(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】人工毛締結方法
(51)【国際特許分類】
A41G 5/00 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A41G5/00
(21)【出願番号】P 2021169256
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2021-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521550585
【氏名又は名称】合同会社kiraskina
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】矢部 真理子
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特許第6937068(JP,B1)
【文献】特許第6697620(JP,B1)
【文献】特開2006-063457(JP,A)
【文献】特開平06-313202(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1947950(KR,B1)
【文献】国際公開第2021/049187(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 5/00- 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地毛を挿入可能なループ部を有する人工毛を、地毛に締結する人工毛締結方法であって、
前記人工毛のループ部の中に地毛を挿通し締結した後に、地毛を指に巻き付け、前記人工毛と地毛との締結位置が、指に巻き付けた地毛の輪の途中に位置するように、地毛をクロスし、前記人工毛を前記地毛の輪の中に
通すことなく、前記クロスした地毛の先端部を前記地毛の輪の中に引き込むことで、前記締結位置を含む地毛のループ部を形成し、形成した地毛のループ部を小さく絞ることで、前記人工毛を地毛に締結する、人工毛締結方法。
【請求項2】
前記人工毛のループ部を小さく絞り、前記人工毛を地毛に固定させてから、地毛を指に巻き付けて前記クロスを行う、請求項1に記載の人工毛締結方法。
【請求項3】
前記人工毛のループ部を小さく絞らずに、地毛を指に巻き付けてクロスして、前記地毛のループ部を形成し、前記ループ部を形成した地毛の先端部と前記人工毛の毛髪部とを反対方向に引っ張ることで、前記人工毛のループ部を小さく絞ると同時に、前記地毛のループ部も小さく絞ることを特徴とする、請求項1に記載の人工毛締結方法。
【請求項4】
フック部と、可動部と、把持部と、前記可動部と把持部との間に位置するロッド部と、を有し、前記可動部が、前記ロッド部側に倒れ込む第一位置と、前記フック部側に倒れ込む第二位置とに回動可能であり、前記第二位置において前記フック部と連結して閉環部を形成する人工毛締結具を用い、前記クロスさせた地毛の輪の中に前記人工毛締結具を挿入し、前記人工毛締結具の挿入側と反対側の地毛の毛髪部を前記フック部に引っ掛けて、前記毛髪部を前記クロスした地毛の輪の中に通すことで、前記地毛のループ部を形成する、請求項1ないし3のいずれかに記載の人工毛締結方法。
【請求項5】
前記人工毛を地毛に締結した後に、前記人工毛と地毛との締結位置よりも地毛の上側の位置に地毛のみからなる玉結びを形成する、請求項1ないし4のいずれかに記載の人工毛締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工毛を地毛に締結する人工毛締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1本または数本の人工毛を地毛の一本一本に締結することで、増毛を行う方法が知られている。たとえば、特許文献1では、人工毛をループさせ、このループ内に地毛を挿入し、ループを絞ることで、人工毛を地毛に締結する方法が開示されている。
一方、このような技術は、地毛の一本一本に人工毛を取り付ける作業となるため、膨大な数の人工毛を取り付ける場合には、人工毛のループ内に地毛を挿入する作業を容易にすることが、施術者の負担軽減や作業時間短縮に重要となる。そのため、発明者は、特許文献2において、特定の人工毛締結具を用いて、人工毛のループ内に地毛を挿入することで、人工毛を地毛に容易に締結する技術を提案している。また、特許文献3においても、特定の人工毛締結具を用いて、人工毛のループ内に地毛を挿入する技術が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-313202号公報
【文献】特許第6937068号公報
【文献】韓国登録特許第10-1947950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、人工毛と地毛とを締結する際に、人工毛のループ内に地毛を挿入した状態で、人工毛のループを小さく絞ることで、人工毛を地毛に締結する構成であるため、人工毛を地毛に強固に締結することができない場合があった。また、特許文献3に記載の方法では、人工毛を地毛に挿通させた状態で地毛を結ぶことで人工毛を地毛に強固に締結させる構成が例示されているが、人工毛締結具を用いて、地毛10の第2のループを、地毛10の第1のループに通過させる必要があり、人工毛を地毛に容易に締結させるものとは言えなかった。
【0005】
本発明は、人工毛を地毛に容易かつ強固に締結することができる人工毛締結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る人工毛締結方法は、地毛を挿入可能なループ部を有する人工毛を、地毛に締結する人工毛締結方法であって、前記人工毛のループ部の中に地毛を挿通し締結した後に、地毛を指に巻き付け、前記人工毛と地毛との締結位置が、指に巻き付けた地毛の輪の途中に位置するように、地毛をクロスし、前記人工毛を前記地毛の輪の中に通すことなく、前記クロスした地毛の先端部を前記地毛の輪の中に引き込むことで、前記締結位置を含む地毛のループ部を形成し、形成した地毛のループ部を小さく絞ることで、前記人工毛を地毛に締結する。
上記人工毛締結方法において、前記人工毛のループ部を小さく絞り、前記人工毛を地毛に固定させてから、地毛を指に巻き付けて前記クロスを行う構成とすることができる。
上記人工毛締結方法において、前記人工毛のループ部を小さく絞らずに、地毛を指に巻き付けてクロスして、前記地毛のループ部を形成し、前記ループ部を形成した地毛の先端部と前記人工毛の毛髪部とを反対方向に引っ張ることで、前記人工毛のループ部を小さく絞ると同時に、前記地毛のループも小さく絞る構成とすることができる。
上記人工毛締結方法において、フック部と、可動部と、把持部と、前記可動部と把持部との間に位置するロッド部と、を有し、前記可動部が、前記ロッド部側に倒れ込む第一位置と、前記フック部側に倒れ込む第二位置とに回動可能であり、前記第二位置において前記フック部と連結して閉環部を形成する人工毛締結具を用い、前記クロスさせた地毛の輪の中に前記人工毛締結具を挿入し、前記人工毛締結具の挿入側と反対側の地毛の毛髪部を前記フック部に引っ掛けて、前記毛髪部を前記クロスした地毛の輪の中に通すことで、前記地毛のループ部を形成する構成とすることができる。
上記人工毛締結方法において、前記人工毛を地毛に締結した後に、前記人工毛と地毛との締結位置よりも地毛の上側の位置に地毛のみからなる玉結びを形成する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人工毛を地毛に容易かつ強固に締結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態で使用される人工毛の一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態で使用されるニードルの一例を示す斜視図である。
【
図3】(A)は、本実施形態に係るニードルの可動部が第一位置にある場合の要部拡大図であり、(B)は、本実施形態に係るニードルの可動部が第二位置にある場合の要部拡大図である。
【
図4】本実施形態に係る人工毛締結処理を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る人工毛締結処理を説明するための図である(その1)。
【
図6】本実施形態に係る人工毛締結処理を説明するための図である(その2)。
【
図7】本実施形態に係る人工毛締結処理を説明するための図である(その3)。
【
図8】本実施形態に係る玉結び処理を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係る玉結び処理を説明するための図である(その1)。
【
図10】本実施形態に係る玉結び処理を説明するための図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る人工毛締結方法において使用される人工毛1の一例を示す図であり、
図2は、本実施形態に係る人工毛締結方法において使用される人工毛締結具(以下、ニードル2という。)の一例を示す図である。本実施形態では、施術者(人)が、
図1に示す人工毛1と、
図2に示すニードル2とを使用して、人工毛1を地毛4に締結する方法を例示する。なお、人工毛1およびニードル2は、本実施形態と同様の方法により、人工毛1の締結を行うことができるものであれば、特に限定されず、
図1に示す人工毛1や、
図2に示すニードル2も特に限定されない。以下においては、まず、本実施形態において使用する人工毛1とニードル2について説明する。
【0010】
人工毛1は、地毛4に締結させて増毛を行うために人工的に形成された毛髪である。人工毛1の素材は、特に限定されず、ファイバー毛またはアクリル毛などの化学繊維や、人毛を加工したものなど、市販されているものを適宜使用することができる。本実施形態に係る人工毛1では、
図1に示すように、一定の大きさの径(後述するニードル2を用いて地毛4を挿入可能な径)を有するループ部11が形成されており、ループ部11の中に中空の筒3が挿入された状態で使用される。なお、ループ部11は、人工毛1の中央部分において、いわゆる、ひばり結びをすることで、人工毛1をループ状に形成した部分である。以下においては、人工毛1のうち、ループ部11が形成されていない先端側の部分を、毛髪部12として説明する。
【0011】
ニードル2は、
図2に示すように、フック部21、可動部22、ロッド部23、把持部25および後端部26を有する。ここで、
図3(A)は、可動部が第一位置にある場合のニードルの要部拡大図であり、
図3(B)は、ニードルの可動部が第二位置にある場合のニードルの要部拡大図である。フック部21は、
図3(A)に示すように、鉤状となっており、人工毛1や地毛4を引っ掛けることが可能となっている。また、可動部22は、回動可能となっており、
図3(A)に示すように、可動部22がロッド部23側に倒れた第一位置と、
図3(B)に示すように、可動部22がフック部21側に倒れた第二位置との間を回動することが可能となっている。ニードル2は、
図2および
図3(B)に示すように、可動部22が第二位置にある場合に、可動部22とフック部21とが連結し、閉環部24が形成される。なお、施術者は、自身の指などで、可動部22を第一位置または第二位置に移動させることができ、また、後述するように、人工毛1や地毛4を用いても可動部22の位置を変更することができる。
【0012】
また、ニードル2は、施術者が把持するための把持部25を有し、把持部25の後端に後端部26を有する。後端部26は、先に向かうほど尖った円錐状となっている。ただし、後端部26の先端は丸みを有しており、施術者の指や、被施術者の頭皮を保護することができる。
【0013】
次に、本実施形態に係る人工毛締結方法を、
図4ないし
図7を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る人工毛締結処理を示すフローチャートである。また、
図5ないし
図7は、本実施形態に係る人工毛締結処理を説明するための図である。なお、以下に説明する人工毛締結処理は、
図1に示す人工毛1と、
図2,3に示すニードル2とを使用して、施術者(人)により実行される。また、
図5ないし
図7に示す例では、右手でニードル2を把持するものとして説明する(後述する
図9,10においても同様)。
【0014】
まず、施術者は、
図3(A)に示すように、ニードル2の可動部22を把持部25側に倒れた第一位置に移動させる。そして、その状態で、
図5(a)に示すように、ニードル2を、人工毛1のループ部11を巻き付けている筒3の空洞30内に挿入する。具体的には、ニードル2をフック部21側から空洞30内に挿入し、ニードル2のロッド部23の一部が挿入されるまで、あるいは、ロッド部23の直前まで空洞30に挿入する。そして、人工毛1のループ部11を筒3からニードル2のロッド部23へとスライドさせ、ニードル2のロッド部23において人工毛1を保持する(ステップS101)。この際、人工毛1のループ部11を右手の指でロッド部23側に押さえたまま、左手で筒3をニードル2と反対側に動かすことで、
図5(b)に示すように、ループ部11の輪の中にニードル2のロッド部23が挿入された状態とすることができる。
【0015】
次いで、地毛4をニードル2のフック部21に引っ掛ける(ステップS102)。具体的には、
図5(c)に示すように、可動部22を第一位置としたまま、ニードル2を地毛4に向けて動かし、地毛4を下側からニードル2のフック部21にかけた状態とする。なお、
図5(b)に示す状態からニードル2を地毛4に向けて動かした際に、人工毛1がフック部21側にスライドし、可動部22が第一位置から第二位置に移動してしまう場合があるため、可動部22および人工毛1のループ部11を右手の指で押さえたまま、ニードル2のフック部21に地毛4を引っ掛けることが好ましい。
【0016】
そして、
図5(d)に示すように、人工毛1のループ部11をロッド部23からフック部21側へとスライドさせて、閉環部24を形成する(ステップS103)。ここで、
図5(b),(c)に示すように、人工毛1の締結開始時、ニードル2の可動部22は、把持部25側に倒れた第一位置となっている。このステップS103で、人工毛1のループ部11をフック部21側へとスライドさせることで、可動部22が人工毛1のループ部11によってフック部21側へ押されて、
図5(d)に示すように、可動部22がフック部21側に倒れた第二位置に移動する。そして、可動部22が第二位置に移動すると、フック部21と第二位置となった可動部22とが連結し、閉環部24が形成される。また、本実施形態では、フック部21に地毛4を引っ掛けた状態のまま閉環部24を形成するため、
図5(d)に示すように、閉環部24が形成された際に、地毛4が閉環部24の中に挿入された状態となる。
【0017】
続いて、人工毛1のループ部11をさらにフック部21側にスライドすることで、人工毛1のループ部11をニードル2から引き抜き、地毛4を人工毛1のループ部11の中に通す(ステップS104)。これにより、
図5(e),(f)に示すように、人工毛1のループ部11の中に、地毛4が挿入された状態とすることができる。そして、
図6(g)に示すように、左手で人工毛1の毛髪部12を摘まみ、
図6(h)に示すように、右手で人工毛1のループ部11を押さえながら、左手で人工毛1の毛髪部12を左側に軽く引っ張ることで、人工毛1のループ部11を小さく絞り、
図6(i)に示すように、人工毛1のループ部11を人工毛1に締結させる(ステップS105)。なお、右手で人工毛1のループ部11を押さえる際には、右手の親指を立ててしっかりとループ部11を押さえることが好ましい。また、地毛4を誤って抜いてしまわないように、
図6(h)に示すように、地毛4に撓みを持たせておくことが好ましい。
【0018】
さらに、
図6(j)に示すように、地毛4の毛髪部42右手で持ち、
図6(k)に示すように、左手の人差し指に巻き付けることで、地毛4を人差し指にクロスさせる処理が行われる(ステップS106)。この際、人工毛1のループ部11(人工毛1と地毛4との締結位置)が、地毛4のクロスにより形成された地毛4の輪40の途中に位置するように、地毛4をクロスさせる際の地毛4の位置を調整する必要がある。
【0019】
そして、
図6(l)に示すように、ニードル2の可動部22を第一位置に移動させた状態で、地毛4の輪40の中にニードル2を潜らせて、少なくとも地毛4の輪40の中にニードル2のフック部21を挿入させる。そして、ニードル2のフック部21で、地毛4の毛髪部42のうち地毛4のクロス位置よりも先端側の先端部44(地毛4の輪40を潜らせた先の地毛の毛髪部42)を上側から引っ掛ける。そして、
図7(m)に示すように、ニードル2を把持部25側へと動かし、ニードル2を地毛4の輪40から引き抜く。これにより、
図7(n)に示すように、地毛4のループ部41が形成され(ステップS107)、人工毛1のループ部11(人工毛1と地毛4との締結位置)が、地毛4のループ部41のループ部41の途中に位置する状態とすることができる。なお、本実施形態では、
図7(n)のように、クロスさせた地毛4の輪40の中に地毛4の毛髪部42を挿入し、地毛4のループ部41が形成された状態を、止め結びとも言う。
【0020】
そして、
図7(n)に示すように、締結した人工毛1と地毛4とを左右それぞれの手の指で摘まみ、反対側(左右両側)にそれぞれ引っ張ることで、
図7(o)に示すように、地毛4のループ部41を小さく絞りながら、人工毛1のループ部11(人工毛1と地毛4との締結位置)を地肌近傍まで下げていくことができる(ステップS108)。これにより、地肌に近づくほど地毛4のループ部41は小さくなり、地肌近傍において、地毛4のループ部41は玉結びの状態となり、人工毛1を巻き込んだ状態で地毛4の玉結びが行われる。その結果、人工毛1と地毛4とを、地肌近傍において、強固に締結することが可能となる。
【0021】
また、次に、地毛4と人工毛1との締結位置の上側に地毛4を玉結びすることで、人工毛1が地毛4から外れないようにする玉結び処理について説明する。ここで、
図8は、本実施形態に係る人工毛1の玉結び処理を示すフローチャートであり、
図9および
図10は、本実施形態に係る人工毛1の玉結び処理を説明するための図である。なお、以下に説明する玉結び処理も、上述した人工毛締結処理と同様に、
図1に示す人工毛1と、
図2,3に示すニードル2とを使用して、施術者(人)により実行される。
【0022】
具体的には、施術者は、まず、ニードル2の可動部22を把持部25側に倒した第一位置としておく。そして、
図9(a)に示すように、地毛4を上側からニードル2のフック部21に引っ掛け、その状態で、ニードル2を回転させることで、
図9(b)に示すように、地毛4をニードル2のフック部21に巻き付け、玉結び用ループ43を形成する(ステップS201)。また、玉結び用ループ43を有する地毛4を押さえたまま、ニードル2をフック部21側へと動かすことで、
図9(c)に示すように、地毛4の玉結び用ループ43をニードル2のロッド部23までスライドさせ、ロッド部23が地毛4の玉結び用ループ43の輪の中に挿入された状態とする。
【0023】
次に、ニードル2のロッド部23で地毛4の玉結び用ループ43を保持した状態のまま、
図9(d)に示すように、ニードル2のフック部21の下側から、地毛4の毛髪部42を、フック部21に引っ掛ける(ステップS202)。なお、地毛4の毛髪部42をニードル2のフック部21に引っ掛ける際に、地毛4の玉結び用ループ43が可動部22側にスライドし地毛4の玉結び用ループ43が可動部22をフック部21側に押してしまい、フック部21が第二位置に移動してしまうおそれがある。そのため、
図9(d)に示すように、可動部22を右手の指で押えながら、地毛4の毛髪部42をニードル2のフック部21に引っ掛けることが好ましい。
【0024】
続いて、
図9(e)に示すように、ニードル2のロッド部23に巻き付いている地毛4の玉結び用ループ43を、ニードル2のフック部21側にスライドさせる。これにより、
図9(e)に示すように、可動部22が第一位置から第二位置へと移動し、フック部21と第二位置となった可動部22とが連結し閉環部24が形成され、地毛4の毛髪部42が閉環部24の輪の中に挿入された状態となる(ステップS203)。また、
図10(f)に示すように、地毛4の玉結び用ループ43をフック部21側にさらにスライドさせ、閉環部24に挿入された地毛4の毛髪部42と、閉環部24を周回する地毛4の玉結び用ループ43とが、閉環部24の中央近傍で近接した状態とする。
【0025】
そして、
図10(g)に示すように、地毛4の玉結び用ループ43を地肌側までスライドさせる(ステップS204)。具体的には、
図10(g)に示すように、閉環部24の中に挿入された地毛4の毛髪部42と、閉環部24の外側を周回する地毛4の玉結び用ループ43とが近接している状態で、地毛4の毛髪部42を頭頂部側に引っ張りながら、ニードル2を地肌方向に動かすことで、地毛4をニードル2で巻き取り、地毛4の玉結び用ループ43を地肌側に移動させることができる。なお、この際、可動部22が第一位置へと移動しないように、左手の指で摘まんでいる地毛4の毛髪部42は頭頂部側に引っ張った状態とすることが好ましい。
【0026】
続いて、地毛4の玉結び用ループ43をニードル2から外す処理が行われる(ステップS205)。具体的には、地毛4の毛髪部42をニードル2と反対側に引っ張りながら、ニードル2を把持部25側に移動させることで、
図10(h)に示すように、地肌近傍で玉結び用ループ43をニードル2から外すことができる。また、このように、玉結び用ループ43をニードル2から外すことで、地毛4の玉結び用ループ43の輪の中に、地毛4の毛髪部42が通った状態とすることができる。そして、
図10(i)に示すように、ニードル2を地肌から離れる方向に持ち上げることで、ニードル2の閉環部24の中に挿入されていた地毛4の毛髪部42の全てを、地毛4の玉結び用ループ43の中を通すことができ、地毛4の玉結びを形成することができる(ステップS206)。なお、
図10(h)に示すように、地毛4の玉結び用ループ43をニードル2から外したら直ぐに、玉結び用ループ43部分を指で押さえることで、玉結びのずれを防止しながら、地毛4の毛髪部42を全て玉結び用ループ43の中を通させて、玉結びを形成することができる。
【0027】
以上のように、本実施形態では、
図5(b)に示すように、人工毛1のループ部11をニードル2のロッド部23に保持した状態で、
図5(c)に示すように、地毛4をフック部21に引っ掛ける。そして、
図5(d)に示すように、人工毛1のループ部11をフック部21側にスライドさせ、可動部22を第一位置から第二位置へと移動させて閉環部24を形成する。さらに、
図5(e),(f)に示すように、フック部21側から、人工毛1のループ部11をニードル2から外すことで、
図6(g)に示すように、ループ部11の中に地毛4を挿入させることができる。このように、本実施形態では、器具としてニードル2だけを用い、地毛4を、人工毛1のループ部11内に容易に挿入することができるため、施術者の負担軽減や作業時間の短縮を図ることができる。
【0028】
また、本実施形態では、人工毛1のループ部11の中に地毛4を挿通した後に、地毛4を指に巻き付け、人工毛1と地毛4との締結位置が地毛4の輪40の途中に位置するように、地毛4をクロスして地毛4のループ部41を形成し、形成した地毛4のループ部41を小さく絞る。これにより、地毛4が人工毛1を巻き込んだ状態で、地毛4を固く玉結びすることができ、人工毛1を地毛4に容易かつ強固に締結することができる。さらに、本実施形態では、人工毛1のループ部11を小さく絞り人工毛1を地毛4に固定させてから地毛4のクロスを行うことで、人工毛1の位置が地毛4をクロスする際に意図せずに動いてしまうことを防止することができ、地毛4を安定してクロスさせることができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、地毛4に締結させた人工毛1が、地毛4から外れないように、人工毛1と地毛4との締結箇所よりも地毛4の先端側において、地毛4の玉結び処理が必要となる。本実施形態では、
図9(b),(c)に示すように、ニードル2のロッド部23に地毛4を巻き付けて玉結び用ループ43を形成した状態で、
図9(d)に示すように、ロッド部23に巻き付けた地毛4の毛髪部42をフック部21に引っ掛ける。そして、
図9(e)に示すように、地毛4の玉結び用ループ43をフック部21側にスライドさせて可動部22を第一位置から第二位置に移動させることで閉環部24を形成する。そして、
図10(f)に示すように、地毛4の玉結び用ループ43を閉環部24まで移動させ、
図10(g)に示すように、地毛4の毛髪部42を手で摘まみながらニードル2を地肌方向に動かすことで、ニードル2で地毛4を巻き取り、地毛4の玉結び用ループ43を地肌方向に移すことができ、
図10(h)に示すように、地肌の近くで地毛4の玉結びを形成することができる。このように、本実施形態では、器具としてニードル2だけを用いて、容易に、地毛4の玉結び処理を適切に行うこともできる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】
たとえば、上述した実施形態では、1本の地毛4に人工毛1を締結する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、複数本(たとえば2~3本)の地毛4に人工毛1を締結する構成とすることができる。また、1本の地毛4に複数本の人工毛1を締結する構成としてもよいし、複数本の地毛4に複数本の人工毛1を締結する構成としてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、人工毛1のループ部11を小さく絞り、人工毛1を地毛4に固定させてから、地毛4のクロスを行う構成(ステップS105,S106)を例示したが、この構成に限定されず、地毛4をクロスする前に人工毛1のループ部11を小さく絞らず、クロスした地毛4と人工毛1とを反対方向に引っ張る構成とすることができる。この場合、地毛4と人工毛1とを反対方向に引っ張ることで、人工毛1のループ部11を小さく絞ると同時に、地毛4のループ部41も小さく絞ることができ、人工毛1をより少ない工数で地毛4に締結させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1…人工毛
11…ループ部
12…毛髪部
2…ニードル
21…フック部
22…可動部
23…ロッド部
24…閉環部
25…把持部
26…後端部
3…筒
30…空洞
4…地毛
40…輪
41…ループ部
42…毛髪部
43…玉結び用ループ
44…先端部
【要約】
【課題】人工毛を地毛に容易かつ強固に締結することができる人工毛締結方法を提供する。
【解決手段】地毛を挿入可能なループ部を有する人工毛を、地毛に締結する人工毛締結方法であって、人工毛1のループ部11の中に地毛4を挿通した後に、地毛4を指に巻き付け、人工毛1と地毛4との締結位置が指に巻き付けた地毛4の輪の途中に位置するように、地毛4をクロスして地毛4のループ部41を形成し、形成した地毛4のループ部41を小さく絞ることで、人工毛1を地毛4に締結する。
【選択図】
図6