(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】インソール、足裏パッド及び靴下
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20221130BHJP
A43B 7/32 20060101ALI20221130BHJP
A41B 11/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
A43B17/00 E
A43B7/32
A41B11/00 J
A41B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021112190
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】521296960
【氏名又は名称】近藤 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100148725
【氏名又は名称】吉田 信彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐司
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-114904(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211473(JP,U)
【文献】特開2019-051002(JP,A)
【文献】特表2013-535309(JP,A)
【文献】特表2009-502356(JP,A)
【文献】登録実用新案第3136586(JP,U)
【文献】特開2011-244945(JP,A)
【文献】特開2019-210580(JP,A)
【文献】特開2010-264139(JP,A)
【文献】実開昭56-155604(JP,U)
【文献】特開2013-027515(JP,A)
【文献】登録実用新案第3210276(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00
A43B 7/1415
A43B 7/1464
A43B 7/1475
A43B 7/32
A43B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の内底に敷設されるインソールであって、
インソール本体と、
第1所定厚みの薄板形状を有し、前記インソール本体の表面及び/又は裏面に設けられ、着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から前記第4趾及び前記第5趾の近位趾節間関節までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域を含まない、第1領域に延在する足裏パッドと、を有
し、
前記第1所定厚みは、前記着用者の小趾球が、母趾球よりも高い位置に支持される厚みに定められる、
インソール。
【請求項2】
前記第1領域から、第1趾、第2趾、及び第3趾の中足趾節関節に対応する、第2領域に延設され、
前記第2領域は、前記第1所定厚みよりも小さい第2所定厚みの薄板形状を有する、
請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
Shore(00Scale)硬度30以上、かつ70以下である粘弾性部材からなる、請求項1又は2に記載のインソール。
【請求項4】
前記履物は、先芯によって足先が覆われた安全靴である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項5】
前記第1所定厚みは、1.0mm以上、かつ3.0mm以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインソール。
【請求項6】
前記足裏パッドは、着用者の足部の前記第4趾及び前記第5趾の中足趾節関節から近位趾節間関節までに対応する領域を支持し、第1趾、第2趾、及び第3趾の中足趾節関節に対応する領域を支持しない、請求項1に記載のインソール。
【請求項7】
履物の内底に配置される足裏パッドであって、
着用者の足部の母趾球に対応する母趾球領域よりも、前記足部の小趾球に対応する小趾球領域が低いインソールの表面及び/又は裏面に設けられ、
前記小趾球
が前記母趾球よりも高い位置に支持される第1所定厚みの薄板形状を有し、
前記着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から前記第4趾及び前記第5趾の近位趾節間関節までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域を含まない、第1領域に延在する、
足裏パッド。
【請求項8】
着用者の足部に貼着される足裏パッドであって、
前記着用者の小趾球
が母趾球よりも高い位置に支持される第1所定厚みの薄板形状を有し、
前記着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から前記第4趾及び前記第5趾の近位趾節間関節までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域を含まない、第1領域に延在する、
足裏パッド。
【請求項9】
足裏パッドを有する靴下であって、
前記足裏パッドは、
着用者の小趾球
が母趾球よりも高い位置に支持される第1所定厚みの薄板形状を有し、
前記着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から前記第4趾及び前記第5趾の近位趾節間関節までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域を含まない、第1領域に延在する、
靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インソール、足裏パッド及び靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、履物の内底に敷設されるインソールがある。
【0003】
例えば、特開2006-305310号公報には、可撓性のある表面シートの裏面に少なくとも踵骨から趾骨の基節骨に至る領域に対応させて支持基板を貼設してなり、支持基板は、踵骨から中足骨に至る領域に対応させる後部基板と、中足骨から趾骨の基節骨に至る領域に対応させる前部基板とからなり、前部基板の第1趾の中足趾節関節に対応する領域に切欠部が形成されるインソールが開示される。
【0004】
また、別の従来例として、国際公開第2020/021622号には、足の内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチを維持するために、足の踵骨前部に当接する踵骨前部支持凸部と、踵骨前部支持凸部が内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチを維持した状態で、足の母趾球と小趾球を支持する趾球支持部とを備え、趾球支持部の前方に当該趾球支持部よりも肉薄のインソール前部を備えたインソールが開示される。
【0005】
一般に、着用者の脚部では、歩行の際、体重を支持する立脚期と、接地面を離れ前方に振り出される遊脚期とが周期的に繰り返される。立脚期が踵接地により開始され、遊脚期が足趾離地により開始される。立脚期が開始すると、ウィンドラス機構は、足趾と踵骨を繋ぐ足底腱膜の伸張によってアーチを下降させ、接地による衝撃の吸収を行う。また、ウィンドラス機構は、立脚期後半の推進期において、中足趾節関節の背屈(足背側へ反らす動作)によって足底腱膜を牽引し、アーチを上昇させ、足部の剛性を向上させるとともに、足部を前方に進めるための推進力を強化する。
【0006】
さらに別の従来例として、アーチに対応する領域に膨出状のアーチサポートを設け、踵から中足趾節関節にかけて下降するように傾斜し、中足趾節関節から爪先にかけて上昇するように傾斜する内底を有する履物がある。この履物では、アーチサポートによってアーチが高い位置に支持され、また、踵と爪先を上げることによって中足趾節関節の背屈位が形成され、足部のウィンドラス機構の働きによって足部を前方に進めるための推進力が強化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-305310号公報
【文献】国際公開第2020/021622号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2006-305310号公報に記載のインソールでは、第1趾の中足趾節関節に対応する領域に切欠部を形成すると、母趾球が切欠部に落込むことによって第1趾の中足趾節関節が背屈し、第1趾が足底腱膜を牽引することによってアーチの下降が抑制され、ウィンドラス機構の衝撃吸収力を低下させる懸念がある。また、母趾球が切欠部に落ち込むと、インソールは、距骨下関節の回内を促し、小趾球を浮かせて床反力を得にくくし、運動性が低下する懸念もある。
【0009】
また、国際公開第2020/021622号に記載のインソールでは、靴の縦軸方向に対し斜めに設けられる靴の屈曲部位を趾球支持部が縦断しており、中足趾節関節の背屈によって靴を屈曲させた際に屈曲部位を縦断する趾球支持部に歪みが生じ、第1趾から第5趾の中足趾節関節の配列を乱す懸念がある。
【0010】
また、従来のインソールでは、クッションが着用者の小趾球の足圧力を吸収することによって床反力が得にくくなり、立脚期における小趾球から母趾球への重心移動をスムーズに行うことが難しいことがある。
【0011】
また、インソールは、樹脂材料によって構成され、高温及び高湿度の履物内で使用すると、潰れることがある。潰れたインソールは、着用者の足部が受ける衝撃を効果的に吸収できないだけではなく、母趾球及び小趾球が当たる部位の陥没によって足趾背屈位を形成して床を掴む動作を行いにくくし、また、足部トラス構造に歪みを生じさせ、アーチの倒れ込み、足首の倒れ込み等の足部の障害を惹き起こす懸念がある。
【0012】
また、インソールは、先芯によって足先が覆われた安全靴の内底に敷設されることもある。インソールが敷設された安全靴は、着用者が歩行動作、走行動作、及びしゃがみ動作等の動作を行うと、特に、中足趾節関節を背屈させてアーチが上昇した際に、着用者の足背が先芯の上側縁部に当たり、足背に障害を生じさせるおそれがある。
【0013】
そこで、本発明は、着用者の姿勢を安定させ、着用者の歩行動作、走行動作及びしゃがみ動作等の動作を容易にし、着用者の足部の障害の発生を防止することができる、インソール、足裏パッド及び靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、履物の内底に敷設されるインソールであって、インソール本体と、第1所定厚みの薄板形状を有し、前記インソール本体の表面及び/又は裏面に設けられ、着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から前記第4趾及び前記第5趾の近位趾節間関節までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域を含まない、第1領域に延在する足裏パッドと、を有し、前記第1所定厚みは、前記着用者の小趾球が、母趾球よりも高い位置に支持される厚みに定められるものである。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記第1領域から、第1趾、第2趾、及び第3趾の中足趾節関節に対応する、第2領域に延設され、前記第2領域は、前記第1所定厚みよりも小さい第2所定厚みの薄板形状を有するものである。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、Shore(00Scale)硬度30以上、かつ70以下である粘弾性部材からなるものである。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に係る発明において更に、前記履物は、先芯によって足先が覆われた安全靴であるものである。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に係る発明において更に、前記第1所定厚みは、1.0mm以上、かつ3.0mm以下であるものである。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記足裏パッドは、着用者の足部の前記第4趾及び前記第5趾の中足趾節関節から近位趾節間関節までに対応する領域を支持し、第1趾、第2趾、及び第3趾の中足趾節関節に対応する領域を支持しないものである。
【0020】
請求項7に係る発明は、履物の内底に配置される足裏パッドであって、着用者の足部の母趾球に対応する母趾球領域よりも、前記足部の小趾球に対応する小趾球領域が低いインソールの表面及び/又は裏面に設けられ、前記小趾球が前記母趾球よりも高い位置に支持される第1所定厚みの薄板形状を有し、着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から前記第4趾及び前記第5趾の近位趾節間関節までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域を含まない、第1領域に延在するものである。
【0021】
請求項8に係る発明は、着用者の足部に貼着される足裏パッドであって、前記着用者の小趾球が前記母趾球よりも高い位置に支持される第1所定厚みの薄板形状を有し、前記着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から前記第4趾及び前記第5趾の近位趾節間関節までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域を含まない、第1領域に延在するものである。
【0022】
請求項9に係る発明は、足裏パッドを有する靴下であって、前記足裏パッドは、着用者の小趾球が母趾球よりも高い位置に支持される第1所定厚みの薄板形状を有し、前記着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から前記第4趾及び前記第5趾の近位趾節間関節までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域を含まない、第1領域に延在するものである。
【発明の効果】
【0023】
(A)足裏パッドは、第4趾及び第5趾の中足趾節関節から第4趾及び第5趾の近位趾節間関節までに対応する第1領域に延在する。したがって、着用者の足部は、足裏パッドを介し、小趾球の足圧力に応じた床反力を効率よく得ることができる。着用者は、立脚期において、効率よく床反力を得ることによって小趾球側から母趾球側への重心移動がスムーズになり、歩行や走行等の動作が容易になる。また、着用者は、立位姿勢やしゃがみ姿勢にあるとき、足部の左右外側に位置する小趾球から効率よく床反力を得ることによって左右のバランスをとりやすく、姿勢を安定させることができる。
【0024】
(B)足裏パッドは、着用者の足部の第4趾及び第5趾の近位趾節間関節に対応する領域にも延在する。したがって、着用者が第4趾及び第5趾の底屈(足裏側へ屈曲する動作)をすると、第4趾及び第5趾は、小趾球とともに、足裏パッドに足圧力をかけてより強い床反力を得ることができる。
【0025】
(C)靴やインソール本体の小趾球領域が、劣化によって沈下した場合や低く構成されている場合、インソールは、足裏パッドを設けることによって靴やインソール本体の小趾球領域の高さを補完し、着用者の小趾球を適切な高さ位置に支持することができる。
【0026】
(D)足裏パッドは、着用者の小趾球の高さ位置を上げることにより、立脚期において、距骨下関節の外返しを促し、外反母趾及び内反膝を改善させることができる。
【0027】
(E)足裏パッドは、着用者の小趾球の高さ位置を上げることにより、立脚期において、中足趾節関節の背屈角度を小さくし、履物のアッパーの皺の形成を抑制することができる。
【0028】
(F)着用者が、特に両膝を前方へ向けて、爪先立ちでしゃがみ姿勢をとるとき、足裏パッドは、着用者の小趾球の高さ位置を上げることによって距骨下関節の外返しを促し、下腿を内旋させて内側に締める。したがって、着用者は、楽に安定したしゃがみ姿勢をとることができる。
【0029】
(G)着用者が爪先立ちでしゃがみ姿勢をとるとき、足裏パッドは、着用者の小趾球の高さ位置を上げることによって中足趾節関節の背屈角度を小さくする。したがって、着用者は、中足趾節関節を大きく背屈させなくても、楽に安定したしゃがみ姿勢をとることができる。
【0030】
(H)足裏パッドは、中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域にかからないように配置され、縦アーチの上下動を制限しない。したがって、ウィンドラス機構は、足裏パッドから縦アーチの上下動の制限を受けず、衝撃吸収機能や足部の剛性向上機能を適切に発揮することができる。また、履物又はインソールにアーチサポートが設けられている場合においても、足裏パッドは、アーチサポートが設けられた領域にはかからないように配置され、縦アーチの上下動を制限しない。また、足裏パッドは、履物及びインソール本体の屈曲部位を縦断しないように配置され、中足趾節関節の背屈による歪みが生じにくく、第1趾から第5趾の中足趾節関節の配列の乱れを抑える。
【0031】
(I)インソールは、履物の内底に敷設される。インソール本体は、縁部が履物の内壁に押し当たることによって横ずれが防止される。インソール本体の表面及び/又は裏面に設けられた足裏パッドも、横ずれが防止され、着用者の足部の第4趾及び第5趾の中足趾節関節から第4趾及び第5趾の近位趾節間関節までに対応する第1領域に、より確実に固定される。
【0032】
(J)第1所定厚みは、着用者の小趾球が、母趾球と同じ高さ位置又は母趾球よりも高い位置に支持される厚みに定められる。したがって、足裏パッドは、横アーチを高い位置に支持し、立脚期における小趾球側から母趾球側への重心移動をスムーズにする。
【0033】
(K)足裏パッドは、第1領域から、第1趾、第2趾、及び第3趾の中足趾節関節に対応する、第2領域に延設される。したがって、着用者は、小趾球だけでなく、母趾球においても、効率よく床反力を得ることができ、歩行や走行等の動作が容易になる。
【0034】
(L)第1領域は、第2領域よりも厚みが大きい。したがって、足裏パッドは、立脚期における小趾球側から母趾球側への重心移動をスムーズにする。
【0035】
(M)足裏パッドは、粘弾性部材からなり、保形成に優れ、かつ衝撃力の吸収性に優れる。また、足裏パッドは、着用者の方向転換動作等の足部を捻じる動作によって生じたせん断力や回転力の吸収性も優れる。また、足裏パッドは、履物内底において長時間足圧力を受けても圧縮残留歪(ヘタリ)が少なく、耐久性に優れる。
【0036】
(N)着用者が爪先立ちでしゃがみ姿勢をとるとき、足裏パッドは、距骨下関節の外返しを促すことによって下腿を内旋させて内側に締め(上記F)、また、中足趾節関節の背屈角度を小さくし(上記G)、第1中足骨の浮き上がりを抑える。したがって、足裏パッドは、履物の先芯の上側縁部に着用者の足背を当たりにくくし、足背の障害の発生を防止する。
【0037】
(O)第1所定厚みは、1.0mm以上、かつ3.0mm以下である。インソールは、肉薄に形成され、着用者の足部への負担が少なく、スポーツシューズ等の着用者の足部にフィットした履物の内底にも敷設することができる。
【0038】
(P)足裏パッドは、履物の内底において、母趾球領域よりも小趾球領域が低いインソールの表面及び/又は裏面に設けられる。したがって、足裏パッドは、母趾球領域よりも小趾球領域の高さ位置が低く設定された履物のインソールに適用することができるし、圧縮残留歪(ヘタリ)によって小趾球領域の高さ位置が沈下した履物のインソールに適用することもできる。足裏パッドは、小趾球領域の高さを補完し、着用者の小趾球を適切な高さ位置に支持することができる。
【0039】
(Q)足裏パッドは、着用者の足裏に貼着され、着用者の小趾球を適切な高さ位置に支持することができる。
【0040】
(R)靴下は、足裏部に足裏パッドを有し、着用者の小趾球を適切な高さ位置に支持することができる。
【0041】
本発明によれば、インソール、足裏パッド及び靴下は、着用者の姿勢を安定させ、着用者の歩行動作、走行動作及びしゃがみ動作等の動作を容易にし、着用者の足部の障害の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】第1実施形態に係る、インソールの構造の一例を示す分解図である。
【
図2】第1実施形態に係る、インソールの構造の一例を示す底面図である。
【
図3】第1実施形態に係る、インソールの構造の一例を示し、(A)が前面図であり、(B)が拡大側面図である。
【
図4】インソールの官能試験の結果を示す表であり、(A)がインソール本体の厚みと足裏パッドの厚みに応じた試験の結果を示し、(B)が足裏パッドの硬度に応じた試験の結果を示す。
【
図5】従来のインソールを敷設してしゃがみ姿勢をとった着用者の足部を示し、(A)が拡大後面図であり、(B)が拡大側面図である。
【
図6】第1実施形態に係るインソールを敷設してしゃがみ姿勢をとった着用者の足部を示し、(A)が拡大後面図であり、(B)が拡大側面図である。
【
図7】先芯によって足先が覆われた安全靴の靴底に敷設されたインソールの一例を示す上面図である。
【
図8】母趾球領域の厚みよりも小趾球領域の厚みが小さい例を説明する前面図であり、(A)が従来のインソールを示し、(B)が第2実施形態のインソールの一例を示す。
【
図9】第3実施形態に係る、インソールの構造の一例を示す拡大側面図である。
【
図10】第4実施形態に係る、インソールの構造の一例を示す底面図である。
【
図11】第6実施形態に係る、靴下の構造の一例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1実施形態)
図1は、インソール1の構造の一例を示す分解図である。
図2は、インソール1の構造の一例を示す底面図である。
図3は、インソール1の構造の一例を示し、(A)が前面図であり、(B)が拡大側面図である。
【0044】
図1に示すように、インソール1は、インソール本体11と、インソール本体11の裏面に設けられる足裏パッド21を有する。インソール1は、インソール本体11に足裏パッド21を取り付けた状態で履物の内底に敷設される。履物は、例えば、安全靴S(
図7)、作業靴、スニーカー、スポーツシューズ、トラディショナルシューズ、及びパンプスである。
【0045】
図2に示すように、インソール本体11は、履物の内壁に沿った外周形状を有する。インソール本体11では、母趾球Etに対応した母趾球領域Atと、小趾球Ehに対応した小趾球領域Ahは、ともに同じ本体厚みKi(
図3(A))を有する。
【0046】
インソール本体11は、樹脂を材質として構成される。樹脂は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、等の樹脂発泡体によって形成されていることが好ましい。インソール本体11は、これらの樹脂を材質とする板部材を複数積層させて構成してもよい。
【0047】
足裏パッド21は、接着又は縫着等の取付手段によってインソール本体11に取り付けられる。足裏パッド21は、第1所定厚みK1の薄板形状を有し(
図3(A))、履物の内底において、第1領域A1に延在する。第1領域A1は、着用者の足部の第4趾T4及び第5趾T5の中足趾節関節Jm4、Jm5から第4趾T4及び第5趾T5の近位趾節間関節Jp4、Jp5までに対応する領域を含み、かつ中足骨Mtの骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域Amを含まない。足裏パッド21は、小趾球Ehの高さ位置を上げることによって第4趾T4及び第5趾T5の中足趾節関節Jm4、Jm5の高さ位置を上げ、横アーチRh1を適切な高さ位置に保持する。また、足裏パッド21は、第4趾T4及び第5趾T5の底屈によって足裏パッド21に足圧力を加えてより強い床反力を得ることができるように、第4趾T4及び第5趾T5の近位趾節間関節Jp4、Jp5に対応する領域にも延設される。
【0048】
図3(B)に示すように、足裏パッド21は、第4趾T4及び第5趾T5が底屈可能にされ、立脚期における床を掴む動作を行えるように、第4趾T4及び第5趾T5の爪先に対応する爪先領域Adにかからないように配置される。また、足裏パッド21は、縦アーチRvの上下動を制限しないように、中足骨Mtの骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域Amにかからないように配置される。
【0049】
第1所定厚みK1は、着用者の小趾球Ehが、母趾球Etと同じ高さ位置又は母趾球Etよりも高い位置に支持される厚みに定められる。より具体的には、第1所定厚みK1は、足圧力によるインソール本体11の厚み方向の圧縮量を補い、小趾球Ehが母趾球Etと同じ高さ位置又は母趾球Etよりも高い位置に支持されるように、定められる。
【0050】
第1所定厚みK1は、次の数式(1)によって算出される。
K1=Ki×1/2 ・・・(1)
【0051】
第1所定厚みK1は、インソール本体11が着用者の足圧力を受けて厚み方向に略1/2圧縮されることを想定し、インソール本体11の本体厚みKi(クッション材の厚み)の1/2の厚みを基本とする。インソール本体11がクッション性の高いクッション材とクッション性の低い基材によって構成されている場合には、第1所定厚みK1は、基材の厚みを除いたクッション材部分の1/2の厚みを基本としてもよい。インソール本体11の厚み方向の圧縮量が想定よりも大きい場合には、第1所定厚みK1は、より厚みが大きくなるように、補正してもよい。また、厚み方向の圧縮量が想定よりも小さい場合には、第1所定厚みK1は、より厚みが小さくなるように、補正してもよい。
【0052】
第1所定厚みK1は、例えば、インソール本体11の厚みが4.0mmであるとき、1.0mm以上、かつ3.0mm以下とすることが好ましい。より好ましくは、第1所定厚みK1は、インソール本体11の厚みが4.0mmであるとき、1.5mm以上、かつ2.5mm以下である。第1所定厚みK1は、この例に限定されることなく、履物及びインソール本体11に合わせ、経験的又は実験的に定められる。
【0053】
足裏パッド21は、粘弾性を有する樹脂を材質として構成される。足裏パッド21は、例えば、Shore(00Scale)硬度20以上、かつ80以下とし、常温(20℃)、40Hzにおける粘弾性部の損失係数(tanδ)を略0.3以上、かつ1.2以下とする樹脂が好ましい。より好ましくは、足裏パッド21は、Shore(00Scale)硬度30以上、かつ70以下とし、常温(20℃)、40Hzにおける粘弾性部の損失係数(tanδ)を略0.5以上、かつ1.0以下とし、保形成に優れ、衝撃力、せん断力、及び回転力の吸収性に優れる樹脂が好ましい。これらの基準に適する樹脂として、足裏パッド21には、例えば、ソルボセイン(登録商標)を用いることができる。ソルボセインは、EVA及びPUよりも、着用者の方向転換動作等の足部を捻じる動作によって生じたせん断力や回転力の吸収性に優れる。また、ソルボセインは、履物内底において長時間足圧力を受けた場合、EVAやPUよりも、圧縮残留歪(ヘタリ)が少なく、耐久性にも優れる。
【0054】
続いて、官能試験の結果を説明する。
図4は、足裏パッド21の官能試験の結果を示す表であり、(A)がインソール本体11の厚みと足裏パッド21の厚みに応じた官能試験の結果を示し、(B)が硬度に応じた官能試験の結果を示す。
【0055】
図4(A)に示す官能試験は、着用者が、素足に足裏パッド21を貼着し、また、インソール1を靴底に敷設して履き、姿勢の安定性、歩行動作、走行動作及びしゃがみ動作等の動作性を基準とし、それぞれの着用感を評価することによって行った。官能試験で用いられたインソール本体11の厚みは、0.0(素足)、2.0mm、3.0mm、4.0mmの各々であり、また、足裏パッド21の厚みは、0.5mm~4.0mm(0.5mm刻み)の各々である。
図4(A)では、評価が高い順に記号「◎」「〇」「△」「×」によって官能試験の結果が示される。
【0056】
図4(A)に示すとおり、素足に足裏パッド21を貼着したとき、足裏パッド21の厚み1.0mmが着用感に優れていた。また、インソール1を靴底に敷設したとき、インソール本体11の厚み2.0mmでは足裏パッド21の厚み1.0mmが着用感に優れ、また、インソール本体11の厚み3.0mmでは足裏パッド21の厚み1.5mmが着用感に優れ、また、インソール本体11の厚み4.0mmでは足裏パッド21の厚み2.0mmが着用感に優れていた。
【0057】
図4(B)の官能試験は、インソール本体11の厚みを4.0mmとし、かつ足裏パッド21の厚みを2.0mmとし、足裏パッド21の材質を変え、着用者がそれぞれのインソール1の着用感を評価することによって行った。
【0058】
図4(B)に示すとおり、Shore(00Scale)硬度65-75のソルボセインを材質とする足裏パッド21が着用感に優れていた。
【0059】
続いて、着用者のしゃがみ姿勢下におけるインソール1の作用について、説明する。
図5は、従来のインソールXを敷設してしゃがみ姿勢をとった着用者の足部を示し、(A)が拡大後面図であり、(B)が拡大側面図である。
図6は、インソール1を敷設してしゃがみ姿勢をとった着用者の足部を示し、(A)が拡大後面図であり、(B)が拡大側面図である。
【0060】
着用者がしゃがみ姿勢をとろうとすると、アンクルロッカーが働き、距骨を運動軸とし、足関節が背屈する。続いて、フォアフットロッカーが働き、リスフラン関節、ショパール関節、足関節の動きが制限され、中足趾節関節Jmが背屈し、踵Hが上昇する。
【0061】
図5(A)に示すように、着用者の足部の下側に従来のインソールXを敷設し、爪先立ちでしゃがみ姿勢をとった場合、下腿の外旋とともに距骨下関節Jsが回外する。足部は、踵Hが外方を向き、冠状面上において、鉛直軸Lvから、踵Hの中心と第2趾T2を結ぶ中心軸Lcが、傾斜角度C1だけ傾斜する。また、
図5(B)に示すように、足部は、踵Hが上昇し、矢状面上において、足裏面Ssが水平軸Lhから傾斜角度S1だけ傾斜する。
【0062】
図6(A)に示すように、着用者の足部の下側に本実施形態に係るインソール1を敷設し、爪先立ちでしゃがみ姿勢をとった場合、足裏パッド21が小趾球Ehの高さ位置を上げることによって距骨下関節Jsの回内を促し、下腿を内旋させて内側に締め、足部は、冠状面上において、鉛直軸Lvから、中心軸Lcが、傾斜角度C2だけ外側に傾斜する。従来のインソールXを敷設した場合の傾斜角度C1と比べ、インソール1を敷設した場合の傾斜角度C2の方が小さい。着用者の膝関節及び足首関節は、捻じれが少なく、負担が少ない。また、着用者は、足部の左右外側に位置する小趾球Ehから効率よく床反力を得ることによって左右のバランスをとりやすい。
【0063】
また、
図6(B)に示すように、足部は、矢状面上において、足裏面Ssが水平軸Lhから傾斜角度S2だけ傾斜する。従来のインソールXを敷設した場合の傾斜角度S1と比べ、インソール1を敷設した場合の傾斜角度S2の方が小さく、着用者は、距骨下関節Jsの背屈度合いが小さく、前後のバランスをとりやすい。
【0064】
続いて、安全靴Sの靴底に敷設されたインソール1の作用を説明する。
【0065】
図7は、先芯Scによって足先が覆われた安全靴Sの靴底に敷設されたインソール1の一例を示す上面図である。
【0066】
図7に示すように、インソール1は、安全靴Sの靴底に敷設することもできる。安全靴Sは、1/2ドーム状の先芯Scによって足先が覆われる。先芯Scの上側縁部Suは、着用者の足背の上方に配置される。
【0067】
着用者がしゃがみ姿勢をとると、足裏パッド21では、冠状面上の傾斜角度C2が、傾斜角度C1よりも小さくなり(
図6(A))、足部が回外することによる中足骨Mtの上昇を抑える。また、足裏パッド21では、矢状面上の傾斜角度S2が、傾斜角度S1よりも小さくなり(
図6(B))、中足趾節関節Jmの背屈角度を小さくし、中足骨Mtの上昇を抑える。着用者の足背は、先芯Scの上側縁部Suに当たりにくくされる。
【0068】
一般に、安全靴Sの靴底が踵Hから中足趾節関節Jmにかけて下降するように傾斜し、中足趾節関節Jmから爪先にかけて上昇するように傾斜するように設けられている場合、中足趾節関節Jmの背屈位が形成され、ウィンドラス機構が作動しやすくなる。そして、リスフラン関節、ショパール関節、及び足関節の可動は一部制限され、アンクルロッカーの作動割合が減少し、フォアフットロッカーの作動割合が増加する。その結果、縦アーチRvの上昇によって足背の高さ位置が上がり、足背が先芯Scの上側縁部Suに当たりやすくなる。このような場合においても、足裏パッド21は、足部の回外を抑え、また、中足趾節関節Jmの背屈角度を小さくし、着用者の足背を先芯Scの上側縁部Suに当たりにくくする。
【0069】
(第2実施形態)
第1実施形態では、インソール本体11において、母趾球領域Atと小趾球領域Ahがともに同じ厚みである例を説明したが、母趾球領域Atの厚みよりも小趾球領域Ahの厚みが小さくてもよい。
【0070】
図8は、母趾球領域Atの厚みよりも小趾球領域Ahの厚みが小さい低い例を説明する前面図であり、(A)が従来のインソールXを示し、(B)が第2実施形態のインソール2の一例を示す。以下、実施形態の説明では、他の実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0071】
従来のインソールXは、距骨下関節Jsの内返しを促すために小趾球領域Ahの高さ位置を低く設定されることがあるし、圧縮残留歪(ヘタリ)によって小趾球領域Ahの高さ位置が沈下することもある。
図8(A)に示すように、従来のインソールXは、母趾球領域Atの厚みよりも小趾球領域Ahの厚みが小さく、母趾球領域Atの高さ位置よりも小趾球領域Ahの高さ位置が低い。
【0072】
従来のインソールXでは、第4趾T4及び第5趾T5の中足趾節関節Jm4、Jm5が下降し、適切な高さ位置を有する横アーチRh1は、横アーチRh2の位置に下降する。
【0073】
横アーチRh2の位置に下降すると、アーチの整合性が崩れ、着用者の足部は、小趾球Eh側から母趾球Et側へスムーズに重心移動することが難しくなる。また、足部の各関節の動きは制限され、足関節屈曲時や、荷重時における衝撃吸収力が低下する。また、足部のトラス構造が崩れ、足底腱膜炎や、中足骨Mtの骨折の原因となるだけではなく、膝が捻じられ、脛の疲労骨折、半月板損傷等の原因となる懸念も生じる。
【0074】
図8(B)に示すように、インソール2は、インソール本体12と足裏パッド21を有する。
【0075】
インソール本体12では、母趾球領域Atの厚みよりも小趾球領域Ahの厚みが小さく、母趾球領域Atの高さ位置よりも小趾球領域Ahの高さ位置が低い。
【0076】
足裏パッド21における第1所定厚みK1は、次の数式(2)に示す厚みを基本とする。数式(2)において、母趾球Et側の部位の高さH1と小趾球Eh側の部位の高さH5の差は、高さを補完するための補完厚みである。本体厚みKiは、母趾球領域Atの厚みである。
K1=(H1-H5)+Ki×1/2 ・・・(2)
【0077】
図8(B)では、足裏パッド21によって着用者の小趾球Ehの高さ位置を上げ、適正な高さ位置を有する横アーチRh1にされる。
【0078】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態では、足裏パッド21は、インソール本体11、12の裏面に設けられたが、表面に設けられてもよい。
【0079】
図9は、第3実施形態に係る、インソール3の構造の一例を示す拡大側面図である。本実施形態の説明では、他の実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0080】
インソール3は、インソール本体11の表面に設けられる足裏パッド21を有する。
【0081】
足裏パッド21は、インソール本体11よりも足圧力を受けた際の厚み方向の圧縮量が小さくなるように設定される。足裏パッド21は、粘性的性質によって小趾球Ehから受けた足圧力を足裏パッド21の全体に分散し、足裏パッド21の全体でインソール本体11に足圧力をかけ、インソール本体11の沈下量を低減させる。したがって、着用者の足部は、インソール3を介し、より効率的に小趾球Ehの足圧力に応じた床反力を得ることができる。
【0082】
(第4実施形態)
第1、第2及び第3実施形態では、足裏パッド21が第1領域A1に延在する例を説明したが、これに限定されない。
【0083】
図10は、第4実施形態に係る、インソール4の構造の一例を示す底面図である。
【0084】
図10に示すように、足裏パッド24は、第1領域A1から、第1趾T1、第2趾T2、及び第3趾T3の中足趾節関節Jm1、Jm2、Jm3に対応する、第2領域A2に延設されてもよい。
【0085】
足裏パッド24は、第1領域A1では第1所定厚みK1を有し、第2領域A2では、第1所定厚みK1よりも小さい第2所定厚みK2(不図示)を有する。第2所定厚みK2は、履物及びインソール本体11、12に合わせ、着用者の小趾球Ehが、母趾球Etと同じ高さ位置又は母趾球Etよりも高い位置に支持される厚みになるように、経験的又は実験的に調整し、設定される。
【0086】
インソール4では、着用者の小趾球Ehが第1所定厚みK1を有する第1領域A1によって支持され、母趾球Etが第2所定厚みK2を有する第2領域A2によって支持される。
【0087】
(第5実施形態)
第1~第4実施形態では、足裏パッド21、24がインソール1~4に設けられた例を説明したが、これに限定されない。足裏パッド21、24は、粘着剤等の貼着手段によって着用者の足裏に貼着されてもよい。
【0088】
すなわち、足裏パッド21は、着用者の足部に貼着され、着用者の小趾球Ehが母趾球Etと同じ高さ又は母趾球Etよりも高い位置に支持される第1所定厚みK1の薄板形状を有し、着用者の足部の第4趾T4及び第5趾T5の中足趾節関節Jm4、Jm5から第4趾T4及び第5趾T5の近位趾節間関節Jp4、Jp5までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域Amを含まない、第1領域A1に延在する。
【0089】
なお、ここでは、足裏パッド21が着用者の足裏に貼着される例を説明したが、足裏パッド24が着用者の足裏に貼着されてもよい。
【0090】
(第6実施形態)
図11は、第6実施形態に係る靴下の構造を示す底面図である。
【0091】
第1~第4実施形態では、足裏パッド21、24がインソール1~4に設けられ、また、第5実施形態では、足裏パッド21、24が着用者の足裏に貼着される例を説明したが、これに限定されない。足裏パッド21は、靴下5に設けられてもよい。
【0092】
図6に示すように、靴下5は、足裏パッド21を有する。足裏パッド21は、着用者の小趾球Ehが母趾球Etと同じ高さ又は母趾球Etよりも高い位置に支持される第1所定厚みK1の薄板形状を有し、着用者の足部の第4趾T4及び第5趾T5の中足趾節関節Jm4、Jm5から第4趾T4及び第5趾T5の近位趾節間関節Jp4、Jp5までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域Amを含まない、第1領域A1に延在する。
【0093】
なお、ここでは、足裏パッド21が靴下5に設けられる例を説明しが、足裏パッド24が靴下5に設けられてもよい。
【0094】
(作用及び効果)
実施形態によれば、次の作用及び効果を奏する。
【0095】
(a)足裏パッド21、24は、第4趾T4及び第5趾T5の中足趾節関節Jm4、Jm5から第4趾T4及び第5趾T5の近位趾節間関節Jp4、jp5までに対応する第1領域A1に延在する。したがって、着用者の足部は、足裏パッド21、24を介し、小趾球Ehの足圧力に応じた床反力を効率よく得ることができる。着用者は、立脚期において、効率よく床反力を得ることによって小趾球Eh側から母趾球Et側への重心移動がスムーズになり、歩行や走行等の動作が容易になる。また、着用者は、立位姿勢やしゃがみ姿勢にあるとき、足部の左右外側に位置する小趾球Ehから効率よく床反力を得ることによって左右のバランスをとりやすく、姿勢を安定させることができる。
【0096】
(b)足裏パッド21、24は、着用者の足部の第4趾T4及び第5趾T5の近位趾節間関節Jp4、jp5に対応する領域にも延在する。したがって、着用者が第4趾T4及び第5趾T5の底屈をすると、第4趾T4及び第5趾T5は、小趾球Ehとともに、足裏パッド21、24に足圧力をかけてより強い床反力を得ることができる。
【0097】
(c)靴やインソール本体11、12の小趾球領域Ahが、劣化によって沈下した場合や低く構成されている場合、インソール1~4は、足裏パッド21、24を設けることによって靴やインソール本体11、12の小趾球領域Ahの高さを補完し、着用者の小趾球Ehを適切な高さ位置に支持することができる。
【0098】
(d)足裏パッド21、24は、着用者の小趾球Ehの高さ位置を上げることにより、立脚期において、距骨下関節Jsの外返しを促し、外反母趾及び内反膝を改善させることができる。
【0099】
(e)足裏パッド21、24は、着用者の小趾球Ehの高さ位置を上げることにより、立脚期において、中足趾節関節Jmの背屈角度を小さくし、履物のアッパーの皺の形成を抑制することができる。
【0100】
(f)着用者が、特に両膝を前方へ向けて、爪先立ちでしゃがみ姿勢をとるとき、足裏パッド21、24は、着用者の小趾球Ehの高さ位置を上げることによって距骨下関節Jsの外返しを促し、下腿を内旋させて内側に締める。したがって、着用者は、楽に安定したしゃがみ姿勢をとることができる。
【0101】
(g)着用者が爪先立ちでしゃがみ姿勢をとるとき、足裏パッド21、24は、着用者の小趾球Ehの高さ位置を上げることによって中足趾節関節Jmの背屈角度を小さくする。したがって、着用者は、中足趾節関節Jmを大きく背屈させなくても、楽に安定したしゃがみ姿勢をとることができる。
【0102】
(h)足裏パッド21、24は、中足骨Mtの骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域Amにかからないように配置され、縦アーチRvの上下動を制限しない。したがって、ウィンドラス機構は、足裏パッド21、24から縦アーチRvの上下動の制限を受けず、衝撃吸収機能や足部の剛性向上機能を適切に発揮することができる。また、履物又はインソール1~4にアーチサポートが設けられている場合においても、足裏パッド21、24は、アーチサポートが設けられた領域にはかからないように配置され、縦アーチRvの上下動を制限しない。また、足裏パッド21、24は、履物及びインソール本体11、12の屈曲部位を縦断しないように配置され、中足趾節関節Jmの背屈による歪みが生じにくく、第1趾T1から第5趾T5の中足趾節関節Jmの配列の乱れを抑える。
【0103】
(i)インソール1~4は、履物の内底に敷設される。インソール本体11、12は、縁部が履物の内壁に押し当たることによって横ずれが防止される。インソール本体11、12の表面及び/又は裏面に設けられた足裏パッド21、24も、横ずれが防止され、着用者の足部の第4趾T4及び第5趾T5の中足趾節関節Jm4、Jm5から第4趾T4及び第5趾T5の近位趾節間関節Jp4、jp5までに対応する第1領域A1に、より確実に固定される。
【0104】
(j)第1所定厚みK1は、着用者の小趾球Ehが、母趾球Etと同じ高さ位置又は母趾球Etよりも高い位置に支持される厚みに定められる。したがって、足裏パッド21、24は、横アーチRh1を高い位置に支持し、立脚期における小趾球Eh側から母趾球Et側への重心移動をスムーズにする。
【0105】
(k)足裏パッド24は、第1領域A1から、第1趾T1、第2趾T2、及び第3趾T3の中足趾節関節Jm1、Jm2、Jm3に対応する、第2領域A2に延設される。したがって、着用者は、小趾球Ehだけでなく、母趾球Etにおいても、効率よく床反力を得ることができ、歩行や走行等の動作が容易になる。
【0106】
(l)第1領域A1は、第2領域A2よりも厚みが大きい。したがって、足裏パッド24は、立脚期における小趾球Eh側から母趾球Et側への重心移動をスムーズにする。
【0107】
(m)足裏パッド21、24は、粘弾性部材からなり、保形成に優れ、かつ衝撃力の吸収性に優れる。また、足裏パッド21、24は、着用者の方向転換動作等の足部を捻じる動作によって生じたせん断力や回転力の吸収性も優れる。また、足裏パッド21、24は、履物内底において長時間足圧力を受けても圧縮残留歪(ヘタリ)が少なく、耐久性に優れる。
【0108】
(n)着用者が爪先立ちでしゃがみ姿勢をとるとき、足裏パッド21、24は、距骨下関節Jsの外返しを促すことによって下腿を内旋させて内側に締め(上記f)、また、中足趾節関節Jmの背屈角度を小さくし(上記g)、中足骨Mtの浮き上がりを抑える。したがって、足裏パッド21、24は、履物の先芯Scの上側縁部Suに着用者の足背を当たりにくくし、足背の障害の発生を防止する。
【0109】
(o)第1所定厚みK1は、1.0mm以上、かつ3.0mm以下である。インソール1~4は、肉薄に形成され、着用者の足部への負担が少なく、スポーツシューズ等の着用者の足部にフィットした履物の内底にも敷設することができる。
【0110】
(p)足裏パッド21、24は、履物の内底において、母趾球領域Atよりも小趾球領域Ahが低いインソール1~4の表面及び/又は裏面に設けられる。したがって、足裏パッド21、24は、母趾球領域Atよりも小趾球領域Ahの高さ位置が低く設定された履物のインソール1~4に適用することができるし、圧縮残留歪(ヘタリ)によって小趾球領域Ahの高さ位置が沈下した履物のインソール1~4に適用することもできる。足裏パッド21、24は、小趾球領域Ahの高さを補完し、着用者の小趾球Ehを適切な高さ位置に支持することができる。
【0111】
(q)足裏パッド21、24は、着用者の足裏に貼着され、着用者の小趾球Ehを適切な高さ位置に支持することができる。
【0112】
(r)靴下は、足裏部に足裏パッド21、24を有し、着用者の小趾球Ehを適切な高さ位置に支持することができる。
【0113】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0114】
例えば、実施形態では、足裏パッド21、24がインソール本体11、12に設けられる例を説明したが、足裏パッド21、24は、従来のインソールXや他のインソールに設けられてもよい。また、足裏パッド21、24は、直接、履物の内底に取り付けられてもよい。
【0115】
また、実施形態では、足裏パッド21、24がインソール本体11、12の表面(実施形態1、2、4)又は裏面(実施形態3)に設けられる例を説明したが、足裏パッド21、24は、インソール本体11、12の表面と裏面の両方に設けられてもよい。
【0116】
また、実施形態では、インソール本体11、12は、履物の内壁に沿った外周形状を有するが、これに限定されない。例えば、インソール本体11、12は、履物の内底の前足部に対応した領域等の履物の内底の一部を占め、外周形状を有するものであってもよい。
【0117】
また、実施形態2では、第1所定厚みK1が着用者の小趾球Ehが母趾球Etよりも高い位置に支持される厚みに定められる例を説明したが、次の数式(3)に示すように、第1所定厚みK1は、母趾球Et側の部位の高さH1と小趾球Eh側の部位の高さH5の差である補完厚みとし、着用者の小趾球Ehが、母趾球Etと同じ高さ位置に支持される厚みに定められてもよい。
K1=H1-H5 ・・・(3)
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によれば、着用者の姿勢を安定させ、着用者の歩行動作、走行動作及びしゃがみ動作等の動作を容易にし、着用者の足部の障害の発生を防止することができる、インソール、足裏パッド及び靴下を提供することができる。
【符号の説明】
【0119】
1、2、3、4 インソール
5 靴下
11、12 インソール本体
21、24 足裏パッド
A1 第1領域
A2 第2領域
Ah 小趾球領域
Am 中足骨骨幹部領域
At 母趾球領域
Eh 小趾球
Et 母趾球
Jm1 第1趾の中足趾節関節
Jm2 第2趾の中足趾節関節
Jm3 第3趾の中足趾節関節
Jm4 第4趾の中足趾節関節
Jm5 第5趾の中足趾節関節
Jp4 第4趾の近位趾節間関節
Jp5 第5趾の近位趾節間関節
Js 距骨下関節
S 安全靴
Sc 先芯
Su 上側縁部
【要約】
【課題】 着用者の姿勢を安定させ、着用者の歩行動作、走行動作及びしゃがみ動作等の動作を容易にし、着用者の足部の障害の発生を防止することができる、インソール、足裏パッド及び靴下を提供する。
【解決手段】 履物の内底に敷設されるインソール1は、インソール本体11と、第1所定厚みK1の薄板形状を有し、前記インソール本体11の表面及び/又は裏面に設けられ、着用者の足部の第4趾T4及び第5趾T5の中足趾節関節Jm4、Jm5から前記第4趾T4及び前記第5趾T5の近位趾節間関節Jp4、Jp5までに対応する領域を含み、かつ中足骨の骨幹部に対応する中足骨骨幹部領域Amを含まない、第1領域A1に延在する足裏パッド21と、を有する。
【選択図】
図1