(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】放射線低減フィルター及び放射線低減フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
G21K 3/00 20060101AFI20221130BHJP
A61B 6/10 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G21K3/00 W
A61B6/10 303
(21)【出願番号】P 2021165358
(22)【出願日】2021-10-07
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0111028
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521443450
【氏名又は名称】エイト マージン カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,スン ウォン
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0237323(US,A1)
【文献】特開2015-212670(JP,A)
【文献】国際公開第2009/022625(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/054709(WO,A1)
【文献】泉 裕之 外3名,416. 酸化鉄を主成分とする被曝低減付加フィルタについて(第2報),日本放射線技術学会雑誌,日本,1996年,52 巻, 10 号,p. 1462,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrt/52/10/52_KJ00001353923/_article/-char/ja,Online ISSN 1881-4883, Print ISSN 0369-4305
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 1/00 - 7/00
A61B 6/00 - 6/14,313
G21F 1/00 - 9/36
G01T 1/00 - 7/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線映像機器の放射部に装着される放射線低減フィルターであって、
前記放射線低減フィルターは、
放射線低減フィルターの全重量を基準に、
酸化リチウム(Li
2
O)2~8.5重量%、酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)14~28重量%、二酸化ケイ素(SiO
2
)55~75重量%、酸化モリブデン(MoO
3
)0.005~0.6重量%を含む組成物からなり、
酸化物態様でない金属元素を含まない、放射線低減フィルター。
【請求項2】
前記放射線低減フィルターは、
酸化ナトリウム(Na
2O)、酸化カリウム(K
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、五酸化リン(P
2O
5)、酸化スズ(SnO
2)、酸化鉄(Fe
2O
3)をさらに含む組成物からなる、請求項1に記載の放射線低減フィルター。
【請求項3】
前記放射線低減フィルターは、
フィルターの全重量を基準に、
酸化リチウム(Li
2O)3.55重量%、酸化アルミニウム(Al
2O
3)21.2重量%、二酸化ケイ素(SiO
2)66.6重量%、酸化モリブデン(MoO
3)0.009重量%、酸化ナトリウム(Na
2O)0.5重量%、酸化カリウム(K
2O)0.08重量%、酸化マグネシウム(MgO)0.26重量%、酸化カルシウム(CaO)0.38重量%、酸化ストロンチウム(SrO)0.04重量%、酸化バリウム(BaO)0.89重量%、酸化亜鉛(ZnO)1.5重量%、二酸化チタン(TiO
2)2.28重量%、酸化ジルコニウム(ZrO
2)1.88重量%、五酸化リン(P
2O
5)0.025重量%、酸化スズ(SnO
2)0.13重量%、酸化鉄(Fe
2O
3)0.015重量%を含む組成物からなる、請求項
2に記載の放射線低減フィルター。
【請求項4】
前記放射線低減フィルターは、3mm~5mm厚さで形成される、請求項1に記載の放射線低減フィルター。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項の放射線低減フィルターが装着された放射線映像機器。
【請求項6】
酸化リチウム(Li
2O)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化モリブデン(MoO
3)を含む組成物からなる原材料を準備する段階(preparing);
前記原材料を1600℃~1800℃の温度で溶融後に精練する段階(melting and refining);
精練された前記溶融物を板状フィルターに成形する段階(shaping);
成形された前記板状フィルターを後続熱処理して結晶化する段階(crystalizing);及び
後続熱処理された前記板状フィルターを冷却させる段階(cooling)
を含
み、
前記原材料は、
原材料の全重量を基準に、
酸化リチウム(Li
2
O)2~8.5重量%、酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)14~28重量%、二酸化ケイ素(SiO
2
)55~75重量%、酸化モリブデン(MoO
3
)0.005~0.6重量%を含んで組成され、酸化物態様でない金属元素を含まない、放射線低減フィルターの製造方法。
【請求項7】
前記成形する段階後に、成形された前記板状フィルターを、あらかじめ設定された温度に徐々に加熱して応力を除去する段階(annealing)をさらに含む、請求項
6に記載の放射線低減フィルターの製造方法。
【請求項8】
前記結晶化する段階は、
前記板状フィルターを、最小10分~最大60分の範囲内で650℃に達するように漸次加熱する1次加熱段階と、最小10分~最大100分の範囲内で800℃に達するように漸次加熱する2次加熱段階と、最小10分~最大80分の範囲内で980℃に達するように漸次加熱する3次加熱段階と、前記3次加熱したフィルターを、60分以内の間に980℃に保たせる温度維持段階をさらに含む、請求項
6に記載の放射線低減フィルターの製造方法。
【請求項9】
前記原材料は、
酸化ナトリウム(Na
2O)、酸化カリウム(K
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、五酸化リン(P
2O
5)、酸化スズ(SnO
2)、酸化鉄(Fe
2O
3)をさらに含む組成物からなる、請求項
8に記載の放射線低減フィルターの製造方法。
【請求項10】
前記原材料は、
原材料の全重量を基準に、
酸化リチウム(Li
2O)3.55重量%、酸化アルミニウム(Al
2O
3)21.2重量%、二酸化ケイ素(SiO
2)66.6重量%、酸化モリブデン(MoO
3)0.009重量%、酸化ナトリウム(Na
2O)0.5重量%、酸化カリウム(K
2O)0.08重量%、酸化マグネシウム(MgO)0.26重量%、酸化カルシウム(CaO)0.38重量%、酸化ストロンチウム(SrO)0.04重量%、酸化バリウム(BaO)0.89重量%、酸化亜鉛(ZnO)1.5重量%、二酸化チタン(TiO
2)2.28重量%、酸化ジルコニウム(ZrO
2)1.88重量%、五酸化リン(P
2O
5)0.025重量%、酸化スズ(SnO
2)0.13重量%、酸化鉄(Fe
2O
3)0.015重量%を含む組成物からなる、請求項
9に記載の放射線低減フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線映像機器に装着可能な放射線低減フィルター及び放射線低減フィルターの製造方法に関し、より詳細には、放射線映像機器の撮影時に発生する放射線量を大幅に低減させ、周辺の関係者が不要な放射線に被爆することを防止する一方で、フィルターを非装着した場合に比べて同等又はより向上した撮影映像の品質を提供する放射線低減フィルター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院で用いられる放射線映像機器は、放射線撮影室で主に用いられる固定型撮影装置と、手術室で主に用いられる移動型撮影装置とに区別される。
【0003】
移動型撮影装置は、その形状が略C状であることからCアーム(C-arm)とも呼ばれ、移動型撮影装置が手術室で用いられる場合、手術中に患部を撮影して整復(reposition)などが正常になされたかどうかが実時間で確認できる。
【0004】
移動型撮影装置は固定型に比べて、撮影時に放出される放射線量は少ないが、手術途中に持続して用いられるため、撮影装置周辺の医師、看護師及び患者などは手術過程で多量の放射線に被爆せざるを得ない。
【0005】
一方、固定型撮影装置は、持続して撮影がなされるものではないが、移動型に比べて1回撮影時に放出される放射線量が多いため、短期間に反復撮影をした場合、患者が多量の放射線に被爆することがある。
【0006】
放射線映像機器による被爆量を減らすための方案の一つとして、放射線遮蔽フィルターが提案されたことがある。
【0007】
従来の放射線遮蔽フィルターの一つとして、放射線遮蔽率の高い鉛(Pb)や銀(Ag)などの金属を用いて製作したものがある。しかし、鉛や銀で製作された放射線遮蔽フィルターは、鮮明度や明暗対比などの映像品質が過度に低下するという問題点があった。
【0008】
韓国登録特許第10-1638364号公報(先行発明)は、ケースの内部に水と粉末が充填されてなる液状型放射線遮蔽フィルターを提案している。しかし、当該先行発明も同様、放射線遮蔽の効果は期待できるが、銀(Ag)素材の限界により、依然として、満足すべき映像品質が期待し難いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、放射線映像機器から撮影時に発生する放射線量を低減させ、周辺に位置している関係者が多量の放射線に被爆することを防止する放射線低減フィルター及び放射線低減フィルターの製造方法を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする他の課題は、放射線低減フィルターが非装着された場合に比べて同等又 はより優れた映像品質を提供する放射線低減フィルター及び放射線低減フィルターの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決するための本発明の一実施例として、酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化モリブデン(MoO3)を含む組成物からなる放射線低減フィルターが提案される。
【0013】
本発明の他の実施例として、酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化モリブデン(MoO3)の他に、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、五酸化リン(P2O5)、酸化スズ(SnO2)、酸化鉄(Fe2O3)をさらに含む組成物からなる放射線低減フィルターが提案される。
【0014】
本発明のさらに他の実施例として、前述の実施例の放射線低減フィルターが装着された放射線映像機器が提案される。
【0015】
本発明のさらに他の実施例として、酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化モリブデン(MoO3)を含む組成物からなる原材料を準備する段階(preparing);前記原材料を1600℃~1800℃の温度で溶融後に精練する段階(melting and refining);前記精練された溶融物を鋳造、圧縮、圧延、浮遊の少なくとも一過程を経て板状フィルターに成形する段階(shaping);及び、前記成形されたフィルターを後続熱処理して結晶化する段階(sintering)を含む放射線低減フィルターの製造方法が提案される。
【0016】
前記実施例の放射線低減フィルターの製造方法は、前記成形段階後に、前記成形されたフィルターを徐々に加熱して応力を除去する段階(annealing)をさらに含むことができる。
【0017】
本発明のさらに他の実施例として、前記結晶化段階は、前記フィルターを、最小10分~最大60分の範囲内で650℃に達するように漸次加熱する1次加熱段階と、最小10分~最大100分の範囲内で800℃に達するように漸次加熱する2次加熱段階と、最小10分~最大80分の範囲内で980℃に達するように漸次加熱する3次加熱段階と、前記3次加熱したフィルターを、60分以内の間に980℃に保たせる温度維持段階をさらに含む、放射線低減フィルターの製造方法が提案される。
前記さらに他の実施例の放射線低減フィルターの製造方法は、酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化モリブデン(MoO3)の他に、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、五酸化リン(P2O5)、酸化スズ(SnO2)、酸化鉄(Fe2O3)をさらに含む組成物によってなり得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施例によれば、放射線映像機器から撮影時に発生する放射線量を顕著に低減させ、機器周辺の関係者が多量の放射線に被爆することを防止する。
【0019】
本発明の実施例によれば、放射線低減フィルターが非装着された場合に比べて同等又は優れた撮影映像の品質を保障する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】実施例1の放射線低減フィルターが適用された放射線映像機器の撮影結果を示す写真である。
【
図1B】実施例1の放射線低減フィルターが適用された放射線映像機器の撮影結果を示す写真である。
【
図1C】実施例1の放射線低減フィルターが適用された放射線映像機器の撮影結果を示す写真である。
【
図1D】実施例1の放射線低減フィルターが適用された放射線映像機器の撮影結果を示す写真である。
【
図2】実施例2の放射線低減フィルターの製造方法を時系列的に示すフローチャートである。
【
図3】実施例3の放射線低減フィルターの製造方法を時系列的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使われる「実施例」という用語は、例示、事例又は図解のことなどを指し得る。ただし、本発明の対象は、本明細書に記述の実施例によって限定されず、本発明の技術的思想に含まれる実施例の変形(change)、変換(conversion)、均等物(equivalent)又は代替物(substitute)のいずれをも本発明に含まれるものと理解されるべきであろう。
【0022】
本明細書において「含む」、「備える」、「有する」又はそれらと類似の用語が使われてよい。それらの用語が特許請求の範囲で使われる場合、更なる他の構成要素を排除しないという意味の開放的転換語(open type transition)である「comprising」として翻訳及び解釈されるべきである。
【0023】
特に断らない限り、技術的又は科学的な用語を含めて本明細書で使われる全ての用語は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるのとき同じ意味を有する。
【0024】
本発明において、「放射線映像機器」とは、放射線を用いて被検体を診断する装置のことを総称するものであり、病院で用いられるX線撮影機、Cアーム、CT撮影機、PETCT撮影機、及び産業現場で用いられる非破壊検査装備のいずれか一つを指すことができる。また、必ずしもそれらに限定するものではなく、放射線を用いて被検体を診断する装置であれば、その名称にかかわらずいかなる機器も本発明の「放射線映像機器」に相当する。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1は、放射線映像機器の放射部に装着可能な放射線低減フィルターに関する。
【0026】
実施例1の放射線低減フィルターは、酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化モリブデン(MoO3)を含んで組成される。
【0027】
また、実施例1の放射線低減フィルターは、全重量を基準に、二酸化ケイ素(SiO2)55~75重量%、酸化アルミニウム(Al2O3)14~28重量%、酸化リチウム(Li2O)2~8.5重量%、酸化モリブデン(MoO3)0.005~0.6重量%で組成されてよい。
【0028】
二酸化ケイ素は、放射線低減フィルターがガラス状となるようにし、実施例1の放射線低減フィルターを構成する組成物成分において最大の重量比を占める。二酸化ケイ素の重量比が55重量%未満であると、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化モリブデンの重量比が相対的に高くなり、撮影映像の鮮明度が低下することがある。また、二酸化ケイ素の重量比が75重量%を超えると、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化モリブデンの重量比が相対的に低くなり、フィルターの強度又は放射線低減性能が低下することがある。
【0029】
酸化アルミニウムは、低エネルギー領域の放射線を遮蔽し、組成物の硬化を誘導する。酸化アルミニウムの重量比が28重量%を超えると、撮影映像の対比(Contrast)が増加することから、撮影映像において対象体の識別がし難くなることがある。酸化アルミニウムの重量比が14重量%未満であると、低エネルギー領域の放射線低減能力が低下することがある。
【0030】
酸化リチウムは、放射線低減フィルターの耐水性(water-proofing)及び耐熱性(thermal resistance)を改善する。また、酸化リチウムは、放射線低減フィルターの表面を強化させる役割を担う。酸化リチウムが組成されることにより、放射線低減フィルターを薄板状に成形しても、十分の耐久性を提供する。
【0031】
酸化モリブデンは重量比によって放射線低減フィルターの光透過率を決定する。酸化モリブデンは、フィルターの製造工程において結晶化核を形成するのに寄与する一方、その含有量によってフィルターの着色程度に寄与する。酸化モリブデンが多量で含まれると、フィルターの粘度が低下する。酸化モリブデンは相対的に少量で含まれる必要があり、重量比が0.6重量%を超えると、撮影映像の鮮明度が低下することがある。
【0032】
実施例1の放射線低減フィルターは、酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化モリブデン(MoO3)の他に、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、五酸化リン(P2O5)、酸化スズ(SnO2)、酸化鉄(Fe2O3)をさらに含む組成物からなり得る。
【0033】
ここで、放射線低減フィルターは、前記組成物の全重量を基準に、酸化リチウム(Li2O)3.55重量%、酸化アルミニウム(Al2O3)21.2重量%、二酸化ケイ素(SiO2)66.6重量%、酸化モリブデン(MoO3)0.009重量%、酸化ナトリウム(Na2O)0.5重量%、酸化カリウム(K2O)0.08重量%、酸化マグネシウム(MgO)0.26重量%、酸化カルシウム(CaO)0.38重量%、酸化ストロンチウム(SrO)0.04重量%、酸化バリウム(BaO)0.89重量%、酸化亜鉛(ZnO)1.5重量%、二酸化チタン(TiO2)2.28重量%、酸化ジルコニウム(ZrO2)1.88重量%、五酸化リン(P2O5)0.025重量%、酸化スズ(SnO2)0.13重量%、酸化鉄(Fe2O3)0.015重量%の組成比からなり得る。
【0034】
酸化ナトリウムは、放射線低減フィルターの耐衝撃性(shock resistance)を増加させ、且つ、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムが固体化する際に、各成分を均一に分布(distribution)させる。
【0035】
酸化ストロンチウムは、放射線を低減させる役割を担う。酸化バリウムは、フィルターの生産において酸化鉛の代替材として用いられる。酸化亜鉛は、結晶化したフィルターの表面上にマクロ構造が形成されることを防止することによってフィルターの表面を強化させる。
【0036】
五酸化リン、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄は、放射線低減フィルターの強度及び耐久性を増加させる。
【0037】
二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズは、フィルターの結晶化工程中に微結晶化構造に影響を及ぼすように許容する。
【0038】
上記に例示された組成物で製造された放射線低減フィルターは、3mm~5mmの厚さにおいて光透過率70%以上を示し、紫外線(UV)の吸収率が増加するので、放射線を十分に低減させると同時に高品質の撮影映像を保障することができる。
【0039】
放射線遮蔽率試験
表1に、実施例1に係る放射線低減フィルターの放射線遮蔽率試験の測定環境及び遮蔽結果を示す。
【0040】
【0041】
表1において、遮蔽率は、式1によって算出した。
【0042】
【0043】
式1において、I1は、試験片を位置させる前に測定された電離電流(A)であり、I2は、試験片を位置させた後に測定された電離電流(A)である。
【0044】
表1に見られるように、実施例1に係る放射線低減フィルターは、71.1%の優れた遮蔽率を示した。
【0045】
映像結果物試験
表2に、実施例1に係る放射線低減フィルターを装着した放射線映像機器の撮影結果を確認するための試験条件を示す。
【0046】
【0047】
表2の試験条件において、実施例1の放射線低減フィルターをCアームのビーム放射部に位置させた状態で、放射線低減フィルターの個数を異ならせて測定した。
【0048】
図1A~
図1Dは、実施例1の放射線低減フィルターが適用された放射線映像機器の撮影結果を示す写真である。具体的に、
図1A及び
図1Bはそれぞれ、1個(1ea)の5mm放射能低減フィルターをビーム放射部に装着して撮影した結果物であり、
図1C及び
図1Dはそれぞれ、2個(2ea)の5mm放射能低減フィルターをビーム放射部に装着して撮影した結果物である。
【0049】
図1A~
図1Dにおいて、横に表示された4本の線L1~L4は、実施例1の放射線低減フィルターが装着されたまま撮影された映像において、血管や骨格が十分に映像内に表示されるかどうか確認できるように表すテスト標識である。
【0050】
図1A及び
図1Bの映像結果物に見られるように、1個(1ea)の5mm放射能低減フィルターを装着した場合、4本の標識線L1,L2が鮮明に見えることが確認できる。また、
図1C及び
図1Dの映像結果物に見られるように、2個(2ea)の5mm放射能低減フィルターを装着して放射線遮蔽率を一段階さらに高めた場合にも、相変らず4本の標識線L3,L4が鮮明に見えることが確認できる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、実施例1の放射線低減フィルターを製造する方法に関し、
図2は、実施例2のフィルターの製造方法を時系列的に示すフローチャート(flowchart)である。
【0052】
図2を参照すると、実施例2のフィルターの製造方法は、原材料を準備する段階(S110)、前記原材料を溶融及び精練する段階(S120)、精練された溶融物を板状フィルターに成形する段階(S130)、及び成形されたフィルターを結晶化する段階(S150)を含んでなり、前記成形段階(S130)後に、応力を除去する段階(S140)又は透明度を向上させるための切削段階(図示せず)をさらに含むことができる。
【0053】
原材料準備段階(S110)において、原材料は、酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化モリブデン(MoO3)を含む組成物からなる。このとき、原材料の全重量を基準に、二酸化ケイ素(SiO2)55~75重量%、酸化アルミニウム(Al2O3)14~28重量%、酸化リチウム(Li2O)2~8.5重量%、酸化モリブデン(MoO3)0.005~0.6重量%の組成比からなり得る。
【0054】
次に、原材料の溶融及び精練段階(S120)が行われる。
【0055】
溶融及び精練段階(S120)は、準備した原材料を、1600℃~1800℃の温度で加熱して溶融(melting)した後、溶融物から気体内包物(又は、気泡)を除去することによって不純物を精練(refining)する段階である。
【0056】
次に、溶融物の成形段階(S130)が行われる。
【0057】
成形段階(S130)は、溶融物を、鋳造法(forging)、圧縮法(compressing)、圧延法(rolling)及び浮遊法(floating)の少なくとも一つの手法を用いて板状フィルターに形成させる過程である。成形段階(S130)は、必ずしもそれらの過程に限定される必要はなく、フルコール法(Fourcault)、ピッツバーグ法(Pittsburg)、フュージョンダウンドロー法(Fusion Down Draw)などの様々な手法によって行われてよい。
【0058】
次に、応力除去段階(S140)が行われる。
【0059】
応力除去段階(S140)は、成形されたフィルターを、あらかじめ設定された温度に徐々に加熱しながら、以前の工程で流入した内部残留応力を除去する段階であって、アニーリング(annealing)工程として理解されてよい。
【0060】
アニーリング工程により、成形フィルターは、450~600℃までに徐々に加熱される過程で全体的に均一に熱を吸収しながら、フィルターに内在している応力が除去される程度に十分に柔らかくなる。
【0061】
一方、本明細書及び特許請求の範囲において、「応力の除去」とは、応力の完全な除去の他にも、応力をあらかじめ設定された基準以下に緩和したり或いはおよそ完全に除去することと解釈されてもよい。また、強度信頼性に対して厳格な要求条件が提示されない場合、応力除去段階(S140)は省略されてもよい。
【0062】
次に、結晶化段階(S150)が行われる。
【0063】
結晶化段階(S150)は、アニーリングされたフィルターを後続熱処理する方法で実行されてよい。
【0064】
例えば、結晶化段階(S150)は、フィルターをセラミック炉(ceramics furnace)又はセラミックチャンバー(ceramics chamber)に投入し、後続熱処理過程を行うことによって、成形フィルターを十分に強化させる段階である。
【0065】
その後、フィルターの透光性の向上又はフィルター表面の平坦化のためのエッチング段階(図示せず)及び冷却段階(図示せず)の少なくとも一つがさらに含まれてよい。冷却段階は、前記S150段階の後続熱処理が終了した後、フィルターを室温で又はあらかじめ設定された温度で十分に冷却させる段階である。
【0066】
以上の工程によって製造されたフィルターは、成形過程において冷却及び再加熱により引張応力ができて内部強度が強化し、外部衝撃に強いという特性を有する。
【実施例3】
【0067】
実施例3は、実施例1の放射線低減フィルターを製造するための方法である。
【0068】
図3は、実施例3の放射線低減フィルターを製造するための方法を示すフローチャートである。
【0069】
図3を参照すると、実施例3の方法は、原材料を準備する段階(S210)、原材料を溶融後に精練する段階(S220)、板状フィルターに成形する段階(S230)、応力を除去する段階(S240)、順次の加熱によりフィルターを結晶化する段階(S250~S270)、及び一定温度の維持によりフィルターの結晶構造を均質化する段階(S280)を含む。
【0070】
実施例3の原材料準備段階(S210)、溶融及び精練段階(S220)、フィルター成形段階(S230)、応力除去段階(S240)は、実施例2の原材料準備段階(S110)、溶融及び精練段階(S120)、フィルター成形段階(S130)、応力除去段階(S140)と同一であり、その重複する説明は省く。
【0071】
1次加熱段階(S250)は、応力の除去されたフィルターを、セラミックチャンバーで最小10分~最大60分の範囲内で約650℃の温度に達するように漸次加熱する段階である。好ましくは、約30分の範囲内で650℃まで漸次加熱する。
【0072】
2次加熱段階(S260)は、1次加熱した650℃のフィルターを、さらに、最小10分~最大100分の範囲内で800℃まで達するように漸次加熱する段階である。好ましくは、1次加熱した650℃のフィルターを、約20分の範囲内で800℃まで漸次加熱する。1次及び2次加熱によってフィルター内に結晶化核が形成されながら、セラミックガラスからなるフィルターが作られる。
【0073】
3次加熱段階(S270)は、2次加熱された800℃のフィルターを、さらに、最小10分~最大80分の範囲内で980℃まで達するように漸次加熱する段階である。好ましくは、2次加熱した800℃のフィルターを、約25分間、5℃/分の速度で918℃まで漸次加熱する。1次及び2次加熱によって結晶化核が形成されると、3次加熱により、前記形成された結晶化核を十分に成長させる。
【0074】
温度維持段階(S280)は、3次加熱した最高温度を、60分以内の間に保たせる段階である。好ましくは、3次加熱による最大温度、すなわち、918℃を約10分間維持させる。あらかじめ設定された時間の間に一定温度に維持させることにより、結晶の微細構造が均質化する。
【0075】
その後、フィルターの透光性の向上又はフィルター表面の平坦化のためのエッチング段階(図示せず)及び冷却段階(図示せず)の少なくとも一つがさらに含まれてよい。冷却段階は、前記S280段階の温度維持が終了した後、フィルターを室温で又はあらかじめ設定された温度で十分に冷却させる段階である。
【0076】
一方、実施例3の製造方法で用いられる原材料は、酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、五酸化リン(P2O5)、酸化スズ(SnO2)、酸化鉄(Fe2O3)を含む組成物からなり得る。
【0077】
このとき、前記実施例3において、原材料の組成比は、全重量を基準に、酸化リチウム(Li2O)3.55重量%、酸化アルミニウム(Al2O3)21.2重量%、二酸化ケイ素(SiO2)66.6重量%、酸化モリブデン(MoO3)0.009重量%、酸化ナトリウム(Na2O)0.5重量%、酸化カリウム(K2O)0.08重量%、酸化マグネシウム(MgO)0.26重量%、酸化カルシウム(CaO)0.38重量%、酸化ストロンチウム(SrO)0.04重量%、酸化バリウム(BaO)0.89重量%、酸化亜鉛(ZnO)1.5重量%、二酸化チタン(TiO2)2.28重量%、酸化ジルコニウム(ZrO2)1.88重量%、五酸化リン(P2O5)0.025重量%、酸化スズ(SnO2)0.13重量%、酸化鉄(Fe2O3)0.015重量%となり得る。
【0078】
また、実施例3の方法において、フィルターの結晶化又は均質化を促進するために、原材料に酸化タンタル(Ta2O5)がさらに含まれてよい。または、原材料のうち、二酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化スズ(SnO2)の少なくとも一つに替えて酸化タンタル(Ta2O5)が含まれてもよい。
【0079】
以上、本発明に係るいくつかの実施例を参照して説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を様々に修正及び変更させ得ることが理解できよう。
【要約】 (修正有)
【課題】放射線映像機器に装着可能な放射線低減フィルターとその製造方法を提供する。
【解決手段】放射線低減フィルターは、酸化リチウム(Li
2O)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二酸化ケイ素(SiO
2)及び酸化モリブデン(MoO
3)を含む組成物からなる。酸化リチウム(Li2O)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化モリブデン(MoO3)を含む組成物からなる原材料を1600℃~1800℃の温度で溶融後に精練し、精練された前記溶融物を板状フィルターに成形し、成形された前記板状フィルターを後続熱処理して結晶化し、後続熱処理された前記板状フィルターを冷却させて製造する。
【選択図】
図2