(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置およびヘッドチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221130BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 613
B41J2/16 517
B41J2/16 303
(21)【出願番号】P 2018172702
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093978(JP,A)
【文献】特開2005-146367(JP,A)
【文献】特開2001-341303(JP,A)
【文献】特開2007-290161(JP,A)
【文献】特開2008-149733(JP,A)
【文献】特開2003-300328(JP,A)
【文献】特開2001-105609(JP,A)
【文献】特開2004-058449(JP,A)
【文献】特開2018-122554(JP,A)
【文献】特開2007-019248(JP,A)
【文献】特開平09-094967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、前記液体を噴射するヘッドチップであって、
前記アクチュエータプレートは、
互いに側壁を介して配置された複数の溝と、
前記側壁に設けられるとともに、
斜方蒸着法により形成された蒸着膜と前記蒸着膜を覆うめっき膜とを有する電極と
を含み、
前記側壁が、圧電体粒子により構成されており、
前記蒸着膜は、前記めっき膜の構成材料と異なる材料を含む密着膜と、前記めっき膜の構成材料と同じ材料を含む耐腐食膜とを含み、
前記耐腐食膜の厚みおよび前記めっき膜の厚みの和は、前記密着膜の厚みよりも大きくなっている
ヘッドチップ。
【請求項2】
前記めっき膜は、金(Au),白金(Pt)およびパラジウム(Pd)のうちの少なくとも一つを含む
請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
更に、前記電極に電気的に接続された配線を有するとともに、前記アクチュエータプレートに対向して設けられたカバープレートを含み、
前記配線の少なくとも一部は、前記めっき膜に覆われている
請求項1または請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のヘッドチップと、
前記ヘッドチップに前記液体を供給する供給機構と
を備えた液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する収容部と
を備えた液体噴射記録装置。
【請求項6】
液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、前記液体を噴射するヘッドチップの製造方法であって、
前記アクチュエータプレートを形成する工程は、
互いに側壁を介して複数の溝を形成する工程と、
前記側壁に、
斜方蒸着法およびめっき法をこの順に行い、
蒸着膜とめっき膜とを有する電極を形成する工程と
を含み、
前記側壁を、圧電体粒子により構成し、
前記蒸着膜が、前記めっき膜の構成材料と異なる材料を含む密着膜と、前記めっき膜の構成材料と同じ材料を含む耐腐食膜とを、含むようにし、
前記耐腐食膜の厚みおよび前記めっき膜の厚みの和が、前記密着膜の厚みよりも大きくなるようにする
ヘッドチップの製造方法。
【請求項7】
前記側壁に、前記
斜方蒸着法により前記密着膜および前記耐腐食膜をこの順に形成した後、前記めっき法により前記耐腐食膜を成長させて前記電極を形成する
請求項6に記載のヘッドチップの製造方法。
【請求項8】
更に、前記めっき法を行う前に、前記密着膜の表面に形成された不動態膜を除去する工程を含む
請求項7に記載のヘッドチップの製造方法。
【請求項9】
前記めっき法では、還元型のめっき液を用いる
請求項7または請求項8に記載のヘッドチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体を噴射するヘッドチップおよびその製造方法、並びに、そのヘッドチップを備えた液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録媒体に画像を記録する記録装置として、液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が知られており、その液体噴射ヘッドは、液体を噴射するヘッドチップを含んでいる。この液体噴射記録装置では、ヘッドチップから被記録媒体に液体が噴射されるため、その被記録媒体に画像が記録される。
【0003】
このヘッドチップは、液体を噴射させるために電気的に駆動されるアクチュエータプレートを含んでいる。アクチュエータプレートには、複数のチャネルが設けられている。このチャネルの側壁には電極が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このアクチュエータプレートの電極が腐食すると、ヘッドチップの信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、信頼性を向上させることが可能なヘッドチップおよびその製造方法、並びに、そのヘッドチップを備えた液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態のヘッドチップは、液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、液体を噴射するヘッドチップであって、アクチュエータプレートは、互いに側壁を介して配置された複数の溝と、側壁に設けられるとともに、斜方蒸着法により形成された蒸着膜と蒸着膜を覆うめっき膜とを有する電極とを含むものである。また、上記側壁が圧電体粒子により構成されており、上記蒸着膜が、上記めっき膜の構成材料と異なる材料を含む密着膜と、上記めっき膜の構成材料と同じ材料を含む耐腐食膜とを含んでおり、上記耐腐食膜の厚みおよび上記めっき膜の厚みの和が、上記密着膜の厚みよりも大きくなっている。
【0008】
本開示の一実施形態の液体噴射ヘッドは、液体を噴射するヘッドチップと、そのヘッドチップに液体を供給する供給部と備え、そのヘッドチップが上記した本開示の一実施形態のヘッドチップと同様の構成を有するものである。
【0009】
本開示の一実施形態の液体噴射記録装置は、被記録媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、その液体を収容する収容部とを備え、その液体噴射ヘッドが上記した本開示の一実施形態の液体噴射ヘッドと同様の構成を有するものである。
【0010】
本開示の一実施形態のヘッドチップの製造方法は、液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、液体を噴射するヘッドチップの製造方法であって、アクチュエータプレートを形成する工程は、互いに側壁を介して複数の溝を形成する工程と、側壁に、斜方蒸着法およびめっき法をこの順に行い、蒸着膜とめっき膜とを有する電極を形成する工程とを含むものである。また、上記側壁を圧電体粒子により構成し、上記蒸着膜が、上記めっき膜の構成材料と異なる材料を含む密着膜と、上記めっき膜の構成材料と同じ材料を含む耐腐食膜とを、含むようにし、上記耐腐食膜の厚みおよび上記めっき膜の厚みの和が、上記密着膜の厚みよりも大きくなるようにする。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態のヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置およびヘッドチップの製造方法によれば、アクチュエータプレートの溝の側壁に設けられた電極の腐食を抑え、信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態の液体噴射記録装置の概略構成を表す斜視図である。
【
図2】
図1に示した液体噴射ヘッドの概略構成を表す斜視図である。
【
図3】
図2に示した液体噴射ヘッドチップの概略構成を表す斜視図である。
【
図4】
図2に示した液体噴射ヘッドチップの概略構成を表す他の斜視図である。
【
図5】
図4に示したカバープレートおよびアクチュエータプレートの構成を表す断面模式図である。
【
図6】
図5に示した駆動電極の構成を拡大して表す断面模式図である。
【
図7】
図3等に示した液体噴射ヘッドチップの製造方法の一例を表す流れ図である。
【
図8】
図7に示したステップS3を説明するための断面模式図である。
【
図9】
図7に示した液体噴射ヘッドチップの製造方法の他の例を表す流れ図である。
【
図10】
図3に示した液体噴射ヘッドチップの要部の構成の他の例(1)を表す断面模式図である。
【
図11】
図3に示した液体噴射ヘッドチップの要部の構成の他の例(2)を表す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.液体噴射記録装置(ヘッドチップおよび液体噴射ヘッド)
1-1.全体構成
1-2.液体噴射ヘッドの構成
1-3.ヘッドチップの構成
1-4.ヘッドチップの製造方法
1-5.動作
1-6.作用および効果
2.変形例
3.その他の変形例
【0014】
<1.液体噴射記録装置(ヘッドチップおよび液体噴射ヘッド)>
本開示の一実施形態の液体噴射記録装置に関して説明する。
【0015】
なお、本開示の一実施形態のヘッドチップおよび液体噴射ヘッドのそれぞれは、ここで説明する液体噴射記録装置のうちの一部である。そこで、ヘッドチップおよび液体噴射ヘッドのそれぞれに関しては、以下で併せて説明する。
【0016】
ここで説明する液体噴射記録装置は、例えば、被記録媒体に画像を形成するプリンタである。被記録媒体の種類は、特に限定されないが、例えば、紙、フィルム、布およびタイルなどである。
【0017】
<1-1.全体構成>
最初に、液体噴射記録装置の全体構成に関して説明する。
【0018】
図1は、液体噴射記録装置(インクジェットプリンタ)の一具体例であるプリンタ1の斜視構成を表している。
図1では、筐体10の外縁(輪郭)を破線で示している。
【0019】
このプリンタ1は、例えば、記録用の液体(インク9)を用いるインクジェットプリンタである。具体的には、プリンタ1は、例えば、
図1に示したように、筐体10の内部に、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、供給チューブ50と、走査機構6とを備えている。
【0020】
[搬送機構およびインクタンク]
搬送機構2a,2bは、プリンタ1に投入された記録紙Pを搬送方向D(X軸方向)に搬送させる機構であり、例えば、いずれもグリッドローラ21およびピンチローラ22を含んでいる。インクタンク3は、インク9を貯蔵する器である。ここで、インクタンク3は、本開示の「収容部」の一実施形態である。ここでは、プリンタ1は、例えば互いに異なる色のインク9を収容する4個のインクタンク3(3Y,3M,3C,3K)を備えており、インクタンク3Y,3M,3C,3Kのそれぞれは、例えば、イエロー(Y)のインク9、マゼンタ(M)のインク9、シアン(C)のインク9およびブラック(K)のインク9のそれぞれを収容している。
【0021】
[インクジェットヘッドおよび供給チューブ]
インクジェットヘッド4は、供給チューブ50から供給される液滴状のインク9を記録紙Pに噴射する液体噴射ヘッドであり、例えば、エッジシュートタイプのインクジェットヘッドである。エッジシュートタイプのインクジェットヘッド4では、例えば、後述するように、複数のチャネルC1のそれぞれが所定の方向(例えば、Z軸方向)に延在しており、複数のノズル孔H2のそれぞれから複数のチャネルC1のそれぞれの延在方向と同様の方向(Z軸方向)にインク9が噴射される(
図3参照)。すなわち、各チャネルC1の延在方向と各ノズル孔H2からインク9が噴射される方向とは、互いに一致している。
【0022】
ここでは、プリンタ1は、例えば、
図1に示したように、互いに異なる色のインク9を噴射する4個のインクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4K)を備えている。なお、インクジェットヘッド4の詳細な構成に関しては、後述する(
図2参照)。
【0023】
[走査機構]
走査機構6は、搬送方向Dと交差する方向においてインクジェットヘッド4を走査させる機構であり、例えば、一対のガイドレール61a,61bと、キャリッジ62と、駆動機構63とを含んでいる。例えば、キャリッジ62は、例えば、基台62aおよび壁部62bを含んでおり、インクジェットヘッド4を支持しながらガイドレール61a,61bに沿って搬送方向Dと交差する方向に移動可能である。駆動機構63は、例えば、一対のプーリ631a,631bと、無端状のベルト632と、駆動モータ633とを含んでおり、そのベルト632は、例えば、キャリッジ62に連結されている。
【0024】
<1-2.液体噴射ヘッドの構成>
図2は、
図1に示したインクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4K)の斜視構成を拡大して表している。
【0025】
このインクジェットヘッド4は、例えば、
図2に示したように、固定板40と、インクジェットヘッドチップ41と、供給機構42と、制御機構43と、ベースプレート44とを備えている。固定板40の一面には、例えば、インクジェットヘッドチップ41と、供給機構42(後述する流路部材42a)と、ベースプレート44とが固定されている。ここで、インクジェットヘッドチップ41は、本開示の「ヘッドチップ」の一実施形態である。
【0026】
[インクジェットヘッドチップ]
インクジェットヘッドチップ41は、インク9を噴射するインクジェットヘッド4の主要部である。なお、インクジェットヘッドチップ41の詳細な構成に関しては、後述する(
図3~
図5参照)。
【0027】
[供給機構]
供給機構42は、供給チューブ50を介して供給されたインク9をインクジェットヘッドチップ41(後述するインク導入孔410a:
図3および
図4参照)に供給する。この供給機構42は、例えば、インク連結管42cを介して互いに連結された流路部材42aおよび圧力緩衝器42bを含んでいる。流路部材42aはインク9が流れる流路であり、そのインク9の貯留室を有する圧力緩衝器42bには、例えば、供給チューブ50が取り付けられている。
【0028】
[制御機構]
制御機構43は、例えば、回路基板43aと、駆動回路43bと、フレキシブル基板43cとを含んでいる。回路基板43aは、例えば、インクジェットヘッドチップ41を駆動させる駆動回路43bを含んでおり、その駆動回路43bは、例えば、集積回路(IC:Integrated Circuit)などを含んでいる。フレキシブル基板43cは、駆動回路43bとインクジェットヘッドチップ41(後述する駆動電極Ed:
図5参照)とを互いに電気的に接続させている。ここでは図示していないが、フレキシブル基板43cは、例えば、駆動回路43bおよび複数の駆動電極Edのそれぞれに接続された複数の引き出し電極を含んでいる。
【0029】
<1-3.ヘッドチップの構成>
図3では、インクジェットヘッドチップ41の一連の構成要素が互いに組み合わされた状態を示している。一方、
図4では、インクジェットヘッドチップ41の一連の構成要素を見やすくするために、その一連の構成要素が互いに離間された状態を示している。
図5では、複数のノズル孔H2を破線で示している。
図3では、フレキシブル基板43cの一部の輪郭だけを破線で示している。
【0030】
このインクジェットヘッドチップ41は、例えば、
図3および
図4に示したように、カバープレート410と、アクチュエータプレート411と、ノズルプレート(噴射孔プレート)412と、支持プレート413とを含んでいる。カバープレート410およびアクチュエータプレート411は、互いに重ねられている。ノズルプレート412は、例えば支持プレート413に設けられた嵌合孔413aにカバープレート410およびアクチュエータプレート411が嵌め込まれた状態において、その支持プレート413に当接されている。
【0031】
カバープレート410は、例えば接着剤を介してアクチュエータプレート411に貼り付けられている。ノズルプレート412は、Z軸方向におけるカバープレート410およびアクチュエータプレート411の一端部に接着剤を介して取り付けられている。
【0032】
[アクチュエータプレート]
アクチュエータプレート411は、複数のノズル孔H2からインク9を噴射させるために電気的に駆動される部材である。
【0033】
アクチュエータプレート411は、複数のチャネルC1を画定する複数の駆動壁Wdを含んでいる。ここで、この「チャネルC1」が、本開示の「溝」の一具体例に対応し、「駆動壁Wd」が、本開示の「側壁」の一具体例に対応する。
【0034】
このアクチュエータプレート411は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料(後述の
図6の圧電体粒子411P)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、より具体的には、Y軸方向における分極方向が一方向となるように設定された1枚の圧電基板である(カンチレバータイプまたはモノポールタイプ)。各チャネルC1は、非貫通溝であり、複数の噴射チャネルC1eおよび複数のダミーチャネル(非噴射チャネル)C1dは、例えば、X軸方向において交互に配列されている。各噴射チャネルC1eは、各ノズル孔H2に連通されており、インク9に圧力を付与する圧力室として機能する。言い換えると、噴射チャネルC1eにはインク9が充填される一方、ダミーチャネルC1dにはインク9が充填されないようになっている。また、
図5に示したように、各噴射チャネルC1eは、後述するノズルプレート412におけるノズル孔H2と連通している一方、各ダミーチャネルC1dはノズル孔H2には連通しておらず、後述するカバープレート410によって上方から覆われている。
【0035】
複数のチャネルC1のそれぞれは、Z軸方向において、アクチュエータプレート411の一端部(ノズルプレート412に近い側の端部)から他端部(ノズルプレート412から遠い側の端部)に向かって延在している。ただし、複数のダミーチャネルC1dのそれぞれは、例えば、アクチュエータプレート411の他端部まで延在し、他端部で終端している。これに対して、複数の噴射チャネルC1eのそれぞれは、例えば、アクチュエータプレート411の他端部まで延在しておらず、途中(一端部と他端部との間の位置)で終端している。
【0036】
なお、例えば、
図3および
図4に示したように、各噴射チャネルC1eを画定する内壁面C1mは、ノズルプレート412から遠い側における各噴射チャネルC1eの端部近傍において切り上がっている。
【0037】
アクチュエータプレート411は、例えば、一端部側に位置すると共に複数の噴射チャネルC1eおよび複数のダミーチャネルC1dの双方が設けられている第1チャネル形成部分411aと、他端部側に位置すると共に複数の噴射チャネルC1eが設けられておらずに複数のダミーチャネルC1dだけが設けられている第2チャネル形成部分411bとを含んでいる。上記した複数の駆動壁Wdは、複数のチャネルC1(複数の噴射チャネルC1eおよび複数のダミーチャネルC1d)を画定しているため、上記した第1チャネル形成部分411aに設けられている。
【0038】
複数の駆動壁Wdのそれぞれの側面には、Z軸方向に延在する駆動電極Edが設けられている。駆動電極Edは、複数の噴射チャネルC1eを圧力室として機能させるために、駆動壁Wdを電気的に駆動(変形)させる電極である。ここで、駆動電極Edは、本開示の「電極」の一具体例に対応する。
【0039】
この駆動電極Edは、噴射チャネルC1eを画定する駆動壁Wdの側面に設けられた一対のコモン電極Edcと、ダミーチャネルC1dを画定する駆動壁Wdの側面に設けられた一対のアクティブ電極Edaとを含んでいる。アクティブ電極Edaおよびコモン電極Edcのそれぞれは、例えば、カバープレート410とアクチュエータプレート411との界面から各内壁面の途中まで延在している。
図3および
図4のそれぞれでは、複数の駆動電極Edの図示を省略している。
【0040】
複数の駆動電極Edおよび回路基板43a(駆動回路43b)は、上記したように、フレキシブル基板43cを介して互いに接続されている。これにより、駆動回路43bからフレキシブル基板43cを介して複数の駆動電極Edに駆動電圧が印加される。この場合には、例えば、コモン電極Edcおよびアクティブ電極Edaのそれぞれに、互いに極性が異なる駆動電圧が印加される。コモン電極Edcは、例えば接地電位(GND電位)に接続され、アクティブ電極Edaは、所定の電位に接続される。コモン電極Edcは、例えば、マイナスの電位に接続されていてもよい。
【0041】
図6は、駆動壁Wdを構成する圧電体粒子411Pと、駆動壁Wdの側面に設けられた駆動電極Edの構成を表している。本実施の形態では、この駆動電極Edが、蒸着膜DFと、この蒸着膜DFを覆うめっき膜PFとを含んでいる。したがって、駆動壁Wdの側面に蒸着膜DFが露出されにくくなる。詳細は後述するが、これにより、駆動電極Edの腐食に起因したインクジェットヘッドチップ41の信頼性の低下を抑えることが可能となる。
【0042】
駆動壁Wdは、例えば、複数の圧電体粒子411Pにより構成されている。圧電体粒子411Pは、例えばPZTにより構成されており、その粒径は例えば、1μm~3μm程度である。蒸着膜DFは、後述するように、例えば斜方蒸着法等の蒸着法により成膜されたものである。この蒸着膜DFは、例えば、密着膜DF1および耐腐食膜DF2を含んでいる。密着膜DF1および耐腐食膜DF2は、複数の圧電体粒子411P各々の表面の少なくとも一部を覆っており、圧電体粒子411P側から、密着膜DF1および耐腐食膜DF2の順に設けられている。密着膜DF1は、耐腐食膜DF2を圧電体粒子411Pの表面に密着させるためのものであり、圧電体粒子411Pに対して高い密着性を有している。密着膜DF1は、例えば、チタン(Ti),銅(Cu),ニッケル(Ni)およびクロム(Cr)等のうちの少なくとも1つを含んでいる。耐腐食膜DF2は、密着膜DF1を介して圧電体粒子411Pの表面の少なくとも一部を覆っている。この耐腐食膜DF2は、インク9に対して高い耐腐食性を有していることが好ましい。耐腐食膜DF2は、例えば、金(Au),白金(Pt)またはパラジウム(Pd)等により構成されている。このような耐腐食膜DF2を設けることにより、駆動電極Edの腐食を抑えることができる。密着膜DF1および耐腐食膜DF2は、例えば、互いに略同じ厚みを有している。
【0043】
めっき膜PFは、後述するように、例えば無電解めっき法等のめっき法により耐腐食膜DF2を成長させたものである。即ち、めっき膜PFは、耐腐食膜DF2の構成材料と同じ材料により構成されており、例えば、金(Au),白金(Pt)またはパラジウム(Pd)等により構成されている。このようなめっき膜PFを設けることにより駆動電極Edの耐食性をより効果的に向上させることができる。めっき膜PFの構成材料は、密着膜DF1の構成材料と異なるものである。このめっき膜PFの少なくとも一部は、耐腐食膜DF2から露出された密着膜DF1を覆っている。例えば、一の断面(例えば、
図6)では、耐腐食膜DF2の厚みおよびめっき膜PFの厚みの和は、密着膜DF1の厚みよりも大きくなっている。めっき膜PFの厚みを大きくすることにより、耐腐食膜DF2から露出された密着膜DF1をより確実に覆うことができる。めっき膜PFの厚みは、例えば、圧電体粒子411Pの粒径の大きさの1/2以上であることが好ましい。これにより、圧電体粒子411Pの表面全体が覆われやすくなる。よって、耐腐食膜DF2から露出された密着膜DF1をより確実に覆うことができる。
【0044】
[カバープレート]
カバープレート410は、アクチュエータプレート411を被覆する部材である。アクチュエータプレート411に対向してカバープレート410が設けられている。
【0045】
具体的には、カバープレート410は、例えば、
図3~
図5に示したように、複数のスリット410bが設けられた窪み状のインク導入孔410aを有している。各スリット410bは、例えば、各チャネルC1の延在方向(Z軸方向)と同様の方向に延在する貫通溝である。
【0046】
各スリット410bの位置は、各噴射チャネルC1eの位置に対応しているため、インク導入孔410aは、各スリット410bを介して各噴射チャネルC1eに連通されている。これにより、各噴射チャネルC1eに各スリット410bを介してインク9が供給されるため、その複数の噴射チャネルC1eにインク9が充填される。
【0047】
[ノズルプレート]
ノズルプレート412は、貫通口である複数のノズル孔H2を有しており、アクチュエータプレート411に対向している。複数のノズル孔H2は、例えば、X軸方向において間隔を隔てながら配列されており、ノズル孔H2の開口形状、すなわちZ軸方向から見たノズル孔H2の形状は、例えば、円形である。ノズル孔H2の内径は、例えば、インク9が噴射される方向において次第に小さくなっている。これにより、インク9の噴射速度および直進性が向上するからである。ノズルプレート412は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ノズルプレート412は、例えば、ステンレス鋼(SUS)などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0048】
[支持プレート]
支持プレート413は、例えば、
図4に示したように、X軸方向に延在する嵌合孔413aを有しており、この嵌合孔413aには、例えば、カバープレート410およびアクチュエータプレート411が互いに積層された状態で嵌め込まれている。
【0049】
<1-4.ヘッドチップの製造方法>
図7は、インクジェットヘッドチップ41の製造方法の一例を工程順に表したものである。ここでは、
図7を用いて、主にアクチュエータプレート411の製造工程を説明する。
【0050】
まず、PZT等の圧電材料からなる基板を準備し、この基板上にレジスト膜のパターンを形成する(ステップS1)。レジスト膜は、感光性樹脂材料を基板上に塗布して形成するようにしてもよく、あるいは、基板にレジストフィルムを貼り合わせるようにしてもよい。このレジスト膜のパターンは、例えば、フォトリソグラフィ法を用いて形成する。
【0051】
次いで、この基板に複数のチャネルC1を形成する(ステップS2)。このチャネルC1は、例えばダイサーを用いて、基板に溝加工を行うことにより形成する。
【0052】
基板に複数のチャネルC1を形成した後、基板の表面およびチャネルC1の側面に蒸着膜DFを形成する(ステップS3)。蒸着膜DFは、例えば斜方蒸着法を用いて、密着膜DF1および耐腐食膜DF2の順に形成する。
【0053】
図8は、斜方蒸着法を用いて、チャネルC1の側面を構成する圧電体粒子411Pの表面に密着膜DF1および耐腐食膜DF2を形成する工程を表している。蒸着方向DDは、基板の表面に対する法線方向から傾いている。この蒸着方向DDから圧電体粒子411Pの表面に密着膜DF1および耐腐食膜DF2が形成される。斜方蒸着法を用いることにより、チャネルC1の側面の広い範囲にわたって蒸着膜DFを形成することができる。一方、蒸着法では、蒸着方向DDに対して圧電体粒子411Pの影となる部分には、蒸着膜DFがほとんど形成されない。したがって、密着膜DF1が耐腐食膜DF2から露出された部分(露出部分R)が多く生じる。蒸着方向DDを、基板面の法線方向に対して大きく傾けるに連れて、この露出部分Rは多くなる。
【0054】
チャネルC1の側面に蒸着膜DFを形成した後、基板表面のレジスト膜を除去する(ステップS4)。レジスト膜とともに、レジスト膜に付着した蒸着膜DFも除去される。このレジスト膜の除去工程は、いわゆる、リフトオフ法である。これにより、各チャネルC1の側面の蒸着膜DFが電気的に分離される。
【0055】
レジスト膜を除去した後、蒸着膜DFのバリ(不要な突起)を除去する(ステップS5)。ステップS5の後、蒸着膜DFの表面に形成された不動態膜を除去する工程を行うようにしてもよい。例えば、チタン(Ti)からなる密着膜DF1の表面には不動態膜が形成されやすい。この不動態膜は、例えば、フッ酸(HF)溶液等により除去することができる。不動態膜を除去しておくことにより、蒸着膜DF上に後述のめっき膜PFを形成しやすくなる。
【0056】
続いて、蒸着膜DFを覆うめっき膜PFを形成する(ステップS6)。これにより、チャネルC1の側面に駆動電極Edが形成される。このめっき膜PFは、例えば、還元型のめっき液を用いた無電解めっき法により形成する。この還元型のめっき液は、例えば、耐腐食膜DF2に含まれる金属と同じ金属を含んでいる。還元型のめっき液は、この他、例えば還元剤、錯化剤および安定剤などを含んでいる。このような還元型のめっき液を用いることにより、耐腐食膜DF2から等方的に成長するようにめっき膜PFが形成される。換言すれば、耐腐食膜DF2の厚付けが等方的になされる。これにより、露出部分R(
図8)の密着膜DF1がめっき膜PFで覆われる。このめっき膜PFは、レジスト膜を除去した(ステップS4)後に形成するので、めっき膜PFにはバリが発生しにくい。
【0057】
電解めっき法を用いてめっき膜PFを形成することも可能であるが、無電解めっき法を用いることにより、電解めっき法に比べてめっき膜PFの厚みの制御を行いやすくなる。
【0058】
このように、チャネルC1の側面に駆動電極Edを形成してアクチュエータプレート411を完成させた後、アクチュエータプレート411と他のプレート(例えば、カバープレート410およびノズルプレート412等)との組み立てを行う(ステップS7)。これにより、
図3および
図4等に示したインクジェットヘッドチップ41が完成する。
【0059】
図9は、インクジェットヘッドチップ41の製造方法の他の例を表している。このように、ステップS1からステップS5までを上記
図7で説明したのと同様に行った後、プレートの組み立て(ステップS7)およびめっき膜PFの形成(ステップS6)をこの順に行うようにしてもよい。ステップS7とステップS6との間に、蒸着膜DFの表面に形成された不動態膜を除去する工程を行うようにしてもよい。
【0060】
<1-5.動作>
[プリンタの動作]
このプリンタ1では、搬送方向Dに記録紙Pが搬送されると共に、搬送方向Dと交差する方向においてインクジェットヘッド4が往復移動しながら記録紙Pにインク9を噴射する。これにより、記録紙Pに画像が記録される。
【0061】
[インクジェットヘッドの動作]
このインクジェットヘッド4では、例えば、以下の手順により、せん断(シェア)モードを用いて記録紙Pにインク9が噴射される。
【0062】
インクジェットヘッド4では、駆動回路43bがアクチュエータプレート411(複数のアクティブ電極Eda)に駆動電圧を印加する際に、その駆動回路43bがノズルプレート412に対応電圧を印加する。この場合には、圧電厚み滑り効果を利用して各駆動壁WdがY軸方向において屈曲変形する。これにより、各噴射チャネルC1eの容積が増大するため、各噴射チャネルC1eにインク9が誘導される。こののち、駆動電圧がゼロ(0V)になると共に、対応電圧もゼロ(0V)になると、各駆動壁Wdが元の状態に戻るように変形する。これにより、各噴射チャネルC1eの容積が減少することに起因して、各噴射チャネルC1eに誘導されたインク9が加圧されるため、各ノズル孔H2から記録紙Pにインク9が噴射される。
【0063】
<1-6.作用および効果>
本実施の形態のインクジェットヘッドチップ41、インクジェットヘッド4およびプリンタ1では、アクチュエータプレート411の駆動電極Edが、蒸着膜DF(密着膜DF1,耐腐食膜DF2)と蒸着膜DFを覆うめっき膜PFとを含んでいるので、蒸着膜DFが駆動壁Wdの側面に露出されにくくなる。これにより、駆動電極Edの腐食に起因したインクジェットヘッドチップ41の信頼性の低下を抑えることができる。以下、この作用効果について説明する。
【0064】
例えば、
図8に示したように、蒸着膜DFは、蒸着方向DDから形成されるので、蒸着方向DDに対して、圧電体粒子411Pの影となる部分にはほとんど蒸着膜DFが形成されない。換言すれば、蒸着源からの回り込みによって蒸着膜DFが形成されることはほとんどない。したがって、蒸着法のみでは、耐腐食膜DF2が密着膜DF1を十分に覆うことができず、密着膜DF1の露出部分Rが多く生じやすい。
【0065】
仮に、蒸着法のみを用いて駆動電極Edを形成すると、密着膜DF1の露出部分Rが多いので、駆動壁Wdの側面に露出された密着膜DF1がインク9に触れやすくなる。この密着膜DF1は、耐腐食膜DF2に比べて耐腐食性が低いので、駆動電極Edが腐食するおそれがある。
【0066】
これに対し、蒸着法を行った後、更に、めっき法を行って駆動電極Edを形成すると、めっき膜PFは等方的に形成されるので、圧電体粒子411Pの影となる露出部分Rもめっき膜PFで覆われる。これにより、密着膜DF1が耐腐食性の高いめっき膜PFで覆われ、密着膜DF1とインク9との接触に起因した駆動電極Edの腐食を抑えることができる。また、仮に、斜方蒸着法により形成した蒸着膜DFの膜質が低い場合でも、めっき膜PFにより駆動電極Edの膜質を維持することができる。
【0067】
また、還元型のめっき液を用いた無電解めっき法によりめっき膜PFを形成すると、耐腐食膜DF2から成長するようにめっき膜PFが形成される。換言すれば、耐腐食膜DF2の形成されていない部分には、めっき膜PFも形成されない。したがって、めっき膜PFのパターニング工程が不要となる。
【0068】
以上のように本実施の形態のインクジェットヘッドチップ41では、アクチュエータプレート411の駆動電極Edが、蒸着膜DFを覆うめっき膜PF有しているので、蒸着膜DFが駆動壁Wdの側面に露出されにくくなる。したがって、蒸着膜DFが、比較的耐腐食性の低い密着膜DF1を含んでいても、インク9がこの密着膜DF1接することに起因した駆動電極Edの腐食を抑えることができる。これにより、駆動電極Edの腐食に起因した信頼性の低下が抑えられる。よって、インクジェットヘッドチップ41、インクジェットヘッド4およびプリンタ1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0069】
また、還元型のめっき液を用いた無電解めっき法によりめっき膜PFを形成することにより、めっき膜PFのパターニング工程が不要となる。即ち、パターニング工程を追加することなく、密着膜DF1をめっき膜PFで覆うことが可能となる。よって、簡便な方法でインクジェットヘッドチップ41、インクジェットヘッド4およびプリンタ1の信頼性を向上させることができる。
【0070】
更に、上記のめっき膜PFは、レジスト膜を除去した(
図7,
図9のステップS4)後に形成することが可能であり、めっき膜PFにはレジスト膜の除去に起因したバリ等が生じにくい。よって、バリの除去工程を追加することなく、めっき膜PFを形成することができる。
【0071】
<2.変形例>
図10は、変形例に係るインクジェットヘッドチップ41の要部の模式的な断面構成を表している。このインクジェットヘッドチップ41では、カバープレート410が、駆動電極Edに電気的に接続された配線410Wを有している。例えば、このカバープレート410にフレキシブル基板43c(
図3参照)が接続される。即ち、カバープレート410の配線410Wを介して駆動電極Edとフレキシブル基板43cとが電気的に接続されるようになっている。このように、カバープレート410に配線410Wを設けることにより、配線の自由度を高めることができる。
【0072】
カバープレート410は、例えば、アクチュエータプレート411との対向面に配線410Wを有している。アクチュエータプレート411は、例えば、カバープレート410との対向面にパッド電極411Eを有している。このパッド電極411Eは駆動電極Edに接続されている。このパッド電極411Eに配線410Wが接することにより、駆動電極Edがパッド電極411Eを介して配線410Wに電気的に接続されるようになっている。
【0073】
このようにカバープレート410の配線410Wと、アクチュエータプレート411のパッド電極411Eとが接続されているインクジェットヘッドチップ41は、
図9に示したように、プレートの組み立てを行った(ステップS8)後に、めっき膜PFを形成する(ステップS7)ことが好ましい。ステップS8の後にステップS7を行うことにより、配線410Wとパッド電極411Eとの接続部分を覆うようにめっき膜PFが形成される(
図10)。即ち、配線410W、パッド電極411E各々の少なくとも一部がめっき膜PFで覆われる。これにより、配線410Wとパッド電極411Eとの電気的な接続の安定性を高めることができる。
【0074】
図11に示したように、カバープレート410の配線410Wとアクチュエータプレート411のパッド電極411Eとを接続し、パッド電極411Eにフレキシブル基板43cを接続するようにしてもよい。例えば、パッド電極411Eおよび配線410Wは、コモン電極Edcに接続されている。カバープレート410に配線410Wを設けることにより、冗長性を高めることが可能となる。このようなインクジェットヘッドチップ41にも、配線410Wとパッド電極411Eとの接続部分を覆うようにめっき膜PFを形成することができる。
【0075】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げながら本開示に関して説明したが、本開示の態様は上記した実施の形態等において説明された態様に限定されず、種々の変形が可能である。
【0076】
具体的には、例えば、1個の液体噴射ヘッド(液体噴射ヘッドチップ)が1色の液体(インク)を噴射せずに、その1個の液体噴射ヘッドが互いに異なる複数色(例えば、2色など)の液体を噴射してもよい。
【0077】
また、例えば、液体噴射ヘッドは、上記したエッジシュートタイプの液体噴射ヘッドに限定されず、サイドシュートタイプの液体噴射ヘッドでもよい。このサイドシュートタイプの液体噴射ヘッドでは、アクチュエータプレートに設けられた各チャネルが特定の方向に延在している場合において、ノズルプレートに設けられた各ノズル孔から各チャネルの延在方向と交差する方向にインクが噴射される。
【0078】
また、例えば、液体噴射ヘッドは、インクジェットヘッド4とインクタンク3との間の循環機構により、インク9が循環される循環式の液体噴射ヘッドであってもよく、非循環式の液体噴射ヘッドであってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態等では、いわゆるカンチレバータイプのアクチュエータプレート411について説明したが、アクチュエータプレート411は、シェブロンタイプであってもよい。このとき、アクチュエータプレート411は、例えば、Y軸方向の分極方向が異なる2枚の圧電基板の積層体により構成され、駆動電極Edは、駆動壁Wdの内壁面全面に設けられている。
【0080】
また、例えば、上記実施の形態等では、ノズル孔H2の開口形状が円形状である場合について説明したが、ノズル孔H2の開口形状は、例えば、楕円形状や、三角形状等の多角形状、星型形状など他の形状であってもよい。
【0081】
また、例えば、本開示の液体噴射ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置のそれぞれが適用される用途は、インクジェットプリンタに限定されず、他の用途でよい。他の用途は、例えば、ファクシミリおよびオンデマンド印刷機などの他の装置である。
【0082】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0083】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、前記液体を噴射するヘッドチップであって、
前記アクチュエータプレートは、
互いに側壁を介して配置された複数の溝と、
前記側壁に設けられるとともに、蒸着膜と前記蒸着膜を覆うめっき膜とを有する電極と
を含むヘッドチップ。
(2)
前記めっき膜は、金(Au),白金(Pt)およびパラジウム(Pd)のうちの少なくとも一つを含む
前記(1)に記載のヘッドチップ。
(3)
前記蒸着膜は、前記めっき膜の構成材料と異なる材料を含む密着膜と、前記めっき膜の構成材料と同じ材料を含む耐腐食膜とを含み、
前記耐腐食膜の厚みおよび前記めっき膜の厚みの和は、前記密着膜の厚みよりも大きくなっている
前記(1)または(2)に記載のヘッドチップ。
(4)
前記側壁は圧電材料を含み、
前記めっき膜は、前記圧電材料の粒径の大きさの1/2以上の厚みを有する
前記(1)ないし(3)のうちいずれか1つに記載のヘッドチップ。
(5)
更に、前記電極に電気的に接続された配線を有するとともに、前記アクチュエータプレートに対向して設けられたカバープレートを含み、
前記配線の少なくとも一部は、前記めっき膜に覆われている
前記(1)ないし(4)のうちいずれか1つに記載のヘッドチップ。
(6)
前記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載のヘッドチップと、
前記ヘッドチップに前記液体を供給する供給機構と
を備えた液体噴射ヘッド。
(7)
前記(6)に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する収容部と
を備えた液体噴射記録装置。
(8)
液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、前記液体を噴射するヘッドチップの製造方法であって、
前記アクチュエータプレートを形成する工程は、
互いに側壁を介して複数の溝を形成する工程と、
前記側壁に、蒸着法およびめっき法をこの順に行い、電極を形成する工程と
を含むヘッドチップの製造方法。
(9)
前記側壁に、前記蒸着法により密着膜および耐腐食膜をこの順に形成した後、前記めっき法により前記耐腐食膜を成長させて前記電極を形成する
前記(8)に記載のヘッドチップの製造方法。
(10)
更に、前記めっき法を行う前に、前記密着膜の表面に形成された不動態膜を除去する工程を含む
前記(9)に記載のヘッドチップの製造方法。
(11)
前記めっき法では、還元型のめっき液を用いる
前記(9)または(10)に記載のヘッドチップの製造方法。
【符号の説明】
【0084】
1…プリンタ、3…インクタンク、4…インクジェットヘッド、9…インク、41…インクジェットヘッドチップ、42…供給機構、410…カバープレート、410W…配線、411…アクチュエータプレート、411P…圧電体粒子、411E…パッド電極、412…ノズルプレート、413…支持プレート、C1…チャネル、C1d…ダミーチャネル、C1e…噴射チャネル、Ed…駆動電極、DF…蒸着膜、DF1…密着膜、DF2…耐腐食膜、PF…めっき膜、Eda…アクティブ電極、Edc…コモン電極、H2…ノズル孔、P…記録紙、Wd…駆動壁。