(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】天井構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20221130BHJP
E04B 9/14 20060101ALI20221130BHJP
E04B 9/16 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
E04B9/18 F
E04B9/14 A
E04B9/16 A
E04B9/18 B
E04B9/18 M
E04B9/18 Q
(21)【出願番号】P 2018184308
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397028360
【氏名又は名称】関包スチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
(72)【発明者】
【氏名】沙拉依丁 沙吾提
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】細川 俊治
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸則
(72)【発明者】
【氏名】本田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 克典
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-217044(JP,A)
【文献】特開2017-190646(JP,A)
【文献】特開2016-211216(JP,A)
【文献】特開2018-115460(JP,A)
【文献】特開平06-313343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井材を支持する野縁と、
前記野縁を支持する野縁受け部材と、
前記建物の躯体と前記野縁受け部材との間に架設されると共に、前記野縁受け部材側の端部が前記野縁受け部材に固定された一対のブレースと、
前記一対のブレースの前記野縁受け部材側の端部の側方に設けられ、前記野縁受け部材と前記天井材とにそれぞれ固定される固定補強部材と、
を具備
し、
前記固定補強部材は、
上端部から横方向に延出される上端延出部を有し、
前記上端延出部は、
前記野縁受け部材に上方から引っ掛かる、
天井構造。
【請求項2】
前記固定補強部材は、
下端部から横方向に延出される下端延出部を有し、
前記下端延出部は、
略平板状に形成され、前記天井材と重ね合わされる、
請求項1に記載の天井構造。
【請求項3】
前記固定補強部材は、
前記一対のブレースのぞれぞれに対応するように2つ設けられる、
請求項1又は請求項2に記載の天井構造。
【請求項4】
前記野縁受け部材の上方で前記一対のブレースそれぞれと固定されると共に前記一対のブレースの間を亘るように配置されたブレース間補強部材をさらに具備し、
前記ブレース間補強部材は、
前記一対のブレースに亘るように形成された本体部と、
前記本体部から延出され、前記固定補強部材に固定される延出固定部と、
を有する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレースを具備する天井構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレースを具備する天井構造の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、天井材を支持する野縁と、前記野縁を支持する野縁受けと、前記野縁及び前記野縁受けに固定されるブレースと、が記載されている。ブレースは、野縁と野縁受けとが交差した領域に、ブレース下部取付具を介して取り付けられる。
【0004】
このような構成により、野縁受け及び野縁とブレースとが強固に固定されるため、地震発生時における揺動応力(水平応力)を、野縁受け及び野縁からブレースへ直接的に伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、地震発生時にはブレース下部取付具の周囲(ブレースの下端部の周囲)に応力が集中し易いため、この周囲に位置する野縁受け及び野縁の部分が変形や損傷(以下では単に「変形」と称する)する可能性がある。このように野縁受け及び野縁が変形した場合には、天井材が脱落する可能性がある。
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、天井材が脱落するのを抑制することができる天井構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、建物の天井材を支持する野縁と、前記野縁を支持する野縁受け部材と、前記建物の躯体と前記野縁受け部材との間に架設されると共に、前記野縁受け部材側の端部が前記野縁受け部材に固定された一対のブレースと、前記一対のブレースの前記野縁受け部材側の端部の側方に設けられ、前記野縁受け部材と前記天井材とにそれぞれ固定される固定補強部材と、を具備し、前記固定補強部材は、上端部から横方向に延出される上端延出部を有し、前記上端延出部は、前記野縁受け部材に上方から引っ掛かるものである。
【0011】
請求項2においては、前記固定補強部材は、下端部から横方向に延出される下端延出部を有し、前記下端延出部は、略平板状に形成され、前記天井材と重ね合わされるものである。
【0012】
請求項3においては、前記固定補強部材は、前記一対のブレースのぞれぞれに対応するように2つ設けられるものである。
【0013】
請求項4においては、前記野縁受け部材の上方で前記一対のブレースそれぞれと固定されると共に前記一対のブレースの間を亘るように配置されたブレース間補強部材をさらに具備し、前記ブレース間補強部材は、前記一対のブレースに亘るように形成された本体部と、前記本体部から延出され、前記固定補強部材に固定される延出固定部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。また請求項1においては、施工性を向上させることができる。
【0016】
請求項2においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【0017】
請求項3においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【0018】
請求項4においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る天井構造を示した概略斜視図。
【
図2】(a)第一補強金具の斜視図。(b)同じく、正面図。(c)同じく、右側面図。(d)同じく、A-A矢視断面図。
【
図3】(a)第二補強金具の斜視図。(b)同じく、背面図。(c)同じく、右側面図。
【
図4】第一補強金具及び第二補強金具の取り付け態様を示した斜視図。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る天井構造を示した概略斜視図。
【
図9】本発明の第三実施形態に係る天井構造を示した正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明においては、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0022】
以下では、
図1を用いて、一実施形態に係る天井構造1について説明する。
【0023】
天井構造1は、鉄骨造の建物Hにおける天井の構造である。なお、
図1においては、便宜上、建物Hにおける天井の構造全体のうち一部が示されている。以下では、
図1に示された天井構造1、すなわち天井の構造全体のうち一部について説明するものとする。天井構造1は、吊りボルト10、ハンガー20、野縁受け30、野縁40、天井面材50、ブレース60、第一補強金具70及び第二補強金具80を具備する。
【0024】
吊りボルト10は、建物Hの躯体Aから吊り下げられるものである。吊りボルト10は、躯体Aに設けられたインサート(不図示)に取り付けられている。吊りボルト10は、複数設けられる。
図1においては、3本の吊りボルト10が示されている。
【0025】
ハンガー20は、後述する野縁受け30を支持するものである。ハンガー20は、各吊りボルト10の下端部に取り付けられる。
【0026】
野縁受け30は、後述する野縁40を支持するものである。野縁受け30は、長尺状に形成され、長手方向を左右方向に向けて配置される。野縁受け30は、ハンガー20に支持される。こうして、野縁受け30は、ハンガー20及び吊りボルト10を介して建物Hの躯体Aから吊設される。野縁受け30は、複数設けられる。
図1においては、3本の野縁受け30が示されている。
【0027】
野縁40は、後述する天井面材50を支持するのものである。野縁40は、長尺状に形成され、長手方向を前後方向に向けて配置される。野縁40は、クリップ部材41を用いて野縁受け30に支持される。野縁40は、複数設けられる。
図1においては、4本の野縁40が示されている。
【0028】
天井面材50は、天井面を構成するものである。天井面材50は、例えば板状の石膏ボードにより形成される。天井面材50は、板面を上下方向に向けて配置される。天井面材50は、野縁40の下側面にビスSを用いて固定される。
【0029】
ブレース60は、建物Hの躯体Aと野縁受け30との間に架設されるものである。ブレース60は、長尺状に形成され、長手方向を鉛直方向に対して傾斜した姿勢で配置される。ブレース60の上端部は、建物Hの躯体Aに固定される。ブレース60の下端部は、ビスBにより野縁受け30に固定される(
図6参照)。ブレース60は、長手方向断面視で略C字状に形成される。本実施形態において、ブレース60は、前側が開放し、後側が閉鎖面となるように配置される。
図1においては、左右に並設される一対のブレース60が示されている。
【0030】
一対のブレース60は、左右方向に対称形状に形成される。より詳細には、一対のブレース60のうち、左側に配置されるブレース60(以下では「左側ブレース60L」と称する場合がある)は、上側が左方に位置し、下側が右方に位置するように配置される。また、一対のブレース60のうち、右側に配置されるブレース60(以下では「右側ブレース60R」と称する場合がある)は、上側が右方に位置し、下側が左方に位置するように配置される。左側ブレース60L及び右側ブレース60Rは、正面視で吊りボルト10を中心とした対称形状に形成される。左側ブレース60L及び右側ブレース60Rは、それぞれ下端部側へ行くに従って互いに近接するように配置される。
【0031】
以下では、
図1及び
図2を用いて、第一補強金具70の構成について詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、第一補強金具70は、左側ブレース60L及び右側ブレース60Rそれぞれに固定されると共に当該左側ブレース60L及び右側ブレース60Rの間を亘るように設けられるものである。第一補強金具70は、金属製の部材である。第一補強金具70は、一枚の平板状の部材が適宜折り曲げられることにより形成される。第一補強金具70は、本体部71、上端延出部72、下端延出部73及び爪部74を具備する。
【0033】
本体部71は、第一補強金具70の主たる構造体である。本体部71は、平板状に形成される。本体部71は、長手方向を左右方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部71の長手方向の長さは、440mmに形成される。また、本体部71は、短手方向を上下方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部71の短手方向の長さは、100mmに形成される。また、本体部71は、板厚方向を前後方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部71の板厚方向の長さは、2.3mmに形成される。このように、本体部71は、作業者(第一補強金具70及び第二補強金具80の取り付け作業を行う者)が片手で容易に掴める程度の大きさに形成される。
【0034】
上端延出部72は、本体部71の上端部から後方に延出された部分である。上端延出部72は、本体部71の左右端部に亘るように形成される。
【0035】
下端延出部73は、本体部71の下端部から後方に延出された部分である。下端延出部73は、本体部71の左右端部を除く部分に形成される。
【0036】
こうして、上端延出部72及び下端延出部73により、第一補強金具70の剛性が向上される。また、作業者が第一補強金具70を片手で掴む場合に、例えば親指を下端延出部73に引っ掛けると共にその他の指を上端延出部72に引っ掛けることによって、当該作業者は(上端延出部72及び下端延出部73が無い場合と比べて)第一補強金具70をしっかりと掴むことができる。
【0037】
爪部74は、本体部71の左右の下端部から概ね下方に延出された部分である。左右の爪部74は、左右方向に対称形状に形成される。爪部74は、第一部分75及び第二部分76を具備する。
【0038】
第一部分75は、爪部74の第二部分76と本体部71とを接続する部分である。第一部分75は、正面視で略四角形の平板状に形成される。第一部分75は、本体部71の下端部の一部分が前下方に折り曲げられることにより形成される。すなわち、第一部分75の上端部は、本体部71と連結される。第一部分75は、下方へ行くに従って前後方向位置において本体部71から離間するような傾斜状に形成される。
【0039】
第二部分76は、爪部74の第一部分75から下方へ延出される部分である。第二部分76は、正面視で略四角形の平板状に形成される。第二部分76は、板面を前後方向へ向けて設けられる。第二部分76の上端部は、第一部分75の下端部と連結される。第二部分76の後側面は、前後方向位置において本体部71の前側面と略同一となるように形成される。第二部分76には、前後方向に貫通するビス孔79が形成される。
【0040】
以下では、
図1及び
図3を用いて、第二補強金具80の構成について詳細に説明する。
【0041】
第二補強金具80は、後述するように、野縁受け30と天井面材50とにそれぞれ固定されるものである。第二補強金具80は、金属製の部材である。第二補強金具80は、一枚の平板状の部材が適宜折り曲げられることにより形成される。第二補強金具80は、本体部81、上端延出部82及び下端延出部83を具備する。
【0042】
本体部81は、第二補強金具80の主たる構造体である。本体部81は、平板状に形成される。本体部81は、長手方向を左右方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部81の長手方向の長さは、220mmに形成される。また、本体部81は、短手方向を上下方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部81の短手方向の長さは、59mmに形成される。また、本体部81は、板厚方向を前後方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部81の板厚方向の長さは、1.2mmに形成される。このように、本体部81は、作業者が片手で容易に掴める程度の大きさに形成される。また、本体部81には、前後方向に貫通する複数のビス孔89が形成される。ビス孔89は、左右方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態においては、3つ)形成される。
【0043】
上端延出部82は、本体部81の上端部から後方に延出された部分である。上端延出部82の後端部は、下方に折り曲げられたリブ状に形成される。上端延出部82と本体部81とにより区画される空間の前後方向の長さは、野縁受け30の前後方向の長さと略同一となるように形成される。上端延出部82は、本体部81の左右端部に亘るように形成される。
【0044】
下端延出部83は、本体部81の下端部から後方に延出された部分である。下端延出部83の後端部は、上方へ折り曲げられたリブ状に形成される。下端延出部83の前後方向の長さは、上端延出部82の前後方向の長さよりも長く(本実施形態においては、50mmに)形成される。下端延出部83は、本体部81の左右端部に亘るように形成される。
【0045】
上述の如き第一補強金具70及び第二補強金具80は、天井構造1において、当該天井構造1を構成する上記各種の部材(吊りボルト10、ハンガー20、野縁受け30、野縁40、天井面材50及びブレース60)のうち、天井面材50を除く他の部材が取り付けられた状態で、取り付け可能である。具体的には、上述の如く天井面材50を除く他の部材が取り付けられた状態で、まず第二補強金具80が取り付けられる。なお、本実施形態においては、
図1等に示すように、2つの第二補強金具80が取り付けられる。次に、第一補強金具70が取り付けられる。そして最後に、天井面材50が取り付けられる。
【0046】
以下では、天井構造1における第一補強金具70及び第二補強金具80の取り付け態様について説明する。
【0047】
まず、
図4から
図7を用いて、第二補強金具80の取り付け態様について説明する。
【0048】
本実施形態においては、上述の如く2つの第二補強金具80が取り付けられる。2つの第二補強金具80の取り付け態様は、左右方向に対称であることを除いて略同様である。そこで以下では、主として右側の第二補強金具80に着目して説明を行うものとし、左側の第二補強金具80については適宜説明を省略する。
【0049】
第二補強金具80は、上端延出部82により野縁受け30に上方から引っ掛けられている。より詳細には、第二補強金具80の本体部81と上端延出部82とにより区画される空間に、野縁受け30の上端部が配置される。また、本体部81の後側面は、野縁受け30の前側面と当接される。また、上端延出部82の下側面は、野縁受け30の上側面と当接される。また、第二補強金具80は、ビス孔89(
図3参照)に挿通されたビスSにより野縁受け30と固定される。すなわち、第二補強金具80は、横方向に挿通された固定手段(ビス)により野縁受け30と固定される。
【0050】
こうして、第二補強金具80は、横方向に挿通された固定手段(ビス)により野縁受け30と固定されるため、例えば地震発生時において、例えば一対のブレース60のうち一方のブレース60に長手方向一方への力が作用し、他方のブレース60に長手方向他方への力が作用した場合等、野縁受け30に対して、大きなせん断力が作用した場合であっても、野縁受け30の変形が抑制され、当該野縁受け30、第二補強金具80と天井面材50との間の応力伝達をより確実に行うことができる。
【0051】
なお、作業者が第二補強金具80を野縁受け30に固定する作業を行う場合、ビスSにより固定する前であっても、第二補強金具80を野縁受け30に引っ掛けて留めておく(仮止めする)ことができる。こうして、第二補強金具80の取り付け作業(より詳細には、ビス止め作業)を行う場合の施工性を向上させることができる。
【0052】
また、第二補強金具80は、下端延出部83の下側面が野縁40の下側面と、上下方向位置において同一となるように設けられる。すなわち、下端延出部83の下側面は、野縁40の下側面と同一水平面上に位置するように設けられる。これにより、第二補強金具80は、野縁40に支持された天井面材50に固定される。具体的には、第二補強金具80は、下端延出部83の下側面が天井面材50の上側面と当接した状態、すなわち略隙間無く重ね合わされた状態で、(天井面材50の)下方から上方へ挿通された複数のビスSにより天井面材50と固定される。こうして、第二補強金具80は、野縁受け30と天井面材50とにそれぞれ固定される。
【0053】
なお、第二補強金具80は、一対のブレース60にそれぞれ対応するように設けられる。より詳細には、一対のブレース60のうち、左側ブレース60Lに対応するように、左側の第二補強金具80が設けられる。また、右側ブレース60Rに対応するように、右側の第二補強金具80が設けられる。
【0054】
(右側の)第二補強金具80は、右側ブレース60Rの下端部の右側方に、比較的小さな隙間(例えば、クリップ部材41や野縁40が配置される程度の隙間)をあけて設けられる。すなわち、第二補強金具80の左側端部は、右側ブレース60Rの下端部の近傍に設けられる。
【0055】
上述の如き第二補強金具80の構成により、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を第二補強金具80によって効果的に野縁受け30に伝達し、ひいては一対のブレース60に効果的に伝達することができる。こうして、天井構造1においては、当該天井構造1を構成する上記各種の部材を一体的に変位させることができ、例えば建物Hの壁部等に衝突するのを抑制し、当該衝突により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0056】
また、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、野縁受け30及び第二補強金具80(より詳細には、下端延出部83)を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0057】
次に、
図4から
図7を用いて、第一補強金具70の取り付け態様について説明する。
【0058】
本実施形態においては、第一補強金具70の右側半分と左側半分とにおける取り付け態様は、左右方向に対称であることを除いて略同様である。そこで以下では、第一補強金具70の右側半分について着目して説明を行うものとし、左側半分については適宜説明を省略する。
【0059】
第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80の上方に設けられる。第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80に載置される。より詳細には、第一補強金具70は、クリップ部材41及び第二補強金具80に対して下端延出部73が直接的に載置される。また、第一補強金具70は、野縁受け30に対して、クリップ部材41及び第二補強金具80を介して下端延出部73が間接的に載置される。このように、第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80に対して、直接的又は間接的に上方から接触するように設けられる。
【0060】
また、第一補強金具70は、爪部74が野縁受け30に対して側方から当接するように設けられる。より詳細には、爪部74のうち、第二部分76の後側面が、第二補強金具80の本体部81の前側面に前側方から当接される。なお、第二補強金具80の本体部81は、野縁受け30と当接される。したがって、第一補強金具70の爪部74は、第二補強金具80の本体部81を介して野縁受け30と当接される。
【0061】
また、第一補強金具70は、ビス孔79(
図2参照)に挿通されたビスSにより第二補強金具80及び野縁受け30と固定される。なお、第一補強金具70のビス孔79は、第二補強金具80の左端のビス孔89と前後方向に重複するように設けられる。こうして、第一補強金具70と第二補強金具80とが、前後方向に重複するように設けられたビス孔(ビス孔79及びビス孔89)を介して共締めされる。
【0062】
また、第一補強金具70は、右側ブレース60Rと当接するように設けられる。より詳細には、第一補強金具70の本体部71の前側面が、右側ブレース60Rの後側面(閉鎖面)と当接される。ここで、右側ブレース60Rの下端部(ビスBにより野縁受け30に固定された部分)は、第一補強金具70の右側半分のうち左部の下方(換言すれば、第一補強金具70全体のうち、左右方向中央から若干右よりの下方)に設けられる。そのため、右側ブレース60Rは、正面視で第一補強金具70の右側半分を斜めに横断するように、当該第一補強金具70と当接される。
【0063】
また、第一補強金具70は、ビスSにより右側ブレース60Rと固定される。当該ビスSは、第一補強金具70の上部及び下部それぞれに設けられる。こうして、右側ブレース60Rは、ビスBにより直接的に野縁受け30に固定されるだけでなく、第一補強金具70及び第二補強金具80を介して間接的に野縁受け30に固定される。すなわち、右側ブレース60Rは、野縁受け30に支持された野縁40を介して天井面材50を支持するだけでなく、第一補強金具70及び第二補強金具80(より詳細には、下端延出部83)を介して天井面材50を支持することができる。換言すれば、右側ブレース60Rは、下端部に比較的近い場所だけでなく、比較的離れた場所において天井面材50を支持することができる。
【0064】
上述の如き第一補強金具70の構成により、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を第一補強金具70によって野縁受け30から効果的に一対のブレース60に伝達することができる。こうして、天井構造1においては、当該天井構造1を構成する上記各種の部材を一体的に変位させることができ、例えば建物Hの壁部等に衝突するのを抑制し、当該衝突により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0065】
また、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、第一補強金具70、野縁受け30及び第二補強金具80(より詳細には、下端延出部83)を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0066】
以上のように、一実施形態に係る天井構造1においては、
建物Hの天井面材50(天井材)を支持する野縁40と、
前記野縁40を支持する野縁受け30と、
前記建物Hの躯体Aと前記野縁受け30との間に架設されると共に、前記野縁受け30側の端部(下端部)が前記野縁受け30に固定された一対のブレース60と、
前記一対のブレース60の前記野縁受け30側の端部(下端部)の側方に設けられ、前記野縁受け30と前記天井面材50(天井材)とにそれぞれ固定される第二補強金具80(固定補強部材)と、を具備するものである。
【0067】
このような構成により、天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
具体的には、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、野縁受け30及び第二補強金具80を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0068】
また、天井構造1において、
前記第二補強金具80(固定補強部材)は、
上端部から横方向に延出される上端延出部82を有し、
前記上端延出部82は、
前記野縁受け30に上方から引っ掛かるものである。
【0069】
このような構成により、第二補強金具80の取り付け作業において、ビスSにより固定する前であっても、当該第二補強金具80を野縁受け30に引っ掛けて留めておくことができるため、施工性を向上させることができる。
【0070】
また、天井構造1において、
前記第二補強金具80(固定補強部材)は、
下端部から横方向に延出される下端延出部83を有し、
前記下端延出部83は、
略平板状に形成され、前記天井面材50(天井材)と重ね合わされるものである。
【0071】
このような構成により、第二補強金具80の下端延出部83と天井面材50との接触面積を比較的大きくすることができる。こうして、地震発生時において、例えば第二補強金具80の下端延出部83及び天井面材50に対して互いの面方向に交互に押し合うような力が作用した場合に、面圧を低下させることができる。これにより、第二補強金具80の下端延出部83及び天井面材50が変形するのを抑制し、ひいては当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0072】
また、天井構造1において、
前記第二補強金具80(固定補強部材)は、
前記一対のブレース60のぞれぞれに対応するように2つ設けられるものである。
【0073】
このような構成により、一対のブレース60のぞれぞれに対して、野縁受け30及び野縁40を介して天井面材50と固定させるのではなく、野縁受け30及び第二補強金具80を介して天井面材50と固定させることができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを効果的に抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを効果的に抑制することができる。
【0074】
また、天井構造1において、
前記野縁受け30の上方で前記一対のブレース60それぞれと固定されると共に前記一対のブレース60の間を亘るように配置された第一補強金具70(ブレース間補強部材)をさらに具備し、
前記第一補強金具70(ブレース間補強部材)は、
前記一対のブレース60に亘るように形成された本体部71と、
前記本体部71から延出され、前記第二補強金具80(固定補強部材)に固定される爪部74(延出固定部)と、を有するものである。
【0075】
このような構成により、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、第一補強金具70、野縁受け30及び第二補強金具80を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0076】
なお、第一補強金具70は、ブレース間補強部材の実施の一形態である。
また、第二補強金具80は、固定補強部材の実施の一形態である。
【0077】
以上、一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0078】
例えば、本実施形態において、野縁40は、シングル野縁であるものとしたが、シングル野縁よりも横幅が大きなダブル野縁であってもよい。
【0079】
また、第一補強金具70の構成は、本実施形態に係るものに限定されない。例えば、第一補強金具70の大きさ及び形状は、適宜変更可能である。ただし、作業者が第一補強金具70を片手で掴める程度大きさ(例えば、上下方向の長さが、110mm以下)であることが望ましい。また、第一補強金具70は、一枚の平板状の部材が適宜折り曲げられることにより形成されるとしたが、例えば爪部74を溶接により本体部71と連結させるものとしてもよい。また、爪部74は、第二補強金具80に側方から当接されるものとしたが、上方、又は、上方及び側方から当接されるものとしてもよい。
【0080】
また、第一補強金具70は、例えば地震発生時において、一対のブレース60のうち一方のブレース60に長手方向一方への力が作用し、他方のブレース60に長手方向他方への力が作用した場合、所定の大きさ以上の力が作用すると、適宜変形するようなものであってもよい。これにより、地震の衝撃を柔軟に吸収することができる。
【0081】
また、第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80に対して、直接的又は間接的に上方から接触するように設けられるものとしたが、離間するものであってもよい。ただし、離間するように設けられる場合であっても、第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80に対して、近傍(略接するよう)に設けられることが望ましい。
【0082】
また、第二補強金具80の構成は、本実施形態に係るものに限定されない。例えば、第二補強金具80の大きさ及び形状は、適宜変更可能である。また、第二補強金具80は、一枚の平板状の部材が適宜折り曲げられることにより形成されるものとしたが、これに限らない。また、上端延出部82の後端部に、下方に折り曲げられたリブ状の部分を形成しなくてもよい。また、上端延出部82はその一部又は全部が、当初、本体部81と同様に板面を横方向へ向けて形成されており、第二補強金具80の取り付け作業を行う場合に、作業者により折り曲げられるものであってもよい。
【0083】
第二補強金具80は、一対のブレース60にそれぞれ対応するように2つ設けられるものとしたが、2つの第二補強金具80が一体的に形成されるもの(すなわち、1つの第二補強金具80が、一対のブレース60にそれぞれ対応するように設けられるもの)としてもよい。
【0084】
また、第一補強金具70及び第二補強金具80は、ビスSを用いて取り付けられる(固定される)ものとしたが、適宜の固定手段を用いることができる。
【0085】
以下では、
図8を用いて、第二実施形態に係る天井構造101について説明する。
【0086】
第二実施形態に係る天井構造101においては、第一実施形態に係る天井構造1において、野縁受け30にブレース60、第一補強金具70及び第二補強金具80が取り付けられていたのに対し、野縁受け継ぎ部材130に、第一補強金具70及び第二補強金具80が取り付けられる点で、当該第一実施形態と異なる。
【0087】
野縁受け継ぎ部材130は、長尺状の部材である。野縁受け継ぎ部材130は、複数(本実施形態においては、3本)の野縁受け30の上方で、当該野縁受け30の長手方向に対して直交する方向へ長手方向を向けて配置される。野縁受け継ぎ部材130は、3本の野縁受け30に亘るように設けられると共に、これらの野縁受け30と固定される。
【0088】
第一補強金具70及び第二補強金具80は、第一実施形態に係る天井構造1の野縁受け30に対する取り付け態様と同様の態様で取り付けられる。
【0089】
なお、野縁受け継ぎ部材130は、野縁受け部材の実施の一形態である。
【0090】
以下では、
図9を用いて、第三実施形態に係る天井構造102について説明する。
【0091】
第三実施形態に係る天井構造102においては、第一補強金具70が設けられない点で第一実施形態に係る天井構造1と異なる。
【0092】
この場合、一対のブレース60は、第一実施形態に係る天井構造1とは異なり第一補強金具70を介して第二補強金具80と接続されない。しかし、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を第二補強金具80によって効果的に野縁受け30に伝達し、ひいては一対のブレース60に効果的に伝達することができる。
【0093】
また、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、野縁受け30及び第二補強金具80(より詳細には、下端延出部83)を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 天井構造
30 野縁受け
40 野縁
50 天井面材
60 ブレース
80 第二補強金具