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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】コントローラ
(51)【国際特許分類】
   G05D 3/10 20060101AFI20221130BHJP
   G01M 7/02 20060101ALN20221130BHJP
【FI】
G05D3/10 Z
G01M7/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018197265
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020064540
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-05-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】芳村 友起
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-296305(JP,A)
【文献】特開平10-092057(JP,A)
【文献】特開2002-132248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 3/10
G01M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された数値によってシリンダ装置シリンダ変位量を制御可能なコントローラであって、
回転操作される回転操作インターフェースと、
前記回転操作インターフェースの回転操作量を検知する検知器と、
単位時間当たりの前記回転操作量が第一の閾値以上と判断している間は、前記シリンダ装置の前記シリンダ変位量を指示する前記数値の単位時間あたりの増減量を予め設定される第一の値とするとともに、単位時間当たりの前記回転操作量が前記第一の閾値未満と判断している間は、前記シリンダ装置の前記シリンダ変位量を指示する前記数値を前記回転操作量に比例して増減させ、単位時間当たりの前記回転操作量が前記第一の閾値より大きな第二の閾値以上と判断している間は、前記シリンダ装置の前記シリンダ変位量を指示する前記数値の単位時間当たりの増減量を前記第一の値より大きな予め設定される第二の値とする処理部とを備え
単位時間当たりの前記回転操作量が前記第一の閾値未満の範囲の前記シリンダ装置の最大速度は、前記増減量が前記第一の値の時の前記シリンダ装置の伸縮速度よりも小さくなるように設定されている
ことを特徴とするコントローラ。
【請求項2】
前記処理部は、前記検知器によって複数回検知された単位時間当たりの前記回転操作量から平均値を算出し、前記平均値と前記各閾値とを比較して、前記平均値が前記各閾値未満か否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビデオテープレコーダに利用されるコントローラの中には、ジョグダイヤル等の回転操作インターフェースを回転操作して受信チャンネルの設定値を変更したり、録画済のビデオテープの再生動作を制御したりするものがある(特許文献1)。
【0003】
より詳しくは、受信チャンネルの設定値は、ジョグダイヤルの単位回転角ごとに予め設定された値ずつ増減するとともに、その単位回転角当たりの増減値は、ジョグダイヤルの回転速度の区分に応じて決められており、ジョグダイヤルの回転速度が高速側の区分にあるほど大きな値に設定されている。その一方、ビデオテープの再生速度は、ジョグダイヤルの回転速度の区分に応じて予め決められており、ジョグダイヤルの回転速度が高速側の区分にあるほど高速で再生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-160859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のコントローラにおける受信チャンネル設定値の変更制御、又はビデオテープの再生速度制御を利用して、シリンダ装置、又はアクチュエータ等(以下、シリンダ装置等という)の質量をもつ物体の変位を制御しようとすると、以下のような問題が生じる可能性がある。
【0006】
まず、例えば、振動試験機等に利用されて伸縮作動するシリンダ装置の変位を制御するのに従来の受信チャンネル設定値の変更制御を適用する場合について考える。この場合、シリンダ装置の変位を指示する数値がジョグダイヤルの単位回転角ごとに所定の増減値ずつ変更されるとともに、その増減値がジョグダイヤルの回転速度が高速側の区分にあるほど大きな値に設定される。
【0007】
このような場合には、ジョグダイヤルを操作する指が滑ったり、ノイズが乗ったりすると、シリンダ装置の操作量を指示する数値が短時間で極端に大きくなってシリンダ装置が急激に伸長する(飛び出す)虞がある。また、シリンダ装置の伸縮速度には、物理上及びソフト上の限界があり、シリンダ装置の伸縮速度をフィードバックして積分補償をする場合にシリンダ装置の限界速度を超える数値の入力があると、ジョグダイヤルの回転を停止したにも関わらず指示された操作量となるまでシリンダ装置が動き続ける虞もある。
【0008】
このように、従来の受信チャンネル設定値の変更制御を利用してシリンダ装置等の質量のある物体の変位を制御しようとすると、シリンダ装置等の制御対象の動きが意図しない動きになる虞がある。このため、そのような制御をシリンダ装置等の質量をもつ物体の変位制御に適用すると、シリンダ装置等にセットされた部材が破損する可能性がある。
【0009】
次に、前記シリンダ装置の変位を制御するのに従来のビデオテープの再生速度制御を適用する場合について考える。この場合、ジョグダイヤルの回転速度の区分ごとにシリンダ装置の伸縮速度が設定されるとともに、ジョグダイヤルの回転速度が高速側の区分にあるほどシリンダ装置の伸縮速度が速い速度になるように設定される。
【0010】
このような場合に、ジョグダイヤルを低速で回転して、シリンダ装置の伸縮量を微調整する場合、設定されているシリンダ装置の伸縮速度が遅い場合には、微調整に時間がかかる。そうかといって、ジョグダイヤルを低速で回転した場合のシリンダ装置の伸縮速度を速く設定したのでは、シリンダ装置を任意の位置で止められずにシリンダ装置にセットされた部材が破損する可能性がある。
【0011】
このように、従来のビデオテープの再生速度制御を利用してシリンダ装置等の質量のある物体の変位を制御しようとすると、ジョグダイヤルの回転速度が低速側の区分にある場合における制御対象の動作速度の設定が難しい。このため、制御対象の変位を微調整するのに時間がかかったり、微調整が難しくなったりする場合がある。
【0012】
そこで、本発明は、これらの問題を解消し、シリンダ装置の動きが意図しない動きになるのを防止できるとともに、シリンダ装置の微調整を容易且つ速やかにできるコントローラの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するコントローラの処理部は、回転操作インターフェースの単位時間当たりの回転操作量が第一の閾値以上と判断している間は、シリンダ装置シリンダ変位量を指示する数値の単位時間あたりの増減量を予め設定される第一の値とし、回転操作インターフェースの単位時間当たりの回転操作量が第一の閾値未満と判断している間は、シリンダ装置シリンダ変位量を指示する数値を回転操作インターフェースの回転操作量に比例して増減させ、単位時間当たりの回転操作量が第一の閾値より大きな第二の閾値以上と判断している間は、シリンダ装置のシリンダ変位量を指示する数値の単位時間当たりの増減量を第一の値より大きな予め設定される第二の値とし、回転操作インターフェースの単位時間当たりの回転操作量が第一の閾値未満の範囲のシリンダ装置の最大速度は、前記増減量が前記第一の値の時のシリンダ装置の伸縮速度よりも小さくなるように設定されている
【0014】
前記構成によれば、回転操作インターフェースを操作する指が滑ったりノイズが乗ったりしても、シリンダ装置シリンダ変位量を指示する数値の変化量が大きくなり過ぎるのを防止できる。また、シリンダ装置の限界速度を超えた操作指令がシリンダ装置に出力されるのも防止できる。このため、シリンダ装置の動きが意図しない動きになるのを防止できる。
【0015】
さらに、前記構成によれば、回転操作インターフェースを前記第一の閾値未満となる低速で回転している間は、シリンダ装置シリンダ変位量を指示する数値を回転操作インターフェースの回転操作量に比例して大きくできる。これにより、シリンダ装置の動きを使用者(回転操作インターフェースを操作する者)の直観にあった動きにできるので、シリンダ装置の微調整を容易且つ速やかにできる。また、このようにすると、シリンダ装置のシリンダ変位量を指示する数値を大幅に変更したい場合と細かく変更したい場合の数値の増減幅に大きな差があっても、その数値を目的の値に容易且つ速やかに設定できる。
【0016】
なお、前記コントローラでは、処理部が検知器によって複数回検知された回転操作インターフェースの単位時間当たりの回転操作量から平均値を算出し、その平均値と閾値とを比較して、平均値がその閾値未満か否かを判断してもよい。このようにすると、シリンダ装置シリンダ変位量を指示する数値の増減処理の方法が短時間のうちに頻繁に切り換わり、シリンダ装置の動きが不安定になるのを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコントローラによれば、シリンダ装置の動きが意図しない動きになるのを防止できるとともに、シリンダ装置の微調整を容易且つ速やかにできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係るコントローラと、このコントローラの制御対象であるシリンダ装置を簡略的に示した正面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るコントローラの制御ブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るコントローラの処理部の処理手順を示したフローチャートである。
図4】本発明の一実施の形態に係るコントローラのジョグダイヤルの回転速度と、制御対象であるシリンダ装置の伸縮速度との関係を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態のコントローラについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品(部位)を示す。
【0021】
図1に示す本発明の一実施の形態に係るコントローラ1は、振動試験機等に利用され、供試体をセットするテーブルTを駆動するシリンダ装置Cを伸縮操作して、テーブルTの位置合わせをしたり、供試体に振動を与えたりするのに利用されている。なお、本発明に係るコントローラは、振動試験機以外の試験機、又は試験機以外に利用できるのは勿論、その制御対象はシリンダ装置Cに限られず、モータ等の他のアクチュエータであってもよい。
【0022】
つづいて、本実施の形態に係るコントローラ1の具体的な構成について説明する。図1に示すように、コントローラ1は、筐体2と、この筐体2の正面に設けられる表示部3、及びジョグダイヤル4とを備える。表示部3には、シリンダ装置Cの変位(シリンダ変位)を示す数値Nが表示される。そして、ジョグダイヤル4を回転操作すると、その数値Nが増減するとともに、その数値Nが変化した分シリンダ装置Cが伸縮してテーブルTの位置が変更される。
【0023】
より具体的には、ジョグダイヤル4を図1中時計回りに回転操作すると、シリンダ変位を示す数値Nが大きくなるとともに、その数値Nの増加量に応じてシリンダ装置Cが伸長し、テーブルTの位置が高くなる。反対に、ジョグダイヤル4を図1中反時計回りに回転操作すると、シリンダ変位を示す数値Nが小さくなるとともに、その数値Nの減少量に応じてシリンダ装置Cが収縮し、テーブルTの位置が低くなる。
【0024】
このように、表示部3には、制御対象であるシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nが表示されるとともに、その数値Nがジョグダイヤル4の操作によって変更される。そして、本実施の形態のコントローラ1は、ジョグダイヤル4の操作によって指定された数値Nに基づき、シリンダ変位を制御するようになっている。なお、表示部3は、例えば、シリンダ装置Cの近傍等のコントローラ1以外に設けられていてもよい。
【0025】
つづいて、本実施の形態のコントローラ1によってシリンダ変位を制御するシステムについて説明する。図2に示すように、コントローラ1は、使用者によって回転操作されたジョグダイヤル4の回転操作量を検知する検知器5と、この検知器5で検知されたジョグダイヤル4の回転操作量に応じてシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nを増減させて表示部3に表示する処理部6と、この処理部6の増減処理によって変更された数値Nに基づいてシリンダ装置Cを変位させるための指令を出力する出力部7とを備える。
【0026】
検知器5は、ジョグダイヤル4の回転方向に応じた回転操作量を検知できる限り自由に選択できるが、本実施の形態では光学式のロータリーエンコーダが採用されている。さらに、本実施の形態のロータリーエンコーダはクリック付きであり、ジョグダイヤル4の一回転当たりのクリック数が50に設定されている。しかし、検知器5としてクリック無しのロータリーエンコーダ、又はロータリーエンコーダ以外の検知器を利用してもよい。
【0027】
例えば、本実施の形態のジョグダイヤル4は、筐体2から突出するように設けられたダイヤル式の摘みからなる回転操作インターフェースであるが、液晶ディスプレイ上に表示された画像であってもよく、このような場合には、検知器としてエンコーダを利用する必要がない。また、トラックボール等のジョグダイヤル4以外の回転操作インターフェースでシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nを変更してもよい。このように、回転操作インターフェース及び検知器は、適宜変更できる。
【0028】
つづいて、本実施の形態のコントローラ1の処理部6におけるシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nの増減処理の手順について説明する。図3に示すように、まず、検知器5で検知されたジョグダイヤル4の回転操作量からジョグダイヤル4の回転速度Vを算出(ステップF1)する。次に、その回転速度Vが予め記憶されている第一の閾値A未満(V<A)であるか否かを判断し(ステップF2)、否である場合には第一の閾値Aより大きい値であって、予め記憶されている第二の閾値B未満(V<B)であるか否かを判断する(ステップF3)。
【0029】
このように、本実施の形態では、ジョグダイヤル4の回転速度Vの判定のために二つの閾値A,Bが設けられている。そして、第一の閾値Aは、第二の閾値Bより小さい値(A<B)である。この第二の閾値Bに対する第一の閾値Aの大きさは自由に設定できるが、本実施の形態では、第一の閾値Aが第二の閾値Bの約20%程度の値となっている。
【0030】
そして、ステップF2の判断でV<Aと判断されている、即ち、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A未満と判断されている間は、低速モード処理となる(ステップF4)。この低速モード処理では、ジョグダイヤル4が回転して1クリックするごとに、表示部3に表示される数値Nの最小の桁(右端)の数字が回転方向に従って1ずつ増減する。このジョグダイヤル4の単位回転角当たりの数字の増減量は適宜変更できるが、低速モード処理の間は、ジョグダイヤル4の回転操作量に比例してシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nが回転方向に従って増減する。
【0031】
このため、ジョグダイヤル4が低速(V<A)で回転操作されて低速モード処理がなされている間は、ジョグダイヤル4を回転操作するほどシリンダ装置Cの伸縮量が大きくなる。つまり、図4に示すように、ジョグダイヤル4の回転速度Vを横軸に、シリンダ装置Cの伸縮速度を縦軸にとると、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A未満(V<A)の区分では、線Xで示すように、ジョグダイヤル4の回転速度Vに比例してシリンダ装置Cの伸縮速度が大きくなる。
【0032】
また、ステップF2,F3の判断でV<AでなくV<Bと判断されている、即ち、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A以上で第二の閾値B未満(A≦V<B)と判断されている間は、中速モード処理となる(ステップF5)。この中速モード処理では、表示部3に表示される数値Nが回転方向に従って一定の速度で増減する。この数値Nの増減速度は任意に設定できるが、本実施の形態ではシリンダ装置Cが安全に伸縮できる上限速度よりも低い速度に設定されている。
【0033】
このため、ジョグダイヤル4が中速(A≦V<B)で回転操作されて中速モード処理がなされている間は、シリンダ装置Cがジョグダイヤル4の回転操作量によらず、シリンダ装置Cの上限速度よりも低速な一定の速度で回転方向に応じて伸縮する。つまり、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A以上で、第二の閾値B未満(A≦V<B)の区分では、図4中線Yで示すように、ジョグダイヤル4の回転速度が増してもシリンダ装置Cの伸縮速度は変わらない。
【0034】
また、ステップF3の判断でV<Bでないと判断されている、即ち、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第二の閾値B以上(B≦V)と判断されている間は、高速モード処理となる(ステップF6)。この高速モード処理においても、表示部3に表示される数値Nが回転方向に従って一定の速度で増減する。この数値Nの増減速度は任意に設定できるが、本実施の形態ではシリンダ装置Cの上限速度に設定されている。
【0035】
このため、ジョグダイヤル4が高速(B≦V)で回転操作されて高速モード処理がなされている間は、シリンダ装置Cがジョグダイヤル4の回転操作量によらず、シリンダ装置Cの上限速度で回転方向に応じて伸縮する。つまり、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第二の閾値B以上(B≦V)の区分でも、図4中線Zで示すように、ジョグダイヤル4の回転速度が増してもシリンダ装置Cの伸縮速度は変わらない。
【0036】
以上をまとめると、本実施の形態のコントローラ1における中速モード処理及び高速モード処理では、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nの増減速度、即ち、単位時間当たりの数値Nの増減量(変化量)がそれぞれ予め設定された値M,Lとなっている。そして、中速モード処理で予め設定される第一の値Mと、高速モード処理で予め設定される第二の値Lとを比較すると、第二の値Lは、第一の値Mよりも大きな値となっている(L>M)。
【0037】
前記構成によれば、ジョグダイヤル4を操作する指が滑ったり、ノイズが乗ったりしても、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nの単位時間当たりの増減量が前記値M,Lより大きくならない。これにより、ジョグダイヤル4を操作する指が滑ったりノイズが乗ったりしても、短時間で極端に大きく数値Nが変動するのが防止され、シリンダ装置Cの急激な伸長、即ち、シリンダ装置Cの飛び出しが防止される。
【0038】
さらには、中速モード処理又は高速モード処理において設定される数値Nの増減速度をシリンダ装置Cの物理上及びソフト上の限界速度より低く設定しておけば、その限界速度を超える心配がない。このため、シリンダ装置Cの限界速度を超えた操作指令がシリンダ装置Cに出力されて、ジョグダイヤル4の回転操作を停止したにも関わらず指示された操作量となるまでシリンダ装置Cが動き続けるような、シリンダ装置Cの意図しない動きが防止される。
【0039】
また、ジョグダイヤル4を手動で操作する場合には、ジョグダイヤル4の回転速度を速めるほど等速で回転操作するのが難しく、回転速度にムラができる。このような場合であっても、第一の閾値A以上の速度でジョグダイヤル4を回転操作していれば、その回転速度Vが第二の閾値Bを跨いで上下しない限り、数値Nの単位時間当たりの増減量が変わらない。これにより、ジョグダイヤル4の回転速度にムラがあっても、シリンダ装置Cの動作が安定する。
【0040】
つづいて、本実施の形態におけるジョグダイヤル4の回転速度Vの算出(ステップF1)は、ジョグダイヤル4の回転によるクリック数を100m秒ごとにカウントし、そのカウント値の直近5回の平均値を回転速度Vとしている。そして、その平均カウント値と、第一、第二の閾値A,Bとの比較により、その閾値A,B未満か否かを100m秒間隔で判定している。
【0041】
前記構成によれば、直近5回の平均で求められる回転速度Vが第一、第二の閾値A,Bを跨いで上下しない限り、数値Nの増減処理が切り換わらない。これにより、第一、第二の閾値A,B付近の速度でジョグダイヤル4を回転操作する場合に、低速モード処理と中速モード処理、又は中速モード処理と高速モード処理とが短時間のうちに頻繁に切り換わり過ぎるのが防止される。このため、シリンダ装置Cの動作が一層安定する。
【0042】
さらに、本実施の形態では、100m秒ごとに計測される計測値の直近5回平均で求められる回転速度Vが第一、第二の閾値A,Bを跨いで変化すれば、低速モード処理と中速モード処理、又は中速モード処理と高速モード処理とが100m秒間隔で切り換わる。このため、使用者が意図してジョグダイヤル4の操作速度を変更した場合には、使用者に違和感を与えることなく数値Nの増減処理が切り換わる。
【0043】
なお、本実施の形態では、単位時間当たりのクリック数をカウントして回転速度(単位時間当たりのジョグダイヤル4の回転操作量)Vを算出しているが、この算出方法は適宜変更できる。例えば、平均するクリック数のカウント値は、5回より多くても少なくてもよく、カウント数を計測する時間も適宜変更できる。また、本実施の形態のように検知器5として光学式のロータリーエンコーダを利用する場合、そのロータリーエンコーダは光のONとOFFにより信号を発生し、その出力信号の波形がステップ状に変化する。このため、その出力信号の波形の立ち上がり変化点の間隔等を利用してジョグダイヤル4の回転速度を算出してもよい。
【0044】
また、前述のように、指定された数値Nによってシリンダ装置C等の制御対象の操作量を制御可能なコントローラ1は、ハードフェア資源として、例えば、ジョグダイヤル4の回転速度に応じた数値Nの増減処理に必要なプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、前記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、前記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えていればよく、コントローラ1における各部は、CPUの前記プログラムの実行により実現できる。
【0045】
以下に、本実施の形態のコントローラ1を利用したシリンダ装置Cの操作の一例を記載する。
【0046】
供試体の着脱等を目的として、テーブルTの位置を上限位置又は下限位置まで大きく素早く動かしたい場合には、テーブルTが目的とする上限位置又は下限位置に達するまでジョグダイヤル4を高速(第二の閾値B以上の速度)で回転操作する。すると、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第二の閾値B以上と判断されている間は、シリンダ装置Cが上限速度で伸縮してテーブルTが目的とする上限位置又は下限位置まで素早く動く。
【0047】
その一方、試験用に供試体をテーブルTにセットすること等を目的として、テーブルTの位置を調節する場合には、テーブルTの位置が目的のセット位置に近づくまでジョグダイヤル4を中速(第一の閾値A以上で第二の閾値B未満の速度)で回転操作する。そして、テーブルTが目的のセット位置にある程度近づいたらジョグダイヤル4を低速(第一の閾値A未満の速度)で回転し、テーブルTの位置をセット位置に合せる。
【0048】
この場合、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A以上で第二の閾値B未満と判断されている間は、シリンダ装置Cが上限速度より低い一定の速度で伸縮する。これにより、テーブルTが目的のセット位置付近まで適度な速度で動く。このため、テーブルTがセット位置付近まで速やかに移動するとともに、テーブルTがセット位置を超えて移動してしまい、供試体が破損することもない。
【0049】
また、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A未満と判断されている間は、ジョグダイヤル4の回転方向と回転操作量に応じてシリンダ装置Cが伸縮する。例えば、ジョグダイヤル4を大きく回転操作すれば、シリンダ装置Cの伸縮量も大きくなり、小刻みに回転操作すればシリンダ装置Cも小刻みに伸縮する。このように、ジョグダイヤル4を低速で回転操作すれば、シリンダ装置Cの動きが使用者の直観にあった動きとなるので、微調整が容易で時間がかからない。
【0050】
以下に、本実施の形態のコントローラ1の作用効果について説明する。
【0051】
本実施の形態のコントローラ1は、指定された数値Nによってシリンダ装置(制御対象)Cの操作量を制御可能とするものである。そして、そのコントローラ1は、回転操作されるジョグダイヤル(回転操作インターフェース)4と、このジョグダイヤル4の回転操作量を検知する検知器5と、そのジョグダイヤル4の回転速度(単位時間当たりの回転操作量)Vに応じてシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nを増減させる処理部6とを備える。
【0052】
具体的に、本実施の形態では、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A以上と判断している間、処理部6はシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nの単位時間あたりの増減量を予め設定される値M,Lとする。その一方、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A未満と判断している間、処理部6はシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nをジョグダイヤル4の回転操作量に比例して増減させる。
【0053】
前記構成によれば、ジョグダイヤル4を操作する指が滑ったり、ノイズが乗ったりしても、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nの単位時間当たりの増減量が予め設定される値M,Lより大きくなるのを防止できる。これにより、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nが短時間で極端に大きくなるのを防止して、シリンダ装置Cの飛び出しを防止できる。
【0054】
さらには、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nの増加速度がシリンダ装置Cの物理上及びソフト上の限界速度より低くなるように、前記値M,Lを設定しておけば、シリンダ装置Cの限界速度を超えた操作指令がシリンダ装置Cに出力されて、ジョグダイヤル4の回転操作を停止したにも関わらず、指示された操作量になるまでシリンダ装置Cが動き続けることもない。
【0055】
また、前記構成によれば、第一の閾値A未満の速度でジョグダイヤル4を回転操作している間は、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nがジョグダイヤル4の回転操作量に比例して大きくなる。つまり、ジョグダイヤル4を低速で回転操作すれば、シリンダ装置Cの動きが使用者の直観にあった動きとなるので、シリンダ装置Cの操作量の微調整を容易且つ速やかにできる。
【0056】
以上より、前記構成によれば、シリンダ装置(制御対象)Cの意図しない動きを防止できるとともに、シリンダ装置Cの微調整を容易且つ速やかにできる。そして、前述のように、指定された数値Nによってシリンダ装置C等の質量をもった物体の変位をコントローラ1で制御しようとする場合、制御対象が意図しない動きをすると、シリンダ装置等にセットされた部材が破損する可能性がある。このため、このような場合には、本実施の形態の数値Nの増減処理を適用するのが特に有効である。
【0057】
また、前記構成によれば、第一の閾値A以上の速度でジョグダイヤル4を回転していれば、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nが一定の速度で増減する。このため、ジョグダイヤル4を中高速で回転操作する際にその回転速度Vにムラがあっても、そのムラの影響を受け難く、シリンダ装置Cの動作を安定させられる。
【0058】
なお、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nは、シリンダ変位以外であってもよい。換言すると、本発明に係るコントローラは、必ずしも指定された数値Nによってシリンダ変位を制御するものではなく、例えば、荷重を制御するものであってもよい。さらには、本発明に係るコントローラを単なる数値設定に利用してもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、処理部6が検知器5によって複数回検知されたジョグダイヤル(回転操作インターフェース)4の単位時間当たりの回転操作量から平均値を算出し、その平均値と第一、第二の閾値A,Bとを比較して、平均値が第一、第二の閾値A,B未満か否かを判断する。当該構成によれば、ジョグダイヤル4を第一、第二の閾値A,B付近の速度で回転操作した場合であっても、数値Nの増減処理が短時間で頻繁に切り換わるのを防止できるので、シリンダ装置(制御対象)Cの動きを一層安定させられる。
【0060】
また、本実施の形態のコントローラ1では、ジョグダイヤル4の回転速度Vの判定に利用する閾値として、前記第一の閾値Aの他に、この第一の閾値Aより値の大きな第二の閾値Bを設けている。そして、ジョグダイヤル(回転操作インターフェース)4の回転速度(単位時間当たりの回転操作量)Vが第二の閾値B以上と判断している間、処理部6はシリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nの単位時間当たりの増減量を第一の値Mより大きな予め設定される第二の値Lとする。
【0061】
このように、シリンダ装置Cの操作量を指示する数値Nの単位時間当たりの増減量として予め設定される値M,Lは、対応する閾値A,Bが大きくなるほど大きな値に設定されている。このため、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第一の閾値A以上の速度にあると判断されている場合において、ジョグダイヤル4の回転速度Vが第二の閾値Bより低速側の区分にある場合の数値Nの増減速度を遅く、第二の閾値Bより高速側の区分にある場合の数値Nの増減速度を速くできる。
【0062】
つまり、前記構成によれば、シリンダ装置(制御対象)Cの操作量を指示する数値Nの増減速度をその速度の区分に応じて多段階に設定できる。これにより、数値Nを大きく変えようとする場合と細かく変えようとする場合とで、数値Nの増減幅が大きく異なる場合であっても、その数値Nを目的の値に容易且つ速やかに調整できる。
【0063】
なお、本実施の形態では、ジョグダイヤル(回転操作インターフェース)4の回転速度Vの判定に利用される閾値であって、数値Nの単位時間当たりの増減量として予め設定される値M,Lが切り換わる閾値は、第二の閾値Bの一つである。しかし、そのような閾値を複数設けてもよいのは勿論である。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
A,B・・・閾値、M,L・・・予め設定される値、C・・・シリンダ装置(制御対象)、N・・・制御対象の操作量を指示する数値、1・・・コントローラ、4・・・ジョグダイヤル(回転操作インターフェース)、5・・・検知器、6・・・処理部
図1
図2
図3
図4