(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】燃料タンクカバー
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20221130BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20221130BHJP
B32B 3/26 20060101ALI20221130BHJP
B32B 1/02 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B60K15/03 Z
B32B5/18
B32B3/26 A
B32B1/02
(21)【出願番号】P 2018117432
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】手島 孝哉
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177176(JP,A)
【文献】特開2001-246946(JP,A)
【文献】特開2012-224113(JP,A)
【文献】特開2012-86727(JP,A)
【文献】特開2003-285393(JP,A)
【文献】特開2016-124434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03,
B60R 13/08,
B32B 1/02, 5/18, 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク下側の外面に沿って碗状形成された発泡体からなるインシュレータと、碗状に樹脂成形されて、該インシュレータの外面を被うプロテクターと、を具備する燃料タンクカバーにおいて、
前記インシュレータを介して、前記燃料タンクの下部外面と対向する前記プロテクターの底壁内面に隆起形成された複数の第一リブをさらに具備し、
前記プロテクターが、その碗内に前記インシュレータを収めて、燃料タンクを被って車体に組付けられることにより、前記インシュレータの底部下面が該第一リブに受け止められ、該インシュレータの底部下面と前記プロテクターの底壁内面との間に第一空間が形成されてなることを特徴とする燃料タンクカバー。
【請求項2】
前記インシュレータの発泡体が、独立気泡性発泡プラスチックにして、オレフィン系合成樹脂又はその複合材で形成された請求項1記載の燃料タンクカバー。
【請求項3】
前記インシュレータが軟質の発泡体で、該インシュレータの底部下面に前記第一リブを食い込ませて前記第一リブに受け止められ、該インシュレータの底部下面と前記プロテクターの内面との間に前記第一空間が形成された請求項1又は2に記載の燃料タンクカバー。
【請求項4】
前記インシュレータを収める前記プロテクターの車体への組付けに伴って、軟質発泡体からなる前記インシュレータの側部が前記燃料タンクの側部外面と干渉するよう設けられ、該組付けで、該インシュレータの側部が、該燃料タンクによる押圧を受けて弾性圧縮変形している請求項3記載の燃料タンクカバー。
【請求項5】
前記燃料タンクの側部外面と対向する前記プロテクターの側壁内面に隆起形成された第二リブをさらに具備し、
前記プロテクターが、その碗内に前記インシュレータを収めて、燃料タンクを被って車体に組付けられることにより、前記インシュレータの側部外面が該第二リブに受け止められ、該インシュレータの側部外面と前記プロテクターの側壁内面との間に、第二空間が形成された請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料タンクカバー。
【請求項6】
前記プロテクターに係る碗状部の外周縁から水平外方に張り出す環状の外鍔が形成されると共に、該外鍔の上面側で外鍔の周方向に走る第三リブが形成される一方、前記プロテクターに収められた前記インシュレータが前記プロテクターの前記外周縁を越えて第三リブ上に載置する周縁部を有して、
前記プロテクターが、その碗内に前記インシュレータを収めて、燃料タンクを被って車体に組付けられることにより、前記インシュレータの周縁部下面が該第三リブに受け止められた請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料タンクカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車体に設置される燃料タンクを被う燃料タンクカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には燃料タンクが設けられるが、この燃料タンクは通常、後部座席下やトランクルーム下の車体パネルに取付けられる。そのため、夏場に地面から照り返しの輻射熱により、燃料タンク内の燃料が温度上昇する虞があり、これを回避すべく、断熱性の高い燃料タンクカバーで被う発明がいくつか提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-285393号公報
【文献】特開2016-124434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、その請求項1に記載のごとく「…樹脂層と金属層とが肉厚方向に2層以上に積層された多層構造に形成されていることを特徴とするタンクプロテクター。」とし、さらに請求項2で、「前記樹脂層と前記金属層との間には隙間が形成されている請求項1に記載のタンクプロテクター。」とするが、隙間形成による断熱効果はあまり上げられない。特許文献1の段落0023には「この隙間は、…連通しないものでもよいが、排水を良好に行うためには隙間がタンクプロテクター外部と連通していることが好ましい。」とし、実施例でも隙間がタンクプロテクター外部と連通している内容になっている。隙間に空気が流入し、隙間内の空気に動きがある構造では、断熱効果が低下する問題ある。
特許文献2は、燃料タンク下側の外面に沿って碗状に成形されたインシュレータ(特許文献2ではプロテクター)と、インシュレータの外面に沿って碗状に成形されたプロテクター(特許文献2ではアンダーカバー)で構成された燃料タンクカバーであるが、インシュレータが収まる領域全体を発泡体のインシュレータで満たす構造から、コスト高になっている。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、インシュレータの使用量を減らしてコスト低減させながら、十分な断熱性能を備えた燃料タンクカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、燃料タンク下側の外面に沿って碗状形成された発泡体からなるインシュレータと、碗状に樹脂成形されて、該インシュレータの外面を被うプロテクターと、を具備する燃料タンクカバーにおいて、前記インシュレータを介して、前記燃料タンクの下部外面と対向する前記プロテクターの底壁内面に隆起形成された複数の第一リブをさらに具備し、前記プロテクターが、その碗内に前記インシュレータを収めて、燃料タンクを被って車体に組付けられることにより、前記インシュレータの底部下面が該第一リブに受け止められ、該インシュレータの底部下面と前記プロテクターの底壁内面との間に第一空間が形成されてなることを特徴とする燃料タンクカバーにある。請求項2の燃料タンクカバーは、請求項1で、インシュレータの発泡体が、独立気泡性発泡プラスチックにして、オレフィン系合成樹脂又はその複合材で形成されたことを特徴とする。
請求項3の燃料タンクカバーは、請求項1又は2で、インシュレータが軟質の発泡体で、該インシュレータの底部下面に前記第一リブを食い込ませて前記第一リブに受け止められ、該インシュレータの底部下面と前記プロテクターの内面との間に前記第一空間が形成されたことを特徴とする。請求項4の燃料タンクカバーは、請求項3で、インシュレータを収める前記プロテクターの車体への組付けに伴って、軟質発泡体からなる前記インシュレータの側部が前記燃料タンクの側部外面と干渉するよう設けられ、該組付けで、該インシュレータの側部が、該燃料タンクによる押圧を受けて弾性圧縮変形していることを特徴とする。請求項5の燃料タンクカバーは、請求項1~3で、燃料タンクの側部外面と対向する前記プロテクターの側壁内面に隆起形成された第二リブをさらに具備し、前記プロテクターが、その碗内に前記インシュレータを収めて、燃料タンクを被って車体に組付けられることにより、前記インシュレータの側部外面が該第二リブに受け止められ、該インシュレータの側部外面と前記プロテクターの側壁内面との間に、第二空間が形成されたことを特徴とする。請求項6の燃料タンクカバーは、請求項1~5で、プロテクターに係る碗状部の外周縁から水平外方に張り出す環状の外鍔が形成されると共に、該外鍔の上面側で外鍔の周方向に走る第三リブが形成される一方、前記プロテクターに収められた前記インシュレータが前記プロテクターの前記外周縁を越えて第三リブ上に載置する周縁部を有して、前記プロテクターが、その碗内に前記インシュレータを収めて、燃料タンクを被って車体に組付けられることにより、前記インシュレータの周縁部下面が該第三リブに受け止められたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の燃料タンクカバーは、プロテクターの内面に設けた第一リブ、さらに第二リブの嵩上げ構造による熱伝導度小の空気層の空間を形成することによって、インシュレータの厚みを減らしても十分な断熱効果を得ることができ、低コスト化,軽量化等に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の燃料タンクカバーの一形態で、その分解斜視図である。
【
図3】燃料タンクを燃料タンクカバーで被って車体に組付けた断面図である。
【
図4】
図3で、プロテクターの底壁と側壁の角部周りの部分拡大図である。
【
図5】
図1のプロテクターに代わる他態様のプロテクターの斜視図である。
【
図6】
図5に代わる別態様のプロテクターの斜視図である。
【
図7】
図6のプロテクターを用いたタンクカバーで、燃料タンクを被って車体に組付けた断面図である。
【
図8】
図7で、プロテクターの底壁と側壁の角部周りの部分拡大図である。
【
図9】断熱性能試験で得た従来品と本発明品との対比グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る燃料タンクカバーについて詳述する。
図1~
図9は本発明の燃料タンクカバーの一形態で、
図1はその分解斜視図、
図2は
図1の断面図、
図3は燃料タンクを燃料タンクカバーで被って車体に組付けた断面図、
図4は
図3の部分拡大図、
図5は他態様のプロテクターの斜視図、
図6は別態様のプロテクターの斜視図、
図7は
図6のプロテクターを用いたタンクカバーで、燃料タンクを被って車体に組付けた断面図、
図8は
図7の部分拡大図、
図9は断熱試験結果グラフを示す。各図は発明要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を省略する。
【0010】
本燃料タンクカバー1は、燃料タンク下側の外面7bに碗部内面2aが沿って碗状形成された発泡体からなるインシュレータ2と、該インシュレータ2の外側をカバーする碗状のプロテクター3と、該プロテクター3に設けた第一リブ4と第三リブ6と、を具備する(
図1~
図4)。本発明でいう「下側」,「下方」とは
図3でいえば「紙面下側」,「紙面下方」を指す。
【0011】
インシュレータ2は、断熱性を有する所定厚みの発泡体からなり、
図3のごとく燃料タンク7の下側からこれを被うようにした碗状の立体形状部品である。インシュレータ2は次のようにして造られる。
燃料タンク7下側を被うインシュレータ2の形状になるよう、その展開された形状に合わせて、断熱性を有する所定厚みの板体から展開部材を切り取る。その後、該展開部材を接着加工によって碗状立体化させたインシュレータ2とする。また、所定厚みで碗状に発泡成形したインシュレータ2とすることもできる。例えば独立気泡タイプの熱可塑性フォームシートを加熱軟化させて型にセットした後、真空成形や圧空成形で燃料タンク下側の外面7bに沿う形状に成形してもよい。
【0012】
ここでのインシュレータ2は、独立気泡性発泡プラスチックにして、オレフィン系合成樹脂又はその複合材で形成され、軟質の発泡体からなる真空成形品とする。「独立気泡性発泡プラスチックとは独立気泡で大部分を占めている発泡プラスチックをいう。」(図解プラスチック用語辞典第2版)。厚みが4mm~8mmの独立気泡タイプの発泡ポリエチレンシートを加熱軟化させ、該発泡ポリエチレンシートと型との間を真空状態にして真空成形でできたインシュレータ2になっている。
符号23は、底部21と側部22でつくる碗部の開口縁からフランジ状に出っ張る周縁部を示す。
【0013】
プロテクター3は、前記インシュレータ2の碗部外面2bを被って碗状に樹脂成形された射出成形品で、その碗状部の外周縁311から水平外方に張り出す環状の外鍔34が設けられる(
図1)。ポリプロピレン樹脂製又はタルク入りポリプロピレン樹脂製で、1.5mm~2.5mm程の厚みで成形される。符号35は外鍔34の四方角部で耳状に延在させてなる突片、符号350は該突片35に設けた通孔を示す。
プロテクター3に係る碗状部31の底壁内面32aには、第一リブ4が形成される。
【0014】
第一リブ4は、燃料タンク7を被った燃料タンクカバー1の車体8への組付けで、インシュレータ2を介して、燃料タンクの下部外面71と対向する前記プロテクター3の底壁内面32aに隆起形成された突出部分である(
図3)。
図1,2のごとく碗状部31の底壁32を横長の楕円形状とするが、その底壁内面32aに、帯幅方向を起立させて横倒しの帯板状に隆起する第一リブ4が楕円形状の横長方向に所定ピッチで複数配設される。帯幅方向が起立する第一リブ4の帯幅高さは、底壁内面32a側に設定する断熱用の第一空間S1の必要層高さが確保されるよう、その高さh1が5mm~15mmの範囲で設定される。
【0015】
そして、前記突片35の通孔350を用いて、プロテクター3は、
図3のごとくインシュレータ2を介して燃料タンク7を被い、車体8(詳しくは車体パネル)とでインシュエータの周縁部23を挟着して該車体8に組付け固定できるようになっている。図中、符号9はプロテクター3を車体8に組付け固定するための締結具、符号91は車体8に設けたボルト、符号92は該ボルト91の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有するナットを示す。
【0016】
前記プロテクター3は、その碗内30に前記インシュレータ2を収めて、燃料タンク7を被って車体8に組付けられる。すると、インシュレータ2の底部下面21bが
図3のように第一リブ4に受け止められ、インシュレータ2の底部下面21bとプロテクター3の底壁内面32aとの間に空気層の第一空間S1が形成される。さらに、インシュレータ2が軟質の発泡体で造られており、
図4のごとく、燃料タンク7の荷重をその下部外面71を通じて受け取ったインシュレータ2は、該インシュレータ2の底部下面21bが第一リブ4に食い込んで第一リブ4に受け支えられる。インシュレータ2は、第一リブ4が在る地点で当初厚みt1よりも厚みt3へと小さくなる。インシュレータ底部下面21bとプロテクター3の内面3aとの間に、第一リブ4の嵩上げ構造による空気層の第一空間S1ができる。
また、燃料タンク7を被った燃料タンクカバー1(インシュレータ2を収めたプロテクター3)の車体8への組付けで、インシュレータ2の側部22が燃料タンクの側部外面72と干渉するよう設定される。その干渉域では、前記燃料タンクカバー1の車体8への組付けで、
図4のごとく剛体の燃料タンク7による押圧を受けて、軟質のインシュレータ2が当初厚みt1からこれよりも厚み小の厚みt2へと弾性圧縮変形している。弾性圧縮変形するインシュレータ2の側部22の部分は、
図4のごとく該プロテクターの底壁32寄りの側壁内面33aを一周する形で設けられる。第一空間S1内に在る空気の流出入を止めるためである。
【0017】
第一リブ4は、
図1~
図4のように碗状部31の底壁内面32aに複数の第一リブ4を所定ピッチで平行配設した縦リブ4Aだけで構成したが、加えて、他態様の
図5のごとくこれら縦リブ4Aに交差させた横リブ4Bを設けて格子状の第一リブ4とするとより好ましくなる。横リブ4Bも底壁内面32aに帯幅方向を起立させて横倒しの帯板状に隆起する。帯幅方向が起立した縦リブ4A,横リブ4Bの双方の起立上縁41は同一面上にある。格子状の第一リブ4とすることによって断熱効果が一層高まる。
【0018】
本実施形態は、前記第一リブ4に加えて、第三リブ6が設けられている(
図1,
図2)。碗状部の外周縁311から外鍔34を水平外方へ延在させるが、該外鍔34の上面34a側に、第三リブ6が外鍔34の周方向に走るよう形成される。突条の第三リブ6が、外鍔上面34aで、碗状部31の外周縁311に沿って周回するよう設けられる。プロテクター3の碗内30にインシュレータ2の底部21,側部22が収められると、インシュレータ2の周縁部23が該第三リブ6上に載る構成である(
図3)。
プロテクター3の射出成形で、第三リブ6は、第一リブ4,碗状部31,外鍔34と一体成形されている。プロテクター3が、その碗内30にインシュレータ2を収めて、燃料タンク7を被って車体8に組付けられることにより、インシュレータ2の周縁部下面23bが第三リブ6に受け止められる。詳しくは、軟質発泡体のインシュレータ2が、その周縁部23の下面23bに第三リブ6を食い込ませて該第三リブ6に受け止められる。外鍔上面34aに堤状に隆起する第三リブ6の高さh3は、該第三リブ6でシールできる高さにする。符号S3はインシュレータ2の周縁部23と第三リブ6と外鍔34とに囲まれた第三空間を示す。
【0019】
図6に別態様のプロテクター3を示す。
図2の第一リブ4に加え、さらに第二リブ5を備えたプロテクター3になっている。インシュレータ2を介して、燃料タンクの側部外面72と対向するプロテクター3の側壁内面33aに、第二リブ5を隆起形成する。プロテクター3が、その碗内30にインシュレータ2を収めて、燃料タンク7を被って車体8に組付けられることにより、インシュレータ2の側部外面22bが該第二リブ5に受け止められる(
図8)。帯幅方向を起立させてプロテクター3の側壁内面33aから横倒しの帯板状に隆起する第二リブ5は、底壁内面32aに対し起立し、上端が碗状部の外周縁311近くまで延在する。該第二リブ5は、碗状部31の側壁33の内周方向に所定ピッチで複数配設される。底壁内面32aに配した第一リブ4の縦リブ4Aがある箇所では、図示のごとく該第一リブ4の縦リブ4Aに第二リブ5が接続する。第二リブ5の帯幅方向高さh2は、第一リブ4の帯幅方向高さh1に合わせている。
【0020】
そして、
図6のプロテクター3が、その碗内30に前記インシュレータ2を収めて、燃料タンク7を被って車体8に組付けられると、前述の第一空間S1を形成すると共に、インシュレータ2の側部外面22bが該第二リブ5に係る帯幅方向の起立上縁51に受け止められて、インシュレータ2の側部外面22bとプロテクター3の側壁内面33aとの間に空気層の第二空間S2を形成する(
図7,
図8)。本実施形態は、燃料タンク7を被った燃料タンクカバー1の車体8への組付けで、インシュレータ2と燃料タンク7との干渉部分を設ける。斯かる干渉部分によって、燃料タンクの側部外面72を通じて干渉押圧力を受けた軟質発泡体のインシュレータ2は、自ら弾性圧縮変形して、その側部外面22bが第二リブ5に食い込んで該第二リブ5に受け支えられる。そうして、インシュレータ2の側部外面22bとプロテクター3の側壁内面33aとの間に、
図8ごとくの第二空間S2を形成する。
第二リブ5によって形成された第二空間S2は、外周縁311側の開口が外鍔34に載るインシュレータ2の周縁部23によって塞がれて、閉空間となる。
【0021】
図9は、本発明品と特許文献2の従来品との断熱性能を比較した実験結果図である。ホットプレート上に、プロテクター3の底壁32に相当する板(厚み1.5mm)を置き、該板上に厚み12mmのインシュレータ2用発泡シートを載せたものを従来品とした。一方、本発明品は、プロテクター3の底壁32に相当する板(厚み1.5mm)と、
図5のような高さh1が5mmの格子状第一リブ4と、を一体成形し、この第一リブ4上に厚み7mmのインシュレータ2用発泡シートを載せたもので、これがホットプレート上に載る。厚み12mm,厚み7mmのインシュレータ2用発泡シートは、共に、独立気泡タイプの発泡ポリエチレンシートを用い、プロテクター3の底壁32に相当する板の面積と同じにした。
【0022】
そして、ホットプレートの温度を60℃に調整して、両インシュレータ2用発泡シートの上面中央地点の温度を、熱電対を使って測定した。
図9は時間軸を横軸にして、測定温度の変化を縦軸に表している。本実験結果によれば、底壁内面32aから高さ5mmの第一リブ4と厚み7mmのインシュレータ2用発泡シートとの本発明品は、底壁内面32aから厚み12mmにした従来品と同程度の断熱性能を有する。インシュレータ2の厚みを減らし、その減らした分を第一リブ4に置き代えても断熱性能は略同じになる。
【0023】
このように構成した燃料タンクカバー1は、燃料タンク7を被って車体8に組付けられると、インシュレータ2の底部下面21bが該第一リブ4に受け止められ、インシュレータ2の底部下面21bとプロテクター3の底壁内面32aとの間に第一空間S1が形成されるので、該第一空間S1を埋める熱伝導度が小の空気層によって良好な断熱性を確保できる。
特に、夏場は地面からの照り返しが強く、その輻射熱をプロテクター3の外面3b、とりわけ底壁32がまともに受けるが、底壁内面32aに簡単な第一リブ4を設けるだけで、熱伝導度小の空気層が溜まる第一空間S1を形成して、温度上昇を抑える。断熱効果が高く且つ低コスト化できる。
図9のごとく、インシュレータ2の減らした厚みを第一空間S1の厚みに置き換えることができ、インシュレータ2の使用量を減らして低コスト化を実現しながら、特許文献2の燃料タンクカバーと同様の十分な断熱効果を発揮できる。さらに、インシュレータ2の使用量を減らすことできるので、軽量化にも貢献する。
【0024】
インシュレータ2の発泡体を、独立気泡性発泡プラスチックにして、オレフィン系合成樹脂又はその複合材で形成されると、気泡がそれぞれ独立して並ぶ独立起泡性の発泡プラスチックによりインシュレータ2そのものも良好な断熱性が確保される。独立気泡ポリエチレンフォーム等のオレフィン系合成樹脂又はその複合材は、気泡がきめ細かく、柔軟性,復元性を有し、高弾性のものも存在する。インシュレータ2が、斯かる軟質の発泡体で、該インシュレータ2の底部下面21bに第一リブ4を食い込ませて前記第一リブ4に受け止められると、インシュレータ2と第一リブ4との当接部でのシール性が高まるので、第一空間S1内の空気層の空気がその場所にとどまり、より断熱効果を高めることができる。
【0025】
さらに、燃料タンク7を被った燃料タンクカバー1の車体8への組付けで、インシュレータ2の側部22が燃料タンクの側部外面72と干渉するよう設定されると、
図4のごとく剛性の高い燃料タンク7側から干渉による押圧を受けて、インシュレータ2が当初厚みt1より厚み小の厚みt2へと弾性圧縮変形して封止するので、第一空間S1内の空気の出入りがなくなる。特許文献1のような隙間に空気が流入し、隙間(ここでは第一空間S1)内の空気に動きがある構造でないので、断熱効果が低下するといった問題も起こらない。
また、第一リブ4を縦リブ4Aと横リブ4Bとで格子状にして第一空間S1を形成すると、縦リブ4Aと横リブ4Bとで格子状に囲まれた第一空間S1の上面開口がインシュレータ2に塞がれて、格子枠に囲まれた第一空間S1の閉空間を形成して、断熱効果を一層高める。
【0026】
燃料タンクの側部外面72と対向するプロテクター3の側壁内面33aに隆起形成された第二リブ5をさらに具備すると、インシュレータ2の側部外面22bとプロテクター3の側壁内面33aとの間に、熱伝導度小の空気層が溜まる第二空間S2を形成できる。プロテクター3が、その碗内30にインシュレータ2を収めて、燃料タンク7を被って車体8に組付けられることによって、インシュレータ2の側部外面22bが第二リブ5に受け止められ、インシュレータ2の側部外面22bとプロテクター3の側壁内面33aとの間に断熱性の高い空気層の第二空間S2を設けることができる。
熱伝導度が小の空気層で満たされた第一空間S1及び第二空間S2が、
図7のように燃料タンクの下部外面71のみならず側部外面22bを被うので、魔法瓶のように、断熱性に極めて優れた燃料タンクカバー1が出来上がる。
【0027】
加えて、インシュレータ2に周縁部23を有し、外鍔34の周方向に走る第三リブ6を備えたプロテクター3が、該インシュレータ2を収めて、燃料タンク7を被って車体8に組付けられることにより、インシュレータ2の周縁部下面23bが該第三リブ6に受け止められると、周縁部23と第三リブ6との当接で、シール性を発揮する。
第三リブ6と周縁部23とのシール性が発揮されることによって、第一空間S1内の空気、さらに第二空間S2が在る場合は、該空間の空気がインシュレータ2の外へ流出したり、インシュレータ2の外から例えば夏場の熱をもった空気がインシュレータ2内へ流入したりすることを、第三リブ6の地点で阻止する。さらに、軟質のインシュレータ2にして、周縁部下面23bに第三リブ6を食い込ませて、該第三リブ6に周縁部23が受け止められると、該周縁部23がパッキンの働きをし、そこでのシール性がいかんなく発揮される。
図1,
図5のように、外鍔34の周方向に周回させた第三リブ6であれば、シール性が盤石となり、より効果的な断熱性能を有する燃料タンクカバー1となる。
【0028】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。インシュレータ2,プロテクター3,第一リブ4,第二リブ5,第三リブ6,燃料タンク7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、実施形態のプロテクター3に係る外鍔34はその上面34aを同一水平面にしたが、碗状部の外周縁311に起伏を設け、この起伏にしたがって外周縁から水平に張り出した外鍔34にもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 燃料タンクカバー
2 インシュレータ
21b 底部下面
22 側部
23 周縁部
3 プロテクター
30 碗内
32a 底壁内面
33a 側壁内面
4 第一リブ
5 第二リブ
6 第三リブ
7 燃料タンク
71 燃料タンクの下部外面
72 燃料タンクの側部外面
8 車体
S1 第一空間
S2 第二空間