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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】車両用冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20221130BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F01P7/16 503
F16K31/06 305P
F16K31/06 385A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018058249
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019167925
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 智也
(72)【発明者】
【氏名】浅井 崇
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶多
(72)【発明者】
【氏名】安田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 建郎
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-117297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0305569(US,A1)
【文献】特開2018-031437(JP,A)
【文献】特表2013-525653(JP,A)
【文献】特開2011-158037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される被冷却体と、
第1流路部および第2流路部を有し、前記被冷却体を冷却する冷媒が循環する循環流路部と、
弁体を有し、前記弁体を所定方向に移動させることで、前記第1流路部と前記第2流路部とが繋がれる開状態と、前記第1流路部と前記第2流路部とが遮断される閉状態と、を切り換え可能な電磁弁と、
前記循環流路部内に前記冷媒を循環させるポンプ部と、
を備え、
前記循環流路部は、
前記第1流路部と前記第2流路部とを接続するとともに前記弁体を収容する弁体収容部と、
一端が前記第1流路部に接続される接続流路部と、
を有し、
前記弁体収容部は、
前記所定方向の一方側に位置した第1収容部と、
前記所定方向の他方側に位置し、前記弁体によって前記第1収容部と仕切られるとともに前記開状態のときに前記第1流路部と前記第2流路部とを接続する第2収容部と、
を有し、
前記接続流路部の他端は、前記第1収容部に開口するとともに、
前記弁体収容部は、
前記開状態において前記第2収容部と前記第2流路部とを繋ぐ孔部を有し、
前記弁体は、前記弁体収容部の内周面に対して滑りながら前記所定方向に移動可能な外周面を有し、前記閉状態において前記外周面によって前記孔部を閉塞する、車両用冷却システム。
【請求項2】
前記弁体は、前記所定方向の一方側を向き前記第1収容部の内部に面する第1受圧面を有し、
前記第1受圧面は、平坦な面である、請求項1に記載の車両用冷却システム。
【請求項3】
前記弁体は、
前記所定方向の一方側を向き前記第1収容部の内部に面する第1受圧面と、
前記所定方向の他方側を向き、前記閉状態において前記第1流路部の内部に面する第2受圧面と、
を有し、
前記第1受圧面の面積は、前記第2受圧面の面積よりも大きい、請求項1または2に記載の車両用冷却システム。
【請求項4】
前記弁体収容部の内周面は、円筒状であり、
前記弁体は、円柱状である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用冷却システム。
【請求項5】
前記冷媒を冷却する冷却部をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用冷却システム。
【請求項6】
前記被冷却体は、前記車両を駆動させる駆動部である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水が流れる水回路が電磁弁によって開閉される車両用冷却システムが知られる。例えば、特許文献1には、エンジンへ冷却水を送る水回路を電磁弁で開閉する構成が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-254059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電磁弁によって水回路を閉じた際には、電磁弁の弁体には水回路を流れる流体の圧力が加えられる。そのため、水回路内の流量が比較的大きい場合には、弁体を閉じた状態に維持するために比較的大きな力が必要となり、電磁弁が大型化する場合があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて、電磁弁を小型化できる車両用冷却システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用冷却システムの一つの態様は、車両に搭載される被冷却体と、第1流路部および第2流路部を有し、前記被冷却体を冷却する冷媒が循環する循環流路部と、弁体を有し、前記弁体を所定方向に移動させることで、前記第1流路部と前記第2流路部とが繋がれる開状態と、前記第1流路部と前記第2流路部とが遮断される閉状態と、を切り換え可能な電磁弁と、前記循環流路部内に前記冷媒を循環させるポンプ部と、を備える。前記循環流路部は、前記第1流路部と前記第2流路部とを接続するとともに前記弁体を収容する弁体収容部と、一端が前記第1流路部に接続される接続流路部と、を有する。前記弁体収容部は、前記所定方向の一方側に位置した第1収容部と、前記所定方向の他方側に位置し、前記弁体によって前記第1収容部と仕切られるとともに前記開状態のときに前記第1流路部と前記第2流路部とを接続する第2収容部と、を有する。前記接続流路部の他端は、前記第1収容部に開口する。前記弁体収容部は、前記開状態において前記第2収容部と前記第2流路部とを繋ぐ孔部を有する。前記弁体は、前記弁体収容部の内周面に対して滑りながら前記所定方向に移動可能な外周面を有し、前記閉状態において前記外周面によって前記孔部を閉塞する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、電磁弁を小型化できる車両用冷却システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の車両用冷却システムを模式的に示す概略構成図である。
図2図2は、本実施形態の車両用冷却システムの一部を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本実施形態の車両用冷却システムの一部を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本実施形態の車両用冷却システムの一部を模式的に示す断面図であって、図3における部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両用冷却システムについて説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0010】
また、各図において適宜示すZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向である。本実施形態において、上下方向は、所定方向に相当し、上側は、所定方向の一方側に相当し、下側は、所定方向の他方側に相当する。なお、上下方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1は、本実施形態の車両用冷却システム1を模式的に示す概略構成図である。図2および図3は、本実施形態の車両用冷却システム1の一部を模式的に示す断面図である。図4は、本実施形態の車両用冷却システム1の一部を模式的に示す断面図であって、図3における部分拡大図である。
【0012】
図1に示す本実施形態の車両用冷却システム1は、冷媒Wによって車両に搭載されるエンジン5を冷却する冷却システムである。すなわち、本実施形態においてエンジン5は、被冷却体に相当する。本実施形態において冷媒Wは、例えば、冷却水である。図1に示すように、車両用冷却システム1は、エンジン5と、ポンプ部50と、ラジエータ60と、循環流路部10と、電磁弁40A,40Bと、温度センサ31と、エンジン制御ユニット30と、を備える。
【0013】
エンジン5は、車両を駆動させる駆動部である。本実施形態においてエンジン5は、水冷式のエンジンであり、水平対向ガソリンエンジンである。エンジン5は、シリンダブロック6と、左右バンクのシリンダヘッド7と、を有する。エンジン5には、ウォータジャケット8が設けられている。本実施形態においては、ウォータジャケット8内の流路部に冷媒Wが流れることにより、エンジン5の燃焼室9a等が冷却される。
【0014】
ポンプ部50は、循環流路部10内に冷媒Wを循環させる。本実施形態においてポンプ部50は、エンジン駆動式のポンプである。すなわち、ポンプ部50は、エンジン5が駆動することで、駆動される。
ラジエータ60は、循環流路部10内を流れる冷媒Wを冷却する。本実施形態においてラジエータ60は、冷却部に相当する。
【0015】
循環流路部10内にはエンジン5を冷却する冷媒Wが循環する。本実施形態において循環流路部10は、ウォータジャケット8内の流路部と、流入流路部14と、流出流路部16と、導入流路部15と、バイパス流路部17と、副流路部20と、を有する。
【0016】
流入流路部14は、ポンプ部50とウォータジャケット8内の流路部とを繋ぐ。流出流路部16は、ウォータジャケット8内の流路部とラジエータ60とを繋ぐ。導入流路部15は、ラジエータ60とポンプ部50とを繋ぐ。ポンプ部50は、ラジエータ60で冷却された冷媒Wを導入流路部15から吸入し、流入流路部14に送る。流入流路部14に流入した冷媒Wは、ウォータジャケット8内の流路部を通ってエンジン5を冷却する。ウォータジャケット8内の流路部に流入した冷媒Wは、流出流路部16から排出され、ラジエータ60で冷却される。ラジエータ60で冷却された冷媒Wは、導入流路部15、ポンプ部50および流入流路部14を順に介して、再びウォータジャケット8内の流路部に流入し、エンジン5を冷却する。このようにして、循環流路部10内を冷媒Wが循環することで、エンジン5を冷却できる。
【0017】
導入流路部15は、電磁弁40Aによって開閉される。これにより、導入流路部15内における冷媒Wの流れが許容される開状態OSと、導入流路部15内における冷媒Wの流れが遮断される閉状態CSと、が切り換えられる。開状態OSにおいては、上述したように循環流路部10内を冷媒Wが循環し、エンジン5が冷却される。一方、閉状態CSにおいては、循環流路部10内の冷媒Wの循環のうち、エンジン5を通る循環、すなわちウォータジャケット8内の流路部を通る循環は停止し、エンジン5の冷却が停止される。
【0018】
図2および図3に示すように、導入流路部15は、第1流路部11と、第2流路部12と、弁体収容部13と、を有する。すなわち、循環流路部10は、第1流路部11と、第2流路部12と、弁体収容部13と、を有する。第1流路部11は、ラジエータ60から弁体収容部13まで延びている。第2流路部12は、弁体収容部13からポンプ部50まで延びている。
【0019】
弁体収容部13は、第1流路部11と第2流路部12とを接続している。弁体収容部13は、第1流路部11の上側に位置する。弁体収容部13は、上側に開口している。本実施形態において弁体収容部13の内周面は、上下方向に延びる円筒状である。
なお、以下の説明においては、弁体収容部13の中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、弁体収容部13の中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0020】
弁体収容部13には、電磁弁40Aが取り付けられている。弁体収容部13の上側の開口は、電磁弁40Aによって閉じられている。弁体収容部13は、電磁弁40Aの弁体42を収容する。弁体収容部13は、弁体42によって、第1収容部13aと、第1収容部13aの下側に位置する第2収容部13bと、に上下方向に仕切られている。これにより、弁体収容部13は、上側に位置した第1収容部13aと、下側に位置し、弁体42によって第1収容部13aと仕切られた第2収容部13bと、を有する。
【0021】
弁体収容部13は、孔部19a,19bを有する。すなわち、循環流路部10は、孔部19a,19bを有する。孔部19aは、弁体収容部13を構成する壁部のうち下側の底壁部に設けられている。孔部19bは、弁体収容部13を構成する壁部のうち径方向の周壁部に設けられている。図2に示すように、孔部19aは、開状態OSにおいて第1流路部11と第2収容部13bとを繋ぐ。孔部19bは、開状態OSにおいて第2収容部13bと第2流路部12とを繋ぐ。これにより、第2収容部13bは、開状態OSのときに孔部19a,19bを介して第1流路部11と第2流路部12とを接続する。
【0022】
図1に示すように、バイパス流路部17は、ウォータジャケット8の冷媒出口側から第2流路部12まで延びている。バイパス流路部17には、エアコン用のヒートコア70が並列に接続されている。バイパス流路部17には、バイパス流路部17を開閉する電磁弁40Bが設けられている。
【0023】
副流路部20は、流入流路部14から第2流路部12まで延びている。副流路部20内には、ポンプ部50の駆動中、常に冷媒Wが循環している。副流路部20には、冷却を必要とする補機類として、例えば、ターボ過給機21、EGRクーラ22、およびオイルクーラ23が設けられている。
【0024】
図4に示すように、循環流路部10は、接続流路部18をさらに有する。接続流路部18は、一端が第1流路部11に接続され、他端が第1収容部13aに開口する。本実施形態において接続流路部18は、第1部分18aと、第2部分18bと、を有する。
第1部分18aは、第1流路部11の上側の壁面から上側に延びている。第1部分18aの下側の端部は、第1流路部11に開口する第1開口部18cである。
【0025】
第2部分18bは、第1部分18aの上側の端部から弁体収容部13まで上下方向と直交する方向に延びている。第2部分18bの弁体収容部13側の端部は、弁体収容部13の内周面に開口して、第1収容部13a内に開口する第2開口部18dである。第2開口部18dは、弁体収容部13の中心軸Jを径方向に挟んで孔部19bと反対側に配置されている。第2開口部18dは、孔部19bよりも上側に位置する。
【0026】
電磁弁40Aは、第1流路部11と第2流路部12とが繋がれる開状態OSと、第1流路部11と第2流路部12とが遮断される閉状態CSと、を切り換え可能である。電磁弁40Aは、カバー47と、ソレノイド44と、第1磁性部材45aと、第2磁性部材45cと、第1スペーサ45bと、第2スペーサ45dと、可動部48と、を有する。
【0027】
カバー47は、ソレノイド44を収容する。カバー47は、第1カバー47aと、第2カバー47bと、を有する。第1カバー47aは、下側に開口する有蓋の筒状である。第2カバー47bは、板面が上下方向を向く板状であり、周方向にそった円環状である。第2カバー47bは、第1カバー47aの下側の端部に固定されている。第2カバー47bは、ソレノイド44の下側を覆っている。
【0028】
ソレノイド44は、中心軸Jを中心として上下方向に延びる円筒状である。ソレノイド44は、カバー47の内周面に固定されている。第1磁性部材45aは、中心軸Jを中心として上下方向に延びる円筒状である。第1磁性部材45aは、ソレノイド44の径方向内側においてカバー47に収容されている。第2磁性部材45cは、中心軸Jを中心として上下方向に延びる有底の円筒状である。第2磁性部材45cは、ソレノイド44の径方向内側、かつ、第1磁性部材45aの下側においてカバー47に収容されている。第1磁性部材45aおよび第2磁性部材45cは、磁性材である。
【0029】
第1スペーサ45bは、中心軸Jを中心として上下方向に延びる円筒状である。第1スペーサ45bは、第1磁性部材45aと第2磁性部材45cとの上下方向の間に位置する。第1スペーサ45bの上下方向両端部は、各磁性部材と接触し、両者を連結する。第2スペーサ45dは、中心軸Jを中心とする円環板状である。第2スペーサ45dは、第2磁性部材45cの底部に配置されている。第1スペーサ45bおよび第2スペーサ45dは、非磁性材である。第1スペーサ45bおよび第2スペーサ45dは、例えば、樹脂から成る。
【0030】
可動部48は、上下方向に延びる中心軸Jに沿って移動可能である。可動部48は、シャフト部41と、弁体42と、コア部43と、を有する。すなわち、電磁弁40Aは、シャフト部41と、弁体42と、コア部43と、を有する。シャフト部41は、中心軸Jに沿って延びる円柱状である。シャフト部41の上側の部分は、第2磁性部材45cの底部を上下方向に貫通し、径方向内側に挿入される。シャフト部41の下側の部分は、カバー47から下側に突出し、弁体収容部13の内部に挿入される。
【0031】
弁体42は、シャフト部41の下側の端部に固定されている。本実施形態において弁体42は、中心軸Jを中心とし、上下方向に扁平な円柱状である。弁体42の外径は、弁体収容部13の内径とほぼ同じである。弁体42は、弁体収容部13の内部に位置する。弁体42は、弁体収容部13の内部に嵌め合わされている。弁体42の外周面は、弁体収容部13の内周面と接触する。可動部48が上下方向に移動する際、弁体42は、外周面が弁体収容部13の内周面に対して滑りながら、上下方向に移動する。
【0032】
弁体42は、上側を向き第1収容部13aの内部に面する第1受圧面42aと、下側を向き、閉状態CSにおいて第1流路部11の内部に面する第2受圧面42bと、を有する。第1受圧面42aは、弁体42の上側の面である。本実施形態において第1受圧面42aは、例えば、上下方向と直交する平坦な面である。第2受圧面42bは、弁体42の下側の面の一部である。本実施形態において第2受圧面42bは、例えば、上下方向と直交する平坦な面である。第2受圧面42bは、孔部19aの内部を介して、第1流路部11の内部に面する。本実施形態において第1受圧面42aの面積は、第2受圧面42bの面積よりも大きい。
【0033】
弁体42は、閉状態CSにおいて上側から孔部19aを閉塞する。第2受圧面42bは、閉状態CSにおいて、第1流路部11内の冷媒Wから上側向きの圧力を受ける。弁体42は、閉状態CSにおいて孔部19bを閉塞する。本実施形態においては、弁体42の外周面によって、孔部19bが閉塞される。
【0034】
本実施形態においてコア部43は、中心軸Jを中心とし、上下方向に延びる円筒状である。コア部43は、シャフト部41の上側の部分における外周面に嵌め合わされて固定されている。コア部43は、第1磁性部材45aの径方向内側および第2磁性部材45cの径方向内側に嵌め合わされ、第1磁性部材45aおよび第2磁性部材45cによって上下方向に移動可能に支持されている。
【0035】
弾性部材46は、第2磁性部材45cの底部に設けられた凹部45eに配置されている。本実施形態において弾性部材46は、上下方向に延びるコイルスプリングである。弾性部材46の上側の端部は、コア部43の下側の面に接触している。弾性部材46の下側の端部は、凹部45eの底面と接触している。弾性部材46は、コア部43を介して、可動部48に上側向きの弾性力Fsを加えている。
【0036】
開状態OSからソレノイド44に電流を供給すると、ソレノイド44の径方向内側に上側から下側に向かう磁界が生じ、可動部48に下側向きの電磁力Fmが生じる。これにより、可動部48が下側に移動し、弁体42によって孔部19a,19bが閉塞される。このようにして、電磁弁40Aによって、開状態OSから閉状態CSへと切り換えられる。
【0037】
一方、閉状態CSにおいて、ソレノイド44への電流供給を停止すると、ソレノイド44による磁界が消失し、可動部48に生じた電磁力Fmも消失する。これにより、弁体42が第1流路部11内の冷媒Wから受ける上側向きの流体力Fw2と、コア部43が弾性部材46から受ける上側向きの弾性力Fsとによって、可動部48が上側に移動する。これにより、孔部19a,19bが開放され、閉状態CSから開状態OSへと切り換えられる。
【0038】
以上のように、電磁弁40Aは、ソレノイド44への電流の供給と停止とを切り換えて弁体42を上下方向に移動させることで、開状態OSと閉状態CSとを切り換え可能である。
本実施形態において電磁弁40Bは、開閉する流路部が異なる点を除いて、例えば、電磁弁40Aと同様の構成である。
【0039】
温度センサ31は、冷媒Wの温度を検出する。図1に示すように、本実施形態において温度センサ31は、ウォータジャケット8の冷媒出口に設けられている。これにより、温度センサ31は、ウォータジャケット8内の冷媒Wの温度を検出可能である。
【0040】
エンジン制御ユニット30は、電磁弁40A,40Bおよび温度センサ31を制御する。エンジン制御ユニット30は、電磁弁40A,40Bの開閉を制御して、循環流路部10内の冷媒Wの流れを制御する。エンジン制御ユニット30は、温度センサ31の検出結果に基づいて、電磁弁40A,40Bを制御してもよい。
【0041】
本実施形態によれば、循環流路部10には、第1流路部11と弁体収容部13における第1収容部13aとを接続する接続流路部18が設けられている。そのため、図4に示すように、閉状態CSにおいて、接続流路部18を介して、第1収容部13a内に第1流路部11から冷媒Wが流入した状態となる。これにより、第1収容部13a内の冷媒Wの圧力によって、弁体42の第1受圧面42aには下側向きの流体力Fw1が加えられる。したがって、第1流路部11内の冷媒Wの圧力によって弁体42の第2受圧面42bに加えられる流体力Fw2の少なくとも一部を、流体力Fw1によって相殺することができる。そのため、弁体42によって孔部19aを閉塞して、閉状態CSに維持するために必要な電磁弁40Aの出力を小さくできる。これにより、電磁弁40Aを小型化できる。したがって、本実施形態によれば、電磁弁40Aを小型化できる車両用冷却システム1が得られる。また、電磁弁40Aを小型化できるため、車両用冷却システム1全体も小型化しやすい。
【0042】
なお、本実施形態において電磁弁40Aの出力とは、電磁力Fmである。本実施形態の閉状態CSは、電磁力Fmと流体力Fw1との合計が、流体力Fw2と弾性部材46からの弾性力Fsとの合計よりも大きいことで、維持される。
【0043】
また、例えば、孔部19aの開口面積が大きいほど、開状態OSにおいて第1流路部11から第2流路部12へと流れる冷媒Wの損失を小さくできる。しかし、一方で、孔部19aの開口面積が大きいほど、弁体42の第2受圧面42bに加えられる流体力Fw2が大きくなる。そのため、従来では、冷媒Wの損失を抑えようとして孔部19aの開口面積を大きくすると、電磁弁の出力を大きくする必要があり、電磁弁が大型化する場合があった。
【0044】
これに対して、本実施形態によれば、上述したように、閉状態CSを維持するために必要な電磁弁40Aの出力を小さくできる。そのため、電磁弁40Aの出力を変えずに、従来よりも大きい流体力Fw2に抗して閉状態CSを維持できる。これにより、電磁弁40Aを大型化することなく、孔部19aの開口面積を従来よりも大きくでき、循環流路部10を流れる冷媒Wの損失を低減できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、第1受圧面42aは、平坦な面である。そのため、第1収容部13a内の冷媒Wから下側向きの流体力Fw1を安定して受けやすい。これにより、閉状態CSを維持するために必要な電磁弁40Aの出力をより小さくしやすく、電磁弁40Aをより小型化できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、第1受圧面42aの面積は、第2受圧面42bの面積よりも大きい。そして、第1収容部13aと第1流路部11とは互いに繋がっているため、第1収容部13a内の冷媒Wの圧力と、第1流路部11内の冷媒Wの圧力とは、ほぼ同じである。これにより、第1受圧面42aに加えられる流体力Fw1の大きさを、第2受圧面42bに加えられる流体力Fw2の大きさよりも大きくできる。したがって、第2受圧面42bに加えられる上側向きの流体力Fw2を、流体力Fw1によって相殺し、かつ、弁体42を孔部19aに押し付ける下側向きの力を大きくできる。そのため、閉状態CSを維持するために必要な電磁弁40Aの出力をより小さくできる。これにより、電磁弁40Aをより小型化できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、弁体42は、弁体収容部13の内周面に対して滑りながら上下方向に移動可能な外周面を有する円柱状である。そのため、弁体42によって弁体収容部13の内部を第1収容部13aと第2収容部13bとに仕切りやすい。また、弁体42が弁体収容部13の内周面によって上下方向に案内されるため、弁体42を上下方向に安定して移動させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、弁体42は、開状態OSにおいて第2収容部13bと第2流路部12とを繋ぐ孔部19bを、閉状態CSにおいて閉塞する。そのため、第1収容部13aと第2流路部12とを好適に遮断することができ、閉状態CSをより安定して維持することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、冷媒Wを冷却する冷却部としてのラジエータ60が設けられている。そのため、エンジン5からの放熱により温度が上昇した冷媒Wを、ラジエータ60によって冷却することができる。したがって、エンジン5をより好適に冷却できる。
【0050】
また、本実施形態によれば、被冷却体としてのエンジン5は、車両を駆動させる駆動部である。ここで、車両のエンジン5を冷却する冷却システムは、車両のその他の部分を冷却する冷却システムに比べて、大型になりやすい。そのため、上述したように電磁弁40Aを小型化できることによって車両用冷却システム1を小型化できる効果を、特に有用に得られる。
【0051】
なお、本発明は上述の実施形態に限られず、以下の他の構成を採用することもできる。弁体部の形状は、弁体収容部の内部を第1収容部と第2収容部とに仕切れるならば、特に限定されない。第1受圧面および第2受圧面は、平坦な面でなくてもよく、曲面であってもよい。第1受圧面の面積と第2受圧面の面積とは、互いに同じであってもよい。
【0052】
接続流路部は、循環流路部に設けられ、第1流路部と第1収容部とを繋ぐならば、特に限定されない。接続流路部は、複数設けられてもよい。接続流路部の数は、特に限定されない。電磁弁の構成は、弁体によって開状態OSと閉状態CSとを切り換えられるならば、特に限定されない。被冷却体は、車両に搭載されるならば、特に限定されず、車両の駆動部以外の部分であってもよい。
【0053】
以上に説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…車両用冷却システム、5…エンジン(被冷却体)、10…循環流路部、11…第1流路部、12…第2流路部、13…弁体収容部、13a…第1収容部、13b…第2収容部、18…接続流路部、19b…孔部、40A…電磁弁、42…弁体、42a…第1受圧面、42b…第2受圧面、50…ポンプ部、60…ラジエータ(冷却部)、CS…閉状態、OS…開状態、W…冷媒
図1
図2
図3
図4