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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20221130BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20221130BHJP
   B60H 3/00 20060101ALI20221130BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20221130BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20221130BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20221130BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20221130BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20221130BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221130BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 651B
B60H1/32 611Z
B60H3/00 A
F25B1/00 321L
F25B1/00 399Y
F25B5/02 530Z
F25B1/00 101E
B60L1/00 L
B60L3/00 S
B60K11/04 H
B60K1/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018056100
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019166962
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
(72)【発明者】
【氏名】戸山 貴司
(72)【発明者】
【氏名】関口 和樹
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-066410(JP,A)
【文献】特開2006-145185(JP,A)
【文献】特開昭61-044259(JP,A)
【文献】特開2015-114049(JP,A)
【文献】特開2015-058774(JP,A)
【文献】特開2014-094677(JP,A)
【文献】特開2016-090201(JP,A)
【文献】特開2018-184108(JP,A)
【文献】特開2014-074516(JP,A)
【文献】特開2013-199251(JP,A)
【文献】特開2014-126226(JP,A)
【文献】特開2016-068687(JP,A)
【文献】特開2011-105150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/32
B60H 3/00
F25B 1/00
F25B 5/02
B60L 1/00
B60L 3/00
B60K 11/04
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、車室外に設けられた室外熱交換器と、前記冷媒を吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、該吸熱器に流入する前記冷媒を減圧するための室内膨張弁を有して構成され、所定量の前記冷媒とオイルが封入された冷媒回路と、
制御装置を備え、前記車室内を空調する車両用空気調和装置において、
前記冷媒回路の高圧側に設定された分岐部と、
該分岐部から前記吸熱器に至り、前記室内膨張弁が設けられた吸熱器入口側回路と、
前記室外熱交換器の冷媒出口側から前記分岐部に至る冷媒配管と、
該冷媒配管に設けられ、前記吸熱器入口側回路側が順方向とされた逆止弁と、
前記室外熱交換器の冷媒入口側に設定されたもう一つの分岐部と、
該もう一つの分岐部と前記分岐部を連通して、前記室外熱交換器及び前記逆止弁をバイパスするバイパス回路と、
熱媒体を循環させて車両に搭載されたバッテリの温度を調整するためのバッテリ温度調整装置を備え、
該バッテリ温度調整装置は、
前記冷媒と前記熱媒体を熱交換させるための冷媒-熱媒体熱交換器と、
前記分岐部から前記冷媒-熱媒体熱交換器に至る分岐回路と、
該分岐回路に設けられ、前記冷媒-熱媒体熱交換器に流入する前記冷媒を減圧するための補助膨張弁を有し、
前記制御装置は、前記室内膨張弁又は前記補助膨張弁を全閉とした運転を実行可能とされており、
前記室内膨張弁は、前記吸熱器入口側回路のうち前記吸熱器よりも前記分岐部に近い側に配置され、前記補助膨張弁は、前記分岐回路のうち前記冷媒-熱媒体熱交換器よりも前記分岐部に近い側に配置されると共に、
冷媒入口と第1及び第2の冷媒出口を有して前記もう一つの分岐部を構成するもう一つの分岐部材と、
前記バイパス回路に設けられた除湿弁を備え、
前記バイパス回路は前記もう一つの分岐部材の第2の冷媒出口に接続されて当該もう一つの分岐部材から立ち上がり、前記除湿弁は前記もう一つの分岐部材よりも高い位置に配置されることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記補助膨張弁を全閉とし、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を前記室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を前記分岐部から前記吸熱器入口側回路に流し、前記室内膨張弁にて減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる冷房運転を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記室内膨張弁を全閉とし、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を前記室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を前記分岐部から前記分岐回路に流し、前記補助膨張弁にて減圧した後、前記冷媒-熱媒体熱交換器にて吸熱させるバッテリ温調単独モードを実行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
冷媒入口と第1及び第2の冷媒出口を有して前記分岐部を構成する分岐部材を備え、
前記吸熱器入口側回路は前記分岐部材の第1の冷媒出口に接続されて当該分岐部材から立ち上がり、前記室内膨張弁は前記分岐部材よりも高い位置に配置されると共に、
前記分岐回路は前記分岐部材の第2の冷媒出口に接続されて当該分岐部材から立ち上がり、前記補助膨張弁は前記分岐部材よりも高い位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
前記冷媒回路は、前記冷媒を放熱させて前記車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、前記放熱器から出た前記冷媒を前記室外熱交換器に流すための室外熱交換器入口側回路と、該室外熱交換器入口側回路に設けられ、前記室外熱交換器に流入する前記冷媒を減圧するための室外膨張弁を有し、
前記バイパス回路は、前記室外膨張弁の冷媒上流側に設定された前記もう一つの分岐部から分岐し、前記放熱器から出た前記冷媒を前記室内膨張弁に流すと共に、
前記制御装置は、前記室外膨張弁又は前記除湿弁により流路を閉止した運転を実行可能とされており、
前記室外膨張弁は、前記室外熱交換器入口側配管のうち前記室外熱交換器よりも前記もう一つの分岐部に近い側に配置され、前記除湿弁は、前記バイパス回路のうち前記室内膨張弁よりも前記もう一つの分岐部に近い側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記除湿弁を閉じ、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を前記もう一つの分岐部から前記室外膨張弁に流し、該室外膨張弁にて減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させる暖房運転を実行することを特徴とする請求項5に記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記室外膨張弁を全閉とし、前記除湿弁を開放して前記圧縮機から吐出された前記冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を前記もう一つの分岐部から前記バイパス回路に流し、前記室内膨張弁にて減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる除湿運転を実行する請求項5又は請求項6に記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
前記室外熱交換器入口側回路は前記もう一つの分岐部材の第1の冷媒出口に接続されて当該もう一つの分岐部材から立ち上がり、前記室外膨張弁は前記もう一つの分岐部材よりも高い位置に配置されることを特徴とする請求項5乃至請求項7のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内を空調するヒートポンプ方式の空気調和装置、特にバッテリを備えた電気自動車やハイブリッド自動車に好適な車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題の顕在化から、バッテリから供給される電力で走行用モータを駆動するハイブリッド自動車や電気自動車等の車両が普及するに至っている。そして、このような車両に適用することができる空気調和装置(冷凍サイクル装置)として、圧縮機と、凝縮部と、冷房用膨張弁と、室内蒸発器等から構成された冷媒回路を備え、バッテリから供給される電力で圧縮機を駆動するものが開発されている。
【0003】
また、バッテリは高温状態や極低温状態では充放電が困難となり、劣化も発生するため、電池冷却用蒸発器を設け、室内蒸発器への配管に設定した分岐部から分岐した二重管により電池用膨張弁で減圧した冷媒を電池冷却用蒸発器に流し、バッテリ(二次電池)を冷却するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。更に、この特許文献1では、電池用膨張弁側の電磁弁が閉じたときに、高圧側となる二重管内に存在する冷媒の量を低減させて、必要冷媒量を低減させるために、電池用膨張弁を二重管への分岐部に近い側に配置していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5884725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷媒は高圧側となる分岐部と冷房用膨張弁側の電磁弁との間にも溜まり込んでしまう。そして、冷媒には潤滑用のオイルが溶け込んでいる(相溶している)ので、冷媒回路内のオイルの循環率が低下してしまい、多量のオイルを封入しなければ圧縮機の信頼性を維持することができなくなると云う問題が生じる。これを図16を参照しながら説明する。図16は冷媒の圧力と温度に対するオイルの相溶曲線を示している。例えば、圧力が1MPaで、飽和温度が40℃のとき、冷媒の温度が40℃以上(過熱度がついたガス状態の冷媒)では、冷媒溶解量(冷媒へのオイルの溶解量)は50mas%以下であるのに対して、それより低い液冷媒の状態では、100mas%となっている。
【0006】
これは、ガス冷媒は密度が低く、同一容積内に滞留できる冷媒量が少ないため、相溶できるオイル量も少なくなるからである。即ち、低圧側の配管は外気によって温められ、ガス状態となるので、オイルを相溶できる量も少なくなる。一方、高圧側の冷媒は、外気によって冷やされ、液化するため、多くのオイルを相溶できるようになる。従って、上述した如く分岐部と冷房用膨張弁側の電磁弁との間の高圧側の容積が大きくなると、多量のオイルが滞留して、オイル循環率(OCR)が低下してしまうようになる。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、バッテリ温調を行う際に、冷媒回路のオイル循環率の低下を防止し、圧縮機の信頼性の悪化を未然に回避することができる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室外に設けられた室外熱交換器と、冷媒を吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、この吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁を有して構成され、所定量の冷媒とオイルが封入された冷媒回路と、制御装置を備え、車室内を空調するものであって、冷媒回路の高圧側に設定された分岐部と、この分岐部から吸熱器に至り、室内膨張弁が設けられた吸熱器入口側回路と、室外熱交換器の冷媒出口側から分岐部に至る冷媒配管と、この冷媒配管に設けられ、吸熱器入口側回路側が順方向とされた逆止弁と、室外熱交換器の冷媒入口側に設定されたもう一つの分岐部と、このもう一つの分岐部と前記分岐部を連通して、室外熱交換器及び逆止弁をバイパスするバイパス回路と、熱媒体を循環させて車両に搭載されたバッテリの温度を調整するためのバッテリ温度調整装置を備え、このバッテリ温度調整装置は、冷媒と熱媒体を熱交換させるための冷媒-熱媒体熱交換器と、分岐部から冷媒-熱媒体熱交換器に至る分岐回路と、この分岐回路に設けられ、冷媒-熱媒体熱交換器に流入する冷媒を減圧するための補助膨張弁を有し、制御装置は、室内膨張弁又は補助膨張弁を全閉とした運転を実行可能とされており、室内膨張弁は、吸熱器入口側回路のうち吸熱器よりも分岐部に近い側に配置され、補助膨張弁は、分岐回路のうち冷媒-熱媒体熱交換器よりも分岐部に近い側に配置されると共に、冷媒入口と第1及び第2の冷媒出口を有して前記もう一つの分岐部を構成するもう一つの分岐部材と、バイパス回路に設けられた除湿弁を備え、バイパス回路は前記もう一つの分岐部材の第2の冷媒出口に接続されて当該もう一つの分岐部材から立ち上がり、除湿弁は前記もう一つの分岐部材よりも高い位置に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、補助膨張弁を全閉とし、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を分岐部から吸熱器入口側回路に流し、室内膨張弁にて減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房運転を実行することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、室内膨張弁を全閉とし、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を分岐部から分岐回路に流し、補助膨張弁にて減圧した後、冷媒-熱媒体熱交換器にて吸熱させるバッテリ温調単独モードを実行することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において冷媒入口と第1及び第2の冷媒出口を有して分岐部を構成する分岐部材を備え、吸熱器入口側回路は分岐部材の第1の冷媒出口に接続されて当該分岐部材から立ち上がり、室内膨張弁は分岐部材よりも高い位置に配置されると共に、分岐回路は分岐部材の第2の冷媒出口に接続されて当該分岐部材から立ち上がり、補助膨張弁は分岐部材よりも高い位置に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において冷媒回路は、冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、放熱器から出た冷媒を室外熱交換器に流すための室外熱交換器入口側回路と、この室外熱交換器入口側回路に設けられ、室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁を有し、バイパス回路は、室外膨張弁の冷媒上流側に設定された前記もう一つの分岐部から分岐し、放熱器から出た冷媒を室内膨張弁に流すと共に、制御装置は、室外膨張弁又は除湿弁により流路を閉止した運転を実行可能とされており、室外膨張弁は、室外熱交換器入口側配管のうち室外熱交換器よりも、もう一つの分岐部に近い側に配置され、除湿弁は、バイパス回路のうち室内膨張弁よりも、もう一つの分岐部に近い側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、除湿弁を閉じ、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒をもう一つの分岐部から室外膨張弁に流し、この室外膨張弁にて減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房運転を実行することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明の車両用空気調和装置は、請求項5又は請求項6の発明において制御装置は、室外膨張弁を全閉とし、除湿弁を開放して圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒をもう一つの分岐部からバイパス回路に流し、室内膨張弁にて減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿運転を実行する。
【0015】
請求項8の発明の車両用空気調和装置は、請求項5乃至請求項7の発明において室外熱交換器入口側回路はもう一つの分岐部材の第1の冷媒出口に接続されて当該もう一つの分岐部材から立ち上がり、室外膨張弁はもう一つの分岐部材よりも高い位置に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室外に設けられた室外熱交換器と、冷媒を吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、この吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁を有して構成され、所定量の冷媒とオイルが封入された冷媒回路と、制御装置を備え、車室内を空調する車両用空気調和装置であって、冷媒回路の高圧側に設定された分岐部と、この分岐部から吸熱器に至り、室内膨張弁が設けられた吸熱器入口側回路と、室外熱交換器の冷媒出口側から分岐部に至る冷媒配管と、この冷媒配管に設けられ、吸熱器入口側回路側が順方向とされた逆止弁と、室外熱交換器の冷媒入口側に設定されたもう一つの分岐部と、このもう一つの分岐部と前記分岐部を連通して、室外熱交換器及び逆止弁をバイパスするバイパス回路と、熱媒体を循環させて車両に搭載されたバッテリの温度を調整するためのバッテリ温度調整装置を備え、このバッテリ温度調整装置が、冷媒と熱媒体を熱交換させるための冷媒-熱媒体熱交換器と、分岐部から冷媒-熱媒体熱交換器に至る分岐回路と、この分岐回路に設けられ、冷媒-熱媒体熱交換器に流入する冷媒を減圧するための補助膨張弁を有し、制御装置が、室内膨張弁又は補助膨張弁を全閉とした運転を実行可能とされているものにおいて、室内膨張弁を、吸熱器入口側回路のうち吸熱器よりも分岐部に近い側に配置し、補助膨張弁を、分岐回路のうち冷媒-熱媒体熱交換器よりも分岐部に近い側に配置したので、分岐部と室内膨張弁との間の吸熱器入口側回路の容積と、分岐部と補助膨張弁との間の分岐回路の容積を縮小させることができるようになる。
【0017】
これにより、バイパス回路に冷媒を流す場合に、分岐部から室外熱交換器の冷媒出口側の冷媒配管に逆流しようとする冷媒は逆止弁により阻止されるので、この冷媒配管にオイルが溜まり込んでオイルの循環量が低下してしまう不都合を防止することができるようになる。特に、冷媒入口と第1及び第2の冷媒出口を有したもう一つの分岐部材からもう一つの分岐部を構成し、バイパス回路には除湿弁を設け、バイパス回路をもう一つの分岐部材の第2の冷媒出口に接続して当該もう一つの分岐部材から立ち上がるようにし、除湿弁をもう一つの分岐部材よりも高い位置に配置するようにしたので、もう一つの分岐部材と除湿弁との間のバイパス回路に冷媒とオイルが溜まり難くなり、オイル循環率の低下をより一層効果的に解消することができるようになる。また、例えば請求項2の発明の如く制御装置が、補助膨張弁を全閉とし、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を分岐部から吸熱器入口側回路に流し、室内膨張弁にて減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房運転を実行する場合に、分岐部と補助膨張弁との間の分岐回路内に滞留する冷媒とそれに相溶されたオイルの量を著しく低減させて、オイル循環率の低下を防止し、圧縮機の信頼性を向上させることができるようになると共に、必要冷媒量及び必要オイル量の増加も防ぐことができるようになる。
【0018】
更に、例えば請求項3の発明の如く制御装置が、室内膨張弁を全閉とし、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を分岐部から分岐回路に流し、補助膨張弁にて減圧した後、冷媒-熱媒体熱交換器にて吸熱させるバッテリ温調単独モードを実行する場合にも、分岐部と室内膨張弁との間の吸熱器入口側回路内に滞留する冷媒とそれに相溶されたオイルの量を著しく低減させて、同様にオイル循環率の低下を防止し、圧縮機の信頼性を向上させることができるようになると共に、必要冷媒量及び必要オイル量の増加も防ぐことができるようになる。
【0019】
特に、請求項4の発明の如く冷媒入口と第1及び第2の冷媒出口を有した分岐部材から分岐部を構成し、吸熱器入口側回路を分岐部材の第1の冷媒出口に接続して当該分岐部材から立ち上がるようにし、室内膨張弁を分岐部材よりも高い位置に配置すると共に、分岐回路を分岐部材の第2の冷媒出口に接続して当該分岐部材から立ち上がるようにし、補助膨張弁を分岐部材よりも高い位置に配置するようにすれば、分岐部材と室内膨張弁との間の吸熱器入口側回路、及び、分岐部材と補助膨張弁との間の分岐回路に冷媒とオイルが溜まり難くなり、オイル循環率の低下をより一層効果的に解消することができるようになる。
【0020】
また、請求項5の発明の如く冷媒回路が、冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、放熱器から出た冷媒を室外熱交換器に流すための室外熱交換器入口側回路と、この室外熱交換器入口側回路に設けられ、室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁を有し、バイパス回路は、室外膨張弁の冷媒上流側に設定された前記もう一つの分岐部から分岐し、放熱器から出た冷媒を室内膨張弁に流すと共に、制御装置が、室外膨張弁又は除湿弁により流路を閉止した運転を実行可能とされている場合に、室外膨張弁を、室外熱交換器入口側配管のうち室外熱交換器よりも、もう一つの分岐部に近い側に配置し、除湿弁を、バイパス回路のうち室内膨張弁よりも、もう一つの分岐部に近い側に配置することで、もう一つの分岐部と室外膨張弁との間の室外熱交換器入口側回路の容積と、もう一つの分岐部と除湿弁との間のバイパス回路の容積を縮小させることができるようになる。
【0021】
これにより、例えば請求項6の発明の如く制御装置が、除湿弁を閉じ、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒をもう一つの分岐部から室外膨張弁に流し、この室外膨張弁にて減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房運転を実行する場合に、もう一つの分岐部と除湿弁との間のバイパス回路内に滞留する冷媒とそれに相溶されたオイルの量を著しく低減させて、オイル循環率の低下を防止し、圧縮機の信頼性を向上させることができるようになると共に、必要冷媒量及び必要オイル量の増加も防ぐことができるようになる。
【0022】
更に、例えば請求項7の発明の如く制御装置が、室外膨張弁を全閉とし、除湿弁を開放して圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒をもう一つの分岐部からバイパス回路に流し、室内膨張弁にて減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿運転を実行する場合に、もう一つの分岐部と室外膨張弁との間の室外熱交換器入口側回路内に滞留する冷媒とそれに相溶されたオイルの量を著しく低減させて、同様にオイル循環率の低下を防止し、圧縮機の信頼性を向上させることができるようになると共に、必要冷媒量及び必要オイル量の増加も防ぐことができるようになる。
【0023】
特に、請求項8の発明の如く室外熱交換器入口側回路をもう一つの分岐部材の第1の冷媒出口に接続して当該もう一つの分岐部材から立ち上がるようにし、室外膨張弁をもう一つの分岐部材よりも高い位置に配置するようにすれば、もう一つの分岐部材と室外膨張弁との間の室外熱交換器入口側回路に冷媒とオイルが溜まり難くなり、オイル循環率の低下をより一層効果的に解消することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用した車両用空気調和装置の一実施例の構成図である。
図2図1の車両用空気調和装置のコントローラ(制御装置)の制御ブロック図である。
図3図2のコントローラによる暖房運転を説明する図である。
図4図2のコントローラによる除湿暖房運転を説明する図である。
図5図2のコントローラによる内部サイクル運転を説明する図である。
図6図2のコントローラによる除湿冷房運転/冷房運転を説明する図である。
図7図2のコントローラによる暖房/バッテリ温調モードを説明する図である。
図8図2のコントローラによる除湿冷房/バッテリ温調モード(冷房/バッテリ温調モード)を説明する図である。
図9図2のコントローラによる内部サイクル/バッテリ温調モードを説明する図である。
図10図2のコントローラによる除湿暖房/バッテリ温調モードを説明する図である。
図11図2のコントローラによるバッテリ温調単独モードを説明する図である。
図12図1の分岐部材B2と室内膨張弁及び補助膨張弁部分の平面図である。
図13図12の分岐部材B2と室内膨張弁及び補助膨張弁部分の正面図である。
図14図1の分岐部材B1と室外膨張弁及び電磁弁(除湿)部分の平面図である。
図15図14の分岐部材B1と室外膨張弁及び電磁弁(除湿)部分の正面図である。
図16】冷媒の圧力と温度に対するオイルの相溶曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明を適用した一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明の車両用空気調和装置1を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、車両にバッテリ55(例えば、リチウム電池)が搭載され、急速充電器や家庭用商用電源(普通充電)等の外部電源からバッテリ55に充電された電力を走行用の電動モータ(図示せず)に供給することで駆動し、走行するものである。また、車両に搭載された本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリ55から給電されて駆動されるものである。
【0026】
即ち、車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転により暖房運転を行い、更に、除湿暖房運転や内部サイクル運転(除湿運転)、除湿冷房運転、冷房運転の各空調運転を選択的に実行することで車室内の空調を行うものである。
【0027】
尚、車両としては電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明が有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。
【0028】
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁(電子膨張弁)から成る室外膨張弁6と、冷房時には冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房時には冷媒を吸熱させる蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁(電子膨張弁)から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させる吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。
【0029】
この冷媒回路R内には所定量の冷媒(実施例では、HFO-1234yf)とオイル(潤滑油)が封入される。また、室外膨張弁6や室内膨張弁8は、冷媒を減圧膨張させると共に、全開や全閉(閉止)も可能とされている。
【0030】
尚、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。また、図中23はグリルシャッタと称されるシャッタである。このシャッタ23が閉じられると、走行風が室外熱交換器7に流入することが阻止される構成とされている。
【0031】
また、室外熱交換器7の冷媒出口側に接続された冷媒配管13Aは、逆止弁18を介して本発明における吸熱器入口側回路を構成する冷媒配管13Bに接続されている。尚、逆止弁18は冷媒配管13B(吸熱器入口側回路)側が順方向とされ、この冷媒配管13Bは室内膨張弁8に接続されている。
【0032】
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁21を介して吸熱器9の出口側に位置する冷媒配管13Cに連通接続されている。そして、この冷媒配管13Cがアキュムレータ12に接続され、アキュムレータ12は圧縮機2の冷媒吸込側に接続されている。
【0033】
更に、冷媒回路Rの高圧側となる放熱器4の冷媒出口側の冷媒配管13Eには本発明におけるもう一つの分岐部を構成する分岐部材B1(本発明におけるもう一つの分岐部材)が設けられており、この分岐部材B1には本発明における室外熱交換器入口側回路を構成する冷媒配管13Jの一端が接続されている。この冷媒配管13J(室外熱交換器入口側回路)の他端は室外熱交換器7の冷媒入口側に接続されると共に、前述した室外膨張弁6はこの冷媒配管13Jに接続されている。
【0034】
更に、分岐部材B1には本発明におけるバイパス回路を構成する冷媒配管13Fの一端が接続されている。この冷媒配管13F(バイパス回路)は、除湿時に開放される本発明における除湿弁としての電磁弁22を介して逆止弁18の冷媒下流側であって、室内膨張弁8の冷媒上流側に位置する冷媒配管13Aと冷媒配管13Bとの接続部(後述する分岐部材B2)に連通接続されている。即ち、冷媒配管13Fの他端は後述する分岐部材B2に接続されている。これにより、冷媒配管13Fは室外膨張弁6、室外熱交換器7及び逆止弁18の直列回路に対して並列に接続されたかたちとなり、室外膨張弁6、室外熱交換器7及び逆止弁18をバイパスする回路となる。
【0035】
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環)と、車室外の空気である外気(外気導入)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0036】
また、放熱器4の空気上流側における空気流通路3内には、当該空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を放熱器4に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、FOOT(フット)、VENT(ベント)、DEF(デフ)の各吹出口(図1では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
【0037】
更に、車両用空気調和装置1は、バッテリ55に熱媒体を循環させて当該バッテリ55の温度を調整するためのバッテリ温度調整装置61を備えている。実施例のバッテリ温度調整装置61は、バッテリ55に熱媒体を循環させるための循環装置としての循環ポンプ62と、加熱装置としての熱媒体加熱ヒータ66と、冷媒-熱媒体熱交換器64を備え、それらとバッテリ55が熱媒体配管68にて環状に接続されている。
【0038】
この実施例の場合、循環ポンプ62の吐出側に熱媒体加熱ヒータ66が接続され、熱媒体加熱ヒータ66の出口に冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Aの入口が接続され、この熱媒体流路64Aの出口にバッテリ55の入口が接続され、バッテリ55の出口が循環ポンプ62の吸込側に接続されている。
【0039】
このバッテリ温度調整装置61で使用される熱媒体としては、例えば水、HFO-1234yfのような冷媒、クーラント等の液体、空気等の気体が採用可能である。尚、実施例では水を熱媒体として採用している。また、熱媒体加熱ヒータ66はPTCヒータ等の電気ヒータから構成されている。更に、バッテリ55の周囲には例えば熱媒体が当該バッテリ55と熱交換関係で流通可能なジャケット構造が施されているものとする。
【0040】
そして、循環ポンプ62が運転されると、循環ポンプ62から吐出された熱媒体は熱媒体加熱ヒータ66に至り、熱媒体加熱ヒータ66が発熱されている場合にはそこで加熱された後、次に冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Aに流入する。この冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Aを出た熱媒体はバッテリ55に至る。熱媒体はそこでバッテリ55と熱交換した後、循環ポンプ62に吸い込まれることで熱媒体配管68内を循環される。
【0041】
一方、冷媒回路Rの冷媒配管13F(バイパス回路)の冷媒出口、即ち、逆止弁18の冷媒下流側(順方向側)であって、室内膨張弁8の冷媒上流側に位置する冷媒配管13F、冷媒配管13A及び冷媒配管13Bの接続部には、本発明における分岐部を構成する分岐部材B2が設けられている。即ち、冷媒配管13B(吸熱器入口側回路)の一端はこの分岐部材B2に接続され、他端が吸熱器9に接続されたかたちとなる。
【0042】
また、分岐部材B2には本発明における分岐回路を構成する分岐配管72の一端が接続されている。この分岐配管72には電動弁(電子膨張弁)から構成された補助膨張弁73が設けられている。この補助膨張弁73は冷媒-熱媒体熱交換器64の後述する冷媒流路64Bに流入する冷媒を減圧膨張させると共に全閉も可能とされている。
【0043】
そして、分岐配管72の他端は冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Bに接続されており、この冷媒流路64Bの出口には冷媒配管74の一端が接続され、冷媒配管74の他端はアキュムレータ12の手前(冷媒上流側)の冷媒配管13Cに接続されている。そして、これら補助膨張弁73等も冷媒回路Rの一部を構成すると同時に、バッテリ温度調整装置61の一部をも構成することになる。
【0044】
補助膨張弁73が開いている場合、冷媒配管13Fや室外熱交換器7から出た冷媒(一部又は全ての冷媒)はこの補助膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Bに流入し、そこで蒸発する。冷媒は冷媒流路64Bを流れる過程で熱媒体流路64Aを流れる熱媒体から吸熱した後、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれることになる。
【0045】
尚、前述した分岐部材B1の具体的な構成、及び、この分岐部材B1に対する冷媒配管13Jと冷媒配管13Fの接続構造、室外膨張弁6と電磁弁22の配置については後に詳述する。また、前述した分岐部材B2の具体的な構成、及び、この分岐部材B2に対する冷媒配管13Bと分岐配管72の接続構造、室内膨張弁8と補助膨張弁73の配置についても後に詳述する。
【0046】
次に、図2において32は車両用空気調和装置1の制御を司る制御装置としてのコントローラであり、プロセッサを備えたコンピュータの一例としてのマイクロコンピュータから構成されている。このコントローラ32の入力には車両の外気温度(Tam)を検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒温度を検出する吸込温度センサ44と、放熱器4の温度(放熱器4を経た空気の温度、又は、放熱器4自体の温度:放熱器温度TCI)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器4内、又は、放熱器4を出た直後の冷媒の圧力:放熱器圧力PCI)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9を経た空気の温度、又は、吸熱器9自体の温度:吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た直後の冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、設定温度や空調運転の切り換えを設定するための空調操作部53と、室外熱交換器7の温度(室外熱交換器7から出た直後の冷媒の温度、又は、室外熱交換器7自体の温度:室外熱交換器温度TXO。室外熱交換器7が蒸発器として機能するとき、室外熱交換器温度TXOは室外熱交換器7における冷媒の蒸発温度となる)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力(室外熱交換器7内、又は、室外熱交換器7から出た直後の冷媒の圧力)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。
【0047】
また、コントローラ32の入力には更に、バッテリ55の温度(バッテリ55自体の温度、又は、バッテリ55を出た熱媒体の温度、或いは、バッテリ55に入る熱媒体の温度:バッテリ温度Tb)を検出するバッテリ温度センサ76と、熱媒体加熱ヒータ66の温度(熱媒体加熱ヒータ66自体の温度、熱媒体加熱ヒータ66を出た熱媒体の温度)を検出する熱媒体加熱ヒータ温度センサ77と、冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Aを出た熱媒体の温度を検出する第1出口温度センサ78と、冷媒流路64Bを出た冷媒の温度を検出する第2の出口温度センサ79の各出力も接続されている。
【0048】
一方、コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吹出口切換ダンパ31と、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、電磁弁22(除湿)、電磁弁21(暖房)の各電磁弁と、シャッタ23、循環ポンプ62、熱媒体加熱ヒータ66、補助膨張弁73が接続されている。そして、コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定に基づいてこれらを制御するものである。
【0049】
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作について説明する。コントローラ32は実施例では暖房運転と、除湿暖房運転と、内部サイクル運転(除湿運転)と、除湿冷房運転と、冷房運転の各空調運転を切り換えて実行すると共に、バッテリ55の温度を所定の適温範囲内に調整する。先ず、冷媒回路Rの各空調運転について説明する。
【0050】
(1)暖房運転
最初に、図3を参照しながら暖房運転について説明する。図3は暖房運転における冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。コントローラ32により(オートモード)、或いは、空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房運転が選択されると、コントローラ32は電磁弁21(暖房用)を開放し、室内膨張弁8を全閉とする。また、電磁弁22(除湿用)を閉じる。尚、シャッタ23は開放し、補助膨張弁73は全閉とする。
【0051】
そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が放熱器4に通風される割合を調整する状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0052】
放熱器4内で液化した冷媒は放熱器4を出た後、冷媒配管13E、分岐部材B1を経て冷媒配管13J(室外熱交換器入口側回路)に流入し、室外膨張弁6に至る。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる(吸熱)。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び冷媒配管13D、電磁弁21を経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
【0053】
コントローラ32は、後述する目標吹出温度TAOから算出される目標ヒータ温度TCO(放熱器4の風下側の空気温度の目標値)から目標放熱器圧力PCO(放熱器4の圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度TCI)及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCIに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度を制御する。前記目標ヒータ温度TCOは基本的にはTCO=TAOとされるが、制御上の所定の制限が設けられる。
【0054】
(2)除湿暖房運転
次に、図4を参照しながら除湿暖房運転について説明する。図4は除湿暖房運転における冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。除湿暖房運転では、コントローラ32は上記暖房運転の状態において電磁弁22(除湿弁)を開き、室内膨張弁8を開いて冷媒を減圧膨張させる状態とする。また、シャッタ23は開放し、補助膨張弁73は全閉とする。これにより、放熱器4を出て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒の一部は分岐部材B1にて冷媒配管13Fに分流され、この分流された冷媒が電磁弁22を経て分岐部材B2に至り、冷媒配管13B(吸熱器入口側回路)に流入して室内膨張弁8に流れ、残りの冷媒が冷媒配管13Jに流入して室外膨張弁6に流れるようになる。即ち、分流された一部の冷媒が室内膨張弁8にて減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。また、このとき分岐部材B2の位置は冷媒回路Rの高圧側に設定されたかたちとなる。
【0055】
コントローラ32は吸熱器9の出口における冷媒の過熱度(SH)を所定値に維持するように室内膨張弁8の弁開度を制御するが、このときに吸熱器9で生じる冷媒の吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。分流されて冷媒配管13Jに流入した残りの冷媒は、室外膨張弁6で減圧された後、室外熱交換器7で蒸発することになる。
【0056】
吸熱器9で蒸発した冷媒は、冷媒配管13Cに出て冷媒配管13Dからの冷媒(室外熱交換器7からの冷媒)と合流した後、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになる。
【0057】
コントローラ32は目標ヒータ温度TCOから算出される目標放熱器圧力PCOと放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCI(冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御する。
【0058】
(3)内部サイクル運転(除湿運転)
次に、図5を参照しながら本発明における除湿運転としての内部サイクル運転について説明する。図5は内部サイクル運転における冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。内部サイクル運転では、コントローラ32は上記除湿暖房運転の状態において室外膨張弁6を全閉とする(全閉位置)。但し、電磁弁21は開いた状態を維持し、室外熱交換器7の冷媒出口は圧縮機2の冷媒吸込側に連通させておく。即ち、この内部サイクル運転は除湿暖房運転における室外膨張弁6の制御で当該室外膨張弁6を全閉とした状態であるので、この内部サイクル運転も除湿暖房運転の一部と捉えることができる(シャッタ23は開、補助膨張弁73は全閉)。
【0059】
但し、室外膨張弁6が閉じられることにより、室外熱交換器7への冷媒の流入は阻止されることになるので、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒は分岐部材B1から全て冷媒配管13Fに流れ、電磁弁22を経て分岐部材B2に至るようになる。従って、この場合も分岐部材B2の位置は冷媒回路Rの高圧側に設定されたかたちとなる。そして、分岐部材B2から冷媒は冷媒配管13B(吸熱器入口側回路)に入り、室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0060】
吸熱器9で蒸発した冷媒は冷媒配管13Cを流れ、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより、車室内の除湿暖房が行われることになるが、この内部サイクル運転では室内側の空気流通路3内にある放熱器4(放熱)と吸熱器9(吸熱)の間で冷媒が循環されることになるので、外気からの熱の汲み上げは行われず、圧縮機2の消費動力分の暖房能力が発揮される。除湿作用を発揮する吸熱器9には冷媒の全量が流れるので、上記除湿暖房運転に比較すると除湿能力は高いが、暖房能力は低くなる。
【0061】
また、室外膨張弁6は閉じられるものの、電磁弁21は開いており、室外熱交換器7の冷媒出口は圧縮機2の冷媒吸込側に連通しているので、室外熱交換器7内の液冷媒は冷媒配管13D及び電磁弁21を経て冷媒配管13Cに流出し、アキュムレータ12に回収され、室外熱交換器7内はガス冷媒の状態となる。これにより、電磁弁21を閉じたときに比して、冷媒回路R内を循環する冷媒量が増え、放熱器4における暖房能力と吸熱器9における除湿能力を向上させることができるようになる。
【0062】
コントローラ32は吸熱器9の温度、又は、前述した放熱器圧力PCI(冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。このとき、コントローラ32は吸熱器9の温度によるか放熱器圧力PCIによるか、何れかの演算から得られる圧縮機目標回転数の低い方を選択して圧縮機2を制御する。
【0063】
(4)除湿冷房運転
次に、図6を参照しながら除湿冷房運転について説明する。図6は除湿冷房運転における冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。除湿冷房運転では、コントローラ32は室内膨張弁8を開いて冷媒を減圧膨張させる状態とし、電磁弁21と電磁弁22を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が放熱器4に通風される割合を調整する状態とする。また、シャッタ23は開放し、補助膨張弁73は全閉とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
【0064】
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て分岐部材B1から冷媒配管13J(室外熱交換器入口側回路)に流れ、室外膨張弁6に至る。そして、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13A、逆止弁18を経て分岐部材B2から冷媒配管13B(吸熱器入口側回路)に入り、室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0065】
吸熱器9で蒸発した冷媒は冷媒配管13Cを経てアキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程でリヒート(再加熱:暖房時よりも放熱能力は低い)されるので、これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
【0066】
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づき、吸熱器温度Teを目標吸熱器温度TEOにするように圧縮機2の回転数を制御すると共に、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCI(冷媒回路Rの高圧圧力)と目標ヒータ温度TCOから算出される目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)に基づき、放熱器圧力PCIを目標放熱器圧力PCOにするように室外膨張弁6の弁開度を制御することで放熱器4による必要なリヒート量を得る。
【0067】
(5)冷房運転
次に、冷房運転について説明する。冷媒回路Rの流れは図6の除湿冷房運転と同様である。冷房運転では、コントローラ32は上記除湿冷房運転の状態において室外膨張弁6の弁開度を全開とする。尚、エアミックスダンパ28は放熱器4に空気が通風される割合を調整する状態とする。また、シャッタ23は開放し、補助膨張弁73は全閉とする。
【0068】
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気は通風されるものの、その割合は小さくなるので(冷房時のリヒートのみのため)、ここは殆ど通過するのみとなり、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て分岐部材B1から冷媒配管13Jに入り、室外膨張弁6に至る。このとき室外膨張弁6は全開とされているので冷媒はそのまま室外膨張弁6を経て冷媒配管13Jを通過し、室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。
【0069】
室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13A、逆止弁18を経て分岐部材B2に至る。即ち、この場合も分岐部材B2の位置は冷媒回路Rの高圧側に設定されたかたちとなる。そして、分岐部材B2からは冷媒配管13B(吸熱器入口側回路)に入り、室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着し、空気は冷却される。
【0070】
吸熱器9で蒸発した冷媒は冷媒配管13Cを経てアキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は吹出口29から車室内に吹き出されるので、これにより車室内の冷房が行われることになる。この冷房運転においては、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0071】
(6)空調運転の切り換え
コントローラ32は下記式(I)から前述した目標吹出温度TAOを算出する。この目標吹出温度TAOは、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度の目標値である。
TAO=(Tset-Tin)×K+Tbal(f(Tset、SUN、Tam))
・・(I)
ここで、Tsetは空調操作部53で設定された車室内の設定温度、Tinは内気温度センサ37が検出する車室内空気の温度、Kは係数、Tbalは設定温度Tsetや、日射センサ51が検出する日射量SUN、外気温度センサ33が検出する外気温度Tamから算出されるバランス値である。そして、一般的に、この目標吹出温度TAOは外気温度Tamが低い程高く、外気温度Tamが上昇するに伴って低下する。
【0072】
そして、コントローラ32は起動時には外気温度センサ33が検出する外気温度Tamと目標吹出温度TAOとに基づいて上記各空調運転のうちの何れかの空調運転を選択する。また、起動後は外気温度Tamや目標吹出温度TAO等の環境や設定条件の変化に応じて前記各空調運転を選択し、切り換えていくものである。
【0073】
(7)バッテリ55の温度調整
次に、図7図12を参照しながらコントローラ32によるバッテリ55の温度調整制御について説明する。ここで、バッテリ55は外気温度により温度が変化すると共に、自己発熱によっても温度が変化する。そして、外気温度が高温環境であるときや極低温環境であるときには、バッテリ55の温度が極めて高くなり、或いは、極めて低くなって、充電や放電が困難となる。例えば、バッテリ55の温度が+45℃以上では充電が困難となり、60℃以上では放電が困難となる。また、-20℃以下でも放電が困難となり、充電も殆どできなくなる。
【0074】
そこで、実施例の車両用空気調和装置1のコントローラ32は、上記の如き空調運転を実行しながら、或いは、空調運転を停止している状態において、バッテリ温度調整装置61により、バッテリ55の温度を所定の規定温度範囲内(使用温度範囲内)に調整する。このバッテリ55の規定温度範囲は一般的には+20℃以上+40℃以下とされているため、実施例ではこの規定温度範囲内にバッテリ温度センサ76が検出するバッテリ55の温度(バッテリ温度Tb)の目標値である目標バッテリ温度TBO(例えば、+20℃)を設定するものとする。
【0075】
(7-1)暖房/バッテリ温調モード
前述した暖房運転においてバッテリ55の温度を調整することが必要となった場合、コントローラ32は暖房/バッテリ温調モードを実行する。図7はこの暖房/バッテリ温調モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)とバッテリ温度調整装置61の熱媒体の流れ(破線矢印)を示している。
【0076】
この暖房/バッテリ温調モードでは、コントローラ32は図3に示した冷媒回路Rの暖房運転の状態で、更に電磁弁22(除湿弁)を開き、補助膨張弁73も開いてその弁開度を制御する状態とする。そして、バッテリ温度調整装置61の循環ポンプ62を運転する。これにより、放熱器4から出た冷媒の一部が分岐部材B1にて分流され、冷媒配管13Fを経て室内膨張弁8の冷媒上流側の分岐部材B2に至る。即ち、この場合も分岐部材B2の位置は冷媒回路Rの高圧側に設定されたかたちとなる。冷媒はこの分岐部材B2から分岐配管72に入り、補助膨張弁73で減圧された後、分岐配管72を経て冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Bに流入して蒸発する。このときに吸熱作用を発揮する。この冷媒流路64Bで蒸発した冷媒は、冷媒配管74、冷媒配管13C及びアキュムレータ12を順次経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す(図7に実線矢印で示す)。
【0077】
一方、循環ポンプ62から吐出された熱媒体は熱媒体加熱ヒータ66に至り、そこで加熱された後(熱媒体加熱ヒータ66が発熱している場合)、熱媒体配管68内を冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Aに至り、そこで冷媒流路64B内で蒸発する冷媒により吸熱され、熱媒体は冷却される。熱媒体加熱ヒータ66で加熱され、及び/又は、冷媒の吸熱作用で冷却された熱媒体は、冷媒-熱媒体熱交換器64を出てバッテリ55に至り、当該バッテリ55と熱交換した後、循環ポンプ62に吸い込まれる循環を繰り返す(図7に破線矢印で示す)。
【0078】
コントローラ32は、例えば常時冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Bに冷媒を流し、熱媒体を常時冷却しながら、バッテリ温度センサ76が検出するバッテリ温度Tbと目標バッテリ温度TBOに基づいて熱媒体加熱ヒータ66の発熱を制御することで、バッテリ温度Tbが目標バッテリ温度TBOとなるようにする(その場合は、実際には暖房運転に代えて暖房/バッテリ温調モードを常時実行するか、又は、暖房運転と暖房/バッテリ温調モードを切り換えて実行することになる)。或いは、暖房運転中にバッテリ温度Tb>目標バッテリ温度TBO+αとなった場合に、暖房/バッテリ温調モードに移行し、補助膨張弁73を制御してバッテリ温度Tbを低下させ、バッテリ温度Tb<目標バッテリ温度TBO-αとなった場合にも暖房運転から暖房/バッテリ温調モードに移行し、熱媒体加熱ヒータ66を発熱させてバッテリ温度Tbを上昇させることで、バッテリ温度Tbが目標バッテリ温度TBOとなるようにする。以上のようにしてコントローラ32は、バッテリ55の温度Tbを規定温度範囲内である目標バッテリ温度TBOに調整するものである。
【0079】
(7-2)冷房/バッテリ温調モード
次に、前述した冷房運転においてバッテリ55の温度を調整することが必要となった場合、コントローラ32は冷房/バッテリ温調モードを実行する。図8はこの冷房/バッテリ温調モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)とバッテリ温度調整装置61の熱媒体の流れ(破線矢印)を示している。
【0080】
この冷房/バッテリ温調モードでは、コントローラ32は前述した図6の冷房運転の冷媒回路Rの状態において、補助膨張弁73を開いてその弁開度を制御し、バッテリ温度調整装置61の循環ポンプ62も運転して、冷媒-熱媒体熱交換器64において冷媒と熱媒体とを熱交換させる状態とする。
【0081】
これにより、圧縮機2から吐出された高温の冷媒は、放熱器4を経て分岐部材B1から室外熱交換器7に流入し、そこで室外送風機15により通風される外気や走行風と熱交換して放熱し、凝縮する。室外熱交換器7で凝縮した冷媒の一部は分岐部材B2に至る。即ち、この場合も分岐部材B2の位置は冷媒回路Rの高圧側に設定されたかたちとなる。冷媒はこの分岐部材B2を経て室内膨張弁8に至り、そこで減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で空気流通路3内の空気が冷却されるので、車室内は冷房される。
【0082】
室外熱交換器7で凝縮した冷媒の残りは分岐部材B2にて分岐配管72に分流され、補助膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Bで蒸発する。冷媒はここでバッテリ温度調整装置61内を循環する熱媒体から吸熱するのでバッテリ55は前述同様に冷却される。尚、吸熱器9から出た冷媒は冷媒配管13C、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれ、冷媒-熱媒体熱交換器64を出た冷媒も冷媒配管74からアキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれることになる。
【0083】
コントローラ32はこの冷房/バッテリ温調モードでも、前述した暖房/バッテリ温調モードの場合と同様に、冷房運転に代え、又は、冷媒運転と冷房/バッテリ温調モードを切り換え、或いは、冷房運転から冷房/バッテリ温調モードに移行して補助膨張弁73と熱媒体加熱ヒータ66を制御することで、バッテリ55の温度Tbを規定温度範囲内である目標バッテリ温度TBOに調整する。
【0084】
(7-3)除湿冷房/バッテリ温調モード
次に、前述した除湿冷房運転中においてバッテリ55の温度を調整することが必要となった場合、コントローラ32は除湿冷房/バッテリ温調モードを実行する。尚、この除湿冷房/バッテリ温調モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)とバッテリ温度調整装置61の熱媒体の流れ(破線矢印)は図8と同様であるが、室外膨張弁6は全開では無く開き気味で制御される。そして、コントローラ32は冷房/バッテリ温調モードの場合と同様に、補助膨張弁73と熱媒体加熱ヒータ66を制御することで、バッテリ55の温度Tbを規定温度範囲内である目標バッテリ温度TBOに調整する。
【0085】
(7-4)内部サイクル/バッテリ温調モード
次に、前述した内部サイクル運転においてバッテリ55の温度を調整することが必要となった場合、コントローラ32は内部サイクル/バッテリ温調モードを実行する。この内部サイクル/バッテリ温調モードでは、コントローラ32は前述した図5の内部サイクル運転の冷媒回路Rの状態において、補助膨張弁73を開いてその弁開度を制御し、バッテリ温度調整装置61の循環ポンプ62も運転して、冷媒-熱媒体熱交換器64において冷媒と熱媒体とを熱交換させる状態とする。図9はこの内部サイクル/バッテリ温調モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)とバッテリ温度調整装置61の熱媒体の流れ(破線矢印)を示している。
【0086】
これにより、圧縮機2から吐出された高温の冷媒は放熱器4で放熱した後、分岐部材B1から電磁弁22を経て冷媒配管13Fに全て流れるようになる。そして、冷媒配管13Fを出た冷媒は分岐部材B2に至る。即ち、この場合も分岐部材B2の位置は冷媒回路Rの高圧側に設定されたかたちとなる。冷媒の一部はこの分岐部材B2から冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に至り、そこで減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0087】
冷媒配管13Fを出た冷媒の残りは分岐部材B2にて分岐配管72に分流され、補助膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Bで蒸発する。冷媒はここでバッテリ温度調整装置61内を循環する熱媒体から吸熱するのでバッテリ55は前述同様に冷却される。尚、吸熱器9から出た冷媒は冷媒配管13C、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれ、冷媒-熱媒体熱交換器64を出た冷媒も冷媒配管74からアキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれることになる。
【0088】
コントローラ32はこの内部サイクル/バッテリ温調モードでも、前述した暖房/バッテリ温調モードの場合と同様に、内部サイクル運転に代え、又は、内部サイクル運転と内部サイクル/バッテリ温調モードを切り換え、或いは、内部サイクル運転から内部サイクル/バッテリ温調モードに移行して補助膨張弁73と熱媒体加熱ヒータ66を制御することで、バッテリ55の温度Tbを規定温度範囲内である目標バッテリ温度TBOに調整する。
【0089】
(7-5)除湿暖房/バッテリ温調モード
次に、前述した除湿暖房運転においてバッテリ55の温度を調整することが必要となった場合、コントローラ32は除湿暖房/バッテリ温調モードを実行する。この除湿暖房/バッテリ温調モードでは、コントローラ32は前述した図4の除湿暖房運転の冷媒回路Rの状態において、補助膨張弁73を開いてその弁開度を制御し、バッテリ温度調整装置61の循環ポンプ62も運転して、冷媒-熱媒体熱交換器64において冷媒と熱媒体とを熱交換させる状態とする。図10はこの除湿暖房/バッテリ温調モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)とバッテリ温度調整装置61の熱媒体の流れ(破線矢印)を示している。
【0090】
これにより、放熱器4を出た凝縮冷媒の一部が分岐部材B1にて分流され、この分流された冷媒が電磁弁22を経て冷媒配管13Fに流入し、冷媒配管13Fから出てそのうちの一部が分岐部材B2から冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流れ、残りの冷媒が室外膨張弁6に流れるようになる。即ち、分流された冷媒の内の一部が室内膨張弁8にて減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときに吸熱器9で生じる冷媒の吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになる。また、放熱器4から出た凝縮冷媒の残りは、分岐部材B1から冷媒配管13Jに流れ、室外膨張弁6で減圧された後、室外熱交換器7で蒸発し、外気から吸熱する。
【0091】
一方、冷媒配管13Fを出た冷媒の残りは分岐部材B2にて分岐配管72に流入し、補助膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Bで蒸発する。冷媒はここでバッテリ温度調整装置61内を循環する熱媒体から吸熱するのでバッテリ55は前述同様に冷却される。尚、吸熱器9から出た冷媒は冷媒配管13C、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれ、室外熱交換器7から出た冷媒は冷媒配管13D、電磁弁21、冷媒配管13C及びアキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれ、冷媒-熱媒体熱交換器64を出た冷媒も冷媒配管74からアキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれることになる。
【0092】
コントローラ32はこの除湿暖房/バッテリ温調モードでも、前述した暖房/バッテリ温調モードの場合と同様に、除湿暖房運転に代え、又は、除湿暖房運転と除湿暖房/バッテリ温調モードを切り換え、或いは、除湿暖房運転から除湿暖房/バッテリ温調モードに移行して補助膨張弁73と熱媒体加熱ヒータ66を制御することで、バッテリ55の温度Tbを規定温度範囲内である目標バッテリ温度TBOに調整する。
【0093】
(7-6)バッテリ温調単独モード
次に、車室内の空調を行うこと無く、バッテリ55の温調を行うバッテリ温調単独モードについて説明する。図11はこのバッテリ温調単独モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)とバッテリ温度調整装置61の熱媒体の流れ(破線矢印)を示している。コントローラ32圧縮機2を運転し、室外送風機15も運転する。また、室内膨張弁8を全閉とし、補助膨張弁37は開いて冷媒を減圧する状態とする。尚、室外膨張弁6は全開とする。更に、コントローラ32は電磁弁17、電磁弁21を閉じ、室内送風機27を停止する。そして、循環ポンプ62を運転し、冷媒-熱媒体熱交換器64において冷媒と熱媒体を熱交換させる状態とする。
【0094】
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4を経て冷媒配管13Eから分岐部材B1を経て冷媒配管13Jに入り、室外膨張弁6に至る。このとき室外膨張弁6は全開とされているので、冷媒は冷媒配管13Jを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7に着霜が成長していた場合は、このときの放熱作用で室外熱交換器7は除霜されることになる。
【0095】
室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aに入り、分岐部材B2に至る。即ち、この場合も分岐部材B2の位置は冷媒回路Rの高圧側に設定されたかたちとなる。このとき室内膨張弁8は全閉とされているので、室外熱交換器7を出た全ての冷媒は分岐部材B2から分岐配管72を経て補助膨張弁73に至る。冷媒はこの補助膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Bに流入して蒸発する。このときに吸熱作用を発揮する。この冷媒流路64Bで蒸発した冷媒は冷媒配管74、冷媒配管13C、及び、アキュムレータ12を順次経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0096】
一方、循環ポンプ62から吐出された熱媒体は熱媒体加熱ヒータ66を経て加熱され(熱媒体加熱ヒータ66が発熱している場合)、熱媒体配管68内を冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Aに至り、そこで冷媒流路64B内で蒸発する冷媒により吸熱され、熱媒体は冷却される。熱媒体加熱ヒータ66で加熱され、及び/又は、冷媒の吸熱作用で冷却された熱媒体は、冷媒-熱媒体熱交換器64を出てバッテリ55に至り、当該バッテリ55と熱交換した後、循環ポンプ62に吸い込まれる循環を繰り返す(図11に破線矢印で示す)。
【0097】
コントローラ32はこのバッテリ温調単独モードでも、前述した暖房/バッテリ温調モードの場合と同様に、補助膨張弁73と熱媒体加熱ヒータ66を制御することで、バッテリ55の温度Tbを規定温度範囲内である目標バッテリ温度TBOに調整するものである。
【0098】
(8)分岐部材B2の具体的な構造、室内膨張弁8及び補助膨張弁73等の配置接続構造
次に、図12図13を参照しながら、前述した分岐部材B2(分岐部)の具体的な構造と、冷媒配管13B(吸熱器入口側回路)、分岐配管72(分岐回路)、冷媒配管13A、室内膨張弁8及び補助膨張弁73の配置接続構造について説明する。
【0099】
図12は分岐部材B2と室内膨張弁8、補助膨張弁73部分の平面図、図13は正面図をそれぞれ示している。分岐部材B2は金属製のブロックから構成されており、この分岐部材B2には第1の冷媒入口IN1及び第2の冷媒入口IN2と、内部でそれらに連通した第1の冷媒出口OUT1及び第2の冷媒出口OUT2を有している。そして、第1の冷媒入口IN1に冷媒配管13Fが接続され、第2の冷媒入口IN2に冷媒配管13Aが接続されている。
【0100】
第1の冷媒出口OUT1には冷媒配管13Bが接続され、第2の冷媒出口OUT2には分岐配管72が接続されているが、図13に示されるように冷媒配管13Bは分岐部材B2の第1の冷媒出口OUT1から立ち上がっている。そして、室内膨張弁8は冷媒配管13Bのうち吸熱器9よりも分岐部材B2に近い側に接続されており、これにより、室内膨張弁8は分岐部材B2よりも高い位置に配置されている。
【0101】
また、図13に示されるように分岐配管72も分岐部材B2の第2の冷媒出口OUT2から立ち上がっており、補助膨張弁73も分岐配管72のうち冷媒-熱媒体熱交換器64よりも分岐部材B2に近い側に接続されている。これにより、補助膨張弁73も分岐部材B2よりも高い位置に配置されている。
【0102】
このような構成としたことで、前述した除湿暖房運転、内部サイクル運転、除湿冷房運転及び冷房運転において補助膨張弁73を全閉とし、冷媒配管13Fや冷媒配管13Bからの冷媒を室内膨張弁8に流す場合に、分岐部材B2と補助膨張弁73との間の分岐配管72内の容積が小さくなり、そこに滞留する冷媒とオイルの量が少なくなると共に、分岐部材B2と補助膨張弁73との間の分岐配管72内に冷媒とオイルが溜まり難くなる。
【0103】
また、前述した暖房/バッテリ温調モード及びバッテリ温調単独モードにおいて室内膨張弁8を全閉とし、冷媒配管13Fや冷媒配管13Bからの冷媒を補助膨張弁73に流す場合に、分岐部材B2と室内膨張弁8との間の冷媒配管13B内の容積が小さくなり、そこに滞留する冷媒とオイルの量が少なくなると共に、分岐部材B2と室内膨張弁8との間の冷媒配管13B内に冷媒とオイルが溜まり難くなる。
【0104】
このように、室内膨張弁8を冷媒配管13Bのうち吸熱器9よりも分岐部材B2に近い側に配置し、補助膨張弁73を分岐配管72のうち冷媒-熱媒体熱交換器64よりも分岐部材B2に近い側に配置すれば、分岐部材B2と室内膨張弁8との間の冷媒配管13Bの容積と、分岐部材B2と補助膨張弁73との間の分岐配管72の容積を縮小させることができるようになる。
【0105】
これにより、補助膨張弁73を全閉とした場合に、分岐部材B2と補助膨張弁73との間の分岐配管72内に滞留する冷媒とそれに相溶されたオイルの量を著しく低減させて、オイル循環率の低下を防止し、圧縮機2の信頼性を向上させることができるようになると共に、必要冷媒量及び必要オイル量の増加も防ぐことができるようになる。
【0106】
更に、室内膨張弁8を全閉とした場合にも、分岐部材B2と室内膨張弁8との間の冷媒配管13B内に滞留する冷媒とそれに相溶されたオイルの量を著しく低減させて、同様にオイル循環率の低下を防止し、圧縮機2の信頼性を向上させることができるようになると共に、必要冷媒量及び必要オイル量の増加も防ぐことができるようになる。
【0107】
特に、実施例の如く冷媒入口IN1と第1及び第2の冷媒出口OUT1、OUT2を有した分岐部材B2から分岐部を構成し、冷媒配管13Bを分岐部材B2の第1の冷媒出口OUT1に接続して当該分岐部材B2から立ち上がるようにし、室内膨張弁8を分岐部材B2よりも高い位置に配置すると共に、分岐配管72を分岐部材B2の第2の冷媒出口OUT2に接続して当該分岐部材B2から立ち上がるようにし、補助膨張弁73を分岐部材B2よりも高い位置に配置するようにすることで、分岐部材B2と室内膨張弁8との間の冷媒配管13B、及び、分岐部材B2と補助膨張弁73との間の分岐配管72に冷媒とオイルが溜まり難くなり、オイル循環率の低下をより一層効果的に解消することができるようになる。
【0108】
(9)分岐部材B1の具体的な構造、室外膨張弁6及び電磁弁22等の配置接続構造
次に、図14図15を参照しながら、前述した分岐部材B1(もう一つの分岐部材。もう一つの分岐部)の具体的な構造と、冷媒配管13E、冷媒配管13J(室外熱交換器入口側回路)、冷媒配管13F(バイパス回路)、室外膨張弁6及び電磁弁22(除湿弁)の配置接続構造について説明する。
【0109】
図14は分岐部材B1と室外膨張弁6、電磁弁22部分の平面図、図15は正面図をそれぞれ示している。分岐部材B1も金属製のブロックから構成されており、この分岐部材B1には冷媒入口INと、内部でそれに連通した第1の冷媒出口OUT1及び第2の冷媒出口OUT2を有している。そして、冷媒入口INに冷媒配管13Eが接続されている。
【0110】
分岐部材B1の第1の冷媒出口OUT1には冷媒配管13Jが接続され、第2の冷媒出口OUT2には冷媒配管13Fが接続されているが、図15に示されるように冷媒配管13Jは分岐部材B1の第1の冷媒出口OUT1から立ち上がっている。そして、室外膨張弁6は冷媒配管13Jのうち室外熱交換器7よりも分岐部材B1に近い側に接続されており、これにより、室外膨張弁6は分岐部材B1よりも高い位置に配置されている。
【0111】
また、図15に示されるように冷媒配管13Fも分岐部材B1の第2の冷媒出口OUT2から立ち上がっており、電磁弁22も冷媒配管13Fのうち分岐部材B2や室内膨張弁8よりも分岐部材B1に近い側に接続されている。これにより、電磁弁22も分岐部材B1よりも高い位置に配置されている。
【0112】
このような構成としたことで、前述した暖房運転において電磁弁22を閉じ、冷媒配管13Eからの冷媒を室外膨張弁6に流す場合に、分岐部材B1と電磁弁22との間の冷媒配管13F内の容積が小さくなり、そこに滞留する冷媒とオイルの量が少なくなると共に、分岐部材B1と電磁弁22との間の冷媒配管13F内に冷媒とオイルが溜まり難くなる。
【0113】
また、前述した内部サイクル運転及び内部サイクル/バッテリ温調モードにおいて室外膨張弁6を全閉とした場合にも、分岐部材B1と室外膨張弁6との間の冷媒配管13Jの容積が小さくなると共に、そこに冷媒とオイルが溜まり難くなる。
【0114】
このように、室外膨張弁6を冷媒配管13Jのうち室外熱交換器7よりも分岐部材B1に近い側に配置し、電磁弁22を冷媒配管13Fのうち分岐部材B2や室内膨張弁8よりも分岐部材B1に近い側に配置すれば、分岐部材B1と室外膨張弁6との間の冷媒配管13Jの容積と、分岐部材B1と電磁弁22との間の冷媒配管13Fの容積を縮小させることができるようになる。
【0115】
これにより、電磁弁22を閉じた場合に、分岐部材B1と電磁弁22との間の冷媒配管13F内に滞留する冷媒とそれに相溶されたオイルの量を著しく低減させて、オイル循環率の低下を防止し、圧縮機2の信頼性を向上させることができるようになると共に、必要冷媒量及び必要オイル量の増加も防ぐことができるようになる。
【0116】
更に、室外膨張弁6を全閉とした場合にも、分岐部材B1と室外膨張弁6との間の冷媒配管13J内に滞留する冷媒とそれに相溶されたオイルの量を著しく低減させて、同様にオイル循環率の低下を防止し、圧縮機2の信頼性を向上させることができるようになると共に、必要冷媒量及び必要オイル量の増加も防ぐことができるようになる。
【0117】
特に、実施例の如く冷媒入口INと第1及び第2の冷媒出口OUT1、OUT2を有した分岐部材B1からもう一つの分岐部を構成し、冷媒配管13Jを分岐部材B1の第1の冷媒出口OUT1に接続して当該分岐部材B1から立ち上がるようにし、室外膨張弁6を分岐部材B1よりも高い位置に配置すると共に、冷媒配管13Fを分岐部材B1の第2の冷媒出口OUT2に接続して当該分岐部材B1から立ち上がるようにし、電磁弁22を分岐部材B1よりも高い位置に配置するようにすることで、分岐部材B1と室外膨張弁6との間の冷媒配管13J、及び、分岐部材B1と電磁弁22との間の冷媒配管13Fに冷媒とオイルが溜まり難くなり、オイル循環率の低下をより一層効果的に解消することができるようになる。
【0118】
尚、実施例で説明した冷媒回路Rやバッテリ温度調整装置61の構成はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0119】
B1 分岐部材(もう一つの分岐部材。もう一つの分岐部)
B2 分岐部材(分岐部)
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
13B 冷媒配管(吸熱器入口側回路)
13F 冷媒配管(バイパス回路)
13J 冷媒配管(室外熱交換器入口側回路)
22 電磁弁(除湿弁)
32 コントローラ
55 バッテリ
61 バッテリ温度調整装置
62 循環ポンプ
64 冷媒-熱媒体熱交換器
66 熱媒体加熱ヒータ(加熱装置)
72 分岐配管(分岐回路)
73 補助膨張弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16