(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】嚥下可能な薬物送達デバイスを使用する腸管の管腔中への送達のための抗インターロイキン抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221130BHJP
A61J 3/07 20060101ALI20221130BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221130BHJP
A61M 31/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61J3/07 A
A61J3/07 Z
A61K9/48
A61M31/00
(21)【出願番号】P 2017557954
(86)(22)【出願日】2016-05-09
(86)【国際出願番号】 US2016031548
(87)【国際公開番号】W WO2016183040
(87)【国際公開日】2016-11-17
【審査請求日】2019-05-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-25
(32)【優先日】2015-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514002891
【氏名又は名称】ラニ セラピューティクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イムラン, ミル
(72)【発明者】
【氏名】コルポル, ラディカ
(72)【発明者】
【氏名】トー, エレイン
(72)【発明者】
【氏名】ハシム, ミル
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】冨永 みどり
【審判官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520812(JP,A)
【文献】特表2014-520600(JP,A)
【文献】特表2013-515576(JP,A)
【文献】特表昭56-032413(JP,A)
【文献】Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology,2014年,Vol.7,p.251-259
【文献】生化学,2011年,Vol.83, No.1,p.13-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
A61K39/00-39/44
A61L29/00-29/18
A61J 1/00-19/06
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体形態の抗インターロイキン抗体(AI抗体)を含む治療製剤であって、前記製剤は、固体
の組織貫入部材として成形され、前
記組織貫入部材は、前記組織貫入部材に連結されたアクチュエータが、小腸内の
回腸より前の位置で、前記小腸内のpH条件に応答して前記治療製剤の送達を始動させ、それによって、前記
治療製剤に対す
るパイエル板による免疫応答が回避される構成で経口送達されるのに適合しており、前記始動は、前記組織貫入部材を、前記小腸の壁に貫入させ、挿入させ、ここで挿入の後、前記組織貫入部材は前記壁または周囲の組織内に留置され、血流に前記AI抗体を放出して患者の体内でインターロイキンの生物学的作用を減弱させ;前記AI抗体の前記放出からのいかなる有害反応も、前記AI抗体の非経口注射送達と関連するそれより少ない、治療製剤。
【請求項2】
前記インターロイキンの減弱した前記生物学的作用が炎症誘発性応答、Th1モジュレーション、Th2モジュレーションまたはNKモジュレーションである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記血流への前記AI抗体の放出の
前記有害反応の発生率が、非経口注射についてのものと比較して2から30倍の間の倍数だけ低減される、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記有害反応が、注射部位反応、アナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック、水腫、頭痛、免疫原性反応、前記AI抗体に対する抗体の生成または前記AI抗体の効力の低減のうちの1つである、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記AI抗体が、サイトカインのインターロイキン-17ファミリーのメンバーに対する抗体を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記製剤の毎日の投与から放出される前記AI抗体の毎日の血漿濃度における安定した変動が、2週間から一カ月の期間にわたる前記AI抗体の皮下注射と比較して有意に低減している、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
毎日の投与からの前記
インターロイキン-17ファミリーのメンバーに対する抗体の毎日の血漿濃度における安定した日変動が、約0.12から0.26%の間である、請求項5に記載の製剤。
【請求項8】
前記AI抗体がセクキヌマブである、請求項5に記載の製剤。
【請求項9】
前記AI抗体がイキセキズマブである、請求項5に記載の製剤。
【請求項10】
前記AI抗体がブロダルマブである、請求項5に記載の製剤。
【請求項11】
嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記製剤は前記アクチュエータに作動可能に連結されるのに適合し、前記アクチュエータは第一の構成および第二の構成を有
し、前記第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し
、前記第二の構成では前記
アクチュエータから前記
組織貫入部材の表面に力を加えることにより前記製剤を前記カプセルから前記壁に進入させる
、請求項
1に記載の製剤。
【請求項13】
前記AI抗体を
前記血流に放出するための、前記壁または周囲の組織内で分解する生分解性材料を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
前記製剤中の前記AI抗体の少なくとも約70重量%が生物学的に活性である、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
前記製剤が、約1.00から1.15mg/mm
3
または約1.02から1.06mg/mm
3
の範囲内の密度を有する、請求項1に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、「Anti-Interleukin Antibody Preparations For Delivery Into A Lumen Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する、2015年5月8日に出願された米国仮特許出願番号第62/159,134号に基づく優先権の利益を主張しており;前述の出願は、すべての目的のためにこれによって参考として本明細書中に援用されている。この出願はまた、「Pharmaceutical Compositions And Methods For Fabrication Of Solid Masses Comprising Anti-Interleukin Antibodies」と題する、2015年5月15日に出願された米国特許出願第14/714,136号の一部継続出願であり、この米国特許出願は、「Pharmaceutical Compositions And Methods For Fabrication Of Solid Masses Comprising Polypeptides And/Or Proteins」と題する、2014年5月15日に出願された米国仮特許出願番号第61/993,907号に基づく優先権の利益を主張している。すべての前述の出願は、すべての目的のために本明細書中に参考として援用されている。
【0002】
本出願はまた、以下の米国特許および仮特許出願をすべての目的のために参考として援用する。「Swallowable Drug Delivery Device and Methods of Drug Delivery」と題する、2010年12月23日に出願された米国特許出願12/978,233号;「Therapeutic Agent Preparation for Delivery Into a Lumen of The Intestinal Tract Using a Swallowable Drug Delivery Device」と題する2010年12月23日に出願された米国特許出願第12/978,164号;「Swallowable Drug Delivery Device and Methods of Drug Delivery」と題する2010年12月23日に出願された.米国特許出願第12/978,301号;「Device,System And Methods For The Oral Delivery Of Therapeutic Compounds」と題する、2012年6月25日に出願され、今や米国特許第9,149,617号である米国特許出願第13/532,589号;「Therapeutic Agent Preparations for Delivery into A Lumen of the Intestinal Tract using a Swallowable Drug Delivery Devices」と題する米国特許第8,809,269号;および「Pharmaceutical Compounds And Methods For Fabrication Of Solid Masses Comprising Polypeptides And/Or Proteins」と題する2015年5月1日に出願された米国仮特許出願番号第62/156,105号。
【0003】
(発明の背景)
発明の分野。
本発明の実施形態は、嚥下可能な薬物送達デバイスに関する。より具体的には、本発明の実施形態は、薬物および他の治療剤を小腸に送達するための嚥下可能な薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
様々な疾患の処置のために、近年、新薬の開発が増えているが、経口投与ができないので用途が限られるものが多い。これは、胃刺激および出血をはじめとする合併症を伴う不良な経口寛容;胃内での薬物化合物の破壊/分解;ならびに薬物の不良な、遅いまたはむらのある吸収を含む、多数の理由に起因する。従来の代替薬物送達法、例えば静脈内および筋肉内送達は、針を刺すことによる痛みおよび感染リスク、滅菌技術の使用の必要ならびに長期間にわたって患者にIVラインを維持することの関連リスクを含む、多数の欠点を有する。埋め込み型薬物送達ポンプなどの他の薬物送達アプローチが利用されてきたが、これらのアプローチは、デバイスの半永久埋め込みを必要とし、またIV送達の制限の多くをやはり有し得る。したがって、様々な自己免疫性疾患の処置のための様々な抗インターロイキン抗体および他のインターロイキン中和タンパク質の改善された送達の必要性を含む、薬物および他の治療剤の送達のための改善された方法の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の簡単な概要)
本発明の実施形態は、体内の様々位置に薬物および他の治療剤を送達するためのデバイス、システム、キットおよび方法を提供する。多くの実施形態は、胃腸(GI)管内に薬物および他の治療剤を送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。特定の実施形態は、小腸壁または他のGI器官壁内に薬物および他の治療剤を送達するためのカプセルなどの嚥下可能なデバイスを提供する。本発明の実施形態は、GI管内で十分に吸収されない、十分に耐えられない、かつ/または分解される治療剤(例えば、種々のインターロイキン中和タンパク質、特に抗体)の送達に特に有用である。さらに、本発明に実施形態は、静脈内形態の非経口投与または筋肉内もしく皮下注射などの様々な非血管非経口注射形態の投与を含む他の形態の非経口投与によってしか以前は可能でなかったまたはこれらの形態の非経口投与によって好ましく送達されていた、このようなインターロイキン中和タンパク質の送達に用いることができる。
【0006】
本発明の1つの態様では、本発明は、治療有効用量の少なくとも1つのインターロイキン中和タンパク質(インターロイキン結合性タンパク質またはIB-タンパク質としても知られるINタンパク質またはINP)、例えば1つまたは複数のインターロイキンに結合する抗体(本明細書で、抗インターロイキン抗体またはAI抗体)またはそれらの受容体を含む、小腸壁または腸管内の他の位置への送達のための治療剤製剤を提供する。そのようなインターロイキンは、インターロイキン1~36の1つまたは複数(例えば、インターロイキン1、インターロイキン17aおよびそれらのそれぞれの類似体および誘導体)を含むことができる。治療製剤の1つまたは複数の実施形態で使用されるAI抗体は、完全長抗体またはその抗原結合性部分であってよい。製剤は、嚥下可能なカプセル(またはそのようなデバイス)の実施形態に収容され、該カプセルから腸壁内に送達されて腸壁内から前記用量のAI抗体または他のIN-タンパク質を放出するような形状(例えば、組織貫入形状)および材料一貫性を有することができる。製剤は、固体、液体または粉末の形態であってもよい。好ましくは、AI抗体または他のINタンパク質を含む製剤は、製剤が長期間保存され、ならびに腸壁にそれを挿入するように成形され(例えば、組織貫入形状に)、製剤に及ぼされる機械的力を有することを可能にする固体形態である。
【0007】
IN-タンパク質は、当技術分野で公知である免疫グロブリン分子またはその機能的変異体から選択することができ、そのような変異体は、インターロイキン結合性タンパク質の特徴的な結合特性を保持している。使用することができる特異的免疫グロブリン分子の例としては、scFv(単鎖可変断片);モノクローナル抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;ヒト化抗体;単一ドメイン抗体;Fab断片;Fab’断片;F(ab’)2;Fv(可変断片);ジスルフィド結合したFv、および二重特異的または二重特異抗体が挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましくは、結合性タンパク質はヒト抗体である。
【0008】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される結合性タンパク質(AI抗体およびAI17抗体、例えばセクキヌマブ)のいずれか1つを含むインターロイキン中和タンパク質を提供し、ここで、インターロイキン中和結合性タンパク質は、選択されるインターロイキンが、そのインターロイキンの受容体に結合することを阻止または選択されるインターロイキンが、そのインターロイキンの受容体に結合する能力を減弱させることによって、インターロイキン1~36の1つまたは複数の生物学的作用を中和および/または阻害することが可能である。そのような中和効果は、1)そのインターロイキンが、そのインターロイキンの受容体に結合し、次に1つもしくは複数の生物学的作用を引き起こすことを阻止もしくは阻害するように、選択されるインターロイキンに結合するか;または2)インターロイキンが受容体を活性化し、1つもしくは複数の生物学的作用を引き起こすことを阻止するように、その特定のインターロイキンの受容体に結合するように結合性タンパク質を選択することによって達成することができる。例えば、1つの実施形態により、インターロイキン-17に結合するAI抗体、例えばセクキヌマブを選択することができる。他の実施形態により、インターロイキン17の受容体に結合するAI抗体、例えばブロダルマブを選択することができる。AI抗体または他のIB-タンパク質の1つまたは複数の実施形態の使用からもたらされる阻害された生物学的作用は、以下の1つまたは複数を含むことができる:Th1モジュレーション;Th2モジュレーション(その内容があらゆる目的で本明細書に援用される、Nakanishi K.ら、(2001年)Cytokine and Growth Factor改訂版12巻:53~72頁によって示される);Nkモジュレーション;好中球モジュレーション;単球-マクロファージ系統モジュレーション;好中球モジュレーション;好酸球モジュレーション;B細胞モジュレーション;サイトカインモジュレーション;ケモカインモジュレーション;接着分子モジュレーション;および細胞補充モジュレーション。また、1つまたは複数の実施形態により、AI抗体または他のIN-タンパク質は、選択されるインターロイキンの活性に関連した様々な自己免疫性および/または炎症性状態を処置するために、選択されるインターロイキンの生物学的作用を阻害するように選択することができる。好ましい実施形態では、そのような状態には、慢性関節リウマチ、プラーク型乾癬を含む乾癬、乾癬性関節炎、線維症、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症および強直性脊椎炎のうちの1つまたは複数(one more of)を含めることができる。
【0009】
多くの実施形態では、嚥下可能なカプセルの実施形態によって送達される、選択されたAI抗体、AI-17抗体または他のIN-タンパク質の用量は、本明細書に記載される選択された状態(例えば、乾癬、慢性関節リウマチなど)を処置するように調整することができ、その一方で、抗体の注入または注射される用量(例えば、静脈内、筋肉内、皮下など)に関連した有害作用を最小にすることができる。総合すると、用語注入または注射用量は本明細書において「非経口注射」と呼ぶものとし、注射または注入によって送達されるAI抗体(または、本明細書に記載される他の治療剤)の用量の送達は、本明細書において「非経口注射送達」または「非経口注射」と呼ぶものとする。そのような有害作用としては、限定ではないが、アナフィラキシーショックまたは他のアナフィラキシー性/アレルギー性の反応(例えば、呼吸困難、水腫、水目、呼吸うっ滞)、IN-タンパク質への免疫原性反応(患者自身の抗体による送達されたIN-タンパク質の免疫原性中和を含む)、頭痛、発熱および他の関連した作用のうちの1つまたは複数を含めることができる。特定の実施形態では、これは、AI抗体または他のIN-タンパク質の送達用量を、毎日対毎月または隔週の用量に調整することによって達成することができ、後者の用量はAI抗体のために一般的に与えられるもの、例えばセクキヌマブ、ブロダルマブまたはイキセキズマブのためのそれである。免疫応答を最小にする場合には、この結果は、本明細書にさらに詳細に議論されるように、小腸の上または中間部分にAI抗体の用量を送達し、腸の下部セクション、例えばパイエル板を含有する回腸を回避することによって達成することもできる。小腸へのより少ない用量でのAI抗体の送達の(注射に対する)他の恩恵には、i)より高い治療係数;およびii)AI抗体または他のINタンパク質の血漿濃度の変動(本明細書でさらに詳細に記載されるように、%定常状態変動として知られる)の低減の1つまたは複数が含まれる。
【0010】
別の態様では、本発明は、インターロイキン17a分子などのインターロイキン17分子の生物学的活性に関連した疾患または状態を処置するための方法を提供する。そのような方法の様々な実施形態は、ダーツ様または針状またはとがった先端を有する他の形状であってよい組織貫入部材の形状として、固体の抗インターロイキン17抗体(AI17抗体)投薬量を提供することを含む。投薬量は、経口摂取される嚥下可能なカプセルまたは他の嚥下可能なデバイスにより、小腸に経口送達される。小腸(または、腸管内の他の位置)に入ると、組織貫入部材が腸壁内に留置されるように、組織貫入部材に機械的力(例えば、カプセル内の拡張可能な部材から)が加わることで固体投薬量は腸壁に貫入し、その中に挿入される。次いで、治療有効用量のAI17抗体は、腸壁内の固体投薬量AI17抗体から血流に放出されて、インターロイキン17分子の活性を阻害し、それによって疾患または状態を処置する。特定の実施形態では、阻害されるインターロイキン17分子は、インターロイキン17Aに該当する。これらおよび関連した実施形態では、AI抗体は、セクキヌマブ、ブロダルマブまたはイキセキズマブならびに3つの前述の抗体の変異体もしくは誘導体の形態であってよいその抗原結合性部分の1つまたは複数に該当し得る。これらまたは他のAI-17抗体は、例えば、プラーク型乾癬、乾癬性関節炎、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、強直性脊椎炎、クローン病および炎症性腸疾患を含むインターロイキン17aの生物学的活性に関連した1つまたは複数の疾患または状態を処置するために、治療有効用量で小腸壁内に送達することができる。また、特定の実施形態では、嚥下可能なカプセルは、固体投薬量AI17抗体を空腸などの小腸内の選択された位置に挿入するように、小腸のpHで分解するように選択されるコーティングまたは他の同様の材料を含む。また、特定の実施形態では、小腸壁に置かれると、固体AI17抗体または他のAI抗体は、腸壁を囲んでいる腸間膜血管系に放出され、次に門脈、その後肝臓内に流れるように構成することができる。この時点で、次いで、放出されたAI17抗体は肝臓内のインターロイキンまたはインターロイキン受容体に結合し、その後、肺、心臓、骨、軟骨、リンパ節などの1つまたは複数を含む体の他の組織部位に存在するインターロイキンに実質的に(例えば、非肝臓部位に存在するインターロイキンに結合する送達されたAI17抗体の10%超)結合する。これらおよび関連した実施形態におけるこのアプローチの恩恵は、肝臓が高濃度のインターロイキン生成組織を含有し、その放出部位でその組織から放出されるインターロイキンに結合することによって、それらが体全体に拡散する前にインターロイキン(例えば、インターロイキン17aなど)のかなりの量を中和、またはさもなければ阻害することができることである。これは、抗体が体内の他の組織部位(例えば、心臓、肺など)によってかなりの量が取り込まれてから肝臓に到達し、したがって、肝臓によって放出されるインターロイキンに結合するのに利用可能なAI17抗体の量がかなり低減される、AI17抗体(または同様の抗体)の非経口注射送達を使用した従来のアプローチと対照的である。
【0011】
他の態様では、本発明は、小腸壁内に治療剤を送達するための方法であって、カプセル、アクチュエータおよびINP製剤(例えば1つまたは複数の抗インターロイキン抗体を含む製剤)などの治療剤製剤の実施形態を含む薬物送達デバイスを嚥下することを含む方法を提供する。アクチュエータは、pHなどの小腸内の条件に応答して小腸壁内への治療剤製剤の送達を始動させる。また、アクチュエータは、空腸などの小腸内の選択された位置でアクチュエータを始動させるように、小腸内の選択された位置に対応する小腸のpHで分解するように選択されるコーティングまたは他の同様の材料を含むか、またはそれに作動可能に連結されてよい。特定の実施形態において、前記アクチュエータは、小腸内の選択されたpHによって分解されるカプセル上の剥離要素またはコーティングを含むことができる。分解されると、前記要素またはコーティングは、1つもしくは複数の送達手段による、例えば、組織貫入部材に作動可能に連結されている1つもしくは複数のバルーンの拡張による前記治療剤製剤の送達を開始させ、該組織貫入部材は、前記治療剤製剤を収容しており、該バルーンが拡張すると小腸壁に貫入し、進入するように構成される。前記組織貫入部材が腸壁または周囲の組織(surrounding tissue)(例えば、腹膜壁)内に挿入されると、分解して前記治療剤を血流中に放出する。前記治療剤製剤は、小腸壁内に直接送達されるため、血流中または体内の他の位置における前記IBタンパク質または他の治療剤の最大濃度を達成するための期間(本明細書ではtmaxと記述する)は、前記剤が体内に、筋肉内または皮下注射などにより非血管へ注射されたときに前述の最大濃度を達成するための対応する期間より短い。様々な実施形態において、本発明の1つもしくは複数の実施形態(例えば、嚥下可能なデバイスの実施形態)を用いる前記治療製剤の小腸壁内への挿入によりCmaxを達成するための期間は、前記治療剤の非血管注射の使用によりCmaxを達成するための期間の約80%、50%、30%、20%またはさらに10%であり得る。他の実施形態において、本発明の1つもしくは複数の実施形態、例えば、嚥下可能なデバイスの実施形態を用いる前記治療製剤の小腸壁内への挿入により達成されるCmaxは、前記治療剤が腸壁内に挿入されない、従来の経口形態(例えばピル)の前記治療剤の摂取によって達成されるCmaxより大きい。様々な実施形態において、本発明の1つもしくは複数の実施形態(例えば、嚥下可能なデバイスの実施形態)を用いる前記治療製剤の小腸壁内への挿入により達成されるCmaxは、前記治療剤がピルまたは他の経口形態で送達される場合より5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらに100倍大きい。他の関連実施形態では、選択可能なt1/2を有する治療剤の長期放出をもたらすようにその組成物を構成することができる(前記t1/2は、血流中または体内の他の位置における治療剤の濃度が、Cmaxに達した後にその元のCmax値の半分に達するために要する期間である)。例えば、前記選択可能なt1/2は、6または9または12または15または18または24時間であり得る。
【0012】
もう1つの態様において、本発明は、小腸もしくは大腸または胃腸管器官の他の器官の壁内に薬物または他の治療剤製剤を送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。前記デバイスは、嚥下され、胃腸管を通過するようなサイズのカプセル;前記カプセルの長軸と小腸の長軸を位置合わせするための、該カプセル内に位置する展開可能なアライナ;治療剤を腸壁内に送達するための送達メカニズム;および前記アライナまたは前記送達メカニズムのうちの少なくとも一方を展開するための展開部材を含む。前記カプセル壁は、GI管内の液体との接触により分解し得るが、外部コーティングまたは外層を備えることもでき、この外部コーティングまたは外層は、小腸内で見いだされるより高いpHでしか分解せず、そして、前記カプセルが、前記コーティングの分解により薬物送達が開始される地点である小腸に達する前に、胃の中で分解しないように下にあるカプセル壁を保護するのに役立つ。使用すると、かかる材料により、小腸などの腸管の選択された部分での治療剤の標的送達が可能になる。適する外部コーティングには、アクリル酸(特定の例としてはEVONIK industriesから入手可能なEUDRAGITが挙げられる)、メタクリル酸およびアクリル酸エチルの様々なコポリマーなどの様々な腸溶コーティングを含めることができる。特定の実施形態では、外部コーティングは、治療剤製剤がその各部に送達され、マクロファージおよび他の免疫関連細胞を生成する集合リンパ結節であるパイエル板を含有する小腸の下部(回腸)を回避するように、小腸の上部(例えば十二指腸)または中間部(空腸)で見出されるpHで分解するように、構成することができる。十二指腸または空腸のpHで分解するそのようなコーティングの例としては、EUDRAGITを挙げることができる。pを達成するための具体的な実施形態では、コーティングは、周囲pHが、胃の幽門の概ね30~60cm(1~2フィート)下の遠位十二指腸または近位空腸内の位置に対応する約6.5になるまで分解/溶解を開始しないように構成される。空腸はヒトで概ね8フィート(概ね240cm)であるので、これは、パイエル板を含有する小腸のセクションである回腸の十分前にコーティングが完全に溶解して、組織貫入部材を放出するのに十分過ぎる時間である。パイエル板のない小腸内の位置に治療剤を送達することによって、免疫関連細胞の生成および治療剤への以降の免疫応答(例えば、様々なインターロイキンの生成)は最小にされる。したがって、使用上、小腸の上部または他の選択された部分への治療剤のそのような制御された配置または送達は、特定の治療剤に対する患者の免疫応答を排除、またはさもなければ最小化もしくは低減する。
【0013】
前記カプセルのもう1つの実施形態は、少なくとも1本のガイドチューブ;前記少なくとも1本のガイドチューブ内に位置する1つもしくは複数の組織貫入部材;送達部材;および始動メカニズムを備えている。前記組織貫入部材は、典型的に、中空針または他の類似の構造を含み、管腔と、腸壁中への選択可能な深さへの貫入のための組織貫入端とを有する。様々な実施形態において、前記デバイスは、第二および第三の組織貫入部材を、企図される追加の多数のものと共に備えることができる。各組織貫入部材は、同じ薬物を含む場合もあり、異なる薬物を含む場合もある。多数の組織貫入部材を有する好ましい実施形態では、薬物の送達中に腸壁上にカプセルを係留するために該カプセルの外周に沿って対称に前記組織貫入部材を割り当てることができる。一部の実施形態では、前記組織貫入部材のすべてまたは一部分(例えば、組織貫入端)を前記薬物製剤自体から製造することができる。これらの実施形態および関連実施形態において、前記薬物製剤は、腸壁に貫入し、腸壁内に留置されるように構成された、(返しを伴うまたは伴わない)針または矢のような構造を有することができる。とがった先端を有する他の形状は、けれども、
【0014】
前記組織貫入部材は、その構成要素が腸壁内に留置されることになるに違いない場合に、小腸内で分解し、それによって該組織貫入部材を腸壁から取り外すためのフェール・セーフ・メカニズムを提供するように、様々な生分解性材料(例えば、PGLA、マルトースもしくは他の糖またはポリエチレンオキシド)から製造され得る。加えて、これらの実施形態および関連実施形態において、前記カプセルの選択可能部分をかかる生分解性材料から製造して、前記デバイス全体のより小さい断片への制御可能な分解を可能にすることができる。かかる実施形態は、前記デバイスの前記GI管通過およびGI管による排泄を助長する。特定の実施形態において、前記カプセルは、GI管の通過を助長するような選択可能なサイズおよび形状のカプセル片を生成するように制御可能に分解する生分解性材料のシームを備えることができる。分解を加速させるために、前記シームにプレストレスを与えるか、前記シームを穿孔するか、または別様に処理することができる。嚥下可能なデバイスのGI管内での制御分解を生じさせるために生分解性シームを使用するという概念を、嚥下可能なカメラなどの他の嚥下可能なデバイスに応用して、GI管通過を助長することおよびGI管内にデバイスが固着される尤度を低下させることもできる。
【0015】
前記送達部材は、前記薬物を前記カプセルから前記組織貫入部材管腔を通って前進させて腸壁に進入させるように構成される。典型的に、前記送達部材の少なくとも一部分は、前記組織貫入部材管腔内を前進することができる。前記送達部材は、該送達部材の管腔に内嵌するためのサイズのピストンまたは類似の構造を有することができる。前記送達部材の遠位端(組織に進入させる末端)は、プランジャ要素を有する場合があり、このプランジャ要素は、組織貫入部材管腔内に薬物を進入させ、また該管腔とのシールを形成する。前記プランジャ要素は、前記送達部材に内蔵されている場合があるか、または前記プランジャ要素を前記送達部材に取り付けることができる。好ましくは、前記送達部材は、針管腔内の固定距離を進んで、固定または定量用量の薬物を腸壁内に送達するように構成される。これは、送達部材の直径の選択(例えば、直径を遠位方向に漸減させることができる)、組織貫入部材の直径(その遠位端で狭くすることができる)、止めの使用、および/または始動のメカニズムのうちの1つもしくは複数によって達成することができる。薬物から製造された組織貫入部材を有するデバイス(例えば、薬の矢)の実施形態について、送達部材は、その矢をカプセルから進出させ、組織に進入させるのに適合する。
【0016】
液体、半液体もしくは固体形態または三形態すべての薬物の送達用に前記送達部材および組織貫入部材を構成することができる。固体形態の薬物としては、粉末またはペレットの両方を、個々にまたはそれらの混合物を挙げることができる。半液体としては、スラリーまたはペーストを挙げることができる。前記薬物をカプセルのキャビティ内に収容することができるか、または液体もしくは半液体の場合、密閉リザーバ内に収容することができる。一部の実施形態において、前記カプセルは、第一、第二または第三の(またはそれより多くの)薬物を含むことができる。かかる薬物を、前記組織貫入部材管腔内に(固体もしくは粉末の場合に)、またはカプセルボディ内の別個のリザーバに収容することができる。
【0017】
前記始動メカニズムを前記組織貫入部材または前記送達部材の少なくとも一方に連結させることができる。前記始動メカニズムは、前記組織貫入部材を腸壁内の選択可能な距離に進入させるように、ならびに前記送達部材を前進させて薬物を送達し、その後、腸壁から前記組織貫入部材を退出させるように構成される。様々な実施形態において、前記始動メカニズムは、解放要素によって解放されるように構成されている与圧されたスプリングメカニズムを含むことができる。好適なスプリングとしては、コイル(円錐形スプリングを含む)とリーフスプリングの両方を挙げることができるが、他のスプリング構造も企図される。特定の実施形態において、前記スプリングは、圧縮状態の該スプリングの長さをさらに該スプリングの圧縮長が数コイル(例えば、2または3)程度またはたった1コイル程度の厚みであるポイントまで低減させるように造形された錐体であり得る。
【0018】
特定の実施形態において、前記始動メカニズムは、スプリング、第一の運動変換機、第二の運動変換機、および軌道部材を含む。前記解放要素は、前記スプリングに前記スプリングを圧縮状態で保持するように連結されるので、前記解放要素の分解により前記スプリングは解放される。前記第一の運動変換機は、前記組織貫入要素を組織に進入させ、組織から退出させるように前記スプリングの運動を変換するように構成される。第二の運動変換機は、前記送達部材を前記組織貫入部材管腔に進入させるように前記スプリングの運動を変換するように構成される。前記運動変換機は、前記スプリングによって押され、前記変換機の経路へ導くのに役立つロッドまたは他の軌道部材に沿って進む。それらは、所望の運動を生じさせるように前記組織貫入部材および/または送達部材と(直接または間接的に)係合している。それらは、望ましくは、前記スプリングのその長軸に沿った運動を前記組織貫入部材および/または送達部材の直交する運動に変換するように構成されるが、他の方向での変換も企図される。前記運動変換機は、くさび形状、台形形状または湾曲した形状を有し得るが、他の形状も企図される。特定の実施形態において、前記第一の運動変換機は、台形形状を有し、溝孔を含み、該溝孔は、該溝孔の中を進む前記組織貫入部材上のピンと係合している。前記溝孔は、前記変換機の全形状と全く同じかまたは、そうでなければ該全形状に相当する台形形状を有することができ、該台形の上り勾配部分の間は前記組織貫入部材を押すのに役立ち、その後、下り勾配部分の間はそれを引っ張り戻すのに役立つ。1つの変形形態おいて、前記運動変換機の一方または両方は、スプリングによって回転させられ、前記組織貫入および/または送達部材と係合する、カムまたはカム様デバイスを含むことができる。
【0019】
他の変形形態において、前記始動メカニズムは、電気機械式デバイス/メカニズム、例えば、ソレノイドまたは圧電デバイスも含むことができる。1つの実施形態において、前記圧電デバイスは、非展開状態および展開状態を有する造形された圧電素子を含むことができる。この素子を、電圧の印加により展開状態になり、その後、電圧の除去により非展開状態に戻るように構成することができる。本実施形態および関連実施形態は、前記組織貫入部材を前進させ、その後それを引き抜くという両方を達成するための前記始動メカニズムの往復運動を可能にする。
【0020】
前記解放要素は、前記始動メカニズムまたは前記始動メカニズムに連結されたスプリングの少なくとも一方に連結される。特定の実施形態において、前記解放要素は、スプリングに連結され、該スプリングは、カプセル内に該スプリングを圧縮状態で保持するように位置する。前記解放要素の分解は、前記スプリングを解放して始動メカニズムを始動させる。多くの実施形態において、前記解放要素は、pHなどの小腸または大腸内の化学的条件への曝露により分解するように構成された材料を含む。典型に、前記解放要素は、小腸内の選択されたpH、例えば、約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、8.0、またはそれより大きいpHへの曝露により分解するように構成される。しかし、小腸内の他の条件に応答して分解するようにそれを構成することもできる。特定の実施形態では、食事(例えば、高脂肪または高タンパク食)の摂取後に発生する流体などの小腸内の流体中で特定の化学的条件に応答して分解するように前記解放要素を構成することができる。
【0021】
小腸(またはGI管内の他の位置)における1つまたは複数の条件からの解放要素の生分解は、該解放要素のための材料、そういった材料の架橋量ならびに該解放要素の厚みおよび他の寸法の選択によって達成され得る。より少ない架橋量およびまたはより薄い寸法は、分解速度を増すことができ、逆もまた真である。前記解放要素の好適な材料は、生分解性材料、例えば、小腸内のより高いpHまたは他の条件への曝露により分解するように構成されている様々な腸溶性材料を含み得る。前記腸溶性材料を1種のまたは1種より多いポリマーと共重合させて、または別様に混合して、生分解に加えて多数の特定の材料特性を得ることができる。かかる特性としては、限定ではないが、剛性、強度、可撓性および硬度を挙げることができる。
【0022】
特定の実施形態において、前記解放要素は、フィルムまたはプラグを含むことができ、該フィルムまたはプラグは、ガイドチューブに外嵌するかまたは別様にガイドチューブをブロックし、該ガイドチューブの内部に前記組織貫入部材を保持する。これらの実施形態および関連実施形態において、前記組織貫入部材は、前記解放要素が十分に分解されるとスプリング負荷型始動メカニズムが前記組織貫入部材を解放し、その後その組織貫入部材が前記ガイドチューブから飛び出して腸壁に貫入するような、スプリング負荷型始動メカニズムに連結される。他の実施形態では、前記組織貫入部材を適所に保持する掛け金として機能するように前記解放要素を造形することができる。これらの実施形態および関連実施形態において、前記解放要素は、前記カプセルの外部に位置する場合もあり、内部に位置する場合もある。内部の実施形態の場合、前記カプセルおよびガイドチューブは、前記解放要素の分解を可能にするために前記カプセル内部に腸液が入ることを可能にするように構成される。
【0023】
一部の実施形態では、小腸内のカプセルの存在を検出し、前記始動メカニズムに(または、前記始動メカニズムを始動させるために該始動メカニズムに連結された電子制御装置に)シグナルを送信するセンサ、例えばpHセンサまたは他の化学的センサによって、前記始動メカニズムを始動させることができる。pHセンサの実施形態は、電極ベースのセンサを含み得るか、または機械ベースのセンサ、例えば、小腸内のpHもしくは他の化学的条件への曝露により縮むもしくは伸びるポリマーであり得る。関連実施形態において、伸縮可能センサは、該センサの伸長または収縮からの機械的な動きを用いることによりそれ自体が始動メカニズムを構成する場合もある。
【0024】
前記デバイスが小腸(またはGI管内の他の位置)にあることを検出するためのもう1つの実施形態によると、前記センサは、腸管内の特定の位置内でカプセルが受けている蠕動収縮の数を検出するための歪ゲージまたは他の圧力/力センサを含むことができる。これらの実施形態において、前記カプセルは、望ましくは、蠕動収縮中に小腸によって狭持されるようなサイズである。GI管内の異なる位置は、異なる数の蠕動収縮を有する。小腸は、毎分12から9回の間の収縮を有し、小腸の長さを下るにつれてその頻度が減少する。したがって、1つもしくは複数の実施形態によると、蠕動収縮数の検出を用いて、カプセルが小腸内にあるかどうかを判定することができるばかりでなく、小腸内での相対位置も判定することができる。
【0025】
内部起動薬物送達の代案または補足として、一部の実施形態において、ユーザーは、当該技術分野において公知のRF(無線周波数)、磁気または他のワイヤレスシグナル送信手段によって、薬物を送達するための始動メカニズムを外部から起動させることができる。これらの実施形態および関連実施形態において、ユーザーは携帯式デバイス(例えば、携帯式RFデバイス)を使用することができ、該携帯式デバイスは、シグナル送信手段を含むばかりでなく、該デバイスが小腸、またはGI管内の他の位置にあるときユーザーに情報を与える手段も含む。後者の実施形態は、嚥下可能なデバイス上に、該デバイスが小腸または他の位置にあるときに(例えば、センサからの入力をシグナル送信することにより)ユーザーにシグナル送信するためのRFトランスミッタを備えさせることによって実行することができる。始動メカニズムが起動され、選択薬物(単数または複数)が送達されたときユーザーに警告するように、同じ携帯式デバイスを構成することもできる。このようにして、ユーザーに、薬物が送達されたことの確認が提供される。別のアプローチでは、外部の音響センサは、活性化される始動メカニズムに特有の音を検出することによって、例えば、組織貫入部材に作動可能に連結されたピストンおよびシリンダー機構を含むチャンバを使用した実施形態で生じることができる1つまたは複数の固有振動数の音を検出することによって、いつ始動メカニズムが活性化されたのかを検出するのに使用することができる。前述のアプローチの1つまたは複数は、ユーザーが他の適当な薬物/治療剤を摂取すること、ならびに他の関連した決定を下すこと(例えば、糖尿病患者が食事を食べるかどうか、およびどの食物を食べるべきか)を可能にする。始動メカニズムに優先して嚥下可能なデバイスにシグナルを送信するように前記携帯式デバイスを構成することもでき、その結果、薬物の送達を防止するか、遅延させるか、または加速させるように前記携帯式デバイスを構成することもまたできる。使用すると、かかる実施形態により、他の症状および/または患者の行動(例えば、食事を食べること、寝入ることを決めること、運動など)に基づいて薬物の送達を防止するか、遅延させるか、または加速させることへのユーザーの介在が可能になる。
【0026】
ユーザーはまた、カプセルを嚥下してから選択期間後に、始動メカニズムを外部から起動させることができる。その期間を、食物がユーザーのGI管を通って該管内の特定の位置、例えば小腸に移動するための典型的な通過時間または通過時間の範囲に相関させることができる。外部活性化は、無線制御手段(例えば、RF通信デバイスを使用する)、磁気手段(例えば、ユーザーが外部磁気によって活性化する嚥下可能なデバイスの中に構築されるミニチュア磁気スイッチまたはレリーズの使用による)、または音響手段(例えば、嚥下可能なデバイスの中に構築される超音波伝送デバイスならびに音響受信および/またはスイッチによる)を含む任意の数の手段によって実行することができる。
【0027】
本発明のもう1つの態様は、本明細書に記載する嚥下可能なデバイスの実施形態を使用する小腸壁(または腸管内の他の壁)内への送達のための治療剤製剤を提供する。前記製剤は、治療有効用量の少なくとも1つの治療剤(例えば、抗体または他の結合タンパク質)を含む。またそれは、固体、液体または両方の組み合わせを含むことがあり、1種もしくは複数種の医薬用賦形剤を含む場合がある。前記製剤は、嚥下可能なカプセルの実施形態の中に収容され、該カプセルから腸壁内に送達され、その腸壁内で分解して前記用量の治療剤を放出するような、形状および材料一貫性を有する。前記製剤は、小腸または他の体腔の壁内での該製剤の分解速度を向上させるかまたは別様に制御するために選択可能な表面積対体積比も有し得る。様々な実施形態において、前記製剤をカプセル内に収容する第一の構成と、該製剤を該カプセルから進出させ小腸壁に進入させる第二の構成とを有するアクチュエータ、例えば解放要素または始動メカニズムに連結させるように、該製剤を構成することができる。前記製剤中の薬物または他の治療剤の用量を、従来の経口送達法に必要とされる用量から漸減させることができ、その結果、該薬物からの潜在的副作用を低減させることができる。
【0028】
一部の実施形態では、前記製剤は、カプセルから進出させられて小腸壁に進入させられるように構成されている組織貫入部材、例えば中空針の管腔内に収容されるように造形および別様に構成される。他の実施形態では、前記製剤自体が、小腸の壁または腸管内の他の管腔の壁に進入させるように構成された組織貫入部材を構成することもある。そのような実施形態では、製剤は組織貫入部材として成形されるか、またはさもなければその中に組み込まれる。例えば後者の場合には、製剤を円柱またはペレットとして成形されたセクションに形成することによって、それは、次いで、小腸壁内で生分解するように構成される材料から製作される組織貫入部材に装填され、密封される。
【0029】
本発明のもう1つの態様は、嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を使用する、GI管壁への薬物および治療剤の送達方法を提供する。かかる方法を、治療有効量の様々な薬物および他の治療剤の送達に用いることができる。これらとしては、別の方法では胃内での化学的分解に起因して注射を必要とする多数の大分子ペプチドおよびタンパク質、例えば、抗体 成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、インスリン、インターフェロンおよび他の類似の化合物が挙げられる。本発明の実施形態によって送達することができる好適な薬物および他の治療剤としては、様々な抗体(例えば、抗インターロイキン抗体、TNFを阻害するクラスの抗体)、化学療法剤(例えば、インターフェロン)、抗生物質、抗ウイルス剤、インスリンおよび関連化合物、グルカゴン様ペプチド(例えば、GLP-1、エクセナチド)、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン(例えば、IFGおよび他の成長因子)、発作抑制剤、免疫抑制剤および抗寄生虫剤、例えば様々な抗マラリア剤が挙げられる。患者の体重、年齢、状態または他のパラメータについて特定の薬物の投薬量を調整することができる。
【0030】
本発明の様々な方法の実施形態において、薬物嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を使用して、多数の状態の処置用のまたは特定の状態の処置用の複数の薬物(例えば、HIV AIDS処置用のプロテアーゼ阻害剤の混合物)を送達することができる。使用すると、かかる実施形態により、患者は、特定の状態(単数または複数)のために多数の医薬品を摂取しなければならない必要性をなしで済ませることができる。また、上記実施形態は、2種のもしくは2種を超える薬物のレジメンが小腸内に、そしてしたがってほぼ同時に血流内に送達され、吸収されることを確実にするための手段を提供する。化学組成、分子量などが異なるので、薬物は、腸壁を通して異なる速度で吸収され得、その結果、異なる薬物動態分布曲線が生じ得る。本発明の実施形態は、ほぼ同時に所望の薬物混合物を注射することによりこの論点に対処する。これは、次に、選択された薬物の混合物の薬物動態パラメータを(例えば、時間で例えば5%以内に実質的に同期することによって)(例えば、異なる薬物について類似のt1/2を達成することによって)、したがって、薬物の選択された混合物の効力を改善する。
【0031】
別の態様では、本発明の様々な実施形態は、哺乳動物の体内で生物学的活性(例えば、抗原への結合親和性)を有する抗体または他の免疫グロブリンなどの薬物を含む固体形状の塊を含む医薬組成物を提供し、ここで、抗体の生物学的活性の少なくとも一部は、粉末などの前駆体材料からの形状塊の形成の後に維持される。生物学的活性は、形成後の抗体または他の薬物の構造的完全性と相関し得(例えば、生物活性アッセイを化学的アッセイと相関させることによって)、そのため、組成レベルで、抗体の選択される百分率(例えば、重量ベースで)は前駆体材料でのそれに対して形成後に維持される。一般的に、形状は圧縮プロセス(例えば圧縮成形)によって形成されるが、非圧縮成形などの他のプロセスも企図される。薬物は、ペプチド、抗体、免疫グロブリンまたは他のタンパク質に相当し得、ここで、成形塊中の薬物の生物学的活性は、圧縮前のそれの少なくとも70%、より好ましくは圧縮前のそれの少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%である。これらの数字は、前駆体材料中のそれに対する成形塊中に残留している薬物の重量百分率に相当することもできる(例えば、重量組成について上記のように生物学的活性アッセイを化学的アッセイと相関させることによって)。これらのおよび関連した実施形態では、成形塊は、約1.00から1.15mg/mm3、より好ましい実施形態では、1.02から1.06mg/mm3の範囲内の密度を有することができる。形状はペレット形状を一般的に含むが、タブレット、円錐形、円筒状、立方体、球または他の同様の形状を有することもできる。一般的に、成形塊のペレットまたは他の形態は、次いで、本明細書に記載される組織貫入部材の実施形態に挿入される。
【0032】
本発明の実施形態は、抗体、免疫グロブリンまたは他のタンパク質を含む固体成形塊を形成するための方法も提供し、ここで、成形塊は前駆体材料の成形によって形成され、成形塊中のペプチド、抗体または他のタンパク質の生物学的活性(例えば、抗原結合親和性、特異性など)の少なくとも一部は形成後に保存される。多くの実施形態では、成形は前駆体材料の圧縮によって実行され、ここで、圧縮力は、タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の分解を最小にするように選択される。他の成形方法も、企図される。一般的に、前駆体材料は、薬物および1つまたは複数の賦形剤を含む粉末混合物を含む。前駆体材料は、液体、スラリーまたはペーストを含むこともできる。賦形剤は、滑沢剤、結合剤、増量剤などの1つまたは複数を含むことができる。成形塊は、タブレット、マイクロタブレット、ピルまたはスラグ形状の形態であってよい。1つまたは複数の実施形態によれば、形成プロセスの実施形態を使用して生成される成形塊は、タンパク質またはペプチドの生物活性の最小レベルと相関する密度または粒子粒径(成形塊を製剤化するために使用される粉末の)などの、別の特性を有することができる。また、その相関する特性は、成形塊の所与のロット内の選択された範囲内で、ロット間で一貫して維持することもできる。本明細書に記載される固体塊の実施形態は、処置される状態のための任意の適当な投与経路を通して投与される任意の適する薬物送達系と組み合わせて使用されるように構成することができる。そのような投与経路としては、限定ではないが、経口、舌下または様々な非経口送達、例えば、限定ではないが、静脈内、筋肉内、心室内、心臓内、頭蓋内を挙げることができる。例えば、1つの実施形態によれば、抗体含有マイクロタブレット(例えば、抗インターロイキン抗体を含有するマイクロタブレット)は経口的に摂取され、小腸に送達することができ、そこで抗体は小腸壁に送達され、そこでタブレット(単数または複数)は溶解して抗体を血流に放出し、そこでそれは選択された標的分子(例えば、インターロイキン)に結合して、1つまたは複数の状態(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬などの様々な自己免疫性状態)を処置する。もう1つの実施形態では、インスリン含有マイクロタブレットを皮下(例えば筋肉内)に注射するか、またはさもなければ置くことができ、そこでそれらは溶解して抗体を血流に放出する。
【0033】
本発明のこれらの実施形態および態様ならびに他の実施形態および態様についてのさらなる詳細を、添付の描図を参照して、より十分に下で説明する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
固体形態の抗インターロイキン抗体(AI抗体)を含む治療製剤であって、組織貫入部材に機械的力が加わることで経口摂取後に腸壁に貫入し、挿入されるように構成される固体組織貫入部材として成形され、ここで挿入の後、前記組織貫入部材は腸壁内に留置され、血流にAI抗体を放出して体内でインターロイキンの生物学的作用を減弱させ;前記AI抗体の前記放出からのいかなる有害反応も、前記AI抗体の非経口注射送達と関連するそれより少ない、治療製剤。
(項目2)
前記インターロイキンの減弱した前記生物学的作用が炎症誘発性応答である、項目1に記載の製剤。
(項目3)
前記有害反応が、注射部位反応、アナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック、水腫、頭痛、免疫原性反応、前記AI抗体に対する抗体の生成または前記AI抗体の効力の低減のうちの1つである、項目1に記載の製剤。
(項目4)
前記AI抗体が、サイトカインのインターロイキン-17ファミリーのメンバーに対する抗体を含む、項目1に記載の製剤。
(項目5)
前記AI抗体がセクキヌマブである、項目4に記載の製剤。
(項目6)
前記AI抗体がイキセキズマブである、項目4に記載の製剤。
(項目7)
前記AI抗体がブロダルマブである、項目4に記載の製剤。
(項目8)
前記AI抗体が腸壁から血流に放出されて、血管外注射用量の前記AI抗体がC
max
を達成する期間より短い期間でC
max
を達成する、項目1に記載の製剤。
(項目9)
前記組織貫入部材から放出される前記AI抗体のt
max
が、前記血管外注射用量のAI抗体のt
max
の約50%である、項目8に記載の製剤。
(項目10)
前記組織貫入部材から放出される前記AI抗体のt
max
が、前記血管外注射用量のAI抗体のt
max
の約10%である、項目8に記載の製剤。
(項目11)
小腸壁への挿入に適合している、項目8に記載の製剤。
(項目12)
前記血管外注射が皮下注射または筋肉内注射である、項目1に記載の製剤。
(項目13)
嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、項目1に記載の製剤。
(項目14)
第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、前記第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、前記第二の構成では前記製剤を前記カプセルから腸壁に進入させる送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、項目13に記載の製剤。
(項目15)
前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が前記非拡張状態であり、前記第二の構成が前記拡張状態である、項目14に記載の製剤。
(項目16)
AI抗体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、項目1に
記載の製剤。
(項目17)
前記生分解性材料が、PGLA、ポリエチレンオキシド、糖またはマルトースを含む、項目1に記載の製剤。
(項目18)
少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、項目1に記載の製剤。
(項目19)
前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、項目18に記載の製剤。
(項目20)
前記組織貫入部材が、AI抗体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、項目1に記載の製剤。
(項目21)
前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAまたはポリエチレンオキシドを含む、項目20に記載の製剤。
(項目22)
前記組織貫入部材中のAI抗体の重量パーセントが、約8から12%を含む、項目1に記載の製剤。
(項目23)
前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に前記組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備える、項目1に記載の製剤。
(項目24)
前記AI抗体が、前記組織貫入部材における成形されたセクション内に収容されている、項目1に記載の製剤。
(項目25)
前記成形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、項目24に記載の製剤。
(項目26)
腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるC
max
が、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるC
max
より実質的に大きい、項目8に記載の製剤。
(項目27)
腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるC
max
が、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるC
max
より少なくとも約100倍大きい、項目26に記載の製剤。
(項目28)
AI抗体の長期放出をもたらすように構成される、項目1に記載の製剤。
(項目29)
選択可能なt
1/2
を生じるようなAI抗体の長期放出をもたらすように構成される、項目28に記載の製剤。
(項目30)
前記t
1/2
が約40日である、項目29に記載の製剤。
(項目31)
前記製剤中のAI抗体の用量が、約1から5mgの範囲内である、項目1に記載の製剤。
(項目32)
前記製剤中のAI抗体の用量が、約2から4mgの範囲内である、項目31に記載の製剤。
(項目33)
抗インターロイキン抗体(AI抗体)を含む治療製剤であって、前記製剤に機械的力が
加わることで経口摂取後に腸壁内に挿入および留置されるように適合され、挿入されると、前記製剤が腸壁内で流体によって分解されて腸壁から血流にAI抗体を放出して、腸壁に挿入されない経口摂取AI抗体のt
1/2
より大きいt
1/2
を達成し、AI抗体の前記放出からのいかなる有害反応も、AI抗体の非経口注射送達と関連するそれより少ない、治療製剤。
(項目34)
腸壁に挿入される前記AI抗体のt
1/2
が、腸壁に挿入されない前記経口摂取AI抗体のt
1/2
より少なくとも約10倍大きい、項目33に記載の製剤。
(項目35)
固体形態のセクキヌマブを含む治療製剤であって、組織貫入部材に機械的力が加わることで経口摂取後に腸壁に貫入し、挿入されるように構成される固体組織貫入部材として成形され、挿入の後、前記組織貫入部材は腸壁内に留置され、血流にセクキヌマブを放出して、インターロイキン-17分子によって誘導される患者の体内の炎症誘発性応答を減弱させ;セクキヌマブの前記放出からのいかなる有害反応も、セクキヌマブの非経口注射送達と関連するそれより少ない、治療製剤。
(項目36)
固体形態のブロダルマブを含む治療製剤であって、組織貫入部材に機械的力が加わることで経口摂取後に腸壁に貫入し、挿入されるように構成される固体組織貫入部材として成形され、挿入の後、前記組織貫入部材は腸壁内に留置され、血流にブロダルマブを放出して、インターロイキン-17分子によって誘導される患者の体内の炎症誘発性応答を減弱させるためにインターロイキン分子受容体に結合させ;ブロダルマブの前記放出からのいかなる有害反応も、ブロダルマブの非経口注射送達と関連するそれより少ない、治療製剤。
(項目37)
固体形態のイキセキズマブを含む治療製剤であって、組織貫入部材に機械的力が加わることで経口摂取後に腸壁に貫入し、挿入されるように構成される固体組織貫入部材として成形され、挿入の後、前記組織貫入部材は腸壁内に留置され、血流にイキセキズマブを放出して、インターロイキン-17分子によって誘導される患者の体内の炎症誘発性応答を減弱させ;イキセキズマブの前記放出からのいかなる有害反応も、イキセキズマブの非経口注射送達と関連するそれより少ない、治療製剤。
(項目38)
インターロイキン17分子に関連した疾患または状態を有する患者を処置するための方法であって、
組織貫入部材として成形され、前記患者の腸管に経口送達されるように構成される固体抗インターロイキン17抗体(AI17抗体)投薬量を提供すること;
前記組織貫入部材が腸壁内に留置されるように前記組織貫入部材に機械的力を加えることで経口摂取後に前記患者の腸壁に前記固体投薬量AI17抗体を貫入させること;および
腸壁中の前記固体投薬量AI17抗体から前記患者の血流に前記AI17抗体を放出して前記疾患または状態を処置することを含み、前記AI17抗体の前記放出からのいかなる有害反応も、前記AI抗体の非経口注射送達と関連するそれより少ない、方法。
(項目39)
前記非経口注射が筋肉内または皮下注射である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記製剤が嚥下可能なカプセルで経口送達されるように適合されており、
前記カプセルを嚥下し、それを小腸に到達させること;および
小腸内の条件に応答して小腸壁に前記固体投薬量AI17抗体を貫入させること
をさらに含む、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記条件がpHである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記固体投薬量AI17抗体が小腸の十二指腸セクションまたは空腸セクションの壁に貫入し、パイエル板を含有する回腸セクションを回避するように、前記条件が約6.5のpHである、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記疾患または状態が、インターロイキン17分子によって誘導される患者の体内の生物学的作用を低減することによって処置される、項目38に記載の方法。
(項目44)
前記生物学的作用が、炎症誘発性応答;Th1モジュレーション;Th2モジュレーション;NKモジュレーション;好中球モジュレーション;単球-マクロファージ系統モジュレーション;好中球モジュレーション;好酸球モジュレーション;B細胞モジュレーション;サイトカインモジュレーション;およびケモカインモジュレーションからなる群から選択される、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記有害反応が、注射部位反応、アナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック、水腫、頭痛、免疫原性反応、前記AI17抗体に対する抗体の生成または前記AI1抗体の効力の低減のうちの1つである、項目38に記載の方法。
(項目46)
前記AI17抗体への前記患者の免疫応答が、非経口注射による前記AI17抗体の送達と比較して低減される、項目38に記載の方法。
(項目47)
前記AI17抗体への前記患者の前記免疫応答が、筋肉内または皮下注射と比較して2から30倍の範囲内の量だけ低減される、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記AI17抗体へのアレルギー性反応の発生率が、非経口注射による前記AI17抗体の送達と比較して低減される、項目38に記載の方法。
(項目49)
前記AI17抗体へのアレルギー性反応の前記発生率が、筋肉内または皮下注射と比較して約2から30倍の範囲内の量だけ低減される、項目48に記載の方法。
(項目50)
体内の他の位置でインターロイキンに実質的に結合する前に門脈に流入して肝臓内のインターロイキンに結合するように、前記AI17抗体が腸間膜血管系に放出される、項目38に記載の方法。
(項目51)
パイエル板によって引き起こされるAI17抗体へのいかなる免疫応答も最小にされるように、前記固体投薬量AI17抗体が、パイエル板を含有するセクションの前の腸壁のセクションに挿入される、項目38に記載の方法。
(項目52)
前記固体投薬量AI17抗体が、小腸の十二指腸または空腸の壁部分に挿入される、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記固体投薬量AI17抗体から血流に放出される前記AI17抗体が、血管外注射用量のAI17抗体がCmaxを達成する期間より短い期間でCmaxに達する、項目38に記載の方法。
(項目54)
前記固体投薬量AI17抗体から放出される前記AI17抗体のtmaxが、前記血管外注射用量のAI17抗体のtmaxの約50%より小さい、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記固体投薬量AI17抗体から放出される前記AI17抗体のtmaxが、前記血管外注射用量のAI17抗体のtmaxの約30%より小さい、項目54に記載の方法。
(項目56)
固体形態のAI17抗体用量が毎日投与されるとき、前記AI17抗体の血漿濃度の定常状態日変動が前記非経口注射のそれより有意に少ない、項目38に記載の方法。
(項目57)
前記AI17抗体の血漿濃度の安定した日変動が、約0.12から0.26%の間である、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記AI17抗体の血漿濃度の安定した日変動が、前記非経口注射の約171から216倍少ない、項目56に記載の方法。
(項目59)
前記AI17抗体がセクキヌマブである、項目38に記載の方法。
(項目60)
前記AI17抗体がブロダルマブである、項目38に記載の方法。
(項目61)
前記AI17抗体がイキセキズマブである、項目38に記載の方法。
(項目62)
処置される前記疾患または状態が、プラーク型乾癬である、項目38に記載の方法。
(項目63)
処置される前記疾患または状態が、乾癬性関節炎である、項目38に記載の方法。
(項目64)
処置される前記疾患または状態が、強直性脊椎炎である、項目38に記載の方法。
(項目65)
処置される前記疾患または状態が、慢性関節リウマチである、項目38に記載の方法。
(項目66)
処置される前記疾患または状態が、クローン病である、項目38に記載の方法。
(項目67)
処置される前記疾患または状態が、炎症性腸疾患である、項目38に記載の方法。
(項目68)
前記固体AI17抗体投薬量の前記送達の前記患者での治療係数が、非経口注射によって送達されるAI17抗体投薬量の治療係数より実質的に高い、項目38に記載の方法。
(項目69)
前記固体AI17抗体の前記治療係数が、非経口注射によって送達される前記AI17抗体投薬量の前記治療係数より約7から30倍の範囲内で高い、項目68に記載の方法。
(項目70)
インターロイキン17分子に関連した疾患または状態を有する患者を処置するための方法であって、
組織貫入部材として成形され、前記患者の腸管に経口送達されるように構成される固体抗インターロイキン17抗体(AI17抗体)投薬量を毎日提供すること;
前記組織貫入部材が腸壁内に留置されるように前記組織貫入部材に機械的力を加えることで経口摂取後に前記患者の腸壁に前記固体投薬量AI17抗体を貫入させること;および
前記AI17抗体の血漿濃度の日変動が約0.12から0.26%の間であるように、腸壁中の前記固体投薬量AI17抗体から前記患者の血流に前記AI17抗体を放出して前記疾患または状態を処置することを含み、前記AI17抗体の前記放出からのいかなる有害反応も、前記AI抗体の非経口注射送達と関連するそれより少ない、方法。
(項目71)
処置される前記疾患または状態が、プラーク型乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、慢
性関節リウマチ、クローン病および炎症性腸疾患からなる群から選択される、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記AI17抗体の血漿濃度の安定した日変動が、前記非経口注射の約171から216倍少ない、項目70に記載の方法。
(項目73)
前記有害反応が、注射部位反応、アナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック、水腫、頭痛、免疫原性反応、前記AI17抗体に対する抗体の生成または前記AI1抗体の効力の低減のうちの1つである、項目70に記載の方法。
(項目74)
前記固体AI17抗体投薬量の前記放出の前記患者での治療係数が、非経口注射によって送達されるAI17抗体投薬量の治療係数より実質的に高い、項目70に記載の方法。
(項目75)
前記固体AI17抗体の前記治療係数が、非経口注射によって送達される前記AI17抗体投薬量の前記治療係数より約7から30倍の範囲内で高い、項目74に記載の方法。
(項目76)
インターロイキン17分子の生物学的活性を阻害することによって患者においてプラーク型乾癬を処置するための方法であって、
組織貫入部材として成形される固体抗インターロイキン17抗体(AI17抗体)投薬量を提供すること;
前記組織貫入部材が腸壁内に留置されるように前記組織貫入部材に機械的力を加えることで経口摂取後に前記患者の腸壁に前記固体投薬量AI17抗体を貫入させること;および
治療有効用量の前記AI17抗体を腸壁内の前記固体投薬量AI17抗体から前記患者の血流に放出して、インターロイキン17分子の生物学的活性を阻害することを含み、前記AI17抗体の前記放出からのいかなる有害反応も、前記AI抗体の非経口注射送達と関連するそれより少ない、方法。
(項目77)
前記インターロイキン17分子がインターロイキン17Aである、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記AI17抗体がセクキヌマブである、項目76に記載の方法。
(項目79)
前記AI17抗体がブロダルマブであり、前記インターロイキン17分子の前記生物学的活性が前記インターロイキン17分子の受容体への前記AI17抗体の結合によって阻害される、項目76に記載の方法。
(項目80)
前記AI17抗体がイキセキズマブである、項目76に記載の方法。
(項目81)
前記インターロイキン17分子の前記生物学的活性が、前記AI17抗体への前記患者での最小限の免疫応答によって阻害される、項目76に記載の方法。
(項目82)
前記AI17抗体への前記患者の免疫応答が、非経口注射による前記AI17抗体の送達と比較して低減される、項目76に記載の方法。
(項目83)
前記AI17抗体への前記患者の前記免疫応答が、非経口注射による前記AI17抗体の送達と比較して約2から30倍の範囲内の量だけ低減される、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記AI17抗体へのアレルギー性反応の発生率が、非経口注射による前記AI17抗体の送達と比較して2から30倍の範囲内の量だけ低減される、項目82に記載の方法。
(項目85)
前記固体AI17抗体投薬量の治療係数が、非経口注射によって送達されるAI17抗体投薬量の治療係数より実質的に高い、項目76に記載の方法。
(項目86)
前記固体AI17抗体の前記治療係数が、非経口注射によって送達される前記AI17抗体投薬量の前記治療係数より約7から30倍の範囲内で高い、項目85に記載の方法。
(項目87)
阻害される前記活性が、Th1モジュレーション;Th2モジュレーション;NKモジュレーション;好中球モジュレーション;単球-マクロファージ系統モジュレーション;好中球モジュレーション;好酸球モジュレーション;B細胞モジュレーション;サイトカインモジュレーション;およびケモカインモジュレーションからなる群から選択される、項目76に記載の方法。
(項目88)
インターロイキン17分子の活性を阻害することによって患者において乾癬性関節炎を処置するための方法であって、
組織貫入部材として成形される固体抗インターロイキン17抗体(AI17抗体)投薬量を提供すること;
前記組織貫入部材が腸壁内に留置されるように前記組織貫入部材に機械的力を加えることで経口摂取後に前記患者の腸壁に前記固体投薬量AI17抗体を貫入させること;および
治療有効用量の前記AI17抗体を腸壁内の前記固体投薬量AI17抗体から前記患者の血流に放出して、前記インターロイキン17分子の生物学的活性を阻害することを含み、前記AI17抗体の前記放出からのいかなる有害反応も、前記AI抗体の非経口注射送達と関連するそれより少ない、方法。
(項目89)
前記インターロイキン17分子がインターロイキン17Aである、項目76に記載の方法。
(項目90)
前記AI17抗体がセクキヌマブである、項目76に記載の方法。
(項目91)
前記AI17抗体がブロダルマブであり、前記インターロイキン17分子の前記生物学的活性が前記インターロイキン17分子の受容体への前記AI17抗体の結合によって阻害される、項目76に記載の方法。
(項目92)
前記AI17抗体がイキセキズマブである、項目76に記載の方法。
(項目93)
体内の他の位置でインターロイキンに実質的に結合する前に門脈に流入して肝臓内のインターロイキンに結合するように、前記AI17抗体が腸間膜血管系に放出される、項目76に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1a】
図1aは、嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を示す側視である。
【0035】
【
図1b】
図1bは、嚥下可能な薬物送達デバイスを備えているシステムの実施形態を示す側視である。
【0036】
【
図1c】
図1cは、嚥下可能な薬物送達デバイスと1セットの使用説明書とを含むキットの実施形態を示す側視である。
【0037】
【
図1d】
図1dは、薬物リザーバを備えている嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を示す側視である。
【0038】
【
図2】
図2は、組織貫入部材を組織に進入させるためのスプリング負荷型始動メカニズムを有する嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を図示する側面像である。
【0039】
【
図3】
図3は、第一の運動変換機を有するスプリング負荷型始動メカニズムを有する嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を図示する側面像である。
【0040】
【
図4】
図4は、第一および第二の運動変換機を有するスプリング負荷型始動メカニズムを有する嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を図示する側面像である。
【0041】
【
図5】
図5は、第一および第二の運動変換機と組織貫入部材および送達部材の係合を図示する透視図である。
【0042】
【
図6】
図6は、単一の組織貫入部材と該組織貫入部材を前進させるための始動メカニズムとを有する嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を図示する断面図である。
【0043】
【
図7a】
図7aは、多数の組織貫入部材と該組織貫入部材を前進させるための始動メカニズムとを有する嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を図示する断面図である。
【0044】
【
図7b】
図7bは、医薬品を送達部位に送達し、送達中に腸壁内にデバイスを係留するための、
図7aの実施形態の組織貫入部材の展開を図示する断面図である。
【0045】
【
図8a】
図8aは、薬物送達デバイスの小腸内での位置決め、薬物を送達するための組織貫入部材の展開を図示する側面図である。
図8aは、該管内での解放要素による前記組織貫入部材の展開前の、小腸内のデバイスを示す。
【
図8b】
図8bは、薬物送達デバイスの小腸内での位置決め、薬物を送達するための組織貫入部材の展開を図示する側面図である。
図8bは、解放要素が分解され、前記組織貫入要素が展開された小腸内のデバイスを示す。
【
図8c】
図8cは、薬物送達デバイスの小腸内での位置決め、薬物を送達するための組織貫入部材の展開を図示する側面図である。
図8cは、前記組織貫入要素が後退し、薬物が送達された小腸内のデバイスを示す。
【0046】
【
図9a-9b】
図9aは、GI管内でカプセルの制御分解を生じさせるように位置決めされた生分解性シームを有するカプセルを含む嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を示す。
図9bは、GI管の中でより小さい断片に分解された後の
図9aの実施形態を示す。
【0047】
【
図10】
図10は、カプセルの生分解を加速するための細孔および/または穿孔を備えている生分解性シームを有するカプセルの実施形態を示す。
【0048】
【
図11】
図11は、GI管内のデバイスの通過および薬物を送達するためのデバイスの操作を含む、嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態の使用を図示する側視である。
【0049】
【
図12a-12b】
図12aおよび12bは、pH感受性生分解性コーティングで被覆されたキャップおよびボディを備えている嚥下可能な薬物送達デバイス用のカプセルの実施形態を図示する側面像であり、
図12aは、組み立てられていない状態のカプセルを示し、
図12bは、組み立てられた状態のカプセルを示す。
【0050】
【
図13a】
図13aは、展開バルーンとアライナバルーンと送達バルーンと多彩な接続チューブとを含有する、折り畳まれていないマルチバルーン組立体の実施形態を図示するものである。
図13aは、展開バルーンの単一ドーム構成についての前記組立体の実施形態を示す。
【
図13b】
図13bは、展開バルーンとアライナバルーンと送達バルーンと多彩な接続チューブとを含有する、折り畳まれていないマルチバルーン組立体の実施形態を図示するものである。
図13bは、展開バルーンの二重ドーム構成についての前記組立体の実施形態を示す。
【0051】
【
図13c】
図13cは、アライナバルーンをはじめとする本明細書に記載するバルーンの1つもしくは複数の実施形態に使用することができる入れ子状バルーン構成の実施形態を図示する透視図である。
【0052】
【
図14a】
図14aは、多区画展開バルーンの実施形態を図示する側面像である;
図14aは、離隔バルブが閉鎖している非膨張状態の前記バルーンを示す。
【
図14b】
図14bは、多区画展開バルーンの実施形態を図示する側面像である。
図14bは、バルブが開口しており、化学反応物が混合されている前記バルーンを示す。
【
図14c】
図14cは、多区画展開バルーンの実施形態を図示する側面像である。
図14cは、膨張状態の前記バルーンを示す。
【0053】
【
図15a】
図15a~15gは、マルチプルバルーン組立体の折り畳み方法を図示する側面像であり、各図中の折り畳み構成は、
図15cが二重ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、
図15dが二重ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関すること、
図15eが単一ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、ならびに
図15fおよび15gが単一ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関する正射図(orthogonal view)であることを除き、展開バルーンの単一ドーム構成と二重ドーム構成の両方に適用される。
【
図15b】
図15a~15gは、マルチプルバルーン組立体の折り畳み方法を図示する側面像であり、各図中の折り畳み構成は、
図15cが二重ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、
図15dが二重ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関すること、
図15eが単一ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、ならびに
図15fおよび15gが単一ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関する正射図(orthogonal view)であることを除き、展開バルーンの単一ドーム構成と二重ドーム構成の両方に適用される。
【
図15c】
図15a~15gは、マルチプルバルーン組立体の折り畳み方法を図示する側面像であり、各図中の折り畳み構成は、
図15cが二重ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、
図15dが二重ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関すること、
図15eが単一ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、ならびに
図15fおよび15gが単一ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関する正射図(orthogonal view)であることを除き、展開バルーンの単一ドーム構成と二重ドーム構成の両方に適用される。
【
図15d】
図15a~15gは、マルチプルバルーン組立体の折り畳み方法を図示する側面像であり、各図中の折り畳み構成は、
図15cが二重ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、
図15dが二重ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関すること、
図15eが単一ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、ならびに
図15fおよび15gが単一ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関する正射図(orthogonal view)であることを除き、展開バルーンの単一ドーム構成と二重ドーム構成の両方に適用される。
【
図15e】
図15a~15gは、マルチプルバルーン組立体の折り畳み方法を図示する側面像であり、各図中の折り畳み構成は、
図15cが二重ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、
図15dが二重ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関すること、
図15eが単一ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、ならびに
図15fおよび15gが単一ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関する正射図(orthogonal view)であることを除き、展開バルーンの単一ドーム構成と二重ドーム構成の両方に適用される。
【
図15f】
図15a~15gは、マルチプルバルーン組立体の折り畳み方法を図示する側面像であり、各図中の折り畳み構成は、
図15cが二重ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、
図15dが二重ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関すること、
図15eが単一ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、ならびに
図15fおよび15gが単一ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関する正射図(orthogonal view)であることを除き、展開バルーンの単一ドーム構成と二重ドーム構成の両方に適用される。
【
図15g】
図15a~15gは、マルチプルバルーン組立体の折り畳み方法を図示する側面像であり、各図中の折り畳み構成は、
図15cが二重ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、
図15dが二重ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関すること、
図15eが単一ドーム構成に特有の折り畳み段階に関すること、ならびに
図15fおよび15gが単一ドーム構成に特有の最終折り畳み段階に関する正射図(orthogonal view)であることを除き、展開バルーンの単一ドーム構成と二重ドーム構成の両方に適用される。
【0054】
【
図16a-16b】
図16aおよび16bは、付属送達組立体を伴う最終折り畳みマルチバルーン組立体の実施形態を図示する正射図である。
【0055】
【
図17a-17b】
図17aおよび17bは、カプセルに挿入された最終折り畳みマルチバルーン組立体の実施形態を図示する正射透視図(orthogonal transparent view)である。
【0056】
【0057】
【
図18b】
図18bは、組織留置特徴部の配置を図示する組織貫入部材の実施形態の下面図である。
【0058】
【
図18c】
図18cは、トロカール先端と逆テーパ型シャフトとを有する組織貫入部材の実施形態の側面図である。
【0059】
【
図18d】
図18dは、別個の薬物収容セクションを有する組織貫入部材の実施形態の側面図である。
【0060】
【
図18e】
図18eおよび18fは、造形された薬物収容セクションを有する組織貫入部材の実施形態の組み立てを示す側面図である。
図18eは、組み立て前の組織貫入部材および造形された薬物セクションを示す。
【
図18f】
図18eおよび18fは、造形された薬物収容セクションを有する組織貫入部材の実施形態の組み立てを示す側面図である。
図18fは、組み立て後を示す。
【0061】
【
図19】
図19は、送達組立体の実施形態を組み立てるために使用した構成要素および段階の多彩な図を提供する。
【0062】
【
図20a】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【
図20b】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【
図20c】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【
図20d】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【
図20e】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【
図20f】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【
図20g】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【
図20h】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【
図20i】
図20a~20iは、医薬品を腸壁に送達するための嚥下可能なデバイスの操作方法を図示する多彩な図を提供する。
【0063】
【
図21a】
図21aおよび21bは、本発明の実施形態によって提供される1つまたは複数の抗体が結合および/または中和するように構成されるインターロイキンを含むインターロイキンの、様々な情報を例示する表である。
【
図21b】
図21aおよび21bは、本発明の実施形態によって提供される1つまたは複数の抗体が結合および/または中和するように構成されるインターロイキンを含むインターロイキンの、様々な情報を例示する表である。
【0064】
【
図22a-22b】
図22aおよび22bは、嚥下可能なカプセルの実施形態によって毎日(
図22a)、および従来の手段を使用して注射によって毎月送達された(
図22b)セクキヌマブのシミュレーションされた血漿濃度プロファイルである。
【0065】
【
図23a-23b】
図23aおよび23bは、嚥下可能なカプセルの実施形態によって毎日(
図23a)、および従来の手段を使用して注射によって毎月送達された(
図23b)ブロダルマブのシミュレーションされた血漿濃度プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、身体の様々な位置内に医薬品を送達するためのデバイス、システムおよび方法を提供する。本明細書において用いる場合、用語「医薬品」は、薬物または他の治療剤はもちろん1種もしくは複数種の医薬用賦形剤も含むことができる、任意の形態の医薬製剤を指す。多くの実施形態は、GI管内に医薬品を送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。特定の実施形態は、小腸または他のGI器官の壁に医薬品を送達するための嚥下可能なデバイス、例えばカプセルを提供する。本明細書において用いる場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸および肛門を指し、その一方で「腸管」は、小腸および大腸を指す。本発明の様々な実施形態を、腸管はもちろん全GI管内への医薬品の送達用に構成および配列することができる。また本明細書において用いる場合、用語「約」は、パラメータ、変数、寸法など(例えば、t1/2、tmax、cmaxなどの薬物動態パラメータ)の所与の明記された数値の10%以内を意味する。
【0067】
ここで
図1~11を参照して、小腸壁などの腸管内の送達部位DSへの医薬品100の送達のためのデバイス10の実施形態は、少なくとも1本のガイドチューブ30と、前記少なくとも1つのガイドチューブ内に位置するかまたは別様に前記少なくとも1つのガイドチューブ内を前進することができる1つもしくは複数の組織貫入部材40と、送達部材50と、始動メカニズム60と、解放要素70とを備えているカプセル20を含む。本明細書に製剤100と記載することもある、医薬品100は、典型的に、少なくとも1つの薬物または治療剤101を含み、当該技術分野において公知の1種もしくは複数種の医薬用賦形剤も含むことがある。まとめると、送達部材50およびメカニズム60のうちの1つもしくは複数が、腸管壁内への医薬品100の送達用の手段を含むことがある。本明細書において企図される他の送達手段としては、1つもしくは複数の拡張可能なバルーン(例えば、送達バルーン172)または本明細書に記載する他の拡張可能なデバイス/部材が挙げられる。
【0068】
液体、半液体もしくは固体形態の医薬品100または三形態すべての医薬品の送達用にデバイス10を構成することができる。医薬品/製剤100の固体形態としては、粉末またはペレットの両方を挙げることができる。半液体形態としては、スラリーまたはペーストを挙げることができる。いかなる形態であっても、製剤100は、医薬品をデバイスから進出させ、腸壁(または、GI管内の他の管腔壁)に進入させ、その後、腸壁内で分解して、様々な実施形態で、本明細書に記載される1つまたは複数の抗インターロイキン抗体(または、他のインターロイキン中和タンパク質)に相当し得る薬物または他の治療剤101を放出することを可能にする形状および材料一貫性を望ましくは有する。前記材料一貫性は、製剤の(体液中での)硬度、多孔度および溶解度のうちの1つもしくは複数を含み得る。前記材料一貫性を次のうちの1つもしくは複数によって達成することができる:i)製剤を作製するために用いる圧縮力;ii)当該技術分野において公知の1つもしくは複数の医薬用崩壊剤の使用;iii)他の医薬用賦形剤の使用;iv)製剤(例えば、微粒子化粒子)の粒径および分布;ならびにv)当該技術分野において公知の微粒子化方法および他の粒子形成方法の使用。製剤100についての好適な形状としては、円柱形、立方体、長方形、円錐形、球形、半球形およびこれらの組み合わせが挙げられる。また、製剤100の特定の表面積および体積を規定し、それに伴ってこれら2つの比を規定するように前記形状を選択することができる。また、前記表面積対体積比を用いて、GI管内の腸または他の管腔壁内で選択された分解速度を達成することができる。より大きい比(例えば、単位体積あたりの表面積のより大きな量)を用いてより速い分解速度を達成することができ、逆もまた真である。特定の実施形態において、前記表面積対体積比は、約1:1から100:1の範囲であり得、2:1、5:1、20:1、25:1、50:1および75:1の具体的な実施形態がある(この場合。約は5%以内である)。製剤/医薬品100を、典型的には組織貫入部材40の管腔44内に事前にパッケージするが、カプセル20の内部24内の別の位置に、または液体もしくは半液体の場合には、密閉リザーバ27内に収容することもできる。医薬品を、管腔内に合うように事前に造形し得るか、または、例えば粉末形態でパッケージし得る。典型的に、デバイス10は、医薬品100の一部として単一薬物101を送達するように構成される。しかし、一部の実施形態では、単一または多数の医薬品100に配合することができる第一、第二または第三の薬物を含む多数の薬物101の送達用にデバイス10を構成することができる。多数の医薬品/薬物を有する実施形態については、別個の組織貫入部材40の中に、またはカプセル20内の別個の区画もしくはリザーバ27内に、前記医薬品を収容することができる。もう1つの実施形態では、第一の薬物101を含有する医薬品100の第一の用量102を貫入部材(単数または複数)40内にパッケージすることができ、(同じまたは異なる薬物101を含有する)医薬品100の第二の用量103を
図1bの実施形態に示すようにカプセルの表面25に被覆することができる。2回用量の医薬品102および103での薬物101は、同じであっても異なっていてもよい。かくして、同じまたは異なる薬物の二峰性薬物動態放出(bimodal pharmacokinetic release)を達成することができる。医薬品100の第二の用量103は、それが小腸内で放出されるのを確実にし、また医薬品100の徐放を達成するために腸溶コーティング104を有することができる。腸溶コーティング104としては、本明細書に記載するかまたは当該技術分野において公知の1つのもしくは1つより多い腸溶コーティングを挙げることができる。
【0069】
小腸壁またはGI管内の他の位置の壁内への医薬品100の送達のためのシステム11は、選択された状態(単数または複数)の処置用の1つのもしくは1つより多い医薬品100を収容しているデバイス10を含むことができる。一部の実施形態において、前記システムは、
図1bの実施形態に示すように、デバイス10と通信するための、本明細書に記載する携帯式デバイス13を備えることができる。システム11は、
図1cの実施形態に示すように、パッケージング12にパッケージされているシステム11と1セットの使用説明書15とを含むキット14として構成され得る。前記説明書は、1つもしくは複数の事象、例えば、食事の摂取または生理計測、例えば血糖、コレステロールなどに関してデバイス10を使う時を患者に知らせることができる。かかる実施形態において、キット14は、選択された投与期間にわたっての、例えば、処置すべき状態に応じて1日、1週間または何週間にもわたっての医薬品100のレジメンを収容している多数のデバイス10を備えることができる。
【0070】
カプセル20は、嚥下され、腸管を通過するようなサイズである。このサイズを、送達すべき薬物の量ならびに患者の体重および成人対小児利用に応じて調整することもできる。カプセル20は、内容積24と、ガイドチューブ30用サイズの1つのもしくは1つより多いアパーチャ26を有する外面25と備えている。デバイス10の他の構成要素(例えば、始動メカニズムなど)に加えて、前記内容積は、1つもしくは複数の区画またはリザーバ27を備えることができる。当該技術分野において公知の様々な生体適合性ポリマーからカプセル20の1つもしくは複数の部分を製造することができ、この生体適合性ポリマーには様々な生分解性ポリマーが含まれ、これらの生分解性ポリマーは、好ましい実施形態ではPGLA(ポリ乳酸-co-グリコール酸)を含み得る。他の好適な生分解性材料としては、本明細書に記載する様々な腸溶性材料、ならびにラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。本明細書中でさらに詳細に説明するように、様々な実施形態において、カプセル20は、より容易に腸管を通過させられるより小さい断片23に制御可能に分解するように生分解性材料のシーム22を備えることができる。加えて、様々な実施形態において、前記カプセルは、蛍光透視法、超音波または他の医療画像診断法を用いるデバイスの定位のための様々な放射線不透過性またはエコー源性材料を含むことができる。具体的な実施形態において、前記カプセルのすべてまたは一部分は、
図1aおよび1bの実施形態に示すように、放射線不透過性/エコー源性マーカー20mを含むことができる。使用すると、かかる材料により、GI管内のデバイス10の定位が可能になるばかりでなく、該デバイスのGI管の通過時間の決定も可能になる。
【0071】
好ましい実施形態において、組織貫入部材40は、ガイドチューブ30内に位置し、該ガイドチューブ30は、小腸壁またはGI管の他の部分の壁などの組織への部材40の進入を導き、支持するのに役立つ。組織貫入部材40は、典型的には中空針または他の類似の構造を含み、ならびに管腔44と腸管壁IWの選択可能な深さに貫入するための組織貫入端45とを有する。部材40は、本明細書に記載する運動変換機90との係合のためのピン41も備えることができる。貫入深度は、部材40の長さ、本明細書に記載する運動変換機90の構成、ならびに部材40上への止めまたはフランジ40sの配置によって制御することができ、前記止めまたはフランジ40sは、一部の実施形態では、本明細書に記載するピン41に対応し得る。医薬品100は、典型的には管腔44を通って組織に送達される。多くの実施形態において、管腔44には所望の医薬品100が事前にパッケージされており、該医薬品100は、送達部材50または他の前進手段を用いて(例えば、部材40のしぼめることができる実施形態に加えられる力によって)該管腔から進出させられる。代案として、医薬品100をカプセル20の別の位置/区画から管腔44に進入させることができる。一部の実施形態では、組織貫入部材40のすべてまたは一部分を医薬品100自体から製造することができる。これらの実施形態および関連実施形態において、前記医薬品は、小腸壁などの腸壁に貫入し、該腸壁内に留置されるように構成された(返しを伴うまたは伴わない)針または矢のような構造を有する場合がある。前記矢を前記医薬品、用量、および腸壁への所望の貫入深度に応じて、サイズ調整および造形することができる。製薬技術分野において公知の様々な圧縮成形法を用いて、医薬品100を矢、ペレットまたは他の形状にすることができる。
【0072】
様々な実施形態において、デバイス10は、
図7aおよび7bの実施形態に示すように第二42および第三43の組織貫入部材40を備えることができるが、追加の部材も企図される。各組織貫入部材40を使用して、同じまたは異なる医薬品100を送達することができる。好ましい実施形態では、医薬品100の送達中に腸壁IW上にカプセルを係留するために、組織貫入部材40をカプセル20の外周21の周囲に実質的に対称に割り当てることができる。かかる方法でのカプセル20の係留は、医薬品の送達中に発生する蠕動収縮によってカプセルが転置されるかまたは動かされる尤度を低下させる。具体的な実施形態では、係留力の量を、小腸の蠕動収縮中に加えられる典型的な力に合せることができる。湾曲した形状または弓形形状を有するように構成された組織貫入部材40の一部またはすべてによって係留をさらに助長することができる。
【0073】
送達部材50は、組織貫入部材管腔44を通って医薬品100を前進させ、腸壁IWに進入させるように構成される。したがって、送達部材50の少なくとも一部分は、組織貫入部材管腔44内を前進可能であり、したがって、部材50は、送達部材管腔44に内嵌するように構成されたサイズおよび形状(例えば、ピストン様形状)を有する。
【0074】
一部の実施形態において、前記送達部材の遠位端50d(組織に進入させる末端)は、プランジャ要素51を有することができ、このプランジャ要素51は、医薬品を組織貫入部材管腔44内に前進させ、また該管腔とのシールを形成する。プランジャ要素51は、送達部材50に内蔵され得るか、または送達部材50に取り付けられ得る。好ましくは、送達部材50は、針管腔44内の固定距離を進んで、固定または定量用量の薬物を腸壁IW内に送達するように構成される。これは、送達部材の直径の選択(例えば、直径を遠位方向に漸減させることができる)、組織貫入部材の直径(その遠位端で狭くすることができる)、止めの使用、および/または始動のメカニズムのうちの1つもしくは複数によって達成することができる。しかし、一部の実施形態では、GI管内での1つのもしくは複数の感知条件などの様々な因子に応答して部材50の行程または進行距離を原位置で調整することができる。原位置での調整は、始動メカニズム60の電気機械式実施形態に連結されたロジックリソース29(制御装置29cを含む)の使用によって達成することができる。これにより、医薬品の様々な用量、および/または医薬品を腸壁に注入する距離の変化が可能になる。
【0075】
組織貫入部材40または送達部材50の少なくとも一方に始動メカニズム60を連結させることができる。この始動メカニズムは、組織貫入部材40を腸壁IW内の選択可能な距離に進入させるように構成されることはもちろん、送達部材を前進させて医薬品100を送達し、その後、その組織貫入部材を腸壁から退出させるようにも構成される。様々な実施形態において、始動メカニズム60は、解放要素70によって解放されるように構成されるスプリング負荷型メカニズムを含む場合がある。好適なスプリング80としては、コイル(円錐形のスプリング)とリーフスプリングの両方を挙げることができるが、他のスプリング構造も企図される。特定の実施形態では、スプリング80を実質的に円錐形にして、圧縮状態のスプリング長をさらにスプリングの圧縮長が数コイル(例えば、2もしくは3)程度またはたった1コイル程度の厚みであるポイントまで低減させることができる。
【0076】
特定の実施形態において、始動メカニズム60は、
図2、4および8a~8cの実施形態に示すように、スプリング80、第一の運動変換機90、および第二の運動変換機94、および軌道部材98を含むことができる。解放要素70は、スプリング80に該スプリングを圧縮状態で保持するように連結されるので、該解放要素の分解によって該スプリングは解放される。スプリング80を解放要素70に掛け金または他の接続要素81によって連結することができる。第一の運動変換機90は、組織貫入部材40を腸壁または他の組織に進入させ、腸壁または他の組織から退出させるようにスプリング80の運動を変換するように構成される。第二の運動変換機94は、送達部材50を組織貫入部材管腔44に進入させるようにスプリング80の運動を変換するように構成される。運動変換機90および94は、スプリングによって押され、変換機90の軌道部材管腔99に内嵌しているロッドまたは他の軌道部材98に沿って進む。軌道部材98は、変換機90の経路へ導くのに役立つ。変換機90および94は、所望の運動を生じさせるように組織貫入部材40および/または送達部材50と(直接または間接的に)係合している。それらは、スプリング80のその長軸に沿った運動を組織貫入部材40および/または送達部材50の直交する運動に変換するように、形状および他の特徴が構成されているが、他の方向での変換も企図される。前記運動変換機は、くさび形状、台形形状または湾曲した形状を有し得るが、他の形状も企図される。特定の実施形態において、第一の運動変換機90は、
図2、3および4の実施形態に示すように、台形形状90tを有し、および溝孔93を含み、該溝孔93は、該溝孔の中を進む前記組織貫入部材上のピン41と係合し得る。溝孔93は、変換機90の全形状と全く同じかまたは、そうでなければ該全形状に相当する台形形状93tを有する場合もある。溝孔93は、前記台形の上り勾配部分91の間は組織貫入部材40を押すのに役立ち、その後、下り勾配部分92の間はそれを引っ張り戻すのに役立つ。1つの変形実施形態おいて、運動変換機90および94の一方または両方は、カムまたはカム様デバイスを含むことができる(図示なし)。前記カムをスプリング80によって回転させて、組織貫入部材および/または送達部材40および50と係合させることができる。カプセル10に内嵌するための選択された量の小型化を可能にするために当該技術分野において公知の様々なMEMSベースの方法を用いて、運動変換機90および94をはじめとするメカニズム60の1つもしくは複数の構成要素(ならびにデバイス10の他の構成要素)を製造することができる。また、本明細書に記載するように、当該技術分野において公知の様々な生分解性材料からそれらを形成することができる。
【0077】
他の変形実施形態において、始動メカニズム60は、電気機械式デバイス/メカニズム、例えば、ソレノイドまたは圧電デバイスも含むことができる。1つの実施形態において、メカニズム60に使用される圧電デバイスは、非展開状態および展開状態を有する造形された圧電素子を含むことができる。この素子が電圧の印加により展開状態になり、その後、電圧の除去または電圧の他の変化により非展開状態に戻るように、この素子を構成することができる。本実施形態および関連実施形態は、前記組織貫入部材を前進させ、その後それを引き抜くという両方をするための始動メカニズム60の往復運動を可能にする。カプセル周囲の小腸の蠕動収縮によるカプセル20の圧縮から起こる変形などの機械的変形によって電圧を発生させる圧電ベースのエネルギー変換機または電池を使用して発生させて、前記圧電素子のための電圧を得ることができる。圧電ベースのエネルギー変換機のさらなる説明は、米国特許出願第12/556,524号において見つけることができ、該米国特許出願は、あらゆる目的で参考として本明細書に完全に援用される。1つの実施形態において、組織貫入部材40の展開は、実際には圧電素子用の電圧を発生させるための機械的エネルギーを提供する小腸の蠕動収縮から誘発され得る。
【0078】
解放要素70は、典型的に、始動メカニズム60および/または該始動メカニズムに連結されたスプリングに連結される;しかし、他の構成も企図される。好ましい実施形態において、解放要素70は、
図2の実施形態に示すように、スプリング80に連結されており、スプリング80は、カプセル20内に該スプリングが圧縮状態85で保持されるように位置する。解放要素70の分解は、スプリング80を解放して、始動メカニズム60を始動させる。したがって、解放要素70は、かくしてアクチュエータ70aとして機能することができる(アクチュエータ70は、スプリング80、およびメカニズム60の他の要素も含むことがある)。さらに下で説明するように、解放要素70/アクチュエータ70aは、治療剤製剤100をカプセル20に収容している第一の構成、および該治療剤製剤を該カプセルから進出させて小腸壁または腸管内の他の管腔壁に進入させる第二の構成を有する。
【0079】
多くの実施形態において、解放要素70は、小腸または大腸内の化学的条件、例えばpHへの曝露により分解するように構成された材料を含む。典型的に、解放要素70は、小腸内の選択されたpH、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6 8.0、またはそれより大きいpHへの曝露により分解するように構成される。前記解放要素を、例えば7.0から7.5などの特定のpH範囲内で分解するように構成することもできる。特定の実施形態では、解放要素70が分解するpH(本明細書では分解pHと定義する)を送達すべき特定の薬物について選択して、その選択されたpHに対応する小腸内の位置でその薬物を放出させることができる。さらに、多数の医薬品100を有するデバイス10の実施形態について、該デバイスは、第一のpHで分解するように構成された第一の解放要素70(第一の薬物を送達するための始動メカニズムに連結されている)、および第二のpHで分解するように構成された第二の解放要素70(第二の薬物を送達するための始動メカニズムに連結されている)を備えることができる(様々な数の薬物のためのさらなる数の解放要素が企図される)。
【0080】
解放要素70を小腸(または他のGI位置)内の他の条件に応じて分解するように構成することもできる。特定の実施形態では、解放要素70を小腸内の流体における特定の化学的条件、例えば、食事(例えば、脂肪、デンプンまたはタンパク質を含有する食事)の摂取後に発生する条件に応じて分解するように構成することができる。かくして、医薬品100の放出を食事の摂取と実質的に同調させるかまたは別様にタイミングを合わせることができる。
【0081】
様々なアプローチが解放要素70の生分解について企図される。特定の実施形態において、小腸(またはGI管内の他の位置)内での1つもしくは複数の条件からの解放要素70の生分解を次のアプローチのうちの1つもしくは複数によって達成することができる:i)解放要素のための材料の選択、ii)それらの材料の架橋量、およびiii)解放要素の厚みおよび他の寸法。より少ない架橋量およびまたはより薄い寸法は、分解速度を増加させることができ、逆もまた真である。解放要素のための好適な材料は、生分解性材料、例えば、腸内のより高いpHへの曝露により分解するように構成されている様々な腸溶性材料を含み得る。好適な腸溶性材料としては、次のものが挙げられるが、それらに限定されない:酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、共重合メタクリル酸/メタクリル酸メチルエステルならびに当該技術分野において公知の他の腸溶性材料。選択された腸溶性材料を1つのもしくは1つより多い他のポリマーと共重合させてまたは別様に組み合わせて、生分解に加えて多数の他の特定の材料特性を得ることができる。かかる特性としては、限定ではないが、剛性、強度、可撓性および硬度を挙げることができる。
【0082】
代替実施形態において、解放要素70は、フィルムまたはプラグ70pを含むことができ、該フィルムまたはプラグ70pは、ガイドチューブ30に外嵌するかまたは別様にガイドチューブ30をブロックし、該ガイドチューブの内部に組織貫入部材40を保持する。これらの実施形態および関連実施形態において、組織貫入部材40は、解放要素が十分に分解されると該組織貫入部材を解放し、その後その組織貫入部材がガイドチューブから飛び出して腸壁に貫入するような、スプリング負荷型始動メカニズムに連結される。さらに他の実施形態では、組織貫入部材40を適所に保持する掛け金として機能するように解放要素70を造形することができる。これらの実施形態および関連実施形態において、前記解放要素は、カプセル20の外部に位置する場合もあり、内部に位置する場合もある。後者の場合、カプセル20および/またはガイドチューブ30は、解放要素の分解を可能にするために該カプセル内に腸液が入ることを可能にする。
【0083】
一部の実施形態において、小腸内のカプセルの存在を検出するセンサ67、例えばpHセンサ68または他の化学的センサによって始動メカニズム60を始動させることができる。そのとき、センサ67は、始動メカニズム60に、または始動メカニズム60に連結された電子制御装置29cにシグナルを送信して、該メカニズムを始動させることができる。pHセンサ68の実施形態は、電極ベースのセンサを含み得るか、または、それは、機械ベースのセンサ、例えば、小腸内の選択されたpHもしくは他の化学的条件への曝露により縮むかもしくは伸びるポリマーであり得る。関連実施形態において、伸縮可能センサ67は、該センサの伸長または収縮からの機械的な動きを用いることによりそれ自体が始動メカニズム60を構成する場合もある。
【0084】
小腸(またはGI管内の他の位置)内のデバイスを検出するためのもう1つの実施形態によると、センサ67は、腸管内の特定の位置内でカプセルが受けている蠕動収縮の数を検出するための歪ゲージなどの圧力/力センサを含むことができる(かかる実施形態において、カプセル20は、望ましくは、蠕動収縮中に小腸によって狭持されるようなサイズである)。GI管内の異なる位置は、異なる数の蠕動収縮を有する。小腸は、毎分12から9回の間の収縮を有し、小腸の長さを下るにつれてその頻度が減少する。したがって、1つもしくは複数の実施形態によると、蠕動収縮数の検出を用いて、カプセル20が小腸内にあるかどうかを決定することができるばかりでなく、小腸内の相対位置も決定することができる。使用すると、これらの実施形態および関連実施形態は、小腸内の特定の位置における医薬品100の放出を可能にする。
【0085】
内部起動薬物送達(例えば、解放要素および/またはセンサの使用)の代案または補足として、一部の実施形態において、ユーザーは、当該技術分野において公知のRF、磁気または他のワイヤレスシグナル送信手段によって医薬品100を送達するための始動メカニズム60を外部から起動させることができる。これらの実施形態および関連実施形態において、ユーザーは、
図1bの実施形態に示すような携帯式通信デバイス13(例えば、携帯式RFデバイス、例えば携帯電話)を使用して、デバイス10からの受信シグナル17を送信することができる。かかる実施形態において、嚥下可能なデバイスは、トランスミッタ28、例えばRFトラシーバチップまたは他の類似の通信デバイス/回路部品を含むことができる。携帯式デバイス13は、シグナル送信手段を含むばかりでなく、デバイス10が小腸にまたはGI管内の他の位置にあるときユーザーに情報を与える手段も含むことができる。後者の実施形態を、シグナル送信のためにトランスミッタ28に連結されたロジックリソース29(例えば、プロセッサ29)を使用することによって実行して、いつデバイスが小腸または他の位置にあるかを検出して(例えば、センサからの入力をシグナル送信することにより)ユーザーにシグナル送信(singe)することができる。ロジックリソース29は、そのプロセスの1つもしくは複数の態様を制御するための制御装置29cを(ハードウェアまたはソフトウェアのいずれかで)備えることができる。同じ携帯式デバイスを、始動メカニズム60が起動され、選択医薬品100が送達されたとき(例えば、プロセッサ29およびトランスミッタ28を使用して)ユーザーに警告するように構成することもできる。かくして、ユーザーに、医薬品100が送達されたことの確認が提供される。これにより、ユーザーが他の適切な薬物/治療剤を摂取することはもちろん、他の関連した決定を行うこと(例えば、糖尿病患者が食事を食べるかまたは食べないか、およびいかなる食物を食べるべきか)も可能になる。始動メカニズム60に優先して嚥下可能なデバイス10にシグナルを送信するように前記携帯式デバイスを構成することもでき、その結果、医薬品100の送達を防止するか、遅延させるか、または加速させるように前記携帯式デバイスを構成することもまたできる。使用すると、かかる実施形態により、他の症状および/または患者の行動(例えば、食事を食べること、寝入ることを決めること、運動など)に基づいて医薬品の送達を防止するか、遅延させるか、または加速させることへのユーザーの介在が可能になる。ユーザーは、カプセルを嚥下してから選択期間後に、始動メカニズム60を外部から起動させることもできる。その期間を、食物がユーザーのGI管を通って該管内の特定の位置、例えば小腸に移動するための典型的な通過時間または通過時間の範囲に相関させることができる。
【0086】
特定の実施形態において、カプセル20は、
図10aおよび10bの実施形態に示すように、GI管の通過を助長するような選択可能なサイズおよび形状のカプセル片23を生じさせるように制御可能に分解する生分解性材料のシーム22を備えることができる。シーム22は、
図10の実施形態に示すように、生分解を加速させるために流体がシームの中に入るための細孔または他の開口部22pも含むことができる。シーム22の生分解を加速させるための他の手段としては、シームへプレストレスを加えること、および/または
図10の実施形態にも示すようにシームに穿孔22fを備えさせることを挙げることができる。さらに他の実施形態では、シーム22は、外部からまたは内視鏡(または他の低侵襲法)により施される超音波を使用してカプセルをより小さい断片に分解することができる超音波エネルギー、例えば高周波超音波(HIFU)の吸収によって容易に分解される材料で構築され得、そして/または、前述のようにして容易に分解される構造を有し得る。
【0087】
シーム22のための好適な材料としては、本明細書に記載する1種もしくは複数種の生分解材料、例えばPGLA、グリコール酸などを挙げることができる。ポリマー技術分野において公知の様々な接合法、例えば、成形、ホットメルト接合などを用いてカプセルボディ20にシーム22を取り付けることができる。加えて、同じく生分解性材料から製造されるカプセル20の実施形態については、シーム22のより急速な生分解を次のうちの1つもしくは複数によって達成することができる:i)より急速に生分解される材料からのシームの製造、ii)シームへプレストレスを与えること、またはiii)シームへの穿孔。GI管内で嚥下可能なデバイスの制御分解を生じさせるために生分解性シーム22を使用するという概念を他の嚥下可能なデバイス、例えば嚥下可能なカメラ(または他の嚥下可能な撮像デバイス)に応用して、GI管通過を助長し、かかるデバイスがGI管内に固着される尤度を低下させることができる。したがって、生分解性シーム22の実施形態を嚥下可能な撮像デバイスおよび他の嚥下可能なデバイスに適合させることができる。
【0088】
本発明のもう1つの態様は、嚥下可能な薬物送達デバイス10の1つもしくは複数の実施形態を使用するGI管壁への薬物および他の治療剤の(医薬品100の形態での)送達方法を提供する。ここで、かかる方法の例示的実施形態を説明することにする。説明する薬物送達実施形態は、小腸SI内で行われる。しかし、これが例示的なものであること、ならびに胃および大腸をはじめとするGI管内の多数の位置における薬物の送達に本発明の実施形態を使用することができることは理解されるはずである。論述を容易にするために、嚥下可能な薬物送達デバイス10を本明細書では時としてカプセルと呼ぶことにする。上で説明したように、様々な実施形態において、デバイス10を密封パッケージング12の中にキット11としてパッケージすることができ、該パッケージング12は、デバイス10および1セットの使用説明書15を備えている。患者が携帯式デバイス13を使用している場合、該患者は、手作業で、または説明書15またはパッケージング12上にあるバーコード18(もしくは他の識別表示18)によってデバイス13にデータを入力するようにとの指示を受けることができる。バーコードを使用する場合、患者は、デバイス13上のバーコードリーダ19を使用してバーコードをスキャンすることになるだろう。パッケージング12を開け、説明書15を読み、一切の必要データを入力した後、患者は、嚥下可能な薬物送達デバイス10の実施形態を嚥下する。薬物に応じて、患者は、食事と共に(食事前、中もしくは後に)または生理計測に関連してデバイス10を使うことができる。カプセル20は、
図11の実施形態に示すように、蠕動作用によってGI管を通過するようなサイズであり、患者の胃Sを通って小腸SIへと進む。本発明の1つもしくは複数の実施形態によると、小腸に入ると、解放要素70は、小腸内の塩基性pH(または小腸に特有の他の化学的もしくは物理的条件)によって分解されて、始動メカニズム60を始動させ、医薬品100を小腸SIの壁内に送達する。中空針または他の中空組織貫入部材40を含む実施形態については、始動メカニズム60を使用して針40を腸壁IWの粘膜内の選択距離に進入させることによって医薬品送達が遂行され、その後、送達部材50の前進により針管腔40を通して医薬品を注入する。(例えば、スプリングの反動により)送達部材50を退出させ、その後、針40を退出させてカプセルのボディ内に戻し、それによって腸壁から取り外す。多数の針を有するデバイス10の実施形態については、第二または第三の針42、43も使用して、追加用量の同じ薬物または別々の薬物101を送達することができる。針前進を実質的に同時に行うことができるか、または逐次的に行うことができる。多数の針を使用する好ましい実施形態では、針前進を実質的に同時に行って、薬物送達中、小腸内にデバイス10を係留することができる。
【0089】
医薬品送達後に、デバイス10は、大腸LIをはじめとする腸管を通過し、最終的には排泄される。生分解性シーム22または他の生分解性部分を有するカプセル20の実施形態については、
図9aおよび9bの実施形態に示すように、カプセルが腸管内でより小さい断片に分解されて、腸管通過および腸管からの排泄を助長する。生分解性組織貫入針/部材40を有する特定の実施形態では、針が腸壁に固着されるはずである場合、該針が生分解して該壁からカプセル20を放出する。
【0090】
センサ67を備えているデバイス10の実施形態については、始動メカニズム60および/または該始動メカニズムに連結されたプロセッサ29/制御装置29cにシグナルを送信するセンサによってメカニズム60の始動を遂行することができる。外部始動能力を備えているデバイス10の実施形態については、ユーザーは、カプセルを嚥下してから選択期間後に、始動メカニズム60を外部から起動させることができる。その期間を、食物がユーザーのGI管を通って該管内の特定の位置、例えば小腸に移動するための典型的な通過時間または通過時間の範囲に相関させることができる。
【0091】
上記方法の1つもしくは複数の実施形態を、様々な疾患および状態を処置するための治療有効量の様々な薬物および他の治療剤101を含有する製剤100の送達に用いることができる。これらには、別の方法では胃内での化学的分解に起因して注射を必要とする多数の大分子ペプチドおよびタンパク質が含まれる。患者の体重、年齢または他のパラメータについて個々の薬物の投薬量を調整することができる。また、本発明の1つもしくは複数の実施形態によって送達したとき、所望の効果または治療効果を達成するための薬物101(例えば、血糖調節のためのインスリン)の用量は、従来の経口送達によって薬物が送達された場合(例えば、胃で消化され小腸壁を通して吸収される嚥下可能なピル)に必要とされる量未満であり得る。これは、胃内の酸および他の消化液によって薬物が分解されないこと、および薬物のほんの一部分のみとは対照的に、すべてが小腸(または腸管の他の管腔、例えば大腸、胃など)の壁内に送達されることに起因する。薬物101に応じて、製剤100で送達される用量102は、所望の治療効果(例えば、血糖調節、発作調節など)を達成するために従来の経口送達(例えば、ピル)によって送達される用量の100から5%の範囲であり得るが、よりいっそう少ない量も企図される。特定の用量低減は、特定の薬物、従来の経口的方法のためにGI管で起こる分解の量、投薬の頻度対本明細書に記載される嚥下可能なカプセルの実施形態を使用した投薬、処置される状態ならびに患者の体重、年齢および状態に基づいて調整することができる。(腸管内での分解レベルが分かっている)一部の薬物については、標準的用量低減を用いることができる(例えば、10から20%)。より分解されやすく、かつ吸収不良である薬物については、より大量の用量低減を用いることができる。かくして、摂取用量が低下するので、デバイス10によって送達される特定の薬物(単数または複数)の潜在的毒性および他の副作用(例えば、胃痙攣、下痢、過敏性腸効果、出血など)を低減させることができる。そしてまた、これは、患者の重症度と副作用発生率の両方が低減されるので、患者コンプライアンスを向上させる。薬物101の用量低減を利用する実施形態のさらなる恩恵としては、患者がその薬物に対する耐性を発現する(より高い用量を必要とする)尤度低減および、抗生物質の場合には、患者が耐性菌株を発生させる尤度の低減が挙げられる。また、小腸のセクション(複数)が除去されたかまたはその動作(例えば、消化)長が有効に短縮された、胃バイパス術および他の手技を受けている患者については、他の用量低減レベルを達成することができる。
【0092】
単一薬物の送達に加えて、嚥下可能な薬物送達デバイス10およびそれらの使用方法の実施形態を用いて、多数の状態の処置または特定の状態の処置のための複数の薬物(例えば、HIV AIDS処置のためのプロテアーゼ阻害剤)を送達することができる。使用すると、かかる実施形態により、患者は、特定の状態(単数または複数)のために多数の医薬品を摂取しなければならない必要性をなしで済ませることができる。また、上記実施形態は、2種のもしくは2種より多い薬物のレジメンが小腸内に、そしてしたがってほぼ同時に血流内に送達され、吸収されることを助長するための手段を提供する。化学組成、分子量などが異なるので、薬物は、腸壁を通して異なる速度で吸収され得、その結果、異なる薬物動態分布曲線が生じ得る。本発明の実施形態は、実質的に同時に所望の薬物混合物を注射することによりこの論点に対処する。そしてまた、このことが薬物動態を向上させ、したがって、選択された薬物混合物の効力を向上させる。加えて、多数の薬物を摂取する必要性をなくすことは、認知または身体能力障害を有する者を含めて、1つもしくは複数の長期慢性状態を有する患者にとって特に有益である。
【0093】
様々な用途において、上記方法の実施形態を用いて、薬物および治療剤101を含む製剤100を送達して、多数の医学的状態および疾患の処置を提供することができる。本発明の実施形態で処置することができる医学的状態および疾患としては、限定ではないが、癌、ホルモン状態(例えば、甲状腺機能低下/亢進、成長ホルモン状態)、骨粗鬆症、高血圧、高コレステロールおよびトリグリセリド、糖尿病および他のグルコース調節障害、感染(局所または全身性、例えば、敗血症)、癲癇および他の発作障害、骨粗鬆症、冠不整脈(動脈性および静脈性両方)、冠動脈虚血、貧血または他の類似の状態を挙げることができる。さらに他の状態および疾患も企図される。
【0094】
多くの実施形態において、抗体または他の治療剤の注射(または他の非経口送達形態、例えば坐剤)の必要は無いものの、その代り、小腸壁またはGI管の他の部分の壁内に送達される治療剤のみに依存して、特定の疾患または状態の処置を行うことができる。類似して、患者は、従来の経口形態の薬物または他の治療剤を摂取する必要がないが、重ねて、嚥下可能なカプセルの実施形態を用いる小腸壁内への送達にしか依存しなくてもよい。他の実施形態では、小腸壁内に送達される治療剤(単数または複数)を注射用量の該剤と共に送達することができる。例えば、患者は、嚥下可能なカプセルの実施形態を用いて日用量の治療剤を摂取することができるが、ただ数日ごとにまたは患者の状態(例えば、高血糖)が必要とするときに注射用量を摂取する必要があるだけである。経口形態で旧来送達されている治療剤についても同じことが言える(例えば、患者は、前記嚥下可能なカプセルを摂取することができ、そして必要に応じて従来の経口形態の剤を摂取することができる)。かかる実施形態で送達される投薬量(例えば、嚥下され注射される用量)を必要に応じて調整することができる(例えば、標準用量応答曲線および他の薬物動態法を用いて適切な投薬量を決定することができる)。また、従来の経口手段によって送達することができる治療剤を使用する実施形態については、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して送達される用量は、胃内でまたは腸管の他の部分の中でその剤の分解が殆どまたは全くないので、その剤の経口送達のために通常施される投薬量より下に調整することができる(この場合もまた、標準用量応答曲線および他の薬物動態法を適用することができる)。
【0095】
ここで、様々な疾患および状態の処置のために1種もしくは複数種の薬物または他の治療剤101を含有する製剤100の様々な実施形態を投薬量に関して説明することにする。特定の治療剤およびそれぞれの投薬量を含めてこれらの実施形態が例示的なものであること、および製剤100が、デバイス10の様々な実施形態を用いて腸管における管腔壁(例えば、小腸壁)内への送達用に構成される、本明細書に記載する多数の他の治療剤(ならびに当該技術分野において公知のもの)を含み得ることは、理解されるはずである。さらに、前記投薬量は、本明細書に記載するものより多くても、少なくてもよく、そして、本明細書に記載するかまたは当該技術分野において公知の1つもしくは複数の方法を用いて前記投薬量を調整することができる。
【0096】
一群の実施形態では、治療剤製剤100は、1つまたは複数の成長障害ならびに創傷治癒の処置のために、治療有効用量の成長ホルモンを含むことができる。1つの実施形態では、製剤100は、約0.1~4mgの範囲内の治療有効量の成長ホルモンを含有することができ、特定の範囲は0.1~1、1~4、1~2および2~4mgであり、なおより大きな範囲が企図される。特定の用量は、以下の因子の1つまたは複数に基づいて調整することができる:i)処置される特定の状態およびその重症度(例えば、阻害された成長対創傷治癒);ii)患者の体重;iii)患者の年齢;ならびにiv)投薬の頻度(例えば、1日1回対1日2回)。
【0097】
公知の薬物送達システムの薬物送達組成物および構成要素を、本明細書に記載する本発明の一部の実施形態において利用することおよび/または本明細書に記載する本発明の一部の実施形態での使用のために改良することができる。例えば、薬物パッチで皮膚表面を通して薬物を送達するために使用されるマイクロニードルおよび他のミクロ構造物は、改良され得、本明細書に記載するカプセル内に備えられ得、そして、代わりに胃腸管の管腔壁、例えば小腸壁に、薬物製剤を送達するために使用され得る。好適なポリマーマイクロニードル構造物、例えばMicroCor(商標)マイクロ送達システム技術は、カリフォルニアのCoriumから市販されている。処方物または成分をはじめとするMicroCor(商標)パッチ送達システムの他の構成要素も、本明細書に記載するカプセルに組み込むことができる。あるいは、望ましい薬物放出特性を有する所望の形状(例えば、本明細書に記載する放出可能な組織貫入形状)を生じさせるための、ポリマーまたは他の薬物送達マトリックスと選択薬物および他の薬物製剤成分との組み合わせを処方するために、様々なプロバイダーを商業的に利用することができる。かかるプロバイダーとしては、例えば、Corium、ミネソタのSurModics、シンガポールのBioSensors International、またはこれらに類するものを挙げることができる。
【0098】
本明細書に記載される治療組成物の様々な実施形態の1つの利点および特徴は、嚥下可能なカプセルまたは他の嚥下可能なデバイスに封入されるかまたはさもなければ収容されることによって、抗体(例えば、セクキヌマブなどのAI抗体)または他の生物学的(例えば、ペプチドまたはタンパク質)薬物のペイロードが、腸壁内に送達される前に胃腸(GI)管内でのペプチダーゼおよびプロテアーゼの作用による分解および加水分解から保護されることである。これらの酵素は、生体系のいたるところに遍在する。GI管にはプロテアーゼがとりわけ豊富であり、プロテアーゼの機能は、食事の中の複雑なタンパク質およびペプチドをより小さいセグメントに分解し、アミノ酸を放出することであり、その後、前述のアミノ酸は腸から吸収される。本明細書に記載するデバイスおよび組成物は、これらのGIプロテアーゼの作用から治療ペプチド、抗体または他のタンパク質を保護するように、ならびに前述のペプチドまたはタンパク質負荷量を直接腸壁内に送達するように設計される。GIプロテアーゼの作用からタンパク質またはペプチド負荷量を保護するのに役立つ、本明細書に記載する組成物の様々な実施形態には2つの特徴がある。第一に、特定の実施形態において、展開エンジンおよび機械部分を収容しているカプセルシェルは、胃の低pHでのカプセルの溶解を防止するカプセルの外面のpH感受性コーティングのおかげで、それが十二指腸セグメントおよび十二指腸下腸セグメントに到達するまで溶解しない。第二に、特定の実施形態において、中空ポリマーマイクロ槍(例えば、ポリエチレンオキシド、マルトース、シリコーンなど)が実際の治療ペプチドまたはタンパク質を収容している;これらのポリマーマイクロ槍は、外部カプセルシェルが溶解するやいなや腸筋肉に貫入するように設計されており;そして、前述のマイクロ槍自体が腸筋肉壁にゆっくりと溶解して薬物負荷量を放出する。それ故、前記ペプチドまたは抗体のタンパク質負荷量は、GIプロテアーゼの作用に曝露されず、したがって、GI管内でタンパク質加水分解により分解されない。これは次に、上記のアプローチの片方または両方が使用されず、ペプチドまたはタンパク質がGIプロテアーゼに曝露される場合に予想されることに対して、治療ペプチドまたはタンパク質の高いバイオアベイラビリティに寄与する。特に、抗体を含む組成物の実施形態の場合、そのようなアプローチは、標的抗原(例えば、サイトカインのインターロイキンファミリーの1つまたは複数のメンバー)にそれが結合することを可能にする抗体の結合親和性および特異性を保存する。
【0099】
抗インターロイキン抗体
上で論じたように、本発明の様々な実施形態は、いずれの場合も、インターロイキンがそのインターロイキンの受容体に付着することを阻止するために、特定のインターロイキンまたはそのインターロイキンの受容体に結合することによって、インターロイキンファミリーの1つまたは複数のメンバーの生物学的作用を弱める抗体または他の結合性タンパク質を含む治療組成物を提供する。インターロイキンに関する簡潔な議論が、次に提供される。インターロイキンは、免疫系の体液性および細胞性応答に関与するシグナル伝達分子および分泌タンパク質の両方として免疫系で重要な役割を演ずる一群のサイトカインである(それらは、分泌タンパク質およびシグナル伝達分子の両方の形態である)。特にサイトカインのIL-17ファミリーの場合、おそらく多くの免疫シグナル伝達分子のそれらによる誘導のために、多数の免疫調節機能が報告されている。IL-17の最も注目すべき役割は、炎症誘発性応答の誘導および媒介におけるその関与である。IL-17は、一般的にアレルギー性応答と関連する。また、IL-17は、多くの細胞型(線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイトおよびマクロファージ)からの多くの他のサイトカイン(IL-6、G-CSF、GM-CSF、IL-1β、TGF-β、TNF-αなど)、ケモカイン(IL-8、GRO-αおよびMCP-1を含む)およびプロスタグランジン(例えば、PGE2)の生成を誘導することにおけるその関与である。サイトカインの放出は、IL-17応答の特徴である気道再構築などの多くの機能を引き起こす。ケモカインの発現の増加は、好中球を含むが好酸球は含まない他の細胞を誘引する。IL-17の機能は、ヘルパーT17(Th17)細胞と呼ばれるCD4+T細胞のサブセットにも必須である。これらの役割の結果、IL-17ファミリーは、慢性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、ループス、同種異系移植片拒絶反応および抗腫瘍免疫を含む多くの免疫/自己免疫関連疾患に関連付けされている。
【0100】
上で論じたように、本発明の様々な実施形態は、インターロイキンファミリーの1つまたは複数のメンバーの生物学的作用を弱め、次に、様々な自己免疫性および/または炎症性の疾患および状態などのそのようなインターロイキンの放出に関連した1つまたは複数の疾患または状態を処置する抗体または他の結合性タンパク質を提供する。様々な実施形態により、本明細書におけるそのような抗インターロイキン抗体、AI抗体は、完全長抗体またはその抗原結合性部分に対応することができる。また、それらは、必ずしもそうとは限らないが、当技術分野で公知の方法を使用してヒトまたはヒト化抗体であるモノクローナル抗体を一般的に含む。本明細書において用いる場合、用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖、またはIg分子の必須のエピトープ結合特徴を保持するその任意の機能的断片、突然変異体、変異体または誘導体で構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子を指す。また、本明細書において用いる場合、「エピトープ」は抗体への特異的結合が可能なタンパク質のセグメントまたは特徴を意味する。また、本明細書において用いる場合、「抗インターロイキン抗体(AI抗体)」、「AI抗体部分」または「AI抗体断片」および/または「AI抗体変異体」などは、免疫グロブリン分子の少なくとも一部、これらに限定されないが、重鎖もしくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)またはそのリガンド結合性部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域またはその任意の部分、または、本発明の抗体に組み込むことができるインターロイキン受容体(例えばIL-17受容体)もしくは結合性タンパク質の少なくとも1つの部分を含む、任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。そのようなAI抗体は、これらに限定されないが、そのような抗体が、選択されるインターロイキン(例えば、IL-17a、IL-17bなど)の活性もしくは結合の少なくとも1つ、またはIL-17受容体の活性もしくは結合を、in vitro、in situおよび/またはin vivoでモジュレート、減少、増加、拮抗、アゴナイズ、軽減、緩和、ブロック、阻害、破棄および/または妨害する場合など、特異的リガンドに任意選択でさらに影響する。
【0101】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるAI抗体は、インターロイキンのインターロイキン1~36ファミリー(そのいくつかは
図21aおよび21bに掲載される)、ならびにそれらの類似体および誘導体のいずれか1つを標的とするものに対応することができる。多くの実施形態では、本発明は、小腸壁または他の標的組織部位に送達することができるインターロイキンのインターロイキン1~36ファミリー(それらの類似体および誘導体を含む)のいずれか1つに対する抗体または他の結合性タンパク質を含む治療剤を提供する。具体的な実施形態では、本発明は、好ましい例にはセクキヌマブおよびイキセキズマブが含まれる、抗体のインターロイキン17ファミリーのメンバーに結合する抗体;ならびに、特定のインターロイキン17が結合する受容体の活性化を阻止するために、好ましい例にはブロダルマブが含まれる、インターロイキン17ファミリーの受容体に結合する抗体を提供する。
【0102】
本発明の実施形態によって提供されるAI抗体または他の結合性タンパク質は、慢性関節リウマチ、乾癬、プラーク型乾癬、若年性の特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病および潰瘍性大腸炎(他の疾患および状態は
図21aおよび21bに掲載される)を含むいくつかの自己免疫性疾患および/または炎症性状態を処置するのに特に有用である。そのような組成物は、望ましい薬物動態特性、特に静脈内、皮下または筋肉内注射に対して有利である薬物動態特性を有するAI抗体の送達をもたらす。それらは、アナフィラキシーショックを含むアレルギー性/アナフィラキシー性反応の発生率の低減;および免疫原性の低減(皮下および/または筋肉内注射に対して)を含む恩恵の1つまたは複数を提供する投薬の用法も可能にする。
【0103】
抗インターロイキン-17抗体
本明細書において論じるように、本発明のいくつかの実施形態は、小腸壁または他の標的組織部位に送達することができるAI抗体(または、その選択された受容体に付着する抗体の能力を阻止またはモジュレートすることによって、サイトカインのインターロイキン17ファミリーからのインターロイキンの生物学的作用を中和またはさもなければ阻害するための他のIB-タンパク質)を提供する。インターロイキン17抗体の標的化インターロイキンファミリーには、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E(IL-25とも呼ばれる)およびIL-17Fが含まれる。IL-17ファミリーの全てのメンバーは類似のタンパク質構造を有し、4つはそれらの三次元形状に決定的な高度保存システイン残基であるが、それらは他のいかなる公知のサイトカインとも配列類似性を有しない。サイトカインのIL-17ファミリーについて、おそらく多くの免疫シグナル伝達分子のそれらによる誘導のために、多数の免疫調節機能が報告されている。サイトカインのIL-17ファミリー(IL-17とも呼ばれる)の最も注目すべき役割は、炎症性シグナル伝達を含む炎症誘発性応答の誘導および媒介におけるその関与である。IL-17は、一般的にアレルギー性応答と関連する。IL-17インターロイキンは、多くの細胞型(線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイトおよびマクロファージ)からの多くの他のサイトカイン(IL-6、G-CSF、GM-CSF、IL-1β、TGF-β、TNF-αなど)、ケモカイン(IL-8、GRO-αおよびMCP-1を含む)およびプロスタグランジン(例えば、PGE2)の生成を誘導する。サイトカインの放出は、IL-17応答の特徴である気道再構築などの多くの機能を引き起こす。ケモカインの発現の増加は、好中球を含むが好酸球は含まない他の細胞を誘引する。IL-17の機能は、ヘルパーT17(Th17)細胞と呼ばれるCD4+T細胞のサブセットにも必須である。
【0104】
上記の役割のおかげで、インターロイキンのIL-17ファミリーは、例えば、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、喘息、ループス、同種異系移植片拒絶反応、抗腫瘍免疫および最近では乾癬およびプラーク型乾癬を含む多くの免疫/自己免疫関連疾患とリンクまたは、さもなければ関連付けされている。特に、IL-17サブタイプの3つ(A、CおよびF)の発現の増加は、乾癬での炎症の病因に関与している。したがって、1つまたは複数のIL-17インターロイキンまたはインターロイキンのインターロイキン17ファミリーの受容体に対する抗体(本明細書で抗IL-17抗体またはAI17抗体)を提供する本発明の実施形態は、これらおよび他の免疫/自己免疫状態の1つまたは複数を処置するのに有用である。これは、小腸壁(または、腸管内の他の標的部位)にAI17抗体を送達する本発明の実施形態の場合が特にそうであり、その理由は、抗体がIV、筋肉内、または非経口注射の他の形態によって送達されるときに、これが薬物動態の改善ならびにアレルギー性および他の有害反応の低減を可能にするからである。ここで再び、AI17抗体は、インターロイキン自体にまたはインターロイキンの受容体に付着し、したがって、受容体がインターロイキンによって活性化され、次に、さもなければそのような活性化の生物学的作用を弱めることを阻害することを阻止するように構成することができる。阻害されるか、または減弱する生物学的作用は、以下の1つまたは複数を含むことができる:Th1モジュレーション;Th2モジュレーション(あらゆる目的で参考として本明細書に援用されるNakanishi K.ら、(2001年)Cytokine and Growth Factor 改訂版12:53~72頁);およびNKモジュレーション。特異的AI17抗体の様々な実施形態は、下でさらに詳しく論じられる。
【0105】
セクキヌマブ
セクキヌマブは、プラーク型乾癬を含むいくつかの免疫/自己免疫関連の状態に関与しているインターロイキン-17A(IL-17A)に選択的に結合してその活性を阻害および/または中和する、ヒトモノクローナル抗体(mAb)である。それは、全身療法の候補である成人患者の中等度~重度のプラーク型乾癬の処置のためにFDAにより承認された最初のIL-17A阻害剤である。それは、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎の処置のために正の臨床結果も示しており、多発性硬化症および慢性関節リウマチの処置のために評価されている。したがって、様々な実施形態は、以下の1つまたは複数の処置のために、小腸壁(または、腸管内の他の標的組織部位または他の位置)内への治療有効量のセクキヌマブの送達を企図する:プラーク型乾癬を含む乾癬、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症、慢性関節リウマチ。そのような処置のためのセクキヌマブの用量は、本明細書に記載される嚥下可能なカプセルの様々な実施形態を使用して送達することができ、1日に約1~40mgの範囲内であってよく(それは、1日の間に与えられる1つもしくは複数の嚥下可能なカプセルまたは複数のカプセルによって送達することができる)、プラーク型乾癬の処置のための具体的な用量範囲は1日に約20~40mgである。これらおよび他の投薬では、毎日の用量は、注射(例えば、IV、筋肉内または皮下)または他の送達方法を通して投与することができる負荷用量の後に開始することができる。用量は、患者の体重、年齢、状態の重症度、負荷用量の量および所与の状態の当技術分野で公知の治療効果指数、例えば、プラーク型乾癬の処置のための乾癬面積および重症度指数(PASI)ならびに試験担当医の総合評価改訂2011(IGA)の1つまたは複数に基づいて、個々の患者のために調整することができる。製剤、用量および臨床使用を含むセクキヌマブのさらなる記載は、あらゆる目的でそれらの全体が参考として本明細書に援用される、米国特許出願第13/876367号、第13/877,585号および第14/358,504号に見出すことができる。
【0106】
ブロダルマブ
ブロダルマブは、上に示したようにプラーク型乾癬を含むいくつかの免疫/自己免疫関連の状態に関与している分子であるインターロイキン-17A(IL-17A)の受容体に高親和性で結合してその活性を阻害および/または中和する、ヒトモノクローナル抗体(mAb)である。ブロダルマブは、インターロイキン-17(IL-17)受容体に結合し、いくつかのIL-17サイトカイン(例えば、A、FおよびA/F)の受容体への結合をブロックすることによって炎症性シグナル伝達を阻害する、開発中の唯一の治験治療薬である。したがって、それは、プラーク型乾癬、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症、慢性関節リウマチおよび炎症性腸疾患のうちの1つまたは複数を限定せずに含む、これらの受容体の1つまたは複数の活性化を含む任意の状態の処置のための効力を有するだろう。それは、プラーク型乾癬の処置のためのフェーズ3研究において正の臨床結果も示した。したがって、様々な実施形態は、以下の状態の1つまたは複数の処置のために、小腸壁(または、腸管内の他の標的組織部位または他の位置)への治療有効量のブロダルマブの送達を企図する:プラーク型乾癬を含む乾癬、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患および他の同様の状態。そのような処置のためのブロダルマブの用量は、本明細書に記載される嚥下可能なカプセルの様々な実施形態を使用して送達することができ、1日に約1~20mgの範囲内であってよく(それは、1日の間に与えられる1つまたは複数の嚥下可能なカプセルまたは複数のカプセルによって送達することができる)、プラーク型乾癬の処置のための具体的な用量範囲は1日に約9~14mgである。これらおよび他の投薬では、毎日の用量は、注射または他の送達手段を通して投与することができる負荷用量の後に開始することができる。用量は、患者の体重、年齢、状態の重症度、負荷用量の量および所与の状態の当技術分野で公知の治療効果指数、例えば、プラーク型乾癬の処置のための乾癬面積および重症度指数(PASI)ならびに試験担当医の総合評価改訂2011(IGA)の1つまたは複数に基づいて、個々の患者のために調整することができる。用量および臨床使用を含むブロダルマブのさらなる記載は、あらゆる目的で参考として本明細書に援用される、Coimbraらによる表題「Brodalumab: an evidence-based review of its potential in the treatment of moderate-to-severe psoriasis」Core Evid.2014年7月21日;9巻;89~97頁の論文に見出すことができる。
【0107】
イキセキズマブ
イキセキズマブは、インターロイキン-17A(IL-17A)に選択的に結合してその活性を阻害および/または中和するヒトモノクローナル抗体(mAb)であり、そのような活性はいくつかの免疫/自己免疫関連の状態に関与している。イキセキズマブは、乾癬性関節炎およびプラーク型乾癬の処置のために、正の臨床結果も示した。したがって、様々な実施形態は、以下の状態の1つまたは複数の処置のために、小腸壁(または、腸管内の他の標的組織部位または他の位置)内への治療有効量のイキセキズマブの送達を企図する:プラーク型乾癬を含む乾癬、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症、慢性関節リウマチ。そのような処置のためのイキセキズマブの用量は、本明細書に記載される嚥下可能なカプセルの様々な実施形態を使用して送達することができ、1日に約1~40mgの範囲内であってよく(それは、1日の間に与えられる1つまたは複数の嚥下可能なカプセルまたは複数のカプセルによって送達することができる)、乾癬性関節炎またはプラーク型乾癬の処置のための具体的な用量範囲は1日に約2.5~5.5mgである。これらおよび他の投薬では、毎日の用量は、注射または他の送達手段を通して投与することができる負荷用量の後に開始することができる。用量は、患者の体重、年齢、状態の重症度、負荷用量の量および所与の状態の当技術分野で公知の治療効果指数、例えば、プラーク型乾癬の処置のための乾癬面積および重症度指数(PASI)ならびに試験担当医の総合評価改訂2011(IGA)の1つまたは複数に基づいて、個々の患者のために調整することができる。製剤、用量および臨床使用を含むイキセキズマブのさらなる記載は、あらゆる目的でそれらの全体が参考として本明細書に援用される、米国特許出願第14/195,885号に見出すことができる。
【0108】
腸壁または腸管内の他の位置へのAI-17抗体の送達の恩恵
使用時、上記の状態の1つまたは複数の処置のために小腸壁(または、腸管内の他の標的部位)内へのセクキヌマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブまたは他のAI抗体もしくはIN-タンパク質の送達を提供する本発明の実施形態は、これらの化合物の注射される形態に対比していくつかの恩恵を提供する。そのような恩恵には、より高い治療係数、以下の1つまたは複数を含む有害反応の低減された発生率および重症度を含めることができる:アナフィラキシーショックまたは他のアレルギー性反応(注射部位を含む);ならびに、鼻咽腔炎、上気道感染および頭痛(後者の3つはセクキヌマブ、ブロダルマブまたはイキセキズマブのうちの1つまたは複数の臨床試験で言及されている)、ならびに減少した免疫原性および/または免疫遺伝反応。後者の場合には、そのような免疫原性反応は、AI17抗体自体に対する抗体の発達を患者においてもたらす可能性があり、上記の有害反応の1つまたは複数だけでなく、低減した効力ならびに薬物のより高い用量の必要性および/または化合物を患者にとってほとんど無益にする可能性のある望ましくない免疫応答の悪循環ももたらす。これらの恩恵は、i)本発明の実施形態によって送達されるAI17抗体(または、他のAI抗体またはIN-タンパク質)のずっと小さい用量;ii)用量は、毎週または毎月に対して毎日送達される;およびiii)用量が血管内に対して経口的に送達されるという事実の1つまたは複数による。
【0109】
多くの実施形態では、本発明の実施形態によって経口送達されるAI17抗体の投薬量の治療係数は、注射によって(例えば、静脈内、筋肉内または皮下などに毎週、隔週または毎月)送達されるAI17抗体(単数または複数)のそれより有意に増加させることができる。様々な実施形態では、用語「有意に」は、2倍またはそれを超える、例えば7から30倍大きい、またはそれを超える治療係数の増加に相当する。注射される(例えば、静脈内、筋肉内または皮下などに)ときに毎週の用量で一般的に送達されるAI17抗体(または、他のAI抗体またはIN-タンパク質)の場合、本発明によって提供される嚥下可能なデバイスを使用して毎日の経口用量で送達されるとき、治療係数(例えば、毒性用量/有効用量)は約7倍増加させることができるが、AI17抗体の毎月注射される用量の場合、本発明の実施形態によって毎日の経口用量で送達されるとき、治療係数は約30倍増加させることができる。これらの値は両方とも、そのような実施形態において、AI17抗体または同様の分子の非経口注射送達(例えば、筋肉内、皮下など)に対応するそれらより実質的に高いと考えられる。AI17抗体の経口用量が1日に複数回与えられるとき、治療係数のさらなる増加を得ることができる。また、筋肉内、皮下または他の非経口注射に対して類似の改善(例えば、7倍、30倍またはさらにそれを超える倍数)が、免疫原性/免疫応答、アレルギー性反応および他の有害反応のうちの1つまたは複数の発生率で見られる。免疫原性/免疫応答は、AI17抗体の臨床効力を中和する、またはさもなければ減らす投与されるAI17抗体への体による抗体の生成である。抗体が毎月の用量に対して毎日の用量で与えられ、それは免疫系の感度を減らす傾向があるという事実のために、アレルギー性反応の発生率の低減は2倍から最高30倍であり得る(アレルギー性反応の程度は当技術分野で公知の方法を使用して判定することができ、当技術分野で公知である1つまたは複数のin vitro試験と相関し得る)。同様に、低減される免疫原性および/または免疫応答の程度は、3つの可能な因子のために2倍から、30倍もの大きさ、またはそれを超えることがある:1)用量は、皮下および/または筋肉内(それらはそのような応答を悪化させる傾向がある)に送達されない;2)用量はずっと小さい量で、例えば注射される用量が毎週、隔週、毎月などで送達されるかどうかにより7分の1から30分の1もの、はるかに小さい量で送達される;ならびに3)上で論じたように、用量AI-17抗体は小腸の上部に送達され、パイエル板ならびに以降の免疫細胞および他の免疫応答の生成を回避する。所与のAI17抗体(例えば、セクキヌマブ)への免疫応答の量は、例えば送達されたAI17抗体または他のAI抗体に対して生成される抗体の生成を測定するための、当該技術分野で公知の1つまたは複数の(one more more)免疫学的分析法を使用して数量化することができる。特定の実施形態では、AI17抗体の投薬量は、患者において最小限を生むように構成することができ、ここで、最小限は、送達されるAI17抗体の10%未満、より好ましくは5%未満が患者自身の抗体によって中和されることを意味する。
【0110】
図22~24を次に参照して、様々なAI17抗体(または、他のAI抗体またはIN-タンパク質)の用量を、従来の手段によって(例えば静脈内、筋肉内または皮下注射によって)これらの抗体の注射のために使用される隔週または毎月の用量に対して毎日の用量で送達することによって達成される別の恩恵は、特定の抗体に関する患者の血漿濃度プロファイルの日変動の低減であり、それは、大いにより平滑な血漿濃度プロファイルを次にもたらす。付録1でさらに詳細に説明した薬物動態モデルを使用して、毎日の用量(毎月または隔週の用量から下方に調整した)に対して毎月または隔週の送達期間でのセクキヌマブ(
図22aおよび22b)およびブロダルマブ(
図23aおよび23b)の送達について血漿濃度曲線を生成した。
図22a、22b、23aおよび23bに見られるように、曲線での日変動の量は、それらの抗体が毎月または隔週に対して送達されるとき、セクキヌマブおよびブロダルマブの両方で大いにより小さい。また、付録2で示され、詳述される式を使用して、これらの抗体の各々について「%定常状態変動」として知られる値を計算した。この値は、所与の薬物の血漿濃度の日変動の量を反映する。下の表1に示すように、抗体が本発明の実施形態によって毎月または隔週の皮下注射に対して毎日の用量で送達されたとき、特定の抗体の血漿濃度の定常状態変動の量は有意に低減した。具体的には、セクキヌマブでは定常状態日変動の概ね216倍の低減があり、ブロダルマブでは概ね171倍の低減があったが、これらの実施形態においてこれらの低減は両方とも有意な低減であると考えられている。そのような低減の患者への恩恵には、以下の1つまたは複数が含まれる:有害事象またはアレルギー性反応の危険の低減、免疫原性の低減;ならびに、患者の意図される状態(例えば、慢性関節リウマチ)を抗体がより良くおよびより一貫して処置することを可能にする、患者が所与の抗体の治療指数(範囲)に保たれるより長い時間(例えば、4から24時間)
【表1】
【0111】
門脈および肝臓内へのAI17抗体の送達の実施形態
また、特定の実施形態では、小腸壁内に置かれると、固体AI17抗体または他のAI抗体を含有する組織貫入部材40/140は、腸壁を囲んでいる腸間膜血管系に放出され、次に門脈、その後肝臓内に流れるように構成することができる。この時点で、放出されたAI17抗体は、次いで、肝臓内のインターロイキンまたはインターロイキン受容体に結合し、その後、肺、心臓、骨、軟骨、リンパ節などの1つまたは複数を含む体内の他の組織部位に存在するインターロイキンに実質的に(例えば、非肝臓部位に存在するインターロイキンに結合する送達されたAI17抗体の10%を超えて)結合する。これらおよび関連した実施形態におけるこのアプローチの恩恵は、肝臓が高濃度のインターロイキン生成組織、したがってインターロイキン17Aなどのインターロイキンを含有し、その放出部位で肝臓組織から放出されるインターロイキンに結合することによって、それらが体全体に拡散する前にそれらのインターロイキン(例えば、インターロイキン17aなど)のかなりの量を中和、またはさもなければ阻害することができることである。これは、抗体が体内の他の組織部位(例えば、心臓、肺など)によってかなりの量が取り込まれてから肝臓に到達し、したがって、肝臓によって放出されるインターロイキンに結合するのに利用可能なAI17抗体の量がかなり低減される、AI17抗体(または同様の抗体)の非経口注射送達を使用した従来のアプローチと対照的である。
【0112】
薬物動態測定基準
腸壁(例えば、小腸)内にAI抗体または他のINタンパク質を送達する本発明の実施形態は、1つまたは複数の薬物動態測定基準に関して恩恵も提供する。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられるがこれらに限定されない。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによるAI抗体または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC-質量分析、LC-質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する、前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が、1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の(one more)医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか一つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために、適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
【0113】
したがって、本発明の様々な実施形態は、AI抗体または他のINタンパク質を含む治療組成物100(本明細書で製剤とも呼ばれる)を提供する。組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、組成物は腸壁から血流にAI抗体を放出して、血管外注射用量のAI抗体より速くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のAI抗体のほうが、血管外注射されるある用量のAI抗体より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxに達する。血管外に注射される投与は、当技術分野で使用される皮下、筋肉内または他の血管外注射部位の1つまたは複数を含むことができる。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のAI抗体の用量、および血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたい。様々な実施形態では、組成物は、血管外注射用量のAI抗体のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのAI抗体の放出によって)AI抗体のtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のAI抗体は、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態では、腸壁への挿入によるAI抗体の送達によって達成されるCmaxは、AI抗体が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のAI抗体または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば5、10、20、30、40、50、60、70、80、またはさらには100倍大きい。一部の実施形態では、AI抗体(または、他のINタンパク質)組成物は、AI抗体の長期放出をもたらすように構成され、それは約1から60日の範囲内の期間を含むことができ、特定の実施形態では、6~24時間、12~24時間、12~36時間、1~2日、1~5日、1~10日、1~20日、2日、3日、5日、7日、10日、15日、20日、30日、40日、45日、50日および60日の期間である。また、組成物は、選択可能なt1/2でAI抗体の長期放出をもたらすように構成することができる。例えば、選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15または18、24、36、48および60時間であり得る。
【0114】
本発明の様々な実施形態では、体重、年齢などの因子によって、特定の患者のためのAI抗体(または、他のINタンパク質)の任意の適当な用量を使用することができる。例えば、投与されるAI抗体または他のINタンパク質の用量は、約1から10mgの範囲、特定の範囲は1~5、1~4、2~4、2~5および2~3mg、個々の用量は1、2、3、4、5、6、7、8、9および10mgであってよい。皮下投与されるとき、AI抗体は約130時間の血流中のtmaxを一般的に有する。したがって、本明細書に記載される治療的AI抗体組成物で投与されるとき、AI抗体のtmaxは、例えば、それが皮下注射されるときのAI抗体のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%まで短縮される。さらに
【0115】
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したAI抗体(または他のIN-タンパク質)組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流に該AI抗体(または他のIN-タンパク質)を放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量の該AI抗体(または他のIN-タンパク質)のt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
【0116】
前記AI抗体(または他のIN-タンパク質)は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記AI抗体(または他のIN-タンパク質)組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
【0117】
本明細書中に記載される前記AI抗体(または他のIN-タンパク質)組成物の種々の実施形態を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、治療インスリン組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該AI抗体(または他のIN-タンパク質)組成物を該カプセルから進出させ、腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0118】
一部の実施形態では、前記AI抗体(または他のIN-タンパク質)を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記AI抗体(または他のIN-タンパク質)組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。留置特徴部は、例えば、返しを含み得る。一部の実施形態では、組織貫入部材は、組織貫入部材の表面に力(例えば、機械的力)が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性および/もしくはカラム強度を有し、そして/または貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動可能に連結されるように構成され、そして/または組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。様々な実施形態では、組織貫入部材のカラム強度は、約1から20lb、7から20lb、8から12lbの範囲、ならびに7、8、9、10および11lbであってよい。
【0119】
本発明の様々な態様は、上に記載したものに加えて、医薬品100の送達用の嚥下可能な送達デバイスの他の実施形態も提供する。1つもしくは複数のかかる実施形態によると、前記嚥下送達デバイスは、医薬品100を備えている1つもしくは複数の組織貫入部材を小腸などの腸の壁内に送達する際に使用するための1つもしくは複数の拡張可能なバルーンまたは他の拡張可能なデバイスを含むことができる。ここで
図12~20を参照して、胃腸(GI)管内の送達部位DSへの医薬品100の送達のためのデバイス110のもう1つの実施形態は、嚥下され、腸管を通過するようなサイズのカプセル120と、展開部材130と、医薬品100を収容する1つもしくは複数の組織貫入部材140と、展開可能なアライナ160と、送達メカニズム170とを含むことができる。一部の実施形態では、医薬品100(本明細書では製剤100とも呼ぶ)は、それ自体が組織貫入部材140を構成することがある。展開可能なアライナ160は、カプセル内に位置し、該カプセルを小腸などの腸と位置合わせするように構成される。典型的に、これは、カプセルの長軸を腸の長軸と位置合わせすることを必然的に伴う;しかし、他の位置合わせも企図される。送達メカニズム170は、医薬品100を腸壁内に送達するために構成され、典型的に、送達部材172、例えば拡張可能な部材を含む。展開部材130は、アライナ160または送達メカニズム170の少なくとも一方の展開のために構成される。さらに本明細書中で説明するように、カプセル壁のすべてまたは一部分は、GI管内の液体がデバイス110による医薬品100の送達を誘発できるようにするために、GI管内の液体との接触により分解可能である。本明細書において用いる場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸および肛門を指し、その一方で「腸管」は、小腸および大腸を指す。本発明の様々な実施形態を、腸管と全GI管の両方の中への医薬品100の送達用に構成および配列することができる。
【0120】
組織貫入部材140を備えているデバイス110を、液体、半液体もしくは固体形態の医薬品100または三形態すべての組み合わせの送達用に構成することができる。いかなる形態であっても、医薬品100は、医薬品がデバイス110から進出させられ、腸壁(小腸もしくは大腸)またはGI管内の他の管腔壁に進入させられ、その後、その腸壁内で分解して薬物または他の治療剤101を放出することを可能にする材料一貫性を望ましくは有する。医薬品100の材料一貫性は、製剤の(体液中での)硬度、多孔度および溶解度のうちの1つもしくは複数を含み得る。前記材料一貫性を次のうちの1つもしくは複数の選択および使用によって達成することができる:i)製剤を作製するために用いる圧縮力;ii)当該技術分野において公知の1種もしくは複数種の医薬用崩壊剤の使用;iii)他の医薬用賦形剤の使用;iv)製剤(例えば、微粒子化粒子)の粒径および分布;およびv)当該技術分野において公知の微粒子化および他の粒子形成方法の使用。
【0121】
カプセル120は、嚥下され、腸管を通過するようなサイズである。このサイズを、送達すべき薬物の量はもちろん患者の体重および成人対小児利用に応じて調整することができる。典型的に、前記カプセルは、ビタミンに類似の湾曲した末端を有する管形状を有する。これらの実施形態および関連実施形態において、カプセル長120Lは0.5から2インチの範囲、および直径120Dは0.1から0.5インチの範囲であり得るが、他の寸法も企図される。カプセル120は、内部空間または内容積124vを規定する外面125および内面124を有するカプセル壁121wを備えている。一部の実施形態において、カプセル壁121wは、組織貫入部材140の外方進出のためのサイズの1つのもしくは1つより多いアパーチャ126を備えることができる。デバイス110の他の構成要素(例えば、拡張可能な部材など)に加えて、前記内容積は、1つもしくは複数の区画またはリザーバ127を備えることができる。
【0122】
製薬技術分野において公知の様々な生分解性ゼラチン材料から前記カプセルを製造することができるが、前記カプセルは、胃内での(酸などに起因する)分解からキャップを保護して、その後、小腸においてまたは腸管の他の領域において見いだされるより高いpHで分解するように構成された、様々な腸溶コーティング120cを備えることもできる。様々な実施形態において、カプセル120は、多数の部分から形成され得、それらの部分の1つもしくは1つより多くの部分が生分解性であり得る。多くの実施形態において、カプセル120は、2つの部分120p、例えば、ボディ部分120P”(本明細書ではボディ120p”)とキャップ部分120p’(本明細書ではキャップ120p)から形成され得、該キャップは、例えば該ボディの上または下に滑り込ませることによって、該ボディに外嵌する(が他の仕組みも企図される)。一方の部分、例えばキャップ120p’は、第一のpH(例えばpH5.5)より上で分解するように構成された第一のコーティング120c’を備えることができ、もう第二の部分、例えばボディ120p”は、第二のより高いpH(例えば6.5)より上で分解するように構成された第二のコーティング120c”を備えることができる。カプセル120の内面124と外面125の両方がコーティング120c’および120c”で被覆されるので、該カプセルの両方の部分が、選択されたpHを有する流体と接触するまで、実質的に保存される。ボディ120p”の場合は、これにより、バルーン172をボディ部分内に保持するようにボディ120p”の構造的一体性を維持すること、およびバルーン130が拡張されるまで展開されないことが可能になる。コーティング120c’および120c”としては、様々なメタクリレートおよびエチルアクリレート系コーティング、例えば、Evonik Industriesにより商品名EUDRAGITで製造されているものを挙げることができる。カプセル120のこれらおよび他の二重コーティング構成により、カプセル120の一部分のメカニズムを該カプセルの他の部分のものより前に起動させることが可能になる。これは、腸液が、先ず、より低いpHコーティングが分解した部分に侵入し、かくして、かかる流体に対して応答性であるトリガー(例えば、分解可能なバルブ)を起動するためである。使用すると、カプセル120のかかる二重コーティング実施形態は、小腸内の特定の位置(またはGI管内の他の位置)への標的薬物送達はもちろん、送達プロセスの確実性向上も与える。これは、アライナ160などの特定の構成要素の展開が小腸の上方領域(例えば、十二指腸)において始まり、薬物の(例えば、小腸壁への)最適な送達のために腸内でカプセルを位置合わせすることを可能にし、かつ、カプセルが小腸または他の選択位置にまだある間に腸壁への薬物送達を達成するための他の構成要素の展開/起動に十分な時間を提供するように構成され得るという事実に起因する。
【0123】
上で論じたように、カプセル120の1つもしくは1つより多くの部分を当該技術分野において公知の様々な生体適合性ポリマーから製造することができ、該ポリマーには様々な生分解性ポリマーが含まれ、これらは、好ましい実施形態では、セルロース、ゼラチン材料およびPGLA(ポリ乳酸-co-グリコール酸)を含み得る。他の好適な生分解性材料としては、本明細書に記載する様々な腸溶性材料はもちろん、ラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラ-ジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、これらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0124】
様々な実施形態において、カプセルの壁120wは、GI管内の液体、例えば小腸内の液体との接触により分解し得る。好ましい実施形態において、前記カプセル壁は、胃の通過中は無傷のままであるが、その後、小腸内で分解されるように構成される。1つもしくは複数の実施形態では、これをカプセル壁120w上の外部コーティングまたは外層120cの使用により達成することができ、この120cは、小腸内で見いだされるより高いpHでのみ分解し、該カプセルが小腸に達する(この時点で、本明細書に記載するように、薬物送達プロセスがコーティングの分解によって開始される)前の胃内での分解から、下にあるカプセル壁を保護するのに役立つ。使用すると、かかるコーティングにより、小腸などの腸管の選択部分での治療剤の標的送達が可能になる。
【0125】
カプセル20に類似して、様々な実施形態において、カプセル120は、1つもしくは複数の医療画像診断法、例えば蛍光透視法、超音波、MRIなどを用いるデバイスの定位のために様々な放射線不透過性材料、エコー源性材料または他の材料を含む場合がある。
【0126】
さらに本明細書中で論ずるように、多くの実施形態において、展開部材130、送達部材172または展開可能なアライナ160のうちの1つもしくは複数は、カプセル120に内嵌するための形状およびサイズである拡張可能なバルーンに対応し得る。したがって、論述を容易にするために、展開部材130、送達部材172および展開可能なアライナ160をここではバルーン130、160および172と呼ぶことにする;しかし、様々な拡張可能なデバイスを含む他のデバイスもまたこれらの要素に企図されること、ならびに例えば、カプセル120の内容積124vに対応する拡張形状およびサイズを有する様々な形状記憶デバイス(例えば、形状記憶生分解性ポリマースパイアから製造された拡張可能なバスケット)、拡張可能な圧電性デバイスおよび/または化学的に拡張可能なデバイスを含み得ることは理解されるはずである。
【0127】
バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数が医療デバイス技術分野において公知の様々なポリマーを含む場合もある。好ましい実施形態において、かかるポリマーは、低密度PE(LDPE)、線状低密度PE(LLDPE)、中密度PE(MDPE)および高密度PE(HDPE)ならびに当該技術分野において公知の他の形態のポリエチレンに対応し得る、1つもしくは1より多くのタイプのポリエチレン(PE)を含むことができる。ポリエチレンを使用する1つより多くの実施形態では、前記材料を架橋させることを、当該技術分野においてそうしたことが公知のポリマー照射法を用いてできる。特定の実施形態では、照射に基づく架橋を用いてバルーン材料のコンプライアンスを低下させることによりバルーンの膨張直径および形状を制御することができる。特定の架橋量を達成して、その結果、所与のバルーンについての特定の量のコンプライアンスを生じさせるように照射量を選択することができ、例えば、照射増加を用いて、より剛性でより低コンプライアンスのバルーン材料を生成することができる。他の好適なポリマーとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シリコーンおよびポリウレタンが挙げられる。様々な実施形態において、バルーン130、160および172は、バルーンの位置および物理的状態(例えば、非膨張、膨張またはパンク)を医師が突きとめることを可能にするために、当該技術分野において公知の様々な放射線不透過性材料、例えば硫酸バリウムも含むことがある。バルーンカテーテル技術分野において公知の様々なバルーンブロー成形方法(例えば、モールドブロー成形、フリーブロー成形など)を用いて、カプセル120の内容積124vにほぼ対応する形状およびサイズを有するようにバルーン130、160および172を製造することができる。様々な実施形態において、バルーン130、160および172ならびに様々な対応する特徴部(例えば、接続チューブ)のうちの1つもしくは複数が単一の金型から形成された単体構造を有することができる。かかる単体構造を利用する実施形態は、デバイス110の1つもしくは複数の構成要素間に造らなければならない接合部がより少ないので、向上した製造性および確実性という恩恵をもたらす。
【0128】
バルーン130、160および172の好適な形状には、先細りした、または湾曲した末端部分を有する様々な円筒形状(かかる形状の例としてホットドッグが挙げられる)が含まれる。一部の実施形態において、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数の膨張サイズ(例えば、直径)は、カプセル120を(例えば、円周応力に起因する)膨張力でばらばらにさせるために、カプセル120より大きい場合がある。他の関連実施形態において、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数の膨張サイズは、膨張したとき、i)カプセル120が、該カプセルの周囲の小腸の収縮を生じさせる蠕動収縮を惹起するために小腸壁と十分に接触し、そして/またはii)許容するように小腸のひだが消されるようなサイズであり得る。これらの両方の結果により、カプセルおよび/または送達バルーン172の選択領域上に組織貫入部材40を送達するようなカプセル/バルーン表面と腸壁間の改善された接触が可能になる。望ましくは、バルーン130、160または172の壁は、薄く、0.005から0.0001”の範囲、さらに好ましくは、0.004、0.003、0.002、0.001および0.0005の具体的な実施形態を伴う、0.005から0.0001の範囲の壁厚を有し得る。加えて、様々な実施形態において、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数は、
図13cの実施形態に示すような膨張チャンバ160ICおよび拡張フィンガー160EFを有する入れ子状バルーン構成を有することができる。膨張チャンバ160ICを接続する接続チュービング163は、ガス168の通過のみを可能にするために狭い場合があり、その一方で、バルーン130の2つの半分部分を連結する接続チュービング36は、水の通過を可能にするためにより大きい場合がある。
【0129】
上で指摘するように、アライナ160は、拡張可能なバルーンを典型的に含み、論述を容易にするために、ここではこれをアライナバルーン160またはバルーン160と呼ぶことにする。バルーン160は、上で説明した材料および方法を用いて製造することができる。それは非拡張状態および拡張状態(展開状態とも呼ぶ)を有する。その拡張または展開状態では、バルーン160は、小腸SIの蠕動収縮によってカプセル120に及ぼされる力が、カプセル120の長軸120LAを小腸SIの長軸LAIと平行に位置合わせするのに役立つように、カプセル120の長さを伸長させる。そしてまたこれは、組織貫入部材140の腸壁IWへの貫入を増進および最適化するために組織貫入部材140のシャフトを腸壁IWの表面と垂直に位置合わせするのに役立つ。小腸内でカプセル120を位置合わせするのに役立つことに加えて、アライナ160はまた、送達バルーン172の膨張前にカプセル120から送達メカニズム170を押し出すように構成され、したがって、該送達バルーンおよび/またはメカニズムは該カプセルによって妨げられない。使用すると、薬物送達が起こり得る前にカプセルの特定の部分(例えば、送達メカニズム上にあるもの)が分解されるのを待つ必要がないので、アライナ160のこの押し出し機能は、治療剤の送達の確実性を向上させる。
【0130】
バルーン160を、バルーン130および172を備えているデバイス110の1つもしくは複数の構成要素に、ポリマーチューブまたは他の流体連結162によって流体的に連結させることができ、この162は、バルーン160と130を連結させるためのチューブ163、およびバルーン160とバルーン172を連結させるためのチューブ164を含み得る。チューブ163は、バルーン160をバルーン130からの圧力(例えば、バルーン130内での化学反応物の混合によって生成される圧力)により拡張/膨張させるように、ならびに/またはバルーン130および160の一方または両方の膨張のためにガス発生化学反応を開始させるためのバルーン130と160間の液体の通過を別様に可能にするように構成される。チューブ164がバルーン160を172に接続して、バルーン160によるバルーン172の膨張を可能にする。多くの実施形態において、チューブ164は、選択圧力で開口してバルーン160によるバルーン172の膨張を制御するように構成されている制御バルブ155を備えているか、または該制御バルブ155に連結されている。したがって、チューブ164は、前記バルブに接続されている近位部分164pおよび前記バルブからつながる遠位部分164dを含むことができる。典型的に、近位部分164pおよび遠位部分164dは、下で説明するようなバルブハウジング158に接続される。
【0131】
バルブ155は、バルブハウジング158のチャンバ158c内に配置される(あるいは、チュービング164内に直接配置されることもある)材料157の三角形または他の形状のセクション156を含むことがある。セクション157は、選択圧力で機械的に分解して(例えば、裂けて、剪断されて、離層して、など)、チューブ164および/またはバルブチャンバ158c中のガスの通過を可能にするように構成される。バルブ155のための好適な材料157としては、蜜蝋または他の形態の蝋、および選択可能な密封力/破裂圧を有する医療技術分野において公知の様々な接着剤を挙げることができる。バルブフィッティング158は、材料157のセクション156が(
図13bの実施形態に示すように)チャンバ158cの壁を互いに封止するようにまたは該チャンバ中の流体の通過を別様に遮断するように配置されている(生分解性材料から作製された)薄い円筒形区画を典型的に含む。セクション156のサイズおよび形状のうちの1つもしくは複数の選択ならびに材料157の(例えば、接着強度、剪断強度などのような特性についての)選択によって、バルブ155の解放圧力を制御することができる。使用すると、制御バルブ155は、バルーン172を膨張させる前にバルーン160を完全にまたは別様に実質的に膨張させるようなバルーン160および172の順序づけられた膨張を可能にする。そしてまたこれは、バルーン160に、バルーン172が膨張する前にカプセル120から(典型的にはボディ部分120p’から)送達メカニズム170の残部と一緒にバルーン172を押し出させ、したがって、組織貫入部材140の展開はカプセル120によって妨害されない。使用すると、かかるアプローチは、カプセル120に収容されている組織貫入部材140の所望の貫入深度の達成とカプセル120に収容されているより多数の組織貫入部材140の送達の両方の点から見て、該部材の腸壁IWへの進入がカプセル壁120wによって妨害されないので、組織貫入部材140の腸壁IWへの貫入の確実性を向上させる。
【0132】
上で説明したように、アライナバルーン160の膨張長160lは、カプセル120を腸の蠕動収縮から小腸の横軸と位置合わせするのに十分なものである。アライナ160についての好適な膨張長160lとしては、アライナ160の膨張前のカプセル120の長さ120lの約1/2倍から2倍の間の範囲を挙げることができる。アライナバルーン160についての好適な形状としては、ホットドッグ様形状などの様々な細長い形状を挙げることができる。具体的な実施形態では、バルーン160は、第一のセクション160’および第二のセクション160”を備えることができ、この場合、第一のセクション160’の拡張はカプセル120から送達メカニズム170を(典型的には から)進出させるように構成され、第二のセクション160”は送達バルーン172を膨張させるために用いられる。これらの実施形態および関連実施形態では、第一のセクション160’が先ず膨張してメカニズム170をカプセルから(典型的にはボディ部分120p’から)押し出し、第二のセクション160”が膨張して送達部材172を膨張させる入れ子式膨張を有するように、第一のセクション160’および第二のセクション160”を構成することができる。これは、第一のセクション160’が(そのより小さい容積に起因して)先ず膨張し、第二のセクション160”に関しては第一のセクション60’が実質的に膨張してしまうまで膨張しないように、第一のセクション160’を第二のセクション160”より小さい直径および容積を有するように構成することによって達成することができる。1つの実施形態において、これは、セクション160’内が最低圧力に達するまでガスにセクション160”を通過させない、セクション160’と160”を接続する(上で説明した)制御バルブ155の使用によって助長され得る。一部の実施形態において、アライナバルーンは、展開しているバルーンからの水または他の液体との混合によって反応する化学反応物を収容することができる。
【0133】
多くの実施形態において、展開部材130は、展開バルーン130として公知の拡張可能なバルーンを含む。様々な実施形態において、展開バルーン30は、ガスの使用、例えば、化学物質からのガス169の発生によりアライナバルーン160の展開/拡張を助長するように構成される。前記ガスは、固体化学反応物165、例えば酸166(例えば、クエン酸)と塩基166(例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよびこれらに類するもの)を反応させ、その後、それらを水または他の水性液168と混合することにより発生させることができる。化学量論的方法を用いて反応物の量を選択して、バルーン130、160および72のうちの1つもしくは複数において選択圧力を生じさせることができる。反応物165および液体をバルーン130および160内に別々に保管し、その後、小腸内のpH条件などのトリガー事象に応答して一緒にすることができる。反応物165および液体168をいずれのバルーン内に保管してもよいが、好ましい実施形態では、液体168はバルーン130内に保管され、反応物165はバルーン160内に保管される。反応を開始させるための液体168の通過および/または結果として生ずるガス169を可能にするために、下で説明する分解可能なバルブ150などの離隔手段150も典型的に備えているコネクタチューブ163によってバルーン130をアライナバルーン160に連結させることができる。バルーン130が液体を収容する実施形態については、チューブ163は、バルーン160はもちろんバルーン172も膨張させるために望ましい量のガスの生成に十分な水のバルーン130からバルーン60への通過を可能にするのに十分な直径を有する。また、バルーン130が液体を収容しているとき、バルーン30およびチューブ63の一方または両方は、次のうちの1つもしくは複数によってバルーン160への液体の通行を可能にするように構成される:i)曝露されたバルーン130に対する小腸の蠕動収縮によりバルーン130に加えられる圧縮力;およびii)毛細管作用によるチューブ163による液体の吸い上げ。
【0134】
チューブ163は、バルブが分解するまでバルーン130の内容物(例えば、水158)をバルーン160の内容物(例えば、反応物165)から離隔する、分解可能な離隔バルブまたは他の離隔手段150を典型的に備える。バルブ150は、該バルブが消化管内で様々な液体と共に水に曝露されると開口するように液体水によって分解可能な材料、例えばマルトースから製造することができる。腸液中で見いだされるより高いpHに応答して分解することができる材料、例えばメタクリレート系コーティングからそれを作製することもできる。前記バルブは、バルーン130の上に突出し、かつ/または別様に十分に露出されているチューブ163上の位置に望ましくは位置するので、キャップ120p’が分解するとカプセルに侵入する腸液にバルブ150は曝露される。様々な実施形態において、(
図16aおよび16bの実施形態に示すように)バルブ150は、バルーン130の表面にあるようにまたはさらにはその上に突出するように位置することができ、その結果、キャップ120p’が分解するとバルブ150は腸液に明確に曝露される。本発明の様々な実施形態は、離隔バルブ150についての多数の構造、例えば、ビーム様構造(この場合、バルブは、チューブ163および/または接続セクション136を圧迫するビームを含む)、または鍔型構造(この場合、バルブは、チューブ163および/または接続セクション136上にある鍔を含む)を提供する。さらに他のバルブ構造も企図される。
【0135】
バルーン130は、展開状態および非展開状態を有する。展開状態では、展開バルーン130は、カプセルの末端の形状に対応するドーム形状130dを有することができる。展開されたバルーン130についての他の形状130s、例えば球形、チューブ状なども企図される。反応物165は、典型的に少なくとも2つの反応物166および167、例えば、クエン酸などの酸、および重炭酸ナトリウムなどの塩基を含む。他の酸、例えば酢酸、および塩基、例えば水酸化ナトリウムをはじめとする他の反応物165も企図される。バルブまたは他の離隔手段150が開口すると、反応物は液体中で混ざり、二酸化炭素などのガスを生成し、このガスがアライナバルーン160または他の拡張可能な部材を拡張させる。
【0136】
図13bに示す代替実施形態において、展開バルーン130は、チューブ36または他の接続手段136(例えば、接続セクション)によって接続された第一のバルーン130’および第二のバルーン130”を実際に含むことができる。接続チューブ136は、上で説明したような液体および/または小腸内で見いだされる塩基性pH(例えば、5.5もしくは6.5)などの特定のpHを有する液体によって分解可能である離隔バルブ150を典型的に備える。2つのバルーン130’および130”は、拡張状態のときにカプセルの末端部分にバルーン130’および130”が内嵌することを可能にする半ドーム形状130hsを各々有することができる。一方のバルーンは、化学反応物(単数または複数)165(例えば、重炭酸ナトリウム、クエン酸など)を収容することができ、他方は、液体水168を収容することができ、したがって、バルブが分解されると前記二成分が混ざってガスを形成し、このガスがバルーン130’および130”の一方または両方を膨張させ、そして次にアライナバルーン160を膨張させる。
【0137】
さらにもう1つの実施形態において、バルーン130は、多数の区画130cを有するように形成されるかまたは別様に構築される多区画バルーン130mcを含むことができる。典型的に、区画130cは、
図14aの実施形態に示すように離隔バルブ150または他の離隔手段150によって離隔されている第一の区画134および第二の区画135を少なくとも備える。多くの実施形態において、区画134および135は、離隔バルブ150が典型的に配置される場所であるそれらの間に小さい接続セクション136を少なくとも有する。
図14aの実施形態に示されているように、液体168(典型的には水である)を、第一の区画134内に配置することができ、1つもしくは複数の反応物165(これは典型的には固体であるが液体を使用することもできる)を第二の区画135に配置することができる。バルブ150が(例えば、小腸内の流体に起因する分解から)開口すると、液体168は区画135に侵入し(もしくはその逆、または両方)、反応物(単数または複数)165がその液体と混ざって二酸化炭素などのガス169を生成し、それがバルーン130を拡張し、そしてまたそのガスを用いてバルーン160および172のうちの1つもしくは複数を拡張させることができる。
【0138】
反応物165は、典型的に、少なくとも第一の反応物166および第二の反応物167、例えば、クエン酸などの酸、および重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムなどの塩基を含む。本明細書において論ずるように、様々な実施形態において、それらをバルーン130(区画134および135または半分部分130’および130”を含む)およびバルーン160のうちの1つもしくは複数の中に配置することができる。生成物により不活性ガスを生成する酸と塩基の他の組み合わせを含む、追加の反応物も企図される。クエン酸および重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムを使用する実施形態については、2つの反応物間(例えば、クエン酸対重炭酸カリウム)の比は、約1:3の具体的な比を伴う、約1:1から約1:4の範囲であり得る。望ましくは、固体反応物165は、殆どまたは全く吸収水を有さない。したがって、前記反応物の1つもしくは複数、例えば、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムをバルーン130内に配置する前に(例えば、真空乾燥により)予備乾燥させることができる。他の酸、例えば酢酸、および塩基を含む、他の反応物165も企図される。反応物の組み合わせを含めて特定の反応物165の量は、特定の化学反応ならびにバルーンの膨張体積についての公知化学量論式と、理想気体の法則(例えば、PV=nRT)を用いて、特定の圧力を生じさせるように選択することができる。特定の実施形態では、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数において、i)腸壁内への特定の貫通深度を達成するため、ならびにバルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数について特定の直径を生じさせるため、ならびにiii)選択量の力を腸壁IWに及ぼすための選択圧力を生じさせるように、反応物の量を選択することができる。特定の実施形態では、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数において、より小さい圧力およびより大きい圧力も企図されるが、10から15psiの範囲の圧力を達成するように、反応物(例えば、クエン酸および重炭酸カリウム)の量および比を選択することができる。さらにまた、公知化学量論式を用いて、これらの圧力を達成するための反応物の量および比を決定することができる。
【0139】
ガス169を発生させるための化学反応物165を使用する本発明の様々な実施形態において、前記化学反応物は、単独でまたは展開バルーン130と組み合わせて、アライナバルーン160および送達メカニズム170(送達バルーン172を含む)の一方または両方を展開させるための展開エンジン180を構成し得る。展開エンジン180は、2つの展開バルーン130および130”を使用する実施形態(
図13bに示すような二重ドーム構成)を含むこともあり、または
図14aに示すような多区画バルーン130mcも含むことがある。展開エンジン180の他の形態、例えば、拡張性圧電材料(電圧の印加によって拡張する)、スプリングおよび他の形状記憶材料ならびに様々な熱拡張性材料の使用も、本発明の様々な実施形態によって企図される。
【0140】
拡張可能なバルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数は、典型的に、膨張後のバルーンのガス抜きに役立つガス抜きバルブ159も含む。ガス抜きバルブ159は、特定のバルーン内のガスの脱出のための開口部またはチャネルを生成するために小腸内の流体および/またはバルーンの区画のうちの1区画内の液体に曝露されると分解するように構成される生分解性材料を含むことができる。望ましくは、ガス抜きバルブ159は、該ガス抜きバルブが分解する前にバルーン130、160および172の膨張に十分な時間を与えるためにバルブ150より遅い速度で分解するように構成される。区画化バルーン130の様々な実施形態において、ガス抜きバルブ159は、
図14aの実施形態に示すようにバルーンの末端部分131上に位置する分解可能なセクション139に対応し得る。この実施形態および関連実施形態において、分解可能なセクション139が前記液体への曝露から分解すると、バルーン壁132は、裂けるか、または別様にばらばらになって、急速なガス抜きの高度な保証を提供する。多数の分解可能なセクション139をバルーン壁132内の様々な位置に配置することができる。
【0141】
バルーン172の様々な実施形態において、ガス抜きバルブ159は、
図13bの実施形態に示すように(アライナバルーンに連結される末端の反対側の)送達バルーン172の末端172eに取り付けられたチューブバルブ173に対応し得る。チューブバルブ173は、小腸内の流体などの流体への曝露により分解するマルトースなどの材料173mで選択位置173lにて遮断されている管腔を有する中空チューブ173tを含む。チューブ173t内の遮断材料173mの位置173lは、該遮断材料が溶解してバルブ173を開口する前に送達バルーン172が膨張して腸壁IWに組織貫入部材40を送達するために十分な時間を提供するように選択される。典型的に、これは、液体が材料173mに到達する前に該液体がチューブ管腔内を吸い上がる時間を与えるために完全にはチューブ173tの末端173eではないが、その近くである。1つもしくは複数の実施形態によると、ガス抜きバルブ173が開口すると、それは、送達バルーン172のガス抜きに役立つばかりでなく、アライナバルーン160および展開バルーン130のガス抜きにも役立つ。多くの実施形態において、これら3つは、流体的に接続されている(アライナバルーンは送達バルーン172に流体的に接続されており、展開バルーン130はアライナバルーン160に流体的に接続されている)からである。ガス抜きバルブが小腸内の液体に良好に曝露されるように、アライナバルーン160の膨張によってカプセル120から押し出される送達バルーン172の末端172eにガス抜きバルブを配置することにより、ガス抜きバルブ173の開口を助長することができる。類似のチューブガス抜きバルブ173がアライナバルーン162および展開バルーン130の一方または両方の上に位置する場合もある。これらの後者の2ケースでは、送達バルーン172の膨張および組織貫入部材140の腸壁への進入のために十分な時間を与えるような期間にわたって分解するように、チューブバルブ内の遮断材料を構成することができる。
【0142】
加えて、保証されたガス抜きのさらなる支援のために、バルーン(例えば、バルーン130、160、172)が完全に膨張すると、該バルーンは穿刺要素182と接触し、穿刺要素182によって穿刺されるように、1つもしくは複数の穿刺要素182をカプセルの内面124に取り付けることができる。穿刺要素182は、尖った先端を有する、表面124からの短い突出部を含むことができる。バルーンガス抜きのためもう1つの代案または追加の実施形態では、組織貫入部材140の1つもしくは複数を、バルーン172の172wの壁に直接連結させることができ、それらが取り外されるとそのバルーンから引き離され、その過程でそのバルーン壁を引き裂くように構成することができる。
【0143】
ここで組織貫入部材140についての論述を提示する。組織貫入部材140は、様々な薬物および他の治療剤101、1種もしくは複数種の医薬用賦形剤(例えば、崩壊剤、安定剤など)ならびに1種もしくは複数種の生分解性ポリマーから製造することができる。後のほうの材料は、前記貫入部材に所望の構造および材料特性(例えば、腸壁への挿入のための柱強度、または薬物の放出を制御するための多孔度および親水性)を付与するように選択される。ここで
図18a~18fを参照して、多くの実施形態において、
図18aの実施形態に示すように、腸壁の組織に容易に貫入するためにシャフト144および針先145または他の尖った先端145を有するように貫入部材140を形成することができる。好ましい実施形態において、先端145は、
図18cの実施形態に示すようなトロカール形を有する。先端145は、該先端の硬度および組織貫入特性を増加させる様々な分解性材料、例えばスクロースまたは他の糖を(該先端のボディ内にまたはコーティングとして)含むことができる。腸壁内に配置されると、貫入部材140は、その壁組織内で腸液によって分解され、その結果、薬物または他の治療剤101がその流体に溶解し、血流に吸収される。大体数秒、数分またはさらに数時間内の薬物101の溶解および吸収を可能にするように、組織貫入部材140のサイズ、形状および化学組成のうちの1つもしくは複数を選択することができる。溶解速度を、製薬技術分野において公知の様々な崩壊剤の使用により制御することができる。崩壊剤の例としては、様々なデンプン、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、および様々な架橋ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤の選択を小腸壁内の環境に特異的に合せることができる。
【0144】
組織貫入部材140はまた、前進後に腸壁IWの組織内に該貫入部材を留置するための1つもしくは複数の組織留置特徴部143、例えば返しまたはフックを典型的に備える。
図18aおよび18bの実施形態に示すような部材シャフト144の周囲におよび部材シャフト144に沿って対称にまたは別様に割り当てられた2つのまたは2つより多い返しなどの、組織留置を増進するような様々なパターン143pで、留置特徴部143を配列することができる。加えて、多くの実施形態において、貫入部材はまた、送達メカニズム170上の連結構成要素への取り付けのための溝または他の嵌め合い特徴部146を備える。
【0145】
組織貫入部材140は、望ましくは、組織貫入部材140の腸壁への進入後に該貫入部材をバルーンから取り外すためにプラットホーム175(または送達メカニズム170の他の構成要素)に取り外し可能に連結されるように構成される。取り外し可能性(detachability)は、i)プラットホーム175における開口部174と部材シャフト144とがぴったりと合うこと、すなわちそれらの間の嵌合;ii)貫入部材140上の組織留置特徴部143の構成および配置;およびiii)腸壁へのシャフト144の貫入深度をはじめとする様々な手段によって実現することができる。これらの因子のうちの1つもしくは複数を用いて、貫入部材140は、バルーンガス抜きの結果として(この場合、バルーンのガスが抜けるとまたは別様にバルーンが腸壁から引き戻されると留置特徴部143が貫入部材140を組織内に保持する)および/または小腸の蠕動収縮によってカプセル120に及ぼされる力の結果として取り外されるように構成される。
【0146】
具体的な実施形態では、
図18cの実施形態に示すように逆テーパ144tを有するように組織貫入部材シャフト144を構成することによって腸壁IW内での組織貫入部材140の取り外し可能性および留置を向上させることができる。シャフト144上のテーパ144tは、該シャフトに腸壁からの蠕動収縮力が加わることが該シャフトを内方へ押しやる(例えば内方に圧搾する)結果となるように構成される。これは、シャフトテーパ144tが、横方向に加えられる蠕動力PFを、腸壁の内方にシャフトを押しやるように作用する直交する力OFに変換するためである。使用すると、かかる逆テーパ型シャフト構成は、バルーン172のガス抜きによりプラットホーム175(または送達メカニズム170の他の構成要素)から取り外されるように組織貫入部材140を腸壁内に留置するのに役立つ。さらなる実施形態において、逆テーパ型シャフトを有する組織貫入部材140はまた、挿入されると腸壁IW内での該組織貫入部材の留置をさらに増進させるような1つもしくは複数の留置特徴部143を備えることができる。
【0147】
上で説明したように、様々な実施形態において、組織貫入部材140を多数の薬物および他の治療剤101から製造することができる。また、1つもしくは複数の実施形態によると、前記組織貫入部材は、完全に薬物101(例えば、AI抗体など)から製造され得るか、または、他の成分構成要素、例えば、様々な医薬用賦形剤(例えば、結合剤、保存剤、崩壊剤など)、所望の機械的特性を有するポリマーなどをさらに有し得る。さらに、様々な実施形態において、1つもしくは複数の組織貫入部材140が他の組織貫入部材と同じまたは異なる薬物101(または他の治療剤)を担持する場合がある。前者の構成によって、より大量の特定の薬物101の送達が可能になり、その一方で後者によって、多数の薬物の実質的同時送達を要する薬物処置レジメンを助長するように2種のまたは2種より多くの異なる薬物をほぼ同時に腸壁内に送達することが可能になる。多数の送達組立体178(例えば、2つ、バルーン172の各面に1つ)を有するデバイス110の実施形態において、第一の組立体178’は、第一の薬物101を有する組織貫入部材を担持することができ、第二の組立体178”は、第二の薬物101を有する組織貫入部材を担持することができる。
【0148】
典型的に、組織貫入部材140によって担持される薬物または他の治療剤101は、組織貫入部材140を形成するための生分解性材料105と混合される。材料105としては、1種もしくは複数種の生分解性ポリマー、例えばPGLA、セルロース、および糖、例えばマルトース、または本明細書に記載するかまたは当該技術分野において公知の他の生分解性材料を挙げることができる。かかる実施形態において、貫入部材140は、薬物101と生分解性材料105の実質的に不均一な混合物を含むことがある。あるいは、組織貫入部材140は、
図18dの実施形態に示すように、生分解性材料105から実質的に形成される部分141と、薬物101から形成されるかまたは薬物101を収容する別のセクション142とを含むことがある。1つもしくは複数の実施形態において、セクション142は、薬物101のペレット、スラグ、円柱形または他の形状のセクション142sに対応し得る。造形されたセクション142sを別個のセクションとして予備成形することができ、その後、そのセクションを、
図18eおよび18fの実施形態に示すように組織貫入部材140内のキャビティ142cに挿入する。あるいは、セクション142sをキャビティ142cへの薬物製剤100の添加によって形成することができる。薬物製剤100がキャビティ142cに添加される実施形態では、キャビティ142cに流し込まれるかまたは注入される粉末、液体またはゲルとして、製剤を添加することができる。造形されたセクション142sは、薬物101自体から形成されることもあり、または薬物101と1種もしくは複数種の結合剤、保存剤、崩壊剤および他の賦形剤とを含有する薬物製剤から形成されることもある。好適な結合剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)および当該技術分野において公知の他の結合剤が挙げられる。様々な実施形態において、前記PEGまたは他の結合剤は、セクション142sの約10から90重量パーセントの範囲を構成することがあり、インスリン製剤についての好ましい実施形態では約25~90重量パーセントを構成することがある。結合剤として使用することができる他の賦形剤としては、PLA、PLGA、シクロデキストリン、セルロース、メチルセルロース、マルトース、デキストリン、スクロースおよびPGAを挙げることができる。セクション142における賦形剤の重量パーセントに関するさらなる情報は、表2において見つけることができる。論述を容易にするために、セクション142をこの表ではペレットと呼ぶが、表中のデータは、本明細書に記載するセクション142の他の実施形態にもあてはまる。
【0149】
様々な実施形態において、組織貫入部材140の重量は、10から15mgの間の範囲であり得るが、より重い重量およびより軽い重量が企図される。マルトースから製造された組織貫入部材140の実施形態について、その重量は、約11から14mgの範囲であり得る。様々な実施形態において、薬物101および所望の送達用量に応じて、部材140における薬物の重量パーセントは、約0.1から約15%の範囲であり得る。例示的実施形態において、これらの重量パーセントは、マルトースまたはPGLAから製造された部材140の実施形態に対応するが、それらは、部材140の製造に使用される生分解可能な材料105のいずれかにもあてはまる。部材140における薬物または他の治療剤101の重量パーセントを所望の用量に応じて調整できることはもちろん、該薬物の構造安定性および化学量論的安定性を与えるように、ならびにまた血液中のまたは体内の他の組織中の該薬物の所望の濃度プロファイルを達成するように調整することもできる。当該技術分野において公知の様々な安定性試験およびモデル(例えば、アレニウス式を使用する)ならびに/または公知の薬物化学分解速度を用いて、前記重量パーセント範囲内で特異的調整を行うことができる。表2は、組織貫入部材140によって送達することができるインスリンおよび多数の他の薬物の用量および重量パーセントの範囲を収載している。場合によっては、該表は、用量についての範囲および単一の値を収載している。これらの値は、例示的であり、請求項を含めてここに列挙する他の値も考慮されることは理解されるはずである。さらに、本発明の実施形態は、例えば、±1、±5、±10、±25およびさらにいっそう大きい変動を含めて、これらの値周辺の変動も考慮に入れる。かかる変動は、特定の値または値の範囲を請求する実施形態の範囲に入ると見なされる。この表は、様々な薬物および他の治療剤についてセクション142における薬物の重量パーセントも収載し、ここでは、重ねて論述を容易にするために、セクション142をペレットと呼ぶ。重ねて、本発明の実施形態は、上で説明した変動を考慮に入れる。
【表2】
【0150】
当該技術分野において公知の1つのもしくは1つより多いポリマーおよび医薬製造技術を用いて組織貫入部材140を製造することができる。例えば、薬物101(生分解性材料105を伴うまたは伴わない)は、固体形態である場合があり、そのときには1種もしくは複数種の結合剤を添加して、成形、圧縮または他の類似の方法を用いてそれを組織貫入部材140の形状にすることができる。あるいは、薬物101および/または薬物製剤100は、固体または液体であることがあり、そのときには液体形態の生分解性材料105にそれを添加し、その後、ポリマー技術分野において公知の成形法または他の形成法を用いてその混合物を貫入部材140にすることができる。
【0151】
望ましくは、薬物または他の治療剤101と生分解性材料105とを含む組織貫入部材140の実施形態は、様々なペプチドおよびタンパク質などの薬物をはじめとする薬物のいずれの実質的熱分解も生じさせない温度で形成される。これは、当該技術分野において公知の室温硬化性ポリマーならびに室温成形および溶媒蒸発技術の使用によって達成することができる。特定の実施形態において、前記組織貫入部材内の熱分解される薬物または他の治療剤の量は、望ましくは約10重量%未満、そしてさらに好ましくは5%未満、さらにいっそう好ましくは1%未満である。特定の薬物の熱分解温度(単数または複数)は公知であるか、または当該技術分野において公知の方法を用いてそれを判定することができ、その後、この温度を用いて、薬物熱分解の温度および関連レベルを最小にするように特定のポリマー加工法(例えば、成形、硬化、溶媒蒸発法など)を選択および調整することができる。
【0152】
送達メカニズム170について説明する。典型的に、このメカニズムは、
図16aおよび16bの実施形態に示すように、送達バルーン172に取り付けられている(組織貫入部材140を含有する)送達組立体178を含む。送達バルーンの膨張は、カプセルから腸壁IW内に外向きに送達組立体172を係合させて組織貫入部材140をその壁に挿入するための機械的力をもたらす。様々な実施形態において、送達バルーン172は、接合された部分から成る(articulated)アコーディオンのようなボディ172bによって接続された2つの比較的平坦な面172fを伴う細長い形状を有し得る。組織貫入部材(TPM)140を腸壁に挿入するためにバルーン172の拡張により腸壁(IW)を加圧するように前記平面172fを構成することができる。薬物収容TPM40の腸壁の両側への挿入を可能にするようにバルーン172の片方または両方の面172fにTPM140(それら自体、または下で説明するような送達組立体178の一部として)を位置させることができる。バルーン172の前記面172fは、多数の薬物収容TPM140の各面への配置を可能にするために十分な表面積を有することができる。
【0153】
ここで
図19を参照して、送達組立体178の組み立てについて説明する。第一段階300において、支持プラットホーム175(プラットホーム175としても公知)に対応し得る生分解性前進構造175に1つもしくは複数の組織貫入部材140を取り外し可能に連結させることができる。好ましい実施形態において、プラットホーム175は、段階300に示すように部材140の挿入のための1つのもしくは1つより多い開口部174を備えている。開口部174は、バルーン172の拡張前にプラットホーム175に部材140を挿入および留置することができるようなサイズである一方で、腸壁にそれらが貫入されるとプラットホームからそれらを取り外すことができるようなサイズである。次いで、段階301に示すように支持プラットホーム175を担持構造176内に配置することができる。担持構造176は、キャビティまたは開口部176cを規定する側壁176sと底壁176bとを有するウェル構造176に対応し得る。プラットホーム175は、望ましくは、当該技術分野において公知の接着剤または他の接合法を用いて底壁176bの内面に取り付けられる。ウェル構造176は、様々なポリマー材料を含むことができ、ポリマー加工技術分野において公知の真空成形技術を用いてそれを形成することができる。多くの実施形態において、段階302に示すように開口部176oを保護フィルム177で被覆することができる。保護フィルム177は、下で説明するように湿分および酸化から組織貫入部材140を保護するバリアとして機能するが、組織貫入部材140がなおそのフィルムに貫入できるように選択された特性を有する。フィルム177は、様々な水および/または酸素不透過性ポリマーを含むことができ、これらのポリマーは、望ましくは、小腸内で生分解性であるように、かつ/または、消化管を不活性状態で通過するように構成される。それは、所与の物質、例えば酸素、水蒸気などに対する不透過性について選択された特定の層を有する多層構造を有することもある。使用すると、保護フィルム177を利用する実施形態は、組織貫入部材140内の治療剤101の保存寿命の増加に役立ち、そしてまたそれがデバイス110の保存寿命の増加に役立つ。まとめると、組織貫入部材140、ウェル構造176およびフィルム177を取り付けた支持プラットホーム175が送達組立体178を構成する場合がある。組織貫入部材40または他の薬物送達手段に収容された1種もしくは複数種の薬物または治療剤101を有する送達組立体178を事前に製造し、保管し、その後、後日、デバイス110の製造に使用することができる。密閉組立体178のキャビティ176cに窒素などの不活性ガスを充填することにより、組立体178の保存寿命をさらに向上させることができる。
【0154】
戻って
図16aおよび16bを参照して、組立体178は、バルーン172の一方または両方の面172fに位置することができる。好ましい実施形態において、組立体178は、バルーン172の拡張時に腸壁IWの両側に実質的に均等に力を分配するように(
図16aに示すように)両方の面172fに位置する。組立体178は、ポリマー技術分野において公知の接着剤または他の接合法を用いて面172fに取り付けることができる。バルーン172が拡張すると、TPM140は、フィルム177に貫入し、腸壁IWに侵入し、そしてバルーン172のガスが抜かれるとプラットホーム175から取り外されるように留置要素143および/またはTPM140の他の留置特徴部(例えば、逆テーパ型シャフト144t)によってそこに留置される。
【0155】
様々な実施形態において、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数をカプセル120の内部に、該カプセルの内容積124v内の空間を維持するように折り畳まれた、畳まれたまたは別様に望ましい構成で、パッケージすることができる。折り畳みは、予備成形された折り目または医療用バルーン技術分野において公知の他の折り畳み特徴または方法を用いて行うことができる。特定の実施形態では、バルーン130、160および172を、次のうちの1つもしくは複数を達成するように選択された向きに折り畳むことができる:i)空間を維持する、ii)所望の向きの特定の膨張バルーンを生じさせる;およびiii)所望のバルーン膨張順序を助長する。
図15a~15fに示す実施形態は、折り畳み方法および様々な折り畳み配列の実施形態を例証する。しかし、この折り畳み配列および結果として生ずるバルーンの向きが例示的なものであり、他のものも用いることができることは理解されるはずである。この実施形態および関連実施形態では、折り畳みを手で、自動機械によって、または両方の組み合わせによって行うことができる。また、多くの実施形態において、
図13aおよび13bの実施形態に示すように、バルーン130、160、170とバルブチャンバ158と多彩な接続チュービング162とを含む単一のマルチバルーン組立体7(本明細書では組立体7)を使用することによって折り畳みを助長することができる。
図13aは、バルーン130について単一ドーム構造を有する組立体7の実施形態を示し、その一方で
図13bは、バルーン130について二重バルーン/ドーム構成を有する組立体7の実施形態を示す。組立体7は、ポリマー加工技術分野において公知の様々な真空成形法および他の関連方法を用いて所望の形状に真空成形される薄いポリマーフィルムを使用して製造することができる。好適なポリマーフィルムとしては、0.005”の具体的な実施形態を伴う、約0.003から約0.010”の範囲の厚みを有するポリエチレンフィルムが挙げられる。好ましい実施形態では、前記組立体の1つもしくは複数の構成要素(例えば、バルーン130、160など)を接合する必要をなくすために単体構造を有するように前記組立体を製造する。しかし、組立体7を多数の部分(例えば、半分部分)、または構成要素(例えば、バルーン)から製造し、その後、ポリマー/医療デバイス技術分野において公知の様々な接合法を用いてそれらを接合することも企図される。
【0156】
ここで
図15a~15f、16a~16bおよび17a~17bを参照して、第一の折り畳み段階210では、バルーン160をバルーン172と共にバルブフィッティング158に外嵌し、その過程でバルブフィッティング158の反対側に反転させる(
図15a参照)。次いで、段階211において、バルーン160とバルブ158の折り畳まれた組み合わせに対して直角にバルーン172を折り畳む(
図15b参照)。次いで、バルーン130の二重ドーム実施形態についての段階212では、バルーン130の2つの半分部分130’および130”を互いに折り重ね、曝露されたバルブ150を残す(例えば15cを参照して、バルーン130の単一ドーム実施形態については、それ自体に折り重ねられる、
図15e参照)。折り畳まれたバルーン130をバルブフィッティング158およびバルーン160の反対側に180°折り曲げる最終折り畳み段階213を行って、
図15eに示す二重ドーム構成についての最終折り畳み組立体8ならびに
図15eおよび15fに示す単一ドーム構成についての最終折り畳み組立体8’を得ることができる。次いで、1つもしくは複数の送達組立体178を段階214において組立体8(典型的にはバルーン72の2つの面72f)に取り付けて、(
図16aおよび16bの実施形態に示す)最終組立体9を得、その後、カプセル120にそれを挿入する。挿入段階215の後の組立体9が挿入された最終組み立てバージョンのデバイス110を
図17aおよび17bに示す。
【0157】
ここで
図20a~20iを参照して、小腸壁または大腸壁などのGI管内の部位に医薬品101を送達するためのデバイス110の使用方法を説明する。段階およびそれらの順番が例示的なものであり、他の段階および順番も企図されることは理解されるはずである。デバイス110が小腸SIに侵入した後、キャップコーティング120c’は、上部小腸における塩基性pHによって分解され、それに起因して、
図20bの段階400に示すようにキャップ120p’が分解する。次いで、バルブ150は小腸内の流体に曝露され、それに起因して、
図20cの段階401に示すようにバルブが分解し始める。次いで、
図20dに示すように、段階402においてバルーン130が(ガス169生成に起因して)拡張する。次いで、
図20eに示すように、段階403においてバルーン160のセクション160’が拡張し始めて、カプセルボディからの組立体178の押し出しを開始する。次いで、
図20fに示すように、段階404において、バルーン160のセクション160’および160”が完全に膨張されてカプセルボディから組立体178を完全に押し出して、カプセルの横軸120ALと小腸の横軸LAIを位置合わせするのに役立つようにカプセル長120lを伸長させる。この間に、(バルーンが完全に膨張して、他にガス169が行く場所がないことに起因して)バルーン60内の圧力増加からバルブ155が働かなくなり始めている。次いで、
図20gに示すように、段階405では、バルブ155が完全に開口してバルーン172を膨張させ、そしてそのバルーン172が(ボディ120pから完全に押し出された)ここではもう完全に曝露された組立体178を径方向外方に腸壁IW内へと押す。次いで、
図20hに示すように、段階406において、バルーン172は、拡張し続けて、ここで、組織貫入部材を腸壁IWに進入させる。次いで、段階407では、バルーン172は、(バルーン160および130と共に)空気が抜けてしまい、その結果、引き戻され、腸壁IWに留置された組織貫入部材が残る。また、カプセルのボディ部分120p”は、デバイス110の他の生分解性部分と共に、(コーティング120c”の分解に起因して)完全に分解される。分解されなかったいずれの部分も消化からの蠕動収縮によって小腸により遠位に運ばれ、最終的には排泄される。
【実施例】
【0158】
付録/実施例
本発明の様々な実施形態は、以下の付録/実施例を参照してさらに例示される。これらの実施例は例示のためにだけ提示され、本発明がその中の情報または詳細に限定されるものではないことを認識するべきである。
付録1 セクキヌマブおよびブロダルマブ血漿濃度の薬物動態モデル化
【0159】
セクキヌマブのモデルで使用される前提
【0160】
投薬スケジュールは、毎週300mg、SC(皮下)、4週間、次いで4週ごとに300mgである。
【0161】
初期の1週につき300mgの用量は負荷用量と考えることができ、薬物濃度が定常状態に到達するのに要する時間を埋め合わせるものである(
図22aでt=0日目~約150日目)
【0162】
投薬スケジュールの4週ごとに300mgの部分だけがモデル化されるならば、到達される定常状態濃度が何であるかなお見ることができる。
図22aを参照する。
【0163】
薬物動態パラメータは、2014年9月12日に発表され、http://www.fda.gov/downloads/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/Drugs/DermatologicandOphthalmicDrugsAdvisoryCommittee/UCM419023.pdfから入手可能である、Novartisによって作成された文書、表題「Secukinumab (AIN457), ADVISORY COMMITTEE BRIEFING MATERIAL: AVAILABLE FOR PUBLIC RELEASE」から得た。一次吸収および排出による1コンパートメントモデルを使用した。
【0164】
吸収の速度定数(ka)の値は与えられていないので、観察された5~6日のTmaxの範囲内である、5.7日のTmaxを得るために、0.6日-1を使用した。
【0165】
定常状態で、薬物濃度ピークは47.9mg/Lであり、薬物濃度トラフは26.9mg/Lである。定常状態薬物濃度、Css、2つの平均は、37.4mg/Lである。これが薬理学的活性の標的薬物濃度であると仮定する。
【0166】
本発明の実施形態を使用する毎日の投薬の場合、少量を毎日投与し、
図22bに示す薬物動態プロファイルを受けることができる。
【0167】
この投薬スキームを使用して、定常状態の薬物濃度は、Css=37.95mg/Lについて、最大値38.0mg/Lおよび最小値37.9mg/Lである。さらに、同じ標的薬物濃度に、大いにより低い日差変動で到達することができる。ピーク濃度はより低く、潜在的な有害事象および抗薬物抗体の形成を阻止し、トラフ濃度はより高く、低い生物学的活性の可能性を低くする。
ブロダルマブの薬物動態モデルのモデルで使用される前提
【0168】
その結果が2014年6月に報告されたフェーズII研究は、1、2、4、6、8および10週目に140または280mgの投薬スケジュールを使用し、次いで全ての患者を2週ごとに280mgに切り替えた。この研究からの2週ごとの280mgの投薬シナリオを使用し、最初の2回の週1回の注射は負荷用量を含むと仮定した。
図23aを参照。
【0169】
薬物動態パラメータを以下の論文から得、2つのコンパートメントモデルで使用した:Endres, CJ.、Salinger, DH、Kock, K.ら、「Population Pharmacokinetics of Brodalumab in Healthy Adults and Adults with Psoriasis From Single and Multiple Dose Studies.」J Clin Pharmacol、2014年、54巻(11号):1230~1238頁。
【0170】
刊行物で使用される複合ミカエリス-マントン排出を組み込まないことによってモデルが単純化されているので、ブロダルマブの排出は実際に過小評価されることがある。
【0171】
ピーク薬物レベルは55.4mg/Lであり、トラフ薬物レベルは45.1mg/Lである。これは、50.3mg/LのCssを与える。これが標的薬物濃度であると仮定する。
【0172】
本発明の実施形態を使用する毎日の投薬で、1日につき20mgを与えて標的濃度に到達することができる。
図23bを参照。
【0173】
Css=51.46mg/Lのために、ピーク薬物レベルは51.49mg/Lであり、トラフレベルは51.43mg/Lである。セクキヌマブと類似して、日々の薬物レベルのより低い変動は、有害事象を回避するのを助けることができ、一定の薬理学的活性を維持するのを助けることができる。
付録2:セクキヌマブ、ブロダルマブおよびアリロクマブの血清薬物濃度の定常状態変動の計算のために使用されるモデルおよび計算。
【0174】
%定常状態変動は、薬物の患者の経時的な血漿/血清濃度にどれくらいの変動があるかの指標を提供する測定基準である。複数の理由のために、定常状態変動を最小にすることが望ましい。第1に、薬理学的活性のために必要であるより高い薬物濃度は、有害事象をもたらす可能性がより高い。IL-17阻害剤の日和見感染およびPCSK9阻害剤の心血管事象などの特異的効果に加えて、抗体療法は抗薬物抗体産生を引き起こし得る。これらの抗薬物抗体は薬物を標的とし、結合部位をブロックするかまたは破壊のために薬物に印を付けることによって、それらを中和することができる。薬物に対する抗薬物抗体を生じる患者は、その薬物にもはや応答せず、異なるレジメンに置かれなければならない。他方、薬理学的活性のために必要であるより低い薬物濃度も、所望されない。これらの期間中に薬理学的活性のない、したがってより低い薬物効力の可能性がより高い。標的の障害を効果的に処置するために、薬理学的活性の一定の安定したレベルを維持することが理想的である。
【表1-2】
【0175】
表1に示す3つの抗体のために、%定常状態変動について計算した。付録1に記載される既存の薬物動態シミュレーションを使用して、値を判定した。%定常状態変動を計算するために使用した具体的な式を下に示す:
【数1】
【0176】
それはピーク定常状態濃度(Css,peak)とトラフ定常状態濃度(Css,trough)の間の差を計算し、平均定常状態濃度(Css,avg)によって割り算して、平均定常状態薬物濃度に対する血清薬物濃度のパーセント変化を与える。定常状態変動は、単一の投薬期間中に血清薬物濃度がどの程度変化するか予想することができる、定量的尺度の役目を果たす。
【0177】
上記のデータから、本発明の実施形態を使用した毎日の投薬が、同じ薬物の血漿濃度の、従来の皮下投薬より大いに低い定常状態変動を可能にすることが明白である。頻度がより低く、強度のより低い有害事象および薬理学的活性の維持の予想される恩恵に加えて、本発明の実施形態を使用した小腸への注射による投与は、皮下投与で起こることがある注射部位反応を回避する。
【0178】
結論
本発明の様々な実施形態の上述の説明は、例証および説明を目的として提供したものである。開示する寸分違わない形態に本発明を限定するためのものではない。多くの修飾、変形および洗練が当業者には明らかである。例えば、デバイスの実施形態を、様々な小児科および新生児利用ならびに様々な獣医学的利用(ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジおよびブタが挙げられるがこれらに限定されない)のためにサイズ調整または別様に適応させることができる。また、本明細書に記載する具体的なデバイスおよび方法の非常に多くの等価物を常例的実験のみを用いて突きとめることができることは、当業者には理解される。かかる等価物は、本発明の範囲内であると見なされ、下記添付クレームによって包含される。
【0179】
1つの実施形態からの要素、特徴または行為を容易に組み換えて、または他の実施形態からの1つもしくは複数の要素、特徴または行為で置換して、本発明の範囲内で非常に多くの追加の実施形態を形成することができる。さらに、他の要素と組み合わせるように示されているかまたは記載されている要素は、様々な実施形態において、独立型要素として存在することができる。したがって、本発明の範囲は、記載した実施形態の明細に限定されず、代わりに、添付のクレームによってのみ限定される。