(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ネイザルアダプタおよび呼吸管理デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/097 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A61B5/097
(21)【出願番号】P 2018231161
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 敬之
(72)【発明者】
【氏名】株本 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 文彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 正行
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-066431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08-5/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の口に対向する対向部を有し、口から前記対向部に吐き出された呼気を導く口側誘導路が形成された口呼気誘導部と、
前記生体に対して前記口呼気誘導部の上側に配置され、前記口側誘導路で導かれた呼気を測定するセンサを保持する測定用部材または呼気を外部装置に導くチューブ状の測定用部材が取り付けられる取付部と
を備え、
前記口呼気誘導部は、前記取付部に一体に接続され、前記取付部に接続された接続部分と前記対向部との間の距離を変更して前記対向部の姿勢を変える姿勢変更部を有するネイザルアダプタ。
【請求項2】
前記接続部分は、前記口呼気誘導部の一対の側部に配置され、
前記姿勢変更部は、前記一対の側部を結ぶ直線の周りに前記接続部分と前記対向部との間の距離を変更するように、前記接続部分近傍を切り欠いて形成される請求項1に記載のネイザルアダプタ。
【請求項3】
前記姿勢変更部は、前記口呼気誘導部の一対の側部を結ぶ直線の周りに前記接続部分と前記対向部との間を伸縮させる蛇腹形状を有する請求項1または2に記載のネイザルアダプタ。
【請求項4】
前記測定用部材または前記取付部は、前記口側誘導路内に延びて前記対向部の裏面に対向する支持部を有し、
前記対向部の裏面および前記支持部の一方は前記対向部の裏面および前記支持部の他方に向かって突出する突出部を有すると共に前記対向部の裏面および前記支持部の他方は前記突出部に対応して窪んだ受け部を有し、前記突出部が前記受け部に係合することにより前記対向部の姿勢が前記支持部に支持される請求項1~3のいずれか一項に記載のネイザルアダプタ。
【請求項5】
前記対向部の裏面および前記支持部の他方は、上下方向に配列された複数の前記受け部を有し、前記突出部を異なる前記受け部に係合させることにより前記対向部の姿勢が段階的に変えられる請求項4に記載のネイザルアダプタ。
【請求項6】
前記突出部は、上部の一部が下方に窪んだ凹部を有し、
前記受け部は、前記凹部に係止するように突出する凸部を有する請求項4または5に記載のネイザルアダプタ。
【請求項7】
前記測定用部材は、前記取付部に対して前記生体の反対側に配置され、前記取付部の少なくとも一部を覆うように前記取付部に取り付けられる請求項1~6のいずれか一項に記載のネイザルアダプタ。
【請求項8】
前記測定用部材は、前記口呼気誘導部および前記取付部より高い剛性を有する請求項1~7のいずれか一項に記載のネイザルアダプタ。
【請求項9】
前記測定用部材は、前記取付部を上下方向に張るように前記取付部の上部および下部を固定する上固定部および下固定部を有する請求項8に記載のネイザルアダプタ。
【請求項10】
前記測定用部材は、前記取付部を左右方向に張るように前記取付部の右側部および左側部を固定する右固定部および左固定部を有する請求項8または9に記載のネイザルアダプタ。
【請求項11】
生体の鼻孔に対応して配置されると共に前記取付部の上部に一体に接続され、鼻孔からの呼気を前記測定用部材に向かって導く鼻側誘導路が形成された鼻呼気誘導部をさらに有する請求項1~10のいずれか一項に記載のネイザルアダプタ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のネイザルアダプタと、
チューブ形状を有し、鼻孔および口のうち少なくとも一方に所定のガスを供給するために前記ネイザルアダプタに取り付けられる鼻カニューラとを備える呼吸管理デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネイザルアダプタおよび呼吸管理デバイスに係り、特に、生体の口から吐き出された呼気を測定するためのネイザルアダプタおよび呼吸管理デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体の口および鼻から吐き出された呼気を測定するためのネイザルアダプタが実用化されている。ネイザルアダプタは、生体の顔に装着されるもので、例えば、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度を測定するセンサを取り付けるための取付部と、取付部の下側において口に対向するように配置された口呼気誘導部とを有する。口呼気誘導部は、口から吐き出された呼気をセンサに向かって導くように形成されており、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度をセンサで順次測定することができる。
しかしながら、口呼気誘導部は、口に近接するように配置されるため、口およびその周辺に接触して被検者が不快を感じるおそれがあった。
【0003】
そこで、生体への口呼気誘導部の接触を抑制する技術として、例えば、特許文献1には、複数の生体情報を取得する場合において、被検者への機器装着作業を効率的に行なうことができかつ被検者が感じる煩わしさを抑制するエアウェイアダプタが提案されている。このエアウェイアダプタは、口呼気誘導部が取付部に支軸を介して回動可能に接続されているため、口呼気誘導部の姿勢を変化させて生体への接触を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、取付部に支軸を介して口呼気誘導部を接続すると、取付部と呼気誘導部を別々に作製する必要があり、構成部品が増加するといった問題があった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、簡単な構成で呼気誘導部の姿勢を変化させるネイザルアダプタおよび呼吸管理デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るネイザルアダプタは、生体の口に対向する対向部を有し、口から対向部に吐き出された呼気を導く口側誘導路が形成された口呼気誘導部と、生体に対して口呼気誘導部の上側に配置され、口側誘導路で導かれた呼気を測定するセンサを保持する測定用部材または呼気を外部装置に導くチューブ状の測定用部材が取り付けられる取付部と、を備え、口呼気誘導部は、取付部に一体に接続され、取付部に接続された接続部分と対向部との間の距離を変更して対向部の姿勢を変える姿勢変更部を有するものである。
【0008】
この発明に係る呼吸管理デバイスは、上記のネイザルアダプタと、チューブ形状を有し、鼻孔および口のうち少なくとも一方に所定のガスを供給するためにネイザルアダプタに取り付けられる鼻カニューラとを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、口呼気誘導部が取付部に一体に接続され、姿勢変更部が取付部に接続された接続部分と対向部との間の距離を変更して対向部の姿勢を変えるので、簡単な構成で呼気誘導部の姿勢を変化させるネイザルアダプタおよび呼吸管理デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る呼吸管理デバイスの構成を示す図である。
【
図6】対向部の姿勢を変化させた様子を示す側面図である。
【
図7】受け部に形成された凸部が突出部の凹部に係止する様子を示す断面図である。
【
図8】実施の形態2の口呼気誘導部の構成を示す側面図である。
【
図9】実施の形態3の支持部の構成を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態4のネイザルアダプタの構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係るネイザルアダプタを備えた呼吸管理デバイスの構成を示す。この呼吸管理デバイスは、生体の顔Fに装着されるもので、ネイザルアダプタ1と、一対の鼻カニューラ2と、固定バンド部3とを有する。
【0012】
ネイザルアダプタ1は、顔Fの正面に配置されるアダプタ本体4と、アダプタ本体4に取り付けられる保持部材5とを有する。
アダプタ本体4は、生体の鼻孔Nに対応して配置される鼻呼気誘導部6と、生体の口Mに対応して配置される口呼気誘導部7と、鼻呼気誘導部6および口呼気誘導部7の間に配置される取付部8とを有する。ここで、鼻呼気誘導部6、口呼気誘導部7および取付部8は、可撓性材料で一体に形成されている。可撓性材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
【0013】
鼻呼気誘導部6は、鼻孔Nから吐き出された呼気を保持部材5に向かって導くもので、取付部8から2つの鼻孔Nに向かって分岐して延びるように形成されている。
取付部8は、生体に対して左右方向Xに延びるように配置され、その中央部を覆うように保持部材5が取り付け可能に形成されている。また、取付部8は、左右の側部に鼻カニューラ2を取り付け可能に形成されると共に、左右の側部近傍に固定バンド部3を取り付け可能に形成されている。
口呼気誘導部7は、口Mから吐き出された呼気を保持部材5に向かって導くもので、口Mの前側を上下方向Yにわたるように形成されている。
【0014】
保持部材5は、鼻呼気誘導部6および口呼気誘導部7で導かれた呼気を測定するセンサSを保持するもので、センサSを着脱可能に形成されている。保持部材5は、鼻呼気誘導部6、口呼気誘導部7および取付部8より高い剛性を有するように形成されている。ここで、保持部材5は、取付部8に対して生体の顔Fの反対側に配置され、取付部8を支持するために取付部8の一部を覆うように取付部8に取り付けられている。保持部材5は、例えば、熱可塑性樹脂などから構成することができる。この保持部材5は、本発明における測定用部材を構成するものである。
なお、センサSとしては、例えば、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度を測定するものを用いることができる。
【0015】
一対の鼻カニューラ2は、それぞれチューブ形状を有し、鼻孔Nに所定のガスを供給するために一対の鼻カニューラ2の一端部が取付部8の左右の側部にそれぞれ取り付けられている。鼻カニューラ2は、所定のガスを供給する図示しないガス供給装置まで延びるように形成されて、他端部がガス供給装置に接続されている。ガス供給装置は、例えば、酸素を供給するものを用いることができる。ここで、取付部8の上部には鼻孔Nおよび口Mに向かって開口したガス供給部9aおよび9bが形成されており、鼻カニューラ2により取付部8に導かれた酸素がガス供給部9aを介して鼻孔N周辺に放出されると共にガス供給部9bを介して口M周辺に放出される。
固定バンド部3は、ネイザルアダプタ1を生体の顔Fに固定するためのもので、顔Fの周囲を囲むように延びて両端部が取付部8に取り付けられている。
【0016】
次に、ネイザルアダプタ1の構成について詳細に説明する。
図2(a)および(b)に示すように、鼻呼気誘導部6が取付部8の上部に一体に接続されると共に、口呼気誘導部7が取付部8の下部に一体に接続されている。取付部8は、保持部材5の後方を、すなわち保持部材5に対して顔F側を左右方向Xに延びるように形成されている。一方、保持部材5は、取付部8の前方を取付部8に対して隙間を開けて左右方向Xに延びるように形成された背板部15を有する。これにより、取付部8と背板部15との間に鼻孔Nおよび口Mに向かって開口したガス供給部9aおよび9bが形成されることになる。
【0017】
また、取付部8の右側部には取付孔10aが設けられ、取付部8の左側部には取付孔10bが設けられている。そして、保持部材5の背板部15には、取付孔10aに挿入可能に右固定部11aが設けられると共に取付孔10bに挿入可能に左固定部11bが設けられている。この右固定部11aが取付孔10aに挿入されることにより取付部8の右側部が右方向に張るように保持部材5に固定され、左固定部11bが取付孔10bに挿入されることにより取付部8の左側部が左方向に張るように保持部材5に固定される。
【0018】
また、取付部8の上部には取付孔10cが設けられ、取付部8の下部には取付孔10dが設けられている。そして、保持部材5には、取付孔10cに対応して上固定部11cが設けられると共に取付孔10dに対応して下固定部11dが設けられている。この上固定部11cが取付孔10cに挿入されることにより取付部8の上部が上方向に張るように保持部材5に固定され、下固定部11dが取付孔10dに挿入されることにより取付部8の下部が下方向に張るように保持部材5に固定される。
【0019】
口呼気誘導部7は、対向部12と、接続部分13と、姿勢変更部14とを有する。
対向部12は、保持部材5の直下に延びると共に前方に向かって湾曲したカップ形状に形成され、生体の口Mに対向するように配置される。
接続部分13は、口呼気誘導部7の一対の側部にそれぞれ配置され、取付部8に一体に接続されている。すなわち、口呼気誘導部7は、一対の側部のみで取付部8に接続され、その間の部分は接続されずに取付部8から切り離されている。
姿勢変更部14は、口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線の周りに接続部分13と対向部12との間の距離を変更するように、接続部分13近傍を切り欠いて形成されている。具体的には、姿勢変更部14は、接続部分13と対向部12との間を上下方向Yと前後方向ZにL字状に切り欠くように形成されている。換言すると、姿勢変更部14は、接続部分13と対向部12との間を開閉する切欠き形状を有することにより、口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線を仮想の回転軸として、接続部分13との間の距離を変更するように対向部12の姿勢を変化させる。
【0020】
図3に示すように、鼻呼気誘導部6には、鼻孔Nからの呼気Bを保持部材5に向かって導く鼻側誘導路6aが形成されている。また、口呼気誘導部7には、口Mから対向部12に吐き出された呼気Bを保持部材5に向かって導く口側誘導路7aが形成されている。さらに、保持部材5には、鼻側誘導路6aおよび口側誘導路7aにそれぞれ連通する連通路5aが形成されている。これにより、鼻孔Nから吐き出された呼気Bが鼻側誘導路6aを介して連通路5aに導かれると共に口Mから吐き出された呼気Bが口側誘導路7aを介して連通路5aに導かれることになる。
【0021】
保持部材5は、
図4に示すように、背板部15の中央部から前方に柱状に突出する柱部16と、背板部15の上部および下部から柱部16を挟むように前方に張り出した一対の張出部17aおよび17bと、張出部17bから下方に突出するように形成された支持部18と、支持部18の下部から前方に突出する突出部19とを有する。
【0022】
柱部16は、図示しないセンサSが両側部を挟むように装着されるもので、内部に形成された連通路5aを流通する呼気Bを測定するための窓部16aが両側部に形成されている。センサSは、例えば、窓部16aに向かって赤外線などを出力し、窓部16aを透過した赤外線量の変化に基づいて呼気Bに含まれる二酸化炭素の濃度を測定する。
一対の張出部17aおよび17bは、図示しないセンサSを上下方向Yから支持するもので、センサSを上下方向Yに挟むように配置されている。
【0023】
支持部18は、対向部12の姿勢を支持するもので、口呼気誘導部7の口側誘導路7a内に延びて対向部12の裏面に対向するように配置されている。支持部18は、対向部12の裏面に沿って前方にU字状に湾曲するように形成され、その両側部にそれぞれ下固定部11dが設けられている。
突出部19は、左右方向Xにおいて支持部18の中央部に配置され、支持部18から対向部12の裏面に向かって突出するように形成されている。また、突出部19の中央部には、上部が下方に窪むように凹部20が形成されている。
【0024】
図5に示すように、対向部12の裏面には、保持部材5の突出部19に対応して窪んだ4つの受け部21a,21b,21cおよび21dが形成されている。突出部19が受け部21a~21dに係合することにより対向部12の姿勢が支持部18に対して支持される。また、受け部21a~21dは、上下方向Yに配列されており、突出部19を異なる受け部21a~21dに係合させることにより対向部12の姿勢が段階的に変えられる。また、受け部21a~21dのうち最も上側に位置する受け部21aには、突出部19の凹部20に係止するように突出する凸部22が形成されている。
【0025】
次に、この実施の形態の動作について説明する。
まず、
図1に示すように、ネイザルアダプタ1が、固定バンド部3により生体の顔Fに固定される。このとき、ネイザルアダプタ1は、鼻呼気誘導部6が鼻孔N内に挿入されると共に口呼気誘導部7が口Mに対向するように固定される。
【0026】
ここで、保持部材5は、取付部8の一部を覆うように配置されている。これにより、保持部材5は、取付部8を支持すると共に、取付部8を上下方向Yに挟むように配置された鼻呼気誘導部6と口呼気誘導部7も支持するため、可撓性材料から形成された鼻呼気誘導部6、口呼気誘導部7および取付部8の姿勢を維持することができる。このため、鼻呼気誘導部6、口呼気誘導部7および取付部8を可撓性材料で一体に形成することができ、構成部品を低減してネイザルアダプタ1を簡単な構成で形成することができる。また、鼻呼気誘導部6および口呼気誘導部7が、取付部8から外れて落下することを抑制することができる。さらに、口呼気誘導部7を可撓性材料から形成することにより、口呼気誘導部7が生体に接触した際に皮膚が損傷することを抑制することができる。
【0027】
また、保持部材5は、鼻呼気誘導部6、口呼気誘導部7および取付部8より高い剛性を有するため、鼻呼気誘導部6、口呼気誘導部7および取付部8を強固に支持することができる。
また、保持部材5は、取付部8を上下方向Yに張るように取付部8の上部および下部を固定し、さらに取付部8を左右方向Xに張るように取付部8の右側部および左側部を固定するため、鼻呼気誘導部6、口呼気誘導部7および取付部8をより強固に支持することができる。
【0028】
このようにして、鼻孔N内に挿入された鼻呼気誘導部6の姿勢が維持されると共に口Mに対向して配置された口呼気誘導部7の姿勢が維持される。続いて、
図3に示すように、鼻孔Nから吐き出された呼気Bが鼻呼気誘導部6の鼻側誘導路6aに導かれて保持部材5の連通路5aに流入すると共に、口Mから吐き出された呼気Bが口側誘導路7aに導かれて保持部材5の連通路5aに流入する。そして、連通路5aに流入した呼気に含まれる二酸化炭素の濃度がセンサSにより測定される。
このとき、鼻呼気誘導部6および口呼気誘導部7の姿勢が維持されているため、鼻孔Nおよび口Mから吐き出された呼気Bを安定して連通路5aに導くことができ、呼気Bに含まれる二酸化炭素の濃度を高精度に測定することができる。
【0029】
ここで、被検者が口呼気誘導部7の対向部12を口Mに近づけたい場合には、
図6に示すように、口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線の周りに回動するように対向部12の姿勢を変化させる。このとき、姿勢変更部14が、口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線の周りに接続部分13と対向部12との間の距離を離すように、すなわち姿勢変更部14が大きく開くように対向部12の姿勢を変化させる。具体的には、姿勢変更部14は、接続部分13に対して姿勢変更部14を前後方向Zに挟んで位置する対向部12の前部側の距離変更部分12aを接続部分13から離すことで対向部12の姿勢を変化させる。
【0030】
これにより、口呼気誘導部7を取付部8に一体に接続した状態で、対向部12が口Mに近づくように対向部12の姿勢を容易に変化させることができる。すなわち、接続部分13を大きな力で折り曲げることなく、姿勢変更部14を開くだけで対向部12の姿勢を変化させることができる。
このように、簡単な構成で、取付部8に一体に接続された対向部12の姿勢を容易に変化させることができる。また、姿勢変更部14は、接続部分13と対向部12との間をL字状に切り欠くように形成されているため、その切欠き部分を前後方向Zだけでなく上下方向Yにも大きく開くことができ、対向部12の姿勢を大きく変化させることができる。
【0031】
このようにして、口Mと対向部12との間の距離を変化させることにより、対向部12が口Mおよびその周辺に接触して被検者が不快を感じることを抑制することができる。また、口Mの形状に応じて対向部12の姿勢を変化させることにより、口Mから吐き出される呼気Bが対向部12の外側に流出することを抑制することができる。例えば、上唇が下唇より突出している被検者の場合には、対向部12の姿勢を変えないままでは対向部12の下部が下唇から離れてしまうため、口Mから吐き出された呼気Bが対向部12の下側から流出するおそれがある。このため、対向部12の下部が下唇に近づくように姿勢を傾斜させることにより、口Mから吐き出された呼気Bを対向部12内に確実に流入させることができる。
【0032】
さらに、
図4に示すように、保持部材5の支持部18には、突出部19が設けられている。また、対向部12の裏面には、
図5に示すように、4つの受け部21a~21dが形成されている。対向部12の姿勢を変化させていない場合には、突出部19は、受け部21dに係合しているが、
図6に示すように、対向部12の姿勢を傾斜させると異なる受け部21bに係合する。これにより、対向部12の姿勢が支持部18に支持されるため、様々な口Mの形状に応じて対向部12の姿勢を段階的に変化させることができる。
【0033】
ここで、対向部12の姿勢をさらに大きく傾斜させると、保持部材5の突出部19が受け部21aより上側に移動して係合が外れるおそれがある。そこで、
図7に示すように、受け部21a~21dのうち最も上側に位置する受け部21aには、凸部22が形成されており、この凸部22が突出部19の凹部20に係止することにより、突出部19が受け部21aより上側に移動することを抑制することができる。これにより、対向部12の姿勢が無制限に大きく傾斜することを抑制し、対向部12が支持部18から外れることを抑制することができる。
【0034】
続いて、突出部19が受け部21dに係合するように対向部12の姿勢を戻すと、
図3に示すように、対向部12の上縁部が保持部材5の支持部18に当接する。これにより、対向部12の姿勢が口Mから離れる方向に大きく変化することを抑制することができる。
このようにして、対向部12を所望の姿勢で維持しつつ、鼻孔Nおよび口Mから吐き出された呼気に含まれる二酸化炭素の濃度を順次測定することができる。
【0035】
本実施の形態によれば、姿勢変更部14が、接続部分13と対向部12との間の距離を変更するように接続部分13近傍を切り欠いて形成されるため、簡単な構成で対向部12の姿勢を変化させることができる。
【0036】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、姿勢変更部14は、口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線の周りに接続部分13と対向部12との間の距離を変更するように接続部分13近傍を切り欠いて形成されたが、接続部分13と対向部12との間の距離を変更して対向部12の姿勢を変化させることができればよく、切り欠いて形成されたものに限られるものではない。
【0037】
例えば、
図8に示すように、実施の形態1の姿勢変更部14に換えて姿勢変更部23を配置することができる。この姿勢変更部23は、口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線の周りに接続部分13と対向部12との間を伸縮させる蛇腹形状を有する。
【0038】
このような構成により、口呼気誘導部7の対向部12を口Mに近づけたい場合には、対向部12の姿勢を口M側へ傾斜するように変化させる。このとき、姿勢変更部23が、口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線の周りに接続部分13と対向部12との間の距離を離すように、すなわち姿勢変更部23が伸長するように対向部12の姿勢を変化させる。具体的には、姿勢変更部23は、接続部分13に対して姿勢変更部23を上下方向Yに挟んで位置する対向部12の前部側の距離変更部分12aを接続部分13から離すように伸長させることで対向部12の姿勢を変化させる。これにより、口呼気誘導部7を取付部8に一体に接続した状態で、対向部12が口Mに近づくように対向部12の姿勢を容易に変化させることができる。
【0039】
本実施の形態によれば、姿勢変更部23が、口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線の周りに接続部分13と対向部12との間を伸縮させる蛇腹構造を有するため、簡単な構成で対向部12の姿勢を変化させることができる。
なお、上記の実施の形態1において、本実施の形態の姿勢変更部23を新たに追加することもできる。すなわち、ネイザルアダプタ1は、本実施の形態の姿勢変更部23と実施の形態1の姿勢変更部14を共に形成することができる。さらに、ネイザルアダプタ1は、本実施の形態の姿勢変更部23と、実施の形態1の突出部19および受け部21a~21dとを共に形成することもできる。
【0040】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2では、支持部18は、保持部材5に配置されたが、対向部12を支持することができればよく、保持部材5に限られるものではない。
【0041】
例えば、
図9に示すように、実施の形態1の支持部18に換えて支持部31を配置することができる。なお、
図9では、保持部材5を省略している。
支持部31は、取付部8に一体に接続された板形状を有し、取付部8から口呼気誘導部7の口側誘導路7a内に延びて対向部12の裏面に対向するように配置されている。すなわち、支持部31は、取付部8から対向部12の裏面に向かって下方に傾斜して延びるように形成されている。また、支持部31の先端部には、実施の形態1と同様に、突出部19が配置されている。
【0042】
このような構成により、口呼気誘導部7の対向部12を口Mに近づけたい場合には、対向部12の姿勢を口呼気誘導部7の一対の側部を結ぶ直線の周りに回動するように変化させる。これにより、突出部19が、対向部12の裏面に形成された受け部21a~21dに係合して、対向部12の姿勢を段階的に変化させることができる。
【0043】
本実施の形態によれば、支持部31が、取付部8から口呼気誘導部7の口側誘導路7a内に延びて対向部12の裏面に対向するように配置されるため、対向部12の姿勢を支持することができる。
【0044】
実施の形態4
上記の実施の形態1~3では、取付部8は、センサSを保持する保持部材5が取り付けられたが、鼻呼気誘導部6および口呼気誘導部7で導かれた呼気を測定するための測定用部材を取り付けることができればよく、保持部材5に限られるものではない。
【0045】
例えば、
図10に示すように、実施の形態1の取付部8に換えて取付部41を配置すると共に保持部材5に換えて案内部42を配置し、さらに一対の鼻カニューラ2に換えて一対の測定用部材43を配置することができる。
取付部41は、左右方向Xに延びるように配置され、その中央部を覆うように案内部42が取り付け可能に形成されている。また、取付部41は、左右の側部に測定用部材43を取り付け可能に形成されている。取付部41の内部には、測定用部材43に接続された取付側誘導路41aが形成されている。
【0046】
案内部42は、鼻呼気誘導部6の鼻側誘導路6aおよび口呼気誘導部7の口側誘導路7aで導かれた呼気Bを測定用部材43側に案内するもので、鼻側誘導路6aおよび口側誘導路7aを取付側誘導路41aに連通する連通路42aが形成されている。また、案内部42は、実施の形態1の保持部材5と同様に、取付部41の中央部を覆うように取付部41に取り付けられている。
測定用部材43は、取付側誘導路41aから流入する呼気Bを図示しない外部装置に導くものでチューブ形状を有する。測定用部材43は、一端部が取付部41の左右の側部に取り付けられ、他端部が外部装置に接続されている。外部装置は、例えば、呼気Bに含まれる二酸化炭素の濃度を測定するものを用いることができる。
【0047】
このような構成により、鼻側誘導路6aおよび口側誘導路7aで導かれた呼気Bが、連通路42a、取付側誘導路41aおよび測定用部材43の内部を流通して外部装置に到達し、呼気Bに含まれる二酸化炭素の濃度が外部装置により順次測定される。
【0048】
本実施の形態によれば、呼気Bを外部装置に導く測定用部材43が取付部41に取り付けられるため、呼気Bに含まれる二酸化炭素の濃度を外部装置で順次測定することができる。
【0049】
なお、上記の実施の形態1~4では、ネイザルアダプタ1は、鼻呼気誘導部6、取付部、口呼気誘導部7および測定用部材から構成されたが、取付部に口呼気誘導部7が一体に接続されていればよく、これに限られるものではない。例えば、ネイザルアダプタ1は、取付部と口呼気誘導部7から構成することができる。
【0050】
また、上記の実施の形態1~4では、支持部に突出部19が設けられると共に対向部12の裏面に突出部19に対応して窪んだ受け部21a~21dが設けられたが、突出部が受け部に係合することにより対向部12の姿勢を支持部に支持させることができればよく、これに限られるものではない。例えば、対向部12の裏面に支持部に向かって突出する4つの突出部を設けると共に支持部に突出部に対応して窪んだ受け部を設けることもできる。
【0051】
また、上記の実施の形態1~4では、対向部12の裏面に4つの受け部21a~21dが設けられたが、突出部19が受け部に係合することにより対向部12の姿勢を支持部に支持させることができればよく、4つに限られるものではない。例えば、対向部12の裏面に1つの受け部を設けることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 ネイザルアダプタ、2 一対の鼻カニューラ、3 固定バンド部、4 アダプタ本体、5 保持部材、5a,42a 連通路、6 鼻呼気誘導部、6a 鼻側誘導路、7 口呼気誘導部、7a 口側誘導路、8,41 取付部、9a,9b ガス供給部、10a~10d 取付孔、11a 右固定部、11b 左固定部、11c 上固定部、11d 下固定部、12 対向部、12a 距離変更部分、13 接続部分、14,23 姿勢変更部、15 背板部、16 柱部、16a 窓部、17a,17b 張出部、18,31 支持部、19 突出部、20 凹部、21a~21d 受け部、22 凸部、41a 取付側誘導路、42 案内部、43 測定用部材、F 顔、N 鼻孔、M 口、S センサ、B 呼気、X 左右方向、Y 上下方向、Z 前後方向。