(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】吐水制御装置、吐水制御システム、及び吐水制御方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/05 20060101AFI20221130BHJP
G01V 8/10 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
E03C1/05
G01V8/10 S
(21)【出願番号】P 2018067373
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】滝 宣広
(72)【発明者】
【氏名】白井 雄喜
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041874(JP,A)
【文献】特開2015-148107(JP,A)
【文献】特開平03-195523(JP,A)
【文献】特開平11-036396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
G01V 8/10
A47K 3/02-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水管
、及び前記吐水管が設けられた領域に検知対象である対象物体が移動する場合において移動元となり得る設備を含む撮像対象領域が前記吐水管の上側方向から撮像された領域画像の画像情報に基づいて、
時系列の前記領域画像
の各々における
前記対象物体の位置を検知する対象物体検知部と、
前記領域画像における前記吐水管の吐水口の位置を検知する吐水口検知部と、
前記対象物体検知部により検知された前記対象物体の位置、及び前記吐水口検知部により検知された前記吐水口の位置に基づいて、吐水するか否かを判定する判定部
と、
前記対象物体検知部により検知されたある時点における前記対象物体の位置が前記吐水口である場合、前記ある時点より前のいずれかの時点において前記対象物体が存在していた前記移動元に基づいて、吐水する水に関する状態である吐水状態を切替える切替部
を備えることを特徴とする吐水制御装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記対象物体検知部により検知された前記対象物体における位置の時系列変化に基づいて、前記吐水状態を切替える
請求項
1に記載の吐水制御装置。
【請求項3】
前記領域画像、及び前記対象物体検知部により検知された前記対象物体に基づいて、前記対象物体の状態を検知する状態検知部
を更に備え、
前記切替部は、前記状態検知部により検知された前記対象物体の状態に基づいて、
前記吐水状態を切替え
る
請求項1に記載の吐水制御装置。
【請求項4】
前記領域画像に基づいて、前記領域画像における人間の特性を抽出する特性抽出部
を更に備え、
前記切替部は、前記特性抽出部により抽出された前記人間の特性に基づいて、
前記吐水状態を切替え
る
請求項1に記載の吐水制御装置。
【請求項5】
前記領域画像に基づいて、前記領域画像における人間の行動を抽出する行動抽出部
を更に備え、
前記切替部は、前記行動抽出部により抽出された前記人間の行動に基づいて、前記吐水状態を切替える
請求項
1から請求項
4の何れか一項に記載の吐水制御装置。
【請求項6】
吐水状態を切替える指示を示す指示情報に基づいて、前記指示の内容を検知する指示検知部
を更に備え、
前記切替部は、前記指示検知部により検知された指示に基づいて、前記吐水状態を切替える
請求項
1から請求項
5の何れか一項に記載の吐水制御装置。
【請求項7】
吐水状態を切替える指示を示す指示情報に基づいて、前記指示の内容を検知する指示検知部
を更に備え、
前記切替部は、前記指示検知部により検知された指示に基づいて、前記吐水状態を切替える吐水条件を更新する
請求項
1から請求項
6の何れか一項に記載の吐水制御装置。
【請求項8】
前記吐水状態は、吐水する水の種別、及び吐水する水の形態のうち少なくとも一方を示す
請求項
1から請求項
7の何れか一項に記載の吐水制御装置。
【請求項9】
吐水管を含む領域画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置により撮像された前記領域画像の画像情報を取得する請求項1から請求項8の何れか一項に記載の吐水制御装置と
を備える吐水制御システム。
【請求項10】
対象物体検知部が、吐水管
、及び前記吐水管が設けられた領域に検知対象である対象物体が移動する場合において移動元となり得る設備を含む撮像対象領域が前記吐水管の上側方向から撮像された領域画像の画像情報に基づいて、
時系列の前記領域画像
の各々における
前記対象物体の位置を検知し、
吐水口検知部が、前記領域画像における前記吐水管の吐水口の位置を検知し、
判定部が、前記対象物体検知部により検知された前記対象物体の位置、及び前記吐水口検知部により検知された前記吐水口の位置に基づいて、吐水するか否かを判定
し、
切替部が、前記対象物体検知部により検知されたある時点における前記対象物体の位置が前記吐水口である場合、前記ある時点より前のいずれかの時点において前記対象物体が存在していた前記移動元に基づいて、吐水する水に関する状態である吐水状態を切替える
吐水制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水制御装置、吐水制御システム、及び吐水制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の行動からその行動の意図を認識する行動認識技術の発達に伴い、人間が水栓の操作をしなくても、自動的にその人間の意図を理解して適切に水栓を制御するシステムの開発が期待されている。
例えば、吐水管の先端部にカメラを設置し、カメラにより撮像された画像から人間の手洗い動作を判定し、状況に応じて適切な手洗い動作を促す技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、吐水口の周辺を撮像するように水栓に設置したカメラにより撮像された画像から吐水口の先に差し出された洗浄物の汚れ度合を検出し、検出した汚れ度合に応じて、吐水する水の流量や水圧、及び吐水の形態(ストレート吐水とするかシャワー吐水とするか等)を制御する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5884554号公報
【文献】特開2015-148107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の技術を用いた場合においては、吐水管の先端部や水栓にカメラやセンサ等を設けなければならない。このため、吐水管に水がかけられた場合、カメラのレンズや、センサ窓に水滴が付着する可能性がある。また、洗浄物を洗浄した場合、洗浄物から洗浄液の飛沫等の汚れがカメラのレンズやセンサ窓に付着する可能性がある。レンズが汚れたカメラにより撮像された画像は、不鮮明な画像となってしまい、不鮮明な画像に基づいて手洗い動作等の判定しようとすれば、判定が不正確となるおそれがある。また、センサ窓が汚れてしまうと検知対象物体を誤検知してしまう可能性がある。
また、吐水管の先端部等にカメラやセンサを設けるためには、吐水口を含む水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させる必要がある。この場合、カメラやセンサ回路を配置するスペースを確保しなければならないことから、水栓金具のデザインが制約されてしまう場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、検知結果に応じて吐水を制御することができる吐水制御装置、吐水制御システム、及び吐水制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明の一実施形態は、吐水管、及び前記吐水管が設けられた領域に検知対象である対象物体が移動する場合において移動元となり得る設備を含む撮像対象領域が前記吐水管の上側方向から撮像された領域画像の画像情報に基づいて、時系列の前記領域画像の各々における前記対象物体の位置を検知する対象物体検知部と、前記領域画像における前記吐水管の吐水口の位置を検知する吐水口検知部と、前記対象物体検知部により検知された前記対象物体の位置、及び前記吐水口検知部により検知された前記吐水口の位置に基づいて、吐水するか否かを判定する判定部と、前記対象物体検知部により検知されたある時点における前記対象物体の位置が前記吐水口である場合、前記ある時点より前のいずれかの時点において前記対象物体が存在していた前記移動元に基づいて、吐水する水に関する状態である吐水状態を切替える切替部を備える吐水制御装置である。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上述の吐水制御装置であって、前記切替部は、前記対象物体検知部により検知された前記対象物体における位置の時系列変化に基づいて、前記吐水状態を切替える。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、上述の吐水制御装置であって、前記領域画像、及び前記対象物体検知部により検知された前記対象物体に基づいて、前記対象物体の状態を検知する状態検知部を更に備え、前記切替部は、前記状態検知部により検知された前記対象物体の状態に基づいて、前記吐水状態を切替える。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、上述の吐水制御装置であって、前記領域画像に基づいて、前記領域画像における人間の特性を抽出する特性抽出部を更に備え、前記切替部は、前記特性抽出部により抽出された前記人間の特性に基づいて、前記吐水状態を切替える。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、上述の吐水制御装置であって、前記領域画像に基づいて、前記領域画像における人間の行動を抽出する行動抽出部を更に備え、前記切替部は、前記行動抽出部により抽出された前記人間の行動に基づいて、前記吐水状態を切替える。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、上述の吐水制御装置であって、吐水状態を切替える指示を示す指示情報に基づいて、前記指示の内容を検知する指示検知部を更に備え、前記切替部は、前記指示検知部により検知された指示の内容に基づいて、前記吐水状態を切替える。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、上述の吐水制御装置であって、前記切替部は、前記指示検知部により取得された指示の内容に基づいて、前記吐水状態を切替える吐水条件を更新する。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、上述の吐水制御装置であって、前記吐水状態は、吐水する水の種別、及び吐水する水の形態のうち少なくとも一方を示す。
【0015】
また、本発明の一実施形態は、吐水管を含む領域画像を撮像する撮像装置と、前記撮像装置により撮像された前記領域画像の画像情報を取得する上記に記載の吐水制御装置とを備える吐水制御システムである。
【0016】
また、本発明の一実施形態は、対象物体検知部が、吐水管、及び前記吐水管が設けられた領域に検知対象である対象物体が移動する場合において移動元となり得る設備を含む撮像対象領域が前記吐水管の上側方向から撮像された領域画像の画像情報に基づいて、時系列の前記領域画像の各々における前記対象物体の位置を検知し、吐水口検知部が、前記領域画像における前記吐水管の吐水口の位置を検知し、判定部が、前記対象物体検知部により検知された前記対象物体の位置、及び前記吐水口検知部により検知された前記吐水口の位置に基づいて、吐水するか否かを判定し、切替部が、前記対象物体検知部により検知されたある時点における前記対象物体の位置が前記吐水口である場合、前記ある時点より前のいずれかの時点において前記対象物体が存在していた前記移動元に基づいて、吐水する水に関する状態である吐水状態を切替える吐水制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、この発明によれば、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、検知結果に応じて吐水を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る吐水制御システム1の構成例を示すブロック図である。
【
図2】第2の実施形態に係る吐水制御システム1Aの構成例を示すブロック図である。
【
図3】第2の実施形態に係る吐水制御装置20Aの動作例を示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態に係る吐水制御装置20Aの動作例を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態に係る吐水制御装置20Aの動作例を示すフローチャートである。
【
図6】第3の実施形態に係る吐水制御システム1Bの構成例を示すブロック図である。
【
図7】第3の実施形態に係る吐水制御装置20Bが行う制御を説明する図である。
【
図8】第4の実施形態に係る吐水制御システム1Cの構成例を示すブロック図である。
【
図9】第5の実施形態に係る吐水制御システム1Dの構成例を示すブロック図である。
【
図10】第6の実施形態に係る吐水制御システム1Eの構成例を示すブロック図である。
【
図11】第7の実施形態に係る吐水制御システム1Fの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態の吐水制御システム及び吐水制御装置を、図面を参照して説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る吐水制御システム1の構成例を示すブロック図である。吐水制御システム1は、例えば、撮像装置10及び吐水制御装置20を備える。吐水制御装置20は、吐水管401の吐水を開始又は終了させる電磁弁30と接続する。吐水制御システム1では、撮像装置10により撮像された撮像対象領域40の画像に基づいて、吐水制御装置20が吐水管401の電磁弁30を開閉する制御信号によって、吐水及び止水を制御する。ここで、撮像装置10により撮像された撮像対象領域40の画像は、「領域画像」の一例である。
【0021】
撮像装置10は、例えば、キッチン等の水が使用される場所に設けられ、撮像対象領域40を撮像する。ここでの撮像対象領域40は、吐水管401を含む領域であり、例えば、ワークトップなど、吐水管401が配置されたシンク400等の水回りの設備が設けられた領域である。撮像装置10は、例えば、シンク400よりも広い領域(例えばシンク400とコンロを含む領域)を撮像する。撮像装置10は、例えば、キッチンの天井、又はウォールキャビネットの底板外側面に設けられる。天井に設けられる場合には、照明配線器具に装着可能な電球型のカメラを用いることができる。この場合、撮像装置10は、照明配線器具から供給される電力により動作する。また、この場合、撮像装置10は、吐水管401の上側方向に設けられる。この場合、撮像装置10は、例えば、吐水管401の上側方向から下側をみた領域が撮像領域となるように設置される。つまり、撮像装置10は、吐水管401を俯瞰する位置から吐水管401を含む領域を撮像する。
【0022】
また、撮像装置10は、撮像した画像の画像情報を吐水制御装置20に送信する。撮像装置10は、例えば、WiFi(ワイファイ)等の無線通信回線を介して、撮像した画像の画像情報を吐水制御装置20に送信する。なお、撮像装置10は、動画像を撮像してもよいし、静止画像を撮像してもよい。また、撮像装置10は、カラー画像を撮像してもよいし、白黒画像を撮像してもよい。
【0023】
吐水制御装置20は、例えば、対象物体検知部200、吐水口検知部201、座標抽出部202、座標抽出部203、及び一致検知部204を備える。ここで、一致検知部204は、「判定部」の一例である。
【0024】
対象物体検知部200は、撮像装置10により撮像された撮像対象領域40の画像に基づいて、画像に対象物体があるか否かを検知する。ここでの対象物体は、吐水の対象となり得る物体であり、例えば、皿402、鍋403(
図2参照)、コップ、及び人間の手などである。以下の説明では、対象物体のことを単に物体ともいう。
【0025】
対象物体検知部200は、例えば、エッジ検出を行うことにより画像に撮像された様々な物体を抽出する。対象物体検知部200は、例えば、画像データにおける輝度の差分に基づいてエッジ検出を行う。具体的には、対象物体検知部200は、画像に様々な矩形の枠(セル)をあてはめ、枠の内部と比較して、枠の外周に輝度の差分が少ない場合に、その枠内に物体があると判定し、その枠を抽出することで画像から物体を抽出する。
【0026】
また、対象物体検知部200は、画像から抽出した物体から対象物体を選択する。対象物体検知部200は、例えば、予め皿などの対象物体を様々な撮像条件(撮像角度や照明等)により撮像した画像を記憶させておく。対象物体検知部200は、例えば、予め記憶させた対象物体の画像と、撮像装置10により撮像された画像から抽出した物体の画像とを同じ大きさにスケーリングした上で、両画像の画素について比較する。対象物体検知部200は、例えば、画素毎の色の分布の傾向が、所定の閾値以上で一致する場合に画像から抽出した物体が対象物体であると判定する。対象物体検知部200は、検知結果を座標抽出部202に出力する。
【0027】
吐水口検知部201は、撮像装置10により撮像された撮像対象領域40の画像に基づいて、画像に吐水口があるか否かを検知する。吐水口検知部201は、例えば、吐水管401におけるシンク400の端部が画像に撮像されている場合に画像に吐水口があると検知する。また、吐水口検知部201は、例えば、吐水管401におけるシンク400の端部が他の物体により隠される等して画像に撮像されていない場合、画像に吐水口がないと検知する。吐水口検知部201は、検知結果を座標抽出部203に出力する。
【0028】
座標抽出部202は、撮像装置10により撮像された画像、及び対象物体検知部200により出力された検知結果に基づいて、画像における対象物体の位置を示す位置座標を抽出する。ここでの位置座標は、対象物体の重心位置を示す座標値であってもよいし、対象物体の外周を示す座標群であってもよい。座標抽出部202は、抽出した画像における対象物体の位置座標を一致検知部204に出力する。
【0029】
座標抽出部203は、撮像装置10により撮像された画像、及び吐水口検知部201により出力された検知結果に基づいて、画像における吐水口の位置を示す位置座標を抽出する。座標抽出部202は、抽出した画像における吐水口の位置座標を一致検知部204に出力する。
なお、上記では座標抽出部203が撮像装置10により撮像された画像等に基づいて吐水口の位置座標を抽出する場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。座標抽出部203は、例えば、吐水管401が長尺方向の長さを半径として回転することにより吐水口の位置が移動可能である場合、吐水管401の回転角度に基づいて、吐水口の位置を検知するようにしてもよい。この場合、吐水管401は、例えば、吐水管401における吐水口側とは異なる側(つまり、吐水管401の根本)に、吐水管401のー回転角度を検知するロータリエンコーダ等の回転角度測定装置を備える。回転角度測定装置は、吐水管401の回転角度を測定し、測定結果を座標抽出部203に出力する。そして、座標抽出部203は、回転角度測定装置からの測定結果に基づいて、既知である吐水管401の根本の座標値、及び吐水管401の長尺方向の長さに基づいて、吐水口の位置座標を抽出する。
また、座標抽出部203は、吐水管401の回転がモータの動作より制御される場合には、モータを駆動させる駆動部によりモータを制御する制御情報を取得するようにしてもよい。座標抽出部203は、モータを制御する制御情報に基づいて吐水管401の回転角度を算出し、算出した回転角度に基づいて吐水口の位置座標を抽出することができる。
【0030】
一致検知部204は、座標抽出部202により抽出された対象物体の位置座標と、座標抽出部203により抽出された吐水口の位置座標とが一致しているか否かを検知する。一致検知部204は、例えば、対象物体の位置座標と吐水口の位置座標との距離が所定の閾値未満である場合に双方の位置座標が一致していると判定する。或いは、一致検知部204は、対象物体の位置座標に基づいて推定される対象物体がある領域に、吐水口の位置座標が含まれる場合に双方の位置座標が一致していると判定する。
【0031】
また、一致検知部204は、対象物体の位置座標と吐水口の位置座標とが一致していると判定した場合、電磁弁30を開くと判定し、その旨を示す制御情報を電磁弁30に出力する。また、一致検知部204は、対象物体の位置座標と吐水口の位置座標とが一致していないと判定した場合、電磁弁30を閉じると判定し、その旨を示す制御情報を電磁弁30に出力する。ここで一致検知部204は、電磁弁30の開閉状態を図示しない記憶部に記憶しておき、電磁弁30の状態を変化させる場合に電磁弁30に制御情報を出力するようにしてもよい。具体的には、一致検知部204は、電磁弁30を閉じた状態から開く状態に変化させる場合に電磁弁30を開く旨を示す制御情報を出力し、電磁弁30を開いた状態から閉じた状態に変化させる場合に電磁弁30を閉じる旨を示す制御情報を出力する。
【0032】
ここでは、吐水制御装置20の動作の全体の流れを説明する。
まず、吐水制御装置20は、撮像装置10により撮像された撮像対象領域40の画像の画像情報を取得する。吐水制御装置20は、取得した画像情報を、対象物体検知部200、及び吐水口検知部201に出力する。
次に、対象物体検知部200は、画像に対象物体が含まれているか否かを検知する。対象物体検知部200は、検知結果を座標抽出部202に出力する。座標抽出部202は、対象物体の位置座標を抽出し、抽出した位置座標を一致検知部204に出力する。
次に、吐水口検知部201は、画像に吐水口が含まれているか否かを検知する。吐水口検知部201は、検知結果を座標抽出部203に出力する。座標抽出部203は、吐水口の位置座標を抽出し、抽出した位置座標を一致検知部204に出力する。
そして、一致検知部204は、座標抽出部202及び203の各々により抽出された位置座標に基づいて、電磁弁30を開閉する制御情報により吐水を制御する。
【0033】
以上説明したように、第1の実施形態の吐水制御装置20は、吐水管401を含む撮像対象領域40が撮像された領域画像の画像情報に基づいて、領域画像における検知対象である対象物体の位置を検知する対象物体検知部200及び座標抽出部202と、領域画像に基づいて、領域画像における吐水管401の吐水口の位置を検知する吐水口検知部201及び座標抽出部203と、対象物体検知部200より検知された対象物体の位置、及び吐水口検知部201より検知された吐水口の位置に基づいて、吐水するか否かを判定する一致検知部204を備える。これにより、第1の実施形態の吐水制御装置20は、領域画像に基づいて、吐水管401における吐水口と皿402などの対象物体との位置に基づいて、吐水口に対象物体が差し出されたか否かを判定することができ、吐水口に対象物体が差し出された場合に、その対象物体を差し出した人間の行動を対象物体に吐水する行動と認識して、吐水を開始させることが可能となる。このため、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、人間の行動を認識して自動的に吐水を制御することができる。
【0034】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、第2の実施形態に係る吐水制御システム1Aは、吐水する際に吐水する水の種別を原水、浄水、及び湯水の何れか一つを選択する点において、上述した実施形態と相違する。ここで、吐水する水の種別は、吐水する水に関する状態(「吐水状態」)の一例である。なお、吐水する水の種別はこれに限定されることはなく、例えば、浄水のお湯、炭酸水、除菌水、アルカリイオン水などの所謂機能水が含まれていてよい。
以下では、上述した実施形態と異なる点を説明し、上述した実施形態と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
図2は、第2の実施形態に係る吐水制御システム1Aの構成例を示すブロック図である。吐水制御システム1Aは、撮像装置10A、及び吐水制御装置20Aを備える。吐水制御装置20Aは、吐水管401に原水を吐水させる電磁弁30、浄水を吐水させる電磁弁31及び湯水を吐水させる電磁弁32の各々と接続する。
【0036】
撮像装置10Aは、所定の時間間隔で撮像対象領域40Aにおける画像を撮像する。撮像装置10Aは、シンク400等の水回りの設備の他、吐水口に対象物体が移動した場合の移動元となり得る設備を含む領域を撮像対象領域40Aとして撮像する。移動元となり得る設備とは、シンク400に移動される前に、その対象物体が存在していた設備であり、「事前位置」の一例である。
【0037】
ここで、移動元となり得る設備とは、例えば、コンロ405、食卓、食物の下ごしらえや調理後において料理の盛り付けを行う作業台、皿やコップが収納される食器棚、或いは鍋等が収納される収納棚等である。例えば、コンロ405で鍋403を用いた調理がなされた後、調理後の鍋403を洗浄するために、人間が鍋403をコンロ405からシンク400に移動させる場合がある。この場合、コンロ405からシンク400に対象物体(鍋403)が移動することから、移動元となり得る設備は、コンロ405である。
【0038】
座標抽出部202は、所定の時間間隔で撮像装置10Aにより撮像された画像を、順次取得する。座標抽出部202は、撮像装置10Aから順次取得した時系列の画像の各々における対象物体を検知する。座標抽出部202は、時系列の画像に基づいて対象物体が所定時間の間、移動元の設備(例えばコンロ405)に存在した場合にはその対象物体と移動元の設備とを対応付けた情報を事前位置記憶部206に記憶させる。
【0039】
具体的には、座標抽出部202は、撮像装置10Aにより撮像された画像における対象物体の位置座標を抽出し、抽出した位置座標に基づいて、対象物体が所定の一定時間の間、移動元の設備(例えばコンロ405)に存在したか否かを判定する。座標抽出部202は、所定の一定時間の間、対象物体が移動元の設備に存在したと判定した場合、その対象物体と位置座標とを対応付けた情報を事前位置記憶部206に記憶させる。
【0040】
一致検知部204は、座標抽出部202により抽出された対象物体の位置座標と、座標抽出部203により抽出された吐水口の位置座標とが一致しているか否かを検知し、検知結果を切替部205に出力する。
【0041】
切替部205は、一致検知部204により出力された検知結果に基づいて吐水するか否かを判定し、吐水する場合には事前位置記憶部206に記憶された内容に基づいて吐水する水の種別として原水、浄水、及び湯水の何れか一つを選択する。切替部205は、例えば、対象物体の位置座標と吐水口の位置座標とが一致していると判定した場合、電磁弁30を開くと判定する。また、切替部205は、事前位置記憶部206を参照し、対象物体の移動元に応じて、吐水する水の種別を選択する。
【0042】
切替部205は、例えば、対象物体である鍋403がコンロ405からシンク400に移動された場合、鍋403をコンロ405からシンク400に移動させた人間の行動から、その人間が調理で使用され汚れた鍋403を洗浄しようとしていると認識する。この場合、切替部205は、吐水管401から湯水を吐水させる。コンロ405で調理に使用された鍋403には油汚れが付着していると想定されることから、油汚れを洗浄するためには、原水よりも湯水が適すると考えられるためである。
【0043】
また、切替部205は、例えば、対象物体であるコップが食器棚からシンク400に移動された場合、コップを食器棚からシンク400に移動させた人間の行動から、その人間が食器棚に収納されたコップを取り出してコップに飲料水を汲もうとしていると認識する。この場合、切替部205は、吐水管401から浄水を吐水させる。
【0044】
また、切替部205は、例えば、対象物体であるコップが食卓や作業台等からシンク400に移動された場合、コップを食卓等からシンク400に移動させた人間の行動から、その人間が食卓等で使用されたコップをシンクに下げてコップを洗浄しようとしていると認識する。この場合、切替部205は、吐水管401から原水を吐水させる。飲料水が飲料された後のコップには油汚れと比較して軽い汚れが付着していると想定されることから、軽い汚れを洗浄するためには原水で十分であると考えられるためである。
【0045】
事前位置記憶部206は、座標抽出部202により出力された対象物体とその位置座標とを対応付けた情報を記憶する。
【0046】
図3は、第2の実施形態に係る吐水制御装置20Aの動作例を示すフローチャートである。ここでは、
図3を用いて吐水制御装置20Aの動作の全体の流れを説明する。以下の説明では、対象物体のことを、単に物体ともいう。また、以下では、撮像対象領域40Aは、シンク400及びコンロ405が設けられている領域であり、食器棚や作業台、及び鍋などの収納棚が設けられた領域は撮像されないものとする。
【0047】
まず、吐水制御装置20Aは、撮像装置10Aにより撮像された撮像対象領域40Aの画像の画像情報を取得する(ステップS100)。吐水制御装置20Aは、取得した画像情報を、対象物体検知部200、及び吐水口検知部201に出力する。
次に、対象物体検知部200は、画像に対象物体が含まれているか否かを検知する物体の検知処理を行う(ステップS200)。対象物体検知部200は、検知結果を座標抽出部202に出力する。
次に、座標抽出部202は、対象物体の位置座標を抽出し、抽出した位置座標に基づいて、事前位置記憶部206に対象物体の移動元として記憶させる事前位置記憶処理を行う(ステップS300)。
次に、吐水口検知部201は、画像に吐水口が含まれているか否かを検知する吐水口の検知処理を行う(ステップS400)。吐水口検知部201は、検知結果を座標抽出部203に出力する。座標抽出部203は、吐水口の位置座標を抽出し、抽出した位置座標を一致検知部204に出力する。
そして、一致検知部204及び切替部205は、対象物体検知部200による物体の検知処理の結果と、座標抽出部202による事前位置記憶処理の内容と、吐水口検知部201による吐水口の検知処理の結果とに基づいて、吐水を切り替える切替処理を行う(ステップS500)。
【0048】
図4は、第2の実施形態に係る吐水制御装置20Aの動作例を示すフローチャートである。ここでは、
図4を用いて、ステップS300により示される事前位置記憶処理の流れを説明する。
【0049】
ここで、事前位置記憶処理を行う前提として、座標抽出部202は、変数tempを使用する。変数tempは、画像における物体の位置情報が格納される変数である。変数tempには、例えば、物体がシンク400に位置する場合には「シンク」、物体がコンロ405に位置する場合には「コンロ」、物体がシンク400及びコンロ405以外に位置する場合には「それ以外」、物体が画像に存在していない場合には「無し」、をそれぞれ示す情報が格納される。変数tempの初期値は、上述した「シンク」、「コンロ」、「それ以外」、及び「無し」の何れでもよい。ここでは、変数tempの初期値は「無し」であるものとする。
【0050】
また、座標抽出部202は、事前位置記憶処理を行う際に、カウンタCTを使用する。カウンタCTは、対象物体が特定の設備(シンク400やコンロ405等)に存在する時間を測定するための変数である。
【0051】
まず、座標抽出部202は、対象物体検知部200から出力された検知結果に基づいて、撮像装置10Aにより撮像された画像に対象物体が検出されたか否かを判定する(ステップS301)。
次に、座標抽出部202は、画像に対象物体が検出されたと判定する場合、対象物体の位置座標(物体の位置BP)を抽出する(ステップS302)。座標抽出部202は、抽出した位置BPと変数tempとが一致するか否かを判定する(ステップS303)。座標抽出部202は、例えば、物体の位置座標に基づいて、位置BPが「シンク」、「コンロ」、「それ以外」、及び「無し」の何れであるかを判定し、判定した結果と変数tempとが一致するか否かを判定する。
【0052】
座標抽出部202は、位置BPと変数tempとが一致する場合、カウンタCTのカウンタ値を参照し、カウンタCTのカウンタ値が満了であるか否かを判定し(ステップS304)、カウンタCTのカウンタ値が満了した場合には、事前位置記憶部206に物体の位置BPを記憶させる(ステップS305)。一方、座標抽出部202は、カウンタCTのカウンタ値が満了していない場合には、カウンタCTをインクリメントさせる(ステップS308)。そして、吐水制御装置20Aは、ステップS400に示す処理を行う。
【0053】
一方、ステップS303に示す処理において、位置BPと変数tempとが一致しない場合、座標抽出部202は、カウンタCTのカウンタ値を初期化して0(ゼロ)とする(ステップS306)。そして、座標抽出部202は、変数tempに、位置BPに対応する値(「シンク」、「コンロ」、「それ以外」、及び「無し」の何れか)を格納する(ステップS307)。
【0054】
また、ステップS301に示す処理において、画像に対象物体が検出されないと判定する場合、座標抽出部202は、変数tempを参照し、変数tempに「無し」が格納されているか否かを判定する(ステップS309)。
座標抽出部202は、変数tempに「無し」が格納されている場合、カウンタCTのカウンタ値を参照し、カウンタCTのカウンタ値が満了であるか否かを判定し(ステップS310)、カウンタCTのカウンタ値が満了した場合には、事前位置記憶部206に物体の位置BPとして「無し」を記憶させる(ステップS311)。一方、座標抽出部202は、カウンタCTのカウンタ値が満了していない場合には、カウンタCTをインクリメントさせる(ステップS314)。そして、吐水制御装置20Aは、ステップS400に示す処理を行う。
一方、ステップS309に示す処理において、変数tempに「無し」が格納されていない場合、座標抽出部202は、カウンタCTのカウンタ値を初期化して0(ゼロ)とする(ステップS312)。そして、座標抽出部202は、変数tempに「無し」を格納する(ステップS313)。
【0055】
図5は、第2の実施形態に係る吐水制御装置20Aの動作例を示すフローチャートである。ここでは、
図5を用いてステップS500により示される切替処理の流れを説明する。
【0056】
まず、対象物体検知部200は、画像から物体が検知されたか否かを判定する(ステップS501)。座標抽出部202は、画像から物体が検知された場合、その物体の位置BPを抽出する。座標抽出部202は、抽出した物体の位置BPを一致検知部204に出力する。
次に、吐水口検知部201は、画像から物体が検知された場合、その画像から吐水口が検知されたか否かを判定する(ステップS502)。座標抽出部203は、画像から吐水口が検知された場合、吐水口の位置座標(位置TP)を抽出する(ステップS503)。
【0057】
一致検知部204は、物体の位置BPと吐水口の位置TPとの位置が一致するか判定する。具体的には、一致検知部204は、物体の位置BPの位置座標が、吐水口の位置TPの位置座標から所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS504)。一致検知部204は、判定結果を切替部205に出力する。
【0058】
切替部205は、一致検知部204から出力された判定結果、及び事前位置記憶部206に記憶された内容に基づいて、原水、浄水及び湯水の何れの水を吐水するか判定する。具体的には、切替部205は、事前位置記憶部206を参照し、物体の事前位置(移動元)として「コンロ」が記憶されているか否かを判定する(ステップS505)。切替部205は、物体の事前位置(移動元)として「コンロ」が記憶されている場合、浄水の電磁弁31及び原水の電磁弁30を閉じ、湯水(お湯)の電磁弁32を開く制御信号を、電磁弁30~32の各々に出力する(ステップS506)。
【0059】
切替部205は、ステップS505に示す処理において、物体の事前位置(移動元)として「コンロ」が記憶されていない場合、物体の事前位置(移動元)として「無し」が記憶されているか否かを判定する(ステップS507)。切替部205は、物体の事前位置(移動元)として「無し」が記憶されている場合、浄水の電磁弁31を開き、原水の電磁弁30及び湯水(お湯)の電磁弁32を閉じる制御信号を、電磁弁30~32の各々に出力する(ステップS508)。なお、ここでは、撮像対象領域40Aに食器棚や作業台、及び鍋などの収納棚が設けられた領域が含まれていないため、事前位置(移動元)が「無し」である場合、対象物体を収納する領域(対象物体が鍋403である場合には鍋等を収納する収納棚)が移動元であるとみなしている。
【0060】
切替部205は、ステップS507に示す処理において、物体の事前位置(移動元)として「無し」が記憶されていない場合、つまり物体の事前位置(移動元)として「シンク」又は「それ以外」が記憶されている場合、湯水の電磁弁32及び浄水の電磁弁31を閉じ、原水の電磁弁30を開く制御信号を、電磁弁30~32の各々に出力する(ステップS509)。なお、ここでは、事前位置(移動元)が「シンク」又は「それ以外」である場合、対象物体がコンロ以外の設備(例えば、作業台等)において使用された後に、対象物体に付着した軽い汚れを洗浄するためにシンク400に移動させたものとみなしている。
【0061】
一方、ステップS501に示す処理において画像から物体が検出されない場合、ステップS502に示す処理において画像から吐水口が検出されない場合、及びステップS504に示す処理において物体の位置BPと吐水口の位置TPとが一致しない場合、切替部205は、全ての電磁弁30~32を閉じる制御信号を、出力する(ステップS510)。
【0062】
なお、上述したフローチャートでは、事前位置記憶部206に「コンロ」が記憶されている場合に湯水を吐水させる場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。事前位置記憶部206に記憶されている内容に基づいて、何れの種別の水を吐水させるかは、シンク400やコンロ405等の配置の状況や、吐水管401の構成、及びシンク400を使用する人間の希望等に応じて任意に決定されてよい。
【0063】
以上説明したように、第2の実施形態の吐水制御装置20Aでは、対象物体検知部200は、時系列の領域画像の各々における対象物体の位置を検知し、対象物体検知部200より検知されたある時点における対象物体の位置BP、及び前記ある時点より前のいずれかの時点における対象物体の位置(例えば、事前位置記憶部206に記憶された対象物体の位置を示す情報)に基づいて、吐水する水に関する状態である吐水状態を切替える切替部205を更に備える。これにより、第2の実施形態の吐水制御装置20Aは、鍋等の対象物体がシンク400に移動された場合に、その対象物体の移動元がコンロ405であるか、食器棚であるか等に基づいて吐水する水の種別を、油汚れの洗浄に適した湯水に切替えたり、飲用や調理に適した浄水に切替えたりすることが可能である。このため、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、人間の行動を認識して自動的に吐水を制御することができる。
【0064】
ここで、従来の吐水管の先端部や水栓に設けられたカメラを比較例として考える。比較例では、吐水口の下の限られた領域が撮像されるのみである。このため、吐水口の先にコップ等が差し出されたことは判っても、コップで水を飲もうとしているのか、コップを洗浄しようとしているのかといったコップを差し出した人間の意図を把握することは困難である。
【0065】
これに対して、本実施形態では、第2の実施形態の吐水制御システム1Aでは、撮像装置10Aがシンク400等の水回りの設備の他、移動元となり得る設備を含む領域を撮像対象領域40Aとして撮像する。このため、対象物体がシンク400に移動する前に存在していた移動元を検知することができ、対象物体の移動の履歴に基づいて作業する人間の意図に沿った吐水制御を実現することが可能である。
【0066】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、第3の実施形態に係る吐水制御システム1Bが、時系列において互いに異なる複数の事前位置(移動元)に基づいて吐水する水の種別を選択する点において、上述した実施形態と相違する。以下では、上述した実施形態と異なる点を説明し、上述した実施形態と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図6は、第3の実施形態に係る吐水制御システム1Bの構成例を示すブロック図である。吐水制御装置20Bは、例えば、切替部205B、事前位置1記憶部206、事前位置2記憶部207及び事前位置3記憶部208を備える。
【0068】
座標抽出部202は、所定の一定時間の間、対象物体が移動元の設備に存在したと判定した場合、その対象物体と位置座標とを対応付けた情報を事前位置1記憶部206に記憶させる。この場合、座標抽出部202は、事前位置1記憶部206に、対象物体の事前位置(移動元)を示す情報が既に記憶されていた場合にはその情報を事前位置2記憶部207に記憶させる。この場合も同様に、座標抽出部202は、事前位置2記憶部207に、対象物体の事前位置(移動元)を示す情報が既に記憶されていた場合にはその情報を事前位置3記憶部208に記憶させる。つまり、座標抽出部202は、対象物体が一定時間の間存在していた設備における移動の履歴を、事前位置1記憶部206、事前位置2記憶部207及び事前位置3記憶部208の各々に時系列に記憶させる。
【0069】
事前位置1記憶部206、事前位置2記憶部207及び事前位置3記憶部208の各々は、座標抽出部202により出力された対象物体とその位置座標とを対応付けた情報を時系列に順に記憶する。
【0070】
切替部205Bは、一致検知部204により出力された検知結果に基づいて吐水するか否かを判定し、吐水する場合には、事前位置1記憶部206、事前位置2記憶部207及び事前位置3記憶部208にそれぞれ記憶された内容に基づいて吐水する水の種別を原水、浄水、及び湯水のうちから何れか一つ選択する。切替部205Bは、事前位置1記憶部206、事前位置2記憶部207及び事前位置3記憶部208をそれぞれ参照し、対象物体の移動元の履歴に応じて、吐水する水の種別を選択する。
【0071】
図7は、第3の実施形態に係る吐水制御装置20Bが行う制御を説明する図である。
ここでは、
図7を用いて、切替部205Bが、事前位置1記憶部206、事前位置2記憶部207及び事前位置3記憶部208にそれぞれ記憶された内容に基づいて吐水する水の種別を切替える処理について説明する。
【0072】
図7には、事例番号、事前位置1、事前位置2、事前位置3及び切替処理の内容の各項目を有する。事例番号には、事前位置1、事前位置2、及び事前位置3の組合せの事例について一意に識別する番号が付されている。
事前位置1、事前位置2、及び事前位置3には、対象物体の移動の履歴の事例が示されている。
図7の例では、時系列において最も新しい移動元が事前位置1に、次に古い移動元が事前位置2に、最も古い移動元が事前位置3にそれぞれ示されている。
切替処理の内容には、事例番号の各々において、切替部205Bが吐水する水の種別を切替えた内容が示されている。
【0073】
まず、
図7の事例番号1に示すように、対象物体(例えば、鍋403やコップ)が、まず「シンク400」から「コンロ405」に移動され、次に「コンロ405」から「無し」(つまり、画像に撮像されない食卓や作業台、食器棚等)に移動された後、「シンク400」に移動された場合について切替部205Bが行う処理を説明する。
この場合、切替部205Bは、対象物体を事例番号1に示すような履歴で移動させた人間の行動から、その人間が、まず、(事前位置3により)シンク400で対象物体に水を汲み、次に、(事前位置2により)その水を汲んだ対象物体をコンロ405に移動させて調理等に使用し、次に(事前位置1により)食卓や作業台で調理した料理を対象物体から皿に盛り付ける作業等が行われたと認識する。
そして、切替部205Bは、このような移動履歴を経て、空になった対象物体(例えば、鍋403やコップ)がシンク400に移動された場合、移動させた人間が空になった使用済みの対象物体を洗浄しようとしていると認識する。この場合、切替部205は、吐水管401から湯水を吐水させる。コンロ405で調理に使用された鍋403には油汚れが付着していると想定されることから、油汚れを洗浄するためには、原水よりも湯水が適すると考えられるためである。
【0074】
次に、
図7の事例番号2に示すように、対象物体が、「無し」(つまり、画像に撮像されない食卓や作業台、食器棚等)から、「シンク400」に移動された場合について切替部205Bが行う処理を説明する。
この場合、切替部205Bは、対象物体を事例番号2に示すような履歴で移動させた人間の行動から、その人間が、事前に(事前位置1~事前位置3により)コンロ405に対象物体を移動させることなく、シンク400に対象物体を移動させていることから、使用される前の対象物体を、収納棚や食器棚から取り出してシンク400に移動させたと認識する。
そして、切替部205Bは、このような移動履歴を経て、使用前の対象物体(例えば、鍋403やコップ)がシンク400に移動された場合、対象物体にシンク400で水を汲むなどして使用しようとしていると認識する。この場合、切替部205は、吐水管401から浄水を吐水させる。原水と比較して、浄水のほうが調理や飲料に用いる水として適しているためである。
【0075】
次に、
図7の事例番号3に示すように、対象物体が、「無し」(つまり、画像に撮像されない食卓や作業台、食器棚等)から「シンク400」に移動された後、再度「無し」となり、その後「シンク400」に移動された場合について切替部205Bが行う処理を説明する。
この場合、切替部205Bは、対象物体を事例番号3に示すような履歴で移動させた人間の行動から、その人間が、最初に(事前位置3、及び事前位置2により)対象物体をシンク400に移動した時点において、使用前の対象物体(例えば、鍋403やコップ)が収納棚や食器棚から取り出されて使用されたと認識する。また、切替部205Bは、その人間が、次に(事前位置1により)「無し」とした、つまり画像に撮像されていない食卓や作業台に移動させた時点において、水が汲まれた鍋403やコップ等の対象物体が食卓で使用されたり作業台で調理に用いられたりしたと認識する。
そして、切替部205Bは、このような移動履歴を経て、食卓や作業台で使用された対象物体(例えば、鍋403やコップ)がシンク400に移動された場合、使用済みの対象物体をシンク400に下げて洗浄しようとしていると認識する。この場合、切替部205は、吐水管401から原水を吐水させる。コンロ405とは異なる場所(例えば、食卓や作業台)で飲料されたり使用されたりした対象物体には、コンロ405で使用された鍋403等に付着する油汚れと比較して、軽度の汚れが付着していると想定されることから、軽度の汚れを洗浄するためには湯水ではなく原水が適切であると考えられるためである。これにより、軽度の汚れを洗浄するために、無駄に湯水を使用してしまったり、浄水を使用してしまったりすることがなく、過度に湯水や浄水が使用されることを抑制して無駄なエネルギー消費を抑制することが可能となる。
【0076】
以上説明したように、第3の実施形態の吐水制御装置20Bでは、切替部205Bは、対象物体検知部200により検知された対象物体における位置の時系列変化(例えば、事前位置1記憶部206、事前位置2記憶部207、事前位置3記憶部208、に記憶された内容)に基づいて、吐水状態を切替える。これにより、第3の実施形態の吐水制御装置20Bは、鍋等の対象物体がシンク400に移動された場合に、その対象物体の移動の履歴に基づいて吐水する水の種別を、油汚れの洗浄に適した湯水に切替えたり、飲用や調理に適した浄水に切替えたりすることが可能である。このため、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、人間の行動を認識して自動的に吐水を制御することができる。
【0077】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。本実施形態では、第4の実施形態に係る吐水制御システム1Cが、対象物体の状態に基づいて、吐水する水の種別を選択するとともに、吐水する水の形態をストレート吐水又はシャワー吐水の何れかを選択する点において、上述した実施形態と相違する。ここで、吐水する水の形態は、「吐水状態」の一例である。
以下では、上述した実施形態と異なる点を説明し、上述した実施形態と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
図8は、第4の実施形態に係る吐水制御システム1Cの構成例を示すブロック図である。吐水制御装置20Cは、例えば、切替部205C、状態検知部209を備える。吐水制御装置20Cは、吐水管401の吐水の形態を切替える切替機構(不図示)、原水を吐水させる電磁弁30、浄水を吐水させる電磁弁31及び湯水を吐水させる電磁弁32の各々と接続する。
【0079】
状態検知部209は、撮像装置10により撮像された撮像対象領域40の画像、及び対象物体検知部200による検知結果に基づいて、画像に対象物体が存在する場合における対象物体の状態を検知する。ここでの対象物体の状態は、対象物体の汚れの状態であり、例えば、対象物体が使用前の汚れのない状態か、使用後の汚れた状態か、対象物体が汚れた状態であれば汚れの程度はどの程度の状態か等を示す状態である。
【0080】
状態検知部209は、例えば、対象物体検知部200による検知結果に、画像に対象物体があると検知されたことが示されている場合、その画像における対象物体の領域を抽出する。
【0081】
状態検知部209は、例えば、予め皿などの対象物体について、軽度な汚れから油汚れ等の重度の汚れまで様々な汚れの状態で撮像した画像を記憶させておく。状態検知部209は、予め記憶させた様々な汚れの状態の対象物体の画像と、撮像装置10により撮像された画像から抽出された対象物体の画像とを同じ大きさにスケーリングした上で、両画像の画素について比較する。状態検知部209は、例えば、画素毎の色の分布の傾向が、所定の閾値以上で一致する場合に、両画像における対象物体の汚れの程度が同等であると判定する。状態検知部209は、検知結果を切替部205Cに出力する。
【0082】
切替部205Cは、一致検知部204により出力された検知結果に基づいて吐水するか否かを判定し、吐水する場合には状態検知部209により検知された対象物体の汚れの程度に基づいて、吐水する水の種別(原水、浄水、及び湯水の何れか)、及び吐水する水の形態(ストレート吐水又はシャワー吐水)を選択する。
【0083】
切替部205Cは、例えば、検知対象物体が鍋403であり、状態検知部209により検知対象物体に汚れが付着していないと判定された場合、吐水する水の種別を浄水とし、吐水する水の形態をストレート吐水として吐水する。これから調理する鍋に水を汲む(溜める)場合、シャワー吐水とする必要がなく、ストレート吐水が適していると考えられるためである。
【0084】
また、切替部205Cは、例えば、検知対象物体が鍋403であり、状態検知部209により検知対象物体に重度の汚れが付着していると判定された場合、吐水する水の種別を湯水とし、吐水する水の形態をシャワー吐水として吐水する。鍋403に付着した重度の汚れを洗浄するには湯水が適しており、尚且つ、ストレート吐水の場合を比較して、広範囲に水圧が高い水を吐水することができるシャワー吐水が適していると考えられるためである。
【0085】
また、切替部205Cは、例えば、検知対象物体がコップであり、状態検知部209により検知対象物体に軽度の汚れが付着していると判定された場合、吐水する水の種別を原水とし、吐水する水の形態をシャワー吐水として吐水する。コップに付着した軽度の汚れを洗浄するには原水が適しており、尚且つ広範囲に水圧が高い水を吐水することができるシャワー吐水が適していると考えられるためである。
【0086】
なお、上記では状態検知部209が、汚れの領域や色に基づいて、対象物体の汚れの状態を検知する場合を例示して説明したが、これに限定されない。状態検知部209は、対象物体が吐水口に際だされた際の対象物体の姿勢(つまり、人間が対象物体をどのように保持しているか、或いは、人間が対象物体をどのような姿勢で置いたか)により対象物体の汚れの状態を検知するようにしてもよい。
【0087】
例えば、検知対象物体がコップである場合、状態検知部209は、コップが、吐水口の下で、飲み口を上側方向(鉛直方向)に向けて保持(或いは載置)された場合、検知対象物体に汚れが付着しておらず、飲料水を溜めるためにコップが差し出されたと判定する。この場合、切替部205Cは、検知対象物体(コップ)に、浄水をストレート吐水の形態で吐水する。
【0088】
また、例えば、検知対象物体がコップである場合、状態検知部209は、コップが、吐水口の下で、飲み口を上側方向とは異なる方向、例えば、飲み口が左右方向である水平方向に向けて保持(或いは載置)された場合、検知対象物体に汚れが付着しており、洗浄しようとしてコップが差し出されたと判定する。この場合、切替部205Cは、検知対象物体(コップ)に、原水をシャワー吐水の形態で吐水する。
【0089】
以上説明したように、第4の実施形態の吐水制御装置20Cでは、撮像装置10により撮像された画像、及び対象物体検知部200より検知された対象物体に基づいて、対象物体の状態を検知する状態検知部209を更に備え、切替部205Cは、状態検知部209により検知された対象物体の状態に基づいて、吐水状態を切替える。これにより、第4の実施形態の吐水制御装置20Cは、鍋等の対象物体がシンク400に移動された場合に、その対象物体の汚れの状態に基づいて吐水する水の種別や吐水の形態を切替えることが可能である。このため、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、人間の行動を認識して自動的に吐水を制御することができる。
【0090】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。本実施形態では、第5の実施形態に係る吐水制御システム1Dが、画像に撮像された人間の動作の特徴に基づいて、吐水する水の種別や、吐水する水の形態、及び吐水する水の温度や水圧、及び流量を選択する点において、上述した実施形態と相違する。ここで、吐水する水の温度や水圧、及び流量は、「吐水状態」の一例である。
以下では、上述した実施形態と異なる点を説明し、上述した実施形態と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
図9は、第5の実施形態に係る吐水制御システム1Dの構成例を示すブロック図である。吐水制御装置20Dは、例えば、骨格検知部210、特性抽出部211、及び切替部205Dを備える。
【0092】
骨格検知部210は、撮像装置10により撮像された画像に基づいて、画像に撮像された人間の動作を検知する。骨格検知部210は、例えば、カメラ(例えば、赤外線カメラ)やセンサ(例えば、モーションセンサ)などを用いて人間の動作に関する情報を取得する。骨格検知部210は、赤外線カメラ等を用いて取得した人間の動作に関する情報に基づいて、人間の関節部分を抽出し、抽出した関節部分を人体の骨格の構造に基づいて接続させることにより、人間の骨格を検知する。骨格検知部210は、検知した人間の動作や骨格に関する情報を特性抽出部211に出力する。
【0093】
特性抽出部211は、骨格検知部210により検知された人間の動作や骨格に関する情報に基づいて、その人間の動作の特徴を抽出する。特性抽出部211は、例えば、骨格に関する情報に基づいて、身長や肩幅等の大きさを推定し、画像に撮像された人間が、大人なのか子供なのか、大人である場合には男性なのか女性なのかといった特徴を抽出する。
【0094】
また、特性抽出部211は、骨格検知部210により検知された人間の動作に関する情報に基づいて、その人間の動作の特徴を抽出する。ここでの人間の動作の特徴は、個々の人間の体の使い方の特徴であって、例えば、右肩が左肩と比較して下がる傾向にあるか、上がる傾向にあるのか、右利きなのか左利きなのかといった特徴である。特性抽出部211は、抽出した特徴を示す情報を切替部205Dに出力する。
【0095】
切替部205Dは、一致検知部204により出力された検知結果に基づいて吐水するか否かを判定し、吐水する場合には特性抽出部211により抽出された特徴に基づいて吐水する水の種別や吐水する水の形態、及び水圧や流量等を選択する。
【0096】
切替部205Dは、例えば、特性抽出部211によりシンク400で作業している人間(画像に撮像された人間の一例)が子供や高齢者であると推定された場合、吐水する水の水圧が強くなり過ぎないように調整する。また、切替部205は、例えば、特性抽出部211によりシンクで作業している人間が子供や高齢者であるという特徴が抽出された場合、吐水する湯水の温度が高くなり過ぎないように調整する。この場合、特性抽出部211は、例えば、骨格検知部210により検知された人間の骨格が大人と同程度の大きさであって、尚且つ骨格検知部210により検知された人間の動作の変化が、予め定めた所定の閾値未満の速度である場合に、画像に撮像された人間が高齢者であると推定する。
【0097】
また、切替部205Dは、シンク400で作業している人間が大人の男性であると推定された場合、ストレート吐水で流量が通常より多い吐水を行い、シンクで作業している人間が大人の女性であると推定された場合、シャワー吐水で流量が通常より少ない柔らかな吐水を行うようにしてもよい。
【0098】
以上説明したように、第5の実施形態の吐水制御装置20Dでは、撮像装置10により撮像された領域画像に基づいて、領域画像における人間の特性を抽出する特性抽出部211を更に備え、切替部205Dは、特性抽出部211により抽出された領域画像における人間の特性に基づいて、吐水状態を切替える。これにより、第5の実施形態の吐水制御装置20Dは、鍋等の対象物体をシンク400に移動させて作業する人間の特徴や、その人間の特徴に応じて吐水する水の種別や吐水の形態を切替えることが可能である。このため、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、人間の行動を認識して自動的に吐水を制御することができる。
なお、上記では、特性抽出部211が骨格検知部210により検知される骨格に基づいて人間の特性を抽出する場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。特性抽出部211は、例えば、撮像装置10により撮像された画像により顔認証や動き検知などを行うことにより人間の特性を抽出するようにしてもよい。
【0099】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態について説明する。本実施形態では、第6の実施形態に係る吐水制御システム1Eが、画像に撮像された人間の動作における事前の行動に基づいて、吐水する水の種別や、吐水する水の形態、及び水圧や流量等を選択する点において、上述した実施形態と相違する。以下では、上述した実施形態と異なる点を説明し、上述した実施形態と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0100】
図10は、第6の実施形態に係る吐水制御システム1Eの構成例を示すブロック図である。吐水制御装置20Eは、例えば、行動抽出部212、事前行動記憶部213、及び切替部205Eを備える。
【0101】
骨格検知部210は、検知した人間の動作や骨格に関する情報を特性抽出部211に出力するとともに、行動抽出部212に出力する。
【0102】
行動抽出部212は、骨格検知部210により検知された人間の動作に関する情報に基づいて、その人間の行動を抽出する。ここでの人間の行動とは、シンク400等の水回りで作業する人間がシンク400に移動した際における移動元の位置であり、例えば、シンク400で洗い物を始める前にはコンロ405の前に存在していたか、作業台の前に存在していたか等の行動の履歴である。行動抽出部212は、所定の一定時間の間、人間が移動元のコンロ405等の設備の前に存在したと判定した場合、その人間と位置座標とを対応付けた情報を事前行動記憶部213に記憶させる。
【0103】
事前行動記憶部213は、行動抽出部212により出力された人間とその位置座標とを対応付けた情報を記憶する。
【0104】
切替部205Eは、一致検知部204により出力された検知結果に基づいて吐水するか否かを判定し、吐水する場合には事前行動記憶部213に記憶された内容に基づいて吐水する水の種別や吐水する水の形態、及び水圧や流量等を選択する。切替部205Eは、事前行動記憶部213を参照し、人間の移動元に応じて、吐水する水の種別等を選択する。
【0105】
切替部205Eは、例えば、対象物体が鍋403であって、シンク400で作業している人間がシンク400に移動する前にはコンロ405の前に存在していた場合、その人間は、コンロ405で調理した後に、シンク400で使用した鍋403を洗浄するつもりであると認識し、湯水をシャワー吐水の形態により吐水する。この場合、切替部205Eは、例えば、作業している人間が大人の男性であった場合には流量を増加させ、作業している人間が大人の女性であった場合には流量を減少させ、作業する人間に適した流量となるようにする。
【0106】
また、切替部205Eは、例えば、対象物体がコップであって、シンク400で作業している人間がシンク400に移動する前には食器棚の前に存在していた場合、その人間は、食器棚から取り出したコップで水を飲むつもりであると認識し、浄水をストレート吐水の形態により吐水する。この場合、切替部205Eは、例えば、作業している人間が子供であった場合には流量を減少させ、コップにゆっくりと水が溜るようにする。
【0107】
以上説明したように第6の実施形態の吐水制御装置20Eでは、撮像装置10により撮像された画像に基づいて、画像における人間の移動元を抽出する行動抽出部212を更に備え、切替部205Eは、行動抽出部212により抽出されたシンク400で作業する人間の移動元に基づいて、吐水状態を切替える。これにより、第6の実施形態の吐水制御装置20Eは、鍋403等の対象物体をシンク400に移動させて作業する人間の移動元に応じて吐水する水の種別や吐水の形態を切替えることが可能である。このため、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、人間の行動の履歴に応じて吐水を制御することができる。
なお、上記では、行動抽出部212が骨格検知部210により検知される骨格に基づいて人間の行動を抽出する場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。行動抽出部212は、例えば、撮像装置10により撮像された画像により顔認証や動き検知などを行うことにより人間の行動を抽出するようにしてもよい。
【0108】
<第7の実施形態>
次に、第7の実施形態について説明する。本実施形態では、第7の実施形態に係る吐水制御システム1Fが、作業する人間の意図に基づいて、吐水する水の種別や、吐水する水の形態、及び水圧や流量等を選択する点において、上述した実施形態と相違する。
本実施形態では、シンク400等の水回りで作業する人間が、吐水制御システム1Fにより制御される吐水の状態について、その状態がその人間の意図するものでない場合に、吐水の切替える指示を行う。ここでの音声による指示とは、吐水制御システム1Fにより選択された吐水状態を切替える指示であり、例えば、人間が吐水口に鍋403を差し出した際に吐水口から浄水が吐水された場合に、その人間が鍋403にお湯を汲みたいという意図がある場合に、吐水を湯水に切替える指示を行うものである。
【0109】
例えば、汚れが付着していない鍋403を吐水管401の下に差し出した場合に浄水を吐水した吐水制御システム1Fに対し、浄水で調理を行おうと意図していた人間は吐水を切替える指示を行わない。一方、鍋403に湯水を汲んでコンロ405に運ぶことで、早く湯を沸かそうと意図していた人間は、吐水制御システム1Fが浄水を吐水した場合には吐水を湯水に切替える指示を行う。本実施形態では、作業する人間の音声による指示に基づいて、作業する人間の個々の意図に沿った吐水に切替える制御を行う。
以下では、上述した実施形態と異なる点を説明し、上述した実施形態と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0110】
図11は、第7の実施形態に係る吐水制御システム1Fの構成例を示すブロック図である。吐水制御システム1Fは、例えば、撮像装置10F、吐水制御装置20F、及びマイク50を備える。ここで、マイク50により取得される音情報は、「指示情報」の一例である。
マイク50は、シンク400等の水回りで作業する人間により発せられる音声を取得する。マイク50は、取得した音声を示す情報を吐水制御装置20Fに出力する。
【0111】
吐水制御装置20Fは、例えば、音声認識部214及び切替部205Fを備える。ここで、音声認識部214は、「指示検知部」の一例である。
音声認識部214は、マイク50により取得された音声を示す情報に基づいて、シンク400等の水回りで作業する人間が発した音声の内容を認識する。音声認識部214は、音声を示す情報に基づいて、作業する人間が、吐水制御システム1Fが行う処理に対し吐水の状態の切替えを指示しているか否かを認識する。また、音声認識部214は、吐水の状態の切替えを指示している場合には、どのような吐水制御がその人間の意図するものであったかを認識する。音声認識部214は、吐水の状態の切替えを指示している場合、指示の内容を示す情報を切替部205Fに出力する。
【0112】
切替部205Fは、書き込み制御部2050、吐水条件記憶部2051及び条件更新部2052を備える。
書き込み制御部2050は、音声認識部214により認識された吐水を切替える指示の内容に基づいて、吐水条件記憶部2051に、指示の内容に関する情報を記憶させる。書き込み制御部2050は、例えば、音声認識部214により吐水を切替える指示が認識された場合、事前位置記憶部206に記憶された移動元に応じて、どのような吐水制御を行うかを示す情報を吐水条件記憶部2051に記憶させる。
【0113】
吐水条件記憶部2051は、書き込み制御部2050の制御により吐水を切替える指示した人間について、どのような吐水制御を行うかを示す情報を記憶する。吐水条件記憶部2051は、例えば、一致検知部204の検知結果及び事前位置記憶部206に記憶された内容に基づいて、鍋403が、画像に無い状態からシンク400に移動された後に吐水口に差し出された場合など、通常であれば浄水が吐水される条件について、吐水を湯水に切替える指示があった場合には、同じ吐水条件であっても、鍋403に湯水を吐水することを示す情報を記憶する。
【0114】
条件更新部2052は、一致検知部204の検知結果、事前位置記憶部206に記憶された内容、及び吐水条件記憶部2051に記憶された内容の各々に基づいて、吐水状態を制御する。条件更新部2052は、例えば、収納棚に存在していた鍋403が吐水口に差し出された場合等、通常であれば浄水を吐水する場合であっても、吐水条件記憶部2051に、画像に撮像された作業者には湯水を吐水する情報が記憶されている場合には、湯水を吐水するように制御する。つまり、条件更新部2052は、検知対象物体の位置に基づいて吐水する場合、作業する人間の意図に沿うように吐水状態を個別に変更させ、人間が希望する吐水状態に応じてカスタマイズする。つまり、条件更新部2052は、作業する人間の意図に応じて吐水状態を切替える吐水条件を更新する。
【0115】
以上説明したように、第7の実施形態の吐水制御装置20Fでは、吐水状態を切替える指示を示す指示情報(例えば、マイク50により取得された音の音情報)に基づいて、指示の内容(例えば、口頭による指示の内容)を検知する音声認識部214を更に備え、切替部205Fは、音声認識部214の認識結果に基づいて、吐水状態を切替える。これにより、第7の実施形態の吐水制御装置20Fは、シンク400で作業する人間の音声による指示の内容に応じて吐水する水の種別や吐水の形態を切替えることが可能である。このため、水栓金具にカメラやセンサ回路を内蔵させることなく、人間が示す意図に応じて吐水を制御することができる。
【0116】
また、第7の実施形態の吐水制御装置20Fでは、切替部205Fは、音声認識部214の認識結果に基づいて、吐水状態を切替える吐水条件を更新する。これにより、第7の実施形態の吐水制御装置20Fは、シンク400を使用する人間が希望する吐水状態に沿って吐水制御を行うことができる。
なお、上記では、吐水制御装置20Fが、音声認識部214により認識された音声に基づいて吐水状態を制御する場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。吐水制御装置20Fは、例えば、人間の身振りや手振り(ジェスチャー)に基づいて水状態を制御するようにしてもよい。
この場合、吐水制御装置20Fは、例えば、撮像装置10Fにより撮像された画像に基づいて、人間の身振りや手振り(ジェスチャー)等の動作により行われた吐水状態を切替える指示を検知する動き検知部(不図示)を備える。動き検知部は、検知した吐水状態を切替える指示を示す情報を切替部205Fに出力する。ここで、撮像装置10Fにより撮像される画像の画像情報は、「指示情報」の一例である。また、動き検知部は、「指示検知部」の一例である。
なお、ここでの人間の身振りや手振り(ジェスチャー)には、人間が直接、水栓を操作する動作も含まれる。ここでの水栓を操作する動作には、例えば蛇口をひねったり、吐水するハンドル(シングルレバー)を操作したりする動作が含まれる。これにより、従来のシングルレバーの手動弁を動かす動作により、吐水が直接操作された場合には、その操作の内容を検知して、その操作がシンク400等の水回りで作業する人間の意図であると判断して、吐水条件を更新することができる。
或いは、人間が従来の吐水の操作を行ったことが検知された場合に、その動作に応じて吐水状態を制御するようにしてもよい。これにより、シングルレバー等を操作した人間に、違和感なく自然に吐水状態を制御することが可能となる。
【0117】
上述した実施形態における吐水制御装置20、20A~20Fが行う処理の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0118】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 吐水制御システム
10 撮像装置
20 吐水制御装置
30 電磁弁
40 撮像対象領域
400 シンク
401 吐水管
402、403 検知対象物体
405 コンロ
50 マイク