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特許7185504二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/42 20210101AFI20221130BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20221130BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20221130BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20221130BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20221130BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20221130BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221130BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221130BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20221130BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20221130BHJP
【FI】
H01M50/42
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/403 D
B32B5/18
B32B27/30 A
C08J9/36 CEY
C08J7/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018217140
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020087591
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】上成 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】香川 靖之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 寿洋
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/026095(WO,A1)
【文献】特表2010-520591(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173717(WO,A1)
【文献】特開2015-088253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
B32B 5/18
B32B 27/30
C08J 9/36
C08J 7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、
(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、
前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、
前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有することを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項2】
記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程と、
前記第1ポリマーの存在下で、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程と
を備え、
前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であることを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法。
【請求項4】
(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程と、
前記第2ポリマーの存在下で、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程と
を備え、
前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であることを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含むことを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材。
【請求項6】
さらに、親水性樹脂と、顔料と、分散剤とを含むことを特徴とする、請求項5に記載の二次電池セパレータ用コート材。
【請求項7】
多孔膜と、
前記多孔膜の少なくとも片面に配置される請求項5または6に記載のセパレータ用コート材の塗布膜とを備えることを特徴とする、二次電池セパレータ。
【請求項8】
多孔膜の少なくとも片面に、請求項5または6に記載のセパレータ用コート材を塗布する工程を備えることを特徴とする、二次電池セパレータの製造方法。
【請求項9】
正極と、
負極と、
前記正極および前記負極の間に配置される請求項7に記載される二次電池セパレータとを備えることを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池、詳しくは、二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法、二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、二次電池セパレータを製造する方法、二次電池セパレータを備える二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池内には、正極と負極とを隔離し、電解液中のイオンを通過させるためのセパレーターが備えられている。
【0003】
このようなセパレーターとしては、例えば、ポリオレフィン多孔膜が知られている。
【0004】
セパレーターが、熱による収縮で形状が変化すると、正極と負極との間でショートする可能性があるため、耐熱性が要求される。そのため、セパレーターに耐熱コート層を設ける場合がある。
【0005】
また、セパレーターは、電解液に浸漬されるが、耐熱コート層に耐溶剤性がない場合には、セパレーターにコーティングされた耐熱コート層が剥がれる場合がある。そのため、耐熱コート層には、耐電解液性が要求される。
【0006】
このような耐熱コート層を形成するためのコート材として、例えば、フィラーとポリビニルアルコールとを含む分散液が知られている(例えば、特許文献1の実施例1参照。)。
【0007】
また、コート材として、無機粒子とスチレン-ブタジエンゴムとを含む塗料が知られている(例えば、特許文献2の実施例1参照。)。
【0008】
また、コート材として、耐熱性の観点から、例えば、無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体、不飽和カルボン酸単量体、および、架橋性単量体を原料単位として含む共重合体である樹脂製バインダとを含む塗布液が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-030951号公報
【文献】特開2016-072231号公報
【文献】特開2011-832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、我々は地球温暖化とピークオイルという社会問題に直面している。そのため、これまで通りエンジン自動車を永続的に使い続けることは非常に困難である。この2つの問題を受け、世界中の企業はEV(電気自動車)社会を目指し始めている。
【0011】
このような背景により、車載用リチウムイオン二次電池の需要は世界的なEV車の増加に伴い、著しく拡大している。また2020年のリチウムイオン二次電池の市場規模は車載向けが小型民生向けを上回る見通しである。
【0012】
小型民生用と比較して、車載用リチウムイオン二次電池は高容量である。電池が高容量化するほど、異常発火のリスクが高まる。そのため、特許文献1~3のコート材をコーティングすることにより得られるセパレーターよりも、更なる耐熱性および耐電解液性が求められている。
【0013】
また、セパレーターには、一層優れたイオン透過性が要求されている。
【0014】
本発明の目的は、優れた耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性を発現することのできる二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、その二次電池セパレータの製造方法、その二次電池セパレータを備える二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明[1]は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満である、二次電池セパレータ用コート材原料である。
【0016】
本発明[2]は、前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する、上記[1]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0017】
本発明[3]は、前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である、上記[1]または[2]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0018】
本発明[4]は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程と、前記第1ポリマーの存在下で、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程とを備え、前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満である、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法である。
【0019】
本発明[5]は、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程と、前記第2ポリマーの存在下で、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程とを備え、前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満である、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法である。
【0020】
本発明[6]は、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含む、二次電池セパレータ用コート材を含んでいる。
【0021】
本発明[7]は、さらに、親水性樹脂と、顔料と、分散剤とを含む、上記[6]に記載の二次電池セパレータ用コート材を含んでいる。
【0022】
本発明[8]は、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも片面に配置される上記[6]または[7]に記載のセパレータ用コート材の塗布膜とを備える、二次電池セパレータを含んでいる。
【0023】
本発明[9]は、多孔膜の少なくとも片面に、上記[6]または[7]に記載のセパレータ用コート材を塗布する工程を備える、二次電池セパレータの製造方法を含んでいる。
【0024】
本発明[10]は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される上記[8]に記載される二次電池セパレータとを備える、二次電池を含んでいる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含む。そのため、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材を用いて得られる二次電池セパレータは、耐熱性および耐電解液性に優れる。
【0026】
また、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満である。そのため、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材を用いて得られる二次電池セパレータは、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性をバランスよく向上させることができる。
【0027】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程と、第1ポリマーの存在下で、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程を備えるか、または、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程と、第2ポリマーの存在下で、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程とを備える。
【0028】
また、第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満である。
【0029】
そのため、この方法により得られる二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材を用いて得られる二次電池セパレータは、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性をバランスよく向上させることができる。
【0030】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料を含む。そのため、この二次電池セパレータ用コート材を用いて得られる二次電池セパレータは、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性に優れる。
【0031】
本発明の二次電池セパレータは、本発明の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備えている。そのため、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性に優れる。
【0032】
本発明の二次電池セパレータは、多孔膜の少なくとも片面に、本発明のセパレータ用コート材の塗布する工程を備えている。そのため、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性に優れる二次電池セパレータを製造することができる。
【0033】
本発明の二次電池は、本発明の二次電池セパレータ備えている。そのため、耐熱性、耐電解液性および発電効率に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含んでいる。
【0035】
第1ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる重合体である。
【0036】
第1モノマー成分は、必須成分として、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルを含む(以下同様)。
【0037】
第1モノマー成分が、(メタ)アクリロニトリルを含めば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、耐電解液性に優れる。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~12のアルキルエステルなどが挙げられ、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、より好ましくは、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレートが挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリロニトリルとしては、好ましくは、アクリロニトリルが挙げられる。つまり、第1モノマー成分は、好ましくは、アクリロニトリルを含有する。
【0040】
第1モノマー成分が、アクリロニトリルを含めば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、より一層、耐電解液性に優れる。
【0041】
また、第1モノマー成分は、任意成分として、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルと共重合可能な共重合性モノマー(以下、第1共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。
【0042】
第1共重合性モノマーとしては、例えば、官能基含有ビニルモノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニルモノマー、N-置換不飽和カルボン酸アミド、複素環式ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、α-オレフィン類、ジエン類などが挙げられる。
【0043】
官能基含有ビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、アミノ基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマーおよびその塩、アセトアセトキシ基含有ビニルモノマー、リン酸基含有化合物などが挙げられる。
【0044】
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸などのモノカルボン酸、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸などのジカルボン酸、または、これらの塩などが挙げられる。
【0045】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(N-メチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルなどが挙げられる。
【0047】
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0048】
スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸などが挙げられる。また、その塩としては、上記スルホン酸基含有ビニルモノマーの、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、例えば、アンモニウム塩などが挙げられる。具体的には、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0049】
アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチルなどが挙げられる。
【0050】
リン酸基含有化合物としては、例えば、2-メタクロイロキシエチルアシッドフォスフェートなどが挙げられる。
【0051】
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0052】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0053】
N-置換不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0054】
複素環式ビニル化合物としては、例えば、ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0055】
ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0056】
α-オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0057】
ジエン類としては、例えば、ブタジエンなどが挙げられる。
【0058】
さらに、第1共重合性モノマーとして、架橋性ビニルモノマーを挙げることもできる。
【0059】
架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール鎖含有ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレートなど、2つ以上のビニル基を含有する化合物などが挙げられる。
【0060】
これら第1共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0061】
第1共重合性モノマーとして、好ましくは、官能基含有ビニルモノマー、N-置換不飽和カルボン酸アミドまたはそれらの併用、より好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、N-置換不飽和カルボン酸アミドまたはそれらの併用、さらに好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーとN-置換不飽和カルボン酸アミドとの併用、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーとの併用が挙げられる。
【0062】
カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーとN-置換不飽和カルボン酸アミドとを併用すれば、分散安定性が向上し、かつ、官能基同士が分子間で縮合し、高分子量化することで耐溶剤性が向上する。
【0063】
とりわけ好ましくは、メタクリル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとN-メチロールアクリルアミドとの併用、メタクリル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとの併用が挙げられる。
【0064】
第1共重合性モノマーが、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーとN-置換不飽和カルボン酸アミドとを含有する場合には、カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合は、第1共重合性モノマー100質量部に対して、例えば、25質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下であり、また、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上であり、また、例えば、12質量部以下である。また、水酸基含有ビニルモノマーの含有割合は、第1共重合性モノマー100質量部に対して、例えば、35質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下であり、また、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上であり、また、例えば、12質量部以下である。また、N-置換不飽和カルボン酸アミドの含有割合は、第1共重合性モノマー100質量部に対して、例えば、3質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下であり、また、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下である。
【0065】
第1共重合性モノマーが、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーとを含有する場合には、カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合は、第1共重合性モノマー100質量部に対して、例えば、15質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下であり、また、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下である。また、水酸基含有ビニルモノマーの含有割合は、第1共重合性モノマー100質量部に対して、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、85質量部以下であり、また、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下である。
【0066】
第1モノマー成分において、(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルの総量100質量部に対して、例えば、15質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、34質量部以上であり、また、例えば、85質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、66質量部以下である。
【0067】
また、(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、65質量部以下である。
【0068】
また、(メタ)アクリロニトリルの含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルの総量100質量部に対して、例えば、15質量部以上、好ましくは、20質量部以上、好ましくは、34質量部以上であり、また、例えば、85質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、66質量部以下である。
【0069】
また、(メタ)アクリロニトリルの含有割合は、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、35質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0070】
(メタ)アクリロニトリルの含有割合が、上記下限以上であれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、耐電解液性に優れる。
【0071】
(メタ)アクリロニトリルの含有割合が、上記上限以下であれば、成膜性が向上し、基材(多孔膜(後述))との密着性が向上する。
【0072】
また、第1モノマー成分が第1共重合性モノマーを含む場合には、第1共重合性モノマーの含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルの総量100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、22質量部以下である。
【0073】
また、第1共重合性モノマーの含有割合は、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、24質量部以下である。
【0074】
すなわち、第1モノマー成分は、第1共重合性モノマーを含有することなく、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルのみであってもよく、また、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリロニトリルと第1共重合性モノマーとが上記の割合で併用されていてもよい。好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリロニトリルと第1共重合性モノマーとが上記の割合で併用される。
【0075】
そして、第1ポリマーは、上記した第1モノマー成分を、後述する方法で、重合してなる重合体である。
【0076】
このようにして得られる第1ポリマーは、第2ポリマーに対して、相対的に、疎水性を有する。
【0077】
第2ポリマーは、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる重合体である。
【0078】
第2モノマー成分は、必須成分として、(メタ)アクリルアミドを含有する。
【0079】
第2モノマー成分が、(メタ)アクリルアミドを含有すれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、耐熱性に優れる。
【0080】
(メタ)アクリルアミドとしては、好ましくは、メタクリルアミドが挙げられる。つまり、第2モノマー成分は、好ましくは、メタクリルアミドを含有する。
【0081】
第2モノマー成分が、メタクリルアミドを含有すれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、より一層耐熱性に優れる。
【0082】
また、第2モノマー成分は、任意成分として、(メタ)アクリルアミドと共重合可能な共重合性モノマー(以下、第2共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。
【0083】
第2共重合性モノマーとしては、例えば、上記した(メタ)アクリル酸エステル、上記した官能基含有ビニルモノマー、上記したビニルエステル類、上記した芳香族ビニルモノマー、上記したN-置換不飽和カルボン酸アミド、上記した複素環式ビニル化合物、上記したハロゲン化ビニリデン化合物、上記したα-オレフィン類、上記したジエン類、上記した架橋性ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0084】
また、第2共重合性モノマーとしては、さらに、官能基含有ビニルモノマーとして、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0085】
これら第2共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0086】
第2共重合性モノマーとして、好ましくは、官能基含有ビニルモノマー、架橋性ビニルモノマーまたはそれらの併用、より好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、架橋性ビニルモノマーまたはそれらの併用、さらに好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーとの併用、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーと架橋性ビニルモノマーとの併用が挙げられる。つまり、第2モノマー成分は、好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する。
【0087】
第2モノマー成分が、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有すれば、分散安定性が向上し、また、二次電池セパレータ用コート材原料と顔料(後述)との混和安定性が良好となる。
【0088】
第2共重合性モノマーが、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する場合には、カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合は、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーの総量100質量部に対して、例えば、35質量部以上、好ましくは、45質量部以上であり、また、例えば、85質量部以下、好ましくは、80質量部以下であり、また、第2モノマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、25質量部以下である。また、水酸基含有ビニルモノマーの含有割合は、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーの総量100質量部に対して、例えば、15質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、65質量部以下、好ましくは、55質量部以下であり、また、第2モノマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下である。
【0089】
第2共重合性モノマーが、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーと架橋性ビニルモノマーとを含有する場合には、カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合は、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーと架橋性ビニルモノマーとの総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上であり、また、例えば、48質量部以下、好ましくは、45質量部以下であり、また、第2モノマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。また、水酸基含有ビニルモノマーの含有割合は、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーと架橋性ビニルモノマーとの総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上であり、また、例えば、48質量部以下、好ましくは、45質量部以下であり、また、第2モノマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。また、架橋性ビニルモノマーの含有割合は、カルボキシル基含有ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーと架橋性ビニルモノマーとの総量100質量部に対して、例えば、4質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、60質量部以下、好ましくは、20質量部以下であり、また、第2モノマー成分100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下である。
【0090】
また、第2共重合性モノマーとして、とりわけ好ましくは、メタクリル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとの併用、メタクリル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとメチレンビスアクリルアミドとの併用、メタクリル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとポリエチレングリコールジメタクリレートとの併用が挙げられる。
【0091】
第2モノマー成分において、(メタ)アクリルアミドの含有割合は、第2モノマー成分100質量部に対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、99質量部以下、より好ましくは、95質量部以下、さらに好ましくは、90質量部以下、とりわけ好ましくは、80質量部以下である。
【0092】
(メタ)アクリルアミドの含有割合が、上記下限以上であれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、耐熱性に優れる。
【0093】
(メタ)アクリルアミドの含有割合が、上記上限以下であれば、第2モノマー成分に官能基含有ビニルモノマーを導入でき、分散安定性が向上し、また、二次電池セパレータ用コート材原料と顔料(後述)との混和安定性が良好となる。
【0094】
また、第2モノマー成分が、第2共重合性モノマーを含む場合には、第2共重合性モノマーの含有割合は、(メタ)アクリルアミド100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、70質量部以下である。
【0095】
また、第2共重合性モノマーの含有割合は、第2モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、45質量部以下である。
【0096】
すなわち、第2モノマー成分は、第2共重合性モノマーを含有することなく、(メタ)アクリルアミドのみであってもよく、また、(メタ)アクリルアミドと第2共重合性モノマーとが上記の割合で併用されていてもよい。好ましくは、(メタ)アクリルアミドと第2共重合性モノマーとが上記の割合で併用される。
【0097】
そして、第2ポリマーは、上記した第2モノマー成分を、後述する方法で、重合してなる重合体である。
【0098】
このようにして得られる第2ポリマーは、第1ポリマーに対して、相対的に、親水性を有する。
【0099】
次に、二次電池セパレータ用コート材原料を製造する方法について、説明する。
【0100】
具体的には、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法として、第1モノマー成分を重合し、第1ポリマーを得た後に、第1ポリマー存在下で、第2モノマー成分を重合する方法(第1方法)、第2モノマー成分を重合し、第2ポリマーを得た後に、第2ポリマー存在下で、第1モノマー成分を重合する方法(第2方法)が挙げられる。
【0101】
最初に、第1方法について説明する。
【0102】
第1方法は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程(第1工程)と、第1ポリマーの存在下で、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程(第2工程)とを備える。
【0103】
第1工程では、まず、第1モノマー成分を重合する。
【0104】
具体的には、水に、第1モノマー成分および重合開始剤を配合し、水中において、第1モノマー成分を重合する。
【0105】
重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなど)、過酸化水素、有機ハイドロパーオキサイド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)酸などの水溶性開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤、さらには、レドックス系開始剤などが挙げられる。これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0106】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0107】
重合条件としては、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、30時間以下、好ましくは、20時間以下である。
【0108】
また、第1ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、乳化剤(界面活性剤)を配合することができる。
【0109】
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸塩など)、脂肪族スルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ラウリル硫酸アンモニウムなどのアニオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型などのノニオン性界面活性剤などが挙げられ、好ましくは、アニオン性界面活性剤、より好ましくは、ラウリル硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0110】
乳化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0111】
また、第1ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、例えば、pH調整剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩などの金属イオン封止剤、例えば、メルカプタン類、低分子ハロゲン化合物などの分子量調節剤(連鎖移動剤)など、公知の添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0112】
また、第1ポリマーの重合前または第1ポリマーの重合後には、アンモニアなどの中和剤を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0113】
これにより、第1モノマー成分が重合され、第1ポリマーが得られる。
【0114】
また、このような第1ポリマーは、水に分散された分散液として得られる。
【0115】
この分散液において、第1ポリマーの固形分濃度は、例えば、5質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0116】
次いで、第2工程では、第1ポリマー存在下で、第2モノマー成分を重合する。
【0117】
具体的には、第1ポリマーを含む水分散液に、第2モノマー成分および上記した重合開始剤を配合し、その後、好ましくは、熟成する。
【0118】
重合開始剤としては、特に制限されないが、上記した第1モノマー成分の重合に用いられるものと同様の重合開始剤が挙げられる。これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0119】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第2モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、5質量部以下である。
【0120】
重合条件としては、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0121】
熟成時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、また、例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0122】
また、第2ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、上記した乳化剤(界面活性剤)および添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0123】
また、第2ポリマーの重合前または第2ポリマーの重合後には、アンモニアなどの中和剤を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0124】
これにより、第2モノマー成分が重合され、第2ポリマーが得られる。
【0125】
その結果、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む分散液(二次電池セパレータ用コート材原料)が得られる。
【0126】
また、第1ポリマーの表面において第2モノマー成分が重合すると、二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマー(コア)が、第2ポリマー(シェル)で被覆されているコアシェル粒子として得られる場合がある。
【0127】
この分散液において、二次電池セパレータ用コート材原料の含有量(分散液の固形分濃度)は、例えば、5質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0128】
また、分散液のpH値は、例えば、6以上であり、また、例えば、11以下である。
【0129】
上記のpH値が、上記の範囲内であれば、分散安定性が向上し、また、二次電池セパレータ用コート材原料と顔料(後述)との混和安定性が担保される。
【0130】
続いて、第2方法について説明する。
【0131】
第2方法は、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程(第3工程)と、第2ポリマーの存在下で、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程(第4工程)とを備える。
【0132】
第3工程では、まず、第2モノマー成分を重合する。
【0133】
具体的には、水に、第2モノマー成分および上記した重合開始剤を配合し、水中において、第2モノマー成分を重合する。
【0134】
重合開始剤としては、好ましくは、水溶性開始剤、より好ましくは、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)酸が挙げられる。
【0135】
これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0136】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第2モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0137】
重合条件としては、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0138】
また、第2ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、上記した乳化剤(界面活性剤)を配合することができる。
【0139】
乳化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0140】
また、第2ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、例えば、pH調整剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩などの金属イオン封止剤、例えば、メルカプタン類、低分子ハロゲン化合物などの分子量調節剤(連鎖移動剤)など、公知の添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0141】
また、第2ポリマーの重合前または第2ポリマーの重合後には、アンモニアなどの中和剤を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0142】
これにより、第2モノマー成分が重合され、第2ポリマーが得られる。
【0143】
また、このような第2ポリマーが水溶液として得られる。
【0144】
第2ポリマーを含む水溶液において、第2ポリマーの固形分濃度は、例えば、5質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0145】
次いで、第4工程では、第2ポリマー存在下で、第1モノマー成分を重合する。
【0146】
具体的には、第2ポリマーを含む水溶液に、第1モノマー成分および上記した重合開始剤を配合し、その後、好ましくは、熟成する。
【0147】
重合開始剤としては、好ましくは、水溶性開始剤、より好ましくは、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)酸が挙げられる。
【0148】
これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0149】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、10質量部以下である。
【0150】
重合条件としては、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0151】
熟成時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、また、例えば、6時間以下である。
【0152】
また、第1ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、上記した乳化剤(界面活性剤)および添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0153】
乳化剤としては、好ましくは、アニオン性界面活性剤、より好ましくは、ラウリル硫酸アンモニウムが挙げられる。これら乳化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0154】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、また、例えば、5質量部以下である。
【0155】
また、第1ポリマーの重合前または第1ポリマーの重合後には、アンモニアなどの中和剤を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0156】
これにより、第1モノマー成分が重合され、第1ポリマーが得られる。
【0157】
その結果、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む分散液(二次電池セパレータ用コート材原料)が得られる。
【0158】
また、水中において先に形成されている第2ポリマー内で、相対的に疎水性の第1ポリマーが重合すると、二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマー(コア)が、第2ポリマー(シェル)で被覆されているコアシェル粒子として得られる場合がある。
【0159】
この分散液において、二次電池セパレータ用コート材原料の含有量(分散液の固形分濃度)は、例えば、5質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0160】
また、分散液のpH値は、例えば、6以上であり、また、例えば、11以下である。
【0161】
上記のpH値が、上記の範囲内であれば、分散安定性が向上し、また、二次電池セパレータ用コート材原料と顔料(後述)との混和安定性が担保される。
【0162】
なお、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法は、上記した方法に限定されず、例えば、上記した方法によって、第1ポリマーと第2ポリマーとを別々に製造した後、それらを混合することにより得ることもできる。好ましくは、二次電池セパレータ用コート材原料は、第1方法または第2方法により得られ、より好ましくは、二次電池セパレータ用コート材原料は、第1方法または第2方法により得られるコアシェル粒子である。
【0163】
このような二次電池セパレータ用コート材原料において、第2ポリマーの質量は、第1ポリマーの質量(第2ポリマー/第1ポリマー)の0.1倍以上、好ましくは、0.2倍以上、より好ましくは、0.3倍以上であり、また、100倍未満、好ましくは、50倍以下、より好ましくは、20倍以下、さらに好ましくは、15倍以下、とりわけ好ましくは、5倍以下、特に好ましくは、2.5倍以下、さらには、2.0倍以下、さらには、1.5倍以下である。
【0164】
詳しくは、二次電池セパレータ用コート材原料が、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、カルボキシル基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマーおよびN-置換不飽和カルボン酸アミドを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、(メタ)アクリルアミド、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含む場合には、第2ポリマーの質量は、第1ポリマーの質量(第2ポリマー/第1ポリマー)の0.1倍以上、好ましくは、0.2倍以上、より好ましくは、0.3倍以上であり、また、100倍未満、好ましくは、5倍以下、より好ましくは、2.5倍以下、さらに好ましくは、2.0倍以下、とりわけ好ましくは、1.5倍以下である。
【0165】
また、二次電池セパレータ用コート材原料が、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、(メタ)アクリルアミド、カルボキシル基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマーおよび必要により配合される架橋性モノマーを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含む場合には、第2ポリマーの質量は、第1ポリマーの質量(第2ポリマー/第1ポリマー)の0.1倍以上、好ましくは、2倍以上、より好ましくは、5倍以上であり、また、100倍未満、好ましくは、50倍以下、より好ましくは、20倍以下、さらに好ましくは、15倍以下である。
【0166】
第2ポリマーの質量が、上記下限以上であれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、耐熱性および耐電解液性に優れる。
【0167】
一方、第2ポリマーの質量が、上記下限未満であれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)の耐熱性および耐電解液性が低下する。
【0168】
また、第2ポリマーの質量が、上記上限以下であれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、イオン透過性に優れる。
【0169】
一方、第2ポリマーの質量が、上記上限を超過すれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)のイオン透過性が低下する。
【0170】
すなわち、第2ポリマーの質量が、上記下限未満であれば、イオン透過性を向上できるものの、耐熱性および耐電解液性が低下し、一方、上記上限を超過すると、耐熱性および耐電解液性を向上できるものの、イオン透過性が低下する。
【0171】
つまり、第2ポリマーの質量を、上記した所定の範囲とすることにより、難耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性の3つをバランスよく向上させることができる。
【0172】
なお、第1ポリマーの質量および第2ポリマーの質量は、第1モノマー成分および第2モノマー成分の仕込みの量から算出することができる。すなわち、上記の第2ポリマーの質量とは、第2モノマー成分の質量を意味し、上記の第1ポリマーの質量とは、第1モノマー成分の質量を意味する。
【0173】
また、二次電池セパレータ用コート材原料が、粒子である場合には、その平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、100nm以上、より好ましくは、300nm以上であり、また、例えば、3000nm以下、好ましくは、2000nm以下である。
【0174】
上記の平均粒子径は、粒子径測定装置(大塚電子社製、FPAR1000)にて粒子径を測定することにより求めることができる。
【0175】
二次電池セパレータ用コート材原料は、耐電解液性を付与する(メタ)アクリロニトリルと、耐熱性を付与する(メタ)アクリルアミドとを含んでいるため、耐電解液性および耐熱性の両方を向上させることができる。
【0176】
一方、ポリビニルアルコールまたはスチレン-ブタジエンゴムを主成分とするコート材は、(メタ)アクリロニトリルおよび(メタ)アクリルアミドを含んでおらず、耐電解液性および耐熱性を十分向上させることができない。
【0177】
また、特許文献3の合成例1では、モノマー成分として、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いており、(メタ)アクリロニトリルおよび(メタ)アクリルアミドを用いていない。そのため、耐電解液性および耐熱性を十分向上させることができない。
【0178】
また、二次電池セパレータ用コート材原料において、第1ポリマーは、耐電解液性を付与する(メタ)アクリロニトリルを含み、第2ポリマーは、耐熱性を付与する(メタ)アクリルアミドを含んでいる。
【0179】
そのため、耐電解液性および耐熱性を向上させることができる。
【0180】
一方、第1モノマー成分と第2モノマー成分とを一括して配合し、重合を開始すると、(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリルアミドとの重合体であるランダム重合体が形成される場合がある。このようなランダム重合体は、上記した第1ポリマーよりも、耐電解液性が低く、上記した第2ポリマーよりも耐熱性が低くなる。
【0181】
そして、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、二次電池セパレータ用コート材の原料として、好適に用いられる。
【0182】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料と、必要により、親水性樹脂と、顔料と、分散剤とを含んでいる。
【0183】
二次電池セパレータ用コート材原料の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材原料と、親水性樹脂と、顔料と、分散剤との総量(以下、二次電池セパレータ用コート材成分とする。)100質量部(固形分)に対して、例えば、0.1質量部以上(固形分)であり、また、例えば、10質量部以下(固形分)である。
【0184】
親水性樹脂は、二次電池セパレータ用コート材と多孔膜(後述)との密着性を向上させるために配合され、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0185】
なお、親水性樹脂は水に溶解して用いることができる。
【0186】
親水性樹脂の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、0.01質量部以上(固形分)であり、また、例えば、5質量部以下(固形分)である。
【0187】
顔料としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物、例えば、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素などの窒化物、例えば、シリコンカーバイド、炭酸カルシウムなどの炭化物、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムなどの水酸化物、例えば、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラスなどのケイ酸物、例えば、チタン酸カリウムなどが挙げられ、好ましくは、酸化物、水酸化物、より好ましくは、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムが挙げられる。
【0188】
顔料の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、50質量部以上(固形分)であり、また、例えば、99.7質量部以下(固形分)である。
【0189】
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0190】
分散剤がポリカルボン酸アンモニウムであれば、上記の二次電池セパレータ用コート材原料および顔料を均一に分散させることができ、厚みが均一な塗布膜(後述)を得ることができる。
【0191】
分散剤の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、0.1質量部以上(固形分)であり、また、例えば、5質量部以下(固形分)である。
【0192】
二次電池セパレータ用コート材を得るには、まず、水に、顔料および分散剤を上記の割合で配合し、顔料分散液を調製する。
【0193】
次いで、その顔料分散液に、二次電池セパレータ用コート材原料(または二次電池セパレータ用コート材原料を含む分散液)および親水性樹脂を上記の割合で配合し、撹拌する。
【0194】
撹拌方法は、特に限定されず、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根などによる機械撹拌などが挙げられる。
【0195】
これにより、二次電池セパレータ用コート材が得られる。
【0196】
また、このような二次電池セパレータ用コート材は、水に分散された分散液として得られる。
【0197】
また、二次電池セパレータ用コート材には、必要により、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、PH調製剤などの添加剤を、適宜の割合で配合することができる。
【0198】
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0199】
この二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料を含む。そのため、この二次電池セパレータ用コート材を用いて得られる二次電池セパレータは、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性に優れる。
【0200】
そして、この二次電池セパレータ用コート材は、二次電池セパレータのコート材として、好適に用いることができる。
【0201】
本発明の二次電池セパレータは、多孔膜を準備する工程、および、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材を塗布する工程を備える製造方法により製造することができる。
【0202】
多孔膜を準備する工程では、多孔膜を準備する。
【0203】
多孔膜は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン多孔膜、例えば、芳香族ポリアミド多孔膜などが挙げられ、好ましくは、ポリオレフィン多孔膜が挙げられる。
【0204】
多孔膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは5μm以上であり、また、例えば、40μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0205】
次いで、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材を塗布する工程では、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材の分散液を塗布し、その後、必要により、乾燥させ、これにより塗布膜を得る。
【0206】
塗布方法としては、特に制限がなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、マイクログラビアコート法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などが挙げられる。
【0207】
乾燥条件として、乾燥温度は、例えば、40℃以上であり、また、例えば、80℃以下である。
【0208】
塗布膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、8μm以下である。
【0209】
これにより、多孔膜と、多孔膜の少なくとも片面に配置される上記した二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備えた二次電池セパレータが製造される。
【0210】
なお、上記した説明では、多孔膜の少なくとも片面に、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を配置したが、多孔膜の両面に、上記の塗布膜を配置することもできる。
【0211】
この二次電池セパレータは、上記の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備えている。そのため、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性に優れる。
【0212】
そして、この二次電池セパレータは、二次電池のセパレータとして、好適に用いることができる。
【0213】
本発明の二次電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に配置される上記の二次電池セパレータと、正極、負極および上記の二次電池セパレータに含浸される電解質とを備える。
【0214】
正極としては、例えば、正極用集電体と、正極用集電体に積層される正極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0215】
正極用集電体としては、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスの導電材料などが挙げられる。
【0216】
正極活物質としては、特に制限されないが、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩など、公知の正極活物質が挙げられる。
【0217】
これら正極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0218】
負極としては、例えば、負極用集電体と、負極用集電体に積層される負極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0219】
負極用集電体としては、例えば、銅やニッケルの導電材料などが挙げられる。
【0220】
負極活物質としては、特に制限されないが、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボンなどの炭素活物質などが挙げられる。
【0221】
これら負極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0222】
電解質として、二次電池として、リチウムイオン電池が採用される場合には、例えば、リチウム塩が、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などのカーボネート化合物に溶解された溶液が挙げられる。
【0223】
そして、二次電池を製造するには、例えば、二次電池のセパレータを、正極と、負極との間に挟み込み、これらを電池筐体(セル)に収容して、電解質を電池筐体に注入する。これにより、二次電池を得ることができる。
【0224】
この二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えている。そのため、耐熱性、耐電解液性および発電効率に優れる。
【実施例
【0225】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
1.セパレータ用コート材原料の調製
製造例1
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに、蒸留水を360.9重量部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで、過硫酸アンモニウムを0.5部添加してから下記第1モノマー成分、乳化剤および水を3時間かけて連続的に添加し、さらに3時間保持して、アンモニア水にてpH9.0に調整して、重合を完結させた。水を適量加え、固形分が20.0%である第1ポリマーを含む分散液を得た。
【0226】
n-ブチルアクリレート 45.0部
アクリロニトリル 35.0部
メチルメタクリレート 8.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 5.0部
メタクリル酸 5.0部
N-メチロールアクリルアミド 2.0部
ラウリル硫酸アンモニウム 0.4部
蒸留水 40.0部
得られた第1ポリマーを含む分散液500部に、蒸留水を40重量部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウムを0.5部添加してから、下記第2モノマー成分および水の混合物を攪拌しながら2時間かけて連続的に添加した後、同温度で2時間熟成し、アンモニア水にてpH9.0に調整して、第2モノマー成分の重合を完結させた。その後、水を適量加え、第1ポリマーと第2ポリマーを含む分散液(セパレータ用コート材原料)を得た。分散液の固形分濃度は、20.0質量%であった。
【0227】
メタクリルアミド 17.5部
メタクリル酸 5.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 2.5部
蒸留水 52.5部
製造例2~製造例5、製造例15
配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、製造例1と同様に処理して、セパレータ用コート材原料を製造した。
【0228】
製造例6
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに、蒸留水を229.2重量部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで、2.3%アンモニア水溶液12.1部で溶解した4、4‘-アゾビス(4-シアノ吉草酸)1.1部を添加してから下記第2モノマー成分、25%アンモニア水および水を3時間かけて連続的に添加し、さらに4時間保持して、重合を完結させた。水を適量加え、固形分が15.0%である第2ポリマーを含む水溶液を得た。
【0229】
メタクリルアミド 90.0部
メタクリル酸 5.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 5.0部
25%アンモニア水 1.8部
蒸留水 333.3部
得られた第2ポリマーを含む水溶液6587.7部に、ラウリル硫酸ナトリウムを1.1重量部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。0.49%アンモニア水溶液203.3部で溶解した4、4‘-アゾビス(4-シアノ吉草酸)5.4部を添加してから、下記第1モノマー成分、乳化剤および水を1時間かけて連続的に添加した後、同温度で5時間熟成し、アンモニア水にてpH8.0に調整して、第21モノマー成分の重合を完結させた。その後、水を適量加え、第1ポリマーと第2ポリマーを含む分散液(セパレータ用コート材原料)を得た。分散液の固形分濃度は、15.0質量%であった。
【0230】
アクリロニトリル 45.0部
n-ブチルアクリレート 45.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 7.0部
メタクリル酸 3.0部
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3部
蒸留水 40.0部
製造例7~製造例14、製造例16
配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、製造例6と同様に処理して、セパレータ用コート材原料を製造した。
【0231】
製造例17
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに、蒸留水を74重量部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。アクアロンKH10(ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩:100%固形分/第一工業製薬(株)製)0.5質量部を投入した。次いで、過硫酸アンモニウムを0.15部添加してから下記モノマー成分、乳化剤および水を3時間かけて連続的に添加し、さらに2時間保持して、アンモニア水にてpH8.0に調整して、重合を完結させた。水を適量加え、固形分が40.0%である分散液を得た。
【0232】
メチルメタクリレート 26.5部
シクロヘキシルメタクリレート 6.0部
ブチルアクリレート 25.0部
2-エチルヘキシルメタクリレート 35.0部
メタクリル酸 1.0部
アクリル酸 1.5部
グリシジルメタクリレート 3.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレー ト 2.0部
アクアロンKH10 1.5部
ペルオキソ二硫酸アンモニウム 0.15部
水 65.0部
2.二次電池セパレータ用コート材および二次電池セパレータの製造
実施例1
顔料として、水酸化酸化アルミニウム(大明化学社製、ベーマイト GradeC06、粒子径:0.7μm)100質量部、分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサント5468)1.0質量部(固形分換算)を、110質量部の水に均一に分散させて顔料分散液を得た。別途、ポリビニルアルコール(WAKO社製、ポリビニルアルコール1000)10質量部を水90質量部に溶解し、10%ポリビニルアルコール水溶液を調製した。次いで、この顔料分散液に、製造例1で製造した分散液(固形分濃度20%)25質量部(すなわち、セパレータ用コート材原料5質量部(固形分換算))、および上記のポリビニルアルコール水溶液3質量部(ポリビニルアルコール0.3質量部(固形分換算))を添加後、15分間撹拌し、二次電池セパレータ用コート材を調製した。
【0233】
次いで、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に、上記の二次電池セパレータ用コート材をワイヤーバーを用いて塗工した。塗工後、50℃で乾燥することにより、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に5μmの塗工膜を形成した。
【0234】
これにより、二次電池セパレータを製造した。
【0235】
実施例2~実施例14、および、比較例1~比較例3
製造例1のセパレータ用コート材原料を、製造例2~製造例17のセパレータ用コート材原料に変更した以外は、実施例1と同様に処理して、二次電池セパレータを製造した。
【0236】
比較例4
製造例1のセパレータ用コート材原料に替えて、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA210)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、二次電池セパレータを得た。
3.評価
(耐熱性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータ用コート材を水で希釈し、固形分を19%に調製した。この二次電池セパレータ用コート材を、テストパネル(JIS G 3141)に、ワイヤーバーを用いて塗工し、その後、80℃で乾燥することで9μmの塗工膜を備えたテストパネルを得た。このテストパネルを、エイ・アンド・デイ社製の剛体振り子型物性試験機による粘弾性測定した。これにより、塗工膜の耐熱性を測定した。塗工膜が、軟化開始したときの温度を、耐熱温度として、表1に示す。
【0237】
なお、測定条件を以下に示す。
【0238】
フレーム種類:FRB-100
測定部形状:丸棒型シリンダーエッジ,RBP040
測定温度:30~300℃
昇温速度:10℃/min
測定間隔:8秒
(耐電解液性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータ用コート材を、ポリプロピレン製のトレイに塗布後、室温で一昼夜乾燥し、さらに室温で8時間減圧乾燥することで、500μmのフィルムを得た。得られたフィルムをエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=1/1(w/w)溶液に40℃で1昼夜浸漬し、膨潤したフィルムの重量を測定した。膨潤フィルムの重量/膨潤前の重量比を算出した。その結果を表1に示す。
【0239】
(イオン透過性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータについて、旭精工社製の王研式透気度平滑度試験機により、JIS-P-8117に準じて測定した透気抵抗度を求めた。透気抵抗度が小さいほど、イオン透過性に優れると評価した。その結果を表1に示す。
【0240】
(二次電池セパレータ用コート材の粘度)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータ用コート材の粘度を、東機産業社製デジタル粘度計にて測定した。その結果を表1に示す。
【0241】
(SEM観察)
各実施例および各比較例で作成した二次電池セパレータの塗工表面を、日本電子社製の走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。
【0242】
塗工表面に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表1に示す
○:塗工表面に凹凸有り
×:塗工表面に凹凸無し
【0243】
【表1】
【0244】
4.考察
第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満である実施例1~実施例14は、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性に優れる。
【0245】
一方、第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の0.05倍である比較例1は、イオン透過性に優れるものの、耐熱性および耐電解液性に劣る。
【0246】
また、第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の100倍である比較例2は、耐熱性および耐電解液性に優れるものの、イオン透過性に劣る。
【0247】
このことから、第2ポリマーの質量を、第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満とすることで、耐熱性、耐電解液性およびイオン透過性の3つをバランスよく向上させることができることがわかった。