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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】触覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/166 20200101AFI20221130BHJP
【FI】
G01L5/166
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020083941
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021179339
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505065984
【氏名又は名称】学校法人 福山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】伍賀 正典
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6703728(JP,B2)
【文献】特許第5413773(JP,B2)
【文献】特許第6575334(JP,B2)
【文献】特開2013-234975(JP,A)
【文献】特許第6643506(JP,B2)
【文献】特許第6806935(JP,B2)
【文献】特開昭61-283842(JP,A)
【文献】特許第5603773(JP,B2)
【文献】特許第5859134(JP,B2)
【文献】特許第5187856(JP,B2)
【文献】米国特許第9052775(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第2392904(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触する物体から受ける外力を検出するための触覚センサであって、
前記物体と接触する接触部位と、前記接触部位に対向する対向面と、前記接触部位と前記対向面との間の側面を有し、光を透過する弾性体と、
前記弾性体の対向面に対向するように前記弾性体の内部に埋め込まれた光を反射する反射板と、
前記側面に配置された光を反射する反射部と、
前記対向面側に配置され、前記反射板までの距離を検出する複数の第1光学センサと、
前記側面の周囲に前記反射部と対向するように配置され、前記反射部までの距離を検出する複数の第2光学センサと
を備える触覚センサ。
【請求項2】
請求項1記載の触覚センサであって、
前記第1光学センサと前記第2光学センサは、それぞれ3つ以上ある
ことを特徴とする触覚センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の触覚センサであって、
前記弾性体の形状は、ほぼ錐台であって、錐台の一方の底面が前記接触部位であり、錐台の他方の底面が前記対向面である
ことを特徴とする触覚センサ。
【請求項4】
請求項3記載の触覚センサであって、
前記反射板の形状は錐体であって、頂点が前記対向面に最も近くなるように配置されている
ことを特徴とする触覚センサ。
【請求項5】
請求項1または2記載の触覚センサであって、
前記弾性体の形状は、ほぼ円錐台であって、円錐台の一方の底面が前記接触部位であり、円錐台の他方の底面が前記対向面である
ことを特徴とする触覚センサ。
【請求項6】
請求項5記載の触覚センサであって、
前記反射板の形状は円錐であって、頂点が前記対向面に最も近くなるように配置されている
ことを特徴とする触覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触する物体から受ける外力を検出するための触覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
触覚センサとしては、例えば特許文献1に記載された静電容量の変化と磁界の変化を検出する技術、特許文献2に記載された光量の変化を検出する技術などが従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-9792号公報
【文献】特開2011-7557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、磁場が存在する場所では正確な検出ができない。特許文献2に記載された光量の変化を検出する技術では、外力の方向によっては弾性体の変形量と光量の関係を比較的線形に近くできるが、弾性体表面にフレキシブル基板を装着するため、製造が難しく、耐久性が低くなりやすいので、様々な用途では使いにくいという課題がある。
【0005】
本発明は、光学式であって、安価に製造でき、様々な用途で使いやすい触覚センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の触覚センサは、接触する物体から受ける外力を検出するための触覚センサである。本発明の触覚センサは、弾性体、反射板、反射部、複数の第1光学センサ、複数の第2光学センサを備える。弾性体は、物体と接触する接触部位と、接触部位に対向する対向面と、接触部位と対向面との間の側面を有し、光を透過する材質である。反射板は、弾性体の対向面に対向するように弾性体の内部に埋め込まれ、光を反射する。反射部は、側面に配置され、光を反射する。複数の第1光学センサは、対向面側に配置され、反射板までの距離を検出する。複数の第2光学センサは、側面の周囲に反射部と対向するように配置され、反射部までの距離を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の触覚センサによれば、距離を検出する光学センサによって弾性体の変形量を検出するので、安価に製造でき、様々な用途で使いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の触覚センサの概要を示すための斜視図。
図2】反射板の例を示す斜視図。
図3】実施例1の触覚センサの構成を示すための平面図。
図4図3のA-A線での断面図。
図5】変形例1の触覚センサの構成を示すための平面図。
図6】触覚センサ101の試作品を用いて第2光学センサの出力を測定した結果を示す図。
図7】触覚センサ101の試作品を用いて第2光学センサの出力を測定した別の結果を示す図。
図8】触覚センサ101の試作品の接触部位111をZ軸方向に移動させたときの第1光学センサの出力を測定した結果を示す図。
図9】触覚センサ101の試作品の接触部位111をZ軸方向に移動させたときの第2光学センサの出力を測定した結果を示す図。
図10】変形例2の触覚センサの構成を示すための平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1は実施例1の触覚センサの概要を示すための斜視図、図2は反射板の例を示す斜視図、図3は実施例1の触覚センサの構成を示すための平面図、図4図3のA-A線での断面図である。触覚センサ100は、接触する物体から受ける外力を検出するための触覚センサである。触覚センサ100は、弾性体110、反射板120、反射部130-1~3、第1光学センサ150-1~3、第2光学センサ160-1~3を備える。また、弾性体110と第1光学センサ150-1~3を保持する第1基板140と、第2光学センサ160-1~3を保持する第2基板170も備えればよい。なお、弾性体110、第1光学センサ150-1~3、第2光学センサ160-1~3を保持する構造は、他の構造でも構わない。
【0011】
弾性体110は、物体と接触する接触部位111と、接触部位に対向する対向面112と、接触部位と対向面との間の側面113を有し、光を透過する材質である。弾性体110には、ポリウレタンなどの光を透過する材料を用いればよい。この例では、弾性体110の形状は、円錐台であって、円錐台の一方の底面が接触部位111であり、円錐台の他方の底面が対向面112である。接触部位は、図4に点線で示したような接触部位114でもよいし、接触する物体に応じて適宜変更すればよい。つまり、弾性体110の形状は、ほぼ円錐台とすればよい。
【0012】
反射板120は、弾性体110の対向面112に対向するように弾性体110の内部に埋め込まれ、光を反射する。図1~4に示した反射板120の形状は円錐であって、頂点が対向面112に最も近くなるように配置されている。反射板120には、例えば白色の樹脂製(ポリスチレン、ABS樹脂など)の板を使用すればよい。色は、後述する第1光センサで距離を検知可能であれば、適宜決めればよい。厚さは、外力によって変形しにくい程度にすればよい。例えば0.5mm程度にすればよいが、想定される外力に応じて適宜変更すればよい。
【0013】
反射部130-1~3は、側面113に配置され、光を反射する。反射部130-1~3は、例えば、側面113を白色に着色することで形成すればよい。後述する第2光センサで距離を検知可能であれば、色、材質は適宜決めればよい。図1~4の例では側面113の3か所に反射部130-1~3を配置しているが、側面113全体を反射部131としてもよい。
【0014】
第1光学センサ150-1~3は、対向面112側に配置され、反射板120までの距離を検出する。第2光学センサ160-1~3は、側面113の周囲に反射部130-1~3と対向するように配置され、反射部130-1~3までの距離を検出する。第1光学センサ150-1~3と第2光学センサ160-1~3は、例えば、赤外線を発光して反射光を測定し、0.0~10.0mm程度の距離を検出し、距離に応じて線形な値を出力するセンサを用いればよい。図1~4に示した触覚センサ100では、3個の第1光学センサ150-1~3と3個の第2光学センサ160-1~3を備えているが、3個に限定するものではない。検知したい方向に応じて2個にしてもよいし、4個以上でも構わない。また、第1光学センサの数と第2光学センサの数を同じにする必要もない。
【0015】
図3のX方向に弾性体110が変形すると、第2光学センサ160-1と第2光学センサ160-2の出力が互いに逆方向に変化するとともに、反射板120が円錐形なので、第1光学センサ150-1と第1光学センサ150-2の出力も互いに逆方向に変化する。図3のZ方向に弾性体110が変形すると、第1光学センサ150-1~3の出力が同じ方向に変化する。X軸回りに回転するように弾性体110が変形すると、第1光学センサ150-1の出力は、第1光学センサ150-2,3の出力とは逆方向に変化する。このように、合計6個の光学センサを配置すれば、X方向の移動、Y方向移動、Z方向移動、X軸回りの回転、Y軸回りの回転を区別しながら弾性体110の変形を検知できる。触覚センサ100は、安価に製造できる構造であり、様々な用途で使いやすく、せん断方向と回転方向の変位・力の検出が可能である。さらに、触覚センサ100によれば、距離を検出する第1光学センサと第2光学センサによって弾性体の変形量を検出するので、出力を変形量と線形に近い関係にできる。
[変形例1]
【0016】
図5は、変形例1の触覚センサの構成を示すための平面図である。触覚センサ101は、4個の第1光学センサ150-1~4と4個の第2光学センサ160-1~4を備え、側面113全体を反射部131とした例である。その他の構成は、触覚センサ100と同じである。このように、第1光学センサと第2光学センサを4個ずつ備え、90度ずつずらして配置すれば、X,Y,Z成分を検知しやすい。その他の効果は、触覚センサ100と同じである。
<実験例>
【0017】
図6,7に、触覚センサ101の試作品を用いて第2光学センサの出力を測定した結果を示す。試作した触覚センサ101は、弾性体110の接触部位111の直径が18mm、対向面112の直径が20mm、接触部位111と対向面112との間隔(高さ)が10mmである。図6は、Z軸方向に1.0mm押し込んだうえでX軸方向に0.0mm→1.0mm→2.0mm→1.0mm→0.0mm→-1.0mm→-2.0mm→-1.0mm→0.0mmのように接触部位111を移動させた結果を示している。図7は、Z軸方向に1.0mm押し込んだうえでY軸方向に0.0mm→1.0mm→2.0mm→1.0mm→0.0mm→-1.0mm→-2.0mm→-1.0mm→0.0mmのように接触部位111を移動させた結果を示している。横軸は時間(時:分:秒)を示しており、縦軸はセンサからの出力電圧に対応した値であり、センサを接続した測定装置から出力された生データの値である。この値の100が0.5Vに相当する。どちらの結果を見ても、変位に対してほぼ線形な出力が得られていることが分かる。
【0018】
図8に、触覚センサ101の試作品の接触部位111をZ軸方向に移動させたときの第1光学センサの出力を測定した結果を示す。図9に、触覚センサ101の試作品の接触部位111をZ軸方向に移動させたときの第2光学センサの出力を測定した結果を示す。試作した触覚センサ101は、上述の実験と同じである。第1光学センサは4つ備えられているが、図8には第1光学センサ150-1,150-2,150-3の測定結果を示している。第2光学センサは4つ備えられているが、図9には第2光学センサ160-1,160-2,160-3の測定結果を示している。どちらも、接触部位111をZ軸方向に全く押し込んでいない状態(変位が0.0mm)から、接触部位111全体をZ軸方向に、0.0mm→1.0mm→2.0mm→0.0mmのように移動させた結果を示している。横軸は時間(時:分:秒)を示しており、縦軸はセンサからの出力電圧に対応した値であり、センサを接続した測定装置から出力された生データの値である。この値の100が0.5Vに相当する。この実験では、弾性体110が押しつぶれるように変形するため、第1光学センサ150-1,150-2,150-3と反射板120との距離が短くなっていることが分かる。また、弾性体110の側面は膨らむので、第2光学センサ160-1,160-2,160-3と反射部131との距離も短くなっていることが分かる。Z軸方向の変位の検出は弾性体110が押しつぶされることで生じるので、つぶれ方の不均衡などから変位に多少のばらつきがあるが、反射板120が全体的に押されていることが分かる。また、X軸を中心とした回転またはY軸を中心とした回転の場合には、弾性体110がつぶれる方向が決まるので、第1光学センサ150-1~4ごとの反射板120との距離の変化には明確な違いが現れると予測できる。
[変形例2]
【0019】
図10は、変形例2の触覚センサの構成を示すための平面図である。触覚センサ102では、弾性体110’が12角形の底面を持つ錐台であり、反射板122は12角錐である点が触覚センサ101と異なる。弾性体110’は、物体と接触する接触部位111’と、接触部位111’に対向する対向面112’(図示していない)と、接触部位111’と対向面112’との間の側面113’を有する。弾性体110’の材質は、弾性体110と同じにすればよい。触覚センサ102の反射部132は、側面113’全体に形成されている。弾性体110’も反射板122も12角形だが、他の多角形でも構わない。また、接触部位111’は接触部位114のような形状でもよい。つまり、弾性体110’の形状は、ほぼ錐台であって、錐台の一方の底面が接触部位111’であり、錐台の他方の底面が対向面112’である。また、反射板122の形状は錐体であって、頂点が対向面に最も近くなるように配置されている。触覚センサ102も、触覚センサ101と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0020】
100,101,102 触覚センサ 110,110’ 弾性体
111,111’,114 接触部位 112,112’ 対向面
113,113’ 側面 120,122 反射板
130,131,132 反射部 140 第1基板
150 第1光学センサ 160 第2光学センサ
170 第2基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10