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特許7185507蒸気タービン設備、蒸気タービン設備の始動方法およびコンバインドサイクルプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】蒸気タービン設備、蒸気タービン設備の始動方法およびコンバインドサイクルプラント
(51)【国際特許分類】
   F01K 7/24 20060101AFI20221130BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F01K7/24 C
F01K23/10 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018224390
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020084947
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】窪田 充志
(72)【発明者】
【氏名】白濱 康博
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-240405(JP,A)
【文献】特開2015-143517(JP,A)
【文献】特表2017-506312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0089024(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108301882(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 19/00
F01K 7/24
F01K 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タービンの入口に接続される第1蒸気ラインと、
前記第1蒸気ラインに設けられる第1蒸気弁と、
前記第1タービンよりも入口蒸気圧が低い第2タービンの入口に接続される第2蒸気ラインと、
前記第2蒸気ラインに設けられる再熱器と、
前記第1蒸気弁よりも上流側の前記第1蒸気ラインから分岐する第1分岐通路を含み、前記第1タービン、前記再熱器及び前記第2タービンを経由せずに、前記第1蒸気ラインから前記第1分岐通路を経由して復水器に至る第1バイパスラインと、
前記第1蒸気弁よりも上流側の前記第1蒸気ラインから分岐する第2分岐通路を含み、前記第1タービン及び前記第2タービンを経由せずに、前記第1蒸気ラインから前記第2分岐通路及び前記再熱器を経由して前記復水器に至る第2バイパスラインと、
前記第1分岐通路に設けられた第1バイパス弁と、
前記第2分岐通路に設けられた第2バイパス弁と、
を含む蒸気タービン設備の始動方法であって、
前記第1蒸気弁を閉状態に維持しながら、前記第1バイパス弁又は前記第2バイパス弁の少なくとも一方を用いて前記第1蒸気ラインの圧力制御を行うステップを備え、
前記圧力制御を行うステップでは、前記復水器の冷却流体の入口温度と出口温度の差である温度差ΔTが許容値ΔT1に到達する前の少なくとも一部の期間において、前記第1バイパス弁を少なくとも部分的に開いた状態で、前記第1蒸気ラインの圧力に基づき前記第2バイパス弁の開度を調節することにより前記圧力制御を行う
ことを特徴とする蒸気タービン設備の始動方法。
【請求項2】
前記圧力制御を行うステップでは、前記第2バイパス弁が圧力制御を開始してから規定時間経過後、かつ、前記第2バイパス弁を用いた前記圧力制御の実行中に、前記閉状態に維持されていた前記第1バイパス弁を開く
請求項1に記載の蒸気タービン設備の始動方法。
【請求項3】
前記圧力制御を行うステップでは、前記第1蒸気ラインの圧力を目標値に維持するように前記第2バイパス弁の開度を制御するとともに、前記温度差ΔTに基づいて、前記閉状態から前記第1バイパス弁を開く
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン設備の始動方法。
【請求項4】
前記圧力制御を行うステップでは、前記温度差ΔTが前記許容値ΔT1よりも低い規定値ΔT2を超えたら、前記閉状態から前記第1バイパス弁を開く
ことを特徴とする請求項3に記載の蒸気タービン設備の始動方法。
【請求項5】
前記圧力制御を行うステップは、
前記第1バイパス弁の開度が規定値A1に到達するまで、前記第2バイパス弁を閉じた状態で、前記第1蒸気ラインの圧力を目標値に維持するように前記第1バイパス弁を用いて前記圧力制御を行う第1ステップと、
前記第1バイパス弁の開度が前記規定値A1に到達後、前記圧力制御を行う弁を前記第1バイパス弁から前記第2バイパス弁へと切り替える第2ステップと、
を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン設備の始動方法。
【請求項6】
前記第2ステップの実行後、前記第1バイパス弁の開度を前記規定値A1に維持しながら、前記第2バイパス弁の開度を制御し、前記第2バイパス弁の開度が規定値A2に到達したら、前記第1バイパス弁の開度を前記規定値A1よりも大きくする
ことを特徴とする請求項5に記載の蒸気タービン設備の始動方法。
【請求項7】
ガスタービンと、
前記ガスタービンからの排ガスの熱を用いて蒸気を生成するように構成されたボイラと、
前記ボイラからの蒸気が供給されるように構成された蒸気タービン設備と、
を含むコンバインドサイクルプラントの始動方法であって、
前記ガスタービンの負荷を規定値まで上昇させた後、請求項1乃至6の何れか一項に記載の始動方法により前記蒸気タービン設備を始動させる
ことを特徴とするコンバインドサイクルプラントの始動方法。
【請求項8】
前記ガスタービンの負荷を高負荷に維持しながら、前記第1蒸気弁を開く
ことを特徴とする請求項7に記載のコンバインドサイクルプラントの始動方法。
【請求項9】
第1タービンの入口に接続される第1蒸気ラインと、
前記第1蒸気ラインに設けられる第1蒸気弁と、
前記第1タービンよりも入口蒸気圧が低い第2タービンの入口に接続される第2蒸気ラインと、
前記第2蒸気ラインに設けられる再熱器と、
前記第1蒸気弁よりも上流側の前記第1蒸気ラインから分岐する第1分岐通路を含み、前記第1タービン、前記再熱器及び前記第2タービンを経由せずに、前記第1蒸気ラインから前記第1分岐通路を経由して復水器に至る第1バイパスラインと、
前記第1蒸気弁よりも上流側の前記第1蒸気ラインから分岐する第2分岐通路を含み、前記第1タービン及び前記第2タービンを経由せずに、前記第1蒸気ラインから前記第2分岐通路及び前記再熱器を経由して前記復水器に至る第2バイパスラインと、
前記第1分岐通路に設けられた第1バイパス弁と、
前記第2分岐通路に設けられた第2バイパス弁と、
前記第1バイパス弁及び前記第2バイパス弁を制御するための制御装置と、
を含む蒸気タービン設備であって、
前記制御装置は、
前記第1蒸気弁を閉状態に維持しながら、前記第1蒸気ラインの圧力制御を行うように前記第1バイパス弁又は前記第2バイパス弁の少なくとも一方の開度を調節するように構成され、
前記復水器の冷却流体の入口温度と出口温度の差である温度差ΔTが許容値ΔT1に到達する前の少なくとも一部の期間において、前記第1バイパス弁を少なくとも部分的に開いた状態で、前記圧力制御を行うように前記第1蒸気ラインの圧力に基づき前記第2バイパス弁の開度を調節するように構成された
ことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第1蒸気ラインの圧力を目標値に維持するように前記第2バイパス弁の開度を制御するとともに、前記温度差ΔTに基づいて、前記閉状態から前記第1バイパス弁を開くように構成された
ことを特徴とする請求項9に記載の蒸気タービン設備。
【請求項11】
前記制御装置は、前記温度差ΔTが前記許容値ΔT1よりも低い規定値ΔT2を超えたら、前記閉状態から前記第1バイパス弁を開くように構成された
ことを特徴とする請求項10に記載の蒸気タービン設備。
【請求項12】
前記制御装置は、
前記第1バイパス弁の開度が規定値A1に到達するまで、前記第2バイパス弁を閉じた状態で、前記第1蒸気ラインの圧力を目標値に維持するように前記第1バイパス弁の開度を調節し、
前記第1バイパス弁の開度が前記規定値A1に到達後、前記圧力制御を行う弁を前記第1バイパス弁から前記第2バイパス弁へと切り替えるように構成された
ことを特徴とする請求項9に記載の蒸気タービン設備。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記第1バイパス弁の開度が前記規定値A1に到達後、前記第1バイパス弁の開度を前記規定値A1に維持しながら、前記第2バイパス弁の開度を制御し、前記第2バイパス弁の開度が規定値A2に到達したら、前記第1バイパス弁の開度を前記規定値A1よりも大きくするように構成された
ことを特徴とする請求項12に記載の蒸気タービン設備。
【請求項14】
ガスタービンと、
前記ガスタービンからの排ガスの熱を用いて蒸気を生成するように構成されたボイラと、
請求項9乃至13の何れか一項に記載の蒸気タービン設備と、
を備え、
前記蒸気タービン設備は、前記ボイラからの蒸気が供給されるように構成された
ことを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気タービン設備、蒸気タービン設備の始動方法およびコンバインドサイクルプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な蒸気タービン設備の起動方法では、蒸気タービン設備の始動時、タービンへの蒸気の通気前にタービンをバイパスして蒸気ドラムから復水器に至るバイパスラインを用いて余剰蒸気をダンプ(排出)するようになっている。
【0003】
この点、特許文献1では、高圧ドラムから高圧蒸気タービンおよび再熱器を経由せずに復水器に至る高圧タービンバイパス管と、高圧タービンバイパス管に設けられた高圧タービンバイパス弁を備えた再熱発電プラントの運転方法が開示されている。プラント始動時、高圧ドラムの圧力が上昇し、高圧タービンバイパス弁の前圧が設定圧力に到達すると、高圧タービンバイパス弁が開いて高圧タービンバイパス管を介して、余剰蒸気が復水器にダンプされるようになっている。
また、特許文献1には、余剰蒸気のダンプを目的とするものではないが、再熱系統(低温再熱蒸気管、再熱器及び高温再熱蒸気管)のブローを行うために、高圧ドラムから高圧蒸気タービンを経由せず、低温再熱蒸気管に接続されるブロー高圧蒸気供給管を設けることも記載されている。ブロー高圧蒸気供給管に設けられたブロー高圧蒸気供給弁を開くと、ブロー高圧蒸気供給弁及び再熱器を経由して高温再熱蒸気管から復水器にブロー蒸気が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-240405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の蒸気タービン設備では、高圧タービンバイパス弁が前圧(即ち、高圧主蒸気管の圧力)を制御するようになっているから、高圧タービンバイパス弁を用いて再熱器を経由せずに高圧タービンをバイパスしてダンプされる蒸気量は、前圧の圧力を制御するために必要十分な量でなければならない。
このため、特許文献1に記載の蒸気タービン設備では、余剰蒸気の復水器へのダンプ時、ブロー高圧蒸気供給弁及び再熱器を経由して高温再熱蒸気管から復水器に流入するブロー蒸気の量が過剰である場合、復水器において蒸気冷却に用いられる冷却流体の出口温度が過度に上昇してしまう。
【0006】
よって、本発明の幾つかの実施形態は、復水器の冷却流体出入り口温度差の増加を抑制する蒸気タービン設備、蒸気タービン設備の始動方法およびコンバインドサイクルプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の幾つかの実施形態に係わる蒸気タービン設備の始動方法は、
第1タービンの入口に接続される第1蒸気ラインと、
前記第1蒸気ラインに設けられる第1蒸気弁と、
前記第1タービンよりも入口蒸気圧が低い第2タービンの入口に接続される第2蒸気ラインと、
前記第2蒸気ラインに設けられる再熱器と、
前記第1蒸気弁よりも上流側の前記第1蒸気ラインから分岐する第1分岐通路を含み、前記第1タービン、前記再熱器及び前記第2タービンを経由せずに、前記第1蒸気ラインから前記第1分岐通路を経由して復水器に至る第1バイパスラインと、
前記第1蒸気弁よりも上流側の前記第1蒸気ラインから分岐する第2分岐通路を含み、前記第1タービン及び前記第2タービンを経由せずに、前記第1蒸気ラインから前記第2分岐通路及び前記再熱器を経由して前記復水器に至る第2バイパスラインと、
前記第1分岐通路に設けられた第1バイパス弁と、
前記第2分岐通路に設けられた第2バイパス弁と、
を含む蒸気タービン設備の始動方法であって、
前記第1蒸気弁を閉状態に維持しながら、前記第1バイパス弁又は前記第2バイパス弁の少なくとも一方を用いて前記第1蒸気ラインの圧力制御を行うステップ
を備え、
前記圧力制御を行うステップでは、前記復水器の冷却流体の入口温度と出口温度の差である温度差ΔT(以降、「冷却流体温度差ΔT」と称する。)が許容値ΔT1に到達する前の少なくとも一部の期間において、前記第1バイパス弁を少なくとも部分的に開いた状態で、前記第2バイパス弁を用いて前記圧力制御を行う。
【0008】
上記(1)の始動方法によれば、第1バイパス弁又は第2バイパス弁を用いた圧力制御により、第1タービン及び第2タービンへの通気前において第1蒸気ラインの圧力を適切に維持可能な適切な量の余剰蒸気が第1バイパス弁又は第2バイパス弁を介して適切に復水器にダンプされる。
一方、第2バイパス弁を用いた圧力制御の実行中、かつ、復水器の冷却流体温度差ΔTの許容値ΔT1への到達前の少なくとも一部の期間において、第1バイパス弁は、少なくとも部分的に開いた状態となる。この状態において、第1蒸気ラインの圧力を適切に維持するための制御(圧力制御)の役割は第2バイパス弁が担うことから、第1バイパス弁自体は、圧力制御を実行しなければならないという制約から解放されて、第1バイパス弁の開度の設定の自由度が向上する。よって、第1バイパス弁の開度を比較的大きな値に設定することで、第1蒸気ラインからの余剰蒸気のダンプに起因した復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記圧力制御を行うステップでは、前記第2バイパス弁が圧力制御を開始してから規定時間経過後、かつ、前記第2バイパス弁を用いた前記圧力制御の実行中に、前記待機するステップで前記閉状態に維持されていた前記第1バイパス弁を開く。
【0010】
蒸気タービン設備の始動時、第1蒸気ラインの圧力がある程度上昇して第2バイパス弁による圧力制御が開始されると、第2バイパスラインを介して復水器に第1蒸気ラインの余剰蒸気が流入し、復水器の冷却流体温度差ΔTが増加しはじめる。
このため、第2バイパス弁の圧力制御開始から第1バイパス弁を開くまでの時間を適切に設定しておけば、再熱器を経由しない第1バイパスラインを用いた余剰蒸気のダンプを適切なタイミングで開始し、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記圧力制御を行うステップでは、前記第1蒸気ラインの圧力を目標値に維持するように前記第2バイパス弁の開度を制御するとともに、前記温度差ΔTに基づいて、前記閉状態から前記第1バイパス弁を開く。
【0012】
このように、第2バイパス弁によって第1蒸気ラインの圧力制御を行うことで、第1バイパス弁は圧力制御の役割から解放され、第1蒸気ラインの圧力とは無関係に、復水器の冷却流体温度差ΔTに基づいて第1バイパス弁の開タイミングを決定することができる。よって、復水器を経由しない第1バイパスラインを用いた余剰蒸気のダンプを適切なタイミングで開始し、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の方法において、
前記圧力制御を行うステップでは、前記温度差ΔTが前記許容値ΔT1よりも低い規定値ΔT2を超えたら、前記閉状態から前記第1バイパス弁を開く。
【0014】
このように、復水器の冷却流体温度差ΔTが許容値ΔT1よりも低い規定値ΔT2に到達した時点を第1バイパス弁の開タイミングに設定することで、復水器の冷却流体温度差ΔTが許容値ΔT1を超えて過大となる事態を効果的に防止できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記圧力制御を行うステップは、
前記第1バイパス弁の開度が規定値A1に到達するまで、前記第2バイパス弁を閉じた状態で、前記第1蒸気ラインの圧力を目標圧に維持するように前記第1バイパス弁を用いて前記圧力制御を行う第1ステップと、
前記第1バイパス弁の開度が前記規定値A1に到達後、前記圧力制御を行う弁を前記第1バイパス弁から前記第2バイパス弁へと切り替える第2ステップと、
を含む。
【0016】
上記(5)の方法では、第1蒸気ラインからの余剰蒸気のダンプを行う際、最初に第1バイパス弁を開いて第1蒸気ラインの圧力制御を行うとともに(第1ステップ)、最終的には第1蒸気ラインの圧力制御を第2バイパス弁に行わせる。
このように、最終的に第2バイパス弁に第1蒸気ラインの圧力制御を行わせれば、第2ステップの実行中、第1バイパス弁は圧力制御の役割から解放されて第1バイパス弁の開度の設定の自由度が向上するから、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
また、最初に第1バイパス弁による圧力制御を行うことで、第1ステップの実行中、再熱器を経由しない第1バイパスラインを通じて復水器に余剰蒸気がダンプされ、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇をより一層抑制することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の方法において、
前記第2ステップの実行後、前記第1バイパス弁の開度を前記規定値A1に維持しながら、前記第2バイパス弁の開度を制御し、前記第2バイパス弁の開度が規定値A2に到達したら、前記第1バイパス弁の開度を前記規定値A1よりも大きくする。
【0018】
このように、第2ステップの実行後、第1バイパス弁の開度を急に増加させるのではなく、圧力制御によって第2バイパス弁の開度が規定値A2に到達するのを待って、第2バイパス弁の開度の調節代を確保した後に第1バイパス弁の開度を増加させるようにしたので、圧力制御を実行する弁の切り替えをスムーズに行うことができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態に係るコンバインドサイクルプラントの始動方法は、
ガスタービンと、
前記ガスタービンからの排ガスの熱を用いて蒸気を生成するように構成されたボイラと、
前記ボイラからの蒸気が供給されるように構成された蒸気タービン設備と、
を含むコンバインドサイクルプラントの始動方法であって、
前記ガスタービンの負荷を規定値まで上昇させた後、前記ガスタービンの負荷を規定値まで上昇させた後、上記(1)~(6)の何れかに記載の始動方法により前記蒸気タービン設備を始動させる。
【0020】
コンバインドサイクルプラントの起動時間を短縮するために、蒸気タービン設備の通気前にガスタービンを高負荷(例えば、定格負荷近傍)で維持する場合、多量の余剰蒸気を復水器にダンプする必要が生じ、復水器の冷却負荷が過大となるおそれがある。
この点、上記(7)のコンバインドサイクルプラントの始動方法は、上記(1)で述べたとおり、第2バイパス弁を用いた圧力制御の実行中、かつ、復水器の冷却流体温度差ΔTの許容値ΔT1への到達前の少なくとも一部の期間に第1バイパス弁が開かれるので、第1バイパス弁の開度設定の自由度を高めて、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。よって、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制しながら、コンバインドサイクルプラントを高速起動することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態は、上記(7)の方法において、
前記ガスタービンの負荷を高負荷(例えば、定格負荷の90%)に維持しながら、前記第1蒸気弁を開く。
【0022】
この場合、蒸気タービン設備の始動開始時においてガスタービンが高負荷であるため、ガスタービンの多量の排熱を利用して、蒸気タービン設備の各蒸気ラインの蒸気条件を迅速に成立させることができる。よって、コンバインドサイクルプラントを高速起動することができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態に係る蒸気タービン設備は、
第1タービンの入口に接続される第1蒸気ラインと、
前記第1蒸気ラインに設けられる第1蒸気弁と、
前記第1タービンよりも入口蒸気圧が低い第2タービンの入口に接続される第2蒸気ラインと、
前記第2蒸気ラインに設けられる再熱器と、
前記第1蒸気弁よりも上流側の前記第1蒸気ラインから分岐する第1分岐通路を含み、前記第1タービン、前記再熱器及び前記第2タービンを経由せずに、前記第1蒸気ラインから前記第1分岐通路を経由して復水器に至る第1バイパスラインと、
前記第1蒸気弁よりも上流側の前記第1蒸気ラインから分岐する第2分岐通路を含み、前記第1タービン及び前記第2タービンを経由せずに、前記第1蒸気ラインから前記第2分岐通路及び前記再熱器を経由して前記復水器に至る第2バイパスラインと、
前記第1分岐通路に設けられた第1バイパス弁と、
前記第2分岐通路に設けられた第2バイパス弁と、
前記第1バイパス弁及び前記第2バイパス弁を制御するための制御装置と、
を含む蒸気タービン設備であって、
前記制御装置は、
前記第1蒸気弁を閉状態に維持しながら、前記第1蒸気ラインの圧力制御を行うように前記第1バイパス弁又は前記第2バイパス弁の少なくとも一方の開度を調節するように構成され、
前記復水器の冷却流体の入口温度と出口温度の差である温度差ΔTが許容値ΔT1に到達する前の少なくとも一部の期間において、前記第1バイパス弁を少なくとも部分的に開いた状態で、前記圧力制御を行うように前記第2バイパス弁の開度を調節するように構成される。
【0024】
上記(9)の構成によれば、第1バイパス弁又は第2バイパス弁を用いた圧力制御により、第1タービン及び第2タービンへの通気前において第1蒸気ラインの圧力を維持可能な適切な量の余剰蒸気が第1バイパス弁又は第2バイパス弁を介して適切に復水器にダンプされる。
一方、第2バイパス弁を用いた圧力制御の実行中、かつ、復水器の冷却流体温度差ΔTの許容値ΔT1への到達前の少なくとも一部の期間において、第1バイパス弁は、少なくとも部分的に開いた状態となる。この状態において、第1蒸気ラインの圧力を適切に維持するための制御(圧力制御)の役割は第2バイパス弁が担うことから、第1バイパス弁自体は、圧力制御を実行しなければならないという制約から解放されて、第1バイパス弁の開度の設定の自由度が向上する。よって、第1バイパス弁の開度を比較的大きな値に設定することで、第1蒸気ラインからの余剰蒸気のダンプに起因した復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記制御装置は、前記第1蒸気ラインの圧力を目標値に維持するように前記第2バイパス弁の開度を制御するとともに、前記温度差ΔTに基づいて、前記閉状態から前記第1バイパス弁を開くように制御を行う。
【0026】
上記(10)の構成によれば、第2バイパス弁によって第1蒸気ラインの圧力制御を行うことで、第1バイパス弁は圧力制御の役割から解放され、第1蒸気ラインの圧力とは無関係に、復水器の冷却流体温度差ΔTに基づいて第1バイパス弁の開タイミングを決定することができる。よって、再熱器を経由しない第1バイパスラインを用いた余剰蒸気のダンプを適切なタイミングで開始し、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の構成において、
前記制御装置は、前記温度差ΔTが前記許容値ΔT1よりも低い規定値ΔT2を超えたら、前記閉状態から前記第1バイパス弁を開くように制御を行う。
【0028】
上記(11)の構成によれば、復水器の冷却流体温度差ΔTが許容値ΔT1よりも低い規定値ΔT2に到達した時点を第1バイパス弁の開タイミングに設定することで、復水器の冷却流体温度差ΔTが許容値ΔT1を超えて過大となる事態を効果的に防止できる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記制御装置は、前記第1バイパス弁の開度が規定値A1に到達するまで、前記第2バイパス弁を閉じた状態で、前記第1蒸気ラインの圧力を目標値に維持するように前記第1バイパス弁を用いて前記圧力制御を行い、
前記第1バイパス弁の開度が前記規定値A1に到達後、前記圧力制御を行う弁を前記第1バイパス弁から前記第2バイパス弁へと切り替える制御を行う。
【0030】
上記(12)の構成によれば、第1蒸気ラインからの余剰蒸気のダンプを行う際、最初に第1バイパス弁を開いて第1蒸気ラインの圧力制御を行うとともに、最終的には第1蒸気ラインの圧力制御を第2バイパス弁に行わせる。
このように、最終的に第2バイパス弁に第1蒸気ラインの圧力制御を行わせれば、第2ステップの実行中、第1バイパス弁は圧力制御の役割から解放されて第1バイパス弁の開度の設定の自由度が向上するから、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
また、最初に第1バイパス弁による圧力制御を行うことで、第1バイパス弁を用いた圧力制御の実行中、再熱器を経由しない第1バイパスラインを通じて復水器に余剰蒸気がダンプされ、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇をより一層抑制することができる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記制御装置は、前記第1バイパス弁の開度が前記規定値A1に到達後、前記第1バイパス弁の開度を前記規定値A1に維持しながら、前記第2バイパス弁の開度を制御し、前記第2バイパス弁の開度が規定値A2に到達したら、前記第1バイパス弁の開度を前記規定値A1よりも大きくするように構成される。
【0032】
上記(13)の構成によれば、圧力制御を行う弁を第1バイパス弁から第2バイパス弁へと切り替えた後、第1バイパス弁の開度を急に増加させるのではなく、圧力制御によって第2バイパス弁の開度が規定値A2に到達するのを待って、第2バイパス弁の開度の調節代を確保した後に第1バイパス弁の開度を増加させるようにしたので、圧力制御を実行する弁の切り替えをスムーズに行うことができる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態に係るコンバインドサイクルプラントは、
ガスタービンと、
前記ガスタービンからの排ガスの熱を用いて蒸気を生成するように構成されたボイラと、
上記(9)~(13)の何れかに記載の蒸気タービン設備と、
を備え、
前記蒸気タービン設備は、前記ボイラからの蒸気が供給されるように構成される。
【0034】
コンバインドサイクルプラントの起動時間を短縮するために、蒸気タービン設備の通気前にガスタービンを高負荷(例えば、定格負荷近傍)で維持する場合、多量の余剰蒸気を復水器にダンプする必要が生じ、復水器の冷却負荷が過大となるおそれがある。
この点、上記(14)で構成されるコンバインドサイクルプラントは、上記(1)で述べたとおり、第2バイパス弁を用いた圧力制御の実行中、かつ、復水器の冷却流体温度差ΔTの許容値ΔT1への到達前の少なくとも一部の期間に第1バイパス弁が開かれるので、第1バイパス弁の開度設定の自由度を高めて、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。よって、復水器の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制しながら、コンバインドサイクルプラントを高速起動することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の幾つかの実施形態は、復水器の冷却流体出入り口温度差の増加を抑制する蒸気タービン設備、蒸気タービン設備の始動方法およびコンバインドサイクルプラントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】一実施形態に係るガスタービンコンバインドサイクルプラント)の概略図である。
図2】一実施形態に係る蒸気タービン設備の概略図である。
図3】第1バイパス弁及び第2バイパス弁の動作の一例を示すタイムチャートである。
図4】第1バイパス弁及び第2バイパス弁の動作の一例を示すタイムチャートである。
図5】第1バイパス弁及び第2バイパス弁の動作の一例を示すタイムチャートである。
図6】GTCCプラントの始動手順の一例を示すフローチャートである。
図7】GTCCプラントの起動パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0038】
以下、本発明の実施形態に係る蒸気タービン設備を備えたコンバインドサイクルプラントについて説明した後、蒸気タービン設備の詳細について述べる。
なお、本発明の実施形態に係る蒸気タービン設備は、以下で説明するコンバインドサイクルプラント向けの蒸気タービン設備に限定されず、石炭、石油、液化天然ガス、重質油等の燃料を燃焼させるボイラで生成した蒸気によって蒸気タービンを駆動する汽力発電プラント向けの蒸気タービン設備であってもよい。
【0039】
図1は、一実施形態に係るガスタービンコンバインドサイクルプラント(以下、GTCCプラントと略す。)の概略図である。図1に示すGTCCプラント1は、蒸気タービン10、ガスタービン40、発電機4、および、排熱回収ボイラ50を備える。
【0040】
蒸気タービン10は、第1タービン12、および、第1タービン12よりも入口蒸気圧が低い第2タービン14を含む複数のタービンを含む。蒸気タービン10を構成する複数のタービンのうち入口蒸気圧が最も低いタービンが、復水器18に接続される低圧タービン16である。
図1に示す例示的な実施形態では、蒸気タービン10は、第1タービン12としての高圧タービン、第2タービン14としての中圧タービン、および、低圧タービン16という入口蒸気圧がそれぞれ異なる3種類のタービンを含む。他の実施形態では、低圧タービン16が第2タービン14として機能し、蒸気タービン10は、第1タービン12および第2タービン14(即ち、低圧タービン16)の2種類のタービンを含む。さらに別の実施形態では、蒸気タービン10は、高圧タービンよりもさらに入口蒸気圧が高い超高圧タービン(VHP;Very High Pressure turbine)と、高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンという入口蒸気圧が異なる4種類のタービンを含み、超高圧タービン又は高圧タービンの何れかが第1タービン12として機能し、高圧タービン又は中圧タービンの何れかが第2タービン14として機能する。
なお、各々のタービンの入口には、蒸気弁(第1蒸気弁22、第2蒸気弁24及び低圧蒸気弁26)が設けられており、各蒸気弁(22、24、26)を介して供給される蒸気によって各タービンが駆動されるようになっている。蒸気タービン10を構成する複数のタービンは、発電機4に連結されており、発電機4を駆動するようになっている。
【0041】
蒸気タービン10を駆動するための蒸気は、ガスタービン40の排ガスを熱源として生成される。
ガスタービン40は、圧縮空気を生成するための圧縮機42と、圧縮機42により生成された圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器44と、燃焼器44からの燃焼ガスによって駆動されるタービン46と、を備える。タービン46のロータは、発電機4の入力軸に連結されており、発電機4において、タービン46から入力される機械的エネルギーが電力に変換される。また、圧縮機42の回転軸は、タービン46のロータに接続されており、タービン46によって圧縮機42が駆動されるようになっている。
【0042】
ガスタービン40において、タービン46を通過した後の燃焼ガスは、排ガス48として、排熱回収ボイラ50に導かれる。
排熱回収ボイラ50は、蒸気タービン10を構成する複数種のタービンにそれぞれ対応して設けられる複数のドラム(52,54,56)と、各ドラム(52,54,56)に接続される蒸発器(53,55,57)と、各ドラム(52,54,56)からの蒸気を過熱するための過熱器(62,64,66)と、を含む。図1に示す実施形態では、蒸気タービン10を構成する第1タービン12、第2タービン14及び低圧タービン16にそれぞれ対応して、第1ドラム52、第2ドラム54及び低圧ドラム56の3種類のドラムが設けられるとともに、各ドラムに対応して3種類の蒸発器(53、55、57)及び3種類の過熱器(62,64,66)が設けられる。
【0043】
また、上記構成の排熱回収ボイラ50と蒸気タービン10とは複数の蒸気ラインによって接続される。具体的には、排熱回収ボイラ50の第1ドラム52、第2ドラム54及び低圧ドラム56から、それぞれ、第1タービン12、第2タービン14及び低圧タービン16に向かう第1蒸気ライン72、第2蒸気ライン74及び低圧蒸気ライン76が設けられる。なお、上述した蒸気弁(第1蒸気弁22、第2蒸気弁24及び低圧蒸気弁26)は、第1蒸気ライン72、第2蒸気ライン74及び低圧蒸気ライン76において、各々のタービンの入口にそれぞれ設けられている。
【0044】
また、第1タービン12からの排気を再熱器65に導くための第1蒸気排出ライン73が設けられている。第1蒸気排出ライン73は、第1タービン12の出口に接続される上流端と、第2蒸気ライン74のうち過熱器64と再熱器65との間の部位に接続される下流端と、を有する。
【0045】
さらに、第2タービン14からの排気を低圧タービン16に導く第2蒸気排出ライン75が設けられる。第2蒸気排出ライン75は、第2タービン14の出口に接続される上流端と、低圧蒸気ライン76のうち過熱器66の下流側かつ低圧蒸気弁26の下流側に接続される下流端と、を有する。
【0046】
上述した排熱回収ボイラ50の過熱器(62,64,66)は、それぞれ、各タービン(12,14,16)の入口に通じる蒸気ライン(72,74,76)上に配置される。
また、第2タービン14としての中圧タービンに連通する第2蒸気ライン74には、過熱器64に加えて、過熱器64の下流側において再熱器65がさらに設けられる。
【0047】
また、図1に示す例では、排熱回収ボイラ50には、低圧タービン16に接続された復水器18から各ドラム(52,54,56)に給水するための給水ライン78が接続される。低圧タービン16を通過後の蒸気は、復水器18において復水され、給水ライン78を介して各ドラム(52,54,56)に戻される。
【0048】
上記構成のGTCCプラント1では、ガスタービン40の排ガスが排熱回収ボイラ50に導かれることで、排ガスとの熱交換によって、各ドラム(52,54,56)に接続される蒸発器(53,55,57)において蒸気が生成され、各ドラム(52,54,56)に貯留される。また、各ドラム(52,54,56)からの蒸気は、過熱器(62,64,66)及び再熱器65により加熱され、蒸気タービン10を構成する複数のタービン(12、14、16)に供給される。第1タービン12を通過後の蒸気は、第1蒸気排出ライン73を介して第2蒸気ライン74に導かれ、過熱器64からの蒸気と合流し、再熱器65を経由して第2タービン14に導かれる。第2タービン14を通過後の蒸気は、第2蒸気排出ライン75を介して低圧蒸気ライン76に導かれ、過熱器66からの蒸気と合流し、低圧タービン16に導かれる。低圧タービン16を通過後の蒸気は、復水器18において復水され、上述のとおり、給水ライン78を介して排熱回収ボイラ50の各ドラム(52,54,56)に戻される。
【0049】
なお、上述した例のように、蒸気タービン10およびガスタービン40が共通の発電機4を駆動する構成の場合、蒸気タービン10の軸と、ガスタービン40及び発電機4の軸とをクラッチを介して連結してもよい。他の実施形態では、蒸気タービン10により駆動される発電機と、ガスタービン40により駆動される発電機とを別に設けられる。
【0050】
なお、図1では図示しなかったが、蒸気タービン10を起動する際、各蒸気ライン(72,74,76)を介して各タービン(12,14,16)に供給される蒸気が、所定の条件を満たすまでの間、タービン(12,14,16)をバイパスして、各ドラム(52,54,56)からの余剰蒸気を復水器18にダンプすることがある。
【0051】
以下、図2図5を参照して、余剰蒸気の復水器18へのダンプが可能な本発明の実施形態に係る蒸気タービン設備について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、図1を参照して既に説明した構成要素については、図2においても同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
図2は、一実施形態に係る蒸気タービン設備の概略図である。
同図に示す蒸気タービン設備100は、第1タービン12、および、第2タービン14を含む複数のタービンを含む。複数のタービンのうち最も入口蒸気圧が低い低圧タービン16には、復水器18が接続されており、低圧タービン16からの排気が復水器18に導かれるようになっている。また、第1タービン12の入口に接続される第1蒸気ライン72と、第2タービン14の入口に接続される第2蒸気ライン74とが設けられ、第2蒸気ライン74には再熱器65が配置される。
【0053】
蒸気タービン設備100は、第1タービン12及び再熱器65をバイパスして、第1蒸気ライン72を流れる余剰蒸気を復水器18に導く第1バイパスライン110を備える。第1バイパスライン110は、第1蒸気弁22よりも上流側の第1蒸気ライン72から分岐する第1分岐通路112を含む。第1分岐通路112には、第1バイパス弁114が設けられる。
なお、図2では第1分岐通路112が直接、復水器18に接続された例を示したが、他の実施形態では、第1バイパスライン110は、第1分岐通路112と復水器18との間に他のラインを含んでいてもよい。例えば、第1バイパスライン110は、第1分岐通路112と、後述の第2バイパスライン120のうち再熱器65の下流側の部位又は低圧バイパスライン80と、を含んでいてもよい。この場合、第1分岐通路112の下流端が、第2バイパスライン120のうち再熱器65の下流側の部位又は低圧バイパスライン80を介して復水器18に接続される。
【0054】
また、蒸気タービン設備100は、第1タービン12及び第2タービン14を経由せずに、第1蒸気ライン72から復水器18に至る第2バイパスライン120を備える。第2バイパスライン120は、第1蒸気弁22よりも上流側の第1蒸気ライン72から分岐する第2分岐通路122を含む。第2バイパスライン120は、第1蒸気ライン72から第2分岐通路122及び再熱器65を経由して復水器18に至る。第2分岐通路122には、第2バイパス弁124が設けられる。
図2に示す例では、第2分岐通路122の上流端が、第1蒸気ライン72のうち第1蒸気弁22の上流側の部位に接続され、第2分岐通路122の下流端が第1蒸気排出ライン73に接続される。また、第2バイパスライン120は、第2蒸気ライン74のうち再熱器65の下流側かつ第2蒸気弁24の上流側の部位と復水器18とを接続する接続ライン126を含む。
【0055】
蒸気タービン設備100は、上述した第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の弁開度を制御するための制御装置90を備える。
【0056】
幾つかの実施形態では、制御装置90には、蒸気タービン設備100の各種状態を検出するためのセンサの検出信号が入力されてもよい。
図2に示す例において、蒸気タービン設備100は、第1蒸気ライン72の圧力を検出するための圧力センサ92と、復水器18において低圧タービン16の排気を復水するために用いられる冷却流体の入口温度及び出口温度を検出するための温度センサ94,96と、を備える。例えば、圧力センサ92又は温度センサ94,96の少なくとも一つのセンサの検出信号が制御装置90に入力され、これらのセンサの検出信号が制御装置90における制御に用いられてもよい。
【0057】
以下、制御装置90による制御下での第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の具体的な動作については、図3図5に示すタイムチャートで説明する。
【0058】
図3は、制御装置90による制御下での第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の動作の一例を示すタイムチャートである。
図3に示す例では、第2バイパス弁124による圧力制御を開始してから規定時間経過後、かつ、第2バイパス弁124を用いた圧力制御の実行中に、閉状態に維持されていた第1バイパス弁114を開く制御を行っている。
なお、図3に示すタイムチャートは一例に過ぎず、第1蒸気ライン72の圧力P、復水器18の冷却流体の出入口温度差(冷却流体温度差)ΔT、並びに、第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の弁開度の変化は、蒸気タービン設備100の仕様によって、図3に示す例と同じにならない場合があり得る。
【0059】
ボイラ(排熱回収ボイラ50)の起動時(時刻t0)、第1蒸気弁22、第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124を含む各種バルブは閉状態となっているため、各々の蒸気ドラム(52,54,56)に生成された蒸気の圧力は次第に上昇する。図3において、時刻t0以降、第1ドラム52に接続された第1蒸気ライン72の圧力が徐々に上昇していることが示されている。
【0060】
第1蒸気ライン72の圧力Pがある程度上昇した時刻t1において、制御装置90は、第1蒸気ライン72の圧力を目標値に維持可能な開度指令を第2バイパス弁124に与える。これにより、制御装置90による第2バイパス弁124の圧力制御が開始される。
例えば、制御装置90は、図2に示す圧力センサ92から得られた第1蒸気ライン72の圧力検出値と、第1蒸気ライン72の圧力目標値との偏差に基づき定まるフィードバック指令値を第2バイパス弁124に開度指令として与えてもよい。
この圧力制御は、図3の第2バイパス弁開度を示すタイムチャートにおいて、時刻t1~tcに示す波状線で示しており、弁が小刻みに開閉動作をしながら圧力を制御している様子を示している。
【0061】
第1蒸気ライン72の圧力目標値は、任意の手法で決定されてよい。例えば、第1蒸気ライン72の圧力の目標値は、第1蒸気ライン72の圧力の検出値に基づいて決定されてもよい。また、例えば、第1蒸気ライン72の圧力の目標値は、規定圧Pcに向けて徐々に増加するようになっていてもよい。
図3においては、時刻t1以降、第2バイパス弁124の開度が調節されて、第1蒸気ライン72の圧力が目標値(図3の例では、目標値は、規定圧Pcに向けて徐々に増加する。)に維持されていることが示されている。
【0062】
時刻t1において、第2バイパス弁124による圧力制御が開始され、第2バイパスライン120を通って余剰蒸気が復水器18にダンプされ始めると、図3に示すように、復水器18における冷却流体の出入口温度差ΔTが上昇し始める。
【0063】
その後、第2バイパス弁124の圧力制御の開始時点(時刻t1)からの規定時間Δt経過後の時刻t2において、制御装置90は、それまで閉状態であった第1バイパス弁114に開指令を与える。このとき、時刻t1で開始された第2バイパス弁124の圧力制御は継続して実行される。
図3に示す例では、制御装置90は、時刻t2以降、第1蒸気ライン72の圧力Pが規定圧Pc(タービンへの通気に適した圧力)に十分近づく時刻t3まで、第1バイパス弁114の開度を規定レートで増大させる。第1バイパス弁114が少なくとも部分的に開くことで、第1蒸気ライン72の余剰蒸気の一部が、第1バイパスライン110を介して、再熱器65を経由することなく復水器18に排出される。その結果、図3に示すように、時刻t2以降、復水器18における冷却流体の出入口温度差ΔTの上昇は抑制される。
【0064】
第2バイパス弁124の圧力制御開始時点(時刻t1)から第1バイパス弁114の開時点(時刻t2)までの期間(規定時間)Δtは、蒸気タービン設備100の仕様(例えば、第1蒸気ライン72の余剰蒸気量及び余剰蒸気温度、ならびに、復水器18の冷却流体の流量)に応じて、余剰蒸気のダンプ開始時点から復水器18の冷却流体の出入口温度差ΔTが許容値ΔT1に到達するまでに要する時間の推定値よりも短い期間に設定されてもよい。この場合、復水器18の冷却流体の出入口温度差ΔTが許容値ΔT1に到達する前に、第2バイパス弁124の圧力制御の実行中において、第1バイパス弁114を開くことができる。
なお、上述の推定値は、蒸気タービン設備100の運転実績から求めてもよく、あるいは、蒸気タービン設備100の諸元から計算によって求めてもよい。
【0065】
その後、第1蒸気ライン72の蒸気がタービンへの通気に適した条件(圧力、温度等)を満たす状態となる時刻tc以降、第1蒸気弁22を開いて、第1蒸気ライン72から第1タービンへの蒸気供給(通気)を開始する。
【0066】
図3に示す実施形態によれば、第2バイパス弁124の圧力制御開始から第1バイパス弁114を開くまでの時間Δtを適切に設定しておけば、再熱器65を経由しない第1バイパスライン110を用いた余剰蒸気のダンプを適切なタイミングで開始し、復水器18の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0067】
なお、図1に示すGTCCプラント1の場合、例えば、ガスタービンの着火時点から規定時間経過後、あるいは、ガスタービンに接続された発電機の併入時点から規定時間経過後、かつ、第2バイパス弁124を用いた圧力制御の実行中に、閉状態に維持されていた第1バイパス弁114を開くようにしてもよい。すなわち、第1バイパス弁114を開くタイミングの基準となる規定時間Δtの起算点(図3の例では第2バイパス弁124による圧力制御開始時点)を、ガスタービンの着火時点又は上述の発電機の併入時点としてもよい。
【0068】
所定仕様のGTCCプラントにおいて、所定の運転条件のもとでは、ガスタービンの着火時点から第2バイパス弁124による圧力制御開始時点(図3の時刻t1)までの時間、あるいは、上述の発電機の併入時点から第2バイパス弁124による圧力制御開始時点までの時間は、ほぼ一定である。よって、これらの時点を上述の規定時間Δtとし、Δtを適切に設定することで、図3を参照して説明したのと同様、再熱器65を経由しない第1バイパスライン110を用いた余剰蒸気のダンプを適切なタイミングで開始し、復水器18の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0069】
図4は、制御装置90による制御下での第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の動作の他の例を示すタイムチャートである。
図4に示す例では、第1蒸気ライン72の圧力を目標値に維持するように第2バイパス弁124の開度を制御するとともに、復水器18の冷却流体の出入口温度差ΔTに基づいて、閉状態の第1バイパス弁を開く制御を行っている。
なお、図4に示すタイムチャートは一例に過ぎず、第1蒸気ライン72の圧力P、復水器18の冷却流体の出入口温度差ΔT、並びに、第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の弁開度の変化は、蒸気タービン設備100の仕様によって、図4に示す例と同じにならない場合があり得る。
【0070】
図4は、第1バイパス弁114の開タイミング及び制御ロジックを除けば、図3に示す例と共通しており、時刻t0~時刻t1の期間における現象は既に図3を参照して説明しているから、ここでは説明を省略する。
【0071】
時刻t1以降、第2バイパス弁124の開度が調節されて、第1蒸気ライン72の圧力が目標値に維持される。この圧力制御は、図4の第2バイパス弁開度を示すタイムチャートにおいて、時刻t1~tcに示す波状線で示しており、弁が小刻みに開閉動作をしながら圧力を制御している様子を示している。
なお、図4の例では、目標値は、規定圧Pcに向けて徐々に増加する。時刻t1で第2バイパス弁124の圧力制御が開始された後、第1蒸気ライン72の余剰蒸気が第2バイパスライン120を介して復水器18に排出されるため、復水器18の冷却流体の出入口温度差ΔTは、図4に示すように、時刻t1以降、徐々に増大する。
【0072】
そして、冷却流体の出入口温度差ΔTが許容値ΔT1よりも低い規定値ΔT2に到達する時刻t4において、制御装置90は、第1バイパス弁114に開指令を与える。例えば、制御装置90は、図2に示した温度センサ94及び96の検出値Tin,Toutから得られる冷却流体の出入口温度差ΔT(=Tout-Tin)と規定値ΔT2とを比較し、ΔT>ΔT2の条件が成立したときに、第1バイパス弁114に開指令を与えてもよい。
図4に示す例では、制御装置90は、時刻t4以降、第1蒸気ライン72の圧力Pが規定圧Pc(タービンへの通気に適した圧力)に十分近づく時刻t5まで、第1バイパス弁114の開度を規定レートで増大させる。第1バイパス弁114が少なくとも部分的に開くことで、第1蒸気ライン72の余剰蒸気の一部が、第1バイパスライン110を介して、再熱器65を経由することなく復水器18に排出される。その結果、図4に示すように、時刻t4以降、復水器18における冷却流体の出入口温度差ΔTの上昇は抑制される。
【0073】
その後、第1蒸気ライン72の蒸気がタービンへの通気に適した条件(圧力、温度等)を満たす状態となる時刻tc以降、第1蒸気弁22を開いて、第1蒸気ライン72から第1タービンへの蒸気供給(通気)を開始する。
【0074】
図4に示す実施形態によれば、第2バイパス弁124によって第1蒸気ライン72の圧力制御を行うことで、第1バイパス弁114は圧力制御の役割から解放され、第1蒸気ライン72の圧力とは無関係に、復水器18の冷却流体温度差ΔTに基づいて第1バイパス弁114の開タイミングを決定することができる。よって、復水器18を経由しない第1バイパスライン110を用いた余剰蒸気のダンプを適切なタイミングで開始し、復水器18の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0075】
図5は、制御装置90による制御下での第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の動作のさらに別の例を示すタイムチャートである。
図5に示す例では、ボイラの起動時後、まず、第1バイパス弁114を用いて圧力制御を行い、その後、第1バイパス弁114の開度が規定値に到達したら、圧力制御を行う弁を第1バイパス弁114から第2バイパス弁124に切り替える制御を行っている。
なお、図5のうち時刻t0~時刻t1の期間については、既に図3を参照して説明したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。また、図5に示すタイムチャートは一例に過ぎず、第1蒸気ライン72の圧力P、復水器18の冷却流体の出入口温度差ΔT、並びに、第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の弁開度の変化は、蒸気タービン設備100の仕様によって、図5に示す例と同じにならない場合があり得る。
【0076】
時刻t1において、第1蒸気ライン72の圧力が規定値に到達すると、制御装置90は、第1蒸気ライン72の圧力を目標値に維持可能な開度指令を第1バイパス弁114に与える。これにより、制御装置90による第1バイパス弁114での圧力制御が開始される。なお、図3及び図4の例とは異なり、図5に示す例では、時刻t1以降も第2バイパス弁124は閉じたままである。
この圧力制御は、図5の第1バイパス弁開度を示すタイムチャートにおいて、時刻t1~t6に示す波状線で示しており、弁が小刻みに開閉動作をしながら圧力を制御している様子を示している。
【0077】
例えば、制御装置90は、図2に示す圧力センサ92から得られた第1蒸気ライン72の圧力検出値と、第1蒸気ライン72の圧力目標値との偏差に基づき定まるフィードバック指令値を第1バイパス弁114に開度指令として与えてもよい。
【0078】
図5において、時刻t1以降、第1バイパス弁114の開度が調節されて、第1蒸気ライン72の圧力が目標値に維持されていることが示されている。なお、図5の例では、目標値は、規定圧Pcに向けて徐々に増加する。
【0079】
なお、時刻t1において、第1バイパス弁114による圧力制御が開始され、第1バイパスライン110を通って余剰蒸気が復水器18にダンプされ始めると、図5に示すように、復水器18における冷却流体の出入口温度差ΔTが上昇し始める。但し、第1バイパスライン110は、再熱器65を経由することなく、第1蒸気ライン72の余剰蒸気を復水器18にダンプ可能であるから、図5における時刻t1以降の第1バイパス弁114の圧力制御実行中のΔTの上昇速度は、図3及び図4における時刻t1以降の第2バイパス弁124の圧力制御実行中のΔTの上昇速度に比べて緩やかである。
【0080】
その後、第1バイパス弁114の開度が規定値A1に到達する時刻t6において、制御装置90は、第1蒸気ライン72の圧力を目標値に維持する圧力制御を行う弁を第1バイパス弁114から第2バイパス弁124に切り替える。
即ち、時刻t6において、制御装置90は、第1バイパス弁114による圧力制御は停止し、第1バイパス弁114の開度を規定値A1に維持する。その代わり、制御装置90は、第2バイパス弁124に対して開指令を与え、時刻t6以降は第2バイパス弁124による圧力制御を開始する。
この圧力制御は、図5の第2バイパス弁開度を示すタイムチャートにおいて、時刻t6~tcに示す波状線で示しており、弁が小刻みに開閉動作をしながら圧力を制御している様子を示している。
【0081】
例えば、制御装置90は、第2バイパス弁124による圧力制御実行中、図2に示す圧力センサ92から得られた第1蒸気ライン72の圧力検出値と、第1蒸気ライン72の圧力目標値との偏差に基づき定まるフィードバック指令値を第2バイパス弁124に開度指令として与えてもよい。
【0082】
図5において、時刻t6以降、第1バイパス弁114の開度は規定値A1に維持される一方、第2バイパス弁124の開度が調節されて、第1蒸気ライン72の圧力が目標値に維持されていることが示されている。第1バイパス弁114の開度の規定値A1は、例えば70%以上90%以下であってもよい。
なお、時刻t6以降、第2バイパス弁124が開かれるため、再熱器65を経由する第2バイパスライン120を介した比較的高温の余剰蒸気のダンプにより、復水器18における冷却流体の出入口温度差ΔTの上昇速度が幾分か大きくなる。
【0083】
第2バイパス弁124の圧力制御開始後、第2バイパス弁124の開度が規定値A2に到達する時刻t7において、第1バイパス弁114の開度を規定値A1よりも大きくする。図5に示す例では、時刻t7において、制御装置90は、第1バイパス弁114の開度を規定レートで全開(100%開度)に向けて増加させ始める。このように第1バイパス弁114が開度を増加させる間(時刻t7からt8まで)、制御装置90による第2バイパス弁124の圧力制御は継続される。第2バイパス弁124の開度の規定値A2は、例えば20%以上40%以下であってもよい。
こうして、最終的には、第1バイパス弁114を規定値A1よりも大きい開度(図5に示す例では100%開度)に維持した状態で、第2バイパス弁124の圧力制御が行われることで、第1蒸気ライン72の圧力を目標値に維持しながら、第1蒸気ライン72の余剰蒸気を第1バイパスライン110及び第2バイパスライン120を介して復水器18にダンプすることができる。
【0084】
その後、第1蒸気ライン72の蒸気がタービンへの通気に適した条件(圧力、温度等)を満たす状態となる時刻tc以降、第1蒸気弁22を開いて、第1蒸気ライン72から第1タービンへの蒸気供給(通気)を開始する。
【0085】
図5に示す実施形態によれば、第1蒸気ライン72からの余剰蒸気のダンプを行う際、最初に第1バイパス弁114を開いて第1蒸気ライン72の圧力制御を行うとともに、最終的には第1蒸気ライン72の圧力制御を第2バイパス弁124に行わせる。
このように、最終的に第2バイパス弁124に第1蒸気ライン72の圧力制御を行わせれば、その間、第1バイパス弁114は圧力制御の役割から解放されて第1バイパス弁114の開度の設定の自由度が向上するから、復水器18の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
また、最初に第1バイパス弁114による圧力制御を行うことで、その間、再熱器65を経由しない第1バイパスライン110を通じて復水器18に余剰蒸気がダンプされ、復水器18の冷却流体温度差ΔTの上昇をより一層抑制することができる。
【0086】
さらに、第2バイパス弁124の圧力制御の実行開始後、第1バイパス弁114の開度を急に増加させるのではなく、圧力制御によって第2バイパス弁124の開度が規定値A2に到達するのを待って、第2バイパス弁124の開度の調節代を確保した後に第1バイパス弁114の開度を増加させるようにしたので、圧力制御を実行する弁の切り替えをスムーズに行うことができる。
【0087】
以上、図3図5を参照して述べたように、幾つかの実施形態において、蒸気タービン設備100の制御装置90は、第1蒸気弁22を閉状態に維持したまま、時刻t1以降、第1蒸気ライン72の圧力制御を行うように第1バイパス弁114又は第2バイパス弁124の少なくとも一方の開度を調節するように構成される。また、幾つかの実施形態において、制御装置90は、復水器18の冷却流体温度差ΔTが許容値ΔT1に到達する前の少なくとも一部の期間において、第1バイパス弁114を少なくとも部分的に開いた状態で、第1蒸気ライン72の圧力制御を行うように第2バイパス弁124の開度を調節するように構成される。
【0088】
上記構成の蒸気タービン設備100によれば、第1バイパス弁114又は第2バイパス弁124を用いた圧力制御により、第1タービン12及び第2タービン14への通気前において第1蒸気ライン72の圧力を維持可能な適切な量の余剰蒸気が第2バイパス弁124を介して適切に復水器18にダンプされる。
一方、第2バイパス弁124を用いた圧力制御の実行中、かつ、復水器18の冷却流体温度差ΔTの許容値ΔT1への到達前の少なくとも一部の期間において、第1バイパス弁114は、少なくとも部分的に開いた状態となる。この状態において、第1蒸気ライン72の圧力を適切に維持するための制御(圧力制御)の役割は第2バイパス弁124が担うことから、第1バイパス弁114自体は、圧力制御を実行しなければならないという制約から解放されて、第1バイパス弁114の開度の設定の自由度が向上する。よって、第1バイパス弁114の開度を比較的大きな値に設定することで、第1蒸気ライン72からの余剰蒸気のダンプに起因した復水器18の冷却流体温度差ΔTの上昇を抑制することができる。
【0089】
次に、図6及び図7を参照しながら、上記構成の蒸気タービン設備100を含むGTCCプラント1の始動方法について説明する。なお、以下に説明するGTCCプラント1の始動方法は、上述の制御装置を用いて行ってもよいし、手動で行ってもよい。
【0090】
図6は、GTCCプラント1の始動手順の一例を示すフローチャートである。図7は、GTCCプラント1の起動パターンの一例を示す図である。
【0091】
図6に示すように、最初、ガスタービン40の燃焼器44のバーナを着火する(ステップS10)。これにより、燃焼器44からの燃焼ガスがタービン46に供給され、図7に示すとおり、ガスタービン40の回転数202が上昇し始める。
【0092】
ガスタービン40の回転数202が定格回転数に到達すると、図7に示すように、ガスタービン40の回転数202が定格回転数に維持された状態で、発電機4が電力系統に併入され、ガスタービン40の負荷204が増加し始める(ステップS12)。
【0093】
その後、ガスタービン40の負荷204を徐々に増大させ(ステップS14)、ガスタービン40の負荷が規定値B(例えば、定格負荷の90%以上の所定負荷)に到達するまで、ガスタービン40の負荷上昇を継続する(ステップS16のNO判定)。
なお、規定値Bは、ガスタービン40の定格負荷(100%負荷)であってもよい。
【0094】
ガスタービン40の負荷が規定値Bに到達したら(ステップS16のYES判定)、ガスタービン40の負荷を規定値Bに維持しながら蒸気タービン10の蒸気条件が成立するまで待機する。
【0095】
蒸気タービン10の蒸気条件が成立するまでの間、蒸気タービン10には通気されていないことから、ガスタービン40からの排ガスを熱源として排熱回収ボイラ50で発生した余剰蒸気は、各種バイパスライン(110、120、80)を通じて復水器18にダンプする必要がある。このため、ステップS18において、ガスタービン40の負荷を規定値Bに維持する一方、ステップS20において、第1蒸気ライン72の余剰蒸気の復水器18へのダンプを行う。
【0096】
ステップS20の余剰蒸気のダンプは、第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124を用いて行われる。具体的には、第1蒸気弁22を閉状態に維持したまま、第1蒸気ライン72の圧力がある程度上昇したら、第1バイパス弁114又は第2バイパス弁124の少なくとも一方を用いて第1蒸気ライン72の圧力制御を行う。このとき、例えば、図3及び図4に示すように、第2バイパス弁124のみを用いて第1蒸気ライン72の圧力制御を行ってもよいし、あるいは、図5に示すように、第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の双方を用いて第1蒸気ライン72の圧力制御を行ってもよい。第1蒸気ライン72の圧力制御の実行に際して、復水器18の冷却流体温度差ΔTが許容値ΔT1に到達する前の少なくとも一部の期間において、第1バイパス弁114を少なくとも部分的に開いた状態で、第2バイパス弁124を用いて第1蒸気ライン72の圧力制御が行われる。
なお、ステップ20の余剰蒸気のダンプ中における、第1バイパス弁114及び第2バイパス弁124の詳細な動作については、図3図5に示したとおりである。
【0097】
蒸気タービン10の蒸気条件が成立すると(ステップS22のYES判定)、蒸気タービン10への通気が開始される(ステップS24)。その結果、図7に示すとおり、蒸気タービン10の回転数212が定格回転数まで上昇する。蒸気タービン10の回転数212が定格回転数に達したら、蒸気タービン10の発電機4を電力系統に併入し、蒸気タービン10の負荷214の増加を開始する(ステップS26)。
なお、ガスタービン40と蒸気タービン10とが同軸上に配置されて、共通の発電機4の入力軸に連結されている場合、ステップS26に替えて、既に電力系統に併入されている発電機4に蒸気タービン10からの機械的エネルギーが伝達されるようにクラッチを嵌合させてもよい。
【0098】
この後、燃焼器44への燃料供給量および蒸気タービン10への蒸気供給量を増加させ、ガスタービン40及び蒸気タービン10の負荷を増大させる(ステップS28)。但し、規定値Bがガスタービン40の定格負荷そのものである場合、ステップS28の開始時点において既にガスタービン40は定格負荷に到達しているから、ガスタービン40の負荷をそれ以上上昇させる必要はない。
最終的に、ガスタービン40及び蒸気タービン10の負荷が定格負荷に到達する(ステップS30)。
このような手順により、GTCCプラント1を迅速に起動することができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0100】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0101】
1 GTCCプラント
4 発電機
10 蒸気タービン
12 第1タービン
14 第2タービン
16 低圧タービン
18 復水器
20 ステップ
22 第1蒸気弁
24 第2蒸気弁
26 低圧蒸気弁
40 ガスタービン
42 圧縮機
44 燃焼器
46 タービン
48 排ガス
50 排熱回収ボイラ
52 第1ドラム
54 第2ドラム
56 低圧ドラム
64 過熱器
65 再熱器
66 過熱器
72 第1蒸気ライン
73 第1蒸気排出ライン
74 第2蒸気ライン
75 第2蒸気排出ライン
76 低圧蒸気ライン
78 給水ライン
80 低圧バイパスライン
90 制御装置
92 圧力センサ
94 温度センサ
96 温度センサ
100 蒸気タービン設備
110 第1バイパスライン
112 第1分岐通路
114 第1バイパス弁
120 第2バイパスライン
122 第2分岐通路
124 第2バイパス弁
126 接続ライン
202 ガスタービンの回転数
204 ガスタービンの負荷
212 蒸気タービンの回転数
214 蒸気タービンの負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7