(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】抗CEACAM6抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221130BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20221130BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221130BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221130BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221130BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221130BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221130BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221130BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221130BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221130BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221130BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/30
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K47/68
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020212437
(22)【出願日】2020-12-22
(62)【分割の表示】P 2017549507の分割
【原出願日】2016-03-21
【審査請求日】2020-12-22
(32)【優先日】2015-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300049958
【氏名又は名称】バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルダ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】トラウトワイン,マルク
(72)【発明者】
【氏名】グリッツァン,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】フライベルク,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ディトマー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ショーンフェルト,ドリアン
(72)【発明者】
【氏名】グリュック,ジュリアン・マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ピンカート,ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス,エヴァ-マリア
(72)【発明者】
【氏名】ゴルフィー,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ホルトン,シモン
(72)【発明者】
【氏名】べックホーフェ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】グー,インジー
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/040824(WO,A1)
【文献】Virchows Arch.,2014年11月27日,Vol.466,pp.151-159
【文献】Cancer Res.,2009年,Vol.69,pp.1933-1940
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/30
C07K 16/46
C12N 15/63
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12P 21/08
A61P 35/00
A61K 39/395
A61K 47/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CEACAM6抗体またはその抗原結合断片であって、
i.配列番号106を含むH-CDR1、配列番号107を含むH-CDR2および配列番号108を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号110を含むL-CDR1、配列番号111を含むL-CDR2および配列番号112を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
ii.配列番号4を含むH-CDR1、配列番号5を含むH-CDR2および配列番号6を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号8を含むL-CDR1、配列番号9を含むL-CDR2および配列番号10を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
iii.配列番号34を含むH-CDR1、配列番号35を含むH-CDR2および配列番号36を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号38を含むL-CDR1、配列番号39を含むL-CDR2および配列番号40を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
iv.配列番号120を含むH-CDR1、配列番号121を含むH-CDR2および配列番号122を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号124を含むL-CDR1、配列番号125を含むL-CDR2および配列番号126を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
v.配列番号24を含むH-CDR1、配列番号25を含むH-CDR2および配列番号26を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号28を含むL-CDR1、配列番号29を含むL-CDR2および配列番号30を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
vi.配列番号76を含むH-CDR1、配列番号77を含むH-CDR2および配列番号78を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号80を含むL-CDR1、配列番号81を含むL-CDR2および配列番号82を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
vii.配列番号134を含むH-CDR1、配列番号135を含むH-CDR2および配列番号136を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号138を含むL-CDR1、配列番号139を含むL-CDR2および配列番号140を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
viii.配列番号148を含むH-CDR1、配列番号149を含むH-CDR2および配列番号150を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号152を含むL-CDR1、配列番号153を含むL-CDR2および配列番号154を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
ix.配列番号14を含むH-CDR1、配列番号15を含むH-CDR2および配列番号16を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号18を含むL-CDR1、配列番号19を含むL-CDR2および配列番号20を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
x.配列番号62を含むH-CDR1、配列番号63を含むH-CDR2および配列番号64を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号66を含むL-CDR1、配列番号67を含むL-CDR2および配列番号68を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
xi.配列番号92を含むH-CDR1、配列番号93を含むH-CDR2および配列番号94を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と、配列番号96を含むL-CDR1、配列番号97を含むL-CDR2および配列番号98を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域
を含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
i.配列番号105によって示される可変重鎖配列と配列番号109によって示される可変軽鎖配列、または
ii.配列番号3によって示される可変重鎖配列と配列番号7によって示される可変軽鎖配列、または
iii.配列番号33によって示される可変重鎖配列と配列番号37によって示される可変軽鎖配列、または
iv.配列番号119によって示される可変重鎖配列と配列番号123によって示される可変軽鎖配列、または
v.配列番号23によって示される可変重鎖配列と配列番号27によって示される可変軽鎖配列、または
vi.配列番号75によって示される可変重鎖配列と配列番号79によって示される可変軽鎖配列、または
vii.配列番号133によって示される可変重鎖配列と配列番号137によって示される可変軽鎖配列、または
viii.配列番号147によって示される可変重鎖配列と配列番号151によって示される可変軽鎖配列、または
ix.配列番号13によって示される可変重鎖配列と配列番号17によって示される可変軽鎖配列、または
x.配列番号61によって示される可変重鎖配列と配列番号65によって示される可変軽鎖配列、または
xi.配列番号91によって示される可変重鎖配列と配列番号95によって示される可変軽鎖配列
を含む請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
IgG抗体である、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
i.配列番号115に
よって示される重鎖領域と配列番号116に
よって示される軽鎖領域、また
は
ii.配列番号43に
よって示される重鎖領域と配列番号44に
よって示される軽鎖領域、または
iii.配列番号129に
よって示される重鎖領域と配列番号130に
よって示される軽鎖領域、または
iv.配列番号85に
よって示される重鎖領域と配列番号86に
よって示される軽鎖領域、または
v.配列番号143に
よって示される重鎖領域と配列番号144に
よって示される軽鎖領域、または
vi.配列番号157に
よって示される重鎖領域と配列番号158に
よって示される軽鎖領域、または
vii.配列番号71に
よって示される重鎖領域と配列番号72に
よって示される軽鎖領域、または
viii.配列番号101に
よって示される重鎖領域と配列番号102に
よって示される軽鎖領域
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
scFv、Fab、Fab’断片またはF(ab’)2断片である、請求項1または2に記載の抗原結合断片。
【請求項6】
モノクローナル抗体または抗原結合断片である、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項7】
ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体または抗原結合断片である、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、抗体-薬物複合体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片をコードする単離された核酸
。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸
を含むベクター。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片を発現するおよび/または請求項9に記載の核酸もしくは請求項10に記載のベクターを含む単離細胞。
【請求項12】
原核細胞または真核細胞である、請求項11に記載の単離細胞。
【請求項13】
請求項12に記載の細胞を培養するステップと、前記抗体または抗原結合断片を精製するステップとを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片
を作成する方法。
【請求項14】
医薬品として使用するための請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または請求項8に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項15】
診断剤として使用するための請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または請求項8に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項16】
がんを治療するための医薬品として使用するための請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または請求項8に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または請求項8に記載の抗体-薬物複合体を含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の医薬組成物と1種または複数の治療活性化合物の組み合わせ
医薬。
【請求項19】
癌
の治療
における使用のための、請求項17に記載の医薬組成物または請求項18に記載の組み合わせ
医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよびカニクイザル(Macaca fascicularis)CE
ACAM6(がん胎児性抗原関連細胞接着分子6、CD66c、非特異的交差反応性抗原
、NCA、NCA-50/90)に特異的であり、そのため密接に関連するヒトCEAC
AM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5と有意には交差反応しない組換え
抗原結合領域ならびに前記抗原結合領域を含む抗体および機能的断片を提供する。本発明
はさらに、この種の抗体を作成する方法を提供する。
【0002】
したがって、抗体を使用して、CEACAM6の発現に関連するがんならびに他の障害
および状態を治療することができる。本発明はまた、前記抗体をコードする核酸配列、同
配列を含むベクター、医薬組成物および使用説明書を含むキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
抗体ベースの療法は、固形腫瘍を含む種々のがんの有効かつ臨床的に確立された治療で
ある。例えば、HERCEPTIN(登録商標)は乳がん治療でうまく用いられており、
RITUXAN(登録商標)はB細胞関連がんのタイプにおいて有効である。新規な成功
した抗体ベースの療法の開発の中心は、対応する受容体の活性を機能的に修正することが
できる、標的細胞(例えば、がん細胞、免疫細胞等)上で優先的に発現されることが分か
った細胞表面タンパク質に対する抗体の単離である。
【0004】
免疫細胞活性化、したがってがんの免疫療法のための免疫チェックポイント分子の抗体
遮断は、臨床的に有効なアプローチである。2011年、CTLA-4遮断抗体イピリム
マブは、転移性黒色腫(Yervoy)の第二選択療法としてFDAによって承認されて
いる。別の例は、いくつかの薬物が承認されているまたは現在臨床開発中であり、黒色腫
、RCCおよび肺がんにおいて印象的な臨床応答が報告されているPD-1/PD-L1
軸の遮断である(Henick et al.,Expert Opin Ther T
argets.2014 Dec;18(12):1407-20))。
【0005】
がん胎児性抗原関連細胞接着分子(CEACAM)ファミリーのタンパク質は免疫グロ
ブリン(Ig)スーパー遺伝子ファミリーに属し、一般にNドメインとして同定される可
変(V)様ドメインを示す。Nドメインには、なしまたは最大6つの定常C2様Igドメ
イン(AまたはBと呼ばれる)のいずれかが続く。これらの細胞外ドメインは、ホモおよ
びヘテロ親和性の細胞間接着分子として(Obrinck,Curr Opin Cel
l Biol.1997 Oct;9(5):616-26)またはヒトおよびげっ歯類
の病原体受容体として(Kuespert et al.,Curr Opin Cel
l Biol.2006 Oct;18(5):565-71;Voges et al
.,PLoS One.2012;7(6):e39908)のCEACAMの機能性の
ために必要とされる。CEACAM受容体は、二量体またはオリゴマーおよび膜における
他のパートナーとの複数の会合体として会合し、結果として重要な機能を調節する。ヒト
組織におけるそれらの発現に加えて、CEACAM遺伝子ファミリーは、27の他の哺乳
動物種において高度に保存されており、マウス、ラット、ウシ、イヌ、カモノハシおよび
オポッサムで最もよく記載されている(Kammerer and Zimmerman
n,BMC Biol.2010 Feb 4;8:12)。CEACAMの最もよく特
徴付けられた生物学的機能は、三次元組織構造の分化および形成、血管新生、アポトーシ
ス、腫瘍抑制ならびに転移における役割を含む、ホモおよびヘテロ親和性相互作用を通し
た細胞-細胞接着の支持である。(Kuespert et al.,Curr Opi
n Cell Biol.2006 Oct;18(5):565-71)。ファミリー
メンバーについてのさらなる詳細は、他の概説に記載されている(Horst and
Wagener,Handb Exp Pharmacol.2004;(165):2
83-341;Gray-Owen and Blumberg,Nat Rev Im
munol.2006 Jun;6(6):433-46)。
【0006】
CEACAM6(がん胎児性抗原関連細胞接着分子6、CD66c、非特異的交差反応
性抗原、NCA、NCA-50/90)は、その数個が同定されている種々の膜受容体に
より細胞外ドメインを通してCEACAMタンパク質のいくつかの可能なシスまたはトラ
ンス指向性相互作用を媒介する、1つのNドメインおよび2つのC2様ドメインを有する
グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合細胞表面タンパク質である。(B
eauchemin and Arabzadeh,Cancer Metastasi
s Rev.2013 Dec;32(3-4):643-71)。
【0007】
CEACAM6は、結腸(Blumenthal et al.,BMC Cance
r,2007,Jan 3;7:2.)、肺(Kolla et al.,Am J P
hysiol Lung Cell Mol Physiol 296:L1019-L
1030)および顆粒球(Kuroki et al.,Biochem Biophy
s Res Commun.1992 Jan 31;182(2):501-6)など
の種々の正常なヒト組織の上皮で発現している。顆粒球系列では、CEACAM6は初期
の系列決定前駆細胞を除いて顆粒球成熟の全段階で発現された(Strickland
et al.,J Pathol.2009 Jul;218(3):380-90);
Scholzel et al.,American Journal of Path
ology,156(2),595-605)。CEACAM6はげっ歯類では発現しな
い。(Beauchemin et al.,Exp Cell Res.1999 N
ov 1;252(2):243-9)。
【0008】
いくつかのがんについてCEACAM6発現が記載されている。結腸がんでは、CEA
CAM6は症例の55%で上方制御され、患者を低リスク群および高リスク群に細分する
ことを可能にする独立した予後因子である(Jantscheff et al.,J
Clin Oncol.2003 Oct 1;21(19):3638-46)。膵臓
腺がんでは、分析された標本の92%(n=82)は陽性であることが分かったが、CE
ACAM6発現は低悪性度PanIN病変よりも高悪性度で優勢であった(Duxbur
y et al.,Ann Surg.2005 Mar;241(3):491-6)
。これは、浸潤性膵臓腺がんの90%超(試験した115のうち110)がCEACAM
6の強い(過剰)発現を示した別の研究で確認された(Strickland et a
l.,J Pathol.2009 Jul;218(3):380-90)。さらに、
Blumenthalらは、乳腺腫瘍、膵臓腫瘍、卵巣腺がん、肺腺がん、リンパ節転移
ならびに乳腺腫瘍、結腸腫瘍および肺腫瘍由来の転移におけるCEACAM6発現を報告
した。(Blumenthal et al.,BMC Cancer.2007 Ja
n 3;7:2)。
【0009】
乳がんにおけるCEACAM6発現は、他の者によっても報告された(Maraqa
et al.,Clin Cancer Res.2008 Jan 15;14(2)
:405-11;Poola et al.,Clin Cancer Res.200
6 Aug 1;12(15):4773-83;Balk-Moller et al
.,Am J Pathol.2014 Apr;184(4):1198-208);
Tsang et al.,Breast Cancer Res Treat.201
3 Nov;142(2):311-22)。さらに、CEACAM6発現は、多発性骨
髄腫(Witzens-Harig et al.,Blood 2013 May 3
0;121(22):4493-503)、胃がん(Deng et al.,Gene
t Mol Res.2014 Sep 26;13(3):7686-97)および頭
頸部がん(Cameron et al.,Mol Cancer.2012 Sep
28;11:74)で報告されている。
【0010】
実験的証拠が、転移の重要な調節因子としてのCEACAM6の役割を支持している。
Kimらは、CEACAM6特異的siRNAを用いてLoVo細胞におけるCEACA
M6発現を減弱する、またはHCT116細胞におけるその発現を増加させることにより
、それぞれ、細胞外マトリックスを介した浸潤が妨げられるまたは増強されることを示し
た(Kim et al.,Clin Chim Acta.2013 Jan 16;
415:12-9)。CEACAM6発現の抑制は、E-カドヘリンプロモーター活性の
上昇をもたらす。Blumenthalらは、CEACAM5およびCEACAM6が、
インビボでモノクローナル抗体によって遮断され得るCRC転移性播種に寄与することを
示した。(Blumenthal et al.,BMC Cancer.2007 J
an 3;7:2)。また、CEACAM6は、増殖、クローン化能、ならびにインビボ
腫瘍形成能がそのサイレンシングで有意に妨げられている幹細胞に富む結腸球を形成する
ことができる結腸がん試料においてCD133陽性細胞で発現することが示されている(
Gemei et Cancer.2013 Feb 15;119(4):729-3
8)。乳がんでは、タモキシフェン耐性試料はCEACAM6過剰発現をしており、CE
ACAM6は疾患の再発の重要な予測因子であることが示された(Maraqa et
al.,Clin Cancer Res.2008 Jan 15;14(2):40
5-11)。MMU1-タモキシフェン耐性MCF7細胞誘導体におけるsiRNA媒介
性CEACAM6サイレンシングは、内分泌耐性、これらの細胞の足場非依存性および侵
襲性を逆転させた(Lewis-Wambi et al.,Eur J Cancer
.2008 Aug;44(12):1770-9)。肺腺がんでは、CEACAM6発
現が有害臨床成績と有意に関連していた(Kobayashi et al.,Br J
Cancer.2012 Nov 6;107(10):1745-53)。膵臓がん
では、siRNAによるCEACAM6サイレンシングが、Mia(AR)膵臓腫瘍細胞
の獲得したアノイキス耐性を逆転させた。Capan2膵臓がん細胞におけるCEACA
M6の過剰発現はゲムシタビン耐性を増大させたが、BxPC3細胞におけるCEACA
M6発現のsiRNA媒介性抑制はSrc依存的様式でAKT活性を調節することによっ
てそれらを薬剤に化学増感受した(Duxbury et al.,Cancer Re
s.2004 Jun 1;64(11):3987-93)。これらの効果は、c-s
rc活性およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP9)発現を示す高CEACA
M6発現細胞の侵襲性増加に対応していた(Duxbury et al.,Br J
Cancer.2004 Oct 4;91(7):1384-90)。
【0011】
腫瘍関連抗原に対するT細胞応答は、多くの腫瘍で記載されており(Beckhove
et al.,J Clin Invest.2004 Jul;114(1):67
-76;Choi et al.,Blood.2005 Mar 1;105(5):
2132-4;Sommerfeldt et al.,Cancer Res.200
6 Aug 15;66(16):8258-65;Schmitz-Winnenth
al et al.,Cancer Res.2005 Nov 1;65(21):1
0079-87.;Jager et al.,Proc Natl Acad Sci
USA.2000 Apr 25;97(9):4760-5;Romero et
al.,Adv Immunol.2006;92:187-224)、しばしばリンパ
器官または血液中での腫瘍特異的メモリーT細胞の蓄積を引き起こす(Choi et
al.,Blood.2005 Mar 1;105(5):2132-4;Feuer
er et al.,Nat Med.2001 Apr;7(4):452-8;Le
tsch et al.,Cancer Res.2003 Sep 1;63(17)
:5582-6)。しかしながら、T細胞が自己腫瘍細胞に対して反応する能力は一般的
に低い(Horna and Sotomayor,Curr Cancer Drug
Targets.2007 Feb;7(1):41-53);Yang and C
arbone,Adv Cancer Res.2004;92:13-27)。多くの
腫瘍は、腫瘍免疫療法の限られた活性に寄与するT細胞のエフェクター機能を遮断する能
力を有する。腫瘍細胞に対するT細胞の無応答性は、幅広いがんについて実証されている
(Pardoll,Nat Immunol.2012 Dec;13(12):112
9-32)。
【0012】
CEACAM6はまた、CD8+T細胞応答の調節にも寄与する。近年、Witzen
s-Harigらは、いくつかのCEACAMファミリーメンバーを発現している多発性
骨髄腫において、抗CEACAM6 mAbまたはsiRNAサイレンシングCEACA
M6による治療が、CD8+T細胞応答調節でCEACAM6の役割を示す悪性形質細胞
に対するT細胞反応性を回復させることを証明した(Witzens-Harig et
al.,Blood 2013 May 30;121(22):4493-503)
。これまでのところ、T細胞上のCEACAM6の受容体は同定されていない。しかしな
がら、CEACAM6陽性骨髄腫細胞とT細胞の共培養は、CEACAM6連結によるS
HPホスファターゼの活性化を含むT細胞シグナル伝達事象の調節をもたらした(Lin
and Weiss,J Cell Sci.2001 Jan;114(Pt 2)
:243-4;Latour et al.,Mol Cell Biol.1997
Aug;17(8):4434-41;Wen et al.,J Immunol.2
010 Dec 1;185(11):6413-9)。CEACAM6は固有のシグナ
ル伝達能力を有さず、その阻害能力はT細胞表面上の受容体への結合によっておそらく媒
介される。このような受容体は、例えば、自然および適応免疫応答の調節の機構が記載さ
れているCEACAM1であり得る。CEACAM1(CD66a)は、免疫受容体抑制
性チロシン(ITIM)モチーフを含む細胞質尾部を有する。CEACAM1は細胞内小
胞に貯蔵され、T細胞活性化で、迅速に(24時間~72時間)外在化され、T細胞表面
上で発現され、そこで標的細胞上で発現しているリガンドへのホモまたはヘテロ親和性結
合後にT細胞エフェクター機能の遮断を媒介する(Gray-Owen and Blu
mberg,Nat Rev Immunol.2006 Jun;6(6):433-
46)。この結合の性質は未知であり、他のCEACAMへのホモもしくはヘテロ親和性
結合、または細胞外マトリックス、成長因子受容体、インテグリンもしくはカドヘリンの
他の成分への結合であり得るだろう。CEACAM1とCEACAM1との間でホモ親和
性相互作用が報告されている(Ortenberg et al.,Mol Cance
r Ther.2012 Jun;11(6):1300-10)。ヘテロ親和性CEA
CAM相互作用は、例えばCEACAM1とCEACAM5、およびCEACAM6とC
EACAM8の間で記載されている(Cavallaro and Christofo
ri,Nat Rev Cancer.2004 Feb;4(2):118-32)。
【0013】
上記のように、CEACAM6は、がん免疫療法における治療介入のための非常に魅力
的な標的である。注記されるように、CEACAM6は、高度に相同なタンパク質ファミ
リーのメンバーである。そのため、CEACAM6の免疫抑制を軽減するヒト療法に適し
た抗体は、それぞれ異なる機能および組織分布を示すCEACAM6と他のパラロガスな
タンパク質、例えばCEACAM1、CEACAM3、CEACAM5を区別して、CE
ACAM6への作用および局在化の様式を制限し、望ましくない有害な副作用を回避する
ことができなければならない。
【0014】
CEACAM6は腫瘍細胞上だけでなく正常組織(特に顆粒球であるが、例えば肺およ
び胃腸細胞の上皮細胞も-Chan and Stanners,Mol Ther.2
004 Jun;9(6):775-85;Strickland et al.,J
Pathol.2009 Jul;218(3):380-90)上でも発現するので、
治療用抗体の有害な副作用プロファイルを予測することができることが絶対に重要である
。予期される作用様式は、免疫抑制の阻害、すなわち重篤な害をもたらすおそれのある免
疫活性化であるので、これは一層重要である(CD28スーパーアゴニストTGN141
2試験の出来事;Suntharalingam et al.,N Engl J M
ed.2006 Sep 7;355(10):1018-28)。そのため、顆粒球に
対する直接的な効果の上にある免疫系に対する間接的な効果を慎重に評価する必要がある
。ヒト治療用抗体および予測的前臨床耐容性試験の開発を可能にするためには、抗体が毒
物学的に関連する種、CEACAM6の場合にはヒト以外の霊長類、好ましくはカニクイ
ザルに対する関連交差反応性を示すことが必須である。
【0015】
前提条件として、治療用抗体は、細胞上のヒトCEACAM6に高親和性で結合し、(
パラログに結合することなく)CEACAM6に選択的に結合し、一桁以内の一価KDで
サルCEACAM6に対して交差反応性であり(非結合活性系結合条件下で低い表面密度
でさえ毒物学サルモデルにおいて正常組織上への結合を安全に反映する)、ヒトCEAC
AM6と類似のエピトープに結合し、CEACAM6媒介性免疫抑制を緩和することがで
き、ヒト療法(すなわち、ヒトまたはヒト化抗体)において非免疫原性であり、医薬とし
て長期間にわたって臨床開発、製剤化および保存を可能にするのに十分安定である必要が
ある。後者は、物理的分解(特に凝集)が治療用タンパク質に対する免疫応答を高めるお
それがあり(Hermeling et al.,Pharm Res.2004 Ju
n;21(6):897-903)、凝集がIgGの展開およびその熱安定性に密接に関
連する(Vermeer and Norde,Biophys J.2000 Jan
;78(1):394-404)ことが前に注目されているので重要である。
【0016】
いくつかの抗CEACAM6抗体が存在する。それらのほとんどは非ヒト試薬抗体であ
り、その多くはポリクローナルである。ヒトCEACAM6に対する特異性および選択性
、ならびにサルCEACAM6に対する交差反応性は、症例のほとんどで開示されていな
いまたは知られていない。
【0017】
CEACAM6に対する治療用抗体も当技術分野で公知である。ヒトCEACAM6に
選択的でないものもある(例えば、ImmunomedicsのMN-3、Neogen
ixのNeo201/h16C3;共にさらにヒトCEACAM5に結合)。単一ドメイ
ン抗体2A3およびその融合変異体(国際公開第2012040824号パンフレットお
よびNiu et al.,J Control Release.2012 Jul
10;161(1):18-24)は、サルCEACAM6に対する選択性および交差反
応性に関して特徴付けられていない。
【0018】
サルCEACAM6に対して明らかに交差反応性の選択的抗CEACAM6抗体は開示
されていない(Strickland et al.,J Pathol.2009 J
ul;218(3):380-90)。
【0019】
マウス抗体9A6(Genovac/Aldevron)は、CEACAM6の免疫抑
制活性を調節することができると記載された唯一の抗体である(Witzens-Har
ig et al.,Blood 2013 May 30;121(22):4493
-503)。9A6はCEACAM6の免疫抑制活性を阻害し、インビトロでのT細胞に
よるサイトカイン分泌の増強およびインビボでの抗腫瘍活性をもたらす(Khandel
wal et al.,Poster Abstract 61,Meeting Ab
stract from 22nd Annual International Ca
ncer Immunotherapy Symposium October 6-8
,2014,New York City,USA)。その選択性は適切であるように思
われるが、9A6は以前はサルCEACAM6に対するその交差反応性に関して特徴付け
られていなかった。さらに、そのマウス性質は、ヒトにおける直接の治療適用を妨げる。
【0020】
実施例に示されるように、抗体9A6は組換えヒトCEACAM6に結合するが、組換
えアカゲザル(Macaca mulatta)CEACAM6に対する結合もカニクイ
ザルCEACAM6に対する結合も検出されなかった。比較のために、Neo201-h
IgG1も試験した。この抗体は、ヒトCEACAM6とサルCEACAM6の両方に対
する高親和性結合を示した。しかし、Neo201は、ヒトCEACAM5およびCEA
CAM6に結合するので、CEACAM6に特異的ではない。
【0021】
結論として、以下の特徴を含む治療用モノクローナル抗体が非常に必要とされている:
i. 抗体はヒトCEACAM6の高親和性バインダーである。
【0022】
ii. 抗体はCEACAM6に対して選択的であり、パラログ、特にCEACAM1
、CEACAM3およびCEACAM5には結合しない。
【0023】
iii. 抗体は、一桁以内の一価KDでサルCEACAM6に対して交差反応性であ
る。
【0024】
iv. 抗体はヒト療法において非免疫原性である、すなわち、抗体はヒトまたはヒト
化抗体である。
【0025】
v. 抗体は、CEACAM6媒介性免疫抑制を緩和することができる。
【0026】
このような抗体は、先行技術には存在しない。ヒトCEACAM6のN末端ドメイン1
に結合する9A6は、CEACAM6媒介性免疫抑制を緩和することができる唯一の公知
の抗CEACAM6抗体であるが、マウス抗体は別にしてサルCEACAM6に対する交
差反応性を欠いている。Neo201は、CEACAM6のN末端ドメイン1の外側の異
なるドメインに結合する。Neo201-hIgG1の治療効果は、ADCCに基づくこ
とが公開されている(Proceedings of the 102nd Annua
l Meeting of the American Association fo
r Cancer Research;2011 Apr 2-6;Orlando,F
L.Philadelphia(PA):AACR:Du et al.,Cancer
Res April 15,2011;71(8 Supplement):4582
)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【非特許文献】
【0028】
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【文献】Hermeling et al.,Pharm Res.2004 Jun;21(6):897-903
【文献】Vermeer and Norde,Biophys J.2000 Jan;78(1):394-404
【文献】Niu et al.,J Control Release.2012 Jul 10;161(1):18-24
【文献】Khandelwal et al.,Poster Abstract 61,Meeting Abstract from 22nd Annual International Cancer Immunotherapy Symposium October 6-8,2014,New York City,USA
【文献】Proceedings of the 102nd Annual Meeting of the American Association for Cancer Research;2011 Apr 2-6;
【文献】Orlando,FL.Philadelphia(PA):AACR:Du et al.,Cancer Res April 15,2011;71(8 Supplement):4582
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明者らは、CEACAM6媒介性免疫抑制の緩和がN末端ドメイン1への結合に関
連すると仮定した。しかし、CEACAM6のN末端ドメイン1に結合する抗体の作成は
、困難な選択性の課題をもたらす。
【0030】
図1の配列アライメントは、細胞外領域全体にわたるヒトCEACAM6およびヒトC
EACAM3、ヒトCEACAM5およびヒトCEACAM1のタンパク質配列の非常に
高度な類似性を示している。標的領域(ヒトCEACAM6のドメイン1)は、他のCE
ACAMと特に類似しており、これは表7にも反映されている。ヒトCEACAM6のパ
ラログ(例えば、CEACAM1、CEACAM3およびCEACAM5)は、カニクイ
ザルのオルソログよりもヒトCEACAM6にはるかに類似している。実際、一次配列の
N末端領域には、ヒトおよびカニクイザルCEACAM6では同一であるが、他のヒトパ
ラログのアミノ酸とは異なる位置が2つしかない(
図1中でアスタリスクで示される)。
【0031】
予想外に、本発明者らは、所望の選択性および機能的特徴の全てを含む抗体を作成する
方法を見出すことができた。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、ヒトおよびカニクイザルCEACAM6タンパク質に対する高い親和性を示
し、密接に関連するヒトCEACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5
と有意には交差反応しない抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体に関す
る。これは、抗体またはその抗原結合抗体断片またはその変異体がCEACAM6に対し
て選択的であることを意味する。提供される抗体は、これらのタンパク質の中で高度に保
存されているN末端ドメイン1に結合する。
【0033】
本発明の抗CEACAM6抗体は、IFN-γおよび/またはIL-2および/または
TNF-α分泌の増加を特徴とするより細胞傷害性および/または活性化された表現型に
向けて腫瘍特異的T細胞のサイトカインプロファイルをインビトロで変化させることがで
きる。そのため、本発明の抗体は、CEACAM6媒介性免疫抑制を軽減し、最終的にイ
ンビボで抗腫瘍効果をもたらす免疫活性化を誘導することができる。
【0034】
本発明の抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体は、先天性免疫応答お
よび適応免疫応答を調節する機構であり得るCEACAM6とCEACAM1の相互作用
を妨害する。
【0035】
したがって、本発明の抗体は、がんならびにその転移、特に結腸直腸がん、非小細胞肺
がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、膵臓がん、胃がん、乳がんおよび多発
性骨髄腫などのCEACAM6発現腫瘍の治療に適している。
【0036】
本発明は、一桁以内の一価KDでヒトおよびカニクイザルCEACAM6に結合する(
非結合活性系結合条件下で低い表面密度でさえ毒物学サルモデルにおいて正常組織上への
結合を安全に反映する)ことができ、密接に関連するパラログCEACAM1、CEAC
AM3およびCEACAM5と有意には交差反応しないという点で、既存の抗CEACA
M6抗体と区別される抗体を記載している。そのため、これらの抗体は、安全性プロファ
イルを評価するためのカニクイザルにおける前臨床毒物学的試験に適している。CEAC
AM6は腫瘍細胞上だけでなく正常組織(特に顆粒球であるが、例えば肺および胃腸細胞
の上皮細胞も-Chan and Stanners,Mol Ther.2004 J
un;9(6):775-85;Strickland et al.,J Patho
l.2009 Jul;218(3):380-90)上でも発現するので、治療用抗体
の有害な副作用プロファイルを予測することができることが絶対に重要である。予期され
る作用様式は、免疫抑制の阻害、すなわち重篤な害をもたらすおそれのある免疫活性化で
あるので(CD28スーパーアゴニストTGN1412試験の出来事)、これは一層重要
であり、そのため、顆粒球に対する直接的な効果の上の免疫系に対する間接的な効果を慎
重に評価する必要がある。
【0037】
本発明の非常に好ましい抗CEACAM6抗体を、その構造的特徴により特徴付けられ
る表1に示す。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピ
トープに結合し、前記エピトープが配列番号179のGln60、Asn61、Arg6
2、Ile63、Val83、Ile84、Gly85、Thr90、Ser127、A
sp128およびLeu129からなる群から選択される1個または複数のアミノ酸残基
を含む。
【0039】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピトー
プに結合し、前記エピトープが配列番号179のGln60、Asn61、Arg62、
Ile63、Val83、Ile84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp
128およびLeu129のアミノ酸残基を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピ
トープと相互作用する、例えばこれに結合し、前記エピトープが配列番号179のPro
59、Gln60、Asn61、Arg62、Ile63、Gly64、Val83、I
le84、Gly85、Thr86、Gln88、Thr90、Pro91、Ile12
5、Ser127、Asp128およびLeu129からなる群から選択される1個、2
個、3個、4個、5個、8個、10個、15個またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0041】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピトー
プと相互作用する、例えばこれに結合し、前記エピトープが配列番号179のPro59
、Gln60、Asn61、Arg62、Ile63、Gly64、Val83、Ile
84、Gly85、Thr86、Gln88、Thr90、Pro91、Ile125、
Ser127、Asp128およびLeu129のアミノ酸残基を含む。
【0042】
本発明の抗CEACAM6抗体は、公知の医薬品と同時投与されてもよく、いくつかの
例では、抗体自体が修飾されてもよい。例えば、抗体を、細胞傷害剤、免疫毒素、担毒体
または放射性同位体に結合して、効力を潜在的にさらに増加させることができるだろう。
【0043】
本発明はさらに、CEACAM6発現が正常組織と比較して上昇している悪性または異
形成状態を診断するためのツールを構成する抗体を提供する。検出可能なマーカーに結合
した抗CEACAM6抗体が提供される。好ましいマーカーは、放射標識、酵素、発色団
または発蛍光団である。
【0044】
本発明はまた、本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド、
本発明の抗体またはその抗原結合断片を発現する細胞、本発明の抗体またはその抗原結合
断片を作成する方法、本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いて異形成細胞の増殖を
阻害する方法、ならびに本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いてがんを治療および
検出する方法に関する。
【0045】
本発明はまた、各々がCEACAM6のエピトープに特異的な上記抗体またはその抗原
結合断片をコードし得る単離された核酸配列に関する。本発明の核酸は、抗体または抗原
結合抗体断片の組換え作成に適している。したがって、本発明はまた、本発明の核酸配列
を含むベクターおよび宿主細胞に関する。
【0046】
本発明の組成物は、治療用途または予防用途に使用することができる。そのため、本発
明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片と、そのための薬学的に許容される担体また
は賦形剤とを含む医薬組成物を含む。関連する態様では、本発明は、CEACAM6発現
細胞の望ましくない存在に関連する障害または状態を治療する方法を提供する。好ましい
実施形態では、前記障害ががんである。このような方法は、有効量の本明細書中に記載ま
たは企図される本発明の抗体を含む医薬組成物をそれを必要とする対象に投与するステッ
プを含む。
【0047】
さらに、本発明は、この種の抗体を作成する方法に関する。本発明は、抗体ライブラリーを使用してCEACAM6に特異的に結合するこのようなライブラリーの1つまたは複数のメンバーを単離するための説明書を提供する。さらに、本発明は、CEACAM6に特異的に結合し、カニクイザル(Macaca fascicularis)(カニクイザル)CEACAM6に対して交差反応性である抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株を産生するようにマウスを免疫化するための説明書を提供する。CEACAM6に特異的に結合するマウス抗体のヒト化のための説明書も、本発明によって提供される。
また、一態様において、本発明は以下を提供する。
[項目1]
ヒトCEACAM6およびカニクイザル(Macaca fascicularis)CEACAM6に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片。
[項目2]
配列番号179のアミノ酸35~142および配列番号177のアミノ酸35~142によって表されるCEACAM6ドメイン1に結合する、項目1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[項目3]
ヒトCEACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5と有意には交差反応しない、項目1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[項目4]
CEACAM6とCEACAM1の相互作用を妨害する、項目1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[項目5]
対照試料と比較してIFN-γ分泌増加、好ましくは≧1.5倍の増加を特徴とするより活性化された表現型に向けて腫瘍抗原特異的T細胞のサイトカインプロファイルを変化させることができる、項目1から4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[項目6]
ヒトCEACAM6のエピトープに結合する項目1から5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、前記エピトープが配列番号17のGln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129からなる群から選択される1個または複数のアミノ酸残基を含む抗体またはその抗原結合断片。
[項目7]
ヒトCEACAM6のエピトープに結合する項目6に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、前記エピトープが配列番号179のGln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129のアミノ酸残基を含む抗体またはその抗原結合断片。
[項目8]
Ile63Leu突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合し、配列番号179によるIle63Phe突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合しない、項目6または7に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[項目9]
i.配列番号48を含むH-CDR1、配列番号49を含むH-CDR2および配列番号50を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号52を含むL-CDR1、配列番号53を含むL-CDR2および配列番号54を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
ii.配列番号106を含むH-CDR1、配列番号107を含むH-CDR2および配列番号108を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号110を含むL-CDR1、配列番号111を含むL-CDR2および配列番号112を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
iii.配列番号4を含むH-CDR1、配列番号5を含むH-CDR2および配列番号6を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号8を含むL-CDR1、配列番号9を含むL-CDR2および配列番号10を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
iv.配列番号34を含むH-CDR1、配列番号35を含むH-CDR2および配列番号36を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号38を含むL-CDR1、配列番号39を含むL-CDR2および配列番号40を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
v.配列番号120を含むH-CDR1、配列番号121を含むH-CDR2および配列番号122を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号124を含むL-CDR1、配列番号125を含むL-CDR2および配列番号126を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
vi.配列番号24を含むH-CDR1、配列番号25を含むH-CDR2および配列番号26を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号28を含むL-CDR1、配列番号29を含むL-CDR2および配列番号30を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
vii.配列番号76を含むH-CDR1、配列番号77を含むH-CDR2および配列番号78を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号80を含むL-CDR1、配列番号81を含むL-CDR2および配列番号82を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
viii.配列番号134を含むH-CDR1、配列番号135を含むH-CDR2および配列番号136を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号138を含むL-CDR1、配列番号139を含むL-CDR2および配列番号140を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
ix.配列番号148を含むH-CDR1、配列番号149を含むH-CDR2および配列番号150を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号152を含むL-CDR1、配列番号153を含むL-CDR2および配列番号154を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
x.配列番号14を含むH-CDR1、配列番号15を含むH-CDR2および配列番号16を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号18を含むL-CDR1、配列番号19を含むL-CDR2および配列番号20を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
xi.配列番号62を含むH-CDR1、配列番号63を含むH-CDR2および配列番号64を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号66を含むL-CDR1、配列番号67を含むL-CDR2および配列番号68を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
xii.配列番号92を含むH-CDR1、配列番号93を含むH-CDR2および配列番号94を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号96を含むL-CDR1、配列番号97を含むL-CDR2および配列番号98を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合領域
を含む項目1から5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[項目10]
i.配列番号47によって示される可変重鎖配列と配列番号51によって示される可変軽鎖配列、または
ii.配列番号105によって示される可変重鎖配列と配列番号109によって示される可変軽鎖配列、または
iii.配列番号3によって示される可変重鎖配列と配列番号7によって示される可変軽鎖配列、または
iv.配列番号33によって示される可変重鎖配列と配列番号37によって示される可変軽鎖配列、または
v.配列番号119によって示される可変重鎖配列と配列番号123によって示される可変軽鎖配列、または
vi.配列番号23によって示される可変重鎖配列と配列番号27によって示される可変軽鎖配列、または
vii.配列番号75によって示される可変重鎖配列と配列番号79によって示される可変軽鎖配列、または
viii.配列番号133によって示される可変重鎖配列と配列番号137によって示される可変軽鎖配列、または
ix.配列番号147によって示される可変重鎖配列と配列番号151によって示される可変軽鎖配列、または
x.配列番号13によって示される可変重鎖配列と配列番号17によって示される可変軽鎖配列、または
xi.配列番号61によって示される可変重鎖配列と配列番号65によって示される可変軽鎖配列、または
xii.配列番号91によって示される可変重鎖配列と配列番号95によって示される可変軽鎖配列
を含む項目1から5および項目9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[項目11]
IgG抗体である、項目1から10のいずれか一項に記載の抗体。
[項目12]
i.配列番号57に相当する重鎖領域と配列番号58に相当する軽鎖領域、または
ii.配列番号115に相当する重鎖領域と配列番号116に相当する軽鎖領域、または
iii.配列番号43に相当する重鎖領域と配列番号44に相当する軽鎖領域、または
iv.配列番号129に相当する重鎖領域と配列番号130に相当する軽鎖領域、または
v.配列番号85に相当する重鎖領域と配列番号86に相当する軽鎖領域、または
vi.配列番号143に相当する重鎖領域と配列番号144に相当する軽鎖領域、または
vii.配列番号157に相当する重鎖領域と配列番号158に相当する軽鎖領域、または
viii.配列番号71に相当する重鎖領域と配列番号72に相当する軽鎖領域、または
ix.配列番号101に相当する重鎖領域と配列番号102に相当する軽鎖領域
を含む、項目1から5および項目9から10のいずれか一項に記載の抗体。
[項目13]
scFv、Fab、Fab’断片またはF(ab’)2断片である、項目1から10のいずれか一項に記載の抗原結合断片。
[項目14]
モノクローナル抗体または抗原結合断片である、項目1から13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
[項目15]
ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体または抗原結合断片である、項目1から14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
[項目16]
項目1から15のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、抗体-薬物複合体。
[項目17]
項目1から15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片をコードする単離された核酸配列。
[項目18]
項目17に記載の核酸配列を含むベクター。
[項目19]
項目1から15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片を発現するおよび/または項目17に記載の核酸もしくは項目18に記載のベクターを含む単離細胞。
[項目20]
原核細胞または真核細胞である、項目19に記載の単離細胞。
[項目21]
項目20に記載の細胞を培養するステップと、前記抗体または抗原結合断片を精製するステップとを含む、項目1から15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片を作成する方法。
[項目22]
医薬品として使用するための項目1から15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または項目16に記載の抗体-薬物複合体。
[項目23]
診断剤として使用するための項目1から15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または項目16に記載の抗体-薬物複合体。
[項目24]
がんを治療するための医薬品として使用するための項目1から15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または項目16に記載の抗体-薬物複合体。
[項目25]
項目1から15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または項目16に記載の抗体-薬物複合体を含む医薬組成物。
[項目26]
項目25に記載の医薬組成物と1種または複数の治療活性化合物の組み合わせ。
[項目27]
CEACAM6の望ましくない存在に関連する障害または状態を治療する方法であって、有効量の項目25に記載の医薬組成物または項目26に記載の組み合わせを、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法。
[項目28]
ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合する抗CEACAM6抗体を調製する方法であって、配列番号177のアミノ酸35~142によって表されるカニクイザルCECAM6ドメイン1を含むタンパク質で、動物、好ましくはマウスを免疫化するステップと、ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合する抗体のアミノ酸配列を決定するステップと、場合により引き続いて抗体をヒト化またはキメラ抗体を作成するステップと、前記抗体を組換え発現するステップとを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】ヒトCEACAM6パラログならびにカニクイザル(Macaca fascicularis)(カニクイザル)CEACAM6オルソログの細胞外領域のタンパク質配列アラインメントを示す図である。数字は、シグナルペプチド配列の除去後のアミノ酸位置を示す。一次配列のN末端領域中のヒトおよびカニクイザルCEACAM6では同一であるが、他のヒトパラログ中のこの位置のアミノ酸とは異なる位置をアスタリスクで示す。N末端ドメイン1を囲んでいる。
【
図2】TPP-2971の可変ドメインVLおよびVHのアミノ酸配列を示す図である。ヒトフレームワークに移植された配列を、下線付き太字として強調表示している。Kabatの定義によるCDRをイタリック文字で記している。灰色の影付き文字は、TPP-2971と比較したTPP-3187からの配列の相違を表す。
【
図3】TPP-3310およびTPP-3714の可変ドメインVLおよびVHのアミノ酸配列を示す図である。TPP-2971のマウスCDRに由来する配列を、下線付き太字として強調表示している。Kabatの定義によるCDRをイタリック文字で記している。抗体TPP-3310とTPP-3714は、下線付き非太字として強調されたVHフレームワーク内の2個のアミノ酸が異なる。
【
図4】TPP-3820およびTPP-3821の可変ドメインVLおよびVHのアミノ酸配列を示す図である。TPP-3187のマウスCDRに由来する配列を、下線付き太字として強調表示している。Kabatの定義によるCDRをイタリック文字で記している。抗体TPP-3820とTPP-3821は、下線付き非太字として強調されたVHフレームワーク内の2個のアミノ酸が異なる。
【
図5】サバイビンペプチド特異的T細胞のIFN-γ分泌およびこの分泌の程度に対する抗CEACAM6抗体のインビトロ薬理学的効果を示す図である。A+B.サバイビン-ペプチド特異的T細胞およびKS腫瘍細胞のIFN-γ ELISpotアッセイ。10000個のKS腫瘍細胞を2500個のSurvivin TCと共に20時間共培養した。共培養における抗体濃度は30μg/mlであった。C.サバイビン-ペプチド特異的TCおよびKS腫瘍細胞のIFN-γ ELISAアッセイ。10000個のKS腫瘍細胞を20000個のSurvivin TCと共に20時間共培養した。共培養における抗体濃度は30μg/mlであった。X軸は試験した異なる条件を示す:A中:1=10000個KS細胞;2=2500個T細胞;3=抗体処理なし;4=アイソタイプ適合抗体対照;5=TPP-3470(9A6-hIgG2)6=TPP-3323;B中:1=10000個KS細胞;2=2500個T細胞;3=抗体処理なし;4=アイソタイプ適合抗体対照;5=TPP-3470(9A6-hIgG2)6=TPP-3310;7=TPP-3707;C中:1=10000個KS細胞;2=20000個T細胞;3=抗体処理なし;4=アイソタイプ適合抗体対照;5=TPP-3470(9A6-hIgG2)6=TPP-3310;7=TPP-3707;Y軸は1ウェル当たりのIFN-γスポットカウント(AおよびB)またはIFN-ガンマ濃度(pg/ml)(C)に相当する。アスタリスクは、Studentのt検定、対応のない、両側検定による統計的に有意な結果を示す。エラーバーはSEMを表す。
【
図6】サバイビンペプチド特異的T細胞のサイトカイン分泌(IFN-γ、IL-2およびTNF-α)に対する抗CEACAM6抗体のインビトロ薬理学的効果を示す図である。A.IFN-γ Luminex分析。B.IL-2 Luminex分析。C.TNFa Luminex分析。サバイビン-ペプチド特異的TCおよびKS腫瘍細胞のLuminexサイトカイン分析。10000個のKS腫瘍細胞を20000個のSurvivin TCと共に20時間共培養した。共培養における抗体濃度は30μg/mlであった。X軸は試験した異なる条件を示す:1=10000個のKS細胞;2=20000個のT細胞;3=抗体処理なし;4=アイソタイプ適合抗体対照;5=TPP-3470(9A6-hIgG2)6=TPP-3310;7=TPP-3707;Y軸はサイトカイン濃度(pg/ml)に相当する。
【
図7】インビボでの腫瘍増殖に対する抗CEACAM6抗体の効果を示す図である。2×10
6個のKS乳がん細胞を皮下接種した。23日目および27日目に、腫瘍抗原特異的T細胞(サバイビン-ペプチド特異的)を静脈内注射した。200μgの抗CEACAM6抗体または適合アイソタイプ対照を、22日目、24日目、26日目および28日目に腹腔内投与した。2~3日毎に腫瘍増殖を評価した。エラーバーはSEMを表す。Y軸=腫瘍表面(mm
2);X軸=日;TC=サバイビン-ペプチド特異的T細胞。1=PBS処理;2=T細胞およびアイソタイプ適合抗体対照による処理;3=T細胞およびTPP-3470(9A6-hIgG2)による処理;4=T細胞およびTPP-3310による処理;5=T細胞およびTPP-3707による処理。
【
図8】本発明の好ましい抗CEACAM6抗体のアノテーション配列を示す図である。IgGの重鎖および軽鎖ならびに選択された抗体のVHおよびVL領域についてのタンパク質およびDNA配列が提供される。配列の下に重要な領域がアノテーションされている(全長IgGのVHおよびVL領域ならびにCDR領域(H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3))。
【
図9】FabフラグメントAPP-1574に結合したヒトCEACAM6(TPP-1794、白色)の単一N末端ドメイン1の漫画描写(重鎖および軽鎖はそれぞれ暗灰色および薄灰色に着色している)を示す図である。
【
図10】
図9に示されるタンパク質界面の詳細を示す図である。選択された残基は棒描写で描かれ、
図9のように着色されている。番号付けはTPP-1794(配列番号169)に対応している。
【
図11】サバイビン-ペプチド特異的CD8
+T細胞を用いるxCELLigence細胞傷害性アッセイを示す図である。
【0049】
A.20000個のKS乳がん腫瘍細胞を20000個のサバイビン特異的T細胞と共培養した。B.40000個のHCT-116-hC6腫瘍細胞を20000個のサバイビン特異的T細胞と共培養した。細胞傷害性を約100時間監視した。抗体を最終濃度30μg/mlで使用した:#1、T細胞添加の時点;#2、腫瘍細胞のみ;#3、抗体なし;#4、アイソタイプ適合抗体対照;#5、ヒトIgG2としての抗PD-L1 Ab;#6、ヒトIgG2としてのTPP-3470 9A6 Ab;#7 TPP-3310 hIgG2。アスタリスクは、Studentのt検定、対応のない、両側検定による統計的に有意な結果を示す。X、x軸、時間(時間);Y、Y軸、正規化セルインデックス。
【
図12】膵臓がん(TIL-12)の患者由来T細胞を用いたxCELLigence細胞傷害性アッセイを示す図である。
【0050】
AおよびB:10000個のHCC2935腫瘍細胞を50000の膵臓がん浸潤リンパ球細胞(TIL-12)と共培養した。細胞傷害性を約150時間監視した。抗CD3×EpCAM二重特異性mAb(0.25ng/ml)を共培養で添加して、HLAと独立した腫瘍細胞に対してT細胞を向けた。
【0051】
A:#1、T細胞添加;#2腫瘍細胞のみ;#3、抗体なし;#4、アイソタイプ適合抗体対照;#5、ヒトIgG2としての抗PD-L1 Ab;#6、TPP-3470;#7 TPP-3310;抗体は30μg/mlで使用した。
【0052】
B:TPP-3310媒介効果の濃度依存性:#1、T細胞添加;#2、腫瘍細胞のみ;#3、0.07μg/mlのTPP-3310;#4、0.02μg/mlのTPP-3310;#5、50μg/mlのアイソタイプ適合抗体対照;#6、0.021μg/mlのTPP-3310;#7、0.062μg/mlのTPP-3310;#8、1.85μg/mlのTPP-3310;#9、5.5μg/mlのTPP-3310;#10、16.67μg/mlのTPP-3310;#11、50μg/mlのTPP-33
10;
X-x軸、時間(時間);Y、Y軸、正規化セルインデックス。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、CEACAM6に対する特異的親和性を有し、対象に治療上の利益をもたら
すことができる新規な抗体の発見に基づく。ヒト、ヒト化またはキメラであり得る本発明
の抗体は、本明細書により完全に記載される多くの状況で使用することができる。
【0054】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明
が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。しかしながら、以下の
参考文献は、本発明が関連する当業者に、本発明で使用される多くの用語の一般的な定義
を提供することができ、このような定義が当分野で一般的に理解される意味と一致する限
り参照および使用され得る。このような参考文献には、それだけに限らないが、Sing
leton et al.,Dictionary of Microbiology
and Molecular Biology(2nd ed.1994);The C
ambridge Dictionary of Science and Techn
ology(Walker ed.,1988);Hale&Marham,The H
arper Collins Dictionary of Biology(1991
);およびLackie et al.,The Dictionary of Cel
l&Molecular Biology(3d ed.1999);およびCellu
lar and Molecular Immunology,Eds.Abbas,L
ichtman and Pober,2nd Edition,W.B.Saunde
rs Companyが含まれる。当技術分野において一般的に理解される意味を有する
本明細書で使用される用語の定義を提供する、当業者に入手可能な任意の追加の技術的資
源を調べることができる。本発明の目的のために、以下の用語をさらに定義する。さらな
る用語は、明細書のどこかで定義される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用す
る場合、単数形「a」および「the」は、文脈上別段の意味を有することが明らかな場
合を除き、複数指示対象を含む。したがって、例えば、「遺伝子」への言及は、1つまた
は複数の遺伝子への言及であり、当業者に公知のその等価物などを含む。
【0055】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指す
ために本明細書で互換的に使用される。これらの用語を、1つまたは複数のアミノ酸残基
が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ
酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用する。特に指示しない限り、特定のポリ
ペプチド配列はまた、その保存的に修飾された変異体を暗に包含する。
【0056】
アミノ酸は、本明細書では、一般的に知られている3文字記号またはIUPAC-IU
B生化学命名委員会によって推奨される1文字記号によって呼ばれ得る。同様に、ヌクレ
オチドは、一般に認められている一文字コードによって呼ばれ得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、「CEACAM6」は、「CD66c」(分化抗原群66
c)、または非特異的交差反応性抗原、またはNCA、またはNCA-50/90として
も知られている「がん胎児性抗原関連細胞接着分子6」を示す。CEACAM6は、細胞
-細胞接着に関与するグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合細胞表面タ
ンパク質である。CEACAM6は、結腸がん、膵臓がん、乳がんおよび肺がんなどの種
々の腫瘍細胞の表面上で高度に発現される。
【0058】
ヒトCEACAM6の基準配列は、シグナルペプチド(位置1~34)およびプロペチ
ド(propetide)鎖(位置321~344)を含む受託番号P40199.3(
配列番号179=TPP-4639)でUniProtKB/Swiss-Protデー
タベースから入手可能である。一塩基多型が位置239で観察されている(GからVへの
交換)。ヒトCEACAM6の成熟細胞外ドメインは、配列番号179の35~320位
のアミノ酸からなる。
【0059】
ヒトCEACAM6(配列番号179)
MGPPSAPPCRLHVPWKEVLLTASLLTFWNPPTTAKLTIE
STPFNVAEGKEVLLLAHNLPQNRIGYSWYKGERVDGNSLI
VGYVIGTQQATPGPAYSGRETIYPNASLLIQNVTQNDTGF
YTLQVIKSDLVNEEATGQFHVYPELPKPSISSNNSNPVED
KDAVAFTCEPEVQNTTYLWWVNGQSLPVSPRLQLSNGNMT
LTLLSVKRNDAGSYECEIQNPASANRSDPVTLNVLYGPDG
PTISPSKANYRPGENLNLSCHAASNPPAQYSWFINGTFQQ
STQELFIPNITVNNSGSYMCQAHNSATGLNRTTVTMITVS
GSAPVLSAVATVGITIGVLARVALI
CEACAM6のカニクイザル(Macaca fascicularis)(カニク
イザル)タンパク質配列は、本発明者によって推定され、TPP-4189(配列番号1
77)によって表される。カニクイザルCEACAM6の成熟細胞外ドメインは、配列番
号177の35~320位のアミノ酸からなる。
【0060】
カニクイザル(Macaca fascicularis)(カニクイザル)CEAC
AM6(配列番号177)
MGPPSAPPCRICVPWKEVLLTASLLTFWSPPTTAQLTIE
SRPFNVAEGKEVLLLAHNLPQNTLGFNWYKGERVDAKRLI
VAYVIGTQQTTPGPAHSGREMIYSNASLLIQNVTQNDTGS
YTLQAIKEDLVTEEATGRFWVYPELPKPYITSNNSNPVED
KDAVDFTCEPDIHSTTYLWWVNDQSLPVSPRLQLSNGNRT
LTLLSVKRNDAGAYECEIQNPVSANLSDPVILNVLYGPDV
PTISPSNSNYRPGENLNLSCHAASNPTAQYSWFVNGTFQQ
STQELFIPNITVNNSGSYMCQAYNSATGLNRTTVMMITVS
GSAPGLSAVATVGIMIGVLARVALI
ヒトおよびカニクイザル(Macaca fascicularis)(カニクイザル
)CEACAM6のドメイン構成は以下の通りである(それぞれ受託番号P40199.
3および配列番号179=TPP-4639および配列番号177=TPP-4189の
UniProtKB/Swiss-Protデータベース配列に基づく):
【表1】
【0061】
ヒトCEACAM1全長タンパク質は、受託番号P13688.2(配列番号173=
TPP-4185)でUniProtKB/Swiss-Protデータベースから入手
可能である。ヒトCEACAM1の成熟細胞外ドメインは、配列番号173の35~42
8位のアミノ酸からなる。
【0062】
ヒトCEACAM1(配列番号173)
MGHLSAPLHRVRVPWQGLLLTASLLTFWNPPTTAQLTTE
SMPFNVAEGKEVLLLVHNLPQQLFGYSWYKGERVDGNRQI
VGYAIGTQQATPGPANSGRETIYPNASLLIQNVTQNDTGF
YTLQVIKSDLVNEEATGQFHVYPELPKPSISSNNSNPVED
KDAVAFTCEPETQDTTYLWWINNQSLPVSPRLQLSNGNRT
LTLLSVTRNDTGPYECEIQNPVSANRSDPVTLNVTYGPDT
PTISPSDTYYRPGANLSLSCYAASNPPAQYSWLINGTFQQ
STQELFIPNITVNNSGSYTCHANNSVTGCNRTTVKTIIVT
ELSPVVAKPQIKASKTTVTGDKDSVNLTCSTNDTGISIRW
FFKNQSLPSSERMKLSQGNTTLSINPVKREDAGTYWCEVF
NPISKNQSDPIMLNVNYNALPQENGLSPGAIAGIVIGVVA
LVALIAVALACFLHFGKTGRASDQRDLTEHKPSVSNHTQD
HSNDPPNKMNEVTYSTLNFEAQQPTQPTSASPSLTATEII
YSEVKKQ
ヒトCEACAM3全長タンパク質は、受託番号P40198.2(配列番号175=
TPP-4187)でUniProtKB/Swiss-Protデータベースから入手
可能である。ヒトCEACAM3の成熟細胞外ドメインは、配列番号175の35~15
5位のアミノ酸からなる。
【0063】
ヒトCEACAM3(配列番号175)
MGPPSASPHRECIPWQGLLLTASLLNFWNPPTTAKLTIE
SMPLSVAEGKEVLLLVHNLPQHLFGYSWYKGERVDGNSLI
VGYVIGTQQATPGAAYSGRETIYTNASLLIQNVTQNDIGF
YTLQVIKSDLVNEEATGQFHVYQENAPGLPVGAVAGIVTG
VLVGVALVAALVCFLLLAKTGRTSIQRDLKEQQPQALAPG
RGPSHSSAFSMSPLSTAQAPLPNPRTAASIYEELLKHDTN
IYCRMDHKAEVAS
ヒトCEACAM5全長タンパク質は、受託番号P06731.3(配列番号176=
TPP-4188)でUniProtKB/Swiss-Protデータベースから入手
可能である。ヒトCEACAM5の成熟細胞外ドメインは、配列番号176の35~68
5位のアミノ酸からなる。
【0064】
ヒトCEACAM5(配列番号176)
MESPSAPPHRWCIPWQRLLLTASLLTFWNPPTTAKLTIE
STPFNVAEGKEVLLLVHNLPQHLFGYSWYKGERVDGNRQI
IGYVIGTQQATPGPAYSGREIIYPNASLLIQNIIQNDTGF
YTLHVIKSDLVNEEATGQFRVYPELPKPSISSNNSKPVED
KDAVAFTCEPETQDATYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNGNRT
LTLFNVTRNDTASYKCETQNPVSARRSDSVILNVLYGPDA
PTISPLNTSYRSGENLNLSCHAASNPPAQYSWFVNGTFQQ
STQELFIPNITVNNSGSYTCQAHNSDTGLNRTTVTTITVY
AEPPKPFITSNNSNPVEDEDAVALTCEPEIQNTTYLWWVN
NQSLPVSPRLQLSNDNRTLTLLSVTRNDVGPYECGIQNKL
SVDHSDPVILNVLYGPDDPTISPSYTYYRPGVNLSLSCHA
ASNPPAQYSWLIDGNIQQHTQELFISNITEKNSGLYTCQA
NNSASGHSRTTVKTITVSAELPKPSISSNNSKPVEDKDAV
AFTCEPEAQNTTYLWWVNGQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLF
NVTRNDARAYVCGIQNSVSANRSDPVTLDVLYGPDTPIIS
PPDSSYLSGANLNLSCHSASNPSPQYSWRINGIPQQHTQV
LFIAKITPNNNGTYACFVSNLATGRNNSIVKSITVSASGT
SPGLSAGATVGIMIGVLVGVALI
「抗CEACAM6抗体」および「CEACAM6に結合する抗体」という用語は、抗
体がCEACAM6を標的とする際の診断薬および/または治療薬として有用であるよう
に十分な親和性でCEACAM6に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、
抗CEACAM6抗体の非関連非CEACAM6タンパク質への結合の程度は、例えば、
表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、抗体とCEACAM6の結合の約5
%未満、好ましくは約2%未満である。一定の実施形態では、CEACAM6に結合する
抗体が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01n
Mまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13
M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。一定の実施形態で
は、抗CEACAM6抗体が、異なる種のCEACAM6間で保存されているCEACA
M6のエピトープに結合する。
【0065】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、好ましくは4つのポリペプチド鎖、典型
的にはジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)
鎖で構成される免疫グロブリン分子を指すことを意図している。各重鎖は、重鎖可変領域
(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、例
えば、3つのドメインCH1、CH2およびCH3を含むことができる。各軽鎖は、軽鎖
可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領
域は1つのドメイン(CL)で構成される。VHおよびVL領域は、より保存され、フレ
ームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれ
る超可変領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、典型的には、例えば
以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ
末端からカルボキシ末端に配置された、3つのCDRおよび最大4つのFRで構成される
。
【0066】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」(CDR、例えばCDR1、CDR2
およびCDR3)という用語は、その存在が抗原結合に必要な抗体可変ドメインのアミノ
酸残基を指す。各可変ドメインは、典型的には、CDR1、CDR2およびCDR3とし
て同定される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatによって定義
される「相補性決定領域」(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基約24~34(L1)、
50~56(L2)および89~97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31~35
(H1)、50~65(H2)および95~102(H3))(Kabat et al
.,Sequences of Proteins of Immulological
Interest,5th Ed.Public Health Service,N
ational Institutes of Health,Bethesda,MD
.(1991))のアミノ酸残基および/または「超可変ループ」(例えば、軽鎖可変ド
メイン中の残基約26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)な
らびに重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、53~55(H2)および96~10
1(H3)(Chothia and Lesk;J Mol Biol 196:90
1-917(1987))の残基を含み得る。いくつかの例では、相補性決定領域が、K
abatによって定義されるCDR領域と超可変ループの両方のアミノ酸を含み得る。
【0067】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、完全抗体を異なる「クラス」に割り当て
ることができる。完全抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよ
びIgMが存在し、これらのいくつかを「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG
1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けることができ
る。本発明に使用にするために好ましいクラスの免疫グロブリンはIgGである。
【0068】
種々のクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμ
と呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は
周知である。本明細書で使用される場合、抗体は、従来公知の抗体およびその機能的断片
である。
【0069】
これによって、抗体/免疫グロブリンの「機能的断片」または「抗原結合抗体断片」は
、抗原結合領域を保持する抗体/免疫グロブリンの断片(例えば、IgGの可変領域)と
して定義される。抗体の「抗原結合領域」は、典型的には、抗体の1つまたは複数の超可
変領域、例えばCDR1、CDR2および/またはCDR3領域に見される;しかしなが
ら、可変「フレームワーク」領域も、例えば、CDRのための足場を提供することによっ
て、抗原結合において重要な役割を果たすことができる。好ましくは、「抗原結合領域」
は、可変軽(VL)鎖の少なくともアミノ酸残基4~103および可変重(VH)鎖の5
~109、より好ましくはVLのアミノ酸残基3~107およびVHの4~111を含み
、特に好ましくは、完全VLおよびVH鎖(VLのアミノ酸1~109位およびVHの1
~113位;国際公開第97/08320号パンフレットによる番号付け)である。
【0070】
本発明の「機能的断片」、「抗原結合抗体断片」または「抗体断片」には、それだけに
限らないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2およびFvフラグメン
ト;ダイアボディ(diabody);単一ドメイン抗体(DAb)、線状抗体;単鎖抗
体分子(scFv);ならびに抗体断片から形成された多重特異性、例えば二重および三
重特異性抗体が含まれる(C.A.K Borrebaeck,editor(1995
) Antibody Engineering(Breakthroughs in
Molecular Biology),Oxford University Pre
ss;R.Kontermann&S.Duebel,editors(2001) A
ntibody Engineering(Springer Laboratory
Manual),Springer Verlag)。「多重特異性」または「多機能性
」抗体以外の抗体は、その結合部位の各々が同一であると理解される。F(ab’)2ま
たはFabは、CH1ドメインとCLドメインとの間で生じる分子間ジスルフィド相互作
用を最小限にするまたは完全に除去するよう設計され得る。
【0071】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グ
ロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域
および変異Fc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域が、重鎖のCys
226から、またはPro230から、カルボキシル末端まで伸びる。しかしながら、F
c領域のC末端リジン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。本明細書にお
いて特に指定されない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは
、Kabat et al.,Sequences of Proteins of I
mmunological Interest,5th Ed.Public Heal
th Service,National Institutes of Health
,Bethesda,MD,1991に記載されているEUインデックスとも呼ばれるE
U番号付けシステムによる。
【0072】
本発明において企図される抗体または抗原結合抗体断片の変異体は、抗体または抗原結
合抗体断片の結合活性が維持されている分子である。
【0073】
本発明において企図される「結合タンパク質」は、例えば、アフィボディ(Affib
ody)、アドネクチン(Adnectin)、アンチカリン(Anticalin)、
DARPins、アビマー(Avimer)、ナノボディ(Nanobody)などの抗
体模倣物である(Gebauer M.et al.,Curr.Opinion in
Chem.Biol.2009;13:245-255;Nuttall S.D.e
t al.,Curr.Opinion in Pharmacology 2008;
8:608-617により概説)。
【0074】
「ヒト」抗体またはその抗原結合断片は、これにより、キメラではなく(例えば、「ヒ
ト化」されていない)、(全部または一部)ヒト以外の種からのものでないものとして定
義される。ヒト抗体またはその抗原結合断片は、ヒト由来であり得る、または合成ヒト抗
体であり得る。「合成ヒト抗体」は、公知のヒト抗体配列の分析に基づく合成配列から全
体的にまたは部分的にインシリコで誘導された配列を有する抗体として本明細書で定義さ
れる。ヒト抗体配列またはその断片のインシリコ設計は、例えば、ヒト抗体または抗体断
片配列のデータベースを分析し、そこから得られたデータを利用してポリペプチド配列を
考案することによって達成することができる。ヒト抗体またはその抗原結合断片の別の例
は、ヒト起源の抗体配列のライブラリーから単離された核酸によってコードされるもので
ある(例えば、このようなライブラリーはヒト天然源から採取された抗体に基づく)。ヒ
ト抗体の例としては、Soderlind et al.,Nature Biotec
h.2000,18:853-856に記載される抗体が挙げられる。
【0075】
「ヒト化抗体」またはそのヒト化抗原結合断片は、(i)抗体がヒト生殖系列配列に基
づく、非ヒト供給源(例えば、異種免疫系を有するトランスジェニックマウス)に由来す
る;(ii)非ヒト抗体のフレームワーク領域のアミノ酸が遺伝子工学によってヒトアミ
ノ酸配列に部分的に交換されている、または(iii)可変ドメインのCDRが非ヒト起
源であるが、可変ドメインの1つまたは複数のフレームワークがヒト起源であり、定常ド
メイン(存在する場合)がヒト起源である、CDR移植されているものとして本明細書で
定義される。
【0076】
「キメラ抗体」またはその抗原結合断片は、可変ドメインが非ヒト源に由来し、いくつ
かまたは全ての定常ドメインがヒト源に由来するものとして本明細書で定義される。
【0077】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集
団(すなわち、集団を構成する個々の抗体が、可能な突然変異、例えば少量存在し得る天
然に存在する突然変異を除いて同一である)から得られた抗体を指す。したがって、「モ
ノクローナル」という用語は、抗体の特徴が個別の抗体の混合物ではないことを示す。典
型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製
物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の
決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的
には他の免疫グロブリンによって汚染されないという点で有利である。「モノクローナル
」という用語は、任意の特定の方法による抗体の作成を必要とすると解釈されるべきでは
ない。モノクローナル抗体という用語は、具体的には、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒ
ト抗体を含む。
【0078】
「単離された」抗体は、同定され、それを発現した細胞の成分から分離されたものであ
る。細胞の汚染成分は、抗体の診断または治療的使用を妨害する物質であり、これには酵
素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。
【0079】
「単離された」核酸は、同定され、その自然環境の成分から分離されたものである。単
離された核酸は、通常核酸分子を含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、核酸分子は染色
体外またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0080】
本明細書で使用される場合、抗体は、対象となる抗原、例えば腫瘍関連ポリペプチド抗
原標的「に特異的に結合する」、「に特異的である」、または「を特異的に認識する」も
のであり、抗体が抗原を発現している細胞または組織を標的とする際に治療薬として有用
であり、他のタンパク質と有意には交差反応せず、上記抗原標的のオルソログおよび変異
体(例えば、突然変異型、スプライス変異型もしくはタンパク質分解性切断型)と有意に
は交差反応しないように十分な親和性で抗原に結合するものである。本明細書で使用され
る特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「を特異的に認識す
る」または「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、例えば、抗
体またはその抗原結合断片が約10-4M未満、あるいは約10-5M未満、あるいは約
10-6M未満、あるいは約10-7M未満、あるいは約10-8M未満、あるいは約1
0-9M未満、あるいは約10-10M未満、あるいは約10-11M未満、あるいは約
10-12M未満、またはそれ未満の抗原に対する一価KDを有することによって示され
得る。このような抗体がこのような抗原と1つまたは複数の基準抗原を区別することがで
きる場合、抗体は、抗原「に特異的に結合する」、「に特異的である」または「を特異的
に認識する」。その最も一般的な形態では、「特異的結合」、「に特異的に結合する」、
「に特異的である」または「を特異的に認識する」とは、例えば、以下の方法の1つによ
り決定される、抗体が対象となる抗原と関連しない抗原を区別する能力を指している。こ
のような方法は、それだけに限らないが、表面プラズモン共鳴(SPR)、ウェスタンブ
ロット、ELISA-、RIA-、ECL-、IRMA-試験およびペプチドスキャンを
含む。例えば、標準的ELISAアッセイを行うことができる。点数化は、標準的な発色
(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼによる二次抗体および過酸化水素によるテトラメ
チルベンジジン)によって行うことができる。あるウェルにおける反応は、例えば450
nmでの光学濃度によって点数化する。典型的な背景(=陰性反応)は0.1ODであり
得る;典型的な陽性反応は1ODであり得る;これは、陽性/陰性の差が5倍、10倍、
50倍、好ましくは100倍超であることを意味する。典型的には、結合特異性の決定は
、単一基準抗原ではなく、粉乳、BSA、トランスフェリンなどの約3~5個の関連しな
い抗原のセットを用いて行われる。
【0081】
「結合親和性」または「親和性」は、分子の単一の結合部位とその結合パートナーとの
間の非共有結合相互作用の総和の強さを指す。特に指示されない限り、本明細書で使用さ
れる場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1相互
作用を反映する固有の結合親和性を指す。解離定数「KD」は、分子(抗体など)とその
結合パートナー(抗原など)との間の親和性、すなわちリガンドが特定のタンパク質にど
れくらい強く結合するかを記載するために一般的に使用される。リガンド-タンパク質親
和性は、2つの分子間の非共有結合分子間相互作用によって影響される。親和性は、本明
細書に記載されるものを含む当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することがで
きる。一実施形態では、本発明による「KD」または「KD値」が、それだけに限らない
が、Biacore機器、例えばBiacore T100、Biacore T200
、Biacore 2000、Biacore 4000、Biacore 3000(
GE Healthcare Biacore,Inc.)またはProteOn XP
R36機器(Bio-Rad Laboratories,Inc.)を含む適当な装置
を用いて表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。
【0082】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細
胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決
定基は通常、アミノ酸もしくは糖側鎖またはこれらの組み合わせなどの分子の化学的に活
性な表面群からなり、通常、特異的な三次元構造特性ならびに特異的な電荷特性を有する
。
【0083】
基準抗体と「同じエピトープに結合する抗体」または基準抗体と「結合について競合す
る抗体」は、10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上、競合アッセイで
基準抗体とその抗原の結合を遮断する抗体を指し、逆に、基準抗体は10%、20%、3
0%、40%、50%またはそれ以上、競合アッセイで抗体とその抗原の結合を遮断する
。代表的な競合アッセイを本明細書で提供する。
【0084】
「標的タンパク質Zのエピトープに結合する抗体であって、前記エピトープがアミノ酸
残基X1、X2、X3、...を含む抗体」とは、抗体とその標的タンパク質の結合後に
、標的タンパク質Zの前記アミノ酸残基X1、X2、X3、...の原子まで5Å、好ま
しくは4Å以内の原子を含む抗体である。このようなエピトープは、実施例16で例示さ
れるX線結晶構造を用いることによって決定することができる。
【0085】
「抗体依存性細胞傷害」または「ADCC」は、一定の細胞傷害性細胞(例えばNK細
胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFcγ受容体(FcγR)に結合した分
泌Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を抗原担持標的細胞に特異的に結合させ
、その後、例えば、細胞毒で標的細胞を死滅させる細胞傷害の形態を指す。対象となる抗
体のADCC活性を評価するために、米国特許第5500362号明細書または第582
1337号明細書または米国特許第6737056号明細書(Presta)に記載され
るようなインビトロADCCアッセイを行うことができる。このようなアッセイに有用な
エフェクター細胞にはPBMCおよびNK細胞が含まれる。
【0086】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す
。古典的な補体経路の活性化は、その同族抗原に結合している(適当なサブクラスの)抗
体への補体系(C1q)の第1の成分の結合によって開始される。補体活性化を評価する
ために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol
.Methods 202:163(1996)に記載されるCDCアッセイを行うこと
ができる。変更されたFc領域アミノ酸配列(変異Fc領域を有するポリペプチド)およ
び増加または減少したC1q結合を有するポリペプチド変異体は、例えば、米国特許第6
194551号明細書および国際公開第1999/51642号パンフレットに記載され
ている。
【0087】
本明細書で使用される場合、「ネイキッド抗体」とは、異種部分(例えば、細胞傷害性
部分)または放射標識に結合していない抗体を指す。このネイキッド抗体が医薬組成物中
に存在してもよい。
【0088】
「免疫複合体」(互換的に「抗体-薬物複合体」または「ADC」とも呼ばれる)とい
う用語は、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌
、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはこれらの断片)、または放射性同
位体(すなわち、放射性複合体(radioconjugate))などの1種または複
数の細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤と結合した抗体を指す。免疫複合体は、細胞傷害剤
、すなわち、がんの治療において、細胞を死滅させるまたはその成長もしくは増殖を阻害
する薬物の局所送達に使用されてきた(例えば、Liu et al.,Proc Na
tl.Acad.Sci.(1996),93,8618-8623))。免疫複合体は
、非複合体薬物の全身投与が正常細胞および/または組織に対して許容できないレベルの
毒性をもたらし得る場合に、腫瘍への薬物部分の標的送達およびその中の細胞内蓄積を可
能にする。抗体-毒素複合体に使用される毒素には、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リ
シンなどの植物毒素、ゲルダナマイシンなどの小分子毒素が含まれる。毒素は、チューブ
リン結合、DNA結合またはトポイソメラーゼ阻害を含む機構によって細胞傷害性効果を
発揮し得る。
【0089】
基準ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列それぞれに関する「配列同一性パーセン
ト(%)」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大配列同一性%を達
成した後の、基準ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列それぞれの中の核酸またはア
ミノ酸残基それぞれと同一である候補配列中の核酸またはアミノ酸残基それぞれの割合と
して定義される。保存的置換は配列同一性の一部とはみなされない。ギャップのないアラ
インメントが好ましい。アミノ酸配列同一性%を決定するためのアライメントは、例えば
BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソ
フトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当技術分野の技
能の範囲内の種々の方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわ
たって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を
整列させるための適当なパラメータを決定することができる。
【0090】
「配列相同性」は、同一であるまたは保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す
。
【0091】
成熟Fab変異体などの「成熟抗体」または「成熟抗原結合断片」という用語は、標的
タンパク質の細胞外ドメインなどの所与の抗原とのより強い結合-すなわち、親和性の増
加した結合を示す抗体または抗体断片の誘導体を含む。成熟は、例えば、この親和性増加
をもたらす抗体または抗体断片の6つのCDR内の少数の突然変異を同定するプロセスで
ある。成熟プロセスは、突然変異を抗体に導入するための分子生物学的方法と、改良され
たバインダーを同定するためのスクリーニングの組み合わせである。
【0092】
「アンタゴニスト」抗体または「遮断」抗体は、(部分的にまたは完全に)結合する抗
原の生物学的活性を有意に阻害する抗体である。
【0093】
「アゴニスト」抗体または「アゴニスト活性」を有する抗体は、その標的に結合し、例
えば、それぞれの標的によって媒介されるシグナル伝達経路または生物学的効果の活性化
(部分的にまたは完全に)をもたらすそれぞれの標的の活性化(部分的にまたは完全に)
を誘導する抗体である。本明細書で使用される「アゴニスト」抗体または「アゴニスト活
性」を有する抗体は、対象となるポリペプチドの機能的活性の少なくとも1つを模倣し得
る抗体である。
【0094】
「医薬製剤」/「医薬組成物」という用語は、その中に含有される有効成分の生物学的
活性が有効となるのを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象にとって容認
できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0095】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、連結している別の核酸を増殖させる
ことができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、ならび
にそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。一定のベクターは
、作動可能に連結されている核酸の発現を指示することができる。このようなベクターは
、本明細書で「発現ベクター」と呼ばれる。
【0096】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」という用語は互換的に使用さ
れ、外因性核酸が導入された細胞(このような細胞の子孫を含む)を指す。宿主細胞は、
継代数に関わらず、初代形質転換/トランスフェクト/形質導入細胞およびそれに由来す
る子孫を含む「形質転換体」、「形質転換細胞」、「トランスフェクタント」、「トラン
スフェクト細胞」および「形質導入細胞」を含む。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に
同一でなくてもよく、突然変異を含み得る。最初に形質転換された細胞においてスクリー
ニングまたは選択されたのと同じ機能または生物学的活性を有する突然変異子孫が、本明
細書に含まれる。
【0097】
本発明の抗体
本発明は、ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合し、
それゆえ密接に関連するヒトCEACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACA
M5と有意には交差反応しない抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体に
関する。
【0098】
本発明の抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体は、CEACAM6の
成熟細胞外ドメインおよびカニクイザルCEACAM6の成熟細胞外ドメインに特異的に
結合し、密接に関連するヒトCEACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACA
M5の成熟細胞外ドメインと有意には交差反応しない。成熟細胞外ドメインは、細胞表面
上で発現される全長タンパク質の一部であり、可溶性タンパク質(天然に存在または組換
え発現される)であり得る。
【0099】
本発明の抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体は、ヒトCEACAM
6の成熟細胞外ドメインおよび/またはカニクイザルCEACAM6の成熟細胞外ドメイ
ンに特異的に結合し、密接に関連するヒトCEACAM1、および/またはヒトCEAC
AM3、および/またはヒトCEACAM5の成熟細胞外ドメインのみを含むタンパク質
と有意には交差反応しない。
【0100】
ヒトおよびカニクイザルCEACAM6に特異的な(抗体がヒトおよびカニクイザルC
EACAM6に対して交差反応性であることを意味する)抗体、またはその抗原結合抗体
断片、またはその変異体を提供することが本発明の実施形態である。
【0101】
CEACAM6に選択的な(密接に関連するCEACAM1、CEACAM3およびC
EACAM5と有意には交差反応しないことを意味する)抗体、またはその抗原結合抗体
断片、またはその変異体を提供することが本発明の実施形態である。
【0102】
ヒトCEACAM6に結合し、それだけに限らないが、類似の親和性を有するサルを含
む別の種のCEACAM6に対して交差反応性である抗体、またはその抗原結合抗体断片
、またはその変異体を提供することが本発明の別の実施形態である。好ましくは、前記他
の種はヒト以外の霊長類、例えばカニクイザル(Macaca fasciculari
s)、アカゲザル(Macaca mulatta)、オランウータン、ゴリラおよびチ
ンパンジーである。最も好ましくは、抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変
異体は、ヒトCEACAM6に結合し、カニクイザルCEACAM6に対して交差反応性
である。
【0103】
抗原1(Ag1)に結合するモノクローナル抗体は、EC50および/またはKD値が
両抗原について類似の範囲にある場合、抗原2(Ag2)に対して「交差反応性」である
。本開示において、Ag1に対する親和性とAg2に対する親和性の比が10以下(≦1
0)であり、かつ0.1以上(0.1≧)である場合(これは、親和性が両抗原について
同じ実験設定で同じ方法で測定されるという条件で、Ag1に対する親和性とAg2に対
する親和性が10倍超異なることはない(両親和性が一桁以内の一価KDである)ことを
意味する)、Ag1に結合するモノクローナル抗体はAg2に対して交差反応性である。
【0104】
したがって、本発明による抗体は、10以下(≦10)かつ0.1以上(≧0.1)の
ヒトCEACAM6に対する親和性とカニクイザルCEACAM6に対する親和性の比を
有する(これは、ヒトCEACAM6についての親和性とカニクイザルCEACAM6に
ついての親和性が10倍超異なることはない(両親和性が一桁以内の一価KDである)こ
とを意味する)。したがって、本発明の抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその
変異体は、サルで観察される毒性プロファイルがヒトにおける潜在的有害効果を予測する
のに適切であるため、サルで行われる毒物学試験に使用され得る。
【0105】
親和性が2つの抗原に対して非常に異なる場合、抗原1(Ag1)に結合するモノクロ
ーナル抗体は抗原3(Ag3)に対して「有意には交差反応性でない」。結合反応(アッ
セイにおける測定された結合シグナル)が低すぎる場合、Ag3に対する親和性は測定で
きないことがある。本出願では、Ag3に対するモノクローナル抗体の結合反応(アッセ
イで測定された結合シグナル)が、同じ実験設定および同じ抗体濃度におけるAg1に対
する同じモノクローナル抗体の結合反応の5%未満、好ましくは2%未満である場合、A
g1に結合するモノクローナル抗体はAg3に対して「有意には交差反応性でない」。実
際、使用される抗体濃度は、EC50またはKDまたはAg1で得られる飽和プラトーに
達するのに必要な濃度とすることができる。
【0106】
本発明によると、抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体は、ヒトCE
ACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5と有意には交差反応しない。
【0107】
本発明の好ましい実施形態は、表13、表18および表20に示されるように、組換え
CEACAM6(実施例2参照)に対する一価親和性として測定される、≦400nM、
好ましくは≦200nM、あるいは好ましくは≦100nMのヒトCEACAM6および
カニクイザルCEACAM6に対する親和性を有する。
【0108】
本発明によると、抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体は、ヒトCE
ACAM6ドメイン1(配列番号179のアミノ酸35~142によって表される)およ
びカニクイザルCEACAM6ドメイン1(アミノ配列番号177のアミノ酸35~14
2によって表される)に結合する(親和性は1桁以内の一価KDである)。CEACAM
6ドメイン1はNドメインとしても知られている。
【0109】
一桁以内の親和性(一価KD)で、ヒトCEACAM6ドメイン1(配列番号179の
アミノ酸35~142によって表される)に特異的に、およびカニクイザルCEACAM
6ドメイン1(アミノ配列番号177のアミノ酸35~142によって表される)に特異
的に結合する抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体を提供することが本
発明の実施形態である。ヒトCEACAM6ドメイン1とカニクイザル(Macaca
fascicularis)CEACAM6ドメイン1の両方に対してKD≦100nM
の親和性を有する抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体が非常に好まし
い。
【0110】
本発明の抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体は、ヒトCEACAM
6ドメイン1(配列番号179のアミノ酸35~142によって表される)および/また
はカニクイザルCEACAM6ドメイン1(アミノ配列番号177のアミノ酸35~14
2によって表される)を含むタンパク質に特異的に結合する。
【0111】
本発明の抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体は、ヒトCEACAM
6ドメイン1(配列番号179のアミノ酸35~142によって表される)および/また
はカニクイザルCEACAM6ドメイン1(アミノ配列番号177のアミノ酸35~14
2によって表される)を含むタンパク質に特異的に結合し、密接に関連するヒトCEAC
AM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5と有意には交差反応しない。
【0112】
本発明の抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体は、ヒトCEACAM
6ドメイン1(配列番号179のアミノ酸35~142によって表される)および/また
はカニクイザルCEACAM6ドメイン1(アミノ配列番号177のアミノ酸35~14
2によって表される)を含むタンパク質に特異的に結合し、密接に関連するヒトCEAC
AM1、および/またはヒトCEACAM3、および/またはヒトCEACAM5の成熟
細胞外ドメインのみを含むタンパク質と有意には交差反応しない。
【0113】
CEACAM6の成熟細胞外ドメインおよびカニクイザルCEACAM6の成熟細胞外
ドメインに特異的に結合し、ヒトCEACAM6上で9A6抗体(Genovac/Al
devron)と結合について競合し、密接に関連するヒトCEACAM1、ヒトCEA
CAM3、およびヒトCEACAM5の成熟細胞外ドメインと有意には交差反応しない抗
体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体を提供することが本発明の実施形態
である。
【0114】
ヒトCEACAM6ドメイン1(配列番号179のアミノ酸35~142によって表さ
れる)およびカニクイザルCEACAM6ドメイン1(アミノ配列番号177のアミノ酸
35~142によって表される)に特異的に結合し、ヒトCEACAM6上で9A6抗体
(Genovac/Aldevron)と結合について競合する抗体、またはその抗原結
合抗体断片、またはその変異体を提供することが本発明の実施形態である。
【0115】
ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合し、CEACA
M6とCEACAM1の相互作用を妨害する抗体、またはその抗原結合抗体断片、または
その変異体を提供することが本発明の実施形態である。予め形成された抗体-CEACA
M6-複合体の結合シグナルが、実施例で提供されるCEACAM1を用いた典型的な結
合アッセイにおいて、CEACAM6タンパク質単独の結合シグナルと比べて20%超、
好ましくは50%超減少する場合、抗体はCEACAM6とCEACAM1の相互作用を
妨害する。CEACAM6とCEACAM1の相互作用の妨害は、自然免疫応答および適
応免疫応答の調節のためのメカニズムであり得る。
【0116】
ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合し、免疫調節活
性を有する抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体を提供することが本発
明の実施形態である。「免疫調節」は、免疫強化、免疫抑制または免疫寛容の誘導におけ
るような所望のレベルへの免疫応答の調整である。「免疫調節抗体」薬物は、疾患、例え
ばがんの治療または抗炎症のために免疫応答を刺激または抑制する免疫応答修飾剤である
。本発明は、免疫マーカー発現プロファイルの変化ならびに抗腫瘍T細胞再活性化および
有効な抗がん免疫応答に向けられたT細胞の活性化状態をもたらす免疫系の成分を含む、
がん細胞および潜在的に他の細胞上の免疫細胞抑制リガンドであるCEACAM6を遮断
する、実施例11に示される、抗CEACAM6免疫調節抗体を提供する。CEACAM
6ドメイン1に結合する抗体が好ましい。
【0117】
ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合し、腫瘍抗原特
異的T細胞のIFN-γ分泌またはIFN-γ分泌活性化T細胞の数のいずれかによって
測定される腫瘍抗原特異的T細胞のCEACAM6媒介性免疫抑制を緩和することができ
る抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体を提供することが本発明の実施
形態である。抗CEACAM6抗体は、腫瘍特異的T細胞と腫瘍細胞の共培養における抗
体が対照試料と比較してIFN-γ分泌の1.2倍超、好ましくは1.5倍超の増加を生
じる場合に、腫瘍抗原特異的T細胞のCEACAM6媒介性免疫抑制を緩和することがで
きる。好ましくは、腫瘍抗原特異的T細胞がCD8
+T細胞である。密接に関連するCE
ACAM1、CEACAM3およびCEACAM5と有意には交差反応せず、CEACA
M6ドメイン1に結合する抗体が好ましい。これは、アイソタイプ適合対照で処理した対
照試料と比較してIFN-γ分泌の1.5倍超の増加をもたらす、サバイビン-ペプチド
特異的CD8
+T細胞とKS腫瘍細胞の共培養における本発明の抗体によるCEACAM
6の遮断によって例示的に示される(
図5および
図6)。
【0118】
ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合し、増加したI
FN-γおよび/またはIL-2および/またはTNF-α分泌を特徴とするさらなる細
胞傷害性および/または活性化表現型に向けて腫瘍抗原特異的T細胞のサイトカインプロ
ファイル変化させることができる抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体
を提供することが本発明の実施形態である。好ましくは、腫瘍抗原特異的T細胞はCD8
+T細胞であり、表現型は増加したIFN-γおよびIL-2およびTNF-α分泌であ
る。腫瘍特異的CD8
+T細胞と腫瘍細胞の共培養における抗体が、アイソタイプ適合対
照で処理した対照試料と比較して、IFN-γおよび/またはIL-2および/またはT
NF-α分泌の1.2倍超、好ましくは1.5倍超の増加をもたらす場合、抗CEACA
M6抗体はさらなる細胞傷害性および/または活性化表現型に向けて腫瘍抗原特異的T細
胞のサイトカインプロファイルを変化させることができる。サバイビン-ペプチド特異的
T細胞とKS腫瘍細胞の共培養における本発明の抗体によるCEACAM6の遮断によっ
て、アイソタイプ適合対照で処理した対照試料と比較してIFN-γ、IL-2およびT
NF-α分泌の1.5倍超の増加がもたらされる(
図6)。
【0119】
それだけに限らないが、実施例に示されるものを含む広範囲の異なるCEACAM6発
現細胞株に結合する抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体を提供するこ
とが本発明の実施形態である。これらの例としては、多くの腫瘍起源(例えば、CEAC
AM6陽性であると文献に以前記載されたがん徴候を表すNSCLC、SCLC、CRC
、PancCA、BreastCA、GastricCA、多発性骨髄腫、子宮頸がん、
皮膚がん)ヒト細胞株が挙げられる(導入または概説Beauchimen and A
rabzadeh,Cancer Metastasis Rev.2013 Dec;
32(3-4):643-71を参照)。
【0120】
ヒト投与に安全な抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体を提供するこ
とが本発明の実施形態である。好ましくは、抗体はキメラ、ヒト化またはヒトである。ヒ
ト化抗体またはヒト抗体が非常に好ましい。
【0121】
それにもかかわらず、一定のアッセイでは、マウスIgGとしての本発明の抗体の発現
が好ましい;例えば、ヒト試料を用いた免疫組織化学は、マウス抗体またはヒト-マウス
キメラ抗体を用いることにより、より容易に分析することができる。
【0122】
CEACAM6発現が正常組織と比較して上昇しているまたはCEACAM6が細胞表
面から脱落して血清中で検出可能になっている悪性または異形成状態を診断するためのツ
ールを構成する抗体を提供することが本発明の別の実施形態である。検出可能なマーカー
に結合した抗CEACAM6抗体が提供される。好ましいマーカーは、放射標識、酵素、
発色団または発蛍光団である。
【0123】
本文書を通して、表1に示される本発明の以下の好ましい抗CEACAM6抗体に言及
する。
【表2】
【0124】
表1に示される本発明の好ましい抗体またはその抗原結合断片の配列を、
図8でさらに
提供し、説明する。
【0125】
TPP-3308は、配列番号43に相当する重鎖領域および配列番号44に相当する
軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0126】
TPP-3310は、配列番号57に相当する重鎖領域および配列番号58に相当する
軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0127】
TPP-3714は、配列番号129に相当する重鎖領域および配列番号130に相当
する軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0128】
TPP-3323は、配列番号85に相当する重鎖領域および配列番号86に相当する
軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0129】
TPP-3820は、配列番号143に相当する重鎖領域および配列番号144に相当
する軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0130】
TPP-3821は、配列番号157に相当する重鎖領域および配列番号158に相当
する軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0131】
TPP-3322は、配列番号71に相当する重鎖領域および配列番号72に相当する
軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0132】
TPP-3707は、配列番号115に相当する重鎖領域および配列番号116に相当
する軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0133】
TPP-3705は、配列番号101に相当する重鎖領域および配列番号102に相当
する軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0134】
さらに好ましい実施形態では、抗体または抗原結合断片が、抗体「TPP-2971」
、「TPP-3186」、「TPP-3187」、「TPP-3308」、「TPP-3
310」、「TPP-3322」、「TPP-3323」、「TPP-3705」、「T
PP-3707」、「TPP-3714」、「TPP-3820」、「TPP-3821
」の少なくとも1つの好ましくは対応するCDR配列と少なくとも50%、55%、60
%、70%、80%、90%もしくは95%同一である、または「TPP-2971」、
「TPP-3186」、「TPP-3187」、「TPP-3308」、「TPP-33
10」、「TPP-3322」、「TPP-3323」、「TPP-3705」、「TP
P-3707」、「TPP-3714」、「TPP-3820」、「TPP-3821」
それぞれのVHもしくはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%
、92%もしくは95%同一である重鎖または軽鎖CDR配列を含む。
【0135】
さらに好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、表1に示され
る少なくとも1つのCDR配列または少なくとも1つの可変重鎖もしくは可変軽鎖配列を
含む。
【0136】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号4(H-C
DR1)、配列番号5(H-CDR2)および配列番号6(H-CDR3)を含む重鎖抗
原結合領域を含み、配列番号8(L-CDR1)、配列番号9(L-CDR2)および配
列番号10(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0137】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号34(H-
CDR1)、配列番号35(H-CDR2)および配列番号36(H-CDR3)を含む
重鎖抗原結合領域を含み、配列番号38(L-CDR1)、配列番号39(L-CDR2
)および配列番号40(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0138】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号48(H-
CDR1)、配列番号49(H-CDR2)および配列番号50(H-CDR3)を含む
重鎖抗原結合領域を含み、配列番号52(L-CDR1)、配列番号53(L-CDR2
)および配列番号54(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0139】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号120(H
-CDR1)、配列番号121(H-CDR2)および配列番号122(H-CDR3)
を含む重鎖抗原結合領域を含み、配列番号124(L-CDR1)、配列番号125(L
-CDR2)および配列番号126(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0140】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号24(H-
CDR1)、配列番号25(H-CDR2)および配列番号26(H-CDR3)を含む
重鎖抗原結合領域を含み、配列番号28(L-CDR1)、配列番号29(L-CDR2
)および配列番号30(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0141】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号76(H-
CDR1)、配列番号77(H-CDR2)および配列番号78(H-CDR3)を含む
重鎖抗原結合領域を含み、配列番号80(L-CDR1)、配列番号81(L-CDR2
)および配列番号82(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0142】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号134(H
-CDR1)、配列番号135(H-CDR2)および配列番号136(H-CDR3)
を含む重鎖抗原結合領域を含み、配列番号138(L-CDR1)、配列番号139(L
-CDR2)および配列番号140(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0143】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号148(H
-CDR1)、配列番号149(H-CDR2)および配列番号150(H-CDR3)
を含む重鎖抗原結合領域を含み、配列番号152(L-CDR1)、配列番号153(L
-CDR2)および配列番号154(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0144】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号62(H-
CDR1)、配列番号63(H-CDR2)および配列番号64(H-CDR3)を含む
重鎖抗原結合領域を含み、配列番号66(L-CDR1)、配列番号67(L-CDR2
)および配列番号68(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0145】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号14(H-
CDR1)、配列番号15(H-CDR2)および配列番号16(H-CDR3)を含む
重鎖抗原結合領域を含み、配列番号18(L-CDR1)、配列番号19(L-CDR2
)および配列番号20(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0146】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号106(H
-CDR1)、配列番号107(H-CDR2)および配列番号108(H-CDR3)
を含む重鎖抗原結合領域を含み、配列番号110(L-CDR1)、配列番号111(L
-CDR2)および配列番号112(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0147】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号92(H-
CDR1)、配列番号93(H-CDR2)および配列番号94(H-CDR3)を含む
重鎖抗原結合領域を含み、配列番号96(L-CDR1)、配列番号97(L-CDR2
)および配列番号98(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0148】
抗体は、相補性決定領域(CDR)内だけでなく、フレームワーク(FR)においても
配列が異なる。これらの配列の相違は、異なるV遺伝子にコードされている。ヒト抗体生
殖系列レパートリーは完全に配列決定されている。配列相同性により6つのサブファミリ
ーVH1、VH2、VH3、VH4、VH5およびVH6に分類することができる約50
個の機能的VH生殖系列遺伝子が存在する(Tomlinson et al.,199
2,J.Mol.Biol.227,776-798;Matsuda&Honjo,1
996,Advan.Immunol.62,1-29)。7つのサブファミリーを含む
約40個の機能的VLκ遺伝子が知られている(Cox et al.,1994,Eu
r.J.Immunol.24,827-836;Barbie&Lefranc,19
98,Exp.Clin.Immunogenet.15,171-183):Vκ1、
Vκ2,Vκ3、Vκ4、Vκ5、Vκ6およびVκ7。ヒトVH2サブファミリーに属
する本発明の抗体の重鎖およびヒトVκ1サブファミリーに属する本発明の抗体の軽鎖が
それぞれ本明細書で開示される。同じサブファミリーに属する抗体のフレームワーク配列
は密接に関連していることが知られており、例えば、ヒトVH3サブファミリーメンバー
を含む抗体は全て同程度の安定性を共有する(Honegger et al.,200
9,Protein Eng Des Sel.22(3):121-134)。対応す
る起源抗体の特別な特徴を維持しながら、抗体由来のCDRを異なるフレームワークに移
植することができることが、当技術分野で周知である。CDRは、異なる種に属するフレ
ームワークならびに異なるサブファミリーに属する同じ種のフレームワークにうまく移植
されてきた。さらなる実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片が、表1に示され
る本発明の抗体の少なくとも1つのCDR配列およびヒト可変鎖フレームワーク配列を含
む。
【0149】
好ましい実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片が、表1に示される本発明の
可変軽鎖のL-CDR1、L-CDR2およびL-CDR3配列を含む可変軽鎖または軽
鎖抗原結合領域と、可変重鎖抗体のH-CDR1、H-CDR2およびH-CDR3配列
を含む可変重鎖または重鎖抗原結合領域と、ヒト可変軽鎖およびヒト可変重鎖フレームワ
ーク配列とを含む。
【0150】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号3に
よって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号7によって示される可変軽鎖配列(
VL)を含む。
【0151】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号33
によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号37によって示される可変軽鎖配
列(VL)を含む。
【0152】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号47
によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号51によって示される可変軽鎖配
列(VL)を含む。
【0153】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号11
9によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号123によって示される可変軽
鎖配列(VL)を含む。
【0154】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号23
によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号27によって示される可変軽鎖配
列(VL)を含む。
【0155】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号75
によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号79によって示される可変軽鎖配
列(VL)を含む。
【0156】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号13
3によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号137によって示される可変軽
鎖配列(VL)を含む。
【0157】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号14
7によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号151によって示される可変軽
鎖配列(VL)を含む。
【0158】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号13
によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号17によって示される可変軽鎖配
列(VL)を含む。
【0159】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号61
によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号65によって示される可変軽鎖配
列(VL)を含む。
【0160】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号10
5によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号109によって示される可変軽
鎖配列(VL)を含む。
【0161】
非常に好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、配列番号91
によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号95によって示される可変軽鎖配
列(VL)を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断
片、またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープに結合し、前記エピトープが配
列番号179のGln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile
84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129からな
る群から選択される1個または複数のアミノ酸残基を含む。
【0163】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断片、
またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープに結合し、前記エピトープが配列番
号179のGln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile84
、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129のアミノ酸
残基を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断
片、またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープと相互作用する、例えばこれに
結合し、前記エピトープが配列番号179のPro59、Gln60、Asn61、Ar
g62、Ile63、Gly64、Val83、Ile84、Gly85、Thr86、
Gln88、Thr90、Pro91、Ile125、Ser127、Asp128およ
びLeu129からなる群から選択される1個、2個、3個、4個、5個、8個、10個
、15個またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0165】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断片、
またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープと相互作用する、例えばこれに結合
し、前記エピトープが配列番号179のPro59、Gln60、Asn61、Arg6
2、Ile63、Gly64、Val83、Ile84、Gly85、Thr86、Gl
n88、Thr90、Pro91、Ile125、Ser127、Asp128およびL
eu129のアミノ酸残基を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断
片、またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープに結合し、前記エピトープが配
列番号179のGln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile
84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129からな
る群から選択される1個または複数のアミノ酸残基を含み、前記抗体、または抗原結合抗
体断片、またはその変異体がIle63Leu突然変異を含むヒトCEACAM6タンパ
ク質に結合し、Ile63Phe突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合し
ない(配列番号179による番号付け)。
【0167】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断片、
またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープに結合し、前記エピトープが配列番
号179のGln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile84
、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129のアミノ酸
残基を含み、前記抗体、または抗原結合抗体断片、またはその変異体がIle63Leu
突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合し、Ile63Phe突然変異を含
むヒトCEACAM6タンパク質に結合しない(配列番号179による番号付け)。
【0168】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断
片、またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープと相互作用する、例えばこれに
結合し、前記エピトープが配列番号179のPro59、Gln60、Asn61、Ar
g62、Ile63、Gly64、Val83、Ile84、Gly85、Thr86、
Gln88、Thr90、Pro91、Ile125、Ser127、Asp128およ
びLeu129からなる群から選択される1個、2個、3個、4個、5個、8個、10個
、15個またはそれ以上のアミノ酸残基を含み、前記抗体、または抗原結合抗体断片、ま
たはその変異体がIle63Leu突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合
し、Ile63Phe突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合しない(配列
番号179による番号付け)。
【0169】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断片、
またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープと相互作用する、例えばこれに結合
し、前記エピトープが配列番号179のPro59、Gln60、Asn61、Arg6
2、Ile63、Gly64、Val83、Ile84、Gly85、Thr86、Gl
n88、Thr90、Pro91、Ile125、Ser127、Asp128およびL
eu129のアミノ酸残基を含み、前記抗体、または抗原結合抗体断片、またはその変異
体がIle63Leu突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合し、Ile6
3Phe突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合しない(配列番号179に
よる番号付け)。
【0170】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断
片、またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープに結合し、前記エピトープが配
列番号179のGln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile
84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129からな
る群から選択される1個または複数のアミノ酸残基を含み、前記抗体、または抗原結合抗
体断片、またはその変異体が配列番号47によって示される可変重鎖配列(VH)および
配列番号51によって示される可変軽鎖配列(VL)を含む抗体とCECEAM6との結
合について競合する。
【0171】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピトー
プに結合し、前記エピトープが配列番号179のGln60、Asn61、Arg62、
Ile63、Val83、Ile84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp
128およびLeu129のアミノ酸残基を含み、前記抗体、または抗原結合抗体断片、
またはその変異体が配列番号47によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号
51によって示される可変軽鎖配列(VL)を含む抗体とCECEAM6との結合につい
て競合する。
【0172】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピ
トープと相互作用する、例えばこれに結合し、前記エピトープが配列番号179のPro
59、Gln60、Asn61、Arg62、Ile63、Gly64、Val83、I
le84、Gly85、Thr86、Gln88、Thr90、Pro91、Ile12
5、Ser127、Asp128およびLeu129からなる群から選択される1個、2
個、3個、4個、5個、8個、10個、15個またはそれ以上のアミノ酸残基を含み、前
記抗体、または抗原結合抗体断片、またはその変異体が配列番号47によって示される可
変重鎖配列(VH)および配列番号51によって示される可変軽鎖配列(VL)を含む抗
体とCECEAM6との結合について競合する。
【0173】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピトー
プと相互作用する、例えばこれに結合し、前記エピトープが配列番号179のPro59
、Gln60、Asn61、Arg62、Ile63、Gly64、Val83、Ile
84、Gly85、Thr86、Gln88、Thr90、Pro91、Ile125、
Ser127、Asp128およびLeu129のアミノ酸残基を含み、前記抗体、また
は抗原結合抗体断片、またはその変異体が配列番号47によって示される可変重鎖配列(
VH)および配列番号51によって示される可変軽鎖配列(VL)を含む抗体とCECE
AM6との結合について競合する。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体、またはその抗原結合抗体断
片、またはその変異体がヒトCEACAM6のエピトープに結合し、前記エピトープが配
列番号179のGln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile
84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129からな
る群から選択される1個または複数のアミノ酸残基を含み、前記抗体、または抗原結合抗
体断片、またはその変異体が配列番号47によって示される可変重鎖配列(VH)および
配列番号51によって示される可変軽鎖配列(VL)を含む抗体とCECEAM6との結
合について競合し、前記抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体がIle
63Leu突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合し、Ile63Phe突
然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合しない(配列番号179による番号付
け)。
【0175】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピトー
プに結合し、前記エピトープが配列番号179のGln60、Asn61、Arg62、
Ile63、Val83、Ile84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp
128およびLeu129のアミノ酸残基を含み、前記抗体、または抗原結合抗体断片、
またはその変異体が配列番号47によって示される可変重鎖配列(VH)および配列番号
51によって示される可変軽鎖配列(VL)を含む抗体とCECEAM6との結合につい
て競合し、前記抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変異体がIle63Le
u突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合し、Ile63Phe突然変異を
含むヒトCEACAM6タンパク質に結合しない(配列番号179による番号付け)。
【0176】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピ
トープと相互作用する、例えばこれに結合し、前記エピトープが配列番号179のPro
59、Gln60、Asn61、Arg62、Ile63、Gly64、Val83、I
le84、Gly85、Thr86、Gln88、Thr90、Pro91、Ile12
5、Ser127、Asp128およびLeu129からなる群から選択される1個、2
個、3個、4個、5個、8個、10個、15個またはそれ以上のアミノ酸残基を含み、前
記抗体、または抗原結合抗体断片、またはその変異体が配列番号47によって示される可
変重鎖配列(VH)および配列番号51によって示される可変軽鎖配列(VL)を含む抗
体とCECEAM6との結合について競合し、前記抗体、またはその抗原結合抗体断片、
またはその変異体がIle63Leu突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結
合し、Ile63Phe突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合しない(配
列番号179による番号付け)。
【0177】
一定の実施形態では、本発明の抗CEACAM6抗体がヒトCEACAM6のエピトー
プと相互作用する、例えばこれに結合し、前記エピトープが配列番号179のPro59
、Gln60、Asn61、Arg62、Ile63、Gly64、Val83、Ile
84、Gly85、Thr86、Gln88、Thr90、Pro91、Ile125、
Ser127、Asp128およびLeu129のアミノ酸残基を含み、前記抗体、また
は抗原結合抗体断片、またはその変異体が配列番号47によって示される可変重鎖配列(
VH)および配列番号51によって示される可変軽鎖配列(VL)を含む抗体とCECE
AM6との結合について競合し、前記抗体、またはその抗原結合抗体断片、またはその変
異体がIle63Leu突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合し、Ile
63Phe突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合しない(配列番号179
による番号付け)。
【0178】
本発明の抗体はIgG(免疫グロブリンG、例えばIgG1、IgG2、IgG3、I
gG4)またはIgA、IgD、IgE、IgMであり得、抗体断片は例えばFab、F
ab’、F(ab’)2、Fab’-SHまたはscFvであり得る。したがって、本発
明の抗体断片は、本明細書に記載される1つまたは複数の方法で挙動する抗原結合領域で
あってもよいし、これを含んでもよい。
【0179】
好ましい実施形態では、本発明の抗体または抗原結合抗体断片がモノクローナルである
。
【0180】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片、またはこれらをコー
ドする核酸が単離される。単離された生物学的成分(核酸分子または抗体などのタンパク
質など)は、成分が天然に存在する生物の細胞内の他の生物学的成分、例えば他の染色体
および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質およびオルガネラから実質的に分離また
は精製されたものである。この用語はまた、宿主細胞ならびに化学的に合成された核酸に
おける組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質も包含する。
【0181】
抗体作成
本発明の抗体は、例えば、完全ヒトCDR新たな抗体分子に組み込むn-CoDeR(
登録商標)技術を用いて、多数の健康なボランティアの抗体から単離されたアミノ酸配列
に基づく組換え抗体ライブラリーから得ることができる(Carlson&Soderl
ind,Expert Rev Mol Diagn.2001 May;1(1):1
02-8)。あるいは、例えばHoet RM et al.,Nat Biotech
nol 2005;23(3):344-8に記載される完全ヒト抗体ファージディスプ
レイライブラリーとしての抗体ライブラリーを用いて、CEACAM6特異的抗体を単離
することができる。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体断片は、本明細
書中のヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0182】
ヒト抗体は、抗原投与に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を含む完全抗体を産
生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによってさらに
調製することができる。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座
に取って代わるまたは染色体外に存在もしくは動物の染色体に無作為に組み込まれたヒト
免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含む。例えば、遺伝子操作されたマウスの免
疫化、特にhMAbマウス(例えば、VelocImmuneマウス(登録商標)または
XENOMOUSE(登録商標))の免疫化を行うことができる。
【0183】
さらなる抗体は、ハイブリドーマ技術(例えば、Kohler and Milste
in Nature.1975 Aug 7;256(5517):495-7参照)を
用いて作成することができ、例えば、マウス、ラットまたはウサギ抗体をもたらし、これ
をキメラまたはヒト化抗体に変換することができる。ヒト化抗体およびそれらを作成する
方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosc
i.13:1619-1633(2008)に概説されており、例えば、Riechma
nn et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen
et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:10029-
10033(1989);米国特許第5821337号明細書、第7527791号明細
書、第6982321号明細書および第7087409号明細書;Kashmiri e
t al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR
)移植を記載している);Padlan,Mol.Immunol.28:489-49
8(1991)(「表面再生」を記載している);Dall’ Acqua et al
.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャフリング」を記載して
いる);ならびにOsboum et al.,Methods 36:61-68(2
005)およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-
260(2000)(FRシャフリングに対する「誘導選択」アプローチを記載している
)にさらに記載されている。
【0184】
組換え抗体ライブラリーを用いた抗体の作成およびその後のヒト化と組み合わせたマウ
スの免疫化の例が提供される。
【0185】
ヒトCEACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5と有意には交差反
応しない、ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合する抗
体を作成する方法を提供することが、本発明のさらなる態様である。カニクイザルCEC
AM6ドメイン1(配列番号177のアミノ酸35~142によって表される)で、動物
、好ましくはマウスを免疫化するステップと、ヒトCEACAM6およびカニクイザルC
EACAM6に特異的に結合する抗体のアミノ酸配列を決定するステップと、場合により
引き続いてキメラ抗体をヒト化または作成するステップと、前記抗体を発現するステップ
とを含むことを特徴とする抗CEACAM6抗体を作成する方法を提供することが本発明
の実施形態である。発現系は組換え発現系または無細胞発現系であり得る。組換え発現に
適した宿主細胞は原核細胞および真核細胞である。哺乳動物発現系が好ましい。
【0186】
ペプチド変異体
本発明の抗体または抗原結合断片は、本明細書で提供される特定のペプチド配列に限定
されない。むしろ、本発明はこれらのポリペプチドの変異体も具体化する。本開示ならび
に従来利用可能な技術および参考文献を参照して、当業者は、CEACAM6に結合する
能力を有するこれらの変異体が本発明の範囲内に入ることを認識しながら、本明細書に開
示される抗体の機能的変異体を調製、試験および利用することができるだろう。
【0187】
変異体は、例えば、本明細書に開示されるペプチド配列に対して少なくとも1つの変化
した相補性決定領域(CDR)(超可変)および/またはフレームワーク(FR)(可変
)ドメイン/位置を有する抗体を含むことができる。
【0188】
CDRまたはFR領域の1個または複数のアミノ酸残基を変化させることにより、当業
者は、突然変異したまたは多様化した抗体配列を作成し、これを、例えば、新規なまたは
改善された特性について、抗原に対してスクリーニングすることができる。
【0189】
本発明のさらに好ましい実施形態は、VHおよびVL配列が表1に示されるように選択
される抗体または抗原結合断片である。当業者は、表1のデータを使用して、本発明の範
囲内にあるペプチド変異体を設計することができる。変異体が1つまたは複数のCDR領
域内のアミノ酸を変化させることによって構築されることが好ましく;変異体はまた1つ
または複数の変化したフレームワーク領域を有し得る。フレームワーク領域を変化させて
もよい。例えば、生殖系列配列と比較して残基に逸脱がある場合にペプチドFRドメイン
を変化させてもよいだろう。
【0190】
あるいは、当業者は、例えば、Knappik A.,et al.,JMB 200
0,296:57-86に記載されている手順を用いて、本明細書に開示されるアミノ酸
配列をこのような抗体の同じクラスの公知の配列と比較することによって同じ分析をする
ことができるだろう。
【0191】
さらに、抗体中の1個または複数のアミノ酸残基、好ましくは1つまたは複数のCDR
中のアミノ酸残基を多様化し、得られた抗体変異体のコレクションを改善した特性を有す
る変異体についてスクリーニングすることによって、さらなる最適化のための出発点とし
て1つの抗体を用いることによって変異体を得ることができる。VLおよび/またはVH
のCDR3中の1個または複数のアミノ酸残基の多様化が特に好ましい。例えば、トリヌ
クレオチド突然変異誘発(TRIM)技術を用いてDNA分子のコレクションを合成する
ことによって、多様化を行うことができる(Virnekas B.et al.,Nu
cl.Acids Res.1994,22:5600.)。抗体またはその抗原結合断
片は、それだけに限らないが、例えば、変化した半減期(例えば、Fc部分の修飾もしく
はPEGなどのさらなる分子の付着)、変化した結合親和性、または変化したADCCも
しくはCDC活性をもたらす修飾を含む修飾/バリエーションを有する分子を含む。
【0192】
保存的アミノ酸変異体
本明細書に記載される抗体ペプチド配列の分子構造全体を保存するポリペプチド変異体
を作成することができる。個々のアミノ酸の特性を考えると、いくつかの合理的な置換が
当業者によって認識されるであろう。アミノ酸置換、すなわち「保存的置換」は、例えば
、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質に
おける類似性に基づいて行うことができる。
【0193】
例えば、(a)非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、
バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれ;(b
)極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アス
パラギンおよびグルタミンが含まれ;(c)正に帯電した(塩基性)アミノ酸には、アル
ギニン、リジンおよびヒスチジンが含まれ;(d)負に荷電した(酸性)アミノ酸には、
アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。置換は、典型的には、群(a)~(d)
内で行うことができる。さらに、グリシンおよびプロリンは、α-ヘリックスを破壊する
その能力に基づいて互いに置換されていてもよい。同様に、アラニン、システイン、ロイ
シン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンおよびリジンなどの一定のア
ミノ酸はαヘリックスでより一般的に見られる一方、バリン、イソロイシン、フェニルア
ラニン、チロシン、トリプトファンおよびトレオニンはβひだ折れシートでより一般的に
見られる。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギンおよびプロリンは、一般的
に順番に見られる。いくつかの好ましい置換は、以下の基:(i)SとT;(ii)Pと
G;および(iii)A、V、LとIの間で行われ得る。既知の遺伝暗号ならびに組換え
および合成DNA技術があれば、熟練した科学者は保存的アミノ酸変異体をコードするD
NAを容易に構築することができる。
【0194】
グリコシル化変異体
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物を変化させてもよい。哺乳動物細
胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのKabat
EU番号付けを用いたAsn297へのN結合によって一般に結合される分岐鎖の二分
岐オリゴ糖を含む;例えば、Wright et al.Trends Biotech
nol.15:26-32(1997)を参照されたい。
【0195】
一定の実施形態では、本明細書で提供される抗体が、抗体がグリコシル化される程度を
増加または減少させるよう変化している。グリコシル化部位の抗体への付加または欠失は
、発現系(例えば、宿主細胞)を変化させることによって、および/または1つもしくは
複数のグリコシル化部位が作製もしくは除去されるようにアミノ酸配列を変化させること
によって好都合に達成され得る。
【0196】
本発明の一実施形態では、エフェクター機能が低下したアグリコシル抗体または抗体誘
導体が原核宿主での発現によって調製される。適当な原核宿主には、それだけに限らない
が、大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミ
チフス菌(Salmonella typhimurium)ならびにシュードモナス(
Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびブ
ドウ球菌(Staphylococcus)属の種々の種が含まれる。
【0197】
一実施形態では、前記抗体のFc部分のCH2ドメイン中の保存されたN結合部位での
修飾を特徴とする、エフェクター機能が低下した抗体変異体が提供される。本発明の一実
施形態では、修飾が重鎖グリコシル化部位でのグリコシル化を防ぐための重鎖グリコシル
化部位での突然変異を含む。したがって、本発明の1つの好ましい実施形態では、アグリ
コシル抗体または抗体誘導体が、重鎖グリコシル化部位の突然変異、すなわちKabat
EU番号付けを用いたN297の突然変異によって調製され、適当な宿主細胞中で発現
される。
【0198】
本発明の別の実施形態では、アグリコシル抗体または抗体誘導体が低下したエフェクタ
ー機能を有し、前記抗体または抗体誘導体のFc部分のCH2ドメイン中の保存されたN
結合部位の修飾がCH2ドメイングリカンの除去すなわち、脱グリコシル化を含む。これ
らのアグリコシル抗体は、従来の方法によって作成され、次いで、酵素的に脱グリコシル
化され得る。抗体の酵素的脱グリコシル化の方法は、当技術分野において周知である(例
えば、Winkelhake&Nicolson(1976),J Biol Chem
.251(4):1074-80)。
【0199】
本発明の別の実施形態では、グリコシル化阻害剤であるツニカマイシン(Nose&W
igzell(1983),Proc Natl Acad Sci USA,80(2
1):6632-6)を用いて脱グリコシル化を達成することができる。すなわち、この
修飾は、前記抗体のFc部分のCH2ドメイン中の保存されたN結合部位でのグリコシル
化の防止である。
【0200】
一実施形態では、Fc領域に(直接的または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化
物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、このような抗体中のフコースの量は、
1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコース
の量は、例えば、国際公開第2008/077546号パンフレットに記載されているM
ALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造
(glycostructure)(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース
構造)の和に対するAsn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって
測定される。Asn297は、Fc領域の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に
位置するアスパラギン残基を指す;しかしながら、Asn297はまた、抗体の軽微な配
列変異により、297位の約±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位と300位
との間に位置し得る。このようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得
る。
【0201】
「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関連する刊行物の例としては、
Okazaki et al.J Mol.Biol.336:1239-1249(2
004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.
87:614(2004)が挙げられる。
【0202】
脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化
が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Bioche
m.Biophys.249:533-545(1986);および国際公開第2004
/056312号パンフレット)およびノックアウト細胞株、例えばα-1,6-フコシ
ルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yaman
e-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(200
4);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(
4):680-688(2006)参照)が挙げられる。
【0203】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されて
いる、二分オリゴ糖を含む抗体変異体がさらに提供される。このような抗体変異体は、フ
コシル化の減少および/またはADCC機能の改善を有し得る。このような抗体変異体の
例は、例えば国際公開第2003/011878号パンフレット;米国特許第66026
84号明細書;および米国特許出願第2005/0123546明細書に記載されている
。
【0204】
Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1個のガラクトース残基を有する抗体変異
体も提供される。このような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。このよう
な抗体変異体は、例えば国際公開第1997/30087号パンフレット;国際公開第1
998/58964号パンフレット;および国際公開第1999/22764号パンフレ
ットに記載されている。
【0205】
Fc領域変異体
一定の実施形態では、本明細書で提供される抗体のFc領域(例えば、ヒトIgG1、
IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)に1つまたは複数のアミノ酸修飾(例え
ば、置換)を導入して、Fc領域改変体を作成することができる。
【0206】
一定の実施形態では、本発明は、抗体変異体を、インビボでの抗体の半減期が重要であ
るが、ある種のエフェクター機能(補体およびADCCなど)が不要または有害な用途の
ための望ましい候補にするいくつかの、但し全てではないエフェクター機能を有する抗体
変異体を企図する。インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害性アッセイを実施して、
CDCおよび/またはADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc
受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcγR結合を欠いている(したがっ
ておそらくADCC活性を欠いている)が、FcRn結合能力を保持していることを確保
することができる。いくつかの実施形態では、C1q結合および/または補体依存性細胞
傷害(CDC)の変化(すなわち、改善または減少のいずれか)をもたらすFc領域の改
変が行われる。
【0207】
一定の実施形態では、本発明は、半減期が増加または減少した抗体変異体を企図する。
半減期が増加し、胎児への母性IgGの移行を担う新生児Fc受容体(FcRn)への結
合が改善された抗体(Guyer et al.,J Immunol.117:587
(1976) and Kim et al.,J Immunol.24:249(1
994))は米国特許出願公開第2005/0014934号明細書(Hintonら)
に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つまたは
複数の置換を有するFc領域を含む。
【0208】
抗体-薬物複合体(ADC)
本発明はまた、化学療法剤または薬物、増殖抑制剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、
細菌、真菌、植物、ヒトもしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはこれらの断片)
、または放射活性同位体などの1つまたは複数の細胞傷害剤に結合した抗CEACAM6
抗体を含む抗体-薬物複合体(ADC、免疫複合体)を提供する。
【0209】
一実施形態では、免疫複合体が、抗体が、それだけに限らないが、マイタンシノイド(
米国特許第5208020号明細書、第5416064号明細書および欧州特許第042
5235号明細書参照);オーリスタチン、例えばモノメチルオーリスタン薬物部分DE
およびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5635483号明細書および第5
780588号明細書および第7498298号明細書参照);ドラスタチン;カリケア
マイシンまたはその誘導体;アントラサイクリン、例えばダウノマイシンまたはドキソル
ビシン;メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えばドセタキセル、パクリタキセ
ル、ラロタキセル、テセタキセルおよびオルタタキセル;トリコテセン;ならびにCC1
065を含む1種または複数の薬物と結合している抗体-薬物複合体(ADC)である。
【0210】
別の実施形態では、免疫複合体が、それだけに限らないが、ジフテリアA鎖、ジフテリ
ア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aerugi
nosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファサルシン、シナ
アブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、
ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI
、PAPIIおよびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia
)阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ(sapaonaria officina
lis)阻害剤、ゲロニン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびト
リコテセンを含む酵素的に活性な毒素またはその断片に結合した本明細書に記載される抗
体を含む。
【0211】
別の実施形態では、免疫複合体が、放射性複合体を形成する放射性原子に結合した本明
細書に記載される抗体を含む。放射性複合体の製造には、種々の放射性同位体が利用可能
である。例としては、227Th、225Ac、211At、131I、125I、90
Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212PbおよびLu
の放射性同位体が挙げられる。放射性複合体を検出に使用する場合、放射性複合体はシン
チグラフィー研究のための放射性原子、例えばTc99m、または核磁気共鳴(NMR)
イメージング用のスピン標識、例えば再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム
-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガ
ンまたは鉄を含むことができる。
【0212】
抗体および細胞傷害剤の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば
N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スク
シンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(
SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド
酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデ
ヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘ
キサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイ
ル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネート
など)およびビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンな
ど)を用いて作成することができる。
【0213】
リンカーは、細胞傷害性薬物の細胞中への放出を促進する「切断可能なリンカー」であ
ってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光解離性リン
カー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカーがある(Chari et a
l.,Cancer Res.52:12 7-131(1992))。
【0214】
本明細書の免疫複合体またはADCは明確に、それだけに限らないが、BMPS、EM
CS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、S
IAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホEMCS、スルホGMBS、スルホKM
US、スルホMBS、スルホSIAB、スルホSMCCおよびスルホSMPB、および(
例えば、Pierce Biotechnology,Inc.、Rockford、I
L.、米国から)商業的に入手可能なSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホ
ン)ベンゾエート)を含む架橋リンカー試薬を用いて調製されたこのような複合体を企図
する。
【0215】
本発明のDNA分子
本発明はまた、本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードするDNA分子に関する
。発現された抗体に使用されるDNA配列を表32に示す。これらの配列は、一定の場合
、哺乳動物発現のために最適化される。本発明のDNA分子は、本明細書に開示される配
列に限定されず、その変異体も含む。本発明内のDNA変異体は、ハイブリダイゼーショ
ンにおけるそれらの物理的特性を参照して記載され得る。当業者は、DNAが二本鎖、そ
の等価物またはホモログであるので、核酸ハイブリダイゼーション技術を用いてDNAを
使用してその相補体を同定することができることを認識するであろう。ハイブリダイゼー
ションは、100%未満の相補性で起こり得ることも認識されるであろう。しかしながら
、条件の適切な選択があれば、ハイブリダイゼーション技術を用いて、特定のプローブに
対するそれらの構造的関連性に基づいてDNA配列を区別することができる。このような
条件に関する手引きについては、上記のSambrook et al.,1989およ
びAusubel et al.,1995(Ausubel,F.M.,Brent,
R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Sedman,J.G.,
Smith,J.A.,& Struhl,K.eds.(1995).Current
Protocols in Molecular Biology.New York
:John Wiley and Sons)を参照されたい。
【0216】
2つのポリヌクレオチド配列間の構造的類似性は、2つの配列が互いにハイブリダイズ
する条件の「ストリンジェンシー」の関数として表すことができる。本明細書中で使用さ
れる場合、「ストリンジェンシー」という用語は、条件がハイブリダイゼーションを嫌う
程度を指す。ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーションを強く嫌い、このような
条件下では最も構造的に関連する分子のみが互いにハイブリダイズする。逆に、非ストリ
ンジェントな条件は、より低い程度の構造的関連性を示す分子のハイブリダイゼーション
に有利である。そのため、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、2つの核酸配
列の構造的関係と直接相関する。
【0217】
ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、DNA全体の濃度、イオン強度、温度
、プローブサイズおよび水素結合を破壊する薬剤の存在を含む多くの因子の関数である。
ハイブリダイゼーションを促進する因子には、高いDNA濃度、高いイオン強度、低温、
長いプローブサイズおよび水素結合を破壊する薬剤の非存在が含まれる。ハイブリダイゼ
ーションは、典型的には、「結合」段階および「洗浄」段階の2つの段階で行われる。
【0218】
機能的に等価なDNA変異体
本発明の範囲内のさらに別のクラスのDNA変異体は、それらがコードする産物を参照
して記載することができる。これらの機能的に等価なポリヌクレオチドは、それらが遺伝
暗号の縮重のために同じペプチド配列をコードするという事実を特徴とする。
【0219】
本明細書で提供されるDNA分子の変異体をいくつかの異なる方法で構築することがで
きることが認識される。例えば、変異体を完全合成DNAとして構築することができる。
オリゴヌクレオチドを効率的に合成する方法は、広く入手可能である。Ausubel
et al.,section 2.11,Supplement 21(1993)を
参照されたい。重複オリゴヌクレオチドは、Khorana et al.,J.Mol
.Biol.72:209-217(1971)によって最初に報告された様式で合成し
、組み立てることができる;上記のAusubel et al.,Section 8
.2も参照されたい。合成DNAは、好ましくは適当なベクターへのクローニングを容易
にするために遺伝子の5’末端および3’末端で操作された好都合な制限部位を用いて設
計される。
【0220】
示されるように、変異体を作成する方法は、本明細書に開示されるDNAの1つから開
始し、次いで、部位特異的変異誘発を行うことである。上記のAusubel et a
l.,supra,chapter 8,Supplement 37(1997)を参
照されたい。典型的な方法では、標的DNAを一本鎖DNAバクテリオファージビヒクル
にクローニングする。一本鎖DNAを単離し、所望の(1又は複数の)ヌクレオチド変化
を含むオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる。相補鎖を合成し、二本鎖ファージを
宿主に導入する。得られた子孫のうちのいくつかは、所望の変異体を含み、これはDNA
配列決定を用いて確認することができる。さらに、子孫ファージが所望の突然変異体とな
る可能性を高める種々の方法が利用可能である。これらの方法は当業者に周知であり、こ
のような変異体を作成するためにキットが市販されている。
【0221】
組換えDNA構築物および発現
本発明はさらに、本発明のヌクレオチド配列の1つまたは複数を含む組換えDNA構築
物を提供する(表32参照)。本発明の組換え構築物は、本発明の抗体、またはその抗原
結合断片、またはその変異体をコードするDNA分子が挿入されているベクター、例えば
プラスミド、ファージミド、ファージまたはウイルスベクターに関連して使用することが
できる。
【0222】
本明細書で提供される抗体、抗原結合部分、またはその変異体は、宿主細胞中の軽鎖お
よび重鎖またはその一部をコードする核酸配列の組換え発現によって調製することができ
る。抗体、抗原結合部分、またはその変異体を組換え的に発現させるために、軽鎖および
重鎖が宿主細胞中で発現されるように、軽鎖および/または重鎖あるいはその一部をコー
ドするDNA断片を有する1つまたは複数の組換え発現ベクターで宿主細胞をトランスフ
ェクトすることができる。標準的な組換えDNA法を用いて、重鎖および軽鎖をコードす
る核酸を調製および/または取得し、これらの核酸を組換え発現ベクターに組み込み、ベ
クターを宿主細胞、例えばSambrook,Fritsch and Maniati
s(eds.),Molecular Cloning;A Laboratory M
anual,Second Edition,Cold Spring Harbor,
N.Y.,(1989)、Ausubel,F.M.et al.(eds.)Curr
ent Protocols in Molecular Biology,Green
e Publishing Associates,(1989)およびBossらによ
る米国特許第4816397号明細書に記載されているものに導入する。
【0223】
さらに、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする核酸配列を、例えば全長抗体
鎖、Fab断片をコードする核酸配列またはscFvに変換することができる。VLまた
はVHをコードするDNA断片を、例えば、抗体定常領域または可動性リンカーをコード
する別のDNA断片に(2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がフレーム
内にあるように)作動可能に連結することができる。ヒト重鎖および軽鎖定常領域の配列
は、当技術分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.,el al.(1991
) Sequences of Proteins of Immunological
Interest,Fifth Edition,U.S.Department o
f Health and Human Services,NIH Publicat
ion No.91-3242)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPC
R増幅によって得ることができる。
【0224】
scFvをコードするポリヌクレオチド配列を作成するために、VHおよびVLをコー
ドする核酸を、VLおよびVH領域が可動性リンカーによって接続されたVHおよびVL
配列が連続した一本鎖タンパク質として発現され得るように、可動性リンカーをコードす
る別の断片に作動可能に連結することができる(例えば、Bird et al.(19
88) Science 242:423-426;Huston et al.(19
88) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;
McCafferty et al.,Nature(1990) 348:552-5
54参照)。
【0225】
抗体、その抗原結合断片、またはその変異体を発現させるために、標準的な組換えDN
A発現方法を使用することができる(例えば、Goeddel;Gene Expres
sion Technology.Methods in Enzymology 18
5,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)参
照)。例えば、所望のポリペプチドをコードするDNAを発現ベクターに挿入し、次いで
、これを適当な宿主細胞にトランスフェクトすることができる。適当な宿主細胞は原核細
胞および真核細胞である。原核宿主細胞の例は、例えば、細菌であり、真核宿主細胞の例
は、酵母、昆虫および昆虫細胞、植物および植物細胞、トランスジェニック動物または哺
乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、重鎖および軽鎖をコードするDNAを別々
のベクターに挿入する。他の実施形態では、重鎖および軽鎖をコードするDNAを同じベ
クターに挿入する。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、宿主細胞の選択、所望
のタンパク質の発現レベルおよび発現が構成的であるかまたは誘導的であるかどうかなど
の因子によって影響されることが理解される。
【0226】
そのため、本発明の実施形態はまた、ベクターまたは核酸分子を含む宿主細胞であり、
宿主細胞が高等真核生物宿主細胞(哺乳動物細胞など)、下等真核生物宿主細胞(酵母細
胞など)であってもよく、原核細胞(細菌細胞など)であってもよい。
【0227】
本発明の別の実施形態は、適当な条件下で宿主細胞を培養するステップと、前記抗体を
回収するステップとを含む、抗体および抗原結合断片を作成するために宿主細胞を使用す
る方法である。
【0228】
そのため、本発明の別の実施形態は、本発明の宿主細胞を用いた本発明の抗体の作成お
よびこれらの抗体の少なくとも95重量%均質性までの精製である。
【0229】
細菌の発現
細菌使用のための有用な発現ベクターは、所望のタンパク質をコードするDNA配列を
、適当な翻訳開始および終止シグナルと共に、機能的プロモーターを用いて作動可能な読
み取り段階で挿入することによって構築される。ベクターは、ベクターの維持を確実にす
るために、および所望であれば宿主内での増幅を提供するために、1つまたは複数の表現
型選択マーカーおよび複製起点を含む。形質転換に適した原核宿主には、それだけに限ら
ないが、大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネ
ズミチフス菌(Salmonella typhimurium)ならびにシュードモナ
ス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およ
びブドウ球菌(Staphylococcus)属の種々の種が含まれる。
【0230】
細菌ベクターは、例えば、バクテリオファージ、プラスミドまたはファージミドに基づ
くものであり得る。これらのベクターは、典型的には周知のクローニングベクターpBR
322(ATCC37017)のエレメントを含む市販のプラスミドに由来する選択マー
カーおよび細菌複製起点を含むことができる。適当な宿主株の形質転換および適当な細胞
密度への宿主株の増殖後、選択されたプロモーターを、適当な手段(例えば、温度シフト
または化学誘導)によって抑制解除/誘導し、細胞をさらなる期間培養する。細胞を、典
型的には、遠心分離によって回収し、物理的または化学的手段によって破壊し、得られた
粗抽出物をさらなる精製のために保持する。
【0231】
細菌系では、発現されるタンパク質を意図する用途に応じて、いくつかの発現ベクター
を有利に選択することができる。例えば、抗体の作成またはペプチドライブラリーのスク
リーニングのために、大量のこのようなタンパク質を産生する場合、容易に精製される高
レベルの融合タンパク質産物の発現を指示するベクターが望ましいだろう。
【0232】
そのため、本発明の実施形態は、本発明の新規な抗体をコードする核酸配列を含む発現
ベクターである。
【0233】
本発明の抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体は、天然精製産物、化学合
成手順の産物、ならびに例えば大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌とシュードモナス、スト
レプトマイセスおよびブドウ球菌属の種々の種、好ましくは大腸菌細胞を含む原核生物宿
主から組換え技術によって作成される産物を含む。
【0234】
哺乳動物の発現
哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、サイトメガロウイルス(CMV
)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(S
V40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主
要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/また
はエンハンサーなどの哺乳動物細胞中での高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス
エレメントが含まれる。抗体の発現は、構成的であっても調節されていてもよい(例えば
、Tet系と組み合わせたテトラサイクリンなどの小分子誘導物質の添加または除去によ
り誘導可能)。ウイルス調節エレメントおよびその配列のさらなる説明については、例え
ば、Stinskiによる米国特許第5168062号明細書、Bellらによる米国特
許第4510245号明細書およびSchaffnerらによる米国特許第496861
5号明細書を参照されたい。組換え発現ベクターはまた、複製起点および選択マーカーを
含むことができる(例えば、米国特許第4399216号明細書、第4634665号明
細書および米国特許第5179017号号明細書参照)。適当な選択マーカーには、G4
18、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、ゼオシン/ブレオマイ
シンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する遺伝子、あるいはベクタ
ーを導入した宿主細胞上で、グルタミンシンテターゼなどの栄養要求性を利用する選択マ
ーカー(Bebbington et al.,Biotechnology(NY).
1992 Feb;10(2):169-75)が含まれる。例えば、ジヒドロ葉酸レダ
クターゼ(DHFR)遺伝子はメトトレキサートに対する耐性を付与し、neo遺伝子は
G418に対する耐性を付与し、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus
terreus)由来のbsd遺伝子はブラストサイジンに対する耐性を付与し、ピュー
ロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼはピューロマイシンに対する耐性を付与し、
Sh ble遺伝子産物は、ゼオシンに対する耐性を付与し、ハイグロマイシンに対する
耐性は、大腸菌ハイグロマイシン耐性遺伝子(hygまたはhph)によって付与される
。DHFRまたはグルタミンシンテターゼなどの選択マーカーも、MTXおよびMSXと
併せて増幅技術に有用である。
【0235】
発現ベクターの宿主細胞へのトランスフェクションは、電気穿孔、Nucleofec
tion(商標)、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、ポリカチオンベースのト
ランスフェクション、例えばポリエチレンイミン(PEI)ベースのトランスフェクショ
ンおよびDEAE-デキストラントランスフェクションなどの標準的な技術を用いて行う
ことができる。
【0236】
本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、またはその変異体を発現するのに適し
た哺乳動物宿主細胞には、CHO-K1、CHO-S、CHO-K1SV[例えば、R.
J.Kaufman and P.A.Sharp(1982) Mol.Biol.1
59:601-621に記載されるDHFR選択マーカーと共に使用されるUrlaub
and Chasin,(1980) Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 77:4216-4220およびUrlaub et al.,Cell.1983
Jun;33(2):405-12に記載されるdhfr-CHO細胞ならびにFan
et al.,Biotechnol Bioeng.2012 Apr;109(4
):1007-15に例示される他のノックアウト細胞を含む]などのチャイニーズハム
スター卵巣(CHO細胞)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、HEK293細胞、HKB
11細胞、BHK21細胞、CAP細胞、EB66細胞およびSP2細胞が含まれる。
【0237】
発現はまた、HEK293、HEK293T、HEK293-EBNA、HEK293
E、HEK293-6E、HEK293-Freestyle、HKB11、Expi2
93F、293EBNALT75、CHO Freestyle、CHO-S、CHO-
K1、CHO-K1SV、CHOEBNALT85、CHOS-XE、CHO-3E7ま
たはCAP-T細胞などの発現系において一過性または半安定(semi-stable
)であり得る(例えば、Durocher et al.,Nucleic Acids
Res.2002 Jan 15;30(2):E9)。
【0238】
いくつかの実施形態では、発現ベクターが、発現されたタンパク質が宿主細胞を増殖し
ている培養培地に分泌されるよう設計される。抗体、その抗原結合断片またはその変異体
は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培養培地から回収することができる。
【0239】
精製
本発明の抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体を、それだけに限らないが
、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、プロテインAクロマトグラフィー、
プロテインGクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホ
スホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティ
ークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロ
マトグラフィーを含む周知の方法によって組換え細胞培養物から回収および精製すること
ができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を精製に使用することもできる
。例えば、それぞれ全体的に参照により本明細書に組み込まれる、Colligan,C
urrent Protocols in Immunology,or Curren
t Protocols in Protein Science,John Wile
y&Sons,NY,N.Y.,(1997-2001)、例えば1、4、6、8、9、
10章を参照されたい。
【0240】
本発明の抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体は、天然精製産物、化学合
成手順の産物、ならびに例えば酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞を含む真核生物
宿主から組換え技術によって作成される産物を含む。組換え作成手順で使用される宿主に
応じて、本発明の抗体をグリコシル化することができる、または非グリコシル化すること
ができる。このような方法は、上記のSambrook、17.37~17.42節、上
記のAusubel、10、12、13、16、18および20章などの多くの標準的な
実験室マニュアルに記載されている。
【0241】
好ましい実施形態では、抗体が、(1)例えばLowry法、UV-Vis分光法もし
くはSDS-毛管ゲル電気泳動(例えば、Caliper LabChip GXII、
GX 90もしくはBiorad Bioanalyzer装置)によって測定される9
5重量%超の抗体まで、さらに好ましい実施形態では、99重量%超まで、(2)N末端
もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または
(3)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いて還元もしくは非還元条件下で
SDS-PAGEによって均質になるまで精製される。単離された天然抗体は、抗体の自
然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内で原位置で抗体を含む。
しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製さ
れる。
【0242】
治療的方法
治療的方法は、治療上有効量の本発明によって企図される抗体、またはその抗原結合断
片、またはその変異体を治療を、必要とする対象に投与するステップを含む。これにより
、「治療上有効」量は、有害状態の緩和につながるが、毒物学的に許容される、単回用量
として、または複数回用量レジメンにより、単独で、または他の薬剤と組み合わせて、C
EACAM6陽性細胞の増殖を減少させる、または対象の治療領域におけるCEACAM
6発現腫瘍のサイズを減少させるのに十分な量である抗体または抗原結合断片の量として
定義される。対象は、ヒトまたはヒト以外の動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス、イ
ヌ、サルまたは他の下等霊長類)であり得る。
【0243】
医薬品として使用するための抗体またはその抗原結合断片を提供することが本発明の実
施形態である。
【0244】
がんを治療するための医薬品としての使用するための抗体またはその抗原結合断片を提
供することが本発明の実施形態である。好ましい実施形態では、がんが腫瘍であり、非常
に好ましい実施形態では、がんが固形腫瘍である。
【0245】
疾患を治療するための医薬品の製造において抗体またはその抗原結合断片を使用するこ
とが本発明の実施形態である。
【0246】
がんを治療するための医薬品の製造において抗体またはその抗原結合断片を使用するこ
とが本発明の実施形態である。好ましい実施形態では、がんが腫瘍であり、非常に好まし
い実施形態では、がんが固形腫瘍である。
【0247】
本発明の抗体またはその抗原結合断片を、異常なCEACAM6シグナル伝達を有する
種々の状況、例えばがんまたは線維性疾患などの細胞増殖性障害において、治療ツールま
たは診断ツールとして使用することができる。本発明の抗体による治療に特に適している
障害および状態は、乳房、気道、脳、生殖器官、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部
、甲状腺、副甲状腺のがんおよびそれらの遠隔転移などの固形腫瘍である。これらの障害
には、リンパ腫、肉腫および白血病も含まれる。
【0248】
消化管の腫瘍には、それだけに限らないが、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、
膵臓、直腸、小腸および唾液腺のがんが含まれる。
【0249】
食道がんの例としては、それだけに限らないが、食道細胞がんおよび腺がん、ならびに
扁平上皮細胞がん、平滑筋肉腫、悪性黒色腫、横紋筋肉腫およびリンパ腫が挙げられる。
【0250】
胃がんの例としては、それだけに限らないが、腸型および散在型胃腺がんが挙げられる
。
【0251】
膵臓がんの例としては、それだけに限らないが、腺管がん、腺扁平上皮がんおよび膵臓
内分泌腫瘍が挙げられる。
【0252】
乳がんの例としては、それだけに限らないが、トリプルネガティブ乳がん、浸潤性乳管
がん、浸潤性小葉がん、腺管上皮内がんおよび非浸潤性小葉がんが挙げられる。
【0253】
気道のがんの例としては、それだけに限らないが、小細胞および非小細胞肺がんならび
に気管支腺腫および胸膜肺芽腫が挙げられる。
【0254】
脳がんの例としては、それだけに限らないが、脳幹および視床下部膠腫、小脳および大
脳星状細胞腫、神経膠芽腫、髄芽腫、上衣腫ならびに神経外胚葉および松果体腫瘍が挙げ
られる。
【0255】
男性生殖器の腫瘍には、それだけに限らないが、前立腺がんおよび精巣がんが含まれる
。女性生殖器の腫瘍には、それだけに限らないが、子宮内膜がん、子宮頸がん、卵巣がん
、膣がんおよび外陰がんならびに子宮肉腫が含まれる。
【0256】
卵巣がんの例としては、それだけに限らないが、漿液性腫瘍、子宮内膜腫瘍、粘液性嚢
胞腺がん、顆粒膜細胞腫瘍、セルトリ・ライディッヒ細胞腫および男化腫瘍が挙げられる
。
【0257】
子宮頸がんの例としては、それだけに限らないが、扁平上皮がん、腺がん、腺扁平上皮
がん、小細胞がん、神経内分泌腫瘍、ガラス状細胞がんおよび絨毛腺がんが挙げられる。
【0258】
尿路の腫瘍には、それだけに限らないが、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管、尿道、なら
びに遺伝性および散発性の乳頭状腎がんが含まれる。
【0259】
腎臓がんの例としては、それだけに限らないが、腎細胞がん、尿路上皮細胞がん、傍糸
球体細胞腫瘍(腎腫)、血管膠腫、腎膨大細胞腫、ベリーニ管がん、腎臓の明細胞肉腫、
中胚葉腎腫およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0260】
膀胱がんの例としては、それだけに限らないが、移行上皮がん、扁平上皮がん、腺がん
、肉腫および小細胞がんが挙げられる。
【0261】
眼のがんには、それだけに限らないが、眼内黒色腫および網膜芽腫が含まれる。
【0262】
肝臓がんの例としては、それだけに限らないが、肝細胞がん(線維層状型変異体を伴う
または伴わない肝細胞がん腫)、胆管細胞がん(肝内胆管がん)および混合型肝細胞胆管
細胞がんが挙げられる。
【0263】
皮膚がんには、それだけに限らないが、扁平上皮細胞がん、カポジ肉腫、悪性黒色腫、
メルケル細胞皮膚がんおよび非黒色腫皮膚がんが含まれる。
【0264】
頭頸部がんには、それだけに限らないが、頭頸部の扁平上皮がん、喉頭がん、下咽頭が
ん、鼻咽頭がん、口腔咽頭がん、唾液腺がん、口唇および口腔がん、ならびに扁平上皮が
んが含まれる。
【0265】
リンパ腫には、それだけに限らないが、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、
皮膚T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン病および中枢神経系のリンパ腫が含
まれる。
【0266】
肉腫には、それだけに限らないが、軟部組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リ
ンパ肉腫および横紋筋肉腫が含まれる。
【0267】
白血病には、それだけに限らないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢
性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病およびヘアリーセル白血病が含まれる。
【0268】
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片が、結腸直腸がん、非
小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、膵臓がん、胃がん、乳がんお
よび多発性骨髄腫からなる群に含まれるがん疾患を治療または診断するための治療または
診断方法に適している。
【0269】
さらに、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、CEACAM6が関与する種々の他
の障害、例えば、それだけに限らないが、肺感染症、例えばインフルエンザ、クローン病
、炎症性腸疾患、乾癬、肺嚢胞性線維症における治療または診断ツール、胃腸管への細菌
結合、外傷、出血熱傷、外科手術、脳卒中、心筋梗塞、敗血症、肺炎、感染症およびがん
に対するワクチン接種、慢性ウイルス感染症の予防として使用することもできる。
【0270】
上記障害は、ヒトにおいてよく特徴付けられているが、哺乳動物を含む他の動物におい
ても同様の病因で存在し、本発明の医薬品組成物を投与することによって治療することが
できる。
【0271】
本発明の抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体は、公知の医薬品と同時投
与されてもよく、いくつかの例では、抗体自体が修飾されてもよい。例えば、抗体、また
はその抗原結合断片、またはその変異体を、細胞傷害剤または放射性同位体に結合して、
効力を潜在的にさらに増加させることができるだろう。
【0272】
本発明の抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体は、唯一の医薬品として、
または組み合わせが許容できない副作用を引き起こさない1種もしくは複数のさらなる治
療薬と組み合わせて投与することができる。この併用療法は、本発明の抗体、またはその
抗原結合断片、またはその変異体と、1種または複数の追加の治療薬とを含有する単一の
医薬投与製剤の投与、ならびに本発明および各追加の治療薬のそれ自体の別個の医薬投与
製剤の投与を含む。例えば、本発明の抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体
と治療薬が単一液体組成物で一緒に患者に投与され得る、または各薬剤が別々の投与製剤
で投与され得る。
【0273】
別個の投与製剤が使用される場合、本発明の抗体、またはその抗原結合断片、またはそ
の変異体と1種または複数の追加の治療薬は、本質的に同時に(例えば、同時に)または
別々に交互に(例えば、順次)投与され得る。
【0274】
特に、本発明の抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体は、アルキル化剤、
代謝拮抗薬、植物由来抗腫瘍薬、ホルモン療法薬、トポイソメラーゼ阻害剤、免疫学的物
質(immunologicals)、抗体、抗体薬物、生物学的応答調節物質、抗血管
新生化合物、細胞療法薬およびそれだけに限らないが、カンプトテシン誘導体、キナーゼ
阻害剤、標的化薬物を含む他の抗腫瘍薬物などの他の抗腫瘍剤との一定のまたは別個の組
み合わせで使用され得る。
【0275】
これに関して、以下は、本発明の抗体と組み合わせて使用され得る第2の薬剤の例の非
限定的リストである:
アルキル化剤には、それだけに限らないが、ナイトロジェンマスタードN-オキシド、
シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロ
ミド、アルトレタミン、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、
エストラムスチン、フォテムスチン、グルフォスファミド、マホスファミド、ベンダムス
チンおよびミトラクトールが含まれ;白金配位アルキル化化合物には、それだけに限らな
いが、シスプラチン、カルボプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、
オキサリプラチンおよびサトラプラチンが含まれる;
代謝拮抗薬には、それだけに限らないが、メトトレキサート、6-メルカプトプリンリ
ボシド、メルカプトプリン、単独またはロイコボリンと組み合わせた5-フルオロウラシ
ル、テガフール、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスフ
ァート、エノシタビン、ゲムシタビン、フルダラビン、5-アザシチジン、カペシタビン
、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シ
トシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、メルファラン、ネララビン、ノラトレキシド、オ
クホスファイト(ocfosfite)、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン
、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、トリアピン、トリメトレキサート、ビダラビン
、ビンクリスチンおよびビノレルビンが含まれる;
ホルモン療法薬には、それだけに限らないが、エキセメスタン、Lupron、アナス
トロゾール、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、ホルメスタン、11-βヒド
ロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1阻害剤、17-αヒドロキシラーゼ/17,20リ
アーゼ阻害剤、例えば酢酸アビラテロン、5-αレダクターゼ阻害剤、例えばフィナステ
リドおよびエプリステリド、抗エストロゲン薬、例えばクエン酸タモキシフェンおよびフ
ルベストラント、Trelstar、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェ
ン、レトロゾール、抗アンドロゲン薬、例えばビカルタミド、フルタミド、ミフェプリス
トン、ニルタミド、Casodex、ならびに抗プロゲステロン、ならびにこれらの組み
合わせが含まれる;
植物由来抗腫瘍物質には、例えば、有糸分裂阻害剤、例えば、エポチロン、例えばサゴ
ピロン、イクサベピロンおよびエポチロンB;ビンブラスチン、ビンフルニン、ドセタキ
セルおよびパクリタキセルから選択されるものが含まれる;
細胞傷害性トポイソメラーゼ阻害剤には、それだけに限らないが、アクラルビシン、ド
キソルビシン、アモナファイド、ベロテカン、カンプトテシン、10-ヒドロキシカンプ
トテシン、9-アミノカンプトテシン、ジフロモテカン、イリノテカン、トポテカン、エ
ドテカリン、エピルビシン、エトポシド、エキサテカン、ジャイマテカン、ラルトテカン
、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピキサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、タフ
ルポシドおよびこれらの組み合わせが含まれる;
免疫学的物質には、インターフェロン、例えばインターフェロンα、インターフェロン
α-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ-1a
およびインターフェロンγ-n1、GM-CSFならびに他の免疫増強剤、例えばL19
-IL2および他のIL2誘導体、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、Th
eraCys、ウベニメクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM-002、ダ
カルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、イブリツモ
マブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、黒色腫ワクチン(Corixa)、モ
ルグラモスチム、サルグラモスチム、タソネルミン、テクロイキン(tecleukin
)、チマラシン(thymalasin)、トシツモマブ、Vimlizin、エプラツ
ズマブ、ミツモマブ、オレゴボマブ、ペムツモマブおよびProvenge;ALNX6
000、Urelumab、PF-005082566、Galunisertib、A
Z10606120、NF340、BMS-777607が含まれる;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、CTLA-4、PD1、PD-L1、B7
-H3受容体、B7-H4受容体、BTLA、TIM3、LAG3、KIRDL、2B4
、VISTA、CD244、CD160、TIGIT、CEACAM1、CEACAM5
、HHLA2を含む免疫チェックポイントモジュレーターまたは同時阻害受容体に向けら
れた薬物も含まれる。具体的には、これらの薬物のいくつかはイピリムマブ、トレメリム
マブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、AMP-224、AMP-514
、PDR001、MDX1105、BMS-936559、アテゾリズマブ、Medi4
736、アベルマブ、MSB0010718C、MGA271、IMP321、BMS-
986016、バビツキシマブ、MNRP1685A、セレコキシブ、PF-04418
948、RQ-15986である;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、CD28、ICOS、4-1BB、OX4
0、CD27、KIRDS、GITR、HVEM、TNFRSF25、CD40L.TM
IGD2、TIM-1、CEACAM1、CEACAM5に向けられた薬物を含む同時刺
激受容体の活性剤が含まれる。これらの薬物の中には、CP-870893、ルカツムマ
ブ、ダセツズマブ、抗OX40、MEDI0562、MEDI6469、MEDI638
3、CDX-1127、TRX518、バルリルマブがある;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、FOXP3、CD25、CCR4に向けら
れるものを含むTreg活性を調節する薬剤も含まれる。これらの薬剤の中にはダクリズ
マブがある;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、CSF1Rに向けられるものを含む骨髄由
来サプレッサー細胞の活性を調節する薬剤も含まれる。一例はエマツズマブ、タラダフィ
ルである;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8
、TLR9、NGK2A、NKG2Dを含むToll様受容体に向けられる薬剤を含む先
天性免疫細胞応答を調節する薬剤も含まれる。これらの薬物は、例えばイミキモド、CP
G7909(PF-3512676、CPG2006);MGN1703、SD-101
、ヒルトノール(ポリICLC)、抗NGK2A(IPH2201)、OM-174、8
52A、VTX-2337、IMO-2055である;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、CSF-1、CSF1R、KIR、ILT
、LIR、MICA、MICB、CD244、CCL2、CD47に向けられる薬物を含
む先天性免疫細胞応答を調節する薬物も含まれる。具体的には、これらの薬物のいくつか
は、抗KIR(IHP2101;IPH2101;1-7F9);リリルマブ(IPH2
012;BMS-986015);カルルマブ(CNTO888)、IMC-CS4、F
PA008、PLX3397、ARRY-382、CC-90002、抗CD47(Hu
5F9-G4)、BLZ945である;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、二重特異性抗体、例えば、B7-H3に対
するDarts、例えばCD19xCD3に対するBites;例えば、Removab
抗EPCAMxCD3xFC、NK細胞標的化剤を含む免疫細胞再標的化剤も含まれる;
免疫学的物質には、ワクチンおよびアジュバントを含む腫瘍微小環境を調節し、免疫細
胞浸潤および応答を改善する薬剤も含まれ、GVAX、FVAXに限定されない;
これに関して、ワクチンは、樹状細胞ベースのワクチン、ウイルスワクチン、mRNA
ベースのバクシン(vaxxine)、マルチペプチドベースのワクチンを含む;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、IFN-g、IL15、IL21、IL2
、CXCR4、CXCl12を含む免疫細胞浸潤を改善する薬剤も含まれる。これらの薬
物のいくつかは、Denenicokin(BMS982470)、ALT-803、h
etIL15、Ulocuplumab、BKT140、CXCR2特異的mab、AD
3100、Maravirox、PF-4136309である;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、m-TORGSK3β阻害剤、負荷DC(
例えば、Provenge)、放射線療法、外部ビーム放射に向けられた薬物を含むAP
CおよびT細胞のプライミングおよび活性化を改善する薬剤または治療法も含まれる;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、IDO1、IDO2、TDOに向けられた
薬物を含むキヌレニン経路モジュレーターも含まれる。これらの薬物の中には、INCB
024360、インドキシモド(NLG8189;1-メチル-D-トリプトファン、D
-1MT)、GDC-0919、NLG919、LM10がある;
免疫学的物質には、それだけに限らないが、CD39、CD73、A2A受容体、A2
B受容体に向けられた薬物を含むアデノシン経路モジュレーターも含まれる。このような
薬物には、化合物9、NCX-4016、AT38、SCH58261、SCH4208
14、PSB1115、ARL67176、AMPCPが含まれる;
免疫学的物質には、TGFβ/ALK5経路モジュレーターも含まれる。このような薬
物には、OY2157299、EW-7187が含まれる;
免疫学的物質には、Sting活性化剤も含まれる;
生物学的応答調節物質は、生物の防御機構または組織細胞の生存、増殖もしくは分化な
どの生物学的応答を改変して、抗腫瘍活性を有するようにする物質である;このような薬
剤には、例えば、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニル、ProMune
およびウベニメクスが含まれる;
抗血管新生化合物には、それだけに限らないが、アシトレチン、アフリベルセプト、ア
ンジオスタチン、アプリジン、アセンタール(asentar)、アキシチニブ、ベバシ
ズマブ、ブリバニブアラニネート、シレンジタイド、コンブレタスタチン、エンドスタチ
ン、フェンレチニド、ハロフジノン、パゾパニブ、ラニビズマブ、レビマスタット、レセ
ンチン、レゴラフェニブ、レモバブ、レブリミド、ソラフェニブ、スクアラミン、スニチ
ニブ、テラチニブ、サリドマイド、ウクライン、バタラニブおよびビタキシンが含まれる
;
抗血管新生薬には、それだけに限らないが、ソラフェニブ、レボラフェニブ、ベバシズ
マブ、スニチニブ、レセンチン、アキシチニブ、アフリベルセプト、テラチニブ、ブリバ
ニブアラニネート、バタラニブ、パゾパニブおよびラニビズマブを含むVEGF阻害剤も
含まれる;
抗体薬物には、それだけに限らないが、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ
、リツキシマブ、チシリムマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、ペンブロリズマブ、ニ
ボルマブ、ピジリズマブ、RG-7446/MPDL3280A、BMS-936559
(MDX1105)、デュルバルマブ(Medi-4736)、MSB-0010718
C、ルミリキシマブ、カツマキソマブ、アタシセプト、オレゴボマブ、パニツムマブおよ
びアレムツズマブが含まれる;
抗体薬物には、それだけに限らないが、メソテリン、C4.4A、FGFR2、HER
2、PSMAを標的とするものを含む抗体薬物複合体も含まれる;
抗体薬物には、トリウム標的化複合体、それだけに限らないが、メソテリン、C4.4
A、FGFR2、HER2、PSMA、CEACAM6を標的とするものも含まれる;
抗体薬物には、それだけに限らないが、二重特異性(または多重特異性)IgGおよび
二重特異性(または多重特異性)抗体断片ならびにそれらのタンパク質融合物および複合
体(例えばCrossMab、DAF(2in1)、DAF(4in1)、DutaMa
b、DT-IgG、KiHassembled IgG、電荷対会合IgG、KiH-c
ommonLC、Fab-アーム交換、SEEDボディ、Triomab、LUZ-Y、
Fcab、κλ-mAb、直交Fab、DVD-IgG、IgG(H)-scFv、sc
Fv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、IgG(L,
H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V、V(L)-Ig
G、KIH-IgG-scFab、2scFv-IgG、IgG-2scFv、scFv
4-Ig、Zyボディ、DVI-IgG(4in1)、ジ-ナノボディ、BiTE、ダイ
アボディ、DART、DART-Fc、TandAb、scダイアボディ、scダイアボ
ディ-CH3、ダイアボディ-CH3、トリプルボディ、ミニ抗体、ミニボディ、Tri
Biミニボディ、scFv-CH3 KIH、Fab-scFv、scFv-CH-CL
-scFv、F(ab’)2、F(ab’)2-scFv2、scFv-KIH、Fab
-scFv-Fc、四価HCAb、scダイアボディ-Fc、ダイアボディ-Fc、タン
デムscFv-Fc、細胞内抗体、ドックアンドロック融合体(Dock and Lo
ck fusion)、ImmTAC、HSAbody、scダイアボディ-HAS、タ
ンデムscFv-毒素、IgG-IgG、Cov-X-ボディ、scFv1-PEG-s
cFv2など)を含む二重特異性(または多重特異性)抗体フォーマットも含まれる;
抗体薬物には、それだけに限らないが、DARPIN分子などの抗体様結合特性を有す
る組換え作成技術によってされる組換えタンパク質も含まれる;
細胞療法薬には、それだけに限らないが、生体外で刺激されたT細胞、例えばシプロイ
セルTなどのがん患者から単離された腫瘍浸潤リンパ球が含まれる;
細胞療法薬には、それだけに限らないが、シプロイセルTなどのがん患者から単離され
た腫瘍浸潤リンパ球およびキメラ抗原受容体(CAR)を有する遺伝子操作されたT細胞
、例えばCD19-CAR-T細胞;CAR-Her2-T細胞が含まれる;
例えば、アリトレチノイン、アンプリジェン、アトラセンタンベキサロテン、ボルテゾ
ミム、ボセンタン、カルシトリオール、エクシスリンド、フォテムスチン、イバンドロン
酸、ミルテフォシン、ミトキサントロン、I-アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカ
ルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、タザロテン、
ベルケイド、硝酸ガリウム、カンフォスファミド、ダリナパルシンおよびトレチノイン、
PI3065、TG100-115を含む他の抗がん剤;
EGFR(HER1)阻害剤、例えばセツキシマブ、パニツムマブ、ベクティビックス
、ゲフィチニブ、エルロチニブおよびZactima;
HER2阻害剤、例えばラパチニブ、トラツズマブおよびペルツズマブ;
mTOR阻害剤、例えばテムシロリムス、シロリムス/ラパマイシンおよびエベロリム
ス;
c-Met阻害剤;
PI3K阻害剤、例えばPI3K阻害剤1(2-アミノ-N-[7-メトキシ-8-(
3-モルホリン-4-イルプロポキシ)-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,2-c]キナ
ゾリン-5-イル]ピリミジン-5-カルボキサミド二塩酸塩(国際公開第2012/1
36553号パンフレット実施例1および2の化合物を参照)およびAKT阻害剤;
CDK阻害剤、例えばロスコビチンおよびフラボピリドール;
紡錘体形成チェックポイント阻害剤および標的化有糸分裂阻害剤、例えばPLK阻害剤
、Aurora阻害剤(例えば、ヘスペラジン)、チェックポイントキナーゼ阻害剤およ
びKSP阻害剤;
BRAFV600E阻害剤、例えばベムラフェニブ、ダブラフェニブ;
HDAC阻害剤、例えば、パノビノスタット、ボリノスタット、MS275、ベリノス
タットおよびLBH589;
HSP90およびHSP70阻害剤;
プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブおよびカルフィルゾミブ;
MEK阻害剤およびRaf阻害剤を含むセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、例えばソ
ラフェニブ;
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、チピファルニブ;
例えば、ダサチニブ、ニロチニブ、レゴラフェニブ、ボスチニブ、ソラフェニブ、ベバ
シズマブ、スニチニブ、セジラニブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、テラチニブ、イ
マチニブメシラート、ブリバニブアラニネート、パゾパニブ、ラニビズマブ、ベタラニブ
、セツキシマブ、パニツムマブ、ベクティビックス、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパ
チニブ、トラツズマブ、ペルツズマブおよびc-Kit阻害剤を含むチロシンキナーゼ阻
害剤;
ビタミンD受容体アゴニスト;
Bcl-2タンパク質阻害剤、例えばオバトクラックス、オブリメルセンナトリウムお
よびゴシポール;
分化抗原群20受容体アンタゴニスト、例えばリツキシマブ;
リボヌクレオチド還元酵素阻害剤、例えばゲムシタビン;
腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド受容体1アゴニスト、例えばマパツムマブ
;
腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド受容体2アゴニスト、例えばレキサツムマ
ブ、コナツムマブ、CS-1008、PRO95780;
5-ヒドロキシトリプタミン受容体アンタゴニスト、例えば、rEV598、キサリプ
ロード(xaliprode)、パロノセトロン塩酸塩、グラニセトロン、Zindol
およびAB-1001;
例えばE7820、JSM 6425、ボロシキシマブおよびエンドスタチンなどのα
5-β1インテグリン阻害剤を含むインテグリン阻害剤;
例えば、デカン酸ナンドロロン、フルオキシメステロン、Android、Prost
-aid、アンドロムスチン、ビカルタミド、フルタミド、アポシプロテロン、アポフル
タミド、酢酸クロルマジノン、Androcur、Tabi、酢酸シプロテロンおよびニ
ルタミドを含むアンドロゲン受容体アンタゴニスト;
アロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール、レトロゾール、テストラクトン、エ
キセメスタン、アミノ-グルテチミドおよびホルメスタン;
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;
さらに、本発明の抗体は、それだけに限らないが、紫外線、酸化処理、熱ショック、標
的および非標的放射線療法、シコニン、高静水圧、腫瘍溶解性ウイルスおよび光線力学療
法を含む免疫原性細胞死を引き起こす治療法と組み合わせることができる;
さらに、本発明の抗体は、それだけに限らないが、スニチニブ、JAK2阻害剤、アン
トラサイクリン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、オキサリプラチンおよびシクロホ
スファミド、標的および非標的微小管不安定化薬(例えば、オーリスタチンおよびメイタ
ンシノイドなど)を含む免疫原性細胞死を引き起こす薬剤と組み合わせることができる;
本発明の化合物はまた、放射線療法および/または外科的介入と併せてがん治療に使用
することもできる。
【0276】
さらに、本発明の抗体は、それ自体または組成物で、研究および診断にまたは当技術分
野で周知の分析基準標準などとして利用することができる;
診断方法
抗CEACAM6抗体またはその抗原結合断片を、CEACAM6発現腫瘍の存在を検
出するために使用することができる。CEACAM6含有細胞または血清および組織生検
標本を含む種々の生物学的試料中に脱落したCEACAM6の存在を、抗CEACAM6
抗体で検出することができる。さらに、抗CEACAM6抗体を、99Tc(または他の
同位体)結合抗体を用いた免疫シンチグラフィーなどの種々のイメージング法に使用する
ことができる。例えば、111In結合抗PSMA抗体を用いて記載されるものと同様の
イメージングプロトコルを用いて、膵臓または卵巣がんを検出することができる(Sod
ee et al.,Clin.Nuc.Med.21:759-766,1997)。
使用することができる別の検出方法は、本発明の抗体を適当な同位体と結合させることに
よる陽電子放出断層撮影法である(Herzog et al.,J.Nucl.Med
.34:2222-2226,1993参照)。
【0277】
医薬組成物および投与
前記障害のいずれかを治療するために、本発明により使用するための医薬組成物を、1
種または複数の生理学的に許容される担体または賦形剤を用いて従来の様式で製剤化する
ことができる。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、治療される障害の種類に応じ
て変化し得る任意の適当な手段によって投与することができる。可能な投与経路には、非
経口(例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下)、肺内および鼻腔内、なら
びに局所免疫抑制治療のために所望であれば、病変内投与が含まれる。さらに、本発明の
抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体を、例えば抗体の用量を減少させて、
パルス注入によって投与することができる。好ましくは、一部は投与が短時間であるか慢
性であるかに応じて、注射、最も好ましくは静脈内または皮下注射によって投与を行う。
投与される量は、臨床症状、個体の体重、他の薬物を投与するかどうかなどの種々の因子
に依存する。当業者は、投与経路が治療される障害または状態に応じて変化することを認
識するであろう。
【0278】
本発明の一実施形態は、それだけに限らないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキ
ストロースおよび水を含む任意の滅菌生体適合性医薬担体で投与することができる、抗C
EACAM6抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体を、単独で、または少な
くとも1種の他の薬剤、例えば、安定化化合物と組み合わせて含む医薬組成物である。さ
らなる実施形態は、CEACAM6結合抗体またはその抗原結合断片と、がんなどのCE
ACAM6関連疾患を治療するのに適したさらなる薬学的に活性な化合物とを含む医薬組
成物である。これらの分子のいずれかを、単独で、または(1又は複数の)賦形剤もしく
は薬学的に許容される担体と混合されている医薬組成物で、他の薬剤、薬物またはホルモ
ンと組み合わせて患者に投与することができる。本発明の一実施形態では、薬学的に許容
される担体が薬学的に不活性である。
【0279】
本発明はまた、医薬組成物の投与に関する。このような投与は、経口的または非経口的
に達成される。非経口送達の方法には、局所、動脈内(腫瘍に直接)、筋肉内、皮下、髄
内、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内または鼻腔内投与が含まれる。有効成分に加えて、
これらの医薬組成物は、賦形剤および薬学的に使用することができる製剤への活性化合物
の加工を容易にする助剤を含む適当な薬学的に許容される担体を含み得る。製剤および投
与の技術に関するさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutic
al Sciences(Ed.Maack Publishing Co,Easto
n,Pa.)の最新版に見出すことができる。
【0280】
経口投与のための薬学的組成物は、経口投与に適した投薬量の当技術分野で周知の薬学
的に許容される担体を用いて製剤化することができる。このような担体は、患者による摂
取のために、医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、ス
ラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
【0281】
所望により、適当な助剤を添加して、錠剤または糖衣錠コアを得た後に、活性化合物を
固体賦形剤と組み合わせ、場合により得られた混合物を粉砕し、顆粒混合物を加工するこ
とによって経口使用のための医薬製剤を得ることができる。適切な賦形剤は、炭水化物ま
たはタンパク質充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビト
ールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモまたは他の植物からのデンプン
;セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカ
ルボキシメチルセルロースナトリウム;ならびにアラビアゴムおよびトラガカントゴムを
含むゴム;ならびにタンパク質、例えばゼラチンおよびコラーゲンである。所望であれば
、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリ
ウムなどの崩壊剤または可溶化剤を添加してもよい。
【0282】
糖衣錠コアに、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、carbopolゲル
、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液ならびに適当な有
機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい濃縮糖溶液などの適切なコーティングを施すこと
ができる。製品識別のため、または活性化合物の量、すなわち投与量を特徴付けるために
、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0283】
経口的に使用することができる医薬製剤には、ゼラチン製の押し込み式カプセル、なら
びにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールのようなコーティングでできた軟質
密封カプセルが含まれる。プッシュフィット(push-fit)カプセルは、充填剤ま
たは結合剤(ラクトースまたはデンプンなど)、潤滑剤(タルクまたはステアリン酸マグ
ネシウムなどの)、および場合により安定剤と混合された有効成分を含むことができる。
軟カプセルでは、活性化合物を、安定剤を含むまたは含まない脂肪油、流動パラフィンま
たは液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体に溶解または懸濁することができる。
【0284】
非経口投与のための医薬製剤には、活性化合物の水溶液が含まれる。注射のために、本
発明の医薬組成物を、水溶液、好ましくは生理学的適合性緩衝液、例えばハンクス液、リ
ンゲル液または生理学的緩衝化生理食塩水中に製剤化することができる。水性注射懸濁液
は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの懸
濁液の粘度を増加させる物質を含んでもよい。さらに、活性化合物の懸濁液を、適当な油
性注射懸濁液として調製することができる。適当な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪
油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルまたはトリグリセリド
など)、またはリポソームが含まれる。懸濁液が、化合物の溶解度を高めて高濃度の溶液
の調製を可能にする適当な安定剤または薬剤を含有してもよい。
【0285】
局所または経鼻投与のために、浸透すべき特定の障壁に適した浸透剤を製剤に使用する
。このような浸透剤は、当技術分野において一般的に知られている。
【0286】
本発明の医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳
化、カプセル化、封入または凍結乾燥工程によって、当技術分野で公知の様式で製造する
ことができる。
【0287】
医薬組成物は、塩として提供することができ、それだけに限らないが、塩酸、硫酸、酢
酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等を含む酸を用いて形成することができる。塩は
、対応する遊離塩基形態である水性または他のプロトン性溶媒中により可溶性である傾向
がある。他の場合では、好ましい製剤が、使用前に緩衝液と混合される、ポリソルベート
などの追加の物質を含んでいてもよい、pH範囲が4.5~7.5の1mM~50mMの
ヒスチジンまたはリン酸塩またはTris、0.1%~2%のスクロースおよび/または
2%~7%のマンニトール中の凍結乾燥粉末であり得る。
【0288】
許容される担体中に製剤化された本発明の化合物を含む医薬組成物を調製した後、これ
らを適当な容器に入れ、示される状態の治療用にラベルを付けることができる。抗CEA
CAM6抗体またはその抗原結合断片を投与するために、このようなラベルには、投与の
量、頻度および方法が含まれるだろう。
【0289】
キット
本発明はさらに、本発明の上記組成物の成分の1種または複数で充填された1つまたは
複数の容器を含む医薬パックおよびキットに関する。ヒト投与用の製品の製造、使用また
は販売の機関による承認を反映する、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売
を規制する政府機関によって規定された形式での通知がこのような(1又は複数の)容器
に伴われ得る。
【0290】
治療上有効用量
本発明における使用に適した医薬組成物は、有効成分が意図された目的、すなわちCE
ACAM6発現を特徴とする特定の疾患状態の治療を達成するのに有効な量で含まれる組
成物を含む。
【0291】
有効用量の決定は十分に当業者の能力の範囲内である。
【0292】
本発明の新規な抗体、またはその抗原結合断片、またはその変異体の治療上有効量を決
定することは、主として、特定の患者の特徴、投与経路、および治療される障害の性質に
依存する。一般的な手引きは、例えばハーモナイゼーション国際会議の刊行物およびRE
MINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,chapte
rs 27 and 28,pp.484-528(18th ed.,Alfonso
R.Gennaro,Ed.,Easton,Pa.:Mack Pub.Co.,1
990)に見出され得る。より具体的には、治療上有効量を決定することは、医薬品の毒
性および効力などの因子に依存する。毒性は、当技術分野で周知の方法を用いて決定する
ことができ、前記参考文献に見出すことができる。効力は、実施例で以下に記載される方
法と併せて同じ手引きを使用して決定することができる。
【0293】
いずれの化合物についても、治療上有効用量を、細胞培養アッセイ、例えば新生細胞、
または動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、ブタまたはサルで最初に推定すること
ができる。動物モデルはまた、望ましい濃度範囲および投与経路を達成するために使用さ
れる。次いで、このような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量および投与経路を決
定することができる。
【0294】
治療上有効用量とは、症状または状態を改善する抗体またはその抗原結合断片の量を指
す。このような化合物の治療効果および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的
な薬学的手順、例えばED50(集団の50%で治療上有効な用量)およびLD50(集
団の50%に対して致死的な用量)によって決定することができる。治療効果と毒性効果
との間の用量比は治療指数であり、比ED50/LD50として表すことができる。大き
な治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られた
データを、ヒト使用のための投与量の範囲を定式化するのに使用する。このような化合物
の投与量は、好ましくは毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内
にある。投与量は、使用される剤形、患者の感受性および投与経路に応じてこの範囲内で
変化する。
【0295】
正確な投与量は、治療される患者を考慮して個々の医師によって選択される。投与量お
よび投与は、十分なレベルの活性部分を提供するまたは所望の効果を維持するように調整
される。考慮に入れることができる追加の因子には、疾患状態の重症度、例えば腫瘍の大
きさおよび位置;患者の年齢、体重および性別;食事、投与の時間および頻度、(1又は
複数の)薬物の組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する耐容性/応答が含まれる
。長時間作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、例
えば、3~4日毎、毎週、2週間に1回、または3週間に1回投与され得る。
【0296】
通常の投与量は、投与経路に応じて、0.1~100000μg、最大で約10gの総
用量まで変化し得る。特定の投与量および送達方法に関する手引きが文献に提供されてい
る。米国特許第4657760号明細書;第5206344号明細書;または第5225
212号明細書を参照されたい。当業者は、タンパク質またはその阻害剤とは異なるポリ
ヌクレオチド用の製剤を使用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチ
ドの送達は、特定の細胞、状態、位置などに特異的である。放射性標識抗体に好ましい比
活性は、0.1~10mCi/mgのタンパク質に及び得る(Riva et al.,
Clin.Cancer Res.5:3275-3280,1999;Ulaner
et al.,2008 Radiology 246(3):895-902)。
【0297】
本発明のさらに好ましい実施形態は以下である:
1. ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合する単離
された抗体またはその抗原結合断片。
【0298】
2. ヒトCEACAM6の成熟細胞外ドメイン(配列番号179の35~320位の
アミノ酸によって表される)およびカニクイザルCEACAM6の成熟細胞外ドメイン(
配列番号177の35~320位のアミノ酸によって表される)に特異的に結合する単離
された抗体またはその抗原結合断片。
【0299】
3. ヒトCEACAM6ドメイン1(配列番号179のアミノ酸35~142によっ
て表される)およびカニクイザルCEACAM6ドメイン1(アミノ配列番号177のア
ミノ酸35~142によって表される)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗
原結合断片。
【0300】
4. ヒトCEACAM6ドメイン1(配列番号179のアミノ酸35~142によっ
て表される)を含むタンパク質およびカニクイザルCEACAM6ドメイン1(アミノ配
列番号177のアミノ酸35~142によって表される)を含むタンパク質に特異的に結
合する単離された抗体またはその抗原結合断片。
【0301】
5. ヒトCEACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5と有意には
交差反応しない、実施形態1から4のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片
。
【0302】
6. ヒトおよびカニクイザルCEACAM6、またはその成熟細胞外ドメイン、また
はそのドメイン1に結合することができ、親和性が一桁以内の一価KDである、実施形態
1から5のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0303】
7. ヒトCEACAM6上への結合について9A6抗体(Genovac/Alde
vron)と競合する実施形態1から6のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合
断片。
【0304】
8. CEACAM6とCEACAM1の相互作用を妨害する、実施形態1から7のい
ずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0305】
9. 対照試料と比較してIFN-γ分泌増加、好ましくは≧1.5倍(1.5倍以上
)の増加を特徴とするより活性化された表現型に向けて腫瘍抗原特異的T細胞のサイトカ
インプロファイルを変化させることができる、実施形態1から8のいずれか1つに記載の
抗体またはその抗原結合断片。
【0306】
10. 免疫調節を誘導することができる、実施形態1から9のいずれか1つに記載の
抗体またはその抗原結合断片。
【0307】
11. 腫瘍抗原特異的T細胞のIFN-γ分泌またはIFN-γ分泌活性化T細胞の
数のいずれかによって測定される腫瘍抗原特異的T細胞のCEACAM6媒介性免疫抑制
を緩和することができる、実施形態1から10のいずれか1つに記載の抗体またはその抗
原結合断片。
【0308】
12. 対照試料と比較してIFN-γおよび/またはIL-2および/またはTNF
-α分泌増加、好ましくはIFN-γおよび/またはIL-2および/またはTNF-α
分泌の≧1.5倍(1.5倍以上)の増加を特徴とするより細胞傷害性および/または活
性化された表現型に向けて腫瘍抗原特異的T細胞のサイトカインプロファイルを変化させ
ることができる、実施形態1から11のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断
片。
【0309】
13. ヒトCEACAM6のエピトープに結合する実施形態1から12のいずれか1
つに記載の抗体またはその抗原結合断片であって、前記エピトープが配列番号179のG
ln60、Asn61、Arg62、Ile63、Val83、Ile84、Gly85
、Thr90、Ser127、Asp128およびLeu129からなる群から選択され
る1個または複数のアミノ酸残基を含む抗体またはその抗原結合断片。
【0310】
14. ヒトCEACAM6のエピトープに結合する実施形態13に記載の抗体または
その抗原結合断片であって、前記エピトープが配列番号179のGln60、Asn61
、Arg62、Ile63、Val83、Ile84、Gly85、Thr90、Ser
127、Asp128およびLeu129のアミノ酸残基を含む抗体またはその抗原結合
断片。
【0311】
15. Ile63Leu突然変異を含むヒトCEACAM6タンパク質に結合し、配
列番号179番号付けによるIle63Phe突然変異を含むヒトCEACAM6タンパ
ク質に結合しない、実施形態13または14に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0312】
16. i.配列番号48を含むH-CDR1、配列番号49を含むH-CDR2およ
び配列番号50を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号52を含むL-C
DR1、配列番号53を含むL-CDR2および配列番号54を含むL-CDR3を含む
軽鎖抗原結合領域、または
ii. 配列番号106を含むH-CDR1、配列番号107を含むH-CDR2およ
び配列番号108を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号110を含むL
-CDR1、配列番号111を含むL-CDR2および配列番号112を含むL-CDR
3を含む軽鎖抗原結合領域、または
iii. 配列番号4を含むH-CDR1、配列番号5を含むH-CDR2および配列
番号6を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号8を含むL-CDR1、配
列番号9を含むL-CDR2および配列番号10を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合
領域、または
iv. 配列番号34を含むH-CDR1、配列番号35を含むH-CDR2および配
列番号36を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号38を含むL-CDR
1、配列番号39を含むL-CDR2および配列番号40を含むL-CDR3を含む軽鎖
抗原結合領域、または
v. 配列番号120を含むH-CDR1、配列番号121を含むH-CDR2および
配列番号122を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号124を含むL-
CDR1、配列番号125を含むL-CDR2および配列番号126を含むL-CDR3
を含む軽鎖抗原結合領域、または
vi. 配列番号24を含むH-CDR1、配列番号25を含むH-CDR2および配
列番号26を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号28を含むL-CDR
1、配列番号29を含むL-CDR2および配列番号30を含むL-CDR3を含む軽鎖
抗原結合領域、または
vii. 配列番号76を含むH-CDR1、配列番号77を含むH-CDR2および
配列番号78を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号80を含むL-CD
R1、配列番号81を含むL-CDR2および配列番号82を含むL-CDR3を含む軽
鎖抗原結合領域、または
viii. 配列番号134を含むH-CDR1、配列番号135を含むH-CDR2
および配列番号136を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号138を含
むL-CDR1、配列番号139を含むL-CDR2および配列番号140を含むL-C
DR3を含む軽鎖抗原結合領域、または
ix. 配列番号148を含むH-CDR1、配列番号149を含むH-CDR2およ
び配列番号150を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号152を含むL
-CDR1、配列番号153を含むL-CDR2および配列番号154を含むL-CDR
3を含む軽鎖抗原結合領域、または
x. 配列番号14を含むH-CDR1、配列番号15を含むH-CDR2および配列
番号16を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号18を含むL-CDR1
、配列番号19を含むL-CDR2および配列番号20を含むL-CDR3を含む軽鎖抗
原結合領域、または
xi. 配列番号62を含むH-CDR1、配列番号63を含むH-CDR2および配
列番号64を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号66を含むL-CDR
1、配列番号67を含むL-CDR2および配列番号68を含むL-CDR3を含む軽鎖
抗原結合領域、または
xii. 配列番号92を含むH-CDR1、配列番号93を含むH-CDR2および
配列番号94を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合領域と配列番号96を含むL-CD
R1、配列番号97を含むL-CDR2および配列番号98を含むL-CDR3を含む軽
鎖抗原結合領域
を含む実施形態1から15のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0313】
17. i.配列番号47によって示される可変重鎖配列と配列番号51によって示さ
れる可変軽鎖配列、または
ii. 配列番号105によって示される可変重鎖配列と配列番号109によって示さ
れる可変軽鎖配列、または
iii. 配列番号3によって示される可変重鎖配列と配列番号7によって示される可
変軽鎖配列、または
iv. 配列番号33によって示される可変重鎖配列と配列番号37によって示される
可変軽鎖配列、または
v. 配列番号119によって示される可変重鎖配列と配列番号123によって示され
る可変軽鎖配列、または
vi. 配列番号23によって示される可変重鎖配列と配列番号27によって示される
可変軽鎖配列、または
vii. 配列番号75によって示される可変重鎖配列と配列番号79によって示され
る可変軽鎖配列、または
viii. 配列番号133によって示される可変重鎖配列と配列番号137によって
示される可変軽鎖配列、または
ix. 配列番号147によって示される可変重鎖配列と配列番号151によって示さ
れる可変軽鎖配列、または
x. 配列番号13によって示される可変重鎖配列と配列番号17によって示される可
変軽鎖配列、または
xi. 配列番号61によって示される可変重鎖配列と配列番号65によって示される
可変軽鎖配列、または
xii. 配列番号91によって示される可変重鎖配列と配列番号95によって示され
る可変軽鎖配列
を含む実施形態1から16のいずれか1つ記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0314】
18. IgG抗体である、実施形態1から17のいずれか1つに記載の抗体。
【0315】
19. i. 配列番号57に相当する重鎖領域と配列番号58に相当する軽鎖領域、
または
ii. 配列番号115に相当する重鎖領域と配列番号116に相当する軽鎖領域、ま
たは
iii. 配列番号43に相当する重鎖領域と配列番号44に相当する軽鎖領域、また
は
iv. 配列番号129に相当する重鎖領域と配列番号130に相当する軽鎖領域、ま
たは
v. 配列番号85に相当する重鎖領域と配列番号86に相当する軽鎖領域、または
vi. 配列番号143に相当する重鎖領域と配列番号144に相当する軽鎖領域、ま
たは
vii. 配列番号157に相当する重鎖領域と配列番号158に相当する軽鎖領域、
または
viii. 配列番号71に相当する重鎖領域と配列番号72に相当する軽鎖領域、ま
たは
ix. 配列番号101に相当する重鎖領域と配列番号102に相当する軽鎖領域
を含む、実施形態18に記載の抗体。
【0316】
20. scFv、Fab、Fab’断片またはF(ab’)2断片である、実施形態
1から17のいずれか1つに記載の抗原結合断片。
【0317】
21. モノクローナル抗体または抗原結合断片である、実施形態1から20のいずれ
か1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0318】
22. ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体または抗原結合断片である、実施形態1から
20のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0319】
23. 実施形態1から22のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を含
む、抗体-薬物複合体。
【0320】
24. 実施形態1から22のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片をコード
する単離された核酸配列。
【0321】
25. 実施形態24に記載の核酸配列を含むベクター。
【0322】
26. 実施形態1から22のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片を発現す
るおよび/または実施形態24に記載の核酸もしくは実施形態25に記載のベクターを含
む単離細胞。
【0323】
27. 原核細胞または真核細胞である、実施形態26に記載の単離細胞。
【0324】
28. 実施形態27に記載の細胞を培養するステップと、前記抗体または抗原結合断
片を精製するステップとを含む、実施形態1から22のいずれか1つに記載の抗体または
抗原結合断片を作成する方法。
【0325】
29. 医薬品として使用するための実施形態1から22のいずれか1つに記載の抗体
または抗原結合断片、または実施形態23に記載の抗体-薬物複合体。
【0326】
30. 診断剤として使用するための実施形態1から22のいずれか1つに記載の抗体
または抗原結合断片、または実施形態23に記載の抗体-薬物複合体。
【0327】
31. がんを治療するための医薬品として使用するための実施形態1から22のいず
れか1つに記載の抗体または抗原結合断片、または実施形態23に記載の抗体-薬物複合
体。
【0328】
32. 疾患を治療するための医薬品の製造における実施形態1から22のいずれか1
つに記載の抗体または抗原結合断片、または実施形態23に記載の抗体-薬物複合体。
【0329】
33. がんを治療するための医薬品の製造における実施形態1から22のいずれか1
つに記載の抗体または抗原結合断片、または実施形態23に記載の抗体-薬物複合体。
【0330】
34. 実施形態1から22のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片、または
実施形態23に記載の抗体-薬物複合体を含む医薬組成物。
【0331】
35. 実施形態34に記載の医薬組成物と1種または複数の治療活性化合物の組み合
わせ。
【0332】
36. CEACAM6の望ましくない存在に関連する障害または状態を治療する方法
であって、有効量の実施形態34に記載の医薬組成物または実施形態35に記載の組み合
わせを、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法。
【0333】
37. ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6に特異的に結合する抗
CEACAM6抗体を調製する方法であって、配列番号177のアミノ酸35~142に
よって表されるカニクイザルCECAM6ドメイン1を含むタンパク質で、動物、好まし
くはマウスを免疫化するステップと、ヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACA
M6に特異的に結合する抗体のアミノ酸配列を決定するステップと、場合により引き続い
てキメラ抗体をヒト化または作成するステップと、前記抗体を組換え発現するステップと
を含む方法。
【0334】
[実施例]
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。実施例は、特定の実施形態を参照して
本発明を説明するためだけに提供される。これらの例示は、本発明の特定の一定の態様を
例示するものであるが、開示される発明の範囲を限定も制限もしない。
【0335】
全ての実施例は、他に詳細に記載されている場合を除いて、当業者に周知であり日常的
である標準的な技術を用いて実施した。以下の実施例の日常的な分子生物学技術は、Sa
mbrook et al.,Molecular Cloning:A Labora
tory Manual,2nd Ed.;Cold Spring Harbor L
aboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,
1989.などの標準的な実験室マニュアルに記載されているように行うことができる。
【0336】
[実施例1]
サルCEACAM6配列およびツール作成
使用される抗原および基準化合物のタンパク質配列の概要を表2に提供する。
【表3】
【0337】
ヒトCEACAMのタンパク質配列はUniProtKB/TrEMBLデータベース
から得た:ヒトCEACAM6(P40199)、ヒトCEACAM1(P13688)
、ヒトCEACAM3(P40198)、ヒトCEACAM5(P06731)、ヒトC
EACAM8(P31997)、ヒトCEACAM19(Q7Z692)。CEACAM
6のアカゲザル(rhesus monkey)(アカゲザル)タンパク質配列も入手可
能であった(F6YVW1)。共通のイントロン/エキソンスプライシング規則を適用す
ること、b)異なるサル/霊長類タンパク質配列と比較すること、およびc)ヒト/霊長
類/サル間のゲノム構造を保存することによって、CEACAM6のカニクイザル(Ma
caca fascicularis)(カニクイザル)タンパク質配列を公的に入手可
能なヌクレオチド配列から推定した。カニクイザルCEACAM6はTPP-4189に
よって表される。
【0338】
CEACAMの組換え細胞外ドメインを、商業的供給源から得た、または社内で作成し
た。この目的のために、細胞外ドメインに、第Xa因子切断部位、ヒトIgG1 Fc断
片ならびにHisタグをC末端に付加し、標準的な一過性トランスフェクション手順を用
いてHEK293細胞で発現させた。タンパク質を、プロテインAおよびサイズ排除クロ
マトグラフィーを介して細胞培養上清から精製した。Fc部分を除去する必要がある場合
、タンパク質を製造者の推奨による第Xa因子(例えば、Hematologic Te
chnologies Inc.HTI No.HCXA-0060の第Xa因子プロテ
アーゼ)で切断し、その後、プロテインAおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって
精製した。ビオチン化タンパク質が必要な場合、市販のビオチン化キットを使用し(例え
ば、Pierce#21347のEZ-Link Amine-PEG3-Biotin
)、ビオチン化の程度を市販のキットによって特徴付けた(例えばPierce#280
05のBiotin Quantitation Kit)。
【0339】
ヒトCEACAM6の単一N末端ドメイン1を、pET28aベクター(Novage
n)を用いて大腸菌BL21 DE3中で6xHis融合タンパク質構築物として作成し
た。37℃でIPTGを用いて一晩誘導した後、組換えタンパク質を単離し、封入体から
リフォールディングした。リフォールディングの前に、封入体を150mM NaCl、
1mM EDTA、0.1%Tween20を含有するTris緩衝液pH8.5中で洗
浄し、8M尿素を含有し、界面活性剤を含有しない同じ緩衝液中で可溶化した。溶液を、
500mMアルギニンを含有する50mM CHES pH9.2中にゆっくり希釈し(
1:10)、4℃で16時間インキュベートした。Superdex 75上の30mM
Tris緩衝液pH8.5、150mM NaCl中での標準ニッケル-NTAクロマ
トグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを行って精製を達成した。
【0340】
9A6マウスIgG1抗体(GM-0509)をGenovacから得て、ヒトIgG
1およびヒトIgG2にキメラ化した。ヒトIgG1またはヒトIgG2のいずれかとし
てのNeo201タンパク質配列の基礎は米国特許出願公開第20130189268号
明細書であった。全ての抗体を、標準的な一過性トランスフェクション手順を用いてHE
K293細胞中で発現させ、プロテインAおよびサイズ排除クロマトグラフィーを介して
細胞培養上清から精製した。
【0341】
様々な全長ヒトCEACAM受容体を発現する安定なHeLa細胞株を作成した。その
ため、以下の受容体の配列をトランスフェクトした:ヒトCEACAM1(TPP-41
85)、ヒトCEACAM3(TPP-4187)、ヒトCEACAM5(TPP-41
88)、ヒトCEACAM6(TPP-4639)、ヒトCEACAM8(TPP-41
90)、ヒトCEACEAM19(TPP-4186)またはカニクイザルCEACAM
6(TPP-4189)。HeLa細胞株は、FACS分析によって確認されたように、
表面上でこれらの受容体のいずれも内因的に発現せず、それぞれのCEACAM受容体の
トランスフェクション後にのみ表面発現を検出することができた。手短に言えば、発現構
築物をUCOEベースのベクター(EMD Millipore Corporatio
n)にクローニングし、HeLa細胞にトランスフェクトした。ハイグロマイシンで選択
した後、適当な抗体(ヒトCEACAM1:R&D Systemsの#MAB2244
1;ヒトCEACAM5:R&D Systemsの#MAB41281;ヒトCEAC
AM6:R&D Systemsの#MAB3934;ヒトCEACAM8:abcam
のab90294;ヒトCEACAM19:Novusの#NBP1-70494;ヒト
CEACAM3:R&D SystemsのAF4166;カニクイザルCEACAM6
:Neo201-hIgG1)を用いて、全細胞溶解物のウエスタンブロッティングなら
びに細胞表面のFACS染色によって適当な安定な抗体をスクリーニングした。
【0342】
[実施例2]
免疫調節性9A6-mIgG1抗体の特性評価
9A6抗体は、免疫調節性であるとして文献に記載されている(Witzens-Ha
rig et al.,Blood 2013 May 30;121(22):449
3-503)。この抗体を、その親和性、他のヒトCEACAMに対するその選択性、サ
ルCEACAM6に対するその交差反応性、CEACAM6上の一定のドメインへのその
特異的結合、および他のヒトCEACAMに対するその選択性に関して特徴付けた。
【0343】
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた親和性測定
定量的結合分析のための表面プラズモン共鳴(SPR)実験を、Series S S
ensor Chips CM5(GE Healthcare Biacore,In
c.)を備えたBiacore T100、Biacore T200またはBiaco
re 4000機器(GE Healthcare Biacore,Inc.)を用い
て行った。結合アッセイを、アッセイ緩衝液HBS-EP+(10mM HEPES p
H7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%界面活性剤P20)を
用いて25℃で行った。アミン結合化学を介してチップ表面に共有結合的に固定された抗
hIgG捕捉抗体で抗体を捕捉した。アミンカップリングキット(GE Healthc
are、製品記号BR-1000-50)からアミンカップリング用試薬(1-エチル-
3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-ヒドロキシ
スクシンイミド(NHS)、エタノールアミン-HCl pH8.5)を使用した。ヒト
抗体捕捉キット(GE Healthcare、BR-1008-39)およびマウス抗
体捕捉キット(GE Healthcare、BR-1008-38)からそれぞれ、抗
hIgG、抗mIgG捕捉抗体および固定化緩衝液(10mM酢酸ナトリウムpH5.0
)を使用した。センサーチップ表面を、0.2MのEDCおよび0.05MのNHSの新
たに調製した溶液をチップ表面上に10μl/分の流量で420秒間通過させることによ
って活性化し、引き続いて抗hIgGまたは抗mIgG捕捉抗体(固定化緩衝液中に25
μg/mlに溶解)を5μl/分の流量で180秒間注入した。過剰の活性化された基を
、エタノールアミンの1モル濃度溶液を10μl/分の流量で420秒間注入することに
よってブロッキングした。
【0344】
CEACAM抗原を分析物として使用してKD値を決定した。各分析物を注入する前に
、抗体を10μl/分の流量で20秒間捕捉した。動態学的親和性測定のために、アッセ
イ緩衝液(上記参照)中の1.56~200nMの間の種々の濃度のヒトCEACAM1
、ヒトCEACAM3、ヒトCEACAM5、ヒトCEACAM6、カニクイザルCEA
CAM6、カニクイザルCEACAM6-ドメイン1タンパク質を、60μl/分の流量
で3分間捕捉抗体上に注入し、解離を10分間監視した。
【0345】
得られたセンサーグラムを二重に参照した、すなわち、インライン基準セル補正、引き
続いてバッファ試料減算を行った。Biacore評価ソフトウェアパッケージ(Bia
core T100/T200/4000評価ソフトウェア、GE Healthcar
e Biacore,Inc.)で実施された一次1:1ラングミュア結合モデルでセン
サーグラムを全体的に当てはめることによって得られた解離(kd)および会合(ka)
速度定数の比に基づいてKD値を計算した。
【0346】
SPRによるサンドイッチ競争実験
SPRによるサンドイッチ競争実験を、上に概説したのと同様の様式で、わずかな修正
を加えて行った。最初に、分析すべき各抗体を、アミンカップリングを介してセンサー表
面に共有結合的に固定化した(詳細は上記参照)。異なる抗体が一定のCEACAM抗原
との結合について競合するかどうかを調べるために、それぞれの抗原を固定化抗体上への
注入によって捕捉させ、その後、競合について試験すべき二次抗体を直ちに注入した。第
2の抗体が、第1の抗体が結合した抗原に結合する場合(+)、両抗体は競合を示さず、
逆も同様であり、第2の抗体の注入によって結合が観察されない場合(-)、両抗体は類
似のエピトープについて競合する。
【0347】
ELISAを用いたドメインマッピング研究
特定のエピトープ情報を解明するために、いくつかのキメラドメイン構築物を設計し、
発現させ、精製した。手短に言えば、野生型ヒトCEACAM6配列を、HEK293細
胞で発現させたヒトIgG1 Fc断片とC末端融合させ、プロテインAおよびサイズ排
除クロマトグラフィー(TPP-1790)を介して上清から精製した。異なるドメイン
キメラを作成するために、Fc融合ヒトCEACAM6において、単一ドメインのヒト配
列を対応するアカゲザル配列(F6YVW1)によって置き換えた。これにより、対照(
TPP-1306)としての野生型アカゲザルFc融合体とともに、3つの異なるドメイ
ンキメラであるhDom1-hDom2-mDom3(TPP-1793)、hDom1
-mDom2-hDom3(TPP-1792)およびmDom1-hDom2-hDo
m3(TPP-1791)が得られた。キメラに加えて、ヒトCEACAM6の単一ドメ
イン1を、大腸菌(TPP-1794)から上記のように作成した。
【0348】
抗体のドメイン特異性のマッピングを、ELISAアッセイを用いて行った:
ELISA分析のために、Fc融合ドメインキメラおよび単一ドメイン1をNunc
MaxiSorbプレート上にコーティングし、SmartBlock溶液でブロッキン
グした。IgG濃度系列(1nM~1000nM)で1時間インキュベートした後、プレ
ートをPBS/Tで洗浄した。CEACAM6ドメイン構築物に結合したIgGの分析を
、抗ヒトIgG(Fab特異的)-ペルオキシダーゼ抗体(A0293、Sigma)を
介した検出を通して達成した。蛍光検出を、標準プロトコルにしたがって、Amplex
Red(A12222、Invitrogen)を用いて行った。
【0349】
ELISAベースの結合分析
ELISAを使用して種々のCEACAMパラログおよびオルソログへの抗体の結合を
特徴付けた。黒色384ウェルプレートを、37℃で1時間、コーティング緩衝液(Ca
ndor)中2μg/mlの種々のCEACAMタンパク質調製物25μl/ウェルでコ
ーティングした。PBS/0.05%Tween-20で1回洗浄した後、ウェルを37
℃で1時間、100%Smart Block(Candor)でブロッキングした。P
BS/0.05%Tween-20で3回洗浄した後、2μg/ml~2ng/mlに及
ぶPBS/0.05%Tween-20/10%Smart Block中の抗体の希釈
系列を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。PBS/0.05%Twe
en-20で3回洗浄した後、適当な二次抗体を添加した。TPP-1173などのヒト
Fcを有するタンパク質を検出するために、抗ヒトIgG HRP(Sigma A01
70)を1:10.000希釈で使用した。TPP-1744などのマウスFcを有する
タンパク質を検出するために、抗マウスIgG HRP(ThermoScientif
ic 31432)を1:10.000希釈で使用した。PBS/0.05%Tween
-20/10%Smart Blockを希釈緩衝液として使用した。プレートを室温で
1時間インキュベートした。3回洗浄した後、プレートをAmplex Red(Lif
e Technologies)で展開し、蛍光を590nmの発光波長で読み取った。
GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用して、4パラメータの非線形
曲線当てはめを用いてEC50値を計算した。
【0350】
結果
ヒトCEACAM6に対する9A6の一価親和性を測定し、サルCEACAM6に対す
るその交差反応性を評価するために、SPR実験を上に概説されるように行った。結果を
表3に示す:
【表4】
【0351】
示されるように、9A6-mIgG1は、組換えヒトCEACAM6に高い親和性(2
2nM)で結合することができる。しかしながら、アカゲザルCEACAM6への結合は
検出されなかった。比較のために、Neo201-hIgG1も試験した。この抗体は、
ヒトCEACAM6とサルCEACAM6の両方に対する高親和性結合を示した。要約す
ると、9A6は、ヒトCEACAM6に対する高親和性結合を示すが、サルCEACAM
6に対して交差反応性ではない。
【0352】
CEACAM6上の9A6の結合ドメインをマッピングするために、異なるヒト/サル
キメラに対する結合を、上に概説されるようにELISAによって評価した。Neo20
1-hIgG1(TPP-1173)と比較することができるように、9A6をヒトIg
G1(TPP-1745)にキメラ化した。結果を表4に示す:
【表5】
【0353】
9A6は野生型ヒトCEACAM6、およびアカゲザルCEACAM6のドメイン2ま
たは3を使用するキメラに結合することができる。しかしながら、9A6はアカゲザルC
EACAM6のドメイン1または野生型アカゲザルCEACAM6を使用するキメラに結
合することができない。これと一致して、9A6はヒトCEACAM6の単一ドメイン1
に結合することができる。対照的に、Neo201-hIgG1は、ヒトCEACAM6
の単一ドメイン1を除いて、試験した全ての形態に結合する。結論として、9A6はヒト
CEACAM6のN末端ドメイン1に結合する。
【0354】
結果を実証するために、競合実験を上に概説するように行った。結果を表5に示す。
【表6】
【0355】
表5から明らかなように、9A6-mIgG1およびNeo201-hIgG1は、ヒ
トCEACAM6への結合について互いに競合しない。これはドメイン1の外側に存在す
るNeo201の公開エピトープと一致する。
【0356】
異なるCEACAM6オルソログに対する9A6の選択性を分析し、Neo201-h
IgG1との比較を可能にするために、9A6をhIgG1(TPP-1745)にキメ
ラ化した。上に概説されるように行ったELISA結合実験で、表6に列挙されるEC
5
0値が得られた:
【表7】
【0357】
ヒトCEACAM6に対する9A6の高親和性結合が確認された。アカゲザルCEAC
AM6を用いたSPR実験と一致して、9A6もカニクイザルCEACAM6に結合でき
ない。しかしながら、ヒトCEACAM3またはCEACAM5への結合は観察されなか
ったので、9A6はCEACAM6に対して選択的である。
【0358】
対照的に、Neo201-hIgG1は、ヒトCEACAM6に対する同様の高親和性
結合を示し、カニクイザルCEACAM6に対して交差反応性でさえある。Neo201
-hIgG1はヒトCEACAM5に対する高親和性結合も示すので、これは低下した選
択性で起こる。
【0359】
[実施例3]
CEACAMのタンパク質配列アラインメント
ヒトCEACAM6の成熟細胞外形態(UniProtKB/Swiss-Prot:
P40199.3のアミノ酸35~320)は、異なるドメイン:N末端ドメイン1(w
ww.uniprot.orgによる、UniProtKB/Swiss-Prot:P
40199.3のアミノ酸35~142)、ドメイン2(www.uniprot.or
gによる、UniProtKB/Swiss-Prot:P40199.3のアミノ酸1
45~232による)およびドメイン3(www.uniprot.orgによる、Un
iProtKB/Swiss-Prot:P40199.3のアミノ酸237~314)
からなる。目的は、カニクイザルCEACAM6に対して交差反応性であるが、CEAC
AM6のN末端ドメイン1に対して選択的で高親和性の抗体を同定することであったため
、1個の分子に所望の特性を組み合わせる可能性を評価した。
【0360】
この目的のために、ヒトCEACAM6のN末端ドメイン1のタンパク質配列を、標準
設定を用いてBlastpアルゴリズム(NCBI)を用いて他のタンパク質と比較して
、最も関連性の高いCEACAM6ホモログを同定した。ヒトCEACAM6(UniP
rotKB/Swiss-Prot:P40199.3のアミノ酸35~320)、ヒト
CEACAM1(UniProtKB/Swiss-Prot:P13688.2のアミ
ノ酸35~428)、ヒトCEACAM3(UniProtKB/Swiss-Prot
:P40198.2のアミノ酸35~155)、ヒトCEACAM5(UniProtK
B/Swiss-Prot:P06731.3のアミノ酸35~417)およびカニクイ
ザル(カニクイザル)CEACAM6(TPP-4189のアミノ酸35~320)の(
部分)成熟細胞外ドメインを、Phylosopherソフトウェア(Genedata
)の「Global Alignment-Wilbur and Lipman(fa
st)」を用いて整列させた。アライメントを
図1に示す。ヒトCEACAM6のN末端
ドメイン1の他のN末端ドメインに対する配列同一性割合(アラインメントによる)を、
Vector NTI Software(Life Technologies)を用
いて決定した。結果を表7に示す。
【表8】
【0361】
図1の配列アライメントは、細胞外領域全体にわたるヒトCEACM6およびヒトCE
ACAM3、ヒトCEACAM5およびヒトCEACAM1のタンパク質配列の非常に高
度の類似性を示している。標的領域(ヒトCEACAM6のドメイン1)は、他のCEA
CAMと特に類似しており、これは表7にも反映されている。ヒトCEACAM6のパラ
ログは、カニクイザルのオルソログよりもヒトCEACAM6にはるかに類似している。
実際、一次配列のN末端領域には、ヒトおよびカニクイザルCEACAM6では同一であ
るが、他のヒトパラログのこの位置のアミノ酸とは異なる位置が2つしかない(
図1中で
アスタリスクで示される)。
【0362】
結論として、選択的であるがサルCEACAM6に対して依然として交差反応性である
ヒトCEACAM6のN末端ドメイン1に対する高親和性抗体を同定することは非常に困
難である。
【0363】
[実施例4]
ファージディスプレイによる抗体作成
ヒト抗CEACAM6抗体を同定するために、DYAXからのヒトFab-ファージラ
イブラリーFAB-300による種々の選択を本質的に以前に記載されたように実施した
(Hoet et al.,2005;Huang et al.,2006)。表8に
要約されるように、ストレプトアビジン-ビーズ上にコーティングされたヒトおよびカニ
クイザル(TPP-1436およびTPP-2443)由来のビオチン化Fc-タグ組換
えCEACAM6ならびにヒト腫瘍細胞株KPL-4(Kurebayashi et
al.,Br J Cancer.1999 Feb;79(5-6):707-17)
(これは細胞表面上で多量の内因性標的タンパク質を発現している)を用いて、最大4ラ
ウンドのファージ選択による異なる戦略を使用した。さらに、CEACAM5(TPP-
1438;hC5)およびCEACAM1(TPP-1437;hC1)(オフターゲッ
ト)または組換えヒトIgG1-Fc(Fc)に対するバインダーの枯渇を、タンパク質
標的の各選択の前に示されるように含めた。例えば、戦略Aでは、ヒトCEACAM1コ
ーティングビーズ(hC1)上の枯渇後に、ヒトCEACAM6(hC6)上で第1ラウ
ンドのパニングを行った。得られた産物を分割し、一方の部分をヒトCEACAM6上の
第2および第3ラウンドの選択のために使用した。他方の部分を、KPL-4細胞上の第
2ラウンドのパニング、ヒトCEACAM6上の第3ラウンド、およびKLP-4細胞上
の最後の第4のパニングラウンドに使用した。戦略Cでは、マウスmAb 9A6-mI
gG1(TPP-1744)を用いて特異的溶出ステップを行った。
【表9】
【0364】
異なるラウンドの選択から濃縮したファージプールを、CEACAM6発現細胞に対す
る記載されている(Hoet et al.,Nat Biotechnol.2005
Mar;23(3):344-8)Fab-ファージELISAまたはFACS分析に
よって標的およびオフターゲットに対するバインダーについてスクリーニングした。好都
合なプロファイルを有するファージプールを、遺伝子IIIの除去およびその後のELI
SAにおける可溶性FabのELISAスクリーニングのために選択した。得られたsF
abヒットのDNAを配列決定し、KPL-4細胞でのFACS分析によって特有の代表
を細胞結合について特徴付けた(表9)。いくつかの戦略では、本発明によるファージバ
インダーをIgGに直接再クローニングした。
【表10】
【0365】
ヒトCEACAM1(TPP-1437)、ヒトCEACAM5(TPP-1438)
およびヒトCEACAM6(TPP-1436)のビオチン化変異体に対する、ファージ
ディスプレイ選択され、精製されたFab断片(表9のリスト参照)の結合を、Octe
t RED384機器(Pall ForteBio Corp.)を用いてバイオレイ
ヤー干渉法(biolayer interferometry)によって分析した。ビ
オチン化抗原をストレプトアビジン(SA)バイオセンサー(ForteBio Par
t number 18-5019)にロードし、アッセイ緩衝液(0.1%(w/v)
BSA、0.02%(v/v)Tween20および0.05%(v/v)アジ化ナトリ
ウムを補足したPBS、ForteBio Part番号18-5032)へのベースラ
イン平衡ステップ後、アッセイ緩衝液に希釈したFabの200nMの最終濃度への結合
を300秒間監視し、引き続いて300秒の解離期を監視した。
【0366】
表9からの対応する精製Fabフラグメントも、ヒトCEACAM6への結合を示した
が、ヒトCEACAM5にもヒトCEACAM1にも結合は示さなかった。
【0367】
FabがヒトCEACAM6への結合について9A6と競合するかどうかを分析するた
めに、競合実験を行った。ここでは、ビオチン化ヒトCEACAM6(TPP-1436
)をSAバイオセンサーにロードし、Fabの結合反応を、9A6-mIgG1(TPP
-1744)で飽和したロードCEACAM6で得られたFabの結合反応と比較した(
実施例1に概説)。9A6の存在下での結合応答が有意に減少または消失する場合、これ
は、試験されたFabが9A6のエピトープと類似のエピトープに結合するという強い示
唆である。
【0368】
驚くべきことに、試験した全てのFabが、ヒトCEACAM6への結合について9A
6と競合することができた。
【0369】
さらなる特性評価のために、Fab配列をヒトIgG1フォーマットに再フォーマット
化した。
【0370】
組換えヒトCEACAM6(TPP-1436)に対して再フォーマット化された抗体
の親和性(一価K
D)を、実施例2に記載される実験手順と同様にSPRによって決定し
た。Biacore評価ソフトウェア(Biacore T200/4000評価ソフト
ウェア)パッケージで実施された一次1:1ラングミュア結合モデルまたは定常状態親和
性分析でセンサーグラムを全体的に当てはめることによってセンサーグラムを評価した。
結果を表10に示す:
【表11】
【0371】
表10から明らかなように、抗体はかなり低い一価親和性を示し、最低値(最高親和性
)はTPP-1679については76nMであった。最も高い一価親和性を示す3つのI
gGを、ELISA結合実験(実施例2に示されるプロトコルと同様に行った)で、カニ
クイザルCEACAM6に対するそれらの選択性および交差反応性に関して分析した。
【表12】
【0372】
要約すると、かなり低い一価親和性を有する抗体が得られた。これは、他のパラログへ
の結合を回避することによるトレードオフとなり得るだろう。それでも、選択性プロファ
イルはしばしば不十分である(表11のTPP-1679およびTPP-1669参照)
。試験した全ての抗体から、TPP-1678が組換えカニクイザルCEACAM6に対
して非常にわずかな交差反応性を有する唯一のものである(表11参照)。
【0373】
結論として、さらなる成熟なしにファージディスプレイを用いて得られた治療上有用な
抗CEACAM6抗体はなかった。
【0374】
[実施例5]
ファージディスプレイ由来抗体の抗体成熟
所望の親和性、選択性および交差反応性プロファイルを有する抗体を得るために、いく
つかのファージディスプレイ由来抗体を親和性成熟させた。
【0375】
そのため、TPP-1669、TPP-1678およびTPP-1679の全てのCD
Rアミノ酸位置を個々に無作為化した。得られた変異体を発現させ、細胞上清中で結合E
LISAによって、複数のCEACAMファミリーメンバー(ヒトCEACAM6、カニ
クイザルCEACAM6、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5)への結合につ
いて評価した。
【0376】
TPP-1669については、他のヒトCEACAMファミリーメンバーへの結合を同
時に増強することなくカニクイザルCEACAM6への結合を増強する個々の突然変異を
同定することはできなかった。
【0377】
TPP-1679については、他のヒトCEACAMファミリーメンバーへの結合を付
随して増強することなくヒトCEACAM6への結合を増強するいくつかの個々の突然変
異が同定され、全ての可能な順列を含む組換えライブラリーを作成した。対応する変異体
をヒトIgG2アイソタイプとして発現させ、精製し、実施例2に記載される実験手順と
同様にSPRにより複数のCEACAMファミリーメンバーへの結合について評価した。
表12は、この方法によって得られた選択された抗体の特性を要約している。
【表13】
【0378】
表12で得られた結果は、親和性および選択性の増強が十分可能であることを示してい
る。しかしながら、これはまた、ヒトCEACAM6に対する一価親和性に少なくとも1
桁以内のカニクイザルCEACAM6交差反応性バインダーを得るという課題を強調して
いる。
【0379】
TPP-1678については、他のヒトCEACAMファミリーメンバーへの結合を付
随して大きく増強することなくヒトCEACAM6およびカニクイザルCEACAM6へ
の結合を増強するいくつかの個々の突然変異が同定され、いくつかの順列を含む組換えラ
イブラリーを作成した。対応する変異体をヒトIgG2アイソタイプとして発現させ、精
製し、実施例2に記載される実験手順と同様にSPRにより複数のCEACAMファミリ
ーメンバーへの結合について評価した(表13に要約)。
【0380】
これらの抗体の結合特性を、結合ELISA(一価結合、ビオチン化CEACAMタン
パク質)によっても決定した:抗ヒトIgG(Sigma、I2136)のコーティング
緩衝液(Candor)中1:440希釈液を用いて黒色384ウェルMaxisorp
プレート(Nunc)を37℃で1時間コーティングした。PBS/0.05%Twee
n-20で1回洗浄した後、プレートを37℃で1時間、100%Smart Bloc
k(Candor)でブロッキングした。3回洗浄後、2μg/mlの関連する抗体をP
BS/0.05%Tween-20/10%SmartBlock中のプレートに添加し
た。プレートを室温で1時間インキュベートした。3回洗浄した後、関連するビオチン化
CEACAMタンパク質のPBS/0.05%Tween-20/10%SmartBl
ock中の一連の希釈系列を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。3回
の洗浄後、PBS/0.05%Tween-20/10%SmartBlock中の1μ
g/mlのストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Sigma、S5512)を添加し
、プレートを室温で30分間インキュベートした。3回洗浄した後、プレートをAmpl
ex Red(Life Technologies)で展開し、蛍光を590nmの発
光波長で読み取った。GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用して、
4パラメータの非線形曲線当てはめを用いてEC50値を計算した。
【0381】
実質的に改善された親和性、選択性および交差反応性プロファイルを有する変異体を、
この方法によって得られた選択された抗体について表13および表14に要約されるよう
に同定した。
【表14】
【表15】
【0382】
結論として、TPP-1678前駆体を使用して、カニクイザルCEACAM6に対し
て真の交差反応性であり、CEACAM6に対して選択的であるヒトCECACAM6に
対するわずかな高親和性ヒト抗体を得ることが可能であった:TPP-3707のヒトC
EACAM6への結合は対応するEC50値を比較することによって判断した場合、ヒト
CEACAM3への結合よりも約730倍優れている(TPP-3705については62
0倍)。
【0383】
[実施例6]
マウス免疫化による抗体作成
適用CEACAM6に対するマウスモノクローナル抗体を作成するために、Balb/
cマウスに施用した免疫原の配列に基づいて2つの異なる免疫化戦略を実施した(表15
の戦略AおよびB)。各戦略内で、マウスを、表15に示されるように、5ラウンドの注
射にわたって、抗原の足蹠または腹腔内施用を介して免疫化した。戦略Aは、カニクイザ
ルCEACAM6-Domain1による免疫化に焦点を当てていたが、戦略Bは、免疫
原としてのヒトとカニクイザル由来の全長細胞外CEACAM6の組み合わせに基づいて
いた。
【0384】
足蹠による免疫化は、1週間に1回、1μgの抗原を5回注射することに基づいていた
。腹腔内経路による免疫化は、隔週4回のIP注射(抗原10μg)、引き続いて静脈内
注射による1回の追加免疫に基づいていた。
【表16】
【0385】
最後の注射の4日後、マウスのリンパ節または脾臓細胞を標準的な方法(例えば、Ko
hler and Milstein Nature.1975 Aug 7;256(
5517):495-7)によって融合した。得られたハイブリドーマクローンのスクリ
ーニングを、ビオチン化抗原およびオフターゲットタンパク質を用いてELISAで行っ
た(表16に列挙)。より詳細には、マイクロタイタープレートを4℃で一晩、ヤギ抗マ
ウス抗体でコーティングした。翌日、プレートを洗浄し、室温で2時間5%BSAでブロ
ッキングし、引き続いて別の洗浄ステップを行った。ハイブリドーマ上清20μlをビオ
チン化抗原と共に室温で1時間インキュベートし、混合物をコーティングウェルに移し、
引き続いてインキュベーションステップ(室温で1時間)を行った。プレートを洗浄した
後、抗ストレプトアビジン-HRPコンジュゲートを室温で30分間添加した。最後に、
ウェルを洗浄し、TMB50μlを添加して発色反応を生じさせ、プレートリーダーに記
録した。
【表17】
【0386】
驚くべきことに、戦略Aのみが、ヒトおよびカニクイザルCEACAM6交差反応性な
らびに選択性に関して好ましいプロファイルを示すクローンをもたらした。さらに、いく
つかの種特異的クローンが両戦略から得られた。
【0387】
ELISAによって陽性に選択された候補を、少なくとも3回のクローニングラウンド
にわたってサブクローニングし、プロテインAクロマトグラフィーにより腹水からより多
量に作成した。
【0388】
マウス免疫化由来の抗体を、細胞の状況においてCEACAM6への結合についても特
徴付けた。ヒトまたはカニクイザルCEACAM6を過剰発現するHeLa細胞を、ハイ
ブリドーマまたは精製されたmIg由来の上清のいずれかを用いたFACS実験に使用し
た(実施例1参照)。トランスフェクションされていないHeLa細胞は陰性対照として
役立った。表17はELISAおよびFACS分析から同定された候補のプロファイルを
要約している:
【表18】
【0389】
得られたマウス抗体を、精製mIgGとしてSPR分析によりその一価親和性(KD)
、他のヒトパラログに対する選択性およびカニクイザルCEACAM6に対する交差反応
性の程度に関してより厳密に特徴付けた。
【0390】
SPRは実施例2に記載される実験手順と同様に実施した。
【0391】
【0392】
TPP-2969およびTPP-2970については未解決の矛盾が観察された:最初
のELISAおよびFACS分析では、これらはカニクイザルCEACAM6特異的であ
るように思われたが、後のSPR実験では、組換えヒトCEACAM6への結合も示した
。
【0393】
要約すると、カニクイザルCEACAM6 N末端ドメイン1(APP-325)によ
るマウスの免疫化は、驚くべきことに、真にヒト-カニクイザルCEACAM6交差反応
性であり、同時に他のヒトパラログに関して選択的であるいくつかの抗体(例えば、TP
P-3186、TPP-2971、TPP-3187)をもたらした。これらの親和性は
、治療目的の許容できる範囲内であるが、そのマウス起源および関連する免疫原性は、ヒ
トにおける治療用途を妨げる。
【0394】
[実施例7]
抗体のヒト化
ヒトにおける治療用途に適した抗体を作成するために、選択されたマウス抗体をヒト化
した。
【0395】
マウスハイブリドーマ由来抗体の選択された配列を、それぞれのハイブリドーマ細胞株
の抗体cDNAを配列決定することによって決定した(表17参照)。配列決定の結果に
よると、TPP-3100とTPP-3186は同一である。TPP-3101は、単一
重鎖であるが、2つの軽鎖配列を生じた。TPP-2971とTPP-3187は非常に
類似していた。これらは4個のアミノ酸が異なっていた(
図2参照)。
【0396】
抗体TPP-2971およびTPP-3187の解読されたマウスVHおよびVL配列
を、Kabatの定義にしたがってヒト生殖系列フレームワークにCDRを移植すること
によってヒト化した。例外として、HCDR2は部分的に移植した。このCDRはKab
atの定義によると非常に長く(16個のアミノ酸)、最初の9個のアミノ酸のみを移植
した。これらのアミノ酸は、Chothiaの定義によるとHCDR2と同一であるHC
DR2の一部を表す(KabatおよびChothiaによるCDRの定義については、
Andre C.R.Martin,“Protein sequence and s
tructure analysis of antibody variable d
omains” in Antibody Engineering(Springer
Lab Manuals),Eds.:Duebel,S.and Konterma
nn,R.,Springer-Verlag,Heidelberg参照)。
【0397】
ヒト生殖系列フレームワークは、マウスフレームワーク部分FW1、FW2、FW3お
よびFW4のヒトVHおよびVLならびにJエレメント生殖系列配列のセットとの類似性
検索に基づいて選択した。VLについてはIGKV1-9*01およびIGKJ2*01
(同一性69.6%、FW1;86.7%、FW2;71.9%、FW3;80.0%、
FW4)ならびにVHについてはIGHV2-70*01およびIGHJ6*01((同
一性:73.3%(TPP-2971)および70.0%(TPP-3187)、FW1
;85.7%、FW2;71.9%、FW3;90.9%、FW4))であった最良一致
生殖系列配列(CDRを除く)にマウスCDRを移植した。類似性検索に適用された生殖
系列配列は、VBASE2データセットから得た(Retter I,Althaus
HH,Munch R,Muller W:VBASE2,an integrativ
e V gene database.Nucleic Acids Res.2005
Jan 1;33(Database issue):D671-4)。最も類似した
生殖系列配列に割り当てられた名称は、IMGTシステムからとった(Lefranc,
M.-P.,Giudicelli,V.,Ginestoux,C.,Jabado-
Michaloud,J.,Folch,G.,Bellahcene,F.,Wu,Y
.,Gemrot,E.,Brochet,X.,Lane,J.,Regnier,L
.,Ehrenmann,F.,Lefranc,G.and Duroux,P.IM
GT(登録商標),the international ImMunoGeneTic
s information system(登録商標).Nucl.Acids Re
s,37,D1006-D1012(2009);doi:10.1093/nar/g
kn838))。
【0398】
TPP-2971由来のヒト化配列の2つの変異体:TPP-3310およびTPP-
3714を作成した。TPP-3310のVHでは、マウス始祖と比較してJエレメント
は変化しないままであったが、TPP-3714のVHでは、Jエレメントが完全にヒト
生殖細胞様にされていた(
図3参照)。グリコシル化部位も不対合システインもヒト化配
列中に見られなかった。
【0399】
さらに、TPP-3187由来のヒト化配列の2つの変異体:TPP-3820および
TPP-3821を作成した(
図4参照)。TPP-3714と比較して、TPP-38
20のVHは、HFW1の30位にセリンの代わりにトレオニンおよびHFW2の46位
にアラニンの代わりにグリシンを含んでいた一方、VLはLCDR3の92位および93
位に2個のセリン残基の代わりに2個のアスパラギン残基を含んでいた。これらの4つの
アミノ酸交換は、TPP-3187およびTPP-2971のマウス始祖配列間の相違を
反映している。
【0400】
TPP-3821の可変ドメインVHはTPP-3714と同一であるが、VLはTP
P-3714と比較してLCDR3の92位および93位に2個のセリン残基の代わりに
2個のアスパラギン残基を含んでいた。これらの2つのアミノ酸交換は、TPP-318
7およびTPP-2971のマウス始祖配列間のCDRの相違を反映している。グリコシ
ル化部位も不対システイン残基もTPP-3820およびTPP-3821の配列中に見
られなかった。
【0401】
キメラ化抗体およびヒト化抗体の親和性決定およびサンドイッチ競合実験を、実施例2
に記載される実験手順と同様にSPRによって行い、結果を表19および表20に要約す
る:
【表20】
【表21】
【0402】
選択性および交差反応性分析を、実施例5で提供されるプロトコルと同様に結合ELI
SA(一価、ビオチン化CEACAMタンパク質)によって行った。得られた結果を表2
1に要約する。
【表22】
【0403】
表19の結果は、TPP-2971、TPP-3186およびTPP-3187が、9
A6-hIgG2と同一または類似のヒトCEACAM6上のエピトープについて競合す
ることを示している。表20および表21の結果は、CEACAM6に選択的であり、C
EACAM6パラログには結合しないが、真の交差反応性を有するヒトおよびカニクイザ
ルCEACAM6に対する高親和性結合を強調している。
【0404】
結論として、ヒト化は完全に成功し、抗体はマウス前駆体よりもずっと高い親和性を示
し、ヒトにおける治療用途可能にした。
【0405】
[実施例8]
細胞上の選択的CEACAM6結合
真正抗原に対する抗CEACAM6抗体の結合および選択性を実証するために、抗体を
、FACS実験によって種々の細胞株の細胞表面上の天然CEACAM6への結合につい
て試験した。
【0406】
CEACAM6陰性であることが示されたHeLa野生型細胞の結合と比較して、種々
のCEACAM受容体(ヒトCEACAM1、ヒトCEACAM3、ヒトCEACAM5
、ヒトCEACAM6、ヒトCEACAM8、ヒトCEACAM19およびカニクイザル
CEACAM6-実施例1参照)でトランスフェクトしたHeLa細胞のパネルについて
CEACAM6選択性を試験した。EC50値を、ヒトおよびカニクイザルCEACAM
6トランスフェクトHeLa細胞への結合について決定した。結果を表22に示す。
【0407】
FACS実験のために、HeLa野生型細胞を、RPMI-1640、10%FCSで
培養し、CEACAM受容体トランスフェクトHeLa細胞はさらに0.5%ゲンタマイ
シン(ストック10mg/ml、Fa.PAA)および200μg/mlハイグロマイシ
ンB(ストック50mg/ml、Invitrogen)を受容した。細胞をPBS w
/o Ca2+/Mg2+で3回洗浄し、EDTA解離緩衝液(Gibco)で非酵素的
に培養プレートから剥がした。細胞を冷FACS緩衝液(PBS w/o Ca2+/M
g2+および熱不活性化3%FCS)で洗浄し、Countess機(Invitrog
en)を用いて計数した。1ウェル当たり105個の細胞を蒔き、プレートシェーカー上
でそれぞれの一次抗体(5μg/ml)と4℃で1時間、インキュベートした。次いで、
細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し(400g、5’)、二次抗体(PE-抗マウスまた
は抗ヒトIgG、1:150希釈、Dianova#115-115-164、#109
-115-098)を含有する100μlに再懸濁し、プレートシェーカー上4℃でさら
に1時間インキュベートした。2回洗浄した後、細胞をFACS緩衝液100μlに再懸
濁し、FACS Canto II機(Beckton Dickinson)またはF
ACS Array(Beckton Dickinson)で分析した。
【0408】
EC
50分析のために、一次抗体を、0.1nM~100nMの範囲の増加濃度で使用
した。半最大結合値(EC
50)を、中央蛍光強度シグナルを濃度(対数スケール)に対
してプロットすることによって決定した。データの曲線当てはめは、Graph Pad
プリズム分析ソフトウェアを用いて行った。
【表23】
【0409】
抗CEACAM6抗体を、FACS分析によってCEACAM6を内因的に発現する異
なるがん細胞株への結合についても試験した。細胞株を、アメリカ培養細胞系統保存機関
(ATCC)によって提供されるプロトコルにしたがって培養した。観察された結合シグ
ナルは、非結合アイソタイプ対照が蛍光シグナルをシフトさせなかったため特異的であっ
た。半最大結合(EC50)値は、低ナノモル範囲にある(表23)。
【表24】
【0410】
結論として、マウスTPP-2971、TPP-3100、TPP-3186およびT
PP-3187抗体ならびにヒトTPP-3820、TPP-3821、TPP-331
0、TPP-3714およびTPP-3707抗体について、ヒト真正細胞表面CEAC
AM6への選択的結合が証明された(他のヒトパラログへの結合はない)。ヒトCEAC
AM6に対するこれらの抗体の結合は、ヒトCEACAM6発現細胞株上の9A6に匹敵
する。TPP-3310については、ヒト腫瘍細胞株上の内因的発現CEACAM6への
9A6-hIgG2と同様の結合が実証された。
【0411】
本発明の抗体はまた、一桁未満~サブナノモルの結合EC50範囲においてヒト受容体
と同等の結合活性でカニクイザルCEACAM6に結合する一方、細胞表面上のカニクイ
ザルCEACAM6への9A6の結合は100nMまで検出されなかった。この結果は本
発明の抗体についてのヒトおよびカニクイザルCEACAM6に対する真の交差反応性を
示す一方、9A6は明らかにヒトCEACAM6に優先的に結合する。
【0412】
[実施例9]
熱安定性分析
0.137mLのセル体積を有するVP-キャピラリーDSCシステム(MicoCa
l Inc.)を用いる示差走査熱量測定(DSC)を用いて、IgGの熱安定性を調べ
た。全ての試料をDPBS pH7.4中0.5mg/mLの最終濃度に希釈し、タンパ
ク質を含まない緩衝液対照を基準として使用した。120℃/時間の走査速度で20℃か
ら120℃まで試料を走査した。得られたサーモグラムを、緩衝液基準走査の減算によっ
て補正し、Origin 7.0データ分析(OriginLab Corp.)を用い
てタンパク質濃度について正規化した。DSCデータをOriginに付属の非線形回帰
ルーチン(「Non-2-state:Cursor init」)に当てはめることに
よって融点を得た。
【表25】
【0413】
測定されたIgGの全てがFabドメイン内で高い熱安定性を示す。TPP-3310
およびTPP-3714の熱安定性は著しく高く、TPP-3470(9A6-hIgG
2)の熱安定性をはるかに上回っている。高い安定性はVH3フレームワークを有する抗
体と関連しているので(Honegger et al.,2009,Protein
Eng Des Sel.22(3):121-134)、これは驚くべきことである。
【0414】
高い熱安定性は、TPP-3470(9A6-hIgG2)(より優れた安定性、凝集
傾向が少なく、免疫原性のリスクが低い)と比較して、TPP-3310およびTPP-
3174のより優れた薬学的適合性を示す。
【0415】
[実施例10]
CEACAM6とCEACAM1との間の相互作用の妨害
CEACAM1が、活性化T細胞上トランスでCEACAM6の結合パートナーであり
得ると仮定されている(Witzens-Harig et al.,Blood 20
13 May 30;121(22):4493-503):CEACAM間のトランス
およびシスホモ親和性およびヘテロ親和性相互作用は、例えばCEACAM1とCEAC
AM5またはCEACAM6とCEACAM8の間で記載されている。CEACAM1は
活性化T細胞上に提示され、CEACAM1連結およびリン酸化がSH2ドメイン含有タ
ンパク質チロシンホスファターゼ1(SHP1)を動員する。SHP1は、ZAP70を
脱リン酸化し、TCRシグナル伝達の阻害をもたらす。それにより、CEACAM1連結
が、活性化後10分以内にT細胞活性化の早期阻害をもたらす。
【0416】
さらに、結腸直腸がん細胞に対するナチュラルキラー(NK)細胞応答の阻害における
CEACAM5の役割が報告されており(Zheng et al.,PLoS One
.2011;6(6):e21146)、これはNK細胞上で発現される阻害性CEAC
AM1に対するそのヘテロ親和性結合に基づき得るだろう。
【0417】
そのため、直接的CEACAM6-CEACAM1相互作用を、結合ELISAで組換
えタンパク質を用いて試験した。予備的実験でCEACAM1とCEACAM6の穏やか
であるが特異的な相互作用を検出することができることを確立した後、以下のプロトコル
を使用した:黒色384ウェルMaxisorb plates(Nunc)を37℃で
1時間、コーティング緩衝液(Candor)中1μg/mlのCEACAM1(R&D
Systems、TPP-1437)でコーティングした、または対照としてコーティ
ングしないままにした。PBS/0.05%Tween-20で1回洗浄した後、ウェル
を37℃で1時間、100%Smart Block(Candor)でブロッキングし
た。別々のプレートで、対象となる抗体のPBS/0.05%Tween-20、10%
SmartBlock中希釈系列を、2μg/mlのCEACAM6-Fc(TPP-1
790)と共に室温で1時間インキュベートした。ブロッキングしたプレートを3回洗浄
し、予め形成した抗体-CEACAM6-複合体を添加した。プレートを室温で1時間イ
ンキュベートした。3回洗浄した後、抗ヒトIgG HRP(Sigma A1070)
を1:10.000で添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。3回洗浄し
た後、プレートをAmplex Red(Life Technologies)で展開
し、蛍光を590nmの発光波長で読み取った。
【表26】
【0418】
表25に示されるように、TPP-3688(Neo201-hIgG2)を除いて試
験した全ての抗体がCEACAM6とCEACAM1の相互作用に競合することが可能で
あった。
【0419】
結論として、この知見は、a)活性化T細胞上のCEACAM1が、T細胞の阻害をも
たらすCEACAM6の可能な相互作用パートナーである、b)CEACAM6のN末端
D1ドメインがCEACAM1とCEACAM6の間の相互作用に関係している、および
c)本発明の抗体がCEACAM6-CEACAM1相互作用を妨害することができると
いう仮説に一致する。
【0420】
[実施例11]
インビトロでのCEACAM6の免疫抑制活性の阻害
腫瘍細胞に対するCEACAM6の免疫抑制機能が最近インビトロ(Witzens-
Harig et al.,Blood 2013 May 30;121(22):4
493-503)およびインビボ(Khandelwal et al.,Poster
Abstract 61,Meeting Abstract from 22nd
Annual International Cancer Immunotherap
y Symposium October 6-8,2014,New York Ci
ty,USA)で研究された。市販の9A6抗体(Genovac/Aldevron)
は、CEACAM6の免疫抑制活性を阻害し、インビトロでのT細胞によるサイトカイン
分泌の増強およびインビボでの抗腫瘍効果をもたらすことができることが示された。
【0421】
CEACAM6の免疫抑制活性に対する本発明の抗体の効果を試験するために、モデル
腫瘍細胞株とモデル腫瘍抗原特異的T細胞クローンの共培養実験を行った:
腫瘍-抗原特異的T細胞を、Brackertzら(Brackertz et al
.,Blood Cancer J.2011 Mar;1(3):e11)に記載され
る手順によって作成した。手短に言えば、サバイビン特異的CD8+T細胞を、CD8特
異的磁気活性化細胞選別を介して末梢単核細胞から単離した。単離したHLA-A2-C
D8+T細胞を、10μgのHLA制限ペプチドエピトープサバイビン95-104(E
LTLGEFLKL)を負荷した同種異系HLA-A2+樹状細胞で繰り返し刺激した。
刺激後、増殖T細胞をHLA-A2/サバイビン95-104多量体(APC、ProI
mmune Limited、#F391-4A-Eで標識したA*02:01 391
LMLGEFLKLサバイビン96-104)で染色し、FACS選別し、96ウェル
プレートでの限界希釈によってクローニングした。
【0422】
2×105個のT細胞クローンと種々のドナー(100~150Gy)からの5×10
7個の照射PBMC(30Gy)および1×107個の照射LCL(EBV感染サル細胞
株(B95/8、ATTC)による健常ドナーからの末梢血B細胞のEBV形質導入によ
って作成されたこれらのBリンパ芽球様細胞株、Brackertz et al.,B
lood Cancer J.2011 Mar;1(3):e11 and Diss
ertation Andreas Moosmann,Ludwig-Maximil
ians-University Munich,Germany,2002に記載)で
構成されるフィーダー細胞を、グルタミン(Sigma-Aldrich)、10%ヒト
血清(ヒトAB血清、Valley Biomedical,Inc、#HP1022)
、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を含む
RPMI-1640培地40ml中、37℃および5%CO2で培養することによって、
T細胞クローン増殖を行った。50U/mlのIL-2(Proleukin、Nova
rtis、#1003780)、2.5ng/mlのIL-15(rhIL-15-CF
R&D#247_IL-025/CF)および30ng/mlの抗ヒトCD3抗体(O
KT3 eBiosciences 16-0037-85)の存在下で14日間増殖を
培養した。KSヒト乳がん細胞株(Dr.BrigitteGuckel(Univer
sity of Tubbingen、ドイツ)から入手)を、10%FCS(FBS
Superior、Biochrom)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含
むDMEM(Sigma-Aldrich)中37℃および5%CO2で培養した。
【0423】
インビトロでのCEACAM6の免疫抑制機能に対する抗CEACAM6抗体の調節活
性を分析するために、サバイビン-ペプチド特異的CD8+T細胞クローンをCEACA
M6+、HLA-A2+およびサバイビン+ヒト乳がん細胞株KSと共に共培養し、T細
胞活性についての読み取りとしてのIFN-γ分泌を、IFN-γ ELISpotまた
はIFN-γ ELISAのいずれかによって測定した。
【0424】
共培養のために、KS腫瘍細胞を、PBS-EDTAを用いて5分間非酵素的に剥離し
、遠心分離し、洗浄し、計数した。細胞濃度をX-Vivo-20(Lonza)で1×
105個細胞/mlに調節し、細胞を抗CEACAM6抗体またはアイソタイプ適合対照
抗体を用いて氷上で10分間前処理した。インキュベーションステップの後、10000
個のKS標的細胞を、IFN-γ ELISpotまたはU-96-Well ELIS
Aプレートにそれぞれ3連で直接播種した。その間に、サバイビン-ペプチド特異的T細
胞を採取し、X-Vivo-20で洗浄し、KS標的細胞上に示される細胞数に播種した
。腫瘍細胞、抗CEACAM6抗体およびT細胞の共培養物を37℃で20~40時間イ
ンキュベートした。IFN-γ ELISpotプレート(MABTECH:ヒトインタ
ーフェロンγ#3420-3PT、抗体mAB1-D1K抗IFNg、mAB7-B6-
1-ビオチン、ステプトビビン-ALP、BCIP/NBT+ELISpot#3650
用基質-10についてのELISpotアッセイ)およびIFN-γ ELISA(BD
ヒトIFN-γ ELISA Set#555142)を製造者の指示にしたがって展開
した。ELISpotプレートをC.T.L.ELISpotプレートリーダーで計数し
、ELISAプレートの光学濃度をTecan Infinite M200プレートリ
ーダーで測定した。陽性対照TPP-3470(9A6-hIgG2)がアイソタイプ適
合抗体対照と比較して統計学的に有意である場合、実験を有効であるとみなした。
【0425】
抗CEACAM6抗体の存在下でのKS腫瘍細胞とサバイビンペプチド特異的CD8
+
T細胞の共培養は、抗CEACAM6抗体で処理していない、またはアイソタイプ適合対
照抗体で処理した試料と比較して、T細胞によるIFN-γ産生の統計学的に有意な増加
をもたらした(
図5)。
【0426】
結論として、カニクイザル交差反応性抗体TPP-3310、TPP-3707および
TPP-3323は、腫瘍抗原特異的T細胞のCEACAM6媒介性免疫抑制を、サバイ
ビン-ペプチド特異的CD8+T細胞のIFN-γ分泌またはIFN-γ分泌活性化T細
胞の数のいずれかによって測定されるように、TPP-3470(9A6-hIgG2)
と同程度に緩和することができた。
【0427】
[実施例12]
抗CEACAM6抗体で処理したT細胞によって分泌されるサイトカイン/ケモカイン
プロファイルの分析
改善された細胞傷害性および有効な抗腫瘍免疫応答に向けたヒトT細胞サイトカイン/
ケモカインプロファイルに対する抗CEACAM6抗体の効果を試験するために、モデル
腫瘍細胞株およびモデル腫瘍抗原特異的T細胞クローンの共培養実験のLuminexベ
ースのマルチプレックスサイトカイン分析を行った。
【0428】
サバイビン-ペプチド特異的CD8+T細胞クローンを作成し、実施例11に記載され
るようにインビトロで増殖させた。腫瘍細胞培養およびELISA共培養を実施例11に
記載されるように行った。
【0429】
20時間の共培養の後、プレートを1400rpmで10分間遠心分離し、上清を回収
した。製造業者の指示にしたがって、BioPlex100システム(Bio-Rad)
でMILLIPLEXヒトサイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネル-プレミックス3
8 Plex分析物(Merck Millipore#HCYTMAG-60K-PX
38)用いて多重分析を行った。Bio-Plex Manager 6.0を用いて標
準曲線および濃度を計算した。陽性対照TPP-3470(9A6-hIgG2)がアイ
ソタイプ適合抗体対照と比較して1.5倍超増加した場合、実験を有効であるとみなした
。
【0430】
サバイビン-ペプチド特異的T細胞とKS腫瘍細胞の共培養における本発明の抗体によ
るCEACAM6の遮断によって、アイソタイプ適合対照で処理した対照試料と比較して
IFN-γ、IL-2およびTNF-α分泌の1.5倍超の増加がもたらされる(
図6)
。
【0431】
結論として、カニクイザル交差反応性抗体TPP-3310およびTPP-3707は
、TPP-3470(9A6-hIgG2)と同程度のLuminexベースの多重分析
によって測定されるIFN-γ、IL-2およびTNF-αの増加を特徴とするより細胞
傷害性および活性化表現型に向けてサバイビン-ペプチド特異的CD8+T細胞のサイト
カインプロファイルを変化させることができる。
【0432】
[実施例13]
養子T細胞移植KSモデルにおける抗腫瘍効果
抗CEACAM6抗体(9A6;Genovac/Aldevron)の抗腫瘍効果は
、腫瘍抗原特異的ヒトT細胞をインビトロで増殖させ、抗CEACAM6抗体と共にヒト
異種移植片腫瘍を有するヌードマウスに同時注入する養子ヒトT細胞移植系においてイン
ビボで研究されている(Khandelwal et al.,Poster Abst
ract 61,Meeting Abstract from 22nd Annua
l International Cancer Immunotherapy Sym
posium October 6-8,2014,New York City,US
A)。
【0433】
抗腫瘍効果に対する本発明の抗体の効果を試験するために、以下の養子T細胞移動実験
を行った:
サバイビン-ペプチド特異的CD8+T細胞クローンを作成し、実施例11に記載され
るようにインビトロで増殖させた。
【0434】
6~8週齢の雌NOD-Scidマウス(NOD.CB17-Prkdcscid/J
;Charles River、フランス)に2×106個のKS腫瘍細胞を皮下注射し
た(実施例11参照)。16日目にマウスの無作為化を実施し、40mm2未満の腫瘍表
面を有するマウスを除外した(=腫瘍がない)。マウス(1群当たりn=8~10匹のマ
ウス)を23日目および27日目に5×106個のサバイビンペプチド特異的T細胞クロ
ーンの静脈内養子移植で処理した。抗CEACAM6抗体TPP-3740、TPP-3
707、TPP-3310またはそれぞれのアイソタイプ適合対照抗体200μgを、2
2日目、24日目、26日目および28日目に腹腔内投与した。対照群には、T細胞およ
び抗体の代わりにPBSを注射した。皮下に成長した腫瘍をキャリパーで測定し、次いで
、表面を式「長さ×幅」を用いて計算した。ビヒクル処理対照群のマウスが試験の全期間
を通じて腫瘍表面および腫瘍体積の安定した有意な増加を示した実験のみを有効とみなし
た。実験結果は、制御が困難なパラメータの影響を受けている可能性がある:KS細胞株
のインビボ増殖が可変的であることが分かっただけでなく、マウス中のヒトT細胞の生存
、腫瘍へのT細胞浸潤もかなりの変動を示した。
【0435】
試験した抗CEACAM6抗体と組み合わせたサバイビン-ペプチド特異的T細胞の養
子移植は、適合アイソタイプ対照またはPBS対照群を注射したT細胞と比較して、腫瘍
量を減少させた(
図7)。同様の効果が、TPP-3740(9A6-hIgG2)を用
いて観察された。
【0436】
結論として、カニクイザル交差反応性抗体TPP-3310およびTPP-3707は
、サバイビンペプチド特異的CD8+T細胞およびKS腫瘍を用いた養子T細胞移植モデ
ルにおいて、TPP-3470(9A6-hIgG2)と同程度の抗腫瘍効果を示した。
【0437】
[実施例14]
CEACAM6陽性である腫瘍細胞株および腫瘍組織
CEACAM6は、CEACAM6免疫調節抗体による治療の潜在的標的適応症である
種々のがんで発現される。そのため、異なる起源の種々のがんを表すがん細胞株を、FA
CS分析によってCEACAM6発現について試験した。結果を表26に示す。
【0438】
アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)などの公的組織バンクから取得したがん細
胞株を、提供者の指示にしたがって培養した。
【0439】
細胞をPBS w/o Ca
2+/Mg
2+で3回洗浄し、EDTA解離緩衝液(Gi
bco)で非酵素的に培養プレートから剥がした。細胞を冷FACS緩衝液(PBS w
/o Ca
2+/Mg
2+および熱不活性化3%FCS)で洗浄し、細胞カウンタCou
ntess機(Invitrogen)を用いて計数した。1ウェル当たり10
5個の細
胞を蒔き、プレートシェーカー上4℃で1時間、マウスモノクローナル抗体9A6(TP
P-1744;5μg/ml)または精製NA/LEマウスIgG1アイソタイプ対照抗
体(BD Pharmingen#553447)と共にインキュベートした。次いで、
細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し(400g、5’)、PE標識抗マウス二次抗体(1
:150希釈、Dianova#115-115-164)を含有する100μlに再懸
濁し、プレートシェーカー上4℃でさらに1時間インキュベートした。2回洗浄した後、
細胞をFACS緩衝液100μlに再懸濁し、FACS Canto II機(Beck
ton Dickinson)またはFACS Array(Beckton Dick
inson)で分析した。観察された結合シグナルは、非結合アイソタイプ対照が蛍光シ
グナルをシフトさせなかったため特異的であった(表26)。
【表27】
【0440】
結論として、CEACAM6は、CEACAM6免疫調節抗体および他の応答修飾因子
(例えば、ペプチド、小分子、人工足場結合剤など)による治療の潜在的な標的適応症を
構成する種々のがん(例えば、結腸直腸がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺
がん(SCLC)、膵臓がん、胃がん、乳がんおよび多発性骨髄腫)を表す細胞株で発現
される。
【0441】
[実施例15]
ヒトおよびカニクイザルCEACAM6の単一ドメイン1への結合
本発明の抗体がヒトおよびカニクイザルCEACAM6の単離された単一ドメイン1に
結合することができるかどうかを試験するために、SPR実験を実施例1のように行った
。
【0442】
カニクイザルCEACAM6(TPP-2453)の単一のN末端ドメイン1を、TP
P-1794と同様にして実施例1に記載されるように作成した:
【表28】
【0443】
配列番号180(TPP-2453)
MQLTIESRPFNVAEGKEVLLLAHNLPQNTLGFNWYKGER
VDAKRLIVAYVIGTQQTTPGPAHSGREMIYSNASLLIQNV
TQNDTGSYTLQAIKEDLVTEEATGRFWVYPELGSGSHHHH
HHHH
ヒトおよびカニクイザルCEACAM6の組換え単一ドメイン1に対する本発明の抗体
の親和性(一価K
D)を、実施例1に記載される実験手順と同様にSPRによって決定し
、表27に示す。
【表29】
【0444】
結論として、本発明の抗体は、同等の親和性でCEACAM6のヒトとカニクイザルN
末端ドメイン1の両方に結合する。
【0445】
[実施例16]
FabフラグメントAPP-1574との複合体であるヒトCEACAM6単一N末端
ドメイン1のX線結晶構造
TPP-3310に関連するFab断片(APP-1574と呼ばれる)に結合したヒ
トCEACAM6(TPP-1794;配列番号169)の単一N末端ドメイン1の結晶
構造を決定した。
【0446】
Fab断片の産生を促進するために、TPP-3310をヒトIgG1変異体(TPP
-5468と呼ばれる、表28参照)として作成した。TPP-5468のパパイン切断
およびその後の精製により、APP-1574が得られる。このFab断片は、TPP-
3310の可変ドメイン(VHおよびVL)を含む(表28参照)。
【表30】
【0447】
実施例1に詳述されるように、CEACAM6ドメイン1を大腸菌から発現させ、リフ
ォールディングした。抗体をパパインで消化し、引き続いて複合体を形成することによっ
てFab断片を作成した。次いで、タンパク質結晶学を使用して、APP-1574 F
abに結合したヒトCEACAM6の単一N末端ドメイン1について原子分解を生じさせ
てエピトープを定義した。
【0448】
タンパク質作成
ヒトCEACAM6(TPP-1794;配列番号169)の単一N末端ドメイン1を
、実施例1に記載されるように6xHis融合タンパク質構築物として作成した。複合体
形成の前に、タンパク質を6.7mg/mlに濃縮した。
【0449】
TPP-5468(ヒトIgG1)の対応するFab断片を、プロテアーゼパパインに
よる切断によって得た。抗体1mgを、消化緩衝液(20mMリン酸Na pH7.0、
10mM EDTA、20mMシステイン-HCl)中の固定化パパイン(Thermo
Fisher#20341)50μlと混合し、連続的に攪拌しながら37℃で4時間イ
ンキュベートした。固定化パパインを遠心分離によって除去し、得られたFc断片および
非切断IgGをMabSelectSURE(GE Healthcare、#11-0
034-89 AC)を通過させることによって除去した。フロースルー中のFab断片
を、Superdex 75上の30mM Tris緩衝液pH8.5、150mM N
aCl中でのサイズ排除クロマトグラフィーを介してさらに精製し、7.2mg/mlに
濃縮した。
【0450】
複合体形成のために、精製されたFab断片およびヒトCEACAM6 N末端ドメイ
ン1を、4℃で1時間、1ヒトCEACAM6 N末端ドメインに対して1Fab対1.
4ヒトCEACAM6 N末端ドメイン1の比で混合した。得られたタンパク質複合体を
、Superdex 75上の30mM Tris緩衝液pH8.5、150mM Na
Cl中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって単離し、結晶化前に21.2mg/m
lにさらに濃縮した。
【0451】
結晶化と構造決定
ヒトCEACAM6の単一N末端ドメイン1とFab断片APP-1574の複合体を
21.2mg/mlに濃縮し、20000gで10分間遠心分離し、結晶化についてスク
リーニングした。データ収集のための結晶を、20℃でハンギングドロップ蒸気拡散法に
よって成長させた。詳細には、複合体0.2μlを、100mMクエン酸三ナトリウムp
H4.9、19%(w/v)PEG4000および10%(v/v)イソプロパノールを
含有するリザーバー溶液0.2μlと混合した。次いで、液滴を同じリザーバー溶液80
μlに対して平衡化させた。データ収集の前に、結晶を液体窒素中でフラッシュ冷却した
。
【0452】
BESSY II Synchrotron Source(Helmholtz Z
entrum Berlin)のビームライン14-1で回折データを収集し、XDS(
Kabsch,W.XDS.Acta Cryst.D66,125-132(2010
))を用いて処理した。ヒトCEACAM6単一N末端ドメイン1-Fab断片APP-
1574複合体のデータを、セル寸法a=64.7Å、b=65.2Å、c=78.6Å
、α=66.1°、β=87.2°およびγ=88.5°の空間群P1で2.7Åに処理
した。複合体の構造を、ヒトCEACAM6単一N末端ドメイン1およびFabの組織内
構造を検索モデルとして使用して、PHASER(McCoy AJ et al,J
Appl Cryst(2007).40,658-674)を用いて分子置換によって
解析した。最終モデルをCOOT(Emsley,P.et al,Acta Crys
t D66,486-501(2010))で構築し、CCP4(Winn,M.D.e
t al.Acta.Cryst.D67,235-242(2011))を用いて精製
した。
【0453】
エピトープを、CCP4プログラム群でNCONTによって同定されたFab断片AP
P-1574((Winn,M.D.et al.Acta.Cryst.D67,23
5-242(2011))および表29に列挙)の任意の原子まで5Å以内の原子を含有
するヒトCEACAM6単一N末端ドメイン1の残基として定義した。非対称単位(結晶
中の最小の特有の単位)にヒトCEACAM6単一N末端ドメイン1-Fab断片APP
-1574複合体の2つのコピーが存在する。両方のコピーに共通する抗体接触残基のみ
をエピトープ残基として列挙する。
【0454】
エピトープ
ヒトCEACAM6単一N末端ドメイン1-Fab断片APP-1574複合体の結晶
構造を使用して、CEACAM6上のFab断片APP-1574のエピトープを同定し
た。Fab断片APP-1574によるヒトCEACAM6単一N末端ドメイン1上の相
互作用表面は、いくつかの連続および不連続(すなわち、非隣接)配列;すなわち、表2
9に詳述される残基Pro59、Gln60、Asn61、Arg62、Ile63、G
ly64、Val83、Ile84、Gly85、Thr86、Gln88、Thr90
、Pro91、Ile125、Ser127、Asp128およびLeu129(配列番
号179;TPP-4639による番号付け)によって形成される。
【0455】
抗体から3.6Å以下離れた少なくとも1つの原子を有する残基が極めて密接に直接接
触している。これらの残基は、Gln60、Asn61、Arg62、Ile63、Va
l83、Ile84、Gly85、Thr90、Ser127、Asp128およびLe
u129(配列番号179;TPP-4639による番号付け)である。
【0456】
これらの残基は、Fab断片APP-1574によって認識される代表的な三次元立体
配座エピトープを形成する(
図9および10)。
【表31】
【0457】
CEACAM6N末端ドメイン1残基を配列番号169のように番号付けした。抗体残
基を、その直鎖アミノ酸配列(配列番号183および配列番号184)に基づいて番号付
けし、対応する鎖を標識する(重鎖については「H」、軽鎖については「L」)。ヒトC
EACAM6単一N末端ドメイン1残基が、FabフラグメントAPP-1574の任意
の原子まで5Åの少なくとも1個の原子を有することがここで示され、潜在的な水媒介相
互作用を説明した。
【0458】
エピトープを慎重に分析すると、ヒトCEACAM6のイソロイシン63(配列番号1
79による)がエピトープの中心部であることが明らかになる。イソロイシン側鎖は、A
PP-1574と相補的な良好な形状を有する。モデル化は、カニクイザルCEACAM
6のこの位置にあるロイシンが立体的に収容され、相互作用を妨げないことを示している
。これは、カニクイザルCEACAM6活性に対する保持された結合活性を説明し、ヒト
-カニクイザル交差反応の基礎となる。対照的に、この位置のフェニルアラニン(ヒトC
EACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5のように)は立体的に収容
できず、結合活性の喪失をもたらす。これがCEACAM6選択性の基礎となる。
【0459】
それにより、イソロイシン-63(配列番号179による)の認識は、標的CEACA
M間の最も重要な「選択性チューナー」となる。ヒトCEACAM6のAPP-1574
認識様式は、標的とオフターゲットとの間の重要な残基の差異を最適に利用する。N末端
ドメイン1との複合体のTPP-1679のFab断片(選択性プロファイルが不十分で
ある、実施例4参照)の構造の以前の分析も同様に、イソロイシン63(配列番号179
による)を潜在的選択性スイッチとして同定した(データは示さず)。しかしながら、T
PP-1679による分子認識機構が異なり、イソロイシン63(配列番号179による
)が結合部位周辺に位置するため、利用するのが困難であった。
【0460】
要約すると、エピトープを形成する他の残基(表29)に加えて、CEACAM6の選
択性および交差反応性決定残基であるイソロイシン63(配列番号179による)との結
合も最適に利用してよく、フェニルアラニンではなく、その位置にあるロイシンの収容を
可能にするバインダーは、CEACAM6選択性であるが、同時にヒト-カニクイザルC
EACAM6交差反応性である。
【0461】
突然変異誘発
結合試験における構造分析の所見および予測を実証するために、ヒトCEACAM6の
N末端ドメイン1の以下の突然変異体を作成した:
【表32】
【0462】
タンパク質を実施例1に記載されるように大腸菌で発現させ、リフォールディングし、
精製した。ドメイン1野生型タンパク質および2つの単一突然変異に対する比較結合活性
を、ELISA法によって決定した。PBS中1.5ug/mlタンパク質溶液を、38
4 Nunc MaxiSorpプレート(Sigma、P6491)に一晩コーティン
グした。プレートをPBS/Tで洗浄し、Smart block(CANDOR Bi
oscience GmbH、113125)でブロッキングした。その後、TPP-3
310、TPP-1679およびアイソタイプ対照抗体の希釈系列をウェルに加えた。P
BS/Tで洗浄した後、結合した抗体を抗ヒトIgG Fc POD(Sigma、A0
170)および10μ MAmplex Red溶液(Thermo、A12222)で
検出した。陽性結合シグナルを、蛍光(励起535nm/発光590nm)を介して検出
した。表32は、ドメイン1野生型タンパク質に対するTPP-3310の結合活性およ
びイソロイシン63(配列番号179のような)のロイシン(カニクイザルのような)へ
の突然変異を示す。アミノ酸位置63(配列番号179のような)のフェニルアラニン(
ヒトCEACAM1、ヒトCEACAM3およびヒトCEACAM5のような)への突然
変異は、結合能力の完全な喪失をもたらす。CEACAM6 N末端ドメイン1タンパク
質の効率的なリフォールディングの実証のための対照として、表31で試験した全ての抗
原と類似の程度の結合が観察されたTPP-1679を使用した(実施例4参照)。
【表33】
【0463】
結論として、同時に他のヒトパラログに関して選択的である真のヒト-カニクイザルC
EACAM6交差反応性抗体TPP-3310は、ヒトCEACAM6 N末端ドメイン
1の文脈で、I63L置換(配列番号179による)(カニクイザルCEACAM6残基
に相当する)を許容することができたが、I63F置換(配列番号179による)(ヒト
パラログCEACAM1、CEACAM3およびCEACAM5の対応する残基)を許容
することはできず、X線結晶学から得られた結果と一致し、本発明者らの予測を実証した
。
【0464】
[実施例17]
CEACAM6抗体存在下でのT細胞媒介性細胞傷害の分析
T細胞媒介性細胞傷害に対する抗CEACAM6抗体の効果を、CEACAM6陽性腫
瘍細胞および異なる供給源由来のT細胞との共培養による細胞傷害性実験で試験した。こ
れらのT細胞はCD8+サバイビンT細胞または膵臓がん由来の患者由来T細胞のいずれ
かであった。これらの腫瘍細胞死滅実験のために、インピーダンスに基づく細胞傷害性ア
ッセイ(xCELLigence)システムを使用した。
【0465】
サバイビン-ペプチド特異的CD8+T細胞クローンを作成し、実施例11に記載され
るようにインビトロで増殖させた。膵臓がん腫瘍浸潤リンパ球細胞株(TIL)を、外科
手術からの腫瘍組織の新鮮な初代培養から単離した。要約すると、新鮮な初代組織材料を
小片に切断し、6000IU/IL-2の2%ヒト血清アルブミン、2.5μg/ml
Fungizone、20μg/mlゲンタマイシン、1%ペニシリン/ストレプトマイ
シンを含有するX-Vivo-15培地(Lonza)中小皿で10~18日間培養した
。その後、上清から細胞を採取し、凍結または「急速拡大プロトコル」(REP)に直接
使用した。TILの急速拡大のために、凍結したTILを穏やかに解凍し、6000IU
/ml IL-2を含む完全リンパ球培地CLM RPMI-1640(Life Te
chnologies#21875034)、10%ヒトAB血清(MILAN Ana
lytica#000083)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Te
chnologies#15140122)、1% ml HEPES(Life Te
chnolgies#15630056)、0.01%β-メルカプトエタノール[スト
ック50mM](Life Technologies#31350010)中で1日間
、0.6×106個細胞/mlで培養した。TILを採取し、G-REX-100 Fl
asks(Wilson Wolf #80500S)中、400ml REP培地(3
000IU/ml IL-2および30ng/ml OKT-3抗体(eBioscie
nce #16-0037-85)を含有する50%AIM-V無血清培地(Gibco
#12055091)と混合した50%CLM)で、3人の異なるドナーからの60G
y照射フィーダーPBMCと1:100の比で拡大させた。Jin et al.,J
Immunother.2012 Apr;35(3):283-92に記載されている
ように、細胞を培養し、分裂させた。14日後、細胞を採取し、アリコートで凍結した。
共培養細胞傷害性アッセイの前に、TILの個々のアリコートを緩やかに解凍し、600
0IU/ml IL-2を含有するCLM中で2日間およびIL-2を含まないCLM中
で1日間、0.6×106個細胞/mlで培養した。
【0466】
腫瘍細胞を、標準的なプロトコルおよび提供者の指示にしたがって培養した
T細胞媒介性細胞傷害を、インピーダンスに基づく細胞傷害性アッセイ(xCELLi
gence)システムで分析した。このラベルフリーアッセイシステムでは、細胞傷害性
を、約100~150時間の長い時間(リアルタイム)にわたって直接かつ連続的に測定
する。接着腫瘍細胞を96ウェルEプレート(E-Plate VIEW 96 PET
;ACEA Biosciences#ID:H000568)の底部の微小電極に取り
付け、これによりこれらの電極の電気インピーダンスが変化する。これを無次元の「セル
インデックス」の増加として監視する。腫瘍細胞の接着(約24時間)後、抗体およびT
細胞をウェルに添加し、T細胞が細胞傷害活性を及ぼすと、腫瘍細胞の溶解および電極か
らの剥離が生じる。この剥離はウェルのインピーダンスを変化させ、「セルインデックス
」またはT細胞添加の時点に正規化された「セルインデックス」である「正規化セルイン
デックス」の減少として測定される。T細胞単独では電極の電気インピーダンスに影響を
与えず、したがって腫瘍細胞の細胞溶解のみが測定される。(Peper et al,
J Immunol Methods.2014 Mar;405:192-8)
最初の実験で、本発明者らは、このアッセイ系で観察される腫瘍細胞死滅がT細胞用量
依存性であり、異なる腫瘍細胞:T細胞の比および異なるT細胞源(サバイビンペプチド
特異的CD8+T細胞、膵臓がん患者由来のTIL)に働くことを確立した。
【0467】
次いで、本発明者らは、サバイビンT細胞の細胞溶解効果に対する抗CEACAM6抗
体の効果を試験した。そのため、サバイビンペプチド特異的T細胞を抗CEACAM6
mAbと一緒に種々の細胞比で添加する前に、CEACAM6陽性乳がんKSまたはCE
ACAM6トランスフェクト結腸がんHCT-116(HCT116-hC6)を96ウ
ェルプレートに24時間添加した。共培養を約100時間の期間続けた。これらの実験で
、本発明者らは、両細胞株上、約21%の抗CEACAM6抗体TPP-3310および
TPP-3470が存在下で改善されたT細胞依存性細胞傷害性を観察した。結果を1つ
の細胞比について例示的に
図11Aおよび
図11Bに示す。注目すべきことに、サバイビ
ン-ペプチド特異的CD8
+T細胞単独で、45~62%の高い細胞傷害効果を既に示し
ており、これはおそらく培養されたT細胞の予備活性化によるので、バックグラウンド細
胞溶解とみなされる。要約すると、以前のELISAアッセイで観察されたIFN-γ分
泌の増加は、共培養の約24時間以内の細胞傷害性効果となる。本発明者らは、抗CEA
CAM6抗体によるCEACAM6陽性腫瘍細胞の治療が、両腫瘍細胞株のサバイビンペ
プチド特異的CD8
+T細胞媒介性死滅改善をもたらすと結論づける。
【0468】
その後の実験で、本発明者らは、膵臓がんの患者由来TIL細胞の細胞溶解活性に対す
るCEACAM6抗体の効果を試験した。そのため、CEACAM6陽性肺がん細胞株H
CC2935を96ウェルプレートに添加し、24時間培養した。次いで、CEACAM
6抗体(30μg/ml)および二重特異性抗体抗CD3x抗EPCAM IgG(0.
25ng/ml)の存在下で異なる比でTILを添加して(Marme et al.,
Int J Cancer.2002 Sep 10;101(2):183-9;Sa
lnikov et al.,J Cell Mol Med.2009 Sep;13
(9B):4023-33)HLA非依存性T細胞媒介性腫瘍細胞死滅を可能にした。抗
CEACAM6抗体TPP-3310およびTPP-3470の存在下で、本発明者らは
、アイソタイプ適合対照抗体の存在下で観察されなかったインピーダンスの完全な低下を
観察した。インピーダンスの低下は、標的細胞株HCC2935の完全な細胞溶解性死滅
として解釈される。さらなる実験で、CEACAM6抗体TPP-3310の効果が用量
依存性であり、0.62~0.21μg/mlのIC
50値が決定されることを実証する
ことができた。
図12はTIL-12の結果を例示的に示している。
【0469】
要約すると、これらの実験は、本発明のCEACAM6抗体が、免疫抑制受容体CEA
CAM6を有効に遮断し、CEACAM6陽性腫瘍細胞に対してモデルT細胞だけでなく
、患者由来の腫瘍浸潤リンパ球の細胞傷害効果を改善する可能性を有することを示してい
る。
【0470】
【配列表】