(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】画像処理装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20221130BHJP
G06T 7/12 20170101ALI20221130BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
G06T7/12
H04N1/10
(21)【出願番号】P 2018193866
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮下 潤
(72)【発明者】
【氏名】近江 国彦
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178552(JP,A)
【文献】特開2006-293972(JP,A)
【文献】特開平05-183749(JP,A)
【文献】特開2006-115334(JP,A)
【文献】特開2007-088654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 - 1/207
G06T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、単一の色を有する対向面が撮像装置と対向するように配置された裏当てとの間に搬送された原稿が撮像された入力画像を取得する取得部と、
前記入力画像において原稿の裏当てに相当する領域内の画素の階調値
の標準偏差に基づいて、変動範囲を算出する変動範囲算出部と、
前記変動範囲に基づいて閾値を決定する閾値決定部と、
前記閾値を用いて前記入力画像から、原稿と裏当ての境界に相当するエッジ画素を抽出するエッジ画素抽出部と、
前記エッジ画素から原稿領域を検出する原稿領域検出部と、
前記入力画像から前記原稿領域に対応する領域を切り出した画像を出力する出力部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記入力画像において原稿の裏当てに相当する領域に基づいて、前記入力画像からノイズを除去するノイズ除去部をさらに有し、
前記変動範囲算出部は、前記ノイズ除去部によりノイズが除去された入力画像から前記変動範囲を算出する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ノイズ除去部は、前記入力画像の主走査方向の各ラインの各画素の階調値から、原稿の裏当てに相当する
単一のライン
上の
前記各画素と同一位置の画素の階調値
、又は、原稿の裏当てに相当する複数のライン上の前記各画素と同一位置の画素の階調値の平均値を減算することにより、前記入力画像からノイズを除去する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記閾値より大きい第2閾値を用いて前記入力画像から第2エッジ画素を抽出する第2エッジ画素抽出部と、
前記第2エッジ画素から原稿領域を検出する第2原稿領域検出部と、をさらに有し、
前記エッジ画素抽出部は、前記第2原稿領域検出部により原稿領域が検出されなかった場合に限り、前記閾値を用いて前記エッジ画素を抽出する、請求項
1~3の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記原稿領域検出部は、
前記エッジ画素から直線を検出し、
四つの直線を検出した場合、前記四つの直線からなる矩形を前記原稿領域として検出し、
少なくとも二つの直線を検出した場合、前記少なくとも二つの直線を用いて前記原稿領域を検出する、請求項
1~4の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記変動範囲算出部は、前記入力画像の上端から所定範囲の領域を、前記原稿の裏当てに相当する領域とみなす、請求項
1~5の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
出力部を有する画像処理装置の制御方法であって、
撮像装置と、単一の色を有する対向面が撮像装置と対向するように配置された裏当てとの間に搬送された原稿が撮像された入力画像を取得し、
前記入力画像において原稿の裏当てに相当する領域内の画素の階調値
の標準偏差に基づいて、変動範囲を算出し、
前記変動範囲に基づいて閾値を決定し、
前記閾値を用いて前記入力画像から、原稿と裏当ての境界に相当するエッジ画素を抽出し、
前記エッジ画素から原稿領域を検出し、
前記入力画像から前記原稿領域に対応する領域を切り出した画像を前記出力部に出力する、
ことを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
出力部を有する画像処理装置の制御プログラムであって、
撮像装置と、単一の色を有する対向面が撮像装置と対向するように配置された裏当てとの間に搬送された原稿が撮像された入力画像を取得し、
前記入力画像において原稿の裏当てに相当する領域内の画素の階調値
の標準偏差に基づいて、変動範囲を算出し、
前記変動範囲に基づいて閾値を決定し、
前記閾値を用いて前記入力画像から、原稿と裏当ての境界に相当するエッジ画素を抽出し、
前記エッジ画素から原稿領域を検出し、
前記入力画像から前記原稿領域に対応する領域を切り出した画像を前記出力部に出力する、
ことを前記画像処理装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、制御方法及び制御プログラムに関し、特に、原稿領域を検出する画像処理装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、膨大な量の原稿を扱う業務が行われる際に、原稿を読み取った画像を利用するために、スキャナが使用されている。一般に、スキャナ又はスキャナと接続されるパーソナルコンピュータ等の画像処理装置は、利用者が利用しやすい画像を提供するために、原稿を読み取った入力画像から原稿領域のみを切り出す。スキャナには撮像装置と対向する位置に裏あてが備えられており、画像処理装置は、入力画像から原稿と裏当ての境界を検出することにより原稿領域を検出する。しかしながら、原稿の背景色と裏当ての色とが類似している場合、画像処理装置は、入力画像から原稿領域を正しく検出することが困難である。
【0003】
背景と前景を有する画像データを認識する画像認識装置が開示されている。この画像認識装置は、画像濃度の分布解析によって背景色と前景色の境界閾値を計算して紙面領域の概形を計算し、紙面領域の境界辺付近において各辺に垂直な方向に二分探索を行うことで画像エッジを抽出し、4辺を構成する直線を計算する(特許文献1を参照)。
【0004】
また、原稿と背景との境であるエッジを判定する画像処理装置が開示されている。この画像処理装置は、画像データの第1の画素の輝度分散と、第1の画素の周囲の第2の画素の輝度分散との輝度分散差を算出する。この画像処理装置は、輝度分散差の絶対値が輝度分散差閾値を超えている場合又は輝度差の絶対値が輝度差閾値を超えている場合、第1の画素をエッジ画素と判定する(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-250387号公報
【文献】特開2017-163407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像処理装置では、原稿の背景色とスキャナの裏当ての色との組合せに関わらず、入力画像から原稿領域をより高精度に検出することが望まれている。
【0007】
画像処理装置、制御方法及び制御プログラムの目的は、入力画像から原稿領域をより高精度に検出することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一側面に係る画像処理装置は、入力画像を取得する取得部と、入力画像において原稿の裏当てに相当する領域内の画素の階調値の変動範囲を算出する変動範囲算出部と、変動範囲に基づいて閾値を決定する閾値決定部と、閾値を用いて入力画像から、原稿と裏当ての境界に相当するエッジ画素を抽出するエッジ画素抽出部と、エッジ画素から原稿領域を検出する原稿領域検出部と、入力画像から原稿領域に対応する領域を切り出した画像を出力する出力部と、を有する。
【0009】
また、実施形態の一側面に係る制御方法は、出力部を有する画像処理装置の制御方法であって、入力画像を取得し、入力画像において原稿の裏当てに相当する領域内の画素の階調値の変動範囲を算出し、変動範囲に基づいて閾値を決定し、閾値を用いて入力画像から、原稿と裏当ての境界に相当するエッジ画素を抽出し、エッジ画素から原稿領域を検出し、入力画像から原稿領域に対応する領域を切り出した画像を出力部に出力することを含む。
【0010】
また、実施形態の一側面に係る制御プログラムは、出力部を有する画像処理装置の制御プログラムであって、入力画像を取得し、入力画像において原稿の裏当てに相当する領域内の画素の階調値の変動範囲を算出し、変動範囲に基づいて閾値を決定し、閾値を用いて入力画像から、原稿と裏当ての境界に相当するエッジ画素を抽出し、エッジ画素から原稿領域を検出し、入力画像から原稿領域に対応する領域を切り出した画像を出力部に出力することを画像処理装置に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態によれば、画像処理装置、制御方法及び制御プログラムは、入力画像から原稿領域をより高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に従った画像処理システム1の概略構成を示す図である。
【
図2】第2記憶装置210及び第2CPU220の概略構成を示す図である。
【
図3】画像読取処理の動作を示すフローチャートである。
【
図4】検出処理の動作を示すフローチャートである。
【
図6】ノイズ除去画像について説明するためのグラフである。
【
図7】ノイズ除去画像700の一例を示す模式図である。
【
図8】矩形候補の各角の評価点について説明するための模式図である。
【
図9】変動範囲について説明するためのグラフである。
【
図10】補完直線について説明するための模式図である。
【
図11A】補完直線について説明するための模式図である。
【
図11B】補完直線について説明するための模式図である。
【
図12】処理装置230の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一側面に係る画像処理装置、制御方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、実施形態に従った画像処理システムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、画像処理システム1は、画像読取装置100と、情報処理装置200とを有する。
【0015】
画像読取装置100は、例えばスキャナ装置等である。画像読取装置100は、特に原稿を搬送させて撮像するADF(Auto Document Feeder)タイプのスキャナ装置である。画像読取装置100は、情報処理装置200に接続されている。情報処理装置200は、画像処理装置の一例であり、例えばパーソナルコンピュータ等である。
【0016】
画像読取装置100は、第1インタフェース装置101と、撮像装置102と、第1記憶装置110と、第1CPU(Control Processing Unit)120とを有する。
【0017】
第1インタフェース装置101は、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、情報処理装置200と電気的に接続して画像データ及び各種の情報を送受信する。また、第1インタフェース装置101の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース回路とを有する通信装置が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0018】
撮像装置102は、主走査方向に直線状に配列されたCCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える縮小光学系タイプの撮像センサを有する。さらに、撮像装置102は、光を照射する光源と、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅してアナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。撮像装置102において、撮像センサは、搬送される用紙の表面を撮像してアナログの画像信号を生成して出力し、A/D変換器は、このアナログの画像信号をA/D変換してデジタルの入力画像を生成して出力する。入力画像は、各画素データが、例えばRGB各色毎に8bitで表される計24bitのR(赤色)値、G(緑色)値、B(青色)値からなるカラー多値画像である。なお、CCDの代わりにCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)が用いられてもよい。
【0019】
第1記憶装置110は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、第1記憶装置110には、画像読取装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から公知のセットアッププログラム等を用いて第1記憶装置110にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disk read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disk read only memory)等である。また、第1記憶装置110は、撮像装置102により生成された入力画像等を記憶する。
【0020】
第1CPU120は、予め第1記憶装置110に記憶されているプログラムに基づいて動作する。なお、第1CPU120に代えて、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)等が用いられてよい。また、第1CPU120に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等が用いられてもよい。
【0021】
第1CPU120は、第1インタフェース装置101、撮像装置102及び第1記憶装置110等と接続され、これらの各部を制御する。第1CPU120は、撮像装置102の原稿読取制御、第1インタフェース装置101を介した情報処理装置200とのデータ送受信制御等を行う。
【0022】
情報処理装置200は、第2インタフェース装置201と、入力装置202と、表示装置203と、第2記憶装置210と、第2CPU220と、処理装置230とを有する。以下、情報処理装置200の各部について詳細に説明する。
【0023】
第2インタフェース装置201は、画像読取装置100の第1インタフェース装置101と同様のインタフェース回路を有し、情報処理装置200と画像読取装置100とを接続する。また、第2インタフェース装置201の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、無線LAN等の所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース回路とを有する通信装置が用いられてもよい。
【0024】
入力装置202は、キーボード、マウス等の入力装置及び入力装置から信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者の操作に応じた信号を第2CPU220に出力する。
【0025】
表示装置203は、出力部の一例である。表示装置203は、液晶、有機EL等から構成されるディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、第2記憶装置210と接続されて第2記憶装置210に保存されている画像データをディスプレイに表示する。
【0026】
第2記憶装置210は、画像読取装置100の第1記憶装置110と同様のメモリ装置、固定ディスク装置、可搬用の記憶装置等を有する。第2記憶装置210には、情報処理装置200の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて第2記憶装置210にインストールされてもよい。また、第2記憶装置210は、画像読取装置100から受信した入力画像、及び、処理装置230により入力画像に対して画像処理がなされた各種の処理画像等を記憶する。
【0027】
第2CPU220は、予め第2記憶装置210に記憶されているプログラムに基づいて動作する。なお、第2CPU220に代えて、DSP、LSI、ASIC、FPGA等が用いられてもよい。
【0028】
第2CPU220は、第2インタフェース装置201、入力装置202、表示装置203、第2記憶装置210及び処理装置230等と接続され、これらの各部を制御する。第2CPU220は、第2インタフェース装置201を介した画像読取装置100とのデータ送受信制御、入力装置202の入力制御、表示装置203の表示制御、処理装置230による画像処理の制御等を行う。また、第2CPU220は、閾値を用いて入力画像から原稿と裏当ての境界に相当するエッジ画素を抽出し、エッジ画素から原稿領域を検出する。
【0029】
処理装置230は、入力画像に対して所定の画像処理を実行する。処理装置230は、CPU、DSP、LSI、ASIC又はFPGA等で構成される。
【0030】
図2は、第2記憶装置210及び第2CPU220の概略構成を示す図である。
【0031】
図2に示すように第2記憶装置210には、取得プログラム211、ノイズ除去プログラム212、第2エッジ画素抽出プログラム213、第2原稿領域検出プログラム214、変動範囲算出プログラム215、閾値決定プログラム216、エッジ画素抽出プログラム217、原稿領域検出プログラム218及び出力制御プログラム219等の各プログラムが記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。第2CPU220は、第2記憶装置210に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、第2CPU220は、取得部221、ノイズ除去部222、第2エッジ画素抽出部223、第2原稿領域検出部224、変動範囲算出部225、閾値決定部226、エッジ画素抽出部227、原稿領域検出部228及び出力制御部229として機能する。
【0032】
図3は、画像読取装置100による画像読取処理の動作を示すフローチャートである。以下、
図3に示したフローチャートを参照しつつ、画像読取処理の動作を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め第1記憶装置110に記憶されているプログラムに基づき主に第1CPU120により画像読取装置100の各要素と協働して実行される。
【0033】
最初に、撮像装置102は、原稿を撮像した入力画像を生成し、第1記憶装置110に保存する(ステップS101)。
【0034】
次に、第1CPU120は、第1記憶装置110に保存された入力画像を第1インタフェース装置101を介して情報処理装置200に送信し(ステップS102)、一連のステップを終了する。
【0035】
図4は、情報処理装置200による検出処理の動作を示すフローチャートである。以下、
図4に示したフローチャートを参照しつつ、検出処理の動作を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め第2記憶装置210に記憶されているプログラムに基づき主に処理装置230により情報処理装置200の各要素と協同して実行される。
【0036】
最初に、取得部221は、入力画像を第2インタフェース装置201を介して画像読取装置100から取得し、第2記憶装置210に保存する(ステップS201)。
【0037】
【0038】
図5に示すように、入力画像500には、原稿501と、画像読取装置100の裏当て502とが写っている。原稿501の背景及び裏当て502は、両方とも黒色である。また、入力画像500には、縦筋503、504と、低周波ノイズ505とが写っている。撮像装置102と対向するガラス等の光透過部材上に、粉、埃、のり等の異物が付着すると、撮像装置102と対向する位置において原稿を移動させながら撮像した入力画像には、縦筋が発生する。また、撮像装置102において主走査方向に直線状に配列された撮像素子の個体差により、入力画像には主走査方向に特有の階調異常である低周波ノイズが発生する可能性がある。また、低周波ノイズは、画像読取装置100の設置環境の温度の影響により、又は、画像読取装置100が衝撃を受けることにより、撮像装置の撮像軸がずれることによって発生する可能性がある。
【0039】
なお、取得部221は、入力画像を、カラー多値画像から白黒の多値画像に変換してもよい。その場合、取得部221は、入力画像内の各画素毎に、各画素のR値、G値、B値の中の最大値を特定し、特定した最大値を各画素に対応する画素の階調値(輝度値)とする多値画像を生成する。
【0040】
次に、ノイズ除去部222は、入力画像において原稿の裏当てに相当する第1裏当て領域を特定する(ステップS202)。一般に、画像読取装置100は、搬送された原稿が撮像装置102の撮像位置に到達する前に、マージンをもって撮像を開始するため、入力画像には原稿が含まれないオーバースキャン領域が含まれる。
図5に示すように、入力画像において垂直方向の上端側(副走査方向において最初に撮像される側)に位置するオーバースキャン領域506には裏当てが写っている。ノイズ除去部222は、入力画像の上端から所定範囲(例えば3画素以内)のオーバースキャン領域、即ち上端から所定範囲内に位置する主走査方向のラインを第1裏当て領域として特定する。なお、ノイズ除去部222は、入力画像の下端から所定範囲の領域を第1裏当て領域として特定してもよい。
【0041】
次に、ノイズ除去部222は、第1裏当て領域に基づいて、入力画像からノイズを除去し、ノイズ除去画像を生成する(ステップS203)。ノイズ除去画像は、ノイズ除去部222によりノイズが除去された入力画像の一例である。ノイズ除去部222は、入力画像の主走査方向の各ラインの各画素の階調値から、原稿の裏当てに相当するラインの対応する画素の階調値の平均値を減算することにより、入力画像からノイズを除去する。
【0042】
図6は、ノイズ除去画像について説明するためのグラフである。
【0043】
図6のグラフ600~650において、横軸は画像内の水平位置を示し、縦軸は各水平位置の画素の階調値(輝度値)を示す。グラフ600、610、620は、
図5の第1裏当て領域内の主走査方向のラインL1、L2、L3の階調値を示す。グラフ600、610、620において、周囲と比較して階調値が高い領域601、602及び603は、それぞれ縦筋503、504及び低周波ノイズ505に対応している。グラフ600、610、620において、階調値がわずかに変動している領域604は、各ラインL1、L2、L3における高周波ノイズ成分に対応している。
【0044】
グラフ630は、各ラインL1、L2、L3の相互に対応する画素の階調値の平均値を示す。グラフ630に示すように、各ラインL1、L2、L3の相互に対応する画素の階調値の平均値を算出することにより、各ラインL1、L2、L3に含まれていた、領域604に示されるような高周波ノイズ成分が除去される。
【0045】
グラフ640は、
図5の第1裏当て領域外の主走査方向のラインL4の階調値を示す。グラフ640において、階調値が高い右側の領域605は、原稿501又は原稿501内のコンテンツに対応している。グラフ650は、ラインL4の各画素の階調値から、各ラインL1、L2、L3の相互に対応する画素の階調値の平均値を減算した減算値を示す。グラフ650に示すように、ラインL4の各画素の階調値から、各ラインL1、L2、L3の相互に対応する画素の階調値の平均値を減算することにより、原稿501の成分が残りつつ、縦筋503、504及び低周波ノイズ505の成分が除去される。
【0046】
図7は、ノイズ除去画像700の一例を示す模式図である。
【0047】
図7に示すように、ノイズ除去画像700において、原稿701の成分が残りつつ、
図5の入力画像500に含まれていた縦筋503、504及び低周波ノイズ505の成分が除去されている。
【0048】
なお、ノイズ除去部222は、原稿の裏当てに相当するラインとして単一のラインを使用し、入力画像の主走査方向の各ラインの各画素の階調値から、その単一のラインの対応する画素の階調値を減算することにより、入力画像からノイズを除去してもよい。また、ノイズ除去部222は、入力画像に平滑化フィルタを適用することにより、入力画像からノイズを除去してノイズ除去画像を生成してもよい。
【0049】
次に、第2エッジ画素抽出部223は、第2閾値を用いてノイズ除去画像から第2エッジ画素を抽出する(ステップS204)。第2閾値は、画像内の白色を表す階調値と黒色を表す階調値との差分に相当し、且つ、画像内のノイズの影響を受けない程度に十分に大きい値に設定される。特に、第2閾値は、後述する閾値より大きい値になるように設定される。
【0050】
第2エッジ画素抽出部223は、入力画像内の各水平ライン(主走査方向ライン)について、入力画像の左端から順に各画素と各画素の右側に隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素との階調値の差の絶対値(以下、隣接差分値と称する)を算出する。階調値は、輝度値又は色値である。第2エッジ画素抽出部223は、隣接差分値が第2閾値以上である最初(最も左側)の画素を原稿の左辺に対応する第2エッジ画素として抽出する。
【0051】
図7に示すように、ノイズ除去画像700の各水平ラインについて、左端710から順に各画素と各画素の右側の画素と隣接差分値が算出され、隣接差分値が第2閾値以上である最も左側の画素711、712が原稿の左辺に対応する第2エッジ画素として抽出される。
図7に示すように、第2エッジ画素として抽出される画素711、712は、原稿701と裏当て702の境界に相当する。
【0052】
同様に、第2エッジ画素抽出部223は、入力画像内の各水平ラインについて、入力画像の右端から順に各画素と各画素の左側の画素との隣接差分値を算出し、隣接差分値が第2閾値以上である最初の画素を原稿の右辺に対応する第2エッジ画素として抽出する。また、第2エッジ画素抽出部223は、入力画像内の各垂直ラインについて、入力画像の上端から順に各画素と各画素の下側の画素との隣接差分値を算出し、隣接差分値が第2閾値以上である最初の画素を原稿の上辺に対応する第2エッジ画素として抽出する。また、第2エッジ画素抽出部223は、入力画像内の各垂直ラインについて、入力画像の下端から順に各画素と各画素の上側の画素との隣接差分値を算出し、隣接差分値が第2閾値以上である最初の画素を原稿の下辺に対応する第2エッジ画素として抽出する。
【0053】
なお、第2エッジ画素抽出部223は、各画素の水平又は垂直方向の両隣の画素又は所定距離だけ離れた二つの画素の輝度値の差の絶対値を隣接差分値として算出してもよい。また、第2エッジ画素抽出部223は、全ての水平又は垂直ラインについて第2エッジ画素を抽出せずに、所定間隔毎に第2エッジ画素を抽出してもよい。
【0054】
また、第2エッジ画素抽出部223は、原稿の左辺及び右辺にそれぞれ対応する第2エッジ画素の内、その水平位置が、垂直方向に隣接する第2エッジ画素の水平位置から所定距離以上離れている第2エッジ画素を除去する。同様に、第2エッジ画素抽出部223は、原稿の上辺及び下辺に対応する第2エッジ画素の内、その垂直位置が、水平方向に隣接する第2エッジ画素の垂直位置から所定距離以上離れている第2エッジ画素を除去する。
【0055】
図7に示す例では、水平位置が相互に近い画素群712は、第2エッジ画素から除去されず、水平位置が画素群712の水平位置から離れている画素711が、第2エッジ画素から除去される。
【0056】
次に、第2原稿領域検出部224は、第2エッジ画素抽出部223が抽出した第2エッジ画素から、複数の直線を検出する(ステップS205)。第2原稿領域検出部224は、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応する第2エッジ画素から、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応する直線を検出する。第2原稿領域検出部224は、最小二乗法を用いて直線を検出する。なお、第2原稿領域検出部224は、ハフ変換を用いて直線を検出してもよい。
【0057】
次に、第2原稿領域検出部224は、検出した複数の直線から原稿領域を検出する(ステップS206)。
【0058】
第2原稿領域検出部224は、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応する四本の直線から構成される複数の矩形候補を抽出する。第2原稿領域検出部224は、まず原稿の左辺に対応する直線の中から直線を一つ選択し、原稿の右辺に対応する直線の中から、選択した直線と略平行(例えば±3°以内)する直線を抽出する。次に、第2原稿領域検出部224は、原稿の上辺及び下辺にそれぞれ対応する直線の中から、原稿の左辺に対応する直線から選択した直線と略直交する(例えば90°に対して±3°以内)直線を抽出する。
【0059】
第2原稿領域検出部224は、検出した全ての直線について、上記の条件を満たす直線の全ての組合せを抽出し、抽出した各組合せから構成される矩形を矩形候補として抽出する。第2原稿領域検出部224は、抽出した各矩形候補について、歪み度合いを算出する。第2原稿領域検出部224は、矩形候補の各辺から所定距離(例えば2mmに相当する距離)内にある全ての画素の数に対する所定距離内にある第2エッジ画素の数の割合を算出し、1からその割合を減算した減算値を歪み度合いとして算出する。または、第2原稿領域検出部224は、抽出した各矩形候補について、矩形候補の各角の角らしさの度合いを表す評価点を算出し、その評価点の逆数を歪み度合いとして算出する。
【0060】
図8は、矩形候補の各角の評価点について説明するための模式図である。
【0061】
図8に示す画像800において、点801は矩形候補の角を表し、直線802、803は矩形候補の各辺を表す。この直線802、803の端部が相互に接している場合は、点801は矩形の角らしいと考えられるが、直線802、803の端部が接していない場合又は直線802、803が交差している場合は、点801は矩形の角らしくないと考えられる。
【0062】
評価点は0点を基準とする。第2原稿領域検出部224は、角801の近傍における辺802から所定距離内の領域804において、水平方向のライン毎に第2エッジ画素が存在するか否かを判定し、水平方向のラインに第2エッジ画素が存在する場合、評価点に1点を加算する。なお、各角の近傍の範囲及び各辺からの所定距離は、画像処理システム1が使用される環境等に応じて適宜定められ、例えば各角から5mmに相当する距離内の範囲及び各辺から2mmに相当する距離に設定することができる。同様に、第2原稿領域検出部224は、角801の近傍における辺803から所定距離内の領域805において、垂直方向のライン毎にエッジ画素が存在するか否かを判定し、垂直方向のラインにエッジ画素が存在する場合、評価点に1点を加算する。
【0063】
また、第2原稿領域検出部224は、角801の近傍における辺802の延長線から所定距離内の領域806において、水平方向のライン毎にエッジ画素が存在するか否かを判定し、水平方向のラインにエッジ画素が存在する場合、評価点から1点を減算する。同様に、第2原稿領域検出部224は、角801の近傍における辺803の延長線から所定距離内の領域807において、垂直方向のライン毎にエッジ画素が存在するか否かを判定し、垂直方向のラインにエッジ画素が存在する場合、評価点から1点を減算する。第2原稿領域検出部224は、評価点の取り得る最低値が0、取り得る最高値が1となるように評価点を正規化した値を算出し、その評価点の逆数を歪み度合いとして算出する。
【0064】
第2原稿領域検出部224は、抽出した矩形候補の内、歪み度合いが所定閾値以上である矩形候補を除去する。これにより、第2原稿領域検出部224は、原稿の境界を明確に表している直線により構成される原稿領域を検出することができる。また、第2原稿領域検出部224は、抽出した矩形候補について面積を算出し、面積が所定値未満である矩形候補を除去する。第2原稿領域検出部224は、残った矩形候補の中で最も面積が大きい矩形候補を原稿領域として検出する。一方、第2原稿領域検出部224は、矩形候補が一つも残らなかった場合、原稿領域を検出しない。なお、第2原稿領域検出部224は、相互に重複しない複数の矩形候補を抽出した場合、抽出した各検出候補をそれぞれ原稿領域として検出してもよい。
【0065】
次に、第2原稿領域検出部224は、原稿領域が検出されたか否かを判定する(ステップS207)。原稿領域が検出された場合、第2原稿領域検出部224は、処理をステップS215へ移行する。
【0066】
一方、原稿領域が検出されなかった場合、変動範囲算出部225は、ノイズ除去画像から、ノイズ除去画像において原稿の裏当てに相当する第2裏当て領域内の画素の階調値の変動範囲を算出する(ステップS208)。
図7に示すように、変動範囲算出部225は、入力画像の上端から所定範囲のオーバースキャン領域706を、原稿の裏当てに相当する第2裏当て領域とみなす。変動範囲算出部225は、ノイズ除去画像において入力画像内の第1裏当て領域に対応する領域を第2裏当て領域とみなしてもよい。なお、変動範囲算出部225は、ノイズ除去画像において入力画像内の第1裏当て領域に対応しないオーバースキャン領域を第2裏当て領域とみなしてもよい。
【0067】
図9は、変動範囲について説明するためのグラフである。
【0068】
図9のグラフ900において、横軸は階調値(輝度値)を示し、縦軸はノイズ除去画像の第2裏当て領域内で各階調値を有する画素の数を示す。
図9に示すように、グラフ900は、各階調値の平均値を中心として略正規分布の形状を有している。なお、入力画像の主走査方向の各ラインの各画素の階調値から、原稿の裏当てに相当するラインの対応する画素の階調値を減算することによりノイズ除去画像が生成されている場合、各階調値の平均値は略0である。第2裏当て領域内の画素の階調値の変動範囲Rは、第2裏当て領域内の各画素のノイズ量に相当する。
【0069】
変動範囲算出部225は、第2裏当て領域内の画素の階調値の標準偏差に基づいて変動範囲を算出する。変動範囲算出部225は、第2裏当て領域内の画素の階調値の標準偏差を算出し、算出した標準偏差に所定係数(例えば3又は4)を乗算した値を変動範囲として算出する。正規分布において、平均値を中心とした標準偏差の1倍、2倍、3倍及び4倍の幅に入るデータの割合は、それぞれ68.27%、95.45%、99.74%、99.99%である。したがって、変動範囲算出部225は、標準偏差の所定倍を変動範囲とすることにより、原稿の裏当てに相当する画素のほとんど全てが含まれるように、変動範囲を算出することができる。
【0070】
次に、閾値決定部226は、変動範囲算出部225が算出した変動範囲に基づいて、閾値を決定する(ステップS209)。閾値決定部226は、変動範囲の大きさを閾値として決定する。なお、閾値決定部226は、変動範囲の大きさに、所定の係数を乗算した値、又は、所定のオフセット値を加算した値を閾値として決定してもよい。これにより、閾値決定部226は、閾値として、原稿の裏当てに相当するほとんど全ての画素の階調値が属する値域の幅を設定することができる。
【0071】
次に、エッジ画素抽出部227は、閾値決定部226が決定した閾値を用いてノイズ除去画像から、原稿と裏当ての境界に相当するエッジ画素を抽出する(ステップS210)。エッジ画素抽出部227は、第2閾値の代わりに閾値を用いて、第2エッジ画素抽出部223と同様の処理を実行することにより、エッジ画素を抽出する。
【0072】
このように、エッジ画素抽出部227は、第2原稿領域検出部224により原稿領域が検出されなかった場合に限り、閾値を用いてエッジ画素を抽出する。閾値は、原稿の裏当てに相当するほとんど全ての画素の階調値が属する値域の幅に設定されるため、エッジ画素抽出部227は、原稿の裏当てに相当する画素に対して、わずかに階調値が変動する画素をエッジ画素として抽出することができる。したがって、エッジ画素抽出部227は、第2閾値では原稿と裏当ての境界を識別できない程、原稿の背景色と裏当ての色とが類似している場合でも、原稿と裏当ての境界を良好に検出することができる。
【0073】
次に、原稿領域検出部228は、エッジ画素抽出部227が抽出したエッジ画素から、複数の直線を検出する(ステップS205)。原稿領域検出部228は、第2原稿領域検出部224と同様にして、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応するエッジ画素から、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応する直線を検出する。
【0074】
次に、原稿領域検出部228は、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応する四つの直線を検出したか否かを判定する(ステップS206)。原稿領域検出部228は、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応する四つの直線を検出した場合、処理をステップS214へ移行する。
【0075】
一方、原稿領域検出部228は、四つの直線を検出せず、所定方向に延伸する少なくとも二つの直線を検出した場合、検出した少なくとも二つの直線に基づいて、補完直線を生成する(ステップS213)。原稿領域検出部228は、所定方向に延伸する二つの直線を検出し且つ所定方向と直交する方向に延伸する直線が二つ検出されなかった場合、検出した二つの直線に基づいて、検出されなかった直線を補完するように、補完直線を生成する。原稿領域検出部228は、検出した二つの直線のそれぞれにおいて、検出されなかった直線側の端部を抽出し、各直線から抽出した各端部をつないだ直線を補完直線として生成する。所定方向は、主走査方向又は主走査方向に対して45°未満の角度を有する方向である。なお、所定方向は、副走査方向又は副走査方向に対して45°未満の角度を有する方向でもよい。
【0076】
図10は、補完直線について説明するための模式図である。
【0077】
図10に示す画像1000は、エッジ画素に対応する画素を有効画素とした画像である。画像1000からは、原稿の上辺に対応するエッジ画素から原稿の上辺に対応する直線1001が検出され、原稿の下辺に対応するエッジ画素から原稿の下辺に対応する直線1002が検出される。しかしながら、画像1000では、原稿の左辺及び右辺に対応するエッジ画素が抽出されておらず、画像1000からは、原稿の左辺及び右辺に対応する直線は検出されない。この場合、原稿領域検出部228は、原稿の上辺に対応する直線1001から左端1003及び右端1004を抽出し、原稿の下辺に対応する直線1002から左端1005及び右端1006を抽出する。原稿領域検出部228は、左端1003及び左端1005をつないだ直線1007と、右端1004及び右端1006をつないだ直線1008とを補完直線として生成する。
【0078】
【0079】
図11A、
図11Bに示すように、画像読取装置100の搬送経路には、撮像装置102に加えて、光源103、反射板104、裏当て105及び光透過部材106等が設けられている。
【0080】
撮像装置102は、光透過部材106を挟んで裏当て105の反対側に設けられる。光源103は、光透過部材106を挟んで裏当て105の反対側に、且つ、撮像装置102より原稿搬送方向Aの下流側に設けられる。光源103は、撮像装置102の位置に搬送された原稿に向けて光を照射する。特に、光源103は、搬送される原稿と直交する方向に対して傾けて光を照射する。反射板104は、光透過部材106を挟んで裏当て105の反対側に、且つ、撮像装置102より原稿搬送方向Aの上流側に設けられる。反射板104は、光源103から照射され且つ原稿により反射された光を撮像装置102の方向に反射させる。
【0081】
裏当て105は、光透過部材106の下方に且つ撮像装置102、光源103及び反射板104と対向する位置に配置される。裏当て105の撮像装置102と対向する面は黒色又は白色を有している。光透過部材106は、透明のガラス又はプラスチックにより形成され、原稿搬送路の一部を形成する。
【0082】
裏当て105の撮像装置102と対向する面が黒色であり、且つ、画像読取装置100の搬送経路に表面が黒色であるカードCが搬送される場合、撮像装置102により撮像される裏当て105及びカードCの表面は両方とも黒色である。しかしながら、一般に、表面が黒色であるカードであっても、その側面は白色を有している場合が多い。
【0083】
図11Aに示すように、カードCの先端が撮像装置102の撮像位置に到達したとき、光源103からカードCに向けて照射された光(B1)は、カードCの先端側の側面で反射して撮像装置102の方向に向かう(B2)。また、光源103からカードCに向けて照射された光(B1)は、反射板104の方向に向かい(B3)、反射板104で反射して撮像装置102の方向に向かう(B4)。そのため、
図10に示すように、カードCを撮像した画像内で、カードCの先端側の側面に対応する位置には、白色の直線1001が写る。
【0084】
また、
図11Bに示すように、カードCの後端が撮像装置102の撮像位置に到達したとき、光源103から反射板104に向けて照射された光(B5)は、反射板104で反射してカードCの方向に向かう(B6)。この光は、カードCの後端側の側面で反射して反射板104の方向に戻り(B7)、反射板104で反射して撮像装置102の方向に向かう(B8)。そのため、
図10に示すように、カードCを撮像した画像内で、カードCの後端側の側面に対応する位置には、白色の直線1002が写る。
【0085】
一方、カードCの原稿搬送方向Aに沿った左端及び右端の側面には、光源103からの光が直接に照射されないため、
図10に示すように、カードCを撮像した画像内で、カードCの左端及び右端の側面に対応する位置には、白色の直線が写らない。このように、画像内で副走査方向に延伸する直線は検出されにくいが、主走査方向に延伸する直線は検出され易い。原稿領域検出部228は、主走査方向に延伸する直線を検出し且つ副走査方向に延伸する直線を検出しなかった場合、検出した直線を用いて、検出しなかった直線を補完する。
【0086】
なお、光源103が、撮像装置102より原稿搬送方向Aの上流側に設けられ、反射板104が、撮像装置102より原稿搬送方向Aの下流側に設けられてもよい。その場合も、カードCを撮像した画像には、カードCの上辺に対応する直線と、カードCの下辺に対応する直線とが写るため、原稿領域検出部228は、補完直線を生成することができる。
【0087】
次に、原稿領域検出部228は、検出した直線から原稿領域を検出する(ステップS214)。原稿領域検出部228は、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応する四つの直線を検出した場合、その四つの直線からなる矩形を原稿領域として検出する。一方、原稿領域検出部228は、所定方向に延伸する少なくとも二つの直線を検出した場合、検出した少なくとも二つの直線を用いて原稿領域を検出する。その場合、原稿領域検出部228は、所定方向に延伸する二つの直線と、その二つの直線から生成した補完直線とからなる矩形を原稿領域として検出する。
【0088】
なお、原稿の左辺、右辺、上辺及び下辺にそれぞれ対応する各直線が複数検出されている場合、原稿領域検出部228は、第2原稿領域検出部224と同様にして、複数の矩形候補を抽出し、抽出した矩形候補の中から原稿領域を検出してもよい。また、原稿領域検出部228は、第2原稿領域検出部224と同様に、相互に重複しない複数の矩形候補を抽出した場合、抽出した各検出候補をそれぞれ原稿領域として検出してもよい。
【0089】
次に、原稿領域検出部228は、入力画像から、検出した原稿領域に対応する領域を切出した切出し画像を生成し、第2記憶装置210に記憶する(ステップS215)。なお、入力画像がカラー多値画像から白黒の多値画像に変換されている場合、原稿領域検出部228は、カラー多値画像の入力画像から切出し画像を生成する。また、原稿領域検出部228は、複数の原稿領域を検出した場合、検出した原稿領域毎に、切出し画像を生成する。また、原稿領域検出部228は、原稿領域が検出されなかった場合、切出し画像を生成せずに、その旨を表示装置203に表示して利用者に通知する。
【0090】
次に、出力制御部229は、切出し画像を表示装置203に表示することにより出力し(ステップS213)、一連のステップを終了する。なお、出力制御部229は、切出し画像を不図示の通信装置を介して不図示のサーバ等に送信することにより出力してもよい。
【0091】
なお、情報処理装置200は、ステップS202~S203の処理を省略し、入力画像から、第2エッジ画素の抽出、変動範囲の算出、エッジ画素の抽出、直線の検出及び原稿領域の検出を実行してもよい。また、情報処理装置200は、ステップS204~S207の処理を省略し、常に閾値を用いてエッジ画素を抽出してもよい。また、情報処理装置200は、ステップS212~S213の処理を省略し、四つの直線が検出されなかった場合には原稿領域を検出しなくてもよい。これらにより、情報処理装置200は、より短時間に原稿領域を検出することが可能となり、原稿領域の検出処理の処理負荷を低減することが可能となる。
【0092】
また、閾値及び第2閾値は、隣接差分値と比較するための値でなく、各画素の階調値と比較するための値としてもよい。その場合、第2閾値は、画像内の白色を表す階調値と黒色を表す階調値の間の値に設定される。第2エッジ画素抽出部223は、各水平又は垂直ラインについて、階調値が第2閾値未満であり、隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素の階調値が第2閾値以上である最初の画素を第2エッジ画素として抽出する。また、閾値決定部226は、第2裏当て領域内の画素の階調値と、変動範囲とに基づいて閾値を決定する。例えば、閾値決定部226は、第2裏当て領域内の画素の階調値の平均値又は中央値に、変動範囲の大きさを加算した値を閾値として決定する。エッジ画素抽出部227は、各水平又は垂直ラインについて、階調値が閾値未満であり、隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素の階調値が閾値以上である最初の画素をエッジ画素として抽出する。
【0093】
以上詳述したように、
図4に示したフローチャートに従って動作することによって、情報処理装置200は、入力画像において裏当てに相当する画素の階調値の変動範囲に基づいて閾値を決定し、決定した閾値を用いてエッジ画素を抽出する。これにより、情報処理装置200は、原稿の背景色と裏当ての色が近い場合でも入力画像において原稿と裏当ての境界を良好に検出することが可能となり、入力画像から原稿領域をより高精度に検出することが可能となった。
【0094】
また、入力画像において裏当てに相当する画素の階調値は、画像読取装置100の撮像装置102等の部品のばらつき又は設置環境の温度の影響等により変動する。情報処理装置200は、入力画像において裏当てに相当する画素の階調値の変動範囲に基づいて閾値を決定することにより、画像読取装置100の部品のばらつき又は設置環境の温度の影響を吸収(緩和)することが可能となる。
【0095】
また、縦筋及び低周波ノイズ等のノイズが除去されていない入力画像から閾値が決定される場合、ノイズ(外れ値)の影響を受けて、閾値が大きい値に設定される可能性がある。その場合、閾値が、原稿の背景色の階調値と裏当ての階調値の差より大きい値に設定され、原稿と裏当ての境界が検出されない可能性がある。情報処理装置200は、縦筋及び低周波ノイズを除去したノイズ除去画像から閾値を決定することにより、ノイズ(外れ値)の影響を受けず、裏当てに対応する画素が取り得る階調値の変動範囲に閾値を設定することができる。これにより、情報処理装置200は、原稿の背景色と裏当ての色が近い場合でも、原稿と裏当ての境界を良好に検出することが可能となる。
【0096】
また、情報処理装置200は、縦筋及び低周波ノイズを除去したノイズ除去画像から第2閾値を決定し、第2エッジ画素を抽出することにより、縦筋又は低周波ノイズを、原稿と裏当ての境界として誤って検出することを抑制することが可能となる。
【0097】
また、情報処理装置200は、最初に、第2閾値を用いて原稿領域を検出し、原稿領域が検出されなかった場合に限り、第2閾値より小さい閾値を用いて原稿領域を検出する。これにより、情報処理装置200は、原稿の背景色が裏当ての色と異なる場合は、裏当ての色に近いノイズをエッジ画素として誤検出することを抑制しつつ、原稿の背景色が裏当ての色と近い場合も、原稿と裏当ての境界を良好に検出することができる。
【0098】
図12は、他の実施形態に係る情報処理装置における処理装置230の概略構成を示すブロック図である。
【0099】
処理装置230は、CPU220の代わりに、検出処理を実行する。処理装置230は、取得回路231、ノイズ除去回路232、第2エッジ画素抽出回路233、第2原稿領域検出回路234、変動範囲算出回路235、閾値決定回路236、エッジ画素抽出回路237、原稿領域検出回路238及び出力制御回路239等を有する。
【0100】
取得回路231は、取得部の一例であり、取得部221と同様の機能を有する。取得回路231は、入力画像を第2インタフェース装置201を介して画像読取装置100から取得し、第2記憶装置210に保存する。
【0101】
ノイズ除去回路232は、ノイズ除去部の一例であり、ノイズ除去部222と同様の機能を有する。ノイズ除去回路232は、第2記憶装置210から入力画像を読み出し、入力画像からノイズ除去画像を生成し、第2記憶装置210に保存する。
【0102】
第2エッジ画素抽出回路233は、第2エッジ画素抽出部の一例であり、第2エッジ画素抽出部223と同様の機能を有する。第2エッジ画素抽出回路233は、第2記憶装置210からノイズ除去画像を読み出し、ノイズ除去画像から第2エッジ画素を抽出し、抽出結果を第2記憶装置210に保存する。
【0103】
第2原稿領域検出回路234は、第2原稿領域検出部の一例であり、第2原稿領域検出部224と同様の機能を有する。第2原稿領域検出回路234は、第2記憶装置210からノイズ除去画像と、第2エッジ画素の抽出結果とを読み出し、第2エッジ画素から原稿領域を検出し、検出結果を第2記憶装置210に保存する。
【0104】
変動範囲算出回路235は、変動範囲算出部の一例であり、変動範囲算出部225と同様の機能を有する。変動範囲算出回路235は、第2記憶装置210からノイズ除去画像を読み出し、ノイズ除去画像の第2裏当て領域内の画素の階調値の変動範囲を算出し、第2記憶装置210に保存する。
【0105】
閾値決定回路236は、閾値決定部の一例であり、閾値決定部226と同様の機能を有する。閾値決定回路236は、第2記憶装置210から変動範囲を読み出し、変動範囲に基づいて閾値を決定し、第2記憶装置210に保存する。
【0106】
エッジ画素抽出回路237は、エッジ画素抽出部の一例であり、エッジ画素抽出部227と同様の機能を有する。エッジ画素抽出回路237は、第2記憶装置210からノイズ除去画像及び閾値を読み出し、閾値を用いてノイズ除去画像からエッジ画素を抽出し、抽出結果を第2記憶装置210に保存する。
【0107】
原稿領域検出回路238は、原稿領域検出部の一例であり、原稿領域検出部228と同様の機能を有する。原稿領域検出回路238は、第2記憶装置210からノイズ除去画像と、エッジ画素の抽出結果とを読み出し、エッジ画素から原稿領域を検出して切出し画像を生成し、第2記憶装置210に保存する。
【0108】
出力制御回路239は、出力制御部の一例であり、出力制御部229と同様の機能を有する。出力制御回路239は、第2記憶装置210から切出し画像を読み出し、表示装置203に出力する。
【0109】
以上詳述したように、情報処理装置は、処理装置230を用いる場合も、入力画像から原稿領域をより高精度に検出することが可能となった。
【0110】
以上、好適な実施形態について説明してきたが、実施形態はこれらに限定されない。例えば、画像読取装置100と情報処理装置200の機能分担は、
図1に示す画像処理システム1の例に限られず、画像読取装置100及び情報処理装置200の各部を画像読取装置100と情報処理装置200の何れに配置するかは適宜変更可能である。または、画像読取装置100と情報処理装置200を一つの装置で構成してもよい。
【0111】
例えば、画像読取装置100の第1記憶装置110が、情報処理装置200の第2記憶装置210に記憶された各プログラムを記憶し、画像読取装置100の第1CPU120が、情報処理装置200の第2CPU120により実現される各部として動作してもよい。また、画像読取装置100が、情報処理装置200の処理装置230と同様の処理装置を有してもよい。
【0112】
その場合、画像読取装置100は表示装置203と同様の表示装置を有する。検出処理は画像読取装置100で実行されるため、ステップS102、S201の入力画像の送受信処理は省略される。ステップS202~S216の各処理は、画像読取装置100の第1CPU120又は処理装置によって実行される。これらの処理の動作は、情報処理装置200の第2CPU220又は処理装置230によって実行される場合と同様である。
【0113】
また、画像処理システム1において、第1インタフェース装置101と第2インタフェース装置201は、インターネット、電話回線網(携帯端末回線網、一般電話回線網を含む)、イントラネット等のネットワークを介して接続してもよい。その場合、第1インタフェース装置101及び第2インタフェース装置201に、接続するネットワークの通信インタフェース回路を備える。また、その場合、クラウドコンピューティングの形態で画像処理のサービスを提供できるように、ネットワーク上に複数の情報処理装置を分散して配置し、各情報処理装置が協働して、検出処理等を分担するようにしてもよい。これにより、画像処理システム1は、複数の画像読取装置が読み取った入力画像について、効率よく検出処理を実行できる。
【符号の説明】
【0114】
1 画像処理システム
200 情報処理装置
221 取得部
222 ノイズ除去部
223 第2エッジ画素抽出部
224 第2原稿領域検出部
225 変動範囲算出部
226 閾値決定部
227 エッジ画素抽出部
228 原稿領域検出部
229 出力制御部