(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】セメント組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20221130BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20221130BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20221130BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20221130BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B22/14 B
C04B18/10 Z
C04B14/28
C04B18/14 A
(21)【出願番号】P 2018224628
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】久我 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】多田 真人
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊一郎
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-175854(JP,A)
【文献】特開平02-097441(JP,A)
【文献】特開2017-149606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/04
C04B 22/14
C04B 18/10
C04B 14/28
C04B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏粉末、及び、フライアッシュ粉末を含むセメント組成物であって、
上記ポルトランドセメントクリンカー粉末が、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末、及び、早強ポルトランドセメントクリンカー粉末を含むものであり、
上記ポルトランドセメントクリンカー粉末中、ボーグ式を用いて算出したエーライトの含有率が、47.0~64.0質量%、かつ、ボーグ式を用いて算出したビーライトの含有率が、9.0~27.0質量%であり、
上記中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び上記早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の上記中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合が、5~40質量%であり、
上記ポルトランドセメントクリンカー粉末及び上記石膏粉末(SO
3換算)の合計量100質量%中の上記石膏粉末(SO
3換算)の割合が、1.0~3.0質量%であり、
上記ポルトランドセメントクリンカー粉末、上記石膏粉末(SO
3換算)及び上記フライアッシュ粉末の合計量100質量%中の上記フライアッシュ粉末の割合が10質量%を超え、40質量%以下であることを特徴とするセメント組成物。
【請求項2】
ブレーン比表面積が5,000cm
2/g以上の石灰石粉末、及び/又は、ブレーン比表面積が3,000cm
2/g以上の高炉スラグ粉末を含む請求項1に記載のセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントの一部をフライアッシュで置換してなるフライアッシュ混合セメントは、水酸化カルシウムとフライアッシュのポゾラン反応により、安定なケイ酸カルシウム水和物等の化合物を生成して緻密な組織を形成する。そのため、フライアッシュ混合セメントは、水密性、化学抵抗性、及び、長期強度発現性に優れている。
また、ポゾラン反応による発熱量は、ポルトランドセメントの水和による発熱量に比べて少ないため、フライアッシュ混合セメントの水和熱は、ポルトランドセメントの水和熱よりも少なくなる。また、フライアッシュは、それ自体、球状の微粒子であるから、ボールベアリング作用により、コンクリート等の流動性を向上させることができ、それゆえ、コンクリート等の製造における単位水量を少なくすることができ、フライアッシュ混合セメントを用いた硬化体の乾燥収縮を小さくすることができる。
さらに、フライアッシュ混合セメントは、セメント製造時のCO2排出量や、原料である石灰石や化石燃料などの天然資源の使用量を少なくすることができる点や、副産物であるフライアッシュを有効活用できる点などで、環境負荷の低減効果を有している。
【0003】
フライアッシュ混合セメントはこのように多くの長所を有するが、一般社団法人セメント協会のホームページによると、2014年度のフライアッシュ混合セメントの生産高は74千t/年である。該生産高は、セメントの総生産高(56,700千t/年)の0.13%に過ぎない。このようにフライアッシュ混合セメントが普及しない理由として、例えば、初期の強度発現性が低いため、所定の強度を得るまでに長期の養生を要する点等が挙げられる。
【0004】
かかるフライアッシュ混合セメントの強度発現性を向上させるための方法として、燃料となる石炭の性状や火力発電所の運転状態により品質が変動するフライアッシュの中から、好ましい品質を有するフライアッシュを評価して選別することなどが提案されている。
例えば、特許文献1では、石炭灰を大量に含む、強度発現性の良好なモルタルやコンクリート組成物のセメント/石炭灰比(質量比)は、石炭灰の20%のスラリー液のpHが11.0以上の場合に、0.5以上、該pHが9.0以上、11.0未満の場合に、0.7以上、該pHが6.0以上、9.0未満の場合に、1.0以上に定めている。
また、特許文献2には、安定的に良好な強度発現性を有するセメントの製造に適したフライアッシュは、リートベルト解析法で求められる格子定数が0.4935nm以下であるα-石英を含み、BET比表面積が5.0m2/g以下であるものと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-156971号公報
【文献】特開2011-20867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~2に記載された発明は、石炭灰の性質によってセメント/石炭灰比を変更する方法や、特殊な評価方法を用いてフライアッシュを選別する方法であり、フライアッシュ混合セメントの強度発現性を直接的に向上させるものではない。
そこで、本発明の目的は、フライアッシュを含む(例えば、10質量%を超え、40質量%以下)場合であっても、強度発現性(特に、材齢3~28日におけるモルタル圧縮強さ)に優れ、かつ、水和熱の小さいセメント組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末を含むポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏粉末、並びに、フライアッシュ粉末を含むセメント組成物であって、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合と、ポルトランドセメントクリンカー粉末及び石膏粉末(SO3換算)の合計量100質量%中の石膏粉末(SO3換算)の割合と、ポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏粉末(SO3換算)及びフライアッシュ粉末の合計量100質量%中のフライアッシュ粉末の割合が、それぞれ、特定の数値範囲内であるセメント組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[2]を提供するものである。
[1] ポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏粉末、及び、フライアッシュ粉末を含むセメント組成物であって、上記ポルトランドセメントクリンカー粉末が、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末、及び、早強ポルトランドセメントクリンカー粉末を含むものであり、上記中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び上記早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の上記中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合が、5~40質量%であり、上記ポルトランドセメントクリンカー粉末及び上記石膏粉末(SO3換算)の合計量100質量%中の上記石膏粉末(SO3換算)の割合が、1.0~3.0質量%であり、上記ポルトランドセメントクリンカー粉末、上記石膏粉末(SO3換算)及び上記フライアッシュ粉末の合計量100質量%中の上記フライアッシュ粉末の割合が10質量%を超え、40質量%以下であることを特徴とするセメント組成物。
[2] ブレーン比表面積が5,000cm2/g以上の石灰石粉末、及び/又は、ブレーン比表面積が3,000cm2/g以上の高炉スラグ粉末を含む前記[1]に記載のセメント組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセメント組成物は、フライアッシュ(例えば、10質量%を超え、40質量%以下)を含む場合であっても、強度発現性(特に、材齢3~28日におけるモルタル圧縮強さ)に優れ、かつ、水和熱の小さいものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のセメント組成物は、ポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏粉末、及び、フライアッシュ粉末を含むセメント組成物であって、ポルトランドセメントクリンカー粉末が、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末、及び、早強ポルトランドセメントクリンカー粉末を含むものであり、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合が、5~40質量%であり、ポルトランドセメントクリンカー粉末及び石膏粉末(SO3換算)の合計量100質量%中の石膏粉末(SO3換算)の割合が、1.0~3.0質量%であり、ポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏粉末(SO3換算)及びフライアッシュ粉末の合計量100質量%中のフライアッシュ粉末の割合が10質量%を超え、40質量%以下であるものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
1.セメント組成物の構成材料
(1)ポルトランドセメントクリンカー粉末
本発明で使用するポルトランドセメントクリンカー粉末(以下、単に「セメントクリンカー粉末」ともいう。)は、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末、及び、早強ポルトランドセメントクリンカー粉末を含むものである。
セメントクリンカー粉末中の、ボーグ式を用いて算出したエーライト(3CaO・SiO2;以下、「C3S」)ともいう。)の含有率は、セメント組成物の流動性、強度発現性の向上、及び、水和熱の低減の観点から、好ましくは47.0~64.0質量%、より好ましくは49.0~63.0質量%、特に好ましくは51.0~62.0質量%である。
また、セメントクリンカー粉末中の、ボーグ式を用いて算出したビーライト(2CaO・SiO2;以下、「C2S」ともいう。)の含有率は、セメント組成物の流動性、強度発現性の向上、及び、水和熱の低減の観点から、好ましくは9.0~27.0質量%、より好ましくは10.0~25.0質量%、さらに好ましくは11.0~24.0質量%である。
【0012】
また、セメントクリンカー粉末中の、ボーグ式を用いて算出したアルミネート相(3CaO・Al2O3;以下、「C3A」ともいう。)の含有率は、セメント組成物の流動性、強度発現性の向上、及び、水和熱の低減の観点から、好ましくは5.0~10.0質量%、より好ましくは5.5~9.5質量%、さらに好ましくは6.0~9.0質量%である。
さらに、セメントクリンカー粉末中の、ボーグ式を用いて算出したフェライト相(4CaO・Al2O3・Fe2O3;以下、「C4AF」ともいう。)の含有率は、セメント組成物の流動性、強度発現性の向上、及び、水和熱の低減の観点から、好ましくは8.0~12.0質量%、より好ましくは8.5~11.5質量%、特に好ましくは9.0~11.0質量%である。
【0013】
なお、本明細書中、セメントクリンカー粉末中のC3S、C2S、C3A、C4AFの各含有率は、セメントクリンカー粉末全量(100質量%)中の割合として、セメントクリンカー原料やセメントクリンカー粉末(焼成物)の化学成分に基づき、下記のボーグの計算式を用いて算出される。
C3S(質量%)=(4.07×CaO(質量%))-(7.60×SiO2(質量%))-(6.72×Al2O3(質量%))-(1.43×Fe2O3(質量%))
C2S(質量%)=(2.87×SiO2(質量%))-(0.754×C3S(質量%))
C3A(質量%)=(2.65×Al2O3(質量%))-(1.69×Fe2O3(質量%))
C4AF(質量%)=3.04×Fe2O3(質量%)
【0014】
なお、本発明において、セメントクリンカー粉末(中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末、及び、早強ポルトランドセメントクリンカー粉末を含むもの)の調製に用いられる、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー及び早強ポルトランドセメントクリンカーのC2Sの含有率等の鉱物組成は、調製によって得られるセメントクリンカー粉末のC2S等の含有率の数値が、上述した数値範囲内となるものであることが、好ましい。
また、セメントクリンカー粉末は、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末以外のポルトランドセメントクリンカー粉末(以下、「他のクリンカー粉末」ともいう。)を含んでいてもよいが、セメント組成物の流動性及び強度発現性等の観点から、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末、及び、早強ポルトランドセメントクリンカー粉末のみからなるものが好ましい。
セメントクリンカー粉末の全量中の他のクリンカー粉末の割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0015】
セメントクリンカー粉末のブレーン比表面積は、セメント組成物の流動性、及び強度発現性、さらには粉砕のコスト低減の観点から、好ましくは3,300~5,000cm2/g、より好ましくは3,400~4,900cm2/g、特に好ましくは3,500~4,800cm2/gである。
【0016】
(2)石膏粉末
本発明で使用する石膏粉末としては、例えば、二水石膏、半水石膏、および無水石膏等の粉末が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の流動性および強度発現性の観点から、二水石膏と半水石膏の混合物を用いることが好ましい。二水石膏と半水石膏の合計量100質量%中の半水石膏の割合は、セメント組成物の流動性および強度発現性の観点から、SO3換算で、好ましくは10~95質量%、より好ましくは20~90質量%、特に好ましくは30~85質量%である。
また、石膏粉末のブレーン比表面積は、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは5,000~15,000cm2/g、より好ましくは6,000~14,000cm2/gである。
【0017】
(3)フライアッシュ粉末
本発明で使用するフライアッシュ粉末のブレーン比表面積は、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは1,500~8,000cm2/g、より好ましくは2,000~7,000cm2/g、さらに好ましくは2,500~6,000cm2/g、さらに好ましくは2,700~5,000cm2/g、特に好ましくは2,900~4,000cm2/gである。
また、フライアッシュ粉末の単位質量中の、Na2O、K2O、MgO、SO3、TiO2、P2O5、及びMnOの各々の質量は、下記式(1)を満たすものが好ましい。
(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)=0.10~1.50 ・・・(1)
上記式(1)の左辺から導き出される質量比は、好ましくは0.10~1.50、より好ましくは0.20~1.00、さらに好ましくは0.25~0.80、さらに好ましくは0.28~0.70、特に好ましくは0.30~0.60である。該質量比が上記数値範囲内であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。また、該質量比が1.50以下であればセメント組成物からなる硬化体の乾燥収縮をより小さくすることができる。
【0018】
フライアッシュ粉末中の石英の、リートベルト解析法を用いて得られた格子体積の値は、セメント組成物の強度発現性の向上、および、該セメント組成物からなる硬化体の乾燥収縮の低減の観点から、好ましくは113.5~114.5Å3、より好ましくは113.6~114.4Å3、特に好ましくは113.7~114.3Å3である。
なお、フライアッシュ粉末は、通常、石英を5~25質量%の割合で含むものである。
フライアッシュ粉末中の石英の、リートベルト解析法を用いて得られた格子体積の値は、該フライアッシュ粉末のX線回折図に基づき、例えば、Bruker社製の解析ソフト(商品名:「TOPAS ver2.1」)、及び、ICDD(International Centre for Diffraction Data)のPDFデータベースから得られる結晶構造データ(データベースの検索に用いられるICDD nunmber:331161(Quartz))を用いて得ることができる。
【0019】
(4)その他の構成材料(石灰石粉末及び/又は高炉スラグ粉末)
本発明のセメント組成物は、さらに、石灰石粉末及び/又は高炉スラグ粉末を含むことができる。
石灰石粉末のブレーン比表面積は、5,000cm2/g以上、好ましくは5,200~15,000cm2/g、より好ましくは5,400~14,000cm2/g、さらに好ましくは5,500~13,000cm2/g、特に好ましくは5,700~12,000cm2/gである。ブレーン比表面積が5,000cm2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
高炉スラグ粉末のブレーン比表面積は、3,000cm2/g以上、好ましくは3,200~6,000cm2/g、より好ましくは3,500~5,500cm2/g、さらに好ましくは3,800~5,200cm2/g、特に好ましくは4,000~5,000cm2/gである。ブレーン比表面積が3,000cm2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
【0020】
2.セメント組成物の組成(構成材料の配合)
本発明のセメント組成物において、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合は、5~40質量%、好ましくは8~35質量%、より好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは12~25質量%、特に好ましくは15~20質量%である。該割合が5質量%未満であれば、セメント組成物の流動性が低下する。また、セメント組成物の水和熱が大きくなる。該割合が40質量%を超えると、セメント組成物の強度発現性が低下する。また、上記割合を、上記数値範囲内にすることで、ボーグ式を用いて算出した、セメントクリンカー粉末中のC3S等の含有率を上述した数値範囲内にすることができる。
【0021】
本発明のセメント組成物において、セメントクリンカー粉末及び石膏粉末(SO3換算)の合計量100質量%中の石膏粉末(SO3換算)の割合は、1.0~3.0質量%、好ましくは1.5~2.9質量%、より好ましくは1.8~2.8質量%、特に好ましくは1.8~2.6質量%である。該割合が1.0質量%未満であれば、セメント組成物の流動性が低下する。該割合が3.0質量%を超えると、セメント組成物の強度発現性が低下する。
また、セメントクリンカー粉末及び石膏粉末(SO3換算)の合計量100質量%中の全SO3量の割合は、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは1.5~3.5質量%、より好ましくは1.7~3.2質量%、さらに好ましくは2.0~3.0質量%、特に好ましくは2.3~3.0質量%である。
【0022】
本発明のセメント組成物において、セメントクリンカー粉末、石膏粉末(SO3換算)及びフライアッシュ粉末の合計量100質量%中のフライアッシュ粉末の割合は、10質量%を超え、40質量%以下、好ましくは12~35質量%、より好ましくは15~30質量%、特に好ましくは16~25質量%である。該割合が10質量%以下であれば、セメント組成物の流動性が低下する。また、セメント組成物の水和熱が大きくなる。また、フライアッシュの有効活用を促進する観点から好ましくない。該割合が40質量%を超えると、セメント組成物の強度発現性が低下する。
【0023】
本発明のセメント組成物において、セメントクリンカー粉末、石膏粉末(SO3換算)、フライアッシュ粉末、並びに、石灰石粉末及び/又は高炉スラグ粉末の合計量100質量%中の石灰石粉末及び/又は高炉スラグ粉末の割合は、好ましくは0~10.0質量%、より好ましくは1.0~9.0質量%、特に好ましくは2.0~8.0質量%である。該割合が上記数値範囲内であると、セメント組成物の強度発現性がより向上する。
【0024】
本発明のセメント組成物は、上述した構成材料(セメントクリンカー粉末、石膏粉末、石灰石粉末及び/又は高炉スラグ粉末、並びに、フライアッシュ)の他に、必要に応じて、珪石粉末を、セメントクリンカー粉末100質量部に対して、5.5質量部以下の量で含んでいてもよい。
また、本発明のセメント組成物のブレーン比表面積は、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは3,700~5,500cm2/g、より好ましくは3,850~5,000cm2/g、さらに好ましくは4,000~4,900cm2/g、特に好ましくは4,200~4,850cm2/gである。
【0025】
3.セメント組成物の製造方法
本発明のセメント組成物の製造方法としては、例えば、以下の(a)~(c)の方法が挙げられる。
(a)予め、中庸熱ポルトランドセメントクリンカーと石膏を同時に粉砕して中庸熱ポルトランドセメントクリンカー含有粉末(以下、「MC」ともいう。)を作製し、また、早強ポルトランドセメントクリンカーと石膏を同時に粉砕して早強ポルトランドセメントクリンカー含有粉末(以下、「HC」ともいう。)を作製し、次いで、MCと、HCと、フライアッシュ粉末と、必要に応じて石灰石粉末(ブレーン比表面積が5,000cm2/g以上のもの)及び/又は高炉スラグ粉末(ブレーン比表面積が3,000cm2/g以上のもの)を混合する方法
該方法において、中庸熱ポルトランドセメントクリンカーと石膏の粉砕は、粉砕物のブレーン比表面積が、好ましくは3,000~5,500cm2/g、より好ましくは3,100~5,000cm2/g、特に好ましくは3,200~4,500cm2/gとなるまで行うことが好ましい。また、早強ポルトランドセメントクリンカーと石膏の粉砕は、粉砕物のブレーン比表面積が、好ましくは4,200~4,700cm2/g、より好ましくは4,250~4,650cm2/g、より好ましくは4,300~4,600cm2/gとなるまで行うことが好ましい。
【0026】
(b)予め、中庸熱ポルトランドセメントクリンカーと、石膏と、必要に応じて石灰石及び/又は高炉スラグを同時に粉砕し中庸熱ポルトランドセメントクリンカー含有粉末(MC)を作製し、また、早強ポルトランドセメントクリンカーと石膏を同時に粉砕して早強ポルトランドセメントクリンカー含有粉末(HC)を作製し、次いで、MCと、HCと、フライアッシュ粉末を混合する方法
該方法において、中庸熱ポルトランドセメントクリンカーと石膏と石灰石及び/又は高炉スラグの粉砕は、粉砕物のブレーン比表面積が、好ましくは3,000~5,500cm2/g、より好ましくは3,100~5,000cm2/g、特に好ましくは3,200~4,500cm2/gとなるまで行うことが好ましい。なお、該粉砕によって、粉砕物に含まれる石灰石粉末のブレーン比表面積は、5,000cm2/g以上のものとなる。また、該粉砕によって、粉砕物に含まれる高炉スラグ粉末のブレーン比表面積は、3,000cm2/g以上のものとなる。
また、早強ポルトランドセメントクリンカーと石膏の粉砕は、粉砕物のブレーン比表面積が、好ましくは4,200~4,700cm2/g、より好ましくは4,250~4,650cm2/g、特に好ましくは4,300~4,600cm2/gとなるまで行うことが好ましい。
【0027】
(c)予め、中庸熱ポルトランドセメントクリンカーと石膏を同時に粉砕して中庸熱ポルトランドセメントクリンカー含有粉末(MC)を作製し、また、早強ポルトランドセメントと、石膏と、必要に応じて石灰石及び/又は高炉スラグを同時に粉砕して早強ポルトランドセメントクリンカー含有粉末(HC)を作製し、次いで、MCと、HCと、フライアッシュ粉末を混合する方法
該方法において、中庸熱ポルトランドセメントクリンカーと石膏の粉砕は、粉砕物のブレーン比表面積が、好ましくは3,000~5,500cm2/g、より好ましくは3,100~5,000cm2/g、特に好ましくは3,200~4,500cm2/gとなるまで行うことが好ましい。
また、早強ポルトランドセメントクリンカーと石膏と石灰石及び/又は高炉スラグの粉砕は、粉砕物のブレーン比表面積が、好ましくは4,200~4,700cm2/g、より好ましくは4,250~4,650cm2/g、特に好ましくは4,300~4,600cm2/gとなるまで行うことが好ましい。なお、該粉砕によって、粉砕物に含まれる石灰石粉末のブレーン比表面積は、5,000cm2/g以上のものとなる。また、該粉砕によって、粉砕物に含まれる高炉スラグ粉末のブレーン比表面積は、3,000cm2/g以上のものとなる。
【0028】
本発明のセメント組成物は、水、及び、必要に応じて配合される他の材料(例えば、細骨材、粗骨材、セメント分散剤等)と混合されることによって、ペースト、モルタル、又はコンクリートとして使用される。
セメント分散剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、又はポリカルボン酸系等の、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、又は高性能AE減水剤を使用することができる。
本発明のセメント組成物を、モルタル又はコンクリートとして使用する場合には、骨材として、モルタルやコンクリートの製造に使用される通常の細骨材(例えば、川砂、陸砂、砕砂等)や粗骨材(例えば、川砂利、山砂利、砕石等)を使用することができる。また、骨材の一部または全部として、溶融スラグ(例えば、都市ゴミ、都市ゴミ焼却灰、及び下水汚泥焼却灰から選ばれる一種以上を溶融して製造されたもの)、高炉スラグ、製鋼スラグ、銅スラグ、碍子屑、ガラスカレット、陶磁器廃材、クリンカーアッシュ、廃レンガ、コンクリート廃材等の廃棄物を使用することもできる。
なお、必要に応じて、本発明の目的に支障のない範囲内で、空気連行剤、消泡剤等の混和剤を使用してもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
中庸熱ポルトランドセメント1(太平洋セメント社製);C3S:42.1質量%、C2S:36.4質量%、C3A:2.6質量%、C4AF:13.0質量%、石膏(SO3換算):1.8質量%、全SO3量:2.1質量%、ブレーン比表面積:3,200cm2/g
(2)中庸熱ポルトランドセメント2(太平洋セメント社製);C3S:42.1質量%、C2S:36.4質量%、C3A:2.6質量%、C4AF:13.0質量%、石膏(SO3換算):1.8質量%、全SO3量:2.1質量%、ブレーン比表面積:4,000cm2/g
(3)中庸熱ポルトランドセメント3(太平洋セメント社製);C3S:42.1質量%、C2S:36.4質量%、C3A:2.6質量%、C4AF:13.0質量%、石膏(SO3換算):1.8質量%、全SO3量:2.1質量%、ブレーン比表面積:5,000cm2/g
(4)早強ポルトランドセメント(太平洋セメント社製);C3S:65.2質量%、C2S:8.6質量%、C3A:9.5質量%、C4AF:8.4質量%、石膏(SO3換算):2.3質量%、全SO3量:3.0質量%、ブレーン比表面積:4,600cm2/g
(5)普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製);C3S:60.1質量%、C2S:13.1質量%、C3A:9.0質量%、C4AF:9.8質量%、石膏(SO3換算):2.0質量%、ブレーン比表面積:3,250cm2/g
(6)フライアッシュ粉末;ブレーン比表面積:3,760cm2/g、質量比((Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)):0.51、石英の格子体積(Å3):113.9
(7)石灰石粉末;ブレーン比表面積:8,500cm2/g
(8)細骨材;「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に定める標準砂
(9)減水剤;ポリカルボン酸系高性能AE減水剤、BASFジャパン製、商品名「マスターグレニウムSP8N」
(10)消泡剤;非イオン界面活性剤、日華化学社製、商品名「フォームレックス747」
(11)水;水道水
【0030】
[実施例1]
中庸熱ポルトランドセメント1と早強ポルトランドセメントとフライアッシュ粉末と石灰石粉末を、各材料が以下(1)~(3)の条件を満たすような量で混合してセメント組成物1を調製した。
(1)中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合が15質量%であること
(2)中庸熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント及びフライアッシュ粉末の合計量100質量%中のフライアッシュ粉末の割合が18.6質量%であること
(3)中庸熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、フライアッシュ粉末及び石灰石粉末の合計量100質量%中の石灰石粉末の割合が3.7質量%であること
なお、セメント組成物1のブレーン比表面積は、4,550cm2/gであった。
[実施例2]
中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合が30質量%となるように、各材料の量を定めた以外は実施例1と同様にして、セメント組成物2を調製した。
なお、セメント組成物2のブレーン比表面積は、4,360cm2/gであった。
【0031】
[実施例3]
中庸熱ポルトランドセメント1の代わりに中庸熱ポルトランドセメント2を使用した以外は実施例1と同様にして、セメント組成物3を調製した。
なお、セメント組成物3のブレーン比表面積は、4,670cm2/gであった。
[実施例4]
中庸熱ポルトランドセメント1の代わりに中庸熱ポルトランドセメント2を使用した以外は実施例2と同様にして、セメント組成物4を調製した。
なお、セメント組成物4のブレーン比表面積は、4,600cm2/gであった。
[実施例5]
中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合が40質量%となるように、各材料の量を定めた以外は実施例3と同様にして、セメント組成物5を調製した。
なお、セメント組成物5のブレーン比表面積は、4,470cm2/gであった。
【0032】
[実施例6]
中庸熱ポルトランドセメント1の代わりに中庸熱ポルトランドセメント3を使用した以外は実施例2と同様にして、セメント組成物6を調製した。
なお、セメント組成物6のブレーン比表面積は、4,870cm2/gであった。
[実施例7]
中庸熱ポルトランドセメント1の代わりに中庸熱ポルトランドセメント3を使用した以外は実施例5と同様にして、セメント組成物7を調製した。
なお、セメント組成物7のブレーン比表面積は、4,960cm2/gであった。
【0033】
[比較例1]
早強ポルトランドセメントとフライアッシュ粉末を、早強ポルトランドセメント及びフライアッシュ粉末の合計量100質量%中のフライアッシュ粉末の割合が18.0質量%となるような量で混合して、セメント組成物8を調製した。
なお、セメント組成物8のブレーン比表面積は、4,620cm2/gであった。
[比較例2]
中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合が45質量%となるように、各材料の量を定めた以外は実施例1と同様にして、セメント組成物9を調製した。
なお、セメント組成物9のブレーン比表面積は、4,040cm2/gであった。
【0034】
[比較例3]
普通ポルトランドセメントとフライアッシュ粉末を、普通ポルトランドセメント及びフライアッシュ粉末の合計量100質量%中のフライアッシュ粉末の割合が18.0質量%となるように混合して、セメント組成物10を調製した。
なお、セメント組成物10のブレーン比表面積は、3,350cm2/gであった。
【0035】
得られた各セメント組成物1~10における、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末及び早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合と、ポルトランドセメントクリンカー粉末(実施例1~7、比較例2:中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末と早強ポルトランドセメントクリンカー粉末からなるもの、比較例1:早強ポルトランドセメントクリンカー粉末、参考例1:普通ポルトランドセメントクリンカー粉末)、及び、石膏粉末(SO3換算)の合計量100質量%中の石膏粉末(SO3換算)の割合と、ポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏粉末(SO3換算)及びフライアッシュ粉末の合計量100質量%中のフライアッシュ粉末の割合を、表1に示す。
表1中、「中庸熱クリンカー」は、「中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末」を略したものである。
また、「中庸熱クリンカー」の種類「1」、「2」、「3」は、各々、「中庸熱ポルトランドセメント1中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末」、「中庸熱ポルトランドセメント2中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末」、「中庸熱ポルトランドセメント3中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末」を略したものである。
【0036】
セメント組成物1、3に含まれるポルトランドセメントクリンカー粉末中、C3Sの含有率は61.7質量%、C2Sの含有率は12.8質量%、C3Aの含有率は8.5質量%、C4AFの含有率は9.1質量%であった。
また、セメント組成物2、4、6に含まれるポルトランドセメントクリンカー粉末中、C3Sの含有率は58.3質量%、C2Sの含有率は16.9質量%、C3Aの含有率は7.4質量%、C4AFの含有率は9.8質量%であった。
また、セメント組成物5、7に含まれるポルトランドセメントクリンカー粉末中、C3Sの含有率は56.0質量%、C2Sの含有率は19.7質量%、C3Aの含有率は6.7質量%、C4AFの含有率は10.2質量%であった。
また、セメント組成物9に含まれるポルトランドセメントクリンカー粉末中、C3Sの含有率は54.8質量%、C2Sの含有率は21.1質量%、C3Aの含有率は6.4質量%、C4AFの含有率は10.5質量%であった。
実施例1~7及び比較例2において得られたセメント組成物1~7、9中のセメントクリンカー粉末と石膏粉末(SO3換算)の合計量100質量%中の全SO3量の割合は、2.6~2.9質量%であった。
実施例1~7及び比較例2において得られたセメント組成物1~7、9中のセメントクリンカー粉末のブレーン比表面積は、3,500~4,800cm2/gであった。
また、実施例1~7及び比較例1~3において得られたセメント組成物1~11中の石膏粉末のブレーン比表面積は、8,000~12,000cm2/gであった。
なお、セメント組成物中の特定の材料(例えば、石膏粉末)のブレーン比表面積は、セメント組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して、セメント組成物中の材料の粒子を特定し、該粒子の平均粒径を求めた後、該平均粒径から推定することができる。
【0037】
(1)モルタルフローの測定
水とセメント組成物の質量比(水/セメント組成物)が0.3、細骨材とセメント組成物の質量比(細骨材/セメント組成物)が1.4、消泡剤とセメント組成物の質量比(消泡剤/セメント組成物)が0.001、セメント分散剤とセメント組成物の質量比(セメント分散剤/セメント組成物)が0.0065となる量で、セメント組成物等のこれら材料を混合して、モルタルを調製した。これら材料の混練は、ホバートミキサーを用いて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠(ただし、混練時間は、ここに記載されている時間よりも2分間長いものとした。)して行った。なお、混練に際して、セメント分散剤と消泡剤は水と同時にミキサーに投入した。
得られたモルタルについて、「JIS A 1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)」に記載されたスランプコーンを用いて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」のフロー試験に準拠して、混練直後のモルタルフロー値を、15回の落下運動を行わないで測定した。
(2)モルタル圧縮強さの測定
「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日、7日、28日の各時点における、モルタル圧縮強さを測定した。
(3)水和熱の測定
「JIS R 5203(セメントの水和熱測定方法)」に準拠して、材齢7日、28日の各時点における、水和熱を測定した。
【0038】
【0039】
【0040】
表2から、比較例1(早強ポルトランドセメントとフライアッシュ粉末を混合してなるもの)のセメント組成物の材齢3日におけるモルタル圧縮強さ(37.2N/mm2)及び材齢7日におけるモルタル圧縮強さ(45.3N/mm2)は、各々、実施例1~7の材齢3日におけるモルタル圧縮強さ(29.5~34.3N/mm2)及び材齢7日におけるモルタル圧縮強さ(38.0~42.8N/mm2)よりも大きかったが、比較例1のセメント組成物の材齢28日におけるモルタル圧縮強さ(54.2N/mm2)は、実施例1~7の材齢28日におけるモルタル圧縮強さ(55.8~60.9N/mm2)よりも小さかった。また、比較例1のセメント組成物の各材齢における水和熱(材齢3日:372J、材齢7日:405J)は、実施例1~7の各材齢における水和熱(材齢7日:309~346J、材齢28日:351~390J)よりも大きかった。
すなわち、比較例1のセメント組成物は、実施例1~7のセメント組成物と比較して、材齢3日及び7日におけるモルタル圧縮強さは大きいものの、水和熱が大きいという点で劣っていることがわかる。
【0041】
また、比較例2(中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末、及び、早強ポルトランドセメントクリンカー粉末の合計量100質量%中の中庸熱ポルトランドセメントクリンカー粉末の割合が45質量%であるもの)のセメント組成物の各材齢における水和熱(材齢3日:300J、材齢7日:335J)は、実施例1~7の各材齢における水和熱よりも小さかったが、各材齢におけるモルタル圧縮強さ(材齢3日:26.5N/mm2、材齢7日:33.0N/mm2、材齢28日:55.2N/mm2)は、実施例1~7の各材齢におけるモルタル圧縮強さよりも小さかった。
すなわち、比較例2のセメント組成物は、実施例1~7のセメント組成物と比較して、水和熱は小さいものの、各材齢におけるモルタル圧縮強さは小さいという点で劣っていることがわかる。
【0042】
さらに、比較例3(普通ポルトランドセメントとフライアッシュ粉末を混合してなるもの)のセメント組成物の各材齢における水和熱(材齢3日:307J、材齢7日:350J)は、実施例1~7の各材齢における水和熱よりも小さかったが、材齢3日におけるモルタル圧縮強さ(27.6N/mm2)及び材齢28日におけるモルタル圧縮強さ(54.9N/mm2)は、実施例1~7の各材齢におけるモルタル圧縮強さよりも小さく、材齢7日におけるモルタル圧縮強さ(41.7N/mm2)は、実施例1~7の材齢7日におけるモルタル圧縮強さと同程度であった。また、比較例3のモルタルフロー(288mm)は、実施例1~7におけるモルタルフロー(303~357mm)よりも小さかった。
すなわち、比較例3のセメント組成物は、実施例1~7のセメント組成物と比較して、水和熱が小さいものの、モルタル圧縮強さが小さく(特に材齢3日及び28日)かつモルタルフローが小さいという点で劣っていることがわかる。