシフトされた再構築ポイントのMTFプロットを示すものである。
【
図14B】
図14A~14Bは、MLAに対する軸上のフィールド(
図14A)およびMLAの端部の近くの最も遠いMLA要素のフィールド(
図14B)に対するCDPから1ディオプトリだけシフトされた再構築ポイントのMTFプロットを示すものである。
【
図15】
図15は、シースルー経路FOV65°×40°のMTFを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、図を参照すると、図全体を通して同様の要素に同様に番号が付けられており、
図3Aに示されるように、本発明によるHMDシステム100は、3つの主要なサブシステム、すなわちI)超小型InIユニット(マイクロInI)130と、II)リレー群120であって、内部に配置された、InIユニット130からライトフィールドを受け取るための可変焦点要素(VFE)122を有する、リレー群120と、III)リレー群120から調整された中間3D場面を受け取るための接眼レンズ光学部品110とを含む。
図3Bに例示されるように、マイクロInIユニット130は、制約された視野ゾーンから見える3D場面の全方向視差ライトフィールドを再現することができ、全方向視差ライトフィールドは、水平視線方向と垂直視線方向との両方からの3D場面の視点の変化を提供する。制約された視野ゾーンは、光学的には、マイクロInIユニット130のアパーチャの制限に対応し、制約された視野ゾーンは、光学的には、表示システム100の射出瞳と共役であり、視聴者の眼は、再構築された3D場面を見るように置かれる。リレー群120はマイクロInIユニット130によって再構築された3D場面の中間像を生成し、その中央奥行き面(central depth plane:CDP)の位置は調整可能なようになっている。接眼レンズ110の倍率に応じて、CDPの位置は、光学的無限大(0ディオプトリ)~20cm(5ディオプトリ)の近さまで広がる大きい奥行き範囲で3D場面の知覚を生成するために、約0.5mm~数百ミリメートルの大きさまでの範囲で調整可能である。また、リレー群120は、再構築された3D場面AOBの凹面の反転を容易にすることもできる。接眼レンズ光学部品110は、視聴者の眼に調整可能な3Dライトフィールドをリイメージングし、3Dライトフィールドの調整可能な奥行き範囲を数メートルの遠さから数センチメートルの近さまで間隔がある幅広い奥行き体積空間に拡大する。ビームスプリッタ機能を有する光学部品であるシースルーユニット(図示せず)は、接眼レンズ光学部品110と光学的に連通して、シースルービューが望ましい場合に現世界場面を遮ることのない視野を光学的に可能にする。
図3AのマイクロInIユニット130は、
図3Bにさらに例示されるように、高解像度マイクロディスプレイおよびマイクロレンズアレイ(MLA)132を含む。MLA 132のレンズレット133の焦点距離は、f
MLAとして示され、マイクロディスプレイ134とMLA 132との間の間隙は、gとして示される。2D要素画像(それぞれ3D場面AOBの異なる視点を表す)の組は、高解像度マイクロディスプレイ134上に表示することができる。MLA 132を通して、各要素画像は、空間的にインコヒーレントなオブジェクトとして機能し、要素画像の画素によって放射された円錐状の光線束は、交差して、光を放射して3D空間を占めるように見える3D場面の知覚を一体化して作り上げる。再構築されたミニチュアシーンの中央奥行き面(CDP)(z
0の奥行き範囲)は、MLA 132から測定された距離l
cdpに位置する。そのようなInIシステム130は、水平方向と垂直方向との両方における視差情報による3D表面形状AOBの再構築を可能にする。ユーザの観視のため、再構築された3D場面のライトフィールド(すなわち
図3Bの曲線AOB)は、リレー群120を介して接眼レンズ光学部品110に光学的に結合することができる。分解能優先InIシステム(f
MLA≠g)では、再構築された3D場面の中央奥行き面CDPは、マイクロディスプレイ134と光学的に共役であり、その位置は、
【0014】
【数1】
によって与えられ、式中、M
MLAは、マイクロInIユニット130の倍率であり、
【0015】
【0016】
図3A、4Aに示されるように、任意選択で、アパーチャアレイ136(MLA 132のピッチと整合する光線制御アパーチャのグループを含む)は、マイクロディスプレイ134とMLA 132との間に挿入することができる。各マイクロレンズ133に対応する小さいアパーチャは、望ましくない光線が隣接マイクロレンズ133に達することを阻止し、または近隣の要素画像からの光線がマイクロレンズ133に達することを阻止するとともに、意図された視野窓内の光線が光学部品を通して伝播し、アイボックスに達することを可能にする。例えば、アパーチャA1ブロックとアパーチャA2ブロックとの間の黒いゾーンは、ポイントP1からの破線の光線が、レンズレットMLA1に隣接するMLA2に達することを阻止する。阻止されたこれらの光線は、典型的には、InI表示システムにおいて観察される視野クロストークおよびゴースト像の主要な原因である。マイクロディスプレイ134からアパーチャアレイ136までの距離は、g
aとして示され、アパーチャ開口部の直径は、p
aとして示され、
【0017】
【数3】
によって制約され、式中、g
a-maxおよびp
a-maxは、それぞれ最大許容間隙およびアパーチャサイズであり、p
eiは、要素画像の寸法であり、p
mlaは、MLA 132のピッチである。
【0018】
固定アパーチャサイズを有するアパーチャアレイ136の使用における欠点の1つは、要素画像のサイズが変化した場合、各要素画像の端部の近くに位置する画素に対する光線を部分的に阻止する場合があることである。
図4Aに例示されるように、レンズレットMLA1を通して伝播するはずのポイントP1からの光線のごく一部は、アパーチャA1とアパーチャA2との間の黒いゾーンによって阻止され、視聴者が各要素画像の端部の近くのポイントに対して画像明度の低減を観察するビネッティングのような効果を引き起こす。
図4Bは、
図4Aのものの代替の構成を示し、アパーチャアレイ136は、プログラマブル空間光変調器(spatial light modulator:SLM)135と交換され、その結果、各アパーチャのサイズおよび形状は、所望の光線の部分的阻止を回避するように動的に適応させることができる。
図4Cは、本発明によるマイクロInIユニットの別の実施形態を示し、マイクロディスプレイ134およびアパーチャアレイ136は、制御自在な指向性放射を有する表示源131と交換され、発光方向は、各画素からの光線がそれらの対応するMLAレンズレット133のみに達するように精密に制御することができる。
図4Dは、そのような表示源131の1つの可能な構成を実証し、空間光変調器135は、非指向性放射を有するバックライト源138と、非自発光型マイクロディスプレイ137との間に挿入されている。空間光変調器135は、マイクロディスプレイ137に照射され、MLA 132に達する光線の円錐角をプログラムおよび制御するように設定することができる。
【0019】
従来のInIベースの表示システムは、典型的には、3D再構築ポイントの奥行きがCDPの奥行きからシフトしているときの空間分解能の急速な劣化による限られた被写界深度(DOF)に直面する。例えば、3D場面の体積は、視覚空間における空間分解能を3分(角度)またはより良好に維持するために、0.5ディオプトリ未満に制限する必要がある。
図3Aの例示的な構成においてなど、高空間分解能を維持しながらはるかに大きい3D場面の体積をレンダリングするため、電子制御される可変焦点要素122が内側に挟まれたリレー群120は、マイクロInI 130と接眼レンズ110との間に挿入される。例示的なVFE 122は、液体レンズ、液晶レンズ、可変鏡、または他の任意の調整可能な光学技術(電気的に調整可能な光学技術など)を含む。異なる電圧をVFE 122に印加することによってリレー群120のオプティカルパワーφ
Rを動的に制御することにより、リレー群120は、マイクロInI 130によって生成された再構築されたミニチュア3D場面の中間像A'O'B'を形成する。リレーされた中間場面の中央奥行き位置CDPは、接眼レンズ110に対して軸方向に(光軸に沿って)調整可能である。その結果、接眼レンズ110による拡大された3D仮想場面の奥行き体積は、高い横分解能および縦分解能を維持しながら、非常に近く(例えば、5ディオプトリ)から非常に遠く(例えば、0ディオプトリ)に軸方向にシフトすることができる。
【0020】
図5は、
図3Aのリレー群120などの可変焦点リレー群120の例示的な構成を概略的に例示し、マイクロInIユニット130に隣接する前部レンズ群「前部リレー」126と、システムストップとして機能する中間に位置するVFE光学部品122と、接眼レンズ110に隣接する後部レンズ群「後部リレー」124とを含む。リレー群120の複合パワーφ
Rは、
【0021】
【数4】
によって与えられ、式中、φ
1、φ
VFE、およびφ
2は、それぞれ前部レンズ群126、VFE 122、および後部レンズ群124のオプティカルパワーである。t
1およびt
2は、前部レンズ群126とVFE 122との間の間隔およびVFE 122と後部レンズ群124との間の間隔である。z
0は、前部レンズ群と、マイクロInIユニット130によって再構築された3D場面との間の軸方向距離である。リレーされた中間場面の軸位置は、
【0022】
【0023】
可変焦点リレーシステムの横倍率は、
【0024】
【0025】
φeは、接眼レンズ110のオプティカルパワーであり、ZRCDPは、リレーされたCDPから接眼レンズ110までの距離であると想定すると、接眼レンズ110を通した再構築された3D仮想場面の見かけのCDP位置は、
【0026】
【0027】
接眼レンズ110を通した全システムの横倍率は、
【0028】
【0029】
接眼レンズ110を通した全システムの視野(FOV)は、FOV=
【数9】
によって与えられ、式中、t
3は、接眼レンズ110と後部リレーレンズ124との間の間隔であり、z
xpは、射出瞳と接眼レンズ110との間の間隔であり、h
0は、再構築された場面の画像高さであり、
u
vfe=[(1-z
xpφ
e)-(z
xp+(1-z
xpφ
e)t
3)φ
2]およびh
vfe=[(1-z
xpφ
e)-(z
xp+(1-z
xpφ
e)t
3)φ
2]-[(z
xp+(1-z
xpφ
e)t
3)φ
2+((1-z
xpφ
e)-(z
xp+(1-z
xpφ
e)t
3)φ
2)]t
2
をさらに定義する。
【0030】
接眼レンズ110の射出瞳と光学的に共役であるようにVFE 122を設定すると((すなわちh
vfe=0)、眼の入射瞳は、ディスプレイ134を見るように置かれ、h
vfe=0を有し、FOVは、VFE 122のオプティカルパワーから独立している。式(9)の式は、
【数10】
に簡略化される。
【0031】
図5に例示されるように、可変焦点リレー群120の好ましい実施形態は、VFE 122が接眼レンズ110の射出瞳と光学的に共役となるようにするために((すなわちh
vfe=0)、前部リレー群26の後側焦点距離にVFE 122を配置すること(すなわちt
1=1/φ
1)である。この好ましい実施形態を用いると、式(4)によって与えられるリレー群120の複合パワーφ
Rは、
【0032】
【0033】
式(6)によって与えられる可変焦点リレーシステムの横倍率は、
【0034】
【数12】
に簡略化される。また、式(8)によって与えられる全システムの横倍率も簡略化される。
【0035】
t
1=1/φ
1およびh
vfe=0の場合、システムのFOVは、
【数13】
にさらに簡略化される。
【0036】
式(10)~(13)によって実証されるように、好ましい方法でのVFE 122の慎重な位置決めは、物体空間テレセントリシティのプロパティによる一定の主光線方向に起因して、リレー群120の複合オプティカルパワーがVFE 122のオプティカルパワーから独立して一定に維持されることを保証する。式(13)によってさらに実証されるように、接眼レンズ110を通したディスプレイの対する画角は、VFE 122のオプティカルパワーから独立して一定にさらに維持される。リレー群120に対して一定のオプティカルパワーを維持することは、CDPの焦点深度に関わらず、仮想的に再構築された3D場面が一定の視野を達成する上で役立つ。したがって、視線方向連動(gaze-contingent)または時間多重化モードにおけるシームまたはアーチファクトなしで、3D場面のはるかに大きい体積を仮想的に知覚することができる。注目すべき点は、t2=1/φ2が満たされる場合、式(12)によって与えられるリレー群120の横倍率を一定にさらに維持できることであり、それにより、可変焦点リレー群120は、ダブル・テレセントリック・システムになる。
【0037】
図3Aの接眼レンズ110は、多くの異なる形態を取ることができる。例えば、光学式シースルーHMDのコンパクトな光学設計を達成するため、ウェッジ形状の自由曲面プリズムを取り入れることができ、ウェッジ形状の自由曲面プリズムを通して、マイクロInIユニット130およびリレー群120によって再構築された3D場面は、拡大されて見られる。ARシステムに対するシースルー能力を可能にするため、自由曲面プリズムによって現実世界場面に導入された視軸偏位および望ましくない収差を補正するように、表面の1つがビームスプリッタコーティングでコーティングされた自由曲面補正レンズを自由曲面プリズム接眼レンズに取り付けることができる。
【0038】
本発明の別の観点では、リレー群120の一部は、調整可能な中間3D場面が自由曲面接眼レンズの内側に形成されるように、自由曲面接眼レンズなどの接眼レンズ光学部品110に組み込むことができる。それに関連して、接眼レンズは、例えば、ウェッジ形状の自由曲面導波路型プリズムである。
図6Aは、複数の自由曲面光学表面によって形成された自由曲面導波路のようなプリズム850の概念を概略的に例示する。射出瞳は、拡大された3D場面を見るために使用の眼が置かれる場所に位置する。設計では、VFE 122に続く従来のリレー群220の一部は、プリズム850に組み込まれ、「VFEを有するリレー群」とラベル付けされたボックス内に含まれる自由曲面導波路型プリズム850の上部851によって機能が果たされる。3Dポイント(例えば、A)から放射された光線は、最初に、リレー群220の最も近い光学要素126で屈折し、プリズム850内に透過し、中間像(例えば、A')を生成するために1または複数の自由曲面での反射が続く。中間像(例えば、A')の軸位置は、VFE 122によって調整可能である。後続の表面による複数の連続的な反射および出口表面855を通した最終的な屈折により、光線は、システムの射出瞳に達することができる。異なる要素画像からの複数の光線束が存在するが、これらの光線束は、明らかに同じオブジェクトポイントから放射されたものであり、その束の各々は、オブジェクトの異なるビューを表し、射出瞳の異なる位置に入射する。これらの光線束は、眼の前に位置する仮想3Dポイント(例えば、「A」)を一体化して再構築する。複数の光学要素を必要とするよりむしろ、光学経路は、多面プリズム850内で自然に折り曲げられ、回転対称要素を使用した設計と比べて、光学部品の全体積および重量を実質的に低減する上で役立つ。従来のウェッジ形状の3面プリズムを使用した設計と比べて、導波路のような接眼レンズ設計は、リレー機能の一部を組み込み、スタンドアロンリレー群120を3面プリズムと組み合わせたものよりはるかにコンパクトなシステムを可能にする。コンパクト性の利点以外に、導波路のようなマルチフォールド接眼レンズ設計は、残りのリレー群およびマイクロInIユニットを水平方向においてこめかみ側の方に折り畳む能力を可能にするため、はるかに好ましいフォームファクタを提供する。マルチフォールドは、はるかに重量バランスの取れたシステムをもたらすのみならず、ウェッジ形状のプリズムを使用するよりも実質的に大きいシースルーFOVも可能にする。
【0039】
ARシステムに対するシースルー能力を可能にするため、接眼レンズ部分としてマーク付けされた
図6Aのプリズム850の裏面の下部853は、ビーム分割鏡としてコーティングすることができ、少なくとも2つの自由曲面光学表面を含む自由曲面補正レンズ840は、自由曲面プリズム850によって現実世界場面に導入された視軸偏位および望ましくない収差を補正するようにプリズム850の裏面に取り付けることができる。シースルー概略レイアウトは、
図6Bに示される。仮想ライトフィールドからの光線は、プリズム850の裏面で反射し、現実世界場面からの光線は、自由曲面補正レンズ840およびプリズム850を通して透過する。自由曲面補正レンズ840の前面は、プリズム850の裏面の形状と整合する。自由曲面補正レンズ840の後面は、レンズがプリズム850と組み合わされる際に現実世界場面から光線に導入されるシフトおよび歪みを最小化するように最適化することができる。追加の補正レンズ「補正要素(compensator)」は、全システムのフットプリントおよび重量を著しく増加することはない。
【0040】
本発明の別の観点では、接眼レンズ部分としてマーク付けされた
図6Aのプリズム850の裏面の下部853は、2つのセグメント、すなわちセグメント853-1およびセグメント853-2に分割することができる。
図6Cに概略的に例示されるように、853-1のセグメントは、マイクロInIユニットによって生成されたライトフィールドを受け取る反射性または部分反射性の表面である。また、853-1のセグメント上のビーム分割鏡コーティングは、現実世界場面からの光線の透過も可能にする。セグメント853-2は、透過性または半透過性の表面であり、マイクロInIユニット130によって生成されたライトフィールドを受け取らず、現実世界場面からの光線のみを受け取る。
図6Dは、プリズム850の裏面の正面図を概略的に例示する。2つの表面セグメント853-1および853-2は、マイクロInIユニット130によって再構築された3Dライトフィールドを受け取るために必要なアパーチャ窓の上方境界で交差し、2つの別個の自由曲面によって作ることができる。異なる光路を有する2つの別個のセグメント853-1、853-2への裏面853の下部の分割は、仮想ディスプレイ経路の制約を受け取ることなく、ディスプレイ経路のFOVを超えてシースルービューのFOVを実質的に拡大する能力を提供する。
図6Cに示されるように、自由曲面補正レンズ840は、自由曲面プリズム850によって現実世界場面に導入された視軸偏位および望ましくない収差を補正するようにプリズム850の裏面に取り付けることができる。仮想ライトフィールドからの光線は、プリズム850の裏面のセグメント853-1で反射し、現実世界場面からの光線は、プリズム850のセグメント853-1および853-2と自由曲面補正レンズ840との両方を通して透過する。表面セグメント853-2は、自由曲面補正レンズ840と組み合わされる際にシースルービューの視覚的アーチファクトを最小化するように最適化することができる。自由曲面補正レンズ840の前面は、プリズム850の表面セグメント853-1および853-2の形状と整合する。自由曲面補正レンズ840の後面は、自由曲面補正レンズ840がプリズム850と組み合わされる際に現実世界場面から光線に導入されるシフトおよび歪みを最小化するように最適化することができる。
【0041】
本発明のさらなる別の観点によれば、
図7Aは、
図6Aの概念システムを具体化する物理システムの光学設計を概略的に例示する。
図7Aは、ライトフィールドディスプレイ経路の2D光学レイアウトを例示し、
図7Bは、シースルー経路の光学レイアウトを示す。ライトフィールドディスプレイの光学システムは、マイクロInIユニット、VFEを有するリレー群、および自由曲面導波路を含む。リレー群の一部は、導波路に組み込むことができる。マイクロInIユニットは、マイクロディスプレイS0、ピンホールアレイS1、およびマイクロレンズアレイS2を含む。リレー群は、4つのレンズと、市販のVFE(Optotune Inc.によるElectrical Lens EL10-30)と、2つの自由曲面(表面S19およびS20)とを含む。自由曲面導波路型プリズム900は、S19、S20、S21、およびS22としてそれぞれラベル付けされた複数の自由曲面光学表面によって形成することができる。本設計では、VFEに続く従来のリレー群の一部は、プリズム900に組み込むことができ、表面S19およびS20によって機能を果たすことができる。3Dポイント(例えば、A)から放射された光線は、最初に、プリズム900の表面S19で屈折し、中間像(例えば、A')を生成するために表面S20での反射が続く。中間像(例えば、A')の軸位置は、VFEによって調整可能である。表面S21'およびS22-1でのもう2つの連続的な反射並びに表面S21を通した最終的な屈折により、光線は、システムの射出瞳に達することができる。異なる要素画像からの複数の光線束が存在するが、これらの光線束は、明らかに同じオブジェクトポイントから放射され、その各々は、オブジェクトの異なるビューを表し、射出瞳の異なる位置に入射する。これらの光線束は、眼の前に位置する仮想3Dポイントを一体化して再構築する。導波路の表面S21'で反射した光線は、全内部反射の条件を満たす必要がある。プリズム900の裏面S22-1、S22-2は、現実世界場面のビューを阻止する没入型HMDシステムを構築するために、ミラーコーティングでコーティングすることができる。或いは、表面S22-1は、
図7Bに示されるように、補助レンズを使用した光学式シースルー能力が望ましい場合、ビームスプリッタコーティングでコーティングすることができる。
【0042】
本明細書で開示される設計では、Z軸は、視線方向に沿い、Y軸は、左右の瞳孔を結ぶ方向と位置合わせされた水平方向に平行であり、およびX軸は、頭の向きと位置合わせされた垂直方向にあることに留意すべきである。その結果、全導波路システムは、水平(YOZ)平面に対して対称であり、光学表面(S19、S20、S21、およびS22)は、水平なY軸に沿って非共軸であり、且つ垂直なX軸を中心として回転する。光学経路は、水平なYOZ平面において折り曲げられる。この配置により、マイクロInIユニットおよび可変焦点リレー群は、ユーザの頭のこめかみ側に装着することができ、バランスの取れた人間工学的なシステムパッケージングを提供することができる。
【0043】
表1は、
図7Aのシステムの重要な性能仕様のいくつかを強調する。システムは、3D場面の真の3Dライトフィールドをレンダリングする能力を提供し、35°の対角線のFOVに対しており、視覚空間において1つの画素あたり2分(角度)の高さの光分解能を達成する。その上、システムは、単眼ディスプレイに対して約0.1ディオプトリの高い縦分解能を有し、0~5ディオプトリで調整可能な大きい奥行き範囲を提供する。その上、システムは、約0.5/mm
2の高いビュー密度(view density)を達成し、ビュー密度σは、射出瞳の単位面積あたりの一意のビューの数として定義され、
【数14】
によって与えられ、式中、Nは、ビューの総数であり、A
XPは、表示システムの射出瞳の面積である。0.5/mm
2のビュー密度は、0.2ディオプトリの距離に位置するオブジェクトに対する約1分(角度)の視野角分解能に等しい。クロストーク・フリー・ビューに対する射出瞳直径(ディスプレイのアイボックスとしても知られている)は、約6mmである。この実施形態では、射出瞳直径は、市販のVFEのアパーチャサイズによって制限され、別のより大きいアパーチャのVFEを取り入れる場合、増加することができる。最後に、システムは、大きいシースルーFOV(水平方向に65°および垂直方向に40°より大きい)を提供する。本発明者らのプロトタイプで利用されるマイクロディスプレイは、8μmのカラー画素および1920×1080の画素解像度を有する0.7インチ(約1.778cm)の有機発光ディスプレイ(organic light emitting display:OLED)(SonyによるECX335A)である。しかし、光学設計自体は、異なる寸法のOLEDパネルまたは他のタイプのマイクロディスプレイ(6μmより大きいカラー画素サイズを有する液晶ディスプレイなど)をサポートすることができる。
【0044】
【0045】
表2~5では、光学表面データの形態で
図7Aのシステムの例示的な実装形態が提供される。表2は、ディスプレイ経路の基本的なパラメータを要約する(単位:mm)。表3~5は、非球面の光学表面を定義する最適化係数を提供する。
【0046】
【0047】
6μmの小ささの画素を有する高解像度マイクロディスプレイは、高解像度の仮想再構築3D画像を達成するために取り入れられる。マイクロInIユニットに対するそのような高解像度画像を達成するため、具体的には、非球面によって形成されたマイクロレンズアレイ(MLA)を設計することができる。MLAの非球面の各々は、
【0048】
【数15】
として説明することができ、式中、zは、局所x、y、z座標系のz軸に沿って測定された表面のサグ量(sag)であり、cは、頂点曲率であり、rは、半径方向距離であり、kは、円錐定数であり、A~Eは、それぞれ4次、6次、8次、10次、および12次変形係数である。MLAの材料は、PMMAである。表3は、表面S1およびS2に対する係数を提供する。
【0049】
【0050】
シースルーFOVの拡大を可能にするため、自由曲面導波路型プリズム900は、表面S19、S20、S21/S21'、S22-1、S22-2とそれぞれラベル付けされた5つの自由曲面によって形成することができる。自由曲面補正レンズは、2つの自由曲面によって形成することができ、前面は、導波路プリズム900の表面S22-1およびS22-2と同じ表面仕様を共有し、裏面は、表面S23と示される。S22-1の表面セグメントは、マイクロInIユニットによって生成されたライトフィールドを受け取る反射性または部分反射性の表面である。また、S22-1のセグメント上のビーム分割鏡コーティングは、シースルー能力に対する現実世界場面からの光線の透過も可能にする。表面セグメントS22-2は、透過性または半透過性の表面であり、マイクロInIユニットによって生成されたライトフィールドを受け取らず、現実世界場面からの光線のみを受け取る。
【0051】
S19、S20、S21/S21'、S22-1、S23を含む自由曲面は、
【0052】
【数16】
として数学的に説明することができ、式中、zは、局所x、y、z座標系のz軸に沿って測定された自由曲面のサグ量であり、cは、頂点曲率(vertex curvature:CUY)であり、rは、半径方向距離であり、kは、円錐定数であり、およびC
jは、x
my
nに対する係数である。導波路プリズムと補償レンズとの両方の材料は、PMMAである。表4~8は、S19~S21、S22-1、S23の表面に対する係数を提供し、表9は、各光学表面の表面基準を提供する。
【0053】
設計プロセス中、表面セグメントS22-1に対する仕様は、マイクロInIユニット、リレーレンズ群、および表面S19、S20、S21/21'、S22-1から構成されるプリズム900を通したライトフィールドディスプレイ経路の最適化後に得られた。最初に、ライトフィールドディスプレイ経路に対して、表面S20およびS22-1の必要なアパーチャ寸法が決定された。次いで、表面S22-2が作成されたSolidworks(登録商標)などの3Dモデリングソフトウェアに表面S20、S21、S22-1がインポートされた。表面S22-2の形状は、次の要件、すなわち(1)ディスプレイ経路によって定義された表面S22-1に必要なアパーチャの上方境界線に沿ってまたは上方境界線の上方で表面S22-1と交差すること、(2)表面S22-2と表面S22-2との間の交差線に沿って、表面S22-2上の交点における表面傾斜がほぼ整合することであるが、等しくない場合、表面S22-1上のそれらの対応する点が、2つの表面がほぼ連続しているように見えることを保証し、それにより、整合する自由曲面補正レンズと組み合わされた際にシースルービューに対する視覚的アーチファクトが最小化されること、(3)表面S22-2が、ディスプレイ経路によって定義された表面S20に必要なアパーチャの下方境界線に沿ってまたは下方境界線の下方で表面S20と交差すること、(4)表面S21およびS22-2間の全体的な厚さが最小化されることを満たすことにより、モデリングソフトウェアにおいて作成された。最後に、閉鎖性の自由曲面導波路型プリズムを作成するため、表面S22-2の自由曲面形状は、表面S19、S20、S21/21'、S22-1と組み合わされた3Dモデリングソフトウェアにおいて得られる。
図7Bは、上記で説明される方法を通して、実質的に拡大されたシースルーFOVを実証した。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
設計プロセス中、3つの代表波長465nm、550nm、630nmが選択され、それらの波長は、選択されたOLEDマイクロディスプレイ内の青色、緑色および赤色エミッタのピーク発光スペクトルに対応する。MLAの合計で21個のレンズレットがサンプリングされ、各々は、9つの要素画像ポイントを表し、合計で189のフィールドサンプルになる。画質を評価するため、接眼レンズと同じ倍率を有する理想的なレンズがシステムの射出瞳(視野窓)に配置され、それにより最終的な画像に対して20.83lp/mmのカットオフ周波数が生じる(マイクロディスプレイの画素サイズによって制限される)。設計されたシステムの光学性能は、3つの設計波長に対する代表画角で評価された。調整可能なレンズVFEの倍率を変更することにより、光学性能の著しい変性をもたらすことなく、中央奥行き面を大きい範囲(例えば、0~3ディオプトリ)で軸方向にシフトすることができる。
図8~10は、3、1、および0ディオプトリの深度でそれぞれ設定されたCDP上で再構築されたポイントに対する多色変調伝達関数(MTF)をプロットする。各CDP位置に対し、2組のMTFがプロットされ、1つは、軸上MLAに対応するフィールドに対するものであり、1つは、端部の近くの最も遠いMLAに対応するフィールドに対するものである。
【0061】
他方では、特定の調整可能な状態に対して再構築画像が中央奥行き面からシフトされる際に3D再構築ポイントの画質がどのように劣化するかを評価することが等しく重要である。これは、調整可能なレンズの倍率を変更することなく、中央奥行き面をわずかな距離だけシフトすることによって評価することができる。
図11~14は、CDPから0.25、0.5、0.75、および1ディオプトリだけそれぞれシフトされた再構築ポイントに対する多色MTFをプロットする。各深度に対し、2組のMTFがプロットされ、1つは、軸上MLAに対応するフィールドに対するものであり、1つは、端部の近くの最も遠いMLAに対応するフィールドに対するものである。
【0062】
図15は、65°×40°のFOVに対する多色MTFをプロットする。FOV全体にわたり、シースルー経路は、30サイクル/度の周波数で50%を超える平均MTF値を達成し(20/20の正常視力に対応する)、60サイクル/度の周波数でほぼ20%の平均MTF値を達成した(20/10の視力または0.5分(角度)の視力に対応する)。