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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】沸騰冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20221130BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221130BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01L23/46 A
H05K7/20 Q
F28D15/02 M
F28D15/02 101K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018099850
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019204899
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日吉 道明
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-019842(JP,A)
【文献】特開昭52-065341(JP,A)
【文献】特表2011-530195(JP,A)
【文献】特開2001-345589(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198059(US,A1)
【文献】実開昭61-109143(JP,U)
【文献】国際公開第2008/090726(WO,A1)
【文献】特開2001-068611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0012299(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101589287(CN,A)
【文献】特開昭61-176141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/427
H05K 7/20
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に配置されたパワー半導体と、
前記パワー半導体の左右両面に設けられる放熱板と、
前記パワー半導体の左右両側に設けられ、前記放熱板を覆う受熱ジャケットと、
前記受熱ジャケット内に充填され、前記放熱板に直接接触する冷媒と、
前記受熱ジャケットと往路管と復路管で連結される凝縮器と、
前記放熱板の放熱面に形成され、垂直方向に延びる複数の微細縦溝と、
が備えられ、
前記パワー半導体の熱により、前記放熱面に設けた前記微細縦溝により気泡の生成を促進し、生成された気泡は上昇して前記往路管を通って凝縮器に至り、液体となって復路管で再び前記受熱ジャケットに戻ることを特徴とする沸騰冷却装置。
【請求項2】
垂直に配置されたパワー半導体と、
前記パワー半導体の左右両面に設けられる放熱板と、
前記パワー半導体の左右両側に設けられ、前記放熱板を覆う受熱ジャケットと、
前記受熱ジャケット内に充填され、前記放熱板に直接接触する冷媒と、
前記受熱ジャケットと往路管と復路管で連結される凝縮器と、
前記放熱板の放熱面に形成され、垂直方向に延びる複数の微細縦溝と、前記微細縦溝に交差し、水平方向に延びる複数の微細横溝からなるメッシュ状溝と、
が備えられ、
前記パワー半導体の熱により、前記放熱面の設けた前記メッシュ状溝により気泡の生成を促進し、生成された気泡は上昇して前記往路管を通って凝縮器に至り、液体となって復路管で再び前記受熱ジャケットに戻ることを特徴とする沸騰冷却装置。
【請求項3】
前記微細縦溝は、50μm以下の溝幅であることを特徴とする請求項1又は2に記載の沸騰冷却装置。
【請求項4】
前記微細縦溝は、前記放熱面に対するレーザー加工によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の沸騰冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰冷却装置に係り、より詳しくは、車載用のパワー半導体を効率よく冷却できる沸騰冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来の両面冷却型パワー半導体の例を示す図である。図15に示すように、パワー半導体1は、インバータ等の電力制御に使用され、発熱するので、上下に強制対流の冷媒3が水冷チューブ2に充填され、パワー半導体1を両側から冷却する。この構成では、(1)パワー半導体と水冷チューブの間に熱伝導グリース4があるので放熱が制約される。熱伝導グリース4の熱伝導率は、約3W/mKと低いからである。(2)また、水冷チューブ2のフィンは、複雑な形状にすると圧力損失の増大を伴うために、水冷チューブと冷媒3間の熱抵抗低減には限界がある。(3)冷媒3の循環量を増やすと熱抵抗は低下するが、ポンプ容量の増大が必要となり、コスト面及び収納スペースに制約がある。(4)そのため、ポンプレスで高放熱が可能な沸騰冷却方式が期待されているが、沸騰による限界熱流束が180W/cm程度の値(図9参照、純水の冷媒)に留まる。(5)SiC-MOSFETなどの次世代素子は、チップ面積がより小さくなるので、これまでの限界熱流束では十分ではなく、限界熱流束を500(W/cm)程度に向上させることが求められている。
【0003】
特許文献1に示される電子装置の冷却システムは、L型の気化促進板313を半導体デバイス200の上の熱伝導グリース210を介して取付け、受熱ジャケットで覆い、内部に冷媒の水(Wa)を循環させている。冷媒は、減圧下で半導体デバイス200の熱により沸騰し蒸発し、凝縮器320に導かれ、冷却ファンで冷却され、液体となって再び受熱ジャケットに戻される。気化促進板は、銅板からなり、表面に0.2mm×0.2mmの微細な角孔が、縦横にピッチ0.5mm間隔で多数設けられる。角孔の冷媒が沸騰すると気化して熱を奪う。しかしながら、気化促進板の水平面で発生した気泡は大きく成長しやすい。またL型の気化促進板の垂直面は、冷媒の液面より上の部分での付着冷媒を気化させるもので、いずれも気泡の径抑制や気泡整流の機能はない。
【0004】
特許文献2に示される沸騰冷却器は、横置きの半導体素子Hが、上下の両側に配置された沸騰冷却器Mで冷却される。沸騰冷却器Mは、内部に液体冷媒3Aと気体冷媒3Bを有し、液体冷媒3Aの中には、半導体素子Hの熱で気泡を発生させる多孔質体5と、これを囲む取付部4が設けられる。連通孔8で発生させた気泡は、取付部4の気体流路6を通って上昇する。しかしながら、気泡が連通孔8内と水平な気体流路6を通るので、気泡がスムーズに排出されにくく、冷却効果が低下するドライアウト(又はバーンアウト)になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-47616号公報
【文献】特開2013-155925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱流束を向上させて放熱性能を改善できる沸騰冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による沸騰冷却装置は、垂直に配置されたパワー半導体と、前記パワー半導体の左右両面に設けられる放熱板と、前記パワー半導体の左右両側に設けられ、前記放熱板を覆う受熱ジャケットと、前記受熱ジャケット内に充填され、前記放熱板に直接接触する冷媒と、前記受熱ジャケットと往路管と復路管で連結される凝縮器と、前記放熱板の放熱面に形成され、垂直方向に延びる複数の微細縦溝と、が備えられ、前記パワー半導体の熱により、前記放熱面の前記微細縦溝に気泡が生成されて上昇し、前記往路管を通って凝縮器に至り、液体となって復路管で再び前記受熱ジャケットに戻ることを特徴とする。
【0008】
本発明による他の沸騰冷却装置は、垂直に配置されたパワー半導体と、前記パワー半導体の左右両面に設けられる放熱板と、前記パワー半導体の左右両側に設けられ、前記放熱板を覆う受熱ジャケットと、前記受熱ジャケット内に充填され、前記放熱板に直接接触する冷媒と、前記受熱ジャケットと往路管と復路管で連結される凝縮器と、前記放熱板の放熱面に形成され、垂直方向に延びる複数の微細縦溝と、前記微細縦溝に交差し、水平方向に延びる複数の微細横溝からなるメッシュ状溝と、が備えられ、前記パワー半導体の熱により、前記放熱面の設けた前記メッシュ状溝により気泡の生成を促進し、生成された気泡は上昇して前記往路管を通って凝縮器に至り、液体となって復路管で再び前記受熱ジャケットに戻ることを特徴とする。
【0009】
前記微細縦溝は、50μm以下の溝幅であることを特徴とする。
【0010】
前記微細縦溝は、前記放熱面に対するレーザー加工によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による沸騰冷却装置によれば、放熱板に、垂直方向に延びる複数の微細縦溝を設けたので、気泡の成長を抑制でき、より小さい径の気泡に維持できる。小さな気泡は、流路内及び凝縮器で液化しやすい。また、気泡が垂直方向に上昇するので、熱流束を向上でき、片側で熱流束が250W/cm程度にでき、パワー半導体の両側を合わせれば500W/cm程度にできる。
【0012】
本発明による他の沸騰冷却装置によれば、放熱板の放熱面に、微細縦溝と交差する方向に延びる複数の微細横溝を備えたメッシュ状溝により、冷媒との接触面積がさらに増加し、気泡が増加でき、上記微細縦溝を設けた場合と同等以上の効果が得られる。
【0013】
微細縦溝は、50μm以下の溝幅としたので、小さな気泡を生成できる。小さな気泡と大きな気泡では、大きな気泡は上昇速度が速いが、凝縮には小さい気泡の方が効率がよい。つまり放熱性能を向上できる。
【0014】
微細縦溝は、放熱面に対するレーザー加工によって形成したので、エッチングに比較してマスクが不要で、やや粗さがあるものの簡単に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による沸騰冷却装置の構造図である。
図2】放熱板の溝を1方向に向けたトレンチ加工の例である。
図3】放熱板の溝をメッシュ(格子)状としたトレンチ加工の例である。
図4】放熱板の表面の気泡の発生状況を示す説明図である。(a)は溝が垂直方向を向いている場合、(b)は溝が水平方向を向いている場合を示す。
図5図1の放熱板の放熱面の断面を示す顕微鏡写真である。
図6】熱流束と熱伝達率の関係を示すグラフである。
図7】熱流束と熱抵抗の関係を示すグラフである。
図8】限界熱流束をまとめた表である。
図9】放熱性能を測定する評価器具の説明図である。
図10】熱流束と熱抵抗の関係を示すグラフである。
図11】熱流束と熱抵抗の関係を示すグラフである。
図12】熱流束と熱抵抗の関係を示すグラフである。
図13】過熱度と熱伝達率の関係を示すグラフである。
図14】過熱度と熱伝達率の関係を示すグラフである。
図15】従来の両面冷却型パワー半導体の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の沸騰冷却装置を詳しく説明する。
【実施例
【0017】
図1は、本発明による沸騰冷却装置100の構造図である。パワー半導体10は電力制御用の素子で、交流を直流にする整流回路や、直流を交流にするインバータ回路や、電圧を昇圧する昇圧回路などに使用される。発熱量が大きいので、冷却が必要となる。図1に示すように、パワー半導体10の左右の放熱面が垂直な面となるように配置する。パワー半導体10の左右両面には、セラミック基板(DBC基板)5、14、13が設けられる。DBC基板はDirect Bonded Copper基板の略で、銅回路付きのセラミック絶縁基板を指す。セラミック基板5、14、13の一側(外側5)が放熱面となる。放熱面には、トレンチ加工が施される。パワー半導体10の左右両側には、放熱板5を覆うように受熱ジャケット8、8が設けられる。受熱ジャケット8はアルミニウム製である。受熱ジャケット8とパワー半導体10は、Oリング封止、半田又は焼結で放熱板5を封じるように結合される。受熱ジャケット8の内部には、純粋又は不凍液の冷媒3が充填される。冷媒3は、放熱板5の放熱面に直接接触する。これにより、熱が放熱板5から冷媒3に直接伝達される。パワー半導体10が発熱すると、放熱板5の放熱面には気泡7が発生する。気泡7は垂直方向に上昇する。ここで受熱ジャケット8、8は、往路管11と復路管12で、水冷の凝縮器6に連結されている。気泡7を含んだ高温の冷媒3が、往路管11を通過して凝縮器6に移動し、凝縮器6で冷却されて気泡7が液体に戻り、復路管12で受熱ジャケット8、8に戻る。凝縮器6で熱交換された冷却水9は、温度が約65℃に上昇する。往路管11は高温の冷媒3が移動し、復路管12は熱交換され温度の下がった冷媒3が移動する。冷媒3は、自然対流で移動(又は循環)できる。つまりポンプなしでも動作できる。これに限らず、吐出流量の小さいポンプを設けて、冷媒3を循環させてもよい。
【実施例1】
【0018】
図2は、放熱板5の溝15を1方向に向けたトレンチ加工の例である。図2に示すように、溝15は断面がV形のV字溝で、溝幅(V字形の頂部の幅)は、溝間幅(V字形の頂部(右側)から隣のV字形の頂部(左側)まで)より小さくした。「上」で示す方向が垂直方向なので、溝15が、垂直方向に伸びる微細縦溝15aからなる放熱板5にできる。なお、「前」で示す方向を垂直方向にすると、溝15が微細横溝15bとなる。
【実施例2】
【0019】
図3は、放熱板5の溝をメッシュ(格子)状としたトレンチ加工の例である。図3に示すように、溝15は断面がV形のV字溝で、溝幅(V字形の頂部の幅)は、溝間幅(V字形の頂部(右側)から隣のV字形の頂部(左側)まで)より小さくした。図3に示すように、「上」で示す方向が垂直方向なので、溝15が垂直方向に伸びる微細縦溝15aと、水平方向に伸びる微細横溝15bからなる放熱板5とできる。放熱板5のサンプルは、微細縦溝と微細横溝を有するメッシュ状溝を有する放熱板サンプルAと、微細縦溝を有する放熱板サンプルBと、微細横溝を有する放熱板サンプルCと、溝なしの放熱板サンプルDと、を使用し放熱評価を行なった。なお、不凍液の冷媒3は、エチレングリコールが30%(重量%)とした。エチレングリコールは、水に溶けやすく不凍液としてよく使用される。
【0020】
図4は、放熱板5の表面の気泡7の発生状況を示す説明図である。(a)は溝15が垂直方向を向いている場合、(b)は溝15が水平方向を向いている場合を示す。(a)、(b)に示すように、溝15内で発生した気泡7は、溝幅で気泡の径が抑制され小さな気泡となる。このため凝縮しやすく、放熱性能が向上できる。熱流束(W/cm)も大きくできる。(a)に示すように、溝15が垂直方向の微細縦溝15aの場合、気泡7の流れが整流され、平面部の気泡との合体がない。(b)に示すように、溝15が水平方向の微細横溝15bの場合、気泡7の流れが平面部の気泡と混合され、気泡が大きくなりやすい。熱流束は、気泡7の成長が抑制される(a)に示す垂直方向を向いた微細縦溝が優位にある。熱流束を向上させるには、垂直方向に微細縦溝を形成するのが効果的である。
【0021】
図5は、図1の放熱板5の放熱面の断面を示す顕微鏡写真である。トレンチ加工には、レーザーを使用した。図4に示すように、溝間ピッチが約150μm、溝深さが約80μm、溝幅が約30μmとした。図4の例では、一方向の断面しか示していないが、溝パターンはメッシュ状に形成した。メッシュ状溝は、溝がない放熱面と比べて、表面積が約2倍に増え、熱伝達率が約2倍に改善される。
【0022】
図6は、熱流束と熱伝達率の関係を示すグラフである。図7は、熱流束と熱抵抗の関係を示すグラフである。図8は、限界熱流束をまとめた表である。これらのグラフは、メッシュ状溝、微細縦溝、微細横溝、溝なしの放熱板を試作し、評価した結果である。(1)微細横溝は、溝なしに対し、熱抵抗が小さく(図7参照)、放熱性能が改善される。しかし、限界熱流束は、図8に示すように、溝なしが147(W/cm)に対し、微細横溝が144(W/cm2)であり、あまり改善されない。(2)微細縦溝は、溝なしや微細横溝に対し、熱抵抗がさらに小さく(図6参照)、放熱性能が改善される。また、限界熱流束は、図8に示すように、175(W/cm)であり、大きく改善される。(3)メッシュ状溝は、熱抵抗がさらに小さく(図7参照)、限界熱流束は185(W/cm)であり、放熱性能と限界熱流束の両方が改善される。これらから、微細縦溝を含むことが重要であるとわかる。放熱性能と限界熱流束を向上させるには、鉛直方向に微細縦溝を高密度に設ければよいことがわかる。なお、図6図7でグラフ右上の矢印が、各溝に対応した限界熱流束の位置である。
【0023】
図9は、放熱性能を測定する評価器具の説明図である。(a)に示すように、評価器具50は、500Wのヒータ16と、銅ブロック17と、ベークライト断熱板18と、アルミジャケット19と、からなる。アルミジャケット17内には冷媒25が充填される。また、アルミジャケット17とベークライト断熱板18は、シールリング20でシールされ、ネジ21で固定される。(b)は(a)のA-A断面図で、断面22は縦横が1cm×1cmの寸法である。ヒータ16で熱を発生させ、1cm×1cmの放熱面を不凍液の冷媒3に接触させ、気泡7を発生させた。各点の温度も測定した。
【0024】
図10は、熱流束と熱抵抗の関係を示すグラフである。評価器具50を使用して、冷媒が純水の場合Aと、冷媒25にエチレングリコール50%の不凍液の場合Bと、冷媒25にエチレングリコール50%の不凍液で、かつ、銅ブロックの放熱面に溝を形成した場合Cの3つを測定した。純水の冷媒と、不凍液の冷媒を比較する。(1)エチレングリコール50%の不凍液はやや粘性があるので、BはAと比べてバーンアウトしやすい。グラフ右側の矢印がバーンアウト(限界熱流束点)を示す。(2)一般にはバーンアウト以下の熱流束で使用するので、Bは冷却性能を落とすことになる。(3)しかし、Cに示すように、放熱面に溝を設けると、不凍液のバーンアウトによる限界点を純水の冷媒に近づけることができる。つまり、放熱面を冷媒に直接接触させ、放熱面にトレンチ加工を施すことで、熱抵抗を改善できる。
【0025】
図11は、熱流束と熱抵抗の関係を示すグラフである。平坦な放熱面かつ不凍液使用の場合の自然対流と、強制対流を比較した。図12は、熱流束と熱抵抗の関係を示すグラフである。溝のある放熱面かつ不凍液使用の場合の自然対流と、強制対流を比較した。図11に示すように、平坦な放熱面で不凍液使用の場合、自然対流の(限界熱流束、熱抵抗)は、(120W/cm、0.4K/W)となり、強制対流の(限界熱流束、熱抵抗)は、(210W/cm、0.25K/W)となる。図12に示すように、溝のある放熱面で不凍液使用の場合、自然対流の(限界熱流束、熱抵抗)は、(148W/cm、0.2K/W)となり、強制対流の(限界熱流束、熱抵抗)は、(260W/cm、0.12K/W)となる。このように、放熱面に溝を設けると、限界熱流束と熱抵抗を大幅に改善できることがわかる。
【0026】
図13は、過熱度と熱伝達率の関係を示すグラフである。平坦な放熱面かつ不凍液使用の場合の自然対流と、強制対流を比較した。図14は、過熱度と熱伝達率の関係を示すグラフである。溝のある放熱面かつ不凍液使用の場合の自然対流と、強制対流を比較した。図13に示すように、平坦な放熱面で不凍液使用の場合、自然対流の熱伝達率の最大は、30KW/mKとなり、強制対流の熱伝達率の最大は、47KW/mK)と読める。図14に示すように、溝のある放熱面で不凍液使用の場合、自然対流の熱伝達率の最大は、55KW/mKとなり、強制対流の熱伝達率の最大は、100KW/mKとなる。このように、放熱面に溝を設けると、熱伝達率を大幅に改善できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、パワー半導体を効率よく冷却できるので、車載用の沸騰冷却装置として好適である。
【符号の説明】
【0028】
1 パワー半導体
2 水冷チューブ
3 冷媒
4 熱伝導グリース
5 放熱板(DBC基板の外側)
6 凝縮器
7 気泡
8 受熱ジャケット
9 冷却水
10 パワー半導体
11 往路管
12 復路管
13 基板又は押さえ具(DBC基板の外側)
14 絶縁体(DBC基板のセラミック)
15 溝
15a 微細縦溝
15b 微細横溝
16 ヒータ
17 銅ブロック
18 ベークライト断熱板
19 アルミジャケット
20 シールリング
21 ネジ
22 断面
25 冷媒
50 評価器具
100 沸騰冷却装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15