(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】粘性土と鉄鋼スラグの落下混合方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
E02F 7/00 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
E02F7/00 L
E02F7/00 D
(21)【出願番号】P 2018200001
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
(72)【発明者】
【氏名】野中 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 歩
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173285(JP,A)
【文献】特開平07-237747(JP,A)
【文献】特許第6210400(JP,B2)
【文献】特開2002-309616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性土と鉄鋼スラグとをベルトコンベアに供給し前記ベルトコンベアの端部から落下させることで混合する落下混合方法であって、
第1のベルトコンベアに対し、鉄鋼スラグを供給し、次に前記鉄鋼スラグの供給位置よりも下流側で粘性土を供給し、前記第1のベルトコンベア上で前記鉄鋼スラグを前記粘性土で覆う状態として落下させ
、
前記第1のベルトコンベアから落下して混合された材料をさらに第2のベルトコンベアに供給し落下させることで最終的な混合材料を得る、粘性土と鉄鋼スラグの落下混合方法。
【請求項2】
前記第1および第2のベルトコンベアからの落下高さを少なくとも2mとする、請求項
1に記載の粘性土と鉄鋼スラグの落下混合方法。
【請求項3】
粘性土と鉄鋼スラグとをベルトコンベアに供給し前記ベルトコンベアの端部から落下させることで混合する落下混合システムであって、
第1のベルトコンベアと、
前記第1のベルトコンベアに対し鉄鋼スラグを供給する鉄鋼スラグ供給部と、
前記第1のベルトコンベアに対し前記鉄鋼スラグの供給位置よりも下流側で粘性土を供給する粘性土供給部と、を備え、
前記第1のベルトコンベアに対し前記鉄鋼スラグ供給部から鉄鋼スラグを供給し、次に、前記粘性土供給部から粘性土を供給し、前記第1のベルトコンベア上で前記鉄鋼スラグを前記粘性土で覆う状態として落下させるように構成し
、
前記第1のベルトコンベアから落下して混合された材料をさらに第2のベルトコンベアに供給し落下させることで最終的な混合材料を得る、粘性土と鉄鋼スラグの落下混合システム。
【請求項4】
前記第1および第2のベルトコンベアからの落下高さを少なくとも2mとする、請求項
3に記載の粘性土と鉄鋼スラグの落下混合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性土と鉄鋼スラグとを落下により混合する落下混合方法および落下混合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫土と製鋼スラグを混合したカルシア改質土の施工方法としては、バックホウ混合、ミキサ混合、管中混合、落下混合等があり、これらのうち落下混合方式は、大量施工が可能な方法である(特許文献1,2,非特許文献1,2参照)。一方で、落下混合では、2m以上の高さ×3回の混合が必要とされており、3回の落下の実施が困難な場合、発現強度の低下・強度のバラツキの増大等の品質管理上の問題が生じるとされている(非特許文献2,3参照)。
【0003】
落下混合方式でリクレーマ船を使用してカルシア改質土を作製する場合、ベルトコンベアに浚渫土を供給し、次いで製鋼スラグを供給する方法がとられている。リクレーマ船の構造上、浚渫土の供給前に製鋼スラグの供給システムを組込むことが難しいとされている。また、体積が多い材料に対して少ない材料を添加する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-173285号公報
【文献】特許第6210400号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「港湾・空港・海岸等におけるカルシア改質土利用技術マニュアル」(沿岸技術研究センター、平成29年2月発行)
【文献】田中裕一,高将真,今村正,渋谷貴志,山越陽介,赤司有三,北野吉幸,菅野浩樹「カルシア改質土による海面埋立,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol.70,No.2,2014,pp.I_888-I_893https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejoe/70/2/70_I_888/_pdf
【文献】山越陽介・赤司有三・菅野浩樹・田中裕一・松本歩・渋谷貴志「落下混合方式によるカルシア改質土の埋立」土木学会第69回年次学術講演会 http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2014/69-06/69-06-0312.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者等の調査・検討によれば、浚渫土・製鋼スラグの順に供給する場合、最初のベルトコンベアの乗継部でベルトコンベア上の製鋼スラグが飛び出し、浚渫土と製鋼スラグが別々に落下し、落下・衝突による充分な混合が実施できない場合があることが判明した。
【0007】
また、浚渫土が高含水比の場合、流動性が高い浚渫土をベルトコンベアで送泥するためには、ベルトコンベアの設置傾斜角度を小さくする、搬送速度を小さくする等の対策が必要となり、施工効率が低下する。
【0008】
また、低含水比の浚渫土の場合、混合効率を上げるためには、通常の含水比の場合よりも落下位置を高くする(落下混合時の衝撃を大きくする)必要があるが、十分な落下高さを確保できない場合、混合が不充分となる可能性がある。
【0009】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、粘性土と鉄鋼スラグとをベルトコンベアに供給し落下させて混合する場合の混合効率・施工効率を向上可能な粘性土と鉄鋼スラグの落下混合方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための粘性土と鉄鋼スラグの落下混合方法は、粘性土と鉄鋼スラグとをベルトコンベアに供給し前記ベルトコンベアの端部から落下させることで混合する落下混合方法であって、第1のベルトコンベアに対し、鉄鋼スラグを供給し、次に前記鉄鋼スラグの供給位置よりも下流側で粘性土を供給し、前記第1のベルトコンベア上で前記鉄鋼スラグを前記粘性土で覆う状態として落下させ、前記第1のベルトコンベアから落下して混合された材料をさらに第2のベルトコンベアに供給し落下させることで最終的な混合材料を得る。
【0011】
この落下混合方法によれば、第1のベルトコンベアに対し鉄鋼スラグを上流側に供給し、次に粘性土を下流側で供給することで、第1のベルトコンベア上で鉄鋼スラグが粘性土により覆われる状態となり、その状態で落下すると、鉄鋼スラグと粘性土とが分離せずに一体になって落下するので、落下混合(1回目)の混合効率を向上できる。このため、混合材料の発現強度が増加し、強度のバラツキが低下し品質が向上する。
【0012】
上記落下混合方法において、前記第1のベルトコンベアから落下して混合された材料をさらに第2のベルトコンベアに供給し、第2のベルトコンベアから落下させることで最終的な混合材料を得る。落下混合1回目の混合効率が向上するので、第2のベルトコンベアによる2回目の落下混合により最終的な混合材料とすることができる。このため、従来の落下混合方法と比べて落下混合回数を減らすことができ、施工効率を向上できるとともに、従来の落下混合方法と同等以上の品質を確保できる。
【0013】
また、前記第1および第2のベルトコンベアからの落下高さを少なくとも2mとすることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するための粘性土と鉄鋼スラグの落下混合システムは、粘性土と鉄鋼スラグとをベルトコンベアに供給し前記ベルトコンベアの端部から落下させることで混合する落下混合システムであって、第1のベルトコンベアと、前記第1のベルトコンベアに対し鉄鋼スラグを供給する鉄鋼スラグ供給部と、前記第1のベルトコンベアに対し前記鉄鋼スラグの供給位置よりも下流側で粘性土を供給する粘性土供給部と、を備え、前記第1のベルトコンベアに対し前記鉄鋼スラグ供給部から鉄鋼スラグを供給し、次に、前記粘性土供給部から粘性土を供給し、前記第1のベルトコンベア上で前記鉄鋼スラグを前記粘性土で覆う状態として落下させるように構成し、前記第1のベルトコンベアから落下して混合された材料をさらに第2のベルトコンベアに供給し落下させることで最終的な混合材料を得るものである。
【0015】
この落下混合システムによれば、第1のベルトコンベアに対し鉄鋼スラグを上流側で供給し、次に粘性土を下流側で供給することで、第1のベルトコンベア上で鉄鋼スラグが粘性土により覆われる状態となり、その状態で落下すると、鉄鋼スラグと粘性土とが分離せずに一体になって落下するので、落下混合(1回目)の混合効率を向上できる。このため、混合材料の発現強度が増加し、強度のバラツキが低下し品質が向上する。
【0016】
上記落下混合システムにおいて、前記第1のベルトコンベアから落下して混合された材料をさらに第2のベルトコンベアに供給し落下させることで最終的な混合材料を得る。落下混合1回目の混合効率が向上するので、第2のベルトコンベアによる2回目の落下混合により最終的な混合材料とすることができる。このため、従来と比べて落下混合回数を減らすことができるので、施工効率を向上できるとともに、従来の落下混合システムと同等以上の品質を確保できる。また、落下混合システムにおいて、ベルトコンベア等の必要装置の数量の削減、および、必要となる作業面積の低減が可能となる。
【0017】
また、前記第1および第2のベルトコンベアからの落下高さを少なくとも2mとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粘性土と鉄鋼スラグとをベルトコンベアに供給し落下させて混合する場合の混合効率・施工効率を向上可能な粘性土と鉄鋼スラグの落下混合方法およびシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態による落下混合システムを概略的に示す図である。
【
図2】
図1の鉄鋼スラグと粘性土とを載荷した第1のベルトコンベアの模式的な横方向断面図である。
【
図3】
図1,
図2の落下混合システムによる落下混合の各工程を説明するためにフローチャートである。
【
図4】粘性土と鉄鋼スラグとを載荷した従来の第1のベルトコンベアの模式的な横方向断面図である。
【
図5】
図2のように鉄鋼スラグが粘性土で覆われた状態で第1のベルトコンベアの下流端部から落下する様子を概略的に示す図(a)、および、
図4の従来のように鉄鋼スラグが粘性土を覆う状態で第1のベルトコンベアの下流端部から落下する様子を概略的に示す図(b)である。
【
図6】本実施形態による別の落下混合システムを概略的に示す図である。
【
図7】本実施形態によるさらに別の落下混合システムを概略的に示す上面図である。
【
図8】本実験例の各ケースa~cにおける材令と一軸圧縮強さとの関係を示すグラフである。
【
図9】本実験例の各ケースa~cにおける混合28日後の一軸圧縮強さ(左側)と湿潤密度(右側)の各頻度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による落下混合システムを概略的に示す図である。
図2は
図1の鉄鋼スラグと粘性土とを搬送のため載荷した第1のベルトコンベアの模式的な横方向(移動方向に対し直交する方向)の断面図である。
【0021】
図1の落下混合システム10は、台船20上に、上方へ傾斜した方向xに材料を搬送する第1のベルトコンベア11と、上方へ傾斜した方向x’に材料を搬送する第2のベルトコンベア12と、第1のベルトコンベア11の上流側に鉄鋼スラグ21を供給するホッパ13と、第1のベルトコンベア11の下流側に粘性土22を供給するホッパ15と、を備え、海上施工に適するように構成されている。
【0022】
ホッパ13にはバックホウ14により鉄鋼スラグ21が供給され、ホッパ13からフィーダ(図示省略)を通して計量されて第1のベルトコンベア11の上流側に供給される。ホッパ15にはバックホウ16により粘性土22が供給され、ホッパ15からフィーダ(図示省略)を通して計量されて第1のベルトコンベア11の下流側に供給される。第1のベルトコンベア11に対し鉄鋼スラグ21がまず供給され、次に、粘性土22が供給される。
【0023】
上述のような第1のベルトコンベア11に対する鉄鋼スラグ21と粘性土22との供給位置と供給順序とから、
図2のように、鉄鋼スラグ21と粘性土22は、第1のベルトコンベア11上で鉄鋼スラグ21が粘性土22で覆われた状態となって搬送される。
【0024】
第1のベルトコンベア11は、低位置の上流端部11aから高位置の下流端部11bに向けて上方へ傾斜し、方向xに材料を搬送し高位置の下流端部11bから排出し下方へと落下させる。
【0025】
第2のベルトコンベア12は、低位置の上流端部12aから高位置の下流端部12bに向けて上方へ傾斜し、第1のベルトコンベア11の下流端部11bから落下した材料を上流端部12aの近傍の受け部12cで受けて方向x’に搬送し高位置の下流端部12bから排出し下方へと落下させる。
【0026】
図1の落下混合システム10は、混合材料24を水底に打設するため、台船20に鉛直方向に設けられたトレミー管18と、混合材料24を搬送しトレミー管18へ投入する投入ベルトコンベア17と、を備える。投入ベルトコンベア17は、第2のベルトコンベア12の下流端部12bから落下して混合した混合材料24を上流端部近傍の受け部17aで受けて搬送し、混合材料24はトレミー管18を介して水底へ打設される。なお、ベルトコンベア17を省略し、トレミー管に受け口を設け、第2のベルトコンベア12から直接トレミー管18を介して水底に打設するようにしてもよい。
【0027】
第1のベルトコンベア11の下流端部11bから第2のベルトコンベア12の受け部12cまでの材料の落下高さは、たとえば、少なくとも2mが確保されるようになっている。同様に、第2のベルトコンベア12の下流端部12bから受け部17aまでの材料の落下高さは、たとえば、少なくとも2mが確保されるようになっている。
【0028】
上述のように、混合対象の鉄鋼スラグ21と粘性土22とは、第1のベルトコンベア11と第2のベルトコンベア12とにより搬送されながら、下流端部11bと受け部12cとの間の乗継部で少なくとも2mの落下高さで落下し、次に、下流端部12bと受け部17aとの間の乗継部で少なくとも2mの落下高さで落下し、2回の落下混合処理が施される。
【0029】
図1,
図2の落下混合システム10による落下混合の各工程について
図3を参照して説明する。
図3は
図1,
図2の落下混合システムによる落下混合の各工程を説明するためにフローチャートである。
【0030】
まず、第1のベルトコンベア11に対し、ホッパ13から鉄鋼スラグ21を上流側で供給し(S01)、次に、ホッパ15から粘性土22を下流側で供給する(S02)。これにより、
図2のように第1のベルトコンベア11上で鉄鋼スラグ21は粘性土22で覆われた状態となって高位置の下流端部11bに向けて搬送される(S03)。なお、粘性土22は、浚渫土や泥土などであってよく、また、必要に応じて解泥、調泥されてもよい。
【0031】
次に、
図2の状態となった鉄鋼スラグ21と粘性土22とは、第1のベルトコンベア11により方向xに搬送されて高位置の下流端部11bに達すると、自重で落下し、第2のベルトコンベア12の低位置の受け部12cへと排出される(S04)。これにより、混合対象の鉄鋼スラグ21と粘性土22とは、1回目の落下混合処理が施され、混合されて混合材料23となる。
【0032】
次に、1回目の落下混合処理による混合材料23を第2のベルトコンベア12で受け部12cから高位置の下流端部12bへ搬送する(S05)。
【0033】
次に、混合材料23が第2のベルトコンベア12の高位置の下流端部12bに達すると、自重で落下し、投入ベルトコンベア17の低位置の受け部17aへと排出される(S06)。これにより、混合対象の鉄鋼スラグ21と粘性土22とは、2回目の落下混合処理が施され、さらに混合されて混合材料24となる。
【0034】
次に、2回の落下混合処理がされた混合材料24を、投入ベルトコンベア17の受け部17aから搬送し、トレミー管18の上端へ投入し下端から水底へ打設する(S07)。これにより、たとえば、混合材料24により埋め立てを行う。
【0035】
本実施形態によれば、第1のベルトコンベア11に対し鉄鋼スラグ21を上流側で供給し、次に粘性土22を下流側で供給することで、
図2のように第1のベルトコンベア11上で鉄鋼スラグ21が粘性土22により覆われる状態となって、上部の浚渫土等の粘性土22の水分が下部の鉄鋼スラグ21へ浸透し、その状態で落下すると、鉄鋼スラグ21と粘性土22とが分離せずに一体になって落下するので、落下混合(1回目)の混合効率を向上できる。このため、混合材料の発現強度が増加し、強度のバラツキが低下し品質が向上する。
【0036】
図4に、粘性土と鉄鋼スラグとを搬送のため載荷した従来の第1のベルトコンベアの模式的な横方向断面図を示す。従来のベルトコンベアを用いた落下混合方法によれば、たとえば特許文献1には軟弱土に製鋼スラグを添加するとあるように、ベルトコンベアに対し、まず浚渫土等の粘性土を上流側で供給し、次に、鉄鋼スラグを下流側で供給していた。このため、
図4のように、鉄鋼スラグ21が粘性土22を覆う状態となって、鉄鋼スラグ21の一部に粘性土22の水分が浸透するものの、鉄鋼スラグ21の大部分が粘性土22と分離して別々に落下していた。このため、鉄鋼スラグ21と粘性土22とが充分に混合せず、落下混合(1回目)の混合効率が低下していた。これに対し、本実施形態によれば、
図2のように、鉄鋼スラグ21が粘性土22により覆われた状態で落下するので、鉄鋼スラグ21と粘性土22とが分離せずに一体になって落下し、混合効率が向上する。
【0037】
また、
図1の落下混合システム10によれば、台船20により打設施工位置まで移動してから、2回落下混合後の混合材料24をその位置でトレミー管18等により直接水中打設でき、海上施工において効率的な打設施工が可能となる。
【0038】
なお、本実施形態において鉄鋼スラグは高炉スラグと製鋼スラグとを含む。高炉スラグとは、高炉で鉄鉱石を溶解・還元する際に生成するスラグをいい、製鋼スラグとは、製鋼工程内の転炉で鉄を精錬する際などに生成するスラグをいう。
【0039】
図5を参照して本実施形態の作用効果についてさらに説明する。
図5は、
図2の本実施形態のように鉄鋼スラグが粘性土で覆われた状態で第1のベルトコンベアの下流端部から落下する様子を概略的に示す図(a)、および、
図4の従来の場合の同様の図(b)である。
【0040】
図4の従来のように鉄鋼スラグ21が粘性土22を覆う状態の場合、
図5(b)のように、粘性土22と鉄鋼スラグ21とが接する部分は一緒に落下するが、それ以外の部分は、それぞれ鉄鋼スラグ21と粘性土22とが別々に落下する。
【0041】
これに対し、
図2の本実施形態のように鉄鋼スラグ21が粘性土22で覆われる状態の場合、
図5(a)のように、鉄鋼スラグ21の水平方向への飛び出しが上部の粘性土22によって抑制され、粘性土22と鉄鋼スラグ21は分離せずに一体となって落下する。
【0042】
図2,
図5(a)のように、上部の粘性土の水分が下部の鉄鋼スラグに吸収されるとともに、第1のベルトコンベアの下流端部で粘性土が鉄鋼スラグの飛び出しを抑制するため、粘性土と鉄鋼スラグが分離せずに一体となって落下し、効率的な落下混合が可能となる。
【0043】
次に、本実施形態による別の落下混合システムについて
図6を参照して説明する。
図6は本実施形態による別の落下混合システムを概略的に示す図である。
図6の落下混合システム30は、基本的構成は
図1と同様であるので、同一の構成部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0044】
図6の落下混合システム30は、第1のベルトコンベア11と、第2のベルトコンベア12と、第1のベルトコンベア11の上流側に鉄鋼スラグ21を供給するホッパ13と、第1のベルトコンベア11の下流側に粘性土22を供給するホッパ15と、を備え、陸上施工に適するように構成されている。
【0045】
図1と同様に第1のベルトコンベア11と第2のベルトコンベア12とにより混合対象の材料は、2回の落下混合処理が施される。
【0046】
混合材料23が第2のベルトコンベア12の高位置の下流端部12bから地面に形成されたピットPTの法面部P1へ落下しさらに混合された混合材料24は、ピットPT内からバックホウBHにより搬送車TRに移され、運搬され、埋め立て等の施工場所で打設される。
【0047】
図7を参照して本実施形態によるさらに別の落下混合システムについて説明する。
図7は、本実施形態によるさらに別の落下混合システムを概略的に示す上面図である。
図7の落下混合システム50は、基本的構成は
図1と同様であるので、同一の構成部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0048】
図7の落下混合システム50は、台船60上に、第1のベルトコンベア11と、第2のベルトコンベア12と、第1のベルトコンベア11の上流側に鉄鋼スラグをベルトコンベア13aを通して供給するホッパ13と、第1のベルトコンベア11の下流側に粘性土を直接供給するホッパ15と、を備え、海上施工に適するように構成されている。
【0049】
台船60の一方の側部には、浚渫土運搬土運船61が横付けされ、浚渫土運搬土運船61から浚渫土(粘性土)がバックホウ16によりホッパ15へと供給される。また、台船60の他方の側部には、スラグ供給用ガット船62が横付けされ、ガット船62側のグラブ(図示省略)により鉄鋼スラグがホッパ13に供給される。
【0050】
第1,第2のベルトコンベア11,12による2回の落下混合により混合されたカルシア改質土等の混合材料は、第2のベルコンベア12の下流端部12b側に係留した土運船63に投入ベルトコンベア64を用いて投入されて移され、海上運搬されて施工場所で打設される。
【0051】
図6,
図7の落下混合システムによる落下混合の各工程は、
図3のフローチャートと同様であるが、打設施工場所が落下混合施工場所と異なる場合、2回目の落下混合(S06)の後、混合材料が陸上または海上で運搬されてから打設される。
【0052】
図6,
図7の実施形態によれば、
図1,
図2,
図5(a)と同様に、1回目の落下混合において鉄鋼スラグ21と粘性土22とが分離せずに一体になって落下するので、落下混合(1回目)の混合効率を向上でき、このため、混合材料の発現強度が増加し、強度のバラツキが低下し品質が向上する。また、
図7の落下混合システムによれば、海上施工により、比較的大量に落下混合処理を行うことができ、大量のカルシア改質土等の混合材料を作製することができる。
【0053】
図1~
図7の本実施形態によるさらなる効果について説明する。1回目の落下混合において混合効率を向上できるので、2回目の落下混合により粘性土上に鉄鋼スラグを供給して3回落下した場合と同等以上の強度を確保でき、第2のベルトコンベアによる2回目の落下混合により最終的な混合材料を得ることができる。たとえば、落下高さ2m以上×2回の落下混合により充分に混合されて改質された混合材料を作製することができる。このため、従来の3回の落下混合と比べて落下混合回数を減らすことができ、施工効率を向上できるとともに、従来の落下混合と同等以上の品質を確保できる。落下混合システム10,30,50においては、ベルトコンベア等の必要装置の数量の削減、および、必要となる作業面積の低減が可能となる。
【0054】
また、鉄鋼スラグ・粘性土の順に供給することにより、高含水比の粘性土についても施工効率を落とさずに落下混合による施工が可能となる。従来の供給手順の場合、供給した粘性土が高含水比の場合には、ベルトコンベアを上らずに逆流するため、供給できる粘性土の含水比は液性限界(wL)の1.8倍程度が限界であるが、本実施形態の場合、上部の粘性土の水分が下部の鉄鋼スラグに吸収されるので、含水比が2.5wL程度までの粘性土の供給が可能である。
【0055】
また、粘性土の水分が鉄鋼スラグに吸収されるため、ベルトコンベアの設置角度を大きくすることができ、相対的に小さな距離で所定の落下高さを確保することができる。従来の場合、傾斜角度6°程度であるのに対し、本実施形態の場合、6~12°,13°程度まで大きく設定することが可能であり、省スペースでの施工が可能である。
【実験例】
【0056】
粘性土として浚渫土(含水比197.5%、液性限界112.3%)70vol%と鉄鋼スラグ(最大粒径25mm)30vol%とをベルトコンベア上に供給して落下混合実験を行った。浚渫土・鉄鋼スラグの順にベルトコンベアに供給し2回落下(2m落下1回、4m落下1回)したケースa(従来方法)、浚渫土・鉄鋼スラグの順にベルトコンベア上に供給し3回落下(2m落下3回)したケースb(従来方法)、鉄鋼スラグ・浚渫土の順にベルトコンベア上に供給し2回落下(2m落下1回、4m落下1回)したケースc(本実施形態の方法)について、それぞれの試料数を20とし、材令(混合後)7日、28日の一軸圧縮強さをJIS A 1216に基づいて測定し、また、各試料について混合28日後の湿潤密度をJIS A 1225に基づいて測定した。
図8に各ケースa~cにおける材令と一軸圧縮強さとの関係を示す。また、
図9に各ケースa~cにおける混合28日後の一軸圧縮強さ(左側)と湿潤密度(右側)の各頻度を示す。
【0057】
図8の一軸圧縮強さの実験結果から本実施形態による製鋼スラグ上に浚渫土を供給する落下混合2回のケースcが他の従来方法のケースa,bよりも強度が大きくなったことを確認できた。また、
図9の結果から本実施形態によるケースcが他の従来方法のケースa,bよりも一軸圧縮強さと湿潤密度とについてバラツキが小さいことが確認できた。
図8,
図9の結果から、本実施形態によるケースcは、他の従来方法のケースa,bよりも製鋼スラグと浚渫土との混合効率が優れていることを確認できた。
【0058】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態では、2回の落下混合としたが、本発明はこれに限定されず、3回の落下混合としてもよく、たとえば、さらなる混合効率の向上を目指す場合や落下高さを充分に確保できない場合等に適用することができる。これにより、たとえば、低含水比の粘性土について十分な落下高さを確保できない場合でも、充分に混合することができる。
【0059】
また、
図1,
図7の台船に構成した落下混合システムは、リクレーマ船に適用したり、また、落下混合専用船として構成してもよい。
図1,
図7の海上施工の落下混合システムや
図6の陸上施工の落下混合システムでは、最終的な混合材料について直接水中打設や海上または陸上運搬を行うことができ、また、各種ベルトコンベアや供給装置の使用により、任意の施工能力を設定することが可能である。
【0060】
また、特願2017-217141や特願2017-217143で提案した混合補助装置をベルトコンベアの乗継部に設置することにより、混合を促進するようにしてもよい。また、ベルトコンベアや落下衝突部分に振動装置を設置することで粘性土と鉄鋼スラグとの混合を促進するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、落下混合(1回目)の混合効率を向上でき、2回の落下混合による混合材料において従来の3回の落下混合と同等以上の品質を確保できるので、落下混合の施工効率が向上し、また、落下混合システムにおいてベルトコンベア等の必要装置の数量の削減、および、必要となる作業面積の低減が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
10,30,50 落下混合システム
11 第1のベルトコンベア
11a 上流端部
11b 下流端部
12 第2のベルトコンベア
12c 受け部
13 ホッパ(鉄鋼スラグ供給部)
15 ホッパ(粘性土供給部)
17 投入ベルトコンベア
17a 受け部
18 トレミー管
20,60 台船
21 鉄鋼スラグ
22 粘性土
24 混合材料