(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】発熱検知装置及び発熱検知システム
(51)【国際特許分類】
B60M 1/28 20060101AFI20221130BHJP
G01N 25/72 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B60M1/28 R
G01N25/72 F
(21)【出願番号】P 2018112814
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】林 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】長澤 健太
(72)【発明者】
【氏名】片山 信一
(72)【発明者】
【氏名】山川 盛実
(72)【発明者】
【氏名】大澤 和寿
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康利
(72)【発明者】
【氏名】豊田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大石 真歩
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134949(JP,A)
【文献】実開平01-178134(JP,U)
【文献】特開平04-359884(JP,A)
【文献】特開平04-359610(JP,A)
【文献】特開2016-014580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/28
G01N 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物に装着されてこの検知対象物の発熱を検知する発熱検知装置であって、
前記検知対象物の発熱を告知する発熱告知部と、
前記発熱告知部を収容する収容部と、
前記収容部の開口部から前記発熱告知部が出現するように、この収容部の開口部を開放する開放部と、
前記検知対象物が所定温度を超えたときに、前記収容部から前記開放部が自重によって下方に開くように、この開放部を固定状態から固定解除状態に切り替える切替部と
を備え、
前記切替部は、前記収容部の取付部に取り付けられており、発熱によって形状が変化する特性を有する形状記憶合金であり、前記検知対象物が所定温度を超えたときに外観形状が変化して、前記開放部のストッパ部から外れて、この開放部が自重によって下方に開くのを許容し、
前記発熱告知部は、前記収容部の開口部を前記開放部が開放したときに、この収容部の開口部から垂れ下がり、前記検知対象物の長さ方向からこの発熱告知部を見たときに、この発熱告知部の表面が前方に向き、
前記検知対象物は、線路に沿って設けられているき電線又はこのき電線を接続する接続部であること、
を
特徴とする発熱検知装置。
【請求項2】
検知対象物に装着されてこの検知対象物の発熱を検知する発熱検知装置であって、
前記検知対象物の発熱を告知する発熱告知部と、
前記発熱告知部を収容する収容部と、
前記収容部の開口部から前記発熱告知部が出現するように、この収容部の開口部を開放する開放部と、
前記検知対象物が所定温度を超えたときに、前記収容部から前記開放部が自重によって下方に開くように、この開放部を固定状態から固定解除状態に切り替える切替部と
を備え、
前記切替部は、前記収容部の取付部に取り付けられており、発熱によって形状が変化する特性を有する形状記憶合金であり、前記検知対象物が所定温度を超えたときに外観形状が変化して、前記開放部のストッパ部から外れて、この開放部が自重によって下方に開くのを許容し、
前記発熱告知部は、前記収容部の開口部を前記開放部が開放したときに、この収容部の開口部とこの開放部との間でこの収容部の開口部から扇形に展開し、
前記検知対象物は、線路に沿って設けられているき電線又はこのき電線を接続する接続部であること、
を
特徴とする発熱検知装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の発熱検知装置において、
前記検知対象物と前記収容部とが密着する密着面によって、この検知対象物からこの収容部に熱を伝導させる熱伝導部を備えること、
を特徴とする発熱検知装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の発熱検知装置において、
前記開放部の開放動作を検知する開放動作検知部を備えること、
を特徴とする発熱検知装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか1項に記載の発熱検知装置において、
前記検知対象物の所定温度を超える発熱を検知する発熱検知部を備えること、
を特徴とする発熱検知装置。
【請求項6】
検知対象物の発熱を検知する発熱検知システムであって、
請求項1から請求項
5までのいずれか1項に記載の発熱検知装置と、
前記発熱検知装置の検知結果を送信する送信装置と、
前記送信装置から送信される前記検知結果を受信する受信装置と、
を備える発熱検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検知対象物に装着されてこの検知対象物の発熱を検知する発熱検知装置、及び検知対象物の発熱を検知する発熱検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道では、電気車に電力を供給するために、この電気車が走行する線路に沿って電線路(電車線路)が設けられており、き電変電所からこの電車線にき電線によって電力を供給している。電車線設備のセンシングを行うにあたり、急務となるのがき電線破断の未然発見である。き電線の破断の原因の多くは、圧縮管(電線接続管)内部の腐食によって電気抵抗が高くなり、圧縮管出口付近のより線が溶断するものである。そのため、圧縮管内部の異常によって発生する腐食による発熱をセンシングする手法が求められてきた。従来、形状記憶合金を用いたセンサが開発されてきた。このような形状記憶合金を用いたセンサでは、形状記憶合金が設定した温度になると、変形しそれを目視することにより異常の有無が確認できる。また、形状記憶合金をトリガーとして、ばねの復元力により検知状態を知らせるセンサも開発されてきた。
【0003】
従来の電車線接続部の異常発熱検知装置は、電車線接続部に密着して取り付けられる枠体と、この枠体に取り付けられて電車線接続部の発熱によって変形する形状記憶合金を含むトリガー片と、このトリガー片が変形したときに待機位置から検知位置に変位する表示片と、この表示片を待機位置から検知位置に向けて付勢するばね部材などを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の電車線接続部の異常発熱検知装置では、電車線接続部が発熱するとトリガー片が変形してばね部材から外れ、ばね部材の付勢力によって表示片が待機位置から検知位置に跳ね上がり、電車線接続部の発熱を表示片によって目視により確認可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電車線接続部の異常発熱検知装置では、き電線の位置が高く、かつ、電車線接続部の発熱を知らせる表示片が小さいため、表示片が立ち上がっても目視で確認しづらく電車線接続部の発熱の発見が遅れがちになる。また、従来の電車線接続部の異常発熱検知装置では、ばね部材を使用しているため、ばねの永久変形(へたり)やさびなどの劣化による影響が問題となる。
【0006】
この発明の課題は、構成部品の劣化による影響が少なく検知対象物の発熱を容易に確認することができる発熱検知装置及び発熱検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、
図3及び図5に示すように、検知対象物(F
,C)に装着されてこの検知対象物の発熱を検知する発熱検知装置であって、前記検知対象物の発熱を告知する発熱告知部(7)と、前記発熱告知部を収容する収容部(2)と、前記収容部の開口部(O)から前記発熱告知部が出現するように、この収容部の開口部を開放する開放部(4)と、前記検知対象物が所定温度を超えたときに、前記収容部から前記開放部が自重によって下方に開くように、この開放部を固定状態から固定解除状態に切り替える切替部(6)と
を備え、
前記切替部は、前記収容部の取付部(2f)に取り付けられており、発熱によって形状が変化する特性を有する形状記憶合金であり、前記検知対象物が所定温度を超えたときに外観形状が変化して、前記開放部のストッパ部(4c)から外れて、この開放部が自重によって下方に開くのを許容し、前記発熱告知部は、前記収容部の開口部を前記開放部が開放したときに、この収容部の開口部から垂れ下がり、前記検知対象物の長さ方向からこの発熱告知部を見たときに、この発熱告知部の表面が前方に向き、前記検知対象物は、線路に沿って設けられているき電線(F)又はこのき電線を接続する接続部(C)であることを
特徴とする発熱検知装置(1)である。
【0008】
請求項2の発明は、図6に示すように、検知対象物(F,C)に装着されてこの検知対象物の発熱を検知する発熱検知装置であって、前記検知対象物の発熱を告知する発熱告知部(7)と、前記発熱告知部を収容する収容部(2)と、前記収容部の開口部(O)から前記発熱告知部が出現するように、この収容部の開口部を開放する開放部(4)と、前記検知対象物が所定温度を超えたときに、前記収容部から前記開放部が自重によって下方に開くように、この開放部を固定状態から固定解除状態に切り替える切替部(6)とを備え、前記切替部は、前記収容部の取付部(2f)に取り付けられており、発熱によって形状が変化する特性を有する形状記憶合金であり、前記検知対象物が所定温度を超えたときに外観形状が変化して、前記開放部のストッパ部(4c)から外れて、この開放部が自重によって下方に開くのを許容し、前記発熱告知部は、前記収容部の開口部を前記開放部が開放したときに、この収容部の開口部とこの開放部との間でこの収容部の開口部から扇形に展開し、前記検知対象物は、線路に沿って設けられているき電線(F)又はこのき電線を接続する接続部(C)であることを特徴とする発熱検知装置(1)である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1
又は請求項2に記載の発熱検知装置において、
図4(A)(B)に示すように、前記検知対象物と前記収容部とが密着する密着面(10a)によって、この検知対象物からこの収容部に熱を伝導させる熱伝導部(10)を備えることを特徴とする発熱検知装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の発熱検知装置において、
図8及び
図9に示すように、前記開放部の開放動作を検知する開放動作検知部(11)を備えることを特徴とする発熱検知装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から請求項
4までのいずれか1項に記載の発熱検知装置において、
図11に示すように、前記検知対象物の所定温度を超える発熱を検知する発熱検知部(15)を備えることを特徴とする発熱検知装置である。
【0012】
請求項6の発明は、
図7及び
図10に示すように、検知対象物(F)の発熱を検知する発熱検知システムであって、請求項1から請求項
5までのいずれか1項に記載の発熱検知装置(1A,1B)と、前記発熱検知装置の検知結果を送信する送信装置(13)と、前記送信装置から送信される前記検知結果を受信する受信装置(14)とを備える発熱検知システム(12)である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、構成部品の劣化による影響が少なく検知対象物の発熱を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の第1実施形態に係る発熱検知装置の外観図であり、(A)は通常時の状態を示す外観図であり、(B)は検知時の状態を示す外観図である。
【
図2】この発明の第1実施形態に係る発熱検知装置の通常時の状態を示す斜視図である。
【
図3】この発明の第1実施形態に係る発熱検知装置の検知時の状態を示す斜視図である。
【
図4】この発明の第1実施形態に係る発熱検知装置の外観図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図であり、(C)は底面図であり、(D)は(C)のIVD部分の拡大図である。
【
図5】この発明の第2実施形態に係る発熱検知装置の検知時の状態を示す斜視図である。
【
図6】この発明の第3実施形態に係る発熱検知装置の検知時の状態を示す斜視図である。
【
図7】この発明の第4実施形態に係る発熱検知システムの外観図であり、(A)は通常時の状態を示す外観図であり、(B)は検知時の状態を示す外観図である。
【
図8】この発明の第4実施形態に係る発熱検知システムの発熱検知装置における通常時の状態の一部を破断して示す側面図である。
【
図9】この発明の第4実施形態に係る発熱検知システムの発熱検知装置における検知時の状態の一部を破断して示す側面図である。
【
図10】この発明の第5実施形態に係る発熱検知システムの外観図であり、(A)は通常時の状態を示す外観図であり、(B)は検知時の状態を示す外観図である。
【
図11】この発明の第5実施形態に係る発熱検知システムの発熱検知装置の一部を破断して示す外観図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図であり、(C)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1に示すき電線Fは、き電用変電所から電車線に電力を供給する電線である。き電線Fは、電車又は電気機関車などの電気車の集電装置が摺動する架線のトロリ線と並行に架設されており、一定区間毎にこのトロリ線に電力を供給する。き電線Fは、例えば、硬銅より線又は硬アルミニウムより線などである。
【0018】
接続部Cは、き電線Fを接続する部材である。接続部Cは、き電線Fの端部同士を電気的及び機械的に接続する金具である。接続部Cは、例えば、き電線Fの端部の外周面に装着された状態で圧縮されてこのき電線Fを把持する圧縮接続管(スリーブ)である。
図1に示す接続部Cは、張力の作用するより線同士をスリーブによって電気的及び機械的に接続する直線スリーブである。接続部Cは、き電線Fが銅線の場合には銅製の圧縮接続管が使用され、き電線Fがアルミニウム線の場合にはアルミニウム製の圧縮接続管が使用される。
【0019】
図1~
図4に示す発熱検知装置1は、き電線Fに装着されてこのき電線Fの発熱を検知する装置である。発熱検知装置1は、き電線Fの発熱を検知したときに、このき電線Fの発熱を視覚によって確認可能な警告を表示する。発熱検知装置1は、電気鉄道におけるき電線Fの圧縮箇所の異常発熱を検知する異常発熱検知センサとして機能する。発熱検知装置1は、
図1に示すように、き電線Fの接続部Cの近傍におけるき電線Fの下面に設置されている。発熱検知装置1は、
図1~
図4に示す収容部2と、装着部3A,3Bと、開放部4と、
図2~
図4に示す連結部5と、切替部6と、
図1及び
図3に示す発熱告知部7と、重錘部8と、
図2~
図4に示す固定部9A,9Bと、
図4(A)に示す熱伝導部10などを備えている。
【0020】
図1~
図4に示す収容部2は、発熱告知部7を収容する手段である。収容部2は、
図3に示すように、発熱検知装置1の本体上部を構成しており、下方に開口部Oを有する立方体の容器である。収容部2は、
図1及び
図2に示すように、この収容部2の中心線とき電線Fの中心線とが平行になるように、このき電線Fの外周面に装着されている。収容部2は、
図4(A)に示すように、正面から見たときに外観が略U字状に形成されており、所定の形状の板状部材を曲げ加工して形成されている。収容部2は、例えば、耐食性に優れ成形が容易であるアルミニウムなどの金属によって形成されている。収容部2は、
図3及び
図4に示す上板部2aと、側板部2b,2cと、端板部2dと、
図2、
図3及び
図4(B)に示す挿入部2eと、
図2~
図4に示す取付部2fなどを備えている。
【0021】
図3及び
図4に示す上板部2aは、収容部2の上面を構成する部分である。側板部2b,2cは、収容部2の側面を構成する部分である。側板部2b,2cは、収容部2内に異物が混入するのを防止する異物混入防止部として機能する。側板部2b,2cは、上板部2aの両縁部を折り曲げて互いに平行に対向して形成されている。端板部2dは、収容部2の端面を構成する部分である。端板部2dは、上板部2aの一方の端部を折り曲げて形成されており、側板部2b,2cとともに異物混入防止部として機能する。
図2、
図3及び
図4(B)に示す挿入部2eは、装着部3A,3Bを挿入する部分である。挿入部2eは、側板部2b,2cを貫通する貫通孔である。
図2~
図4に示す取付部2fは、切替部6を取り付ける部分である。取付部2fは、上板部2aの端板部2d側とは反対側の端部の一部を筒状に折り曲げて形成されている。
【0022】
図1及び
図3に示す開口部Oは、収容部2から発熱告知部7を出現させるための部分である。開口部Oは、
図3に示すように、収容部2の下側に形成されており、
図1に示すように開放部4によって開閉される。開口部Oは、
図2に示すように、き電線Fが所定温度以下であるときには開放部4によって閉鎖されており、
図3に示すようにき電線Fが所定温度を超えたときには開放部4によって開放される。
【0023】
図1~
図4に示す装着部3A,3Bは、収容部2をき電線Fに着脱自在に装着する手段である。装着部3A,3Bは、いずれも同一構造であり、収容部2の挿入部2eに挿入される。装着部3A,3Bは、
図1に示すように、き電線Fの外周面に巻き付けて締結することによって、
図4(A)に示すようにき電線Fと収容部2とを熱伝導部10を通じて密着させて、き電線Fに収容部2を固定する固定バンドである。
図1に示すように、装着部3Aは収容部2の一方の端部寄りをき電線Fに固定しており、装着部3Bは収容部2の他方の端部寄りをき電線Fに固定している。
【0024】
図1~
図4に示す開放部4は、収容部2の開口部Oから発熱告知部7が出現するように、この収容部2の開口部Oを開放する手段である。開放部4は、発熱検知装置1の本体下部を構成しており、収容部2の開口部Oを開閉する四角形の蓋である。開放部4は、
図1及び
図2に示すように、収容部2の開口部Oを閉じているときには、この開放部4の中心線と収容部2の中心線とが平行になるようにこの収容部2に取り付けられている。開放部4は、例えば、収容部2と同様のアルミニウムなどの金属によって形成されている。開放部4は、
図1(B)及び
図3に示すように、側面から見たときに外観が略L字状に形成されており、所定の形状の板状部材を曲げ加工して形成されている。開放部4は、
図1(B)及び
図3に示すように、収容部2から自重によって下方に開く。開放部4は、
図2に示すように、き電線Fが所定温度以下であるときには、収容部2の開口部Oを閉鎖しており、
図3に示すようにき電線Fが所定温度を超えたときには、収容部2の開口部Oを開放する。開放部4は、
図2~
図4に示す底板部4aと、端板部4bと、
図2及び
図4に示すストッパ部4cと、
図2~
図4に示す振止部4dなどを備えている。
【0025】
図2~
図4に示す底板部4aは、開放部4の底面を構成する部分である。底板部4aは、
図2に示すように、収容部2の開口部Oを開放部4が閉鎖しているときには、この収容部2の開口部Oを塞ぐ底部として機能する。端板部4bは、開放部4の端面を構成する部分である。端板部4bは、収容部2の開口部Oを開放部4が閉鎖しているときには、収容部2の端板部2dと対向するように、底板部4aの一方の端部を折り曲げて形成されている。端板部4bは、収容部2側の側板部2b,2c及び端板部2dとともに異物混入防止部として機能する。
【0026】
図2及び
図4に示すストッパ部4cは、切替部6によって固定及び固定解除される部分である。ストッパ部4cは、
図2に示すように、き電線Fが所定温度以下であるときには、切替部6によって支持されており、
図3に示すようにき電線Fが所定温度を超えたときには切替部6によって支持されない。ストッパ部4cは、切替部6が引っ掛かるように端板部4bの先端部を外側に折り曲げて形成されている。
【0027】
図2~
図4に示す振止部4dは、開放部4の振れを防止する部分である。振止部4dは、収容部2に対して開放部4が位置ずれしたときに、切替部6からストッパ部4cが外れるのを防止する。振止部4dは、
図4(A)に一点鎖線で示すように、収容部2の側板部2bの内側表面と側板部2cの内側表面との間に挟み込まれることによって、収容部2に対して開放部4が位置ずれするのを防止する。振止部4dは、底板部4aの両縁部の一部を内側に折り曲げて形成されている。
【0028】
図2~
図4に示す連結部5は、収容部2と開放部4とを回転自在に連結する手段である。連結部5は、収容部2に対して開放部4が開閉可能なように、収容部2と開放部4とを連結するヒンジ部である。連結部5は、収容部2側の貫通孔と、開放部4側の貫通孔とに挿入されるグロメット(はとめピン)などの軸状部材である。連結部5は、この連結部5を回転中心として開放部4を回転自在に支持する軸受として機能する。
【0029】
図2~
図4に示す切替部6は、き電線Fが所定温度を超えたときに、収容部2から開放部4が自重によって下方に開くように、この開放部4を固定状態から固定解除状態に切り替える手段である。切替部6は、
図2及び
図4(C)(D)に示すように、き電線Fが所定温度以下であるときには、開放部4が自重によって開いて収容部2を開放しないようにこの開放部4を固定している。一方、切替部6は、
図3に示すように、き電線Fが所定温度を超えたときには、開放部4が自重によって開いて収容部2を開放するようにこの開放部4を固定解除する。切替部6は、
図4(D)に実線で示すように、き電線Fが所定温度以下であるときには外観形状が湾曲状態になって、開放部4のストッパ部4cを下方から支持し、開放部4が自重によって下方に開くのを阻止している。一方、切替部6は、
図4(D)に二点鎖線で示すように、き電線Fが所定温度を超えたときには外観形状が湾曲状態から直線状態になって、開放部4のストッパ部4cから外れて、開放部4が自重によって下方に開くのを許容する。切替部6は、例えば、発熱によって形状が変化する特性を有する形状記憶合金(Shape Memory Alloys(SMA))である。切替部6は、外観が棒状の部材であり、収容部2の取付部2fに差し込まれた後にこの取付部2fをかしめることによって、取付部2fに固定されている。切替部6は、例えば、変態温度(変態点)が70±5℃のニッケルチタン合金であり、必要に応じて異種金属との接触による腐食を防止するためにすずメッキや塗装が施される。切替部6は、き電線Fが発熱したときに動作するトリガーとして機能する。切替部6は、き電線Fの温度によって確実に動作するように、このき電線Fの近傍に配置されている。
【0030】
図1及び
図3に示す発熱告知部7は、き電線Fの発熱を告知する部分である。発熱告知部7は、き電線Fが所定温度を超えたときに視覚によって確認可能な警告を発生する。発熱告知部7は、収容部2の開口部Oを開放部4が開放したときに、この収容部2の開口部Oから垂れ下がる。発熱告知部7は、
図1(A)に示すように、き電線Fが所定温度以下であるときには収容部2に収容されており、
図1(B)に示すようにき電線Fが所定温度を超えたときには収容部2から出現する。発熱告知部7は、き電線Fの発熱状況を告知して注意を喚起するための旗(フラグ)として機能する。発熱告知部7は、重錘部8に巻き取られた状態で収容部2に収容されている。発熱告知部7は、視覚によって確認可能な長さ及び幅を有する帯状の布である。発熱告知部7は、例えば、アラミド繊維などの合成樹脂製の自重型布であり、視認性が良好で容易に注意を喚起可能な赤又はオレンジ色などに着色されている。発熱告知部7は、視認性を向上させるために、光を反射するアルミニウムテープなどの反射材が必要に応じて表面に貼り付けられている。
【0031】
図1及び
図3に示す重錘部8は、発熱告知部7が垂れ下がった状態を維持するように、この発熱告知部7に荷重を作用させる手段である。重錘部8は、発熱告知部7の下端部に接着剤によって接着された後に、固定部9Bによって発熱告知部7に固定される。重錘部8は、例えば、発熱告知部7の幅と略同じ長さのポリアミド合成樹脂製の棒状部材である。重錘部8は、視認性を向上させるために、光を反射するアルミニウムテープなどの反射材が必要に応じて表面に貼り付けられている。
【0032】
図2~
図4に示す固定部9Aは、発熱告知部7を収容部2に固定する手段である。固定部9Aは、
図3に示すように、発熱告知部7の上端部を収容部2に固定している。固定部9Aは、発熱告知部7側のグロメットの貫通孔と収容部2の側板部2bの貫通孔とに挿入されるかしめピンなどの固定部材である。
図3に示す固定部9Bは、発熱告知部7に重錘部8を固定する手段である。固定部9Bは、発熱告知部7の下端部に重錘部8を固定している。固定部9Bは、発熱告知部7側のグロメットの貫通孔と重錘部8側の貫通孔とに挿入されるかしめピンなどの固定部材である。
【0033】
図4(A)に示す熱伝導部10は、き電線Fと密着する密着面10aによって、このき電線Fから収容部2に熱を伝導させる手段である。熱伝導部10は、き電線Fの外周面と広範囲で密着することによって、このき電線Fが発生する熱を収容部2に伝達する。熱伝導部10は、き電線Fと密着する密着面10aを備えている。密着面10aは、例えば、収容部2の上板部2aをR状に曲げ加工することによって、き電線Fと略同じ曲率の湾曲面に形成されている。
【0034】
次に、この発明の第1実施形態に係る発熱検知装置の動作を説明する。
例えば、接続部Cの内部が腐食すると、この接続部Cの出口付近のき電線Fが発熱する。
図2及び
図4(A)に示すように、発熱検知装置1の熱伝導部10の密着面10aとき電線Fの外周面とが接触しているため、このき電線Fが発生する熱が熱伝導部10から収容部2の上板部2aを通じて切替部6に伝達する。このとき、
図4(A)に示すように、き電線Fの外周面と熱伝導部10の密着面10aとが広範囲で密着するため、き電線Fが発生する熱が効率的に収容部2に伝わる。
図4(D)に示すように、き電線Fが発生する熱が所定温度を超えると、切替部6の形状が湾曲状態から直線状態に変化する。このため、開放部4のストッパ部4cの下面から切替部6の先端部が抜け出して、切替部6によって開放部4が固定状態から固定解除状態に切り替わる。その結果、
図3に示すように、収容部2に対して開放部4が連結部5を回転中心として回転し、開放部4が自重によって下方に開き、収容部2の開口部Oが開放部4によって開放される。開放部4が下方に開くとこの開放部4の開放動作に連動して、収容部2内の重錘部8が落下し、重錘部8に巻き取られた状態の発熱告知部7が巻きほぐされて、
図1(B)及び
図3に示すように、発熱告知部7が収容部2から垂れ下がる。その結果、例えば、線路上を走行する車両の乗務員や線路に沿って移動する作業員が発熱告知部7を視覚によって認識し、き電線Fの発熱が乗務員や作業員に告知される。
【0035】
この発明の第1実施形態に係る発熱検知装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、き電線Fの発熱を告知する発熱告知部7を収容部2が収容し、この収容部2の開口部Oからこの発熱告知部7が出現するように、この収容部2の開口部Oを開放部4が開放する。また、この第1実施形態では、き電線Fが所定温度を超えたときに、収容部2から開放部4が自重によって下方に開くように、この開放部4を固定状態から固定解除状態に切替部6が切り替える。このため、従来の電車線接続部の異常発熱検知装置のようなばね部材が不要になって、切替部6の自重を利用して発熱告知部7を確実に出現させることができる。その結果、き電線Fの発熱を目視で確認することができるとともに、発熱検知装置1の構造が簡単になって発熱検知装置1を安価で製造することができる。
【0036】
(2) この第1実施形態では、収容部2の開口部Oを開放部4が開放したときに、この収容部2の開口部Oから発熱告知部7が垂れ下がる。このため、き電線Fの発熱状況を目視により容易に認識させることができるとともに、発熱告知部7が風によりなびき発熱告知部7の視認性を向上させることができる。
【0037】
(3) この第1実施形態では、き電線Fと密着する密着面10aによって、このき電線Fから収容部2に熱伝導部10が熱を伝導させる。このため、き電線Fと収容部2との間の熱伝導性能が向上して、き電線Fから収容部2を通じて切替部6に効率的に熱が伝わり、切替部6によって開放部4を確実に開放動作させることができる。
【0038】
(第2実施形態)
以下では、
図1~
図4に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示す発熱告知部7は、き電線Fの長さ方向からこの発熱告知部7を見たときに、この発熱告知部7の表面が前方に向くように収容部2の開口部Oから垂れ下がる。ここで、前方とは、線路上を走行する車両の運転士若しくは車掌などの乗務員、又は線路に沿って巡回しながらき電線Fの状態を検査する係員などの作業員の正面側に発熱告知部7の表面が向く場合だけではなく、発熱告知部7が揺れたときに乗務員又は作業員が視認可能な方向に発熱告知部7の表面が向く場合も含む。発熱告知部7は、この発熱告知部7がねじれた状態で垂れ下がるように、収容部2の中心線に対して傾斜する傾斜線上に固定されており、この収容部2の中心線に対して互い違いに固定されている。発熱告知部7は、上端部の一方の角部が収容部2の側板部2bに固定部9Aによって固定されており、上端部の他方の角部が収容部2の側板部2cに固定部9Aによって固定されている。
【0039】
この発明の第2実施形態に係る発熱検知装置は、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、き電線Fの長さ方向から発熱告知部7を見たときに、この発熱告知部7の表面が前方に向くように収容部2から垂れ下がる。このため、例えば、線路上を走行する車両の乗務員、又は線路に沿って巡回する作業員の前方に発熱告知部7が向く。その結果、乗務員や作業員が発熱告知部7を面として捉えることができ、発熱告知部7の視認性を向上させることができる。
【0040】
(第3実施形態)
図6に示す発熱告知部7は、収容部2の開口部Oを開放部4が開放したときに、この収容部2の開口部Oから展開する。発熱告知部7は、視覚によって視認可能な大きさを有する扇形の布であり、視認性が良好で注意を喚起する赤又はオレンジ色などに着色されている。発熱告知部7は、き電線Fが所定温度以下であるときには、折り畳まれた状態で収容部2に収容されており、き電線Fが所定温度を超えたときには展開された状態になって収容部2から出現する。発熱告知部7は、一方の縁部が収容部2に固定部9Aによって固定されており、他方の縁部が開放部4に固定部9Aによって固定されている。
【0041】
この発明の第3実施形態に係る発熱検知装置は、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第3実施形態では、収容部2の開口部Oを開放部4が開放したときに、この収容部2の開口部Oから発熱告知部7が展開する。このため、開放部4の開放動作に連動して発熱告知部7を折畳状態から展開状態にすることができ、き電線Fの発熱を確実に告知することができる。
【0042】
(第4実施形態)
図7に示す発熱検知装置1A,1Bは、
図8及び
図9に示すように、開放動作検知部11を備えている。発熱検知装置1A,1Bは、
図1~
図6に示す発熱検知装置1と同一構造である。発熱検知装置1A,1Bは、
図7に示すように、発熱検知装置1Aは接続部Cの一方の出口側のき電線Fに着脱自在に装着されており、発熱検知装置1Bはこの接続部Cの他方の出口側のき電線Fに着脱自在に装着されている。
【0043】
図8及び
図9に示す開放動作検知部11は、開放部4の開放動作を検知する手段である。開放動作検知部11は、開放部4の底板部4aに着脱自在に装着されている。開放動作検知部11は、
図8に示すように、収容部2を開放部4が閉鎖しているときには電気信号を発生しないが、
図9に示すように収容部2を開放部4が開放したときには電気信号を発生する。開放動作検知部11は、収容部2の上板部2aの下面と接触及び離間する接触部11aを備えている。開放動作検知部11は、
図8に示すように、開放部4が閉鎖状態になって収容部2の上板部2aの下面と接触部11aが接触しているときには、電気接点が開き電気信号を発生しない。一方、開放動作検知部11は、
図9に示すように、開放部4が開放状態になって収容部2の上板部2aの下面から接触部11aが離間したときには、電気接点が閉じて電気信号を発生する。開放動作検知部11は、例えば、接触部11aによって開放部4の変位を検出し電気接点を開閉するリミットスイッチなどである。開放動作検知部11は、開放部4の開放動作を検知したときには開放動作検知信号を
図7に示す送信装置13に出力する。
【0044】
図7に示す発熱検知システム12は、き電線Fの発熱を検知するシステムである。発熱検知システム12は、き電線Fの発熱を発熱検知装置1A,1Bが検知したときに、このき電線Fの発熱を目視で確認可能に告知するとともに、この発熱検知装置1A,1Bの検知結果を外部機器に送信してこのき電線Fの発熱を告知する。発熱検知システム12は、
図7(B)に示すように、発熱検知装置1A,1Bと、送信装置13と、受信装置14などを備えている。
【0045】
図7に示す送信装置13は、発熱検知装置1A,1Bの検知結果を送信する装置である。送信装置13は、
図9に示すように、発熱検知装置1A,1Bの開放動作検知部11が開放部4の開放動作を検知したときに、この開放動作検知部11の検知結果を
図7に示す受信装置14に送信する。送信装置13は、発熱検知装置1A,1Bの開放動作検知部11と信号線を通じて電気的に接続されており、開放動作検知部11が出力する電気信号(開放動作検知信号)を受信したときに発熱検知信号を検知結果として送信する。送信装置13は、発熱検知装置1A,1Bの検知結果を無線で送信する送信機である。送信装置13は、
図1に示す装着部3A,3Bと同様の固定バンドによって、接続部Cに着脱自在に装着されている。
【0046】
図7(B)に示す受信装置14は、送信装置13から送信される検知結果を受信する装置である。受信装置14は、
図9に示すように、発熱検知装置1A,1Bの開放動作検知部11が開放部4の開放動作を検知したときに、この開放動作検知部11の検知結果を送信装置13から受信する。受信装置14は、送信装置13が送信する発熱検知信号を検知結果として受信する。受信装置14は、発熱検知信号を受信したときには、指令又は保守区に通信する。受信装置14は、送信装置13が送信する発熱検知装置1A,1Bの検知結果を受信する受信機である。受信装置14は、例えば、線路に沿って巡回する作業員が所有するスマートフォン、携帯電話又はタブレット型端末などの携帯端末装置(情報処理端末)、信号機器室内の通信機器、駅構内などの通信機器室内の通信機器、又は線路上を走行する列車の運行を管理する中央指令所内の運行管理装置などである。受信装置14は、発熱検知信号を受信したときには、音声若しくは光によって警報を発生する警報器、又は文字、図形、記号、色彩若しくはこれらの組合せによって所定の表示を行う表示灯を必要に応じて動作させる。
【0047】
次に、この発明の第4実施形態に係る発熱検知装置及び発熱検知システムの動作を説明する。
き電線Fが発熱して収容部2の開口部Oを開放部4が開放すると、
図7(B)に示すように発熱告知部7が収容部2から垂れ下がる。このとき、
図9に示すように、連結部5を回転中心として収容部2を開放部4が開くと、開放動作検知部11の接触部11aが収容部2の上板部2aから離間して、開放動作検知部11の電気接点が閉じ開放動作検知信号を開放動作検知部11が出力する。このとき、開放動作検知部11が開放部4側に取り付けられているため、開放部4の自重とともに開放動作検知部11の自重も開放部4に加わる。このため、切替部6が開放部4を固定解除したときに、開放部4がより一層確実に下方に開く。開放動作検知部11が開放動作検知信号を送信装置13に出力すると、
図7(B)に示すように送信装置13が発熱検知信号を送信し、この発熱検知信号を受信装置14が受信する。その結果、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱が告知される。
【0048】
この発明の第4実施形態に係る発熱検知装置及び発熱検知システムは、第1実施形態~第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第4実施形態では、開放部4の開放動作を開放動作検知部11が検知する。このため、切替部6の切替動作に同期して開放動作検知部11によって開放部4の開放動作を検知することができ、き電線Fの発熱を確実に検知することができる。
【0049】
(2) この第4実施形態では、発熱検知装置1A,1Bの検知結果を送信装置13が送信し、この送信装置13から送信されるこの検知結果を受信装置14が受信する。このため、き電線Fの発熱を送信機から無線などによって受信機に出力し、き電線Fの発熱を迅速かつ正確に告知させることができる。
【0050】
(第5実施形態)
図10に示す発熱検知装置1A,1Bは、
図11に示す発熱検知部15を備えている。
図10に示す送信装置13は、発熱検知装置1A,1Bの発熱検知部15がき電線Fの所定温度を超える発熱を検知したときに、この発熱検知部15の検知結果を受信装置14に送信する。送信装置13は、発熱検知装置1A,1Bの発熱検知部15と信号線を通じて電気的に接続されており、発熱検知部15が出力する電気信号(発熱検知信号)を検知結果として送信する。受信装置14は、発熱検知装置1A,1Bの発熱検知部15がき電線Fの所定温度を超える発熱を検知したときに、この発熱検知部15の検知結果を送信装置13から受信する。受信装置14は、送信装置13が送信する発熱検知信号を検知結果として受信する。
【0051】
図11に示す発熱検知部15は、き電線Fの所定温度を超える発熱を検知する手段である。発熱検知部15は、き電線Fが所定温度以下であるときには電気信号を発生しないが、き電線Fが所定温度を超えるときには電気信号を発生する。発熱検知部15は、き電線Fの表面と接触するように、熱伝導部10の表面から僅かに露出した状態で収容部2の上板部2aの上面に装着されており、き電線Fと収容部2との間に挟み込まれている。発熱検知部15は、き電線Fが所定温度以下であるときには、電気接点が開いており電気信号を発生しない。一方、発熱検知部15は、き電線Fが所定温度を超えるときには、電気接点が閉じて電気信号を発生する。開放動作検知部11は、例えば、き電線Fと接触する感熱体が規定温度を超えたときに弾性変形して電気接点を閉じるサーモスイッチなどである。開放動作検知部11は、き電線Fの所定温度を超える発熱を検知したときには発熱検知信号を送信装置13に出力する。
【0052】
次に、この発明の第5実施形態に係る発熱検知装置及び発熱検知システムの動作を説明する。
き電線Fが発熱して所定温度を超えると、
図10(B)に示すように、収容部2の開口部Oを開放部4が開放して発熱告知部7が収容部2から垂れ下がるとともに、発熱検知部15の電気接点が閉じて発熱検知部15が発熱検知信号を送信装置13に出力する。発熱検知部15が発熱検知信号を送信装置13に出力すると、送信装置13が発熱検知信号を送信し、この発熱検知信号を受信装置14が受信する。その結果、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱が告知される。
【0053】
この発明の第5実施形態に係る発熱検知装置及び発熱検知システムは、第1実施形態~第4実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第5実施形態では、き電線Fの所定温度を超える発熱を発熱検知部15が検知する。このため、切替部6の切替動作とは独立して発熱検知部15によってき電線Fの発熱を検知することができるとともに、発熱告知部7及び発熱検知部15の二系統によってより一層確実にき電線Fの発熱を検知することができる。
【0054】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、検知対象物がき電線Fである場合を例に挙げて説明したが、接続部Cを検知対象物とする場合についてもこの発明を適用することができる。例えば、き電線Fから分岐するき電分岐線とこのき電線Fとを接続する平行スリーブ、き電線Fを把持するスリーブ部を支持構造物に引き留める引留クランプ又は圧縮式引留クランプなどを検知対象物とする場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、検知対象物がき電線路である場合を例に挙げて説明したが、電気車に集電装置を通じて電力を供給する構造を有する電車線路を検知対象物とする場合についても、この発明を適用することができる。例えば、電気車の集電装置のすり板が接触するトロリ線、トロリ線を支持するちょう架線、トロリ線をちょう架線に吊り下げるハンガイヤー、き電線Fからトロリ線に電力を供給するフィードイヤーなどを検知対象物とする場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、検知対象物が電線路である場合を例に挙げて説明したが、剛体ちょう架式電車線路の剛体き電線などを検知対象物とする場合についても、この発明を適用することができる。
【0055】
(2) この実施形態では、発熱検知装置1,1A,1Bをき電線Fの下面に装着する場合を例に挙げて説明したが、このき電線Fの周方向に間隔をあけて複数装着する場合についても、この発明を適用することができる。また、この第4実施形態では、開放動作検知部11を開放部4側に取り付けた場合を例に挙げて説明したが、開放動作検知部11を収容部2側に取り付ける場合についても、この発明を適用することができる。また、この第4実施形態及び第5実施形態では、接続部Cの一方の出口側のき電線Fと他方の出口側のき電線Fとに発熱検知装置1A,1Bを装着する場合を例に挙げて説明したが、いずれか一方の出口側のき電線Fに発熱検知装置1A,1Bを装着する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この第5実施形態では、発熱検知部15を収容部2の上板部2aの上面(外側表面)に装着する場合を例に挙げて説明したが、発熱検知部15を収容部2の上板部2aの下面(内側表面)に装着する場合についても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B 発熱検知装置
2 収容部
3A,3B 装着部
4 開放部
5 連結部
6 切替部
7 発熱告知部
8 重錘部
9A,9B 固定部
10 熱伝導部
10a 密着面
11 開放動作検知部
12 発熱検知システム
13 送信装置
14 受信装置
15 発熱検知部
F き電線(検知対象物)
C 接続部
O 開口部