(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ウォームギヤ
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20221130BHJP
F16H 55/22 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F16B35/00 Q
F16H55/22
(21)【出願番号】P 2018110664
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横田 正典
(72)【発明者】
【氏名】堀田 真司
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-008548(JP,A)
【文献】特開昭51-144965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16H 55/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に螺旋状の山部を形成したねじ軸部と、このねじ軸部に連設された支持軸部とを一体に備えた
ウォームギヤにおいて、
前記支持軸部の外周には一つだけ基部が成形され、前記山部の成形開始位置は、当該基部を起点として予め定められた位置に設定されていることを特徴とする
ウォームギヤ。
【請求項2】
前記山部の成形開始位置は、不完全ねじ部に成形されていることを特徴とする請求項1に記載の
ウォームギヤ。
【請求項3】
前記基部は、前記支持軸部の端面に付されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の
ウォームギヤ。
【請求項4】
前記基部は、拡径する方向へ一部張り出す凸部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の
ウォームギヤ。
【請求項5】
前記基部は、縮径する方向へ一部凹入する凹部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の
ウォームギヤ。
【請求項6】
前記支持軸部は、前記ねじ軸部よりも大径の鍔部を備え、
前記鍔部は、前記基部を具備して成ることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の
ウォームギヤ。
【請求項7】
前記鍔部は、その外周を多角形にして成ることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の
ウォームギヤ。
【請求項8】
前記山部の成形開始位置は、前記基部を起点にして±45°の範囲に設定されて成る請求項1ないし請求項7の何れかに記載の
ウォームギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状に成形された山部の成形開始位置を特定し易いウォームギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、従来のウォームギヤと、これに噛合するウォームホイールとが開示されている。従来のウォームギヤは、その外周に螺旋状に成形された山部を備えており、モータに連結されて回転するよう構成されている。一方、前記ウォームホイールは、前記ウォームギヤを介して前記モータの回転を減速し回転出力するよう構成されている。
【0003】
また、特許文献2は、上述したウォームギヤおよびウォームホイールの組み付けについて開示されており、具体的には前記ウォームギヤをケーシングへ回転自在に装着した後、前記ウォームホイールを当該ウォームギヤの上方から挿入して組み付けることが記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-120749号公報
【文献】特許第3542819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のウォームギヤは、前記山部の成形開始位置を特定されないまま前記ケーシングに装着されているので、毎回ケーシングに装着されたウォームギヤの山部山頂は、当該ウォームギヤの軸方向の特定位置に揃わないという問題があった。このため、上方から挿入されるウォームホイールの山部がウォームギヤの山部に乗り上がってしまい組付作業が効率的に行えなかった。
【0006】
また、従来のウォームギヤは、上述したようにケーシングへのセット状態では当該山頂の軸方向の位置が毎回定まらないので、ウォームホイールを上方から挿入する組立設備は、これら互いの山部の山頂が合致するか否か確認する高価なカメラを要する必要があった。よって、従来のウォームギヤは、組立設備のコストを増大させ易いという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外周に螺旋状の山部を形成したねじ軸部と、このねじ軸部に連設された支持軸部とを一体に備えたウォームギヤにおいて、前記支持軸部の外周には一つだけ基部が成形され、前記山部の成形開始位置は、当該基部を起点として予め定められた位置に設定されていることを特徴とする。なお、前記山部の成形開始位置は、不完全ねじ部に成形されていることが望ましく、前記支持軸部の端面に付されていてもよい。また、前記基部は、拡径する方向へ一部張り出す凸部あるいは、縮径する方向へ一部凹入する凹部であってもよい。さらに、前記支持軸部は、前記ねじ軸部よりも大径の鍔部を備え、前記鍔部は、前記基部を具備して成ることが望ましい。また、前記鍔部は、その外周を多角形にしてもよい。さらに、前記山部の成形開始位置は、前記基部を起点にして±45°の範囲に設定されて成ることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウォームギヤは、基部と山部の成形開始位置との位置関係が予め定められているので、これらウォームギヤをケーシングへ順次セットする場合、前記基部を予め取り決めた向きにすることで、前記山部の位置が統一され当該山頂の位置が軸方向にバラつき難いという利点がある。つまり、このようにケーシングにセットされたウォームギヤは、何れも前記山頂の位置が全て一致するので、この後、前記ウォームホイールを配する際、当該ウォームホイールの山部の位置だけを考慮すればよく、従来のような山部同士が干渉し組み付けられない状況にもなり難い。
【0009】
また、本発明に係るウォームギヤは、前記基部を支持軸部の外周あるいは端面に付しているので、これをピックアップして前記ケーシングへセットする際、当該基部を確認し易いという利点もある。さらに、本発明に係るウォームギヤは、前記凸部あるいは凹部などの基部を具備するので、ケーシングへセットする作業者などはより確認し易くなるという利点もある。また、本発明に係るウォームギヤは、大径の鍔部を備えているので当該鍔部を掴んでケーシングにセットし易く、さらに、当該鍔部に基部を付しているので基部をより確認し易いという利点もある。また、本発明に係るウォームギヤは、前記鍔部を多角形にしているので、所謂六角ボルトに基部を付したものをも含む。これにより、六角ボルトを素材として用い基部のみ追加工することで容易に製作できるという利点もある。さらに、本発明に係るウォームギヤは、基部を起点に±45°の範囲内に山部の成形開始位置を定めているので、当該山部の山頂の位置を±8分の1ピッチ以内の範囲に収めることができるという利点もある。よって、ウォームギヤへウォームホイールをセットした際、従来のようにウォームホイールが乗り上がるような状況にもなり難く、この組付作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図1に示した鍔部を別形態に置き替えたB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る
ウォームギヤ1を
図1ないし図
4に基づいて説明する。本発明に係る
ウォームギヤ1は、螺旋状に形成した山部22を備えるねじ軸部20と、このねじ軸部20に接続され当該山部22を具備しない支持軸部10とを一体に備える。
【0012】
前記支持軸部10は、回転駆動源の一例であるモータ(図示せず)の回転力を受けるよう構成されており、図示しない軸受へ挿通されて回転支持可能に構成されている。また、前記支持軸部10は、
図1に示すものであれば、前記ねじ軸部20から上方へ延び直径を替え多段の構成であり、ねじ軸部20の一端から延びる中径軸部13と、この中径軸部13よりも大径の大径軸部12と、前記中径軸部13よりも小径の小径軸部5とを備える。
【0013】
前記大径軸部12は、
図1に示すように前記ねじ軸部20の外形よりも大径に寸法設定されている時にはその軸線に直交する方向へ延びる座面10aを具備して成る。このように前記座面10aを有する大径軸部12は、鍔部として成る。
【0014】
この鍔部は、
図1および
図2に示すものであれば、拡径する方向に一部張り出した山状の特異な形状から成る凸部を備える一方、
図3に示すものであれば、縮径する方向に一部凹入したU字状の特異な形状から成る凹部を備える。なお、
図3に示す鍔部は、その外周が多角形の一例である六角形で構成されており、前記凹部を備えている。また、これら凸部あるいは凹部は、
ウォームギヤ1の軸周りの形状として特徴付けられており、これらを基部11とする。
【0015】
さらに、前記基部11は、上述した
図1ないし
図3に示す形状のみに限定されるものでは無く、例えば、
図4に示すような軸周りに付された縦溝や、
図5に示すような前記鍔部の端面に付され
ウォームギヤ1の軸線から所定距離離れた箇所に配されているようなものであってもよい。つまり、基部11は、
ウォームギヤ1の軸周りの位置を特定できるものであればよい。
【0016】
前記ねじ軸部20は、螺旋状に連なる山形を成す山部22と、この山部22の終端Cから同径で下方へ延びる下端軸部23とを具備して成る。
【0017】
前記山部22は、前記支持軸部10との接続箇所から成形され始め、この成形され始める成形開始位置Aから徐々に山頂22aを高くするよう形成されている。また、このように徐々に高くなる山頂22aは、前記成形開始位置Aから約半周進んだ位置で最大高さとなる。さらに、この最大高さに到達した山部22は、当該最大高さを保ったまま
図1に示すように平らな山頂22aを前記下端軸部23へ向かって連続して成形されている。また、前記下端軸部23へ達する直前の範囲において、徐々に山頂22aを低くし前記終端Cへ到達している。
【0018】
また、前記山部22は、前記山頂22aと、当該山頂22aとは逆に低い高さから成る谷22bとを交互に配置するよう構成されており、谷部22bおよび山頂22aを結んで構成される斜面A1を備えて成る。
【0019】
さらに、前記山部22は、
図2および
図3に示すように前記基部11の中心線を起点にここから予め設定された角度αの範囲内に位置するよう設定されている。これにより、複数個の
ウォームギヤ1が生産されたとしても、何れの
ウォームギヤ1も基部11と成形開始位置Aとの位置関係が一致している。よって、
ウォームギヤ1を従来のようにケーシングへセットする際、基部11を常に同じ方向になるようセットすれば、何れの
ウォームギヤ1も前記山頂22aの位置が軸方向に定まり特定の位置に揃う。これにより、本発明に係る
ウォームギヤ1は、従来のような高価なカメラを搭載していない安価な組立設備であっても、前記山頂22aを軸方向の特定位置に揃えることができるという利点がある。
【0020】
また、前記角度αは、前記基部11の中心を起点にして±45°としてもよい。これにより、当該山部22の山頂22aの軸方向の位置は、±8分の1ピッチの範囲内に定めることができるため、谷22bと山頂22aとの軸方向の位置が入れ替わるようなことにならない。よって、ウォームホイールが、ウォームギヤ1に乗り上がり噛み合わないような整合性のとれない状況も生じ難い。
【0021】
上述したように本発明に係るねじウォームギヤ1は、前記山部を基部11に基づき成形して成るので、山頂22aの軸方向の位置を揃えて毎回セットできる。したがって、このセットされたウォームギヤ1に係合可能なウォームホイールを組み付ける場合、このウォームホイールがウォームギヤ1に乗り上がることなく円滑に噛み合わせ組み付けることも容易になる。
【0022】
なお、前記山部22を具備する
ウォームギヤ1は、
図1ないし
図4に示すウォームギヤであったり、
図5に示すようなワークへ螺入される十字穴付きねじなどであってもよく、これらの山部22は、ウォームギヤであればモジュール、十字穴付きねじなどであればピッチという各諸元に基づき成形されている。
【符号の説明】
【0023】
1 … ウォームギヤ
10 … 支持軸部
10a… 座面
11 … 基部
12 … 大径軸部
20 … ねじ軸部
22 … 山部
22a… 山頂
22b… 谷
A … 成形開始位置