(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】コントローラ
(51)【国際特許分類】
G05D 13/62 20060101AFI20221130BHJP
G05D 3/10 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G05D13/62 B
G05D3/10 Z
(21)【出願番号】P 2018201427
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-05-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】芳村 友起
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-107380(JP,A)
【文献】特開平08-314458(JP,A)
【文献】特開2002-052263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 13/62
G05D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ装置を操作可能なコントローラであって、
使用者が押圧可能
であって、押圧されたオン状態となるとともに押圧されないとオフ状態となる押しボタンと、
前記押しボタンの二度の押圧の間隔が第一の所定時間以内であって、前記二度の押圧のうちの二度目の押圧の継続時間が第二の所定時間以上であることを条件として、前記条件を満たしていない場合には、前記
シリンダ装置の操作速度として第一の速度を選択し、前記条件を満たしている場合には、前記
シリンダ装置の操作速度として前記第一の速度より速い第二の速度を選択
し、前記押しボタンが押圧されなくなると前記シリンダ装置を停止させる速度選択部とを備える
ことを特徴とするコントローラ。
【請求項2】
前記速度選択部は、
前記押しボタンの押圧が解除され、前記押しボタンの押圧の解除から前記第一の所定時間以内に前記押しボタンが再び押圧されたと判断した場合には、二度押し判定フラグをオンにし、
前記二度押し判定フラグがオンであって前記押しボタンの押圧が前記第二の所定時間以上継続されていると判断した場合に、前記
シリンダ装置の操作速度として前記第二の速度を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記速度選択部は、
前記押しボタンの押圧の解除から前記第一の所定時間以内に前記押しボタンが再び押圧されていないと判断した場合には、前記二度押し判定フラグをオフにする
ことを特徴とする請求項2に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コントローラの中には、制御対象を操作するのに押しボタンを利用するものがある。また、押しボタンを利用して制御対象を操作する場合には、押しボタンを押し続けていると、途中から制御対象の操作速度が通常の速度から高速に切り換わるものがある。このような技術は、例えば、デジタル時計において時刻又はアラーム等を設定するのに利用されており、これにより時刻又はアラーム等の設定を速やかにできる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3134478号公報、段落[0019][0020]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のデジタル時計における押しボタンの押圧による数値操作を利用して、シリンダ装置、又はアクチュエータ等(以下、「シリンダ装置等」という)の質量をもった物体を変位させようとすると、以下のような問題が生じる可能性がある。
【0005】
具体的には、例えば、前記従来の数値操作を利用して試験機等に利用されるシリンダ装置を伸縮させる場合について考える。この場合、使用者が押しボタンを押し続けている間、シリンダ装置が伸長又は収縮する。また、使用者が押しボタンから指を離せばシリンダ装置が停止する。さらに、使用者が押しボタンを押し続けている時間が所定時間を過ぎると、シリンダ装置の変位速度が自動で通常の速度から高速に切り換わる。
【0006】
しかし、このような場合には、シリンダ装置の伸縮量を微調整する場合等、シリンダ装置の変位速度を通常の速度に維持したい場面では、押しボタンから定期的に指を離してシリンダ装置の変位速度が高速になるのを防ぐ配慮が必要であり、操作性が悪い。さらには、微調整時に押しボタンから指を離し忘れると、シリンダ装置の変位速度が意図せず高速になって目標とする位置でシリンダ装置を止められず、シリンダ装置にセットされた供試体等の部材が破損する可能性がある。
【0007】
このようなことから、前記従来のデジタル時計における技術を利用して、シリンダ装置等の質量をもった物体を変位させるのは難しい。そうかといって、例えば、制御対象の操作速度を通常の速度とする押しボタンと、高速にする押しボタンとを個別に設けたのでは、押し間違いの可能性が高まるとともに、押し間違いを防ぐための確認作業が必要になって操作性が悪い。また、押しボタンが押された際に一定の速度でしか制御対象を操作できないのでは、微調整時を考慮するとその操作速度を高速には設定できず、制御対象を目標の操作量まで操作するのに時間がかかる。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題を解消し、シリンダ装置の操作速度を変更できるとともに、操作性を良好にできるコントローラの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するコントローラは、押しボタンの二度の押圧の間隔が第一の所定時間以内であって、その二度の押圧のうちの二度目の押圧の継続時間が第二の所定時間以上であることを条件として、その条件を満たしていない場合には、シリンダ装置の操作速度として第一の速度を選択し、条件を満たしている場合には、シリンダ装置の操作速度として第一の速度より高速な第二の高速を選択し、押しボタンが押圧されなくなるとシリンダ装置を停止させる速度選択部を備えている。
【0010】
前記構成によれば、押しボタンの押圧条件に応じてシリンダ装置の操作速度を選択し、その操作速度を変更できる。さらに、シリンダ装置の操作速度として、高速な第二の速度を選択するのに必要な、押しボタンの二度の押圧の間隔が第一の所定時間以内で、且つ、その二度目の押圧の継続時間が第二の所定時間以上という条件を満たすよう、使用者が明確な意図をもって押しボタンを操作しない限り、シリンダ装置が高速な第二の速度では動かない。
【0011】
つまり、使用者が明確な意図をもってシリンダ装置の操作速度を速くしようとしない限り、シリンダ装置の操作速度が低速な第一の速度に維持される。このため、前述のように、シリンダ装置の操作速度が自動で切り換わるのを防ぐために押しボタンから定期的に指を離す操作が不要になる。さらに、押しボタンの押圧条件に応じて操作速度が変更されるので、操作速度ごとに押しボタンを設けた場合に必要な押し間違いを防ぐための確認作業も不要になる。これらのことから、シリンダ装置の操作速度を変更するようにしても、操作性が良好である。
【0012】
なお、前記コントローラの速度選択部は、押しボタンの押圧が解除され、前記押しボタンの押圧の解除から第一の所定時間以内に押しボタンが再び押圧されたと判断した場合に、二度押し判定フラグをオンにし、この二度押し判定フラグがオンであって押しボタンの押圧が第二の所定時間以上継続されていると判断した場合に、シリンダ装置の操作速度として第二の速度を選択するとしてもよい。このようにすると、速度選択部は、押しボタンの二度の押圧の間隔が第一の所定時間以内であって、その二度の押圧のうちの二度目の押圧の継続時間が第二の所定時間以上であることを条件として、その条件を満たしている場合にシリンダ装置の操作速度として第二の高速を選択できる。
【0013】
また、そのようなコントローラの速度選択部は、前記押しボタンの押圧の解除から第一の所定時間以内に押しボタンが再び押圧されていないと判断した場合に、二度押し判定フラグをオフにするとしてもよい。このようにすると、速度選択部は、押しボタンの二度の押圧の間隔が第一の所定時間以内であって、その二度の押圧のうちの二度目の押圧の継続時間が第二の所定時間以上であることを条件として、その条件を満たしていない場合にシリンダ装置の操作速度として第一の速度を選択できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコントローラによれば、シリンダ装置の操作速度を変更できるとともに、操作性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るコントローラと、このコントローラの制御対象であるシリンダ装置を簡略的に示した正面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るコントローラの制御ブロック図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係るコントローラの処理部の処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態のコントローラについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品(部位)を示す。
【0017】
図1に示す本発明の一実施の形態に係るコントローラ1は、振動試験機等に利用され、供試体をセットするテーブルTを駆動するシリンダ装置Cを伸縮操作して、テーブルTの位置合わせをするのに利用されている。なお、本発明に係るコントローラは、振動試験機以外の試験機、又は試験機以外に利用できるのは勿論、その制御対象はシリンダ装置Cに限られず、モータ等の他のアクチュエータであってもよい。
【0018】
つづいて、本実施の形態に係るコントローラ1の具体的な構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態のコントローラ1は、本体装置2と、この本体装置に有線(又は無線)で接続される携帯型端末3とを備えており、この携帯型端末3に二つの押しボタン4,5が設けられている。本実施の形態では、これらの押しボタン4,5を押してオンの状態にすることを押しボタン4,5を押圧するという。また、押圧された押しボタン4,5を、押圧されていないオフの状態へ戻すことを押しボタン4,5の押圧を解除するという。
【0019】
そして、押しボタン4,5を押圧すると、押圧された押しボタン4,5に応じてシリンダ装置Cが伸長又は収縮し、テーブルTの位置が変更される。より具体的には、
図1中右側の押しボタン4を押圧すると、その押圧を続けている間、シリンダ装置Cが伸長してテーブルTの位置が高くなる。反対に、
図1中左側の押しボタン5を押圧すると、その押圧を続けている間、シリンダ装置Cが収縮してテーブルTの位置が低くなる。
【0020】
このように、本実施の形態では、
図1中右側の押しボタン4が伸長操作用、左側の押しボタン5が収縮操作用となっているが、伸長操作用と収縮操作用の押しボタン4,5を
図1とは左右逆の配置にしてもよく、これらを上下に配置してもよい。さらに、本実施の形態では、押しボタン4,5が携帯型端末3に設けられているので、使用者がシリンダ装置Cの近くに携帯型端末3を持ち込んで、シリンダ装置Cを近くで見ながら押しボタン4,5の操作ができて便利である。しかし、押しボタン4,5を本体装置2に設けてもよいのは勿論である。このように、押しボタン4,5の配置は適宜変更できる。
【0021】
つづいて、本実施の形態のコントローラ1によってシリンダ装置Cを伸縮操作するシステムについて説明する。
図2に示すように、コントローラ1は、使用者によって押圧された押しボタン4,5の押圧条件に応じてシリンダ装置Cの操作速度を選択する速度選択部6と、この速度選択部6によって選択された操作速度でシリンダ装置Cを伸縮させるための指令を出力する出力部7とを備える。
【0022】
より具体的に、速度選択部6は、押しボタン4,5の二度の押圧の間隔(押圧の解除されている時間)が第一の所定時間以内であって、その二度の押圧のうちの二度目の押圧の継続時間が第二の所定時間以上であることを条件として、その条件を満たしていない場合にはシリンダ装置Cの操作速度として第一の速度である通常の速度を選択する。その一方、前記条件を満たしている場合には、速度選択部6はシリンダ装置Cの操作速度として第二の速度である高速を選択する。
【0023】
これにより、使用者が伸長操作用の押しボタン4を押圧した場合、その押圧操作が前記条件を満たしていればシリンダ装置Cが高速で伸長し、前記条件を満たさなければシリンダ装置Cが通常の速度で伸長する。同様に、使用者が収縮操作用の押しボタン5を押圧した場合、その押圧操作が前記条件を満たしていればシリンダ装置Cが高速で収縮し、前記条件を満たさなければシリンダ装置Cが通常の速度で収縮する。
【0024】
なお、前記第一、第二の所定時間は、個別に任意に設定できるが、本実施の形態のコントローラ1では、第一の所定時間が0.3秒、第二の所定時間が0.2秒に設定されている。このため、以下の説明では、第一の所定時間を単に「0.3秒」、第二の所定時間を単に「0.2秒」と記載する場合があるが、これらはそれぞれ「第一の所定時間」、「第二の所定時間」と読み替えられる。さらに、以下の説明では、0.3秒(第一の所定時間)以内の間隔でなされる二度の押圧を「二度押し」という。
【0025】
また、「高速」とは、通常の速度よりも速い速度である。換言すると、押しボタン4,5の押圧操作が前記条件を満たす場合に選択される第二の速度は、前記条件を満たさない場合に選択される第一の速度よりも速い速度である。そして、これら第一、第二の速度も、個別に自由に設定できる。
【0026】
つづいて、本実施の形態の速度選択部6におけるシリンダ装置Cの操作速度の選択手順について説明する。
図3に示すように、まず、速度選択部6は、押しボタン4,5が押圧されたか否かを判断する(ステップF1)。このステップF1での判断の結果が是(yes)である、即ち、押しボタン4,5が押圧された場合、速度選択部6は二度押し判定フラグがオンになっているか否かを判断する(ステップF2)。
【0027】
この二度押し判定フラグをオンにする手順については、後述するが、この二度押し判定フラグは押しボタン4,5の押圧が一旦解除された後、0.3秒(第一の所定時間)以内に再び押圧された場合にオンになる。このことは、押しボタン4,5の二度の押圧の間隔が0.3秒以内、即ち、押しボタン4,5の二度押し操作がなされたことを意味する。
【0028】
次に、ステップF2の判断の結果が是(yes)である、即ち、二度押し判定フラグがオンの場合、速度選択部6は押しボタン4,5の押圧が0.2秒(第二の所定時間)以上継続されているか否かを判断する(ステップF3)。そして、このステップF3の判断の結果が是(yes)である、即ち、押しボタンの押圧が0.2秒以上継続されている場合、速度選択部6はシリンダ装置Cの操作速度として高速を選択する(ステップF4)。
【0029】
その一方、ステップF2の判断の結果が否(no)である、即ち、二度押し判定フラグがオフの場合、及び、ステップF3の判断の結果が否(no)である、即ち、押しボタン4,5の押圧の継続時間が0.2秒未満の場合には、速度選択部はシリンダ装置Cの操作速度として通常の速度を選択する(ステップF5)。
【0030】
つまり、速度選択部6は、押しボタン4,5が押圧されたと判断した場合であって、その押圧が二度押し操作の二度目の押圧で、且つ、その押圧が0.2秒以上継続されている場合にのみシリンダ装置Cの操作速度として高速を選択し、それ以外の場合には、シリンダ装置Cの操作速度として通常の速度を選択する。
【0031】
そして、速度選択部6は、シリンダ装置Cの操作速度を選択した後、押しボタン4,5の押圧が解除されたか否かを判断する(ステップF6)。このステップF6の判断の結果が是(yes)である、即ち、押しボタン4,5の押圧が解除された場合、速度選択部6はシリンダ装置Cの操作として停止を選択する(ステップF7)。
【0032】
その一方、ステップF6の判断の結果が否(no)である、即ち、押しボタン4,5の押圧が続いている場合には、二度押し判定フラグがオンか否かの判断(ステップF2)へ戻る。これにより、シリンダ装置Cは、押しボタン4,5の押圧が継続されている間は、ステップF4,F5で選択された操作速度で操作され、押圧されている押しボタン4,5に応じて伸長又は収縮する。
【0033】
また、速度選択部6は、ステップF7でシリンダ装置Cの操作として停止を選択した後、0.3(第一の所定時間)以内に押しボタン4,5が押圧されたか否かを判断する(ステップF8)。この判断の結果が是(yes)である、即ち、押しボタン4,5の押圧が一旦解除され、0.3秒以内に押しボタン4,5が再び押圧された(二度押しされた)場合、速度選択部6は二度押し判定フラグをオンにして(ステップF9)、二度押し判定フラグがオンか否かの判断(ステップF2)へ戻る。
【0034】
その一方、ステップF8の判断の結果が否(no)である、即ち、押しボタン4,5の押圧が解除されてから0.3秒以内に押しボタン4,5が再び押圧されない場合、速度選択部6は二度押し判定フラグをオフにして(ステップF10)、処理を終了する。また、ステップF1の判断の結果が否(no)である、即ち、押しボタン4,5の押圧がない場合にも、速度選択部6は処理を終了する。そして、速度選択部6は、所定の制御周期毎に前述の一連の処理を繰り返し実行する。
【0035】
なお、前述の一連の処理を可能にするコントローラ1は、ハードフェア資源として、例えば、押しボタン4,5の押圧条件に応じてシリンダ装置Cの操作速度を変更するのに必要なプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、前記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、前記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えていればよく、コントローラ1における各部は、CPUの前記プログラムの実行により実現できる。
【0036】
以下に、本実施の形態のコントローラ1を利用したシリンダ装置Cの操作の一例を記載する。
【0037】
テーブルTが目標とする位置(目標位置)から離れた位置にある場合等、シリンダ装置Cを高速で伸長又は収縮させて、テーブルTを目標位置に大まかに近づける場面では、使用者は、テーブルTの位置を上げるか下げるかに応じて
図1中左右何れかの押しボタン4,5を選択して二度押しし、その二度目の押圧を0.2秒以上継続する。すると、使用者がその二度目の押圧を継続している間、押圧されている押しボタン4,5に応じてシリンダ装置Cが高速で伸長又は収縮し、テーブルTが目標位置に速やかに接近する。
【0038】
その一方、目標位置付近にあるテーブルTを目標位置にあわせる場合等、シリンダ装置Cを少しずつ伸長又は収縮させて、テーブルTの位置を微調整する場面では、使用者は、テーブルTの位置を注視しながら、その位置を上げるか下げるかに応じて
図1中左右何れかの押しボタン4,5を選択し、その押圧と解除を繰り返す。
【0039】
このような微調整時に使用者が押しボタン4,5を連打して、押しボタン4,5の押圧と解除が短時間で繰り返され、押圧の間隔が0.3秒以内になったとしても、それだけではシリンダ装置Cの操作速度が高速にはならず、通常の速度に維持される。このため、使用者が押しボタン4,5を連打した場合には、シリンダ装置Cが短い時間で伸長又は収縮と停止とを繰り返しつつ小刻みに動き、テーブルTが目標位置に少しずつ接近する。
【0040】
また、微調整時に使用者が押しボタン4,5を長押しして、押しボタン4,5の押圧が0.2秒以上継続されたとしても、それだけではシリンダ装置Cの操作速度が高速にはならず、通常の速度に維持される。このため、使用者が微調整時に押しボタン4,5を長押しした場合には、シリンダ装置Cが通常の速度で伸長又は収縮し、テーブルTが適度な速度で目標位置に接近する。
【0041】
さらに、押しボタン4,5の押圧の間隔が0.3秒以内になるには、使用者が指を速く動かす必要がある。その一方、押しボタン4,5の押圧を0.2秒以上継続するには、使用者が指をその場に留め置く必要がある。このように、押しボタン4,5の押圧の間隔を0.3秒以内にするという操作と、押圧を0.2秒以上継続するという操作には、全く逆の思考が必要になる。
【0042】
このため、シリンダ装置Cを高速で動かすのに必要な、押しボタン4,5の二度の押圧の間隔が0.3秒以内で、且つ、その二度目の押圧の継続時間が0.2秒以上という押圧条件を満たすには、使用者の明確な意図が必要になる。換言すると、シリンダ装置Cを高速で動かそうとする使用者の明確な意図なくして、シリンダ装置Cは高速では動かない。よって、シリンダ装置Cが意図せず高速で動いて目標位置でテーブルTを止められず、テーブルTにセットされた供試体を破損せずに済む。
【0043】
以下に、本実施の形態のコントローラ1の作用効果について説明する。
【0044】
本実施の形態のコントローラ1は、シリンダ装置(制御対象)Cを操作可能なコントローラであって、使用者が押圧可能な押しボタン4,5と、この押しボタン4,5の押圧条件に応じてシリンダ装置Cの操作速度を選択する速度選択部6とを備える。
【0045】
そして、その速度選択部6は、押しボタン4,5の二度の押圧の間隔が0.3秒(第一の所定時間)以内であって、その二度の押圧のうちの二度目の押圧の継続時間が0.2秒(第二の所定時間)以上であることを条件として、この条件を満たしていない場合には、シリンダ装置Cの操作速度として通常の速度(第一の速度)を選択する。その一方、前記条件を満たしている場合、速度選択部6はシリンダ装置Cの操作速度として高速(第一の速度よりも速い第二の速度)を選択する。
【0046】
前記構成によれば、押しボタン4,5の押圧条件に応じてシリンダ装置Cの操作速度を選択し、その操作速度を変更できる。さらに、シリンダ装置Cの操作速度として高速を選択するのに必要な、押しボタン4,5の二度の押圧の間隔が0.3秒(第一の所定時間)以内で、且つ、その二度目の押圧の継続時間が0.2秒(第二の所定時間)以上という条件を満たすよう、使用者が明確な意図をもって押しボタン4,5を操作しない限り、シリンダ装置Cが高速では動かない。
【0047】
つまり、使用者が明確な意図をもってシリンダ装置Cの操作速度を高速に変更しようとしない限り、シリンダ装置Cの操作速度が通常の速度に維持される。このため、従来のような、シリンダ装置等の制御対象の操作速度が自動で切り換わるのを防ぐことを目的とする、押しボタンから定期的に指を離す操作が不要で、その操作ミスも防げる。さらに、押しボタン4,5の押圧条件に応じてシリンダ装置Cの操作速度が変更されるので、操作速度ごとに押しボタンを分けて設けた場合の押し間違いを防止でき、この押し間違いを防ぐための確認作業も不要になる。
【0048】
これらのことから、本実施の形態のコントローラ1によれば、シリンダ装置(制御対象)Cの操作速度を変更できるとともに、操作性を良好にできる。さらには、本実施の形態のコントローラ1をシリンダ装置C等の質量をもった物体を変位させるのに利用する場合であっても、シリンダ装置C等の制御対象が意図せず高速で動いて、シリンダ装置Cにセットされた供試体等の部材が破損するのを防止できる。このため、本実施の形態のコントローラ1は、シリンダ装置C等の質量をもった物体を変位させるのにも適している。
【0049】
しかし、本発明に係るコントローラの操作対象は自由に選択できる。例えば、本発明に係るコントローラを単なる数値設定に利用してもよい。そして、このように本発明に係るコントローラを数値設定に利用する場合であって、押しボタンを押し続けると0~9の数値が繰り返しこの順に変更される場合等には、押しボタンの数は一つでもよい。このように、コントローラの利用目的に応じて押しボタンの数も適宜変更できる。
【0050】
また、本実施の形態のコントローラ1の速度選択部6は、押しボタン4,5の押圧が解除され、この押しボタン4,5の押圧の解除から0.3秒(第一の所定時間)以内に押しボタン4,5が再び押圧されたと判断した場合、二度押し判定フラグをオンにする(ステップF6,F8,F9)。さらに、速度選択部6は、二度押し判定フラグがオンであって押しボタン4,5の押圧が0.2秒(第二の所定時間)以上継続されていると判断した場合に、シリンダ装置Cの操作速度として高速(第二の速度)を選択する(ステップF2,F3,F4)。
【0051】
前記構成によれば、押しボタン4,5の二度の押圧の間隔が0.3秒(第一の所定時間)以内であって、その二度の押圧のうちの二度目の押圧の継続時間が0.2秒(第二の所定時間)以上であることを条件として、この条件を満たしている場合に、速度選択部6がシリンダ装置Cの操作速度として高速(第二の速度)を選択できる。
【0052】
また、そのような処理を行う本実施の形態のコントローラ1の速度選択部6は、押しボタン4,5の押圧の解除から0.3秒(第一の所定時間)以内に押しボタン4,5が再び押圧されていないと判断した場合、二度押し判定フラグをオフにする(ステップF6,F8、F10)。
【0053】
前記構成によれば、押しボタン4,5の二度の押圧の間隔が0.3秒(第一の所定時間)以内であって、その二度の押圧のうちの二度目の押圧の継続時間が0.2秒(第二の所定時間)以上であることを条件として、この条件を満たさない場合に、速度選択部6がシリンダ装置Cの操作速度として通常の速度(第一の速度)を選択できる。
【0054】
しかし、速度選択部6が前記条件を満たさない場合にシリンダ装置Cの操作速度として通常の速度(第一の速度)を選択し、前記条件を満たす場合にシリンダ装置Cの操作速度として高速(第二の速度)を選択するための処理は、前述の処理に限らず適宜変更できる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
C・・・シリンダ装置(制御対象)、1・・・コントローラ、4,5・・・押しボタン、6・・・速度選択部