(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】電池管理装置、電池管理方法、電力貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221130BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20221130BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/04 L
H01M10/48 301
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2018142467
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マテ ファニー
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亮平
(72)【発明者】
【氏名】森川 拓是
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043239(WO,A1)
【文献】特開2016-178052(JP,A)
【文献】特開2010-273492(JP,A)
【文献】特開2013-240236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な電池を管理する電池管理装置であって、
前記電池の劣化度を算出する電池状態算出部と、
前記劣化度に基づいて前記電池の劣化速度を算出する劣化速度算出部と、
前記劣化速度に基づいて前記電池の上限温度を設定する上限温度設定部と、
前
記劣化速度と前記上限温度の値ごとに予め設定された劣化速度条件とを比較し、その比較結果に基づいて前記上限温度を上昇させるタイミングを決定するタイミング決定部と、
を備え、
前記上限温度設定部は、前記劣化速度の減少に伴って、
前記タイミング決定部により決定された前記タイミングに従い、前記上限温度を
段階的に上昇させる、
電池管理装置。
【請求項2】
請求項
1記載の電池管理装置において、
前記電池状態算出部は、前記電池の劣化度を複数種類算出し、
前記劣化速度算出部は、前記電池状態算出部が算出した複数種類の前記劣化度について前記劣化速度をそれぞれ算出し、
前記上限温度設定部は、前記劣化速度算出部が算出した複数種類の前記劣化速度を用いて前記上限温度を設定する電池管理装置。
【請求項3】
充放電可能な電池を管理する電池管理装置であって、
前記電池の劣化度を算出する電池状態算出部と、
前記劣化度に基づいて前記電池の劣化速度を算出する劣化速度算出部と、
前記劣化速度に基づいて前記電池の上限温度を設定する上限温度設定部であって、前記劣化速度の減少に伴って前記上限温度を上昇させる上限温度設定部と、
を備え、
前記電池状態算出部は、前記電池の劣化度を複数種類算出し、
前記劣化速度算出部は、前記電池状態算出部が算出した複数種類の前記劣化度について前記劣化速度をそれぞれ算出し、
前記上限温度設定部は、前記劣化速度算出部が算出した複数種類の前記劣化速度を用いて前記上限温度を設定する電池管理装置。
【請求項4】
請求項
2又は3に記載の電池管理装置において、
複数種類の前記劣化度は、前記電池の内部抵抗増加量および前記電池の充電容量減少量を少なくとも含む電池管理装置。
【請求項5】
コンピュータが充放電可能な電池を管理する方法であって、
前記電池の劣化度を算出
する劣化度算出ステップと、
算出した前記劣化度に基づいて前記電池の劣化速度を算出
する劣化速度算出ステップと、
算出した前記劣化速度に基づいて前記電池の上限温度を設定する
上限温度設定ステップと、
前記劣化速度と前記上限温度の値ごとに予め設定された劣化速度条件とを比較し、その比較結果に基づいて前記上限温度を上昇させるタイミングを決定するタイミング決定ステップと、
を備え、
前記上限温度設定ステップは、前記劣化速度の減少に伴って、前記決定された前記タイミングに従い、前記上限温度を段階的に上昇させることを含む、
電池管理方法。
【請求項6】
コンピュータが充放電可能な電池を管理するための方法であって、
前記電池の劣化度を算出する劣化度算出ステップと、
算出した前記劣化度に基づいて前記電池の劣化速度を算出する劣化速度算出ステップと、
算出した前記劣化速度に基づいて前記電池の上限温度を設定するステップであって、前記劣化速度の減少に伴って前記上限温度を上昇させる上限温度設定ステップと、
を備え、
前記劣化度算出ステップは、前記劣化度を複数種類算出することを含み、
前記劣化速度算出ステップは、前記複数種類算出された劣化度それぞれについて前記劣化速度を算出することを含み、
前記上限温度設定ステップは、算出した前記複数種類の前記劣化速度を用いて前記上限温度を設定することを含む、
電池管理方法。
【請求項7】
充放電可能な電池を管理する電池管理装置と、
充放電可能な電池と、
前記電池管理装置により上昇された前記電池の上限温度に従って設定された前記電池の充放電電流の許容値に基づいて、前記電池の充放電を行う充放電装置と、
を備える電力貯蔵システム
であって、
前記電池管理装置は、
前
記電池の劣化度を算出する電池状態算出部と、
前記劣化度に基づいて前記電池の劣化速度を算出する劣化速度算出部と、
前記劣化速度に基づいて前記電池の上限温度を設定する上限温度設定部と、
前記劣化速度と前記上限温度の値ごとに予め設定された劣化速度条件とを比較し、その比較結果に基づいて前記上限温度を上昇させるタイミングを決定するタイミング決定部と、
を備え、
前記上限温度設定部は、前記劣化速度の減少に伴って、前記タイミング決定部により決定された前記タイミングに従い、前記上限温度を段階的に上昇させる、
電力貯蔵システム。
【請求項8】
請求項7記載の電力貯蔵システムにおいて、
前記電池状態算出部は、前記電池の劣化度を複数種類算出し、
前記劣化速度算出部は、前記電池状態算出部が算出した複数種類の前記劣化度について前記劣化速度をそれぞれ算出し、
前記上限温度設定部は、前記劣化速度算出部が算出した複数種類の前記劣化速度を用いて前記上限温度を設定する電力貯蔵システム。
【請求項9】
充放電可能な電池を管理する電池管理装置と、
充放電可能な電池と、
前記電池管理装置により上昇された前記電池の上限温度に従って設定された前記電池の充放電電流の許容値に基づいて、前記電池の充放電を行う充放電装置と、
を備える電力貯蔵システムであって、
前記電池管理装置は、
前記電池の劣化度を算出する電池状態算出部と、
前記劣化度に基づいて前記電池の劣化速度を算出する劣化速度算出部と、
前記劣化速度に基づいて前記電池の上限温度を設定する上限温度設定部であって、前記劣化速度の減少に伴って前記上限温度を上昇させる上限温度設定部と、
を備え、
前記電池状態算出部は、前記電池の劣化度を複数種類算出し、
前記劣化速度算出部は、前記電池状態算出部が算出した複数種類の前記劣化度について前記劣化速度をそれぞれ算出し、
前記上限温度設定部は、前記劣化速度算出部が算出した複数種類の前記劣化速度を用いて前記上限温度を設定する、
電力貯蔵システム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電池貯蔵システムにおいて、
複数種類の前記劣化度は、前記電池の内部抵抗増加量および前記電池の充電容量減少量を少なくとも含む電力貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池管理装置、電池管理方法および電力貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題の観点から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用して発電を行い、電力貯蔵システム(Battery Energy Storage System:BESS)を用いて出力の安定化を図った発送電システムの利用が拡大している。また、自動車等の移動交通システムにおいても、排ガス規制の観点から、こうした電力貯蔵システムが広く用いられている。
【0003】
従来の一般的な電力貯蔵システムは、複数の電池セルを組み合わせた電池と、電池を冷却して温度調節を行う冷却システムと、電池の充放電制御を行ってシステムを安全な状態に維持する電池管理装置とを備えて構成される。こうした従来の電力貯蔵システムでは、冷却システムを用いて、電池温度が予め設定された上限温度以下となるように電池を強制的に冷却している。
【0004】
一方、電力貯蔵システムの用途によっては、大きさや重さの低減が重要な場合がある。そのため、冷却システムを設けない自然冷却方式の電池を用いた電力貯蔵システムも利用されている。こうした自然冷却方式の電力貯蔵システムでは、運用状況や周囲環境を考慮して、電池の温度が上限温度を超えないように電池の充放電制御を行う必要がある。ここで、電池の上限温度は、通常は電池の使用期間の全域にわたって常に一定の値で設定される。一方、充放電を繰り返すことで電池の劣化が進むと、それに応じて電池の内部抵抗が増加するため、充放電電流当たりの発熱量が増加する。その結果、電池の使用期間が長くなるほど、電池に流すことができる充放電電流が低下し、電力貯蔵システムの性能が低下してしまう。したがって、自然冷却方式の電力貯蔵システムを運用する際には、運用期間の全域にわたってシステム性能と利用率を両立できるように、電池の上限温度を適切に調節する必要がある。
【0005】
電池の劣化状態に応じた充放電制御に関して、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、蓄電池の情報を取得する電池情報取得部と、前記電池情報取得部により取得された前記情報に基づいて、前記蓄電池の劣化進行速度を演算する劣化進行速度演算部と、前記劣化進行速度演算部により演算された前記劣化進行速度に基づいて、前記蓄電池の充放電を制御するための制限値を設定する制限値設定部と、前記電池情報取得部により取得された前記情報に基づいて、前記制限値を出力すべきタイミングを判定するタイミング判定部と、前記タイミング判定部により判定された前記タイミングに基づいて、前記制限値を出力する制限値出力部と、を備える蓄電池制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の蓄電池制御装置では、電池の劣化状態に応じて電池の充放電電流やSOCの制限値を変更できるが、電池の上限温度を適切に調節することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電池管理装置は、充放電可能な電池を管理する装置であって、前記電池の劣化度を算出する電池状態算出部と、前記劣化度に基づいて前記電池の劣化速度を算出する劣化速度算出部と、前記劣化速度に基づいて前記電池の上限温度を設定する上限温度設定部と、を備え、前記上限温度設定部は、前記劣化速度の減少に伴って前記上限温度を上昇させる。
本発明による電池管理方法は、充放電可能な電池を管理するための方法であって、コンピュータにより、前記電池の劣化度を算出し、算出した前記劣化度に基づいて前記電池の劣化速度を算出し、算出した前記劣化速度に基づいて前記電池の上限温度を設定することで、前記劣化速度の減少に伴って前記上限温度を上昇させる。
本発明による電力貯蔵システムは、電池管理装置と、充放電可能な電池と、前記電池管理装置により上昇された前記電池の上限温度に従って設定された前記電池の充放電電流の許容値に基づいて、前記電池の充放電を行う充放電装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電池の劣化状態に応じて電池の上限温度を適切に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力貯蔵システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る上限温度設定処理および許容電流算出処理に関する電池管理装置の機能ブロックを示す図である。
【
図3】電池状態算出部の機能ブロックを示す図である。
【
図4】電池モデルにおける電池セルの等価回路の例を示す図である。
【
図5】劣化速度算出部の機能ブロックを示す図である。
【
図6】タイミング決定部の機能ブロック図を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る電池管理装置による内部抵抗増加量、劣化速度および上限温度の変化の様子を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る電池管理装置による効果を説明する図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る上限温度設定処理および許容電流算出処理に関する電池管理装置の機能ブロックを示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る電池管理装置による内部抵抗増加量、劣化速度および上限温度の変化の様子を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る電池管理装置による効果を説明する図である。
【
図12】変形例による劣化速度算出部の機能ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る電力貯蔵システムの概略構成図である。
図1に示す電力貯蔵システム(BESS)1は、組電池101、電池管理装置102、電流センサ103、セルコントローラ104、電圧センサ105、温度センサ106、およびリレー107を備える。電力貯蔵システム1は、インバータ2を介して、交流モータ等の負荷3に接続されている。電力貯蔵システム1およびインバータ2は、不図示の通信回線を介して上位コントローラ4に接続されている。
【0013】
組電池101は、充放電可能な複数の電池セルを直並列に接続して構成されている。負荷3を力行運転する際には、組電池101から放電された直流電力がインバータ2により交流電力に変換され、負荷3に供給される。また、負荷3を回生運転する際には、負荷3から出力された交流電力がインバータ2により直流電力に変換され、組電池101に充電される。こうしたインバータ2の動作により、組電池101の充放電が行われる。インバータ2の動作は、上位コントローラ4により制御される。
【0014】
電流センサ103は、組電池101に流れる電流を検出し、その検出結果を電池管理装置102に出力する。セルコントローラ104は、組電池101の各電池セルの電圧を検出し、その検出結果を電池管理装置102に出力する。電圧センサ105は、組電池101の電圧(総電圧)を検出し、その検出結果を電池管理装置102に出力する。温度センサ106は、組電池101の温度を検出し、その検出結果を電池管理装置102に出力する。リレー107は、上位コントローラ4の制御に応じて、電力貯蔵システム1とインバータ2の間の接続状態を切り替える。
【0015】
電池管理装置102は、電流センサ103、セルコントローラ104、電圧センサ105および温度センサ106の各検出結果に基づき、組電池101の充放電制御を行う。電池管理装置102が行う組電池101の充放電制御には、例えば、組電池101の充放電時の上限温度Tlimitを定める上限温度設定処理、上限温度Tlimitに従って組電池101の充放電電流の許容値Ilimitを定める許容電流算出処理、各電池セルの充電状態を調整するバランシング制御などが含まれる。電池管理装置102は、上位コントローラ4との間で、組電池101の充放電制御に必要な情報通信を行う。
【0016】
なお、電力貯蔵システム1は、冷却ファンや水冷ヒートシンク等の冷却装置を持たない自然冷却方式のシステムである。組電池101の充放電中には、各電池セルにおける電気化学反応や相転移、ジュール発熱、周囲環境等によって組電池101の温度が変化する。このときの温度変化量は、充放電電流に大きく依存する。そのため、電力貯蔵システム1では、電池管理装置102の上限温度設定処理や許容電流算出処理により、充放電時の上限温度Tlimitや充放電電流の許容値Ilimitを定め、これらの値に従って充放電電流を制限する。これにより、充放電中の組電池101における急激な温度上昇を抑制し、組電池101の温度を上限温度Tlimit以下に維持することができる。
【0017】
自然冷却方式の二次電池システムを対象とした従来の制御方法では、通常、電池の上限温度がシステムの全運用期間において一定の値に維持される。しかしながら、一般的に二次電池は充放電を繰り返すことで劣化が進行し、充電容量が減少するとともに内部抵抗が増加する。電池の内部抵抗の増加は充放電時の発熱量の増大につながるため、上限温度が一定の場合には、二次電池の劣化が進むほど充放電電流の許容値が低下する。その結果、システム運用期間が長くなるにつれて、充放電時に利用できる電流や電力が減少し、システム利用率が低下してしまう。
【0018】
そこで本実施形態では、組電池101の劣化状態に応じて上限温度Tlimitの値を適切に調節することで、上記のような従来の制御方法における課題を解決し、運用期間全体でのシステム利用率を向上させるようにしている。以下では、その具体的な方法について説明する。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る上限温度設定処理および許容電流算出処理に関する電池管理装置102の機能ブロックを示す図である。本実施形態の電池管理装置102は、電池状態算出部501、電流制限値算出部502、劣化速度算出部503、タイミング決定部504および上限温度設定部505の各機能ブロックを有する。これらの機能ブロックは、例えば所定のプログラムをコンピュータで実行することにより実現される。
【0020】
電池状態算出部501は、電流センサ103、電圧センサ105および温度センサ106から、組電池101が充放電中のときに検出された電流I、閉回路電圧CCVおよび電池温度T
cellをそれぞれ取得する。そして、これらの情報に基づき、組電池101の現在の状態を表す開回路電圧OCV、充電状態SOC、分極電圧Vp、充電容量減少量SOHQおよび内部抵抗増加量SOHRの各状態値を算出する。なお、電池状態算出部501によるこれらの状態値の算出方法の詳細については、後で
図3を参照して説明する。
【0021】
電流制限値算出部502は、電池状態算出部501で算出された組電池101の各状態値を取得すると共に、温度センサ106から電池温度Tcellを取得する。また、上限温度設定部505で設定される上限温度Tlimitを取得する。そして、取得したこれらの情報に基づき、組電池101の充放電電流の許容値Ilimitを算出する。なお、電流制限値算出部502による充放電電流の許容値Ilimitの算出方法については、周知の様々な算出方法を使用可能であるが、本実施形態ではその具体的な説明を省略する。
【0022】
劣化速度算出部503は、電池状態算出部501で算出された組電池101の各状態値のうち、組電池101の劣化度を表す状態値を取得する。そして、取得した劣化度に基づいて、組電池101の劣化速度を算出する。本実施形態では、劣化速度算出部503により、組電池101の劣化度を表す状態値として、内部抵抗増加量SOHRを電池状態算出部501から取得し、この内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtを、組電池101の劣化速度として算出する例を説明する。なお、後述するように内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtは、上限温度T
limitが一定であれば、組電池101の使用時間が長くなるほど小さくなっていく。劣化速度算出部503による組電池101の劣化速度、すなわち内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtの算出方法の詳細については、後で
図5を参照して説明する。
【0023】
タイミング決定部504は、劣化速度算出部503で算出された組電池101の劣化速度dSOHR/dtを取得する。そして、取得した劣化速度dSOHR/dtに基づいて、組電池101の上限温度T
limitを上昇させるタイミングを決定し、その結果を示すフラグ値を出力する。本実施形態では、タイミング決定部504は、現在設定されている上限温度T
limitの値を上限温度設定部505から取得し、この現在の上限温度T
limitに対して予め設定された所定の条件を劣化速度dSOHR/dtが満たしているか否かを判断する。その結果、条件を満たさないと判断したときには、上限温度設定部505に対して出力するフラグ値を変化させることで、上限温度設定部505が上限温度T
limitを上昇させるタイミングを決定する。なお、タイミング決定部504による上限温度T
limitの上昇タイミングの決定方法の詳細については、後で
図6を参照して説明する。
【0024】
上限温度設定部505は、組電池101の劣化状態に応じて上限温度Tlimitの値を設定し、電流制限値算出部502へ出力する。本実施形態では、上限温度設定部505は、タイミング決定部504により決定されたタイミングに従って、上限温度Tlimitの値を段階的に上昇させる。すなわち、タイミング決定部504から入力されるフラグ値が変化すると、上限温度設定部505は、それまでの上限温度Tlimitの値に替えて、変化後のフラグ値に応じた新たな上限温度Tlimitの値を設定することで、上限温度Tlimitを段階的に上昇させる。なお、フラグ値ごとの上限温度Tlimitの値は、上限温度設定部505において予め設定されている。
【0025】
電池管理装置102により上限温度Tlimitに応じて求められた充放電電流の許容値Ilimitは、電池管理装置102から上位コントローラ4に送信され、インバータ2の制御等に利用される。これにより、電池温度Tcellが上限温度Tlimitを超えないように、電力貯蔵システム1において組電池101の充放電制御が行われる。このときインバータ2は、充放電電流の許容値Ilimitに従って組電池101の充放電を行う。
【0026】
図3は、電池状態算出部501の機能ブロックを示す図である。電池状態算出部501は、電池モデル部601および劣化状態検出部602を備える。
【0027】
電池モデル部601は、組電池101をモデル化した電池モデルを記憶しており、この電池モデルを用いて、開回路電圧OCV、充電状態SOCおよび分極電圧Vpを求める。電池モデル部601における電池モデルは、例えば、実際の組電池101における電池セルの直列接続数および並列接続数や、各電池セルの等価回路に応じて設定されている。電池モデル部601は、電流センサ103、電圧センサ105および温度センサ106からそれぞれ取得した電流I、閉回路電圧CCVおよび電池温度Tcellをこの電池モデルに対して適用することで、組電池101の状態に応じた開回路電圧OCV、充電状態SOCおよび分極電圧Vpを求めることができる。
【0028】
図4は、電池モデル部601に設定される電池モデルにおける電池セルの等価回路の例を示す図である。
図4に示す電池セルの等価回路は、電圧値Vocを有する開放電圧源603と、抵抗値Rを有する内部抵抗604と、容量値Cpを有する分極容量605と抵抗値Rpを有する分極抵抗606の並列回路である分極モデルとが、互いに直列接続されて構成されている。この等価回路において、開放電圧源603の両端電圧、すなわち電圧値Vocは開回路電圧OCVに相当し、分極容量605と分極抵抗606の並列回路の両端電圧は分極電圧Vpに相当する。また、この等価回路に電流Iが流れたときの内部抵抗604の印加電圧I×Rおよび分極電圧Vpを開回路電圧OCVに加えた値は、閉回路電圧CCVに相当する。さらに、
図4の等価回路における各回路定数の値は、電池温度T
cellに応じて定まる。したがって、電池モデル部601では、これらの関係に基づき、電流I、閉回路電圧CCVおよび電池温度T
cellから、組電池101全体での開回路電圧OCVおよび分極電圧Vpを求め、さらに開回路電圧OCVの算出結果から充電状態SOCを求めることができる。
【0029】
図3の説明に戻ると、劣化状態検出部602は、組電池101の劣化状態を検出し、その劣化状態に応じた充電容量減少量SOHQおよび内部抵抗増加量SOHRを求める。組電池101の各電池セルは、充放電を繰り返すことで劣化が進行し、その劣化状態に応じて充電容量の減少および内部抵抗の増加が生じる。劣化状態検出部602は、例えば、組電池101の電流、電圧および温度と劣化状態との関係を表す情報を予め記憶しており、この情報を用いることで、電流センサ103、電圧センサ105および温度センサ106からそれぞれ取得した電流I、閉回路電圧CCVおよび電池温度T
cellに基づいて、組電池101の劣化状態を検出する。そして、予め記憶された劣化状態と充電容量減少量SOHQおよび内部抵抗増加量SOHRとの関係に基づき、組電池101の劣化状態の検出結果に対応する充電容量減少量SOHQおよび内部抵抗増加量SOHRを求めることができる。
【0030】
図5は、劣化速度算出部503の機能ブロックを示す図である。劣化速度算出部503は、記憶部607、平滑フィルタ608、および微分演算部609を備える。
【0031】
記憶部607には、電流制限値算出部502から取得した内部抵抗増加量SOHRの値が時系列的に記録される。平滑フィルタ608は、例えば記憶部607に記録された内部抵抗増加量SOHRの移動平均等を算出することで、内部抵抗増加量SOHRの履歴に含まれる短期間での変動を除去して平滑化する。この平滑フィルタ608の作用により、組電池101の劣化状態の長期的な傾向を把握することができる。微分演算部609は、平滑フィルタ608により平滑化された内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtを演算することで、組電池101の劣化速度を算出する。
【0032】
なお、劣化速度算出部503による劣化速度の算出頻度は、組電池101の使用頻度や充放電傾向に応じて定まり、これは電力貯蔵システム1の用途に応じて異なる。例えば、ハイブリッド自動車において用いられる電力貯蔵システム1の場合、劣化速度算出部503により週単位で劣化速度が算出される。
【0033】
図6は、タイミング決定部504の機能ブロック図を示す図である。タイミング決定部504は、例えば条件テーブル610を有しており、この条件テーブル610を用いて、劣化速度dSOHR/dtから上限温度T
limitを上昇させるタイミングを決定する。
【0034】
図6に示す例では、条件テーブル610として、T
limit 1~T
limit Nの各上限温度値に対して予め設定されたN個の劣化速度dSOHR/dtの条件と、各条件に対応するフラグ値1~Nとを示している。ただし、Nは2以上の整数である。なお、条件テーブル610の最初の行では、組電池101の運用開始時(BOL:Beginning Of Life)におけるフラグの初期値が1であることを示している。タイミング決定部504は、この条件テーブル610を参照することで、上限温度設定部505により設定されている現在の上限温度T
limitの値に対応するフラグ値を選択して出力する。また、現在の上限温度T
limitの値に対応する劣化速度dSOHR/dtの条件を取得し、劣化速度算出部503から入力された劣化速度dSOHR/dtの値が当該条件を満たさなくなったときには、次の条件に対応するフラグ値を出力する。これにより、劣化速度dSOHR/dtに応じてフラグ値を変化させる。
【0035】
例えば、フラグ値が1であるときには、上限温度設定部505により、上限温度Tlimitの値がTlimit 1に設定されている。このときタイミング決定部504は、条件テーブル610の2番目の行を参照し、劣化速度dSOHR/dtを所定の閾値A1と比較する。そして、劣化速度dSOHR/dtが閾値A1よりも大きい間はフラグ値を1のままで変化させず、閾値A1以下になるとフラグ値を1から2に変化させる。このフラグ値の変化に応じて、上限温度設定部505により設定される上限温度Tlimitの値がTlimit 1からTlimit 2(Tlimit 1<Tlimit 2)に変化する。こうした処理がN個の条件についてそれぞれ行われることで、上限温度設定部505により設定される上限温度Tlimitの値が、初期値のTlimit 1から最終値のTlimit NまでN段階に変化する。
【0036】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る電池管理装置102による内部抵抗増加量SOHR、劣化速度dSOHR/dtおよび上限温度T
limitの変化の様子を示す図である。
図7では、例えばN=3として本実施形態の電池管理装置102を適用した場合(以下、「本発明適用時」という)について、電力貯蔵システム1の使用時間に応じた内部抵抗増加量SOHR、劣化速度dSOHR/dtおよび上限温度T
limitの変化の様子を(a)、(b)、(c)のグラフでそれぞれ示している。なお、
図7(a)~(c)の各グラフでは、比較例として、上限温度T
limitを一定の値で変化させない従来の制御方法を用いた場合(以下、「従来制御時」という)についても併せて示している。
【0037】
図7(a)~(b)の各グラフにおいて、横軸は組電池101の運用開始時(BOL)から運用終了時(EOL:End Of Life)までの年単位のシステム使用時間を表している。一方、
図7(a)の縦軸は、組電池101の内部抵抗Rの初期値を100%としたときの内部抵抗増加量SOHR(%)を表し、
図7(b)の縦軸は、劣化速度dSOHR/dtの大きさを表し、
図7(c)の縦軸は、上限温度T
limitの値(℃)を表している。
図7(a)では、従来制御時と本発明適用時の内部抵抗増加量SOHRを、破線611、実線612にそれぞれ示している。
図7(b)では、従来制御時と本発明適用時の劣化速度dSOHR/dtを、破線613、実線614にそれぞれ示している。
図7(c)では、従来制御時と本発明適用時の上限温度T
limitを、破線615、実線616にそれぞれ示している。
【0038】
従来制御時は、
図7(a)の破線611で示すように、組電池101の使用時間に応じて内部抵抗増加量SOHRが次第に大きくなる。この破線611の傾きは、使用時間が短いほど大きく、使用時間が進むにつれて小さくなっている。そのため、
図7(b)の破線613で示すように、従来制御時の劣化速度dSOHR/dtは使用時間に応じて減少する。なお、
図7(c)の破線615で示すように、従来制御時の上限温度T
limitは初期値のT
limit 1から変化しない。
【0039】
一方、本発明適用時は、
図7(b)の実線614で示す劣化速度dSOHR/dtが時刻t
1_2において所定の閾値A
1を下回ると、タイミング決定部504から出力されるフラグ値が1から2に変化する。そのため、
図7(c)の実線616で示すように、上限温度設定部505の処理により、時刻t
1_2において上限温度T
limitがT
limit 1からそれよりも高いT
limit 2へと変化する。その結果、
図7(a)、(b)の実線612、614でそれぞれ示すように、内部抵抗増加量SOHRと劣化速度dSOHR/dtの傾向は、時刻t
1_2以前と時刻t
1_2以降とでそれぞれ変化する。その後、劣化速度dSOHR/dtが所定の閾値A
2を上回っている間は、タイミング決定部504から出力されるフラグ値が2に維持される。
【0040】
図7(b)の実線614で示す劣化速度dSOHR/dtが時刻t
2_3において閾値A
2を下回ると、タイミング決定部504から出力されるフラグ値が2から3に変化する。そのため、
図7(c)の実線616で示すように、上限温度設定部505の処理により、時刻t
2_3において上限温度T
limitがT
limit 2からそれよりも高いT
limit 3へと変化する。このときも時刻t
1_2と同様に、内部抵抗増加量SOHRと劣化速度dSOHR/dtの傾向は、時刻t
2_3以前と時刻t
2_3以降とでそれぞれ変化する。その後は、組電池101の運用終了時(EOL)まで、上限温度T
limitがT
limit 3に維持される。
【0041】
本実施形態の電池管理装置102によれば、以上説明したような処理により、劣化速度dSOHR/dtの減少に伴って上限温度Tlimitを段階的に上昇させることができる。
【0042】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る電池管理装置102による効果を説明する図である。
図8(a)は、本発明適用時と従来制御時のそれぞれにおいて利用可能な充放電電流の最大値I
available maxの変化の様子を示している。
図8(a)において、横軸は
図7の各グラフと同様に、組電池101の運用開始時(BOL)から運用終了時(EOL)までの年単位のシステム使用時間を表している。一方、
図8(a)の縦軸は、充放電電流の最大値I
available maxの絶対値を表している。
図8(a)では、従来制御時と本発明適用時の充放電電流の最大値I
available maxの絶対値を、破線617、実線618にそれぞれ示している。なお、充放電電流の最大値I
available maxは、電流制限値算出部502により上限温度T
limitに応じて算出される充放電電流の許容値I
limitと対応している。また、
図8(b)は上限温度T
limitの変化の様子を表しており、これは
図7(c)で示したものと同一である。
【0043】
従来制御時は、
図8(b)の破線615で示すように、上限温度T
limitは初期値のT
limit 1のままで変化しない。そのため、組電池101の内部抵抗Rは時間の経過に応じて上昇し続け、それに応じて充放電時の組電池101の発熱量も増加し続ける。したがって、
図8(a)の破線617で示すように、組電池101の使用時間が進むにつれて、充放電電流の最大値I
available maxの絶対値が低下する。
【0044】
一方、本発明適用時は、
図8(b)の実線616で示すように、上限温度T
limitが時刻t
1_2および時刻t
2_3において段階的に上昇する。したがって、
図8(a)の実線618で示すように、時刻t
1_2以降では、従来制御時と比べて充放電電流の最大値I
available maxの絶対値が大きくなる。なお、時刻t
2_3以降では、従来制御時との差がさらに大きくなる。
【0045】
本実施形態の電池管理装置102によれば、以上説明したように、劣化速度dSOHR/dtの減少に伴って上限温度Tlimitを段階的に上昇させることで、従来制御時と比べて充放電電流の最大値Iavailable maxの絶対値を大きくすることができる。したがって、電力貯蔵システム1の利用率を上昇させることができる。その結果、例えばハイブリッド自動車に適用した場合には、燃料消費量を大幅に低減することが可能となる。
【0046】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0047】
(1)電池管理装置102は、充放電可能な組電池101を管理する装置であって、組電池101の劣化度を表す内部抵抗増加量SOHRを算出する電池状態算出部501と、内部抵抗増加量SOHRに基づいて組電池101の劣化速度dSOHR/dtを算出する劣化速度算出部503と、劣化速度dSOHR/dtに基づいて組電池101の上限温度Tlimitを設定する上限温度設定部505とを備える。上限温度設定部505は、劣化速度dSOHR/dtの減少に伴って上限温度Tlimitを上昇させる。このようにしたので、組電池101の劣化状態に応じて組電池101の上限温度Tlimitを適切に調節することができる。
【0048】
(2)電池管理装置102は、劣化速度dSOHR/dtに基づいて上限温度Tlimitを上昇させるタイミングを決定するタイミング決定部504を備える。上限温度設定部505は、タイミング決定部504により決定されたタイミングに従って上限温度Tlimitを段階的に上昇させる。このようにしたので、劣化速度dSOHR/dtに応じて上限温度Tlimitを適切なタイミングで上昇させることができる。
【0049】
(3)タイミング決定部504は、劣化速度dSOHR/dtおよび現在の上限温度Tlimitに基づいて上限温度Tlimitを上昇させるタイミングを決定する。このようにしたので、上限温度Tlimitを段階的に上昇させる際のタイミングを適切に決定することができる。
【0050】
(4)タイミング決定部504は、例えば
図6のような条件テーブル610を用いて、劣化速度dSOHR/dtと上限温度T
limitの値ごとに予め設定された劣化速度条件とを比較し、その比較結果に基づいて上限温度T
limitを上昇させるタイミングを決定する。このようにしたので、上限温度T
limitを上昇させるタイミングを容易に決定することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、電池管理装置102が行う上限温度設定処理の別形態について説明する。なお、本実施形態に係る電力貯蔵システムの構成は、第1の実施形態で説明した
図1の電力貯蔵システム(BESS)1と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る上限温度設定処理および許容電流算出処理に関する電池管理装置102の機能ブロックを示す図である。本実施形態の電池管理装置102は、電池状態算出部501、電流制限値算出部502、劣化速度算出部503、上限温度算出部506および上限温度設定部505の各機能ブロックを有する。これらの機能ブロックは、たとえば所定のプログラムをコンピュータで実行することにより実現される。
【0053】
図9の電池状態算出部501、電流制限値算出部502および劣化速度算出部503は、第1の実施形態で説明した
図2の電池管理装置102におけるものとそれぞれ同様である。そのため以下では、
図2のタイミング決定部504に替えて設けられた
図9の上限温度算出部506と、これに対応する上限温度設定部505の動作について主に説明し、
図9の他の機能ブロックの説明を省略する。
【0054】
上限温度算出部506は、劣化速度算出部503で算出された組電池101の劣化速度dSOHR/dtを取得する。そして、取得した劣化速度dSOHR/dtに基づいて、組電池101の上限温度Tlimitに対する設定値を表す上限温度値Tlimit_valueを算出し、上限温度設定部505に出力する。上限温度設定部505は、この上限温度値Tlimit_valueに基づいて、上限温度Tlimitの値を連続的に変化させる。
【0055】
上限温度算出部506は、例えば以下の式(1)に示す関数を用いて、劣化速度dSOHR/dtから時刻tにおける上限温度値Tlimit_value(t)を直接的に算出する。
Tlimit_value(t) = f(x1(t), …, xp(t)) ・・・(1)
【0056】
式(1)の関数において、引数x1(t), …, xp(t)は組電池101の劣化速度情報をそれぞれ表している。本実施形態では、引数を一つとし、組電池101の劣化速度として算出される内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtが、この引数に該当する例を説明する。なお、式(1)の引数の数は一つに限らず、任意に設定することができる。また、式(1)で表される関数は、引数の値が小さくなるほど、すなわち組電池101の劣化が進むことで劣化速度が低下するほど、上限温度値Tlimit_value(t)の値が大きくなるような特徴を有している。この関数は、例えば様々な温度条件で取得した各種の実験データ等に基づいて予め設定されたものが上限温度算出部506において記憶されている。
【0057】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る電池管理装置102による内部抵抗増加量SOHR、劣化速度dSOHR/dtおよび上限温度T
limitの変化の様子を示す図である。
図10では、本実施形態の電池管理装置102を適用した場合(以下、「本発明適用時」という)について、電力貯蔵システム1の使用時間に応じた内部抵抗増加量SOHR、劣化速度dSOHR/dtおよび上限温度T
limitの変化の様子を(a)、(b)、(c)のグラフでそれぞれ示している。なお、
図10(a)~(c)の各グラフでは、第1の実施形態で説明した
図7(a)~(c)の各グラフと同様に、比較例として、上限温度T
limitを一定の値で変化させない従来制御時の場合についても併せて示している。
【0058】
図10(a)~(c)の各グラフにおける横軸と縦軸は、第1の実施形態で説明した
図7(a)~(c)の各グラフのものとそれぞれ同様である。
図10(a)では、従来制御時と本発明適用時の内部抵抗増加量SOHRを、破線611、実線619にそれぞれ示している。
図10(b)では、従来制御時と本発明適用時の劣化速度dSOHR/dtを、破線613、実線620にそれぞれ示している。
図10(c)では、従来制御時と本発明適用時の上限温度T
limitを、破線615、実線621にそれぞれ示している。
【0059】
本発明適用時は、
図10(b)の実線620で示す劣化速度dSOHR/dtが使用時間の経過に応じて低下するにつれて、
図10(c)の実線621で示すように、上限温度T
limitが連続的に増加する。すなわち、前述のような特徴を有する式(1)の関数を用いて計算される上限温度値T
limit_valueに従って、劣化速度dSOHR/dtが低下するほど上限温度T
limitが高くなるように、上限温度T
limitが連続的に変化する。その結果、
図10(a)、(b)の実線619、620でそれぞれ示すように、内部抵抗増加量SOHRと劣化速度dSOHR/dtは、使用時間が進むほど従来制御時との差が大きくなる。
【0060】
本実施形態の電池管理装置102によれば、以上説明したような処理により、劣化速度dSOHR/dtの減少に伴って上限温度Tlimitを連続的に上昇させることができる。
【0061】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る電池管理装置102による効果を説明する図である。
図11(a)は、本発明適用時と従来制御時のそれぞれにおいて利用可能な充放電電流の最大値I
available maxの変化の様子を示している。
図11(a)、(b)の各グラフにおける横軸と縦軸は、第1の実施形態で説明した
図8(a)、(b)の各グラフのものとそれぞれ同様である。
図11(a)では、従来制御時と本発明適用時の充放電電流の最大値I
available maxの絶対値を、破線617、実線622にそれぞれ示している。また、
図11(b)は上限温度T
limitの変化の様子を表しており、これは
図10(c)で示したものと同一である。
【0062】
本発明適用時は、
図11(b)の実線621で示すように、使用時間の経過に応じて上限温度T
limitが連続的に上昇する。したがって、
図11(a)の実線622で示すように、従来制御時と比べて充放電電流の最大値I
available maxの絶対値が次第に大きくなる。
【0063】
本実施形態の電池管理装置102によれば、以上説明したように、劣化速度dSOHR/dtの減少に伴って上限温度Tlimitを連続的に上昇させることで、従来制御時と比べて充放電電流の最大値Iavailable maxの絶対値を大きくすることができる。したがって、電力貯蔵システム1の利用率を上昇させることができる。その結果、例えばハイブリッド自動車に適用した場合には、燃料消費量を大幅に低減することが可能となる。
【0064】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した(1)の作用効果に加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0065】
(5)電池管理装置102は、劣化速度dSOHR/dtに基づいて上限温度Tlimitの値を表す上限温度値Tlimit_valueを算出する上限温度算出部506を備える。上限温度設定部505は、上限温度算出部506により算出された上限温度値Tlimit_valueに基づいて上限温度Tlimitを上昇させる。このようにしたので、劣化速度dSOHR/dtに応じて上限温度Tlimitを連続的に上昇させることができる。
【0066】
(6)上限温度算出部506は、予め設定された前述の式(1)の関数を用いて上限温度値Tlimit_valueを算出する。このようにしたので、適切な上限温度値Tlimit_valueを容易に算出することができる。
【0067】
(変形例)
なお、以上説明した第1および第2の実施形態では、劣化速度算出部503において、内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtのみを組電池101の劣化速度として算出する例を説明したが、他の劣化速度情報を組電池101の劣化速度として算出してもよい。例えば、内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtに加えて、充電容量減少量SOHQの時間微分値dSOHQ/dtを組電池101の劣化速度として算出することができる。
【0068】
図12は、変形例による劣化速度算出部503の機能ブロックを示す図である。劣化速度算出部503は、内部抵抗増加量SOHRに対応する記憶部607a、平滑フィルタ608aおよび微分演算部609aと、充電容量減少量SOHQに対応する記憶部607b、平滑フィルタ608bおよび微分演算部609bとを備える。
【0069】
図12において、記憶部607a、平滑フィルタ608aおよび微分演算部609aは、電流制限値算出部502から取得した内部抵抗増加量SOHRに対して、
図5で説明したのとそれぞれ同様の処理を行う。これにより、組電池101の劣化速度情報の一つとして、内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtが算出される。また、記憶部607b、平滑フィルタ608bおよび微分演算部609bは、電流制限値算出部502から取得した充電容量減少量SOHQに対して、記憶部607a、平滑フィルタ608aおよび微分演算部609aとそれぞれ同様の処理を行う。これにより、組電池101の劣化速度情報の一つとして、充電容量減少量SOHQの時間微分値dSOHQ/dtが算出される。
【0070】
第1の実施形態において上記の変形例を適用した場合、タイミング決定部504では、劣化速度算出部503によりそれぞれ算出された劣化速度dSOHR/dt、dSOHQ/dtに基づいて、上限温度T
limitを上昇させるタイミングを決定する。この場合、
図6に示した条件テーブル610には、前述の劣化速度dSOHR/dtの条件に加えて、劣化速度dSOHQ/dtの条件がさらに設定される。そして、劣化速度dSOHR/dt、dSOHQ/dtがそれぞれの条件を満たすか否かを判定し、その判定結果に応じてフラグ値を変化させることで、上限温度設定部505により設定される上限温度T
limitの値を段階的に変化させる。
【0071】
また、第2の実施形態において上記の変形例を適用した場合、上限温度算出部506では、劣化速度算出部503によりそれぞれ算出された劣化速度dSOHR/dt、dSOHQ/dtに基づいて、上限温度値Tlimit_valueを算出する。この場合、前述の式(1)で表される関数の引数に劣化速度dSOHR/dt、dSOHQ/dtをそれぞれ用いることで、劣化速度dSOHR/dt、dSOHQ/dtから時刻tにおける上限温度値Tlimit_value(t)を直接的に算出し、上限温度設定部505により設定される上限温度Tlimitの値を連続的に変化させる。
【0072】
なお、上記の変形例では、内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtに加えて、充電容量減少量SOHQの時間微分値dSOHQ/dtを組電池101の劣化速度情報として用いる例を説明したが、さらに別の劣化速度情報を用いてもよい。また、こうした複数種類の劣化速度情報に対してそれぞれ重み付け係数を設定して重み付け加算することにより、複数種類の劣化速度情報を統合した劣化速度情報を算出し、これを用いて上限温度Tlimitの値を変化させてもよい。
【0073】
以上説明した本発明の変形例によれば、第1および第2の実施形態で説明した(1)~(6)の作用効果に加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0074】
(7)電池状態算出部501は、組電池101の劣化度を複数種類(充電容量減少量SOHQおよび内部抵抗増加量SOHR)算出する。劣化速度算出部503は、電池状態算出部501が算出した複数種類の劣化度について劣化速度をそれぞれ算出する(内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtおよび充電容量減少量SOHQの時間微分値dSOHQ/dt)。上限温度設定部505は、劣化速度算出部503が算出した複数種類の劣化速度dSOHR/dt、dSOHQ/dtを用いて上限温度Tlimitを設定する。このようにしたので、組電池101の劣化状態をより詳細に反映して上限温度Tlimitを変化させることができる。
【0075】
(8)上記の複数種類の劣化度は、組電池101の内部抵抗増加量SOHRおよび組電池101の充電容量減少量SOHQを少なくとも含むことができる。このようにすれば、組電池101の劣化状態を適切に表す劣化度とすることができる。
【0076】
なお、上記実施形態では、自然冷却方式の電力貯蔵システムにおける適用例を説明したが、冷却ファンや水冷ヒートシンク等の冷却装置を用いて組電池101を冷却する強制冷却方式の電力貯蔵システムにおいても、本発明を同様に適用可能である。
【0077】
以上説明した実施形態や各種の変化例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。例えば、第1の実施形態で説明した段階的な上限温度Tlimitの変化と、第2の実施形態で説明した連続的な上限温度Tlimitの変化とを組み合わせて、組電池101の劣化速度に応じた上限温度Tlimitの調節を行うこととしてもよい。また、第2の実施形態において、所定の劣化速度になるまでは上限温度Tlimitを一定値に維持し、その後に式(1)のような関数を用いて上限温度値Tlimit_valueを算出することで、組電池101の劣化速度に応じた上限温度Tlimitの調節を行うこととしてもよい。
【0078】
さらに、内部抵抗増加量SOHRの時間微分値dSOHR/dtや、充電容量減少量SOHQの時間微分値dSOHQ/dtのように、組電池101の劣化速度を直接表すものの代わりに、組電池101の劣化速度を間接的に表す情報を劣化速度情報として用いて、上限温度Tlimitの調節を行ってもよい。例えば、組電池101のこれまでの出力電力量の合計値や、車両の合計走行距離および合計駐車時間(車両に搭載される電力貯蔵システムの場合)、アンシラリーサービスの合計提供時間(送電網に接続される電力貯蔵システムの場合)などを、組電池101の劣化速度情報として用いることができる。なお、その場合には、劣化速度情報の種類に応じて適切な条件や関数が必要となる。
【0079】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 電力貯蔵システム(BESS)
2 インバータ
3 負荷
4 上位コントローラ
101 組電池
102 電池管理装置
103 電流センサ
104 セルコントローラ
105 電圧センサ
106 温度センサ
107 リレー
501 電池状態算出部
502 電流制限値算出部
503 劣化速度算出部
504 タイミング決定部
505 上限温度設定部
506 上限温度算出部
601 電池モデル部
602 劣化状態検出部
603 開放電圧源
604 内部抵抗
605 分極容量
606 分極抵抗
607 記憶部
608 平滑フィルタ
609 微分演算部
610 条件テーブル