(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ハイブリッド式リーン車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/02 20060101AFI20221130BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20221130BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20221130BHJP
B60W 20/40 20160101ALI20221130BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20221130BHJP
【FI】
B60W10/02 900
B60K6/48 ZHV
B60L50/16
B60W20/40
B60W30/182
(21)【出願番号】P 2018236165
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 大祐
(72)【発明者】
【氏名】河合 大輔
(72)【発明者】
【氏名】廣上 達也
(72)【発明者】
【氏名】寺井 昭平
(72)【発明者】
【氏名】大林 恒介
(72)【発明者】
【氏名】中山 恭太郎
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-208944(JP,A)
【文献】特開2007-001438(JP,A)
【文献】特開2007-085490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/02
B60K 6/48
B60L 50/16
B60W 20/40
B60W 30/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関であるエンジンと走行駆動源である電動モータとを備えたハイブリッド式リーン車両の制御装置において、
前記エンジンを停止して且つ前記電動モータを駆動する第1走行モードと、前記エンジンを駆動する第2走行モードとを有する複数の走行モードから1つの走行モードを要求する走行モード要求部と、
前記リーン車両が所定の定常旋回状態であると判定されたとの第1条件、又は、前記リーン車両が所定時間内は前記定常旋回状態が継続すると予測されるとの第2条件を含む定常旋回条件が成立するか否かを判定し、その判定結果に応じて、前記走行モード要求部で要求された走行モードを確定する走行モード確定部と、を備え、
前記第1走行モードでの走行中に前記走行モード要求部によって前記第2走行モードが要求されたとき、前記走行モード確定部は、前記定常旋回条件が成立と判定すると、前記第2走行モードを確定し、
前記第1走行モードでの走行中に前記走行モード要求部によって前記第2走行モードが要求されたとき、前記走行モード確定部は、前記定常旋回条件が非成立と判定すると、前記第2走行モードの確定を禁止する、ハイブリッド式リーン車両の制御装置。
【請求項2】
前記定常旋回状態は、前記リーン車両の車体の前後軸回りの角速度の絶対値が所定値未満である状態を含み、
前記走行モード確定部は、前記角速度の絶対値が前記所定値未満であると判定されると、前記第1条件が成立したと判定する、請求項1に記載のハイブリッド式リーン車両の制御装置。
【請求項3】
前記定常旋回状態は、前記リーン車両の操舵角速度の絶対値が所定値未満である状態を含み、
前記走行モード確定部は、前記操舵角速度の絶対値が前記所定値未満であると判定されると、前記第1条件が成立したと判定する、請求項1又は2に記載のハイブリッド式リーン車両の制御装置。
【請求項4】
前記走行モード確定部は、方向指示器の操作情報、車両位置情報及び前方カメラ情報の少なくとも1つに基づいて、前記リーン車両が前記所定時間内は前記定常旋回状態であると予測されると、前記第2条件が成立したと判定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハイブリッド式リーン車両の制御装置。
【請求項5】
前記ハイブリッド式リーン車両は、前記エンジンを走行駆動源とし、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路にクラッチを備えたパラレルハイブリッド式リーン車両であり、
前記第2走行モードは、前記エンジンを駆動して且つ前記クラッチを切断状態とし、
前記複数の走行モードは、前記エンジンを駆動して且つ前記クラッチを係合状態とする第3走行モードを更に有し、
前記走行モード確定部は、所定のショック許容条件が成立するか否かを判定し、
前記第2走行モードでの走行中に前記走行モード要求部によって前記第3走行モードが要求されたとき、前記走行モード確定部は、前記ショック許容条件が成立と判定すると、前記第3走行モードを確定し、
前記第2走行モードでの走行中に前記走行モード要求部によって前記第3走行モードが要求されたとき、前記走行モード確定部は、前記ショック許容条件が非成立と判定すると、前記第3走行モードの確定を禁止する
し、
前記ショック許容条件は、
車体の直立状態からのロール角又はロール角速度の絶対値が所定値未満であるとの条件、
車体の直立状態からのピッチ角又はピッチ角速度の絶対値が所定値未満であるとの条件、
ピッチ角が後傾側に所定値未満であり、かつ、トータル目標トルクが正値であるとの条件、
ピッチ角が前傾側に所定値未満であり、かつ、トータル目標トルクが負値であるとの条件、
車速が所定値以上であるとの条件、
スリップ率が所定値未満であるとの条件、
エンジン回転数が所定値以上であるとの条件、及び、
エンジンが始動してから所定時間以上が経過し且つ電動モータの回転数が所定値未満であるとの条件、
からなる群から選ばれる少なくとも1つの条件を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のハイブリッド式リーン車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関であるエンジンと走行駆動源である電動モータとを備えたハイブリッド車両であって、車体を側方に傾けて旋回走行するリーン車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン及び電動モータを備えたハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。ハイブリッド車両は、エンジンが停止した状態で電動モータを駆動して走行する走行モードや、エンジン及び電動モータを駆動する走行モードなどを、バッテリ残量等に応じて相互に切り替えて走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド方式を二輪車等のリーン車両に適用する場合には、リーン車両に特有の事情が存在する。リーン車両を運転するライダーは、コーナリング初期に車体を側方に傾斜させるように操作し(バンク操作)、コーナリング終期に車体を直立状態に戻すように操作し(バンク戻し操作)、車体のバンク角を変化させながら旋回走行する。その旋回走行中において走行モード変更が発生し、エンジンが停止した状態で電動モータを駆動する走行モードから自動的にエンジンが始動する状況が発生する可能性がある。エンジンが停止状態から運転状態に変わると、エンジンの回転によるジャイロ効果で車体の姿勢変化を妨げる作用が生じる。そのため、エンジンの始動前に比べ、エンジンの始動後にはバンク操作又はバンク戻し操作に対する抵抗となる慣性モーメントが生じ、エンジン始動の前後でライダーが車体を傾動させるのに必要な力が変わってフィーリングが損なわれる。
【0005】
そこで本発明は、ライダーが旋回走行時に車体をバンク操作又はバンク戻し操作する際に慣性モーメントが変化することを防ぎ、ハイブリッド式リーン車両の旋回走行のフィーリングを良好に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るハイブリッド式リーン車両の制御装置は、内燃機関であるエンジンと走行駆動源である電動モータとを備えたハイブリッド式リーン車両の制御装置において、前記エンジンを停止して且つ前記電動モータを駆動する第1走行モードと、前記エンジンを駆動する第2走行モードとを有する複数の走行モードから1つの走行モードを要求する走行モード要求部と、前記リーン車両が所定の定常旋回状態であると判定されたとの第1条件、又は、前記リーン車両が所定時間内は前記定常旋回状態が継続すると予測されるとの第2条件を含む定常旋回条件が成立するか否かを判定し、その判定結果に応じて、前記走行モード要求部で要求された走行モードを確定する走行モード確定部と、を備え、前記第1走行モードでの走行中に前記走行モード要求部によって前記第2走行モードが要求されたとき、前記走行モード確定部は、前記定常旋回条件が成立と判定すると、前記第2走行モードを確定し、前記第1走行モードでの走行中に前記走行モード要求部によって前記第2走行モードが要求されたとき、前記走行モード確定部は、前記定常旋回条件が非成立と判定すると、前記第2走行モードの確定を禁止する。
【0007】
前記構成によれば、エンジン停止状態での走行中にリーン車両が定常旋回状態であると判定されない場合又はリーン車両が所定時間内に非定常旋回状態になると予測される場合、エンジンを始動させる走行モードが要求されても当該走行モードへの移行が禁止される。そのため、エンジンの回転によるジャイロ効果の発生によって、ライダーが旋回走行時に車体をバンク操作又はバンク戻し操作する際の慣性モーメントが変化することが防がれ、ハイブリッド式リーン車両の旋回走行のフィーリングを良好に保つことができる。
【0008】
なお、「定常旋回状態」とは、車体をバンクさせて旋回走行しているときに車体に作用する物理量が定常状態にあることを意味し、「定常旋回状態」とは、車体をバンクさせて旋回走行しているときに車体に作用する物理量が定常状態にあることを意味する。なお、第1走行モードは、例えばEVモードであってもよい。第2走行モードは、例えば、EVモードからHEVモード又はEGVモードに移行する途中に介在する過渡モードであってもよいし、過渡モードが存在しない場合にはHEVモード又はEGVモードであってもよい。
【0009】
前記定常旋回状態は、前記リーン車両の車体の前後軸回りの角速度の絶対値が所定値未満である状態を含んでもよく、前記走行モード確定部は、前記角速度の絶対値が前記所定値未満であると判定されると、前記第1条件が成立したと判定する構成としてもよい。
【0010】
前記構成によれば、前後軸回りの角速度の絶対値が所定値未満であると、ライダーが車体のバンク方向の姿勢を概ね一定にしていると判定できる一方、前後軸回りの角速度の絶対値が所定値以上であると、ライダーがリーン車両の車体をバンク操作又はバンク戻し操作している最中である状態を好適に判定することができる。
【0011】
前記定常旋回状態は、前記リーン車両の操舵角速度の絶対値が所定値未満である状態を含んでもよく、前記走行モード確定部は、前記操舵角速度の絶対値が前記所定値未満であると判定されると、前記第1条件が成立したと判定する構成としてもよい。
【0012】
前記構成によれば、操舵角速度の絶対値が所定値未満であると、ライダーが車体のバンク方向の姿勢を概ね一定にしていると判定できる一方、操舵角速度の絶対値が所定値以上であると、ライダーがリーン車両の車体をバンク操作又はバンク戻し操作している最中である状態を好適に判定することができる。
【0013】
前記走行モード確定部は、方向指示器の操作情報、車両位置情報及び前方カメラ情報の少なくとも1つに基づいて、前記リーン車両が前記所定時間内は前記定常旋回状態であると予測されると、前記第2条件が成立したと判定する構成としてもよい。
【0014】
前記構成によれば、ライダーがリーン車両の車体をバンク操作又はバンク戻し操作しないと予測される状態を好適に判定することができる。
【0015】
前記ハイブリッド式リーン車両は、前記エンジンを走行駆動源とし、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路にクラッチを備えたパラレルハイブリッド式リーン車両であってもよく、前記第2走行モードは、前記エンジンを駆動して且つ前記クラッチを切断状態としてもよく、前記複数の走行モードは、前記エンジンを駆動して且つ前記クラッチを係合状態とする第3走行モードを更に有してもよく、前記走行モード確定部は、所定のショック許容条件が成立するか否かを判定してもよく、前記第2走行モードでの走行中に前記走行モード要求部によって前記第3走行モードが要求されたとき、前記走行モード確定部は、前記ショック許容条件が成立と判定されると、前記第3走行モードを確定してもよく、前記第2走行モードでの走行中に前記走行モード要求部によって前記第3走行モードが要求されたとき、前記走行モード確定部は、前記ショック許容条件が非成立と判定されると、前記第3走行モードの確定を禁止する構成としてもよい。
【0016】
前記構成によれば、エンジン駆動状態かつクラッチ切断状態での走行中にショック許容条件が成立しないと、クラッチを係合させる走行モードが要求されても当該走行モードへの移行が禁止される。そのため、エンジンが駆動した状態でクラッチが係合されることがなく、急なトルク変動が生じることがない。よって、ショックが発生して欲しくない走行状態において自動的にトルク変動が発生することを防止でき、ハイブリッド式リーン車両の走行フィーリングを良好に保つことができる。なお、第3走行モードは、例えば、HEVモード又はEGVモードであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、ライダーが旋回走行時に車体をバンク操作又はバンク戻し操作する際に慣性モーメントが変化することが防がれ、ハイブリッド式リーン車両の旋回走行のフィーリングを良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るハイブリッド二輪車のブロック図である。
【
図2】
図1に示すハイブリッド二輪車の各走行モードの状態遷移図である。
【
図3】
図1に示すハイブリッド二輪車の制御装置のブロック図である。
【
図4】
図3に示す制御装置のメインルーチンを説明するフローチャートである。
【
図5】
図4に示す走行モード確定判定のサブルーチンを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係るハイブリッド二輪車1のブロック図である。二輪車1は、車体を左右方向に傾斜(リーン)させて旋回走行するリーン車両の好適例である。なお、リーン車両は、三輪車であってもよい。
図1に示すように、ハイブリッド二輪車1は、エンジン2、電動モータ3、変速機4、クラッチ5、クラッチアクチュエータ6、出力伝達部材7、駆動輪8、高圧バッテリ9、充電口10、ISG11、コンバータ12、低圧バッテリ13、及び、制御装置20を備える。
【0021】
エンジン2は、内燃機関である。エンジン2は、駆動輪8を駆動するための走行駆動源である。電動モータ3は、エンジン2と共に又はエンジン2に代わって、駆動輪8を駆動するための走行駆動源である。変速機4は、エンジン2から出力された回転動力を変速する。変速機4は、例えば、入力軸4a、出力軸4b及び変速ギヤを有する手動変速機である。
【0022】
クラッチ5は、エンジン2と変速機4との間の動力伝達を係合及び切断する。クラッチアクチュエータ6は、クラッチ5を係合状態と切断状態との間で切り替え動作させるようにクラッチ5を駆動する。出力伝達部材7は、変速機4の出力軸4bから出力される回転動力を駆動輪8に伝達する部材である。出力伝達部材7は、例えば、ドライブチェーン、ドライブベルト、ドライブシャフト等である。駆動輪8は、例えば、ハイブリッド二輪車1の後輪である。
【0023】
高圧バッテリ9は、電動モータ3に供給される高圧電力(例えば、48V)を蓄電する。高圧バッテリ9には、充電口10が接続されている。ISG11は、インテグレーテッド・スタータ・ジェネレータである。ISG11は、エンジン2の始動時にエンジン2を駆動でき、かつ、エンジン2によって駆動されて発電できる。コンバータ12は、高圧バッテリ9及びISG11からの直流電力を降圧して低圧バッテリ13に供給する。低圧バッテリ13は、ハイブリッド二輪車1に搭載された制御装置20や他の低圧負荷14に供給される低圧電力(例えば、12V)を蓄電する。
【0024】
制御装置20は、各種センサ類の情報に基づいて、エンジン2、電動モータ3、クラッチアクチェータ6及びISG11を制御する。制御装置20は、1つのコントローラであってもよいし、複数のコントローラに分散されたものであってもよい。制御装置20は、ハードウェア面においては、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。制御装置20の機能面の詳細は、後述する。
【0025】
図2は、
図1に示すハイブリッド二輪車1の各走行モードの状態遷移図である。
図2に示すように、ハイブリッド二輪車1は、エンジン2、電動モータ3及びクラッチ5の少なくとも1つの状態を互いに異ならせた複数の走行モードを有する。具体的には、当該走行モードは、EVモード、HEVモード及び過渡モードを含む。
【0026】
EVモードは、エンジン2を停止し、電動モータ3が発生する動力で駆動輪8を駆動するモードである。EVモードでは、電動モータ3の駆動時にエンジン2が抵抗にならないようにクラッチ5が切断状態になる。EVモードでは、加速走行時に電動モータ3が駆動状態になる一方で、減速走行時に電動モータ3が回生状態になる。
【0027】
HEVモードは、電動モータ3及びエンジン2が発生する動力で駆動輪8を駆動するモードである。HEVモードでは、エンジン2の回転動力が変速機4を介して駆動輪8に伝達されるようにクラッチ5が係合状態になる。HEVモードでは、加速走行時に電動モータ3が駆動状態になる一方で、減速走行時に電動モータ3が回生状態になる。
【0028】
過渡モードは、EVモードからHEVモードに移行する途中に介在するモードである。過渡モードは、クラッチ5を切断状態のままにし、エンジン2を始動する。即ち、EVモードでの走行中にHEVモードに移行する際には、まずクラッチ5を切断状態に維持したままエンジン2を始動する過渡モードを経てから、クラッチ5を係合させてHEVモードへの移行を完了させる。
【0029】
なお、
図2には示されていないが、ハイブリッド二輪車1の走行モードは、電動モータ3を駆動させずにエンジン2を駆動し、エンジン2のみの回転動力で駆動輪8を駆動するEGVモード(エンジン車モード)を含んでもよい。
【0030】
図3は、
図1に示すハイブリッド二輪車1の制御装置20のブロック図である。
図3に示すように、制御装置20は、発電要求トルク算出部21、走行要求トルク算出部22、走行モード要求部23、走行モード確定部24、クラッチ制御部25、エンジン発停指令部26、トルク配分部27、モータ制御部28、及び、エンジン制御部29を有する。制御装置20の各部21~29は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。
【0031】
発電要求トルク算出部21は、高圧バッテリ9の充電状態を意味するSOC(State of Charge)を監視し、SOC(%)に応じて電動モータ3に発電させるための発電要求トルクを算出する。即ち、発電要求トルク算出部21は、高圧バッテリ9の残量が減少すると、高圧バッテリ9を充電するのに必要な電動モータ3の発電トルクを算出する。SOCは、バッテリ残量センサの出力から算出可能である。
【0032】
走行要求トルク算出部22は、アクセル開度及びモータ回転数に応じて、駆動輪8の駆動に必要なトルクである走行要求トルクを算出する。アクセル開度は、ライダーのアクセル操作量を意味し、アクセル開度センサの出力から取得可能である。モータ回転数は、例えば、電動モータ3の回転軸に設けられた回転数センサの検出値によって算出されるが、電動モータ3の制御信号から算出されてもよい。
【0033】
走行モード要求部23は、前記発電要求トルクと、前記走行要求トルクと、モータ回転数とに応じて、複数の走行モード(例えば、EVモード、過渡モード、HEVモード等)から適切な1つの走行モードを選択し、それを要求走行モードとする。例えば、走行モード要求部23は、前記発電要求トルクがゼロである場合には、EVモードを要求走行モードとして選んでもよい。また例えば、走行モード要求部23は、発電要求トルクがゼロよりも大きく且つ前記走行要求トルクがエンジン回転数に照らして高い場合には、HEVモードを要求走行モードとして選んでもよい。
【0034】
走行モード確定部24は、各種センサ情報に基づいて要求走行モードの確定可否を判定する。例えば、走行モード確定部24には、エンジン始動完了フラグ、ロール角、ピッチ角、モータ回転数、車速、スリップ率、操舵角、方向指示器情報、車両位置情報、前方カメラ情報等が入力される。エンジン始動完了フラグは、エンジン回転数がアイドル回転数以上である状態が所定時間以上継続すると、走行モード確定部24に入力される。ロール角及びピッチ角は、例えば、車載されたジャイロセンサの検出値によって算出されるが、ロール角センサ及びピッチ角センサの検出値から算出されてもよい。ピッチ角は、フロントサスペンション及びリヤサスペンションのストローク量から算出されてもよい。モータ回転数は、例えば、電動モータ3の回転軸に設けられた回転数センサの検出値によって算出されるが、電動モータ3の制御信号から算出されてもよい。エンジン回転数は、エンジン2のクランク軸のクランク角を検出するクランク角センサの出力から算出可能である。
【0035】
車速は、例えば、従動輪(例えば、前輪)の回転数センサの検出値から算出されるが、GPS情報等から算出されてもよい。スリップ率は、例えば、(駆動輪回転数-従動輪回転数)/従動輪回転数の式で算出されるが、駆動輪回転数の増加率などであってもよい。操舵角は、例えば、操舵角センサの検出値から算出される。方向指示器情報は、ライダーが方向指示器を操作した信号に基づいて左旋回又は右旋回の指示器動作情報として取得される。車両位置情報は、GPSセンサの検出値及び地図情報に基づき、ハイブリッド二輪車1が地図上の何処を走行しているかを示す情報である。前方カメラ情報は、ハイブリッド二輪車1の前方を撮影する車載カメラから得られる画像情報である。
【0036】
走行モード確定部24は、EVモード走行中において走行モード要求部23によって過渡モードへの移行が要求された際には、走行状態に応じて過渡モードに移行することの確定の可否を決定する。即ち、走行モード確定部24は、EVモードから過渡モードへの移行が要求されると、所定の定常旋回条件が成立すると判定された場合に過渡モードへの移行を確定(実行決定)する。
【0037】
前記定常旋回条件は、ハイブリッド二輪車1が所定の定常旋回状態であると判定されたとの第1条件を含む。例えば、前記第1条件は、ハンドルの操舵角速度の絶対値が所定値未満であるとの条件を含む。
【0038】
前記定常旋回条件は、ハイブリッド二輪車1が所定時間内は定常旋回状態が継続すると予測されるとの第2条件を含む。例えば、前記第2条件は、方向指示器の操作情報、車両位置情報及び前方カメラ情報の少なくとも1つに基づいて、ハイブリッド二輪車1が所定時間内は定常旋回状態が継続すると予測されるとの条件を含む。
【0039】
走行モード確定部24は、過渡モード走行中において走行モード要求部23によってHEVモードへの移行が要求された際には、走行状態に応じてHEVモードに移行することの確定の可否を決定する。即ち、走行モード確定部24は、過渡モードからHEVモードへの移行が要求されると、所定のショック許容条件が成立すると判定された場合にHEVモードへの移行を確定(実行決定)する。
【0040】
クラッチ制御部25は、走行モード確定部24からのクラッチ断続指令(クラッチ切断指令又はクラッチ係合指令)及びモータ回転数に応じて、クラッチアクチェータ6にクラッチ操作信号(切断信号又は係合信号)を送信してクラッチアクチェータ6を駆動し、クラッチ5を切断又は係合させる。また、クラッチ制御部25は、円滑なクラッチ係合のために、エンジン目標回転数を算出する。エンジン発停指令部26は、走行モード確定部24からのエンジン始動指令に応じて、ISG11にISG操作信号を送信してISG11を駆動し、エンジン2を始動させる。エンジン発停指令部26は、走行モード確定部24からのエンジン停止指令に応じて、エンジン制御部29にエンジン停止フラグを送信する。
【0041】
トルク配分部27は、発電要求トルク算出部21で算出された発電要求トルク、走行要求トルク算出部22で算出された走行要求トルク、及び、走行モード確定部24で確定された確定走行モードに応じて、モータ目標トルク及びエンジン目標トルクを決定する。
【0042】
モータ制御部28は、トルク配分部27で決定されたモータ目標トルクに応じて、電動モータ3(のインバータ)にインバータ指令値を送信し、電動モータ3の出力トルクが前記モータ目標トルクになるように電動モータ3を駆動する。
【0043】
エンジン制御部29は、トルク配分部27で決定されたエンジン目標トルク又はクラッチ制御部25で決定されたエンジン目標回転数に応じてエンジン制御信号を送信し、エンジン2の出力トルクが前記エンジン目標トルクになるようにエンジン2を制御する。具体的には、エンジン制御部29は、エンジン2のスロットル装置にスロットル開度指令値を送信し、エンジン2の燃料噴射装置に燃料噴射信号を送信し、エンジン2の点火装置に点火信号を送信することで、エンジン2を制御する。
【0044】
以下、制御装置20による走行モードの移行処理の流れを説明する。
図4は、
図3に示す制御装置20のメインルーチンを説明するフローチャートである。
図4に示すように、発電要求トルク算出部21が発電要求トルクを算出する(ステップS1)。走行要求トルク算出部22が走行要求トルクを算出する(ステップS2)。なお、ステップS1,S2の順序は特に限定されず、同時並行して実施されるとよい。次いで、走行モード要求部23が、発電要求トルク、走行要求トルク及びモータ回転数に応じて要求走行モードを決定する(ステップS3)。
【0045】
走行モード確定部24は、要求走行モードを確定して実行してよいか否かを判定する(ステップS4)。走行モード確定部24の処理の詳細は
図5を用いて後述する。次いで、走行モード確定部24で決定された確定走行モードに応じて、クラッチ制御部25がクラッチアクチェータ6を制御し(ステップS5)、エンジン発停指令部26がISG11を制御し(ステップS6)、トルク配分部27がモータ目標トルク及びエンジン目標トルクを決定し(ステップS7)、エンジン制御部29及びモータ制御部28がエンジン2及び電動モータ3を夫々制御する(ステップS8,S9)。具体的には、走行モードの移行に伴って、エンジン2の発停(ステップS10)及びクラッチ5の断続(ステップS11)が行われ、エンジン2の駆動(ステップS12)及び電動モータ3の駆動(ステップS13)が行われる。なお、ステップS5~S13は、簡便のために直列的に順番に記載されているが、その順序は特に限定されず、状況及び要求に応じて適宜適切な順序で行われる。
【0046】
図5は、
図4に示す走行モード確定判定のサブルーチンを説明するフローチャートである。なお、走行モード確定判定(
図4のステップS4)の処理は走行モード確定部24によって実行される。
図5に示すように、先ず、現在の確定走行モード(前回値)がEVモードであるか否かが判定される(ステップS21)。ステップS21がYESの場合には、走行モード要求部23で選択された要求走行モードがEVモードであるか否かを判定する(ステップS22)。ステップS22がYESの場合には、走行モードの変更が不要であるので、EVモードが継続して確定走行モードとして保存される(ステップS23)。
【0047】
ステップS22がNOの場合には、エンジン2を始動することが要求されるが、エンジン2の始動が許可されるか否かのエンジン発停条件判定を行う(ステップS24,S25)。本実施形態では、エンジン発停条件は、前述した定常旋回条件のことである。エンジン発停条件は、ハイブリッド二輪車1の車体の前後軸回りの角速度(例えば、ロール角速度)の絶対値が所定値未満であるとの条件を含む。エンジン発停条件(定常旋回条件)が成立した状態では、ライダーがハイブリッド二輪車1の車体をバンク操作又はバンク戻し操作している最中ではない定常旋回状態であると判定できる。
【0048】
エンジン発停条件は、ハイブリッド二輪車1の操舵角速度の絶対値が所定値未満であるとの条件も含んでもよい。操舵角速度の絶対値が所定値未満であると判定される場合には、エンジン発停条件(定常旋回条件)が成立すると判定する。これによっても、ライダーがハイブリッド二輪車1の車体をバンク操作又はバンク戻し操作している最中ではない定常旋回状態を判定できる。なお、エンジン発停条件(定常旋回条件)は、旋回半径の変化率(曲率変化率)又は横タイヤ力の変化率が所定値未満であるとの条件を含んでもよい。
【0049】
エンジン発停条件(定常旋回条件)は、方向指示器が左旋回又は右旋回に操作されていないとの条件を含んでもよい。エンジン発停条件(定常旋回条件)は、車両位置情報に基づいてハイブリッド二輪車1が所定時間内に曲線路に進入しないと判断されるとの条件を含んでもよい。エンジン発停条件(定常旋回条件)は、前方カメラ情報に基づいてハイブリッド二輪車1が所定時間内に曲線路に進入しないと判断されるとの条件を含んでもよい。これらによって、ライダーがハイブリッド二輪車1の車体を所定時間内にバンク操作又はバンク戻し操作することはないと予測される状態を判定できる。
【0050】
定常旋回条件が成立してエンジン発停条件が成立したと判定されると(ステップS25:YES)、過渡モードが確定走行モードとなる(ステップS26)。そうすると、エンジン発停指令部26がISG11によりエンジン2を始動させる(ステップS27)。そして、過渡モードが現在の確定走行モードとして保存される(ステップS23)。他方、エンジン発停条件が成立しないと判定されると(ステップS25:NO)、過渡モードの確定が禁止され、EVモードが確定走行モードとして維持される。
【0051】
このように、エンジン停止状態での走行中にハイブリッド二輪車1が定常旋回状態ではないと判定される場合又は所定時間内は定常旋回状態が継続すると予測されない場合、エンジン2を始動させる過渡モードが要求されても過渡モードへの移行が禁止される。そのため、エンジン2の回転によるジャイロ効果の発生によって、ライダーがバンク操作又はバンク戻し操作する際の慣性モーメントが変化することが防がれ、ハイブリッド二輪車1の旋回走行のフィーリングが良好に保たれる。
【0052】
次に、ステップS21でNOと判定される場合、現在の確定走行モード(前回値)が過渡モードであるか否かが判定される(ステップS28)。ステップS28がYESの場合、要求走行モードがEVモードであるか否かが判定される(ステップS29)。ステップS29がYESの場合、即ち、過渡モードからEVモードに移行することが要求される場合、エンジン2を停止することが要求されるが、エンジン2の停止が許可されるか否かのエンジン発停条件判定を行う(ステップS30,S31)。ステップS30,S31は、ステップS24,S25と同じである。即ち、本実施形態では、エンジン2を始動する条件とエンジン2を停止する条件とを同一にしてエンジン発停条件としている。なお、エンジン始動条件とエンジン停止条件とを互いに異ならせてもよい。
【0053】
エンジン発停条件が成立したと判定されると(ステップS31:YES)、EVモードが確定走行モードとなる(ステップS32)。そうすると、エンジン発停指令部26がエンジン停止フラグをエンジン制御部29に送信し、エンジン2を停止させる(ステップS33)。そして、EVモードが現在の確定走行モードとして保存される(ステップS23)。他方、エンジン発停条件が成立しないと判定されると(ステップS31:NO)、EVモードの確定が禁止され、過渡モードが確定走行モードとして維持される。
【0054】
このように、エンジン運転状態での走行中にハイブリッド二輪車1が定常旋回状態ではないと判定される場合又は所定時間内は定常旋回状態が継続すると予測されない場合、エンジン2を停止させるEVモードが要求されてもEVモードへの移行が禁止される。そのため、エンジン2の停止によるジャイロ効果の消滅によって、ライダーが旋回走行時にバンク操作又はバンク戻し操作する際の慣性モーメントが変化することが防がれ、ハイブリッド二輪車1の旋回走行のフィーリングが良好に保たれる。
【0055】
次に、ステップS29でNOと判定される場合、即ち、要求走行モードがHEVモードである場合、クラッチ断続条件が成立するか否かが判定される(ステップS34,S35)。即ち、EVモードから過渡モードに移行してエンジン2が回転した後にHEVモードに移行すべくクラッチ5を係合してよいか否かが判定される。本実施形態では、クラッチ断続条件は、前述したショック許容条件のことである。
【0056】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)が成立したと判定されると(ステップS35:YES)、HEVモードが確定走行モードとなる(ステップS36)。そうすると、クラッチ制御部25がクラッチ操作信号をクラッチアクチェータ6に送信し、クラッチ5を係合させる(ステップS37)。そして、HEVモードが現在の確定走行モードとして保存される(ステップS23)。他方、クラッチ断続条件(ショック許容条件)が成立しないと判定されると(ステップS35:NO)、HEVモードの確定が禁止され、過渡モードが確定走行モードとして維持される。
【0057】
このように、エンジン2が駆動され且つクラッチ5が切断された状態の過渡モードでの走行中には、クラッチ断続条件(ショック許容条件)が成立しないと、クラッチ5を係合させるHEVモードが要求されてもHEVモードへの移行が禁止される。そのため、エンジン2が駆動した状態でクラッチ5が係合されることがなく、急なトルク変動が生じることがない。よって、ショックが発生して欲しくない走行状態において自動的にトルク変動が発生することを防止でき、ハイブリッド二輪車1の走行フィーリングを良好に保つことができる。クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、以下のように種々のものが考えらえる。
【0058】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、車体の直立状態からのロール角の絶対値が所定値未満であるとの条件を含む。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、車体がロール方向に傾いているときにクラッチ5の係合によるトルク変動が生じることが防止され、走行フィーリングが良好に保たれる。また、クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、ロール角速度の絶対値が所定値未満であるとの条件も含んでもよい。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、車体がロール方向に動いているときにクラッチ5の係合によるトルク変動が生じることが防止され、走行フィーリングが良好に保たれる。
【0059】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、車体の直立状態からのピッチ角の絶対値が所定値未満であるとの条件、及び、ピッチ角速度の絶対値が所定値未満であるとの条件の少なくとも1つの条件を含んでもよい。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、加減速によって車体がピッチ方向に傾いているときやピッチ方向に動いているときに、クラッチ5の係合によるトルク変動が生じることが防止され、走行フィーリングが良好に保たれる。
【0060】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、ピッチ角が後傾側に所定値未満であり、かつ、トータル目標トルク(モータ目標トルク+エンジン目標トルク)が正値であるとの条件を含んでもよい。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、加速によるウィリー時にクラッチ5の係合によるトルク変動が生じることが防止され、走行フィーリングが良好に保たれる。
【0061】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、ピッチ角が前傾側に所定値未満であり、かつ、トータル目標トルク(モータ目標トルク+エンジン目標トルク)が負値であるとの条件を含んでもよい。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、減速によるノーズダイブ時にクラッチ5の係合によるトルク変動が生じることが防止され、走行フィーリングが良好に保たれる。
【0062】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、車速が所定値以上であるとの条件を含んでもよい。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、車両の走行慣性が不十分な状況においてクラッチ5の係合によるトルク変動が生じることが防止され、走行フィーリングが良好に保たれる。
【0063】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、スリップ率が所定値未満であるとの条件を含んでもよい。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、スリップ時にクラッチ5の係合によるトルク変動が生じることが防止され、不所望のスリップの進展等を防ぐことができる。
【0064】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、エンジン回転数が所定値以上であるとの条件を含んでもよい。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、クランク重量が軽いためにエンジン2の燃焼が低回転域で不安定になっても、クラッチ5の係合によりエンジン2の動作が変動することが防止され、走行フィーリングが良好に保たれる。
【0065】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)は、エンジン2が始動してから所定時間以上が経過し且つ電動モータ3の回転数が所定値未満であるとの条件を含んでもよい。この条件が成立しないときにクラッチ5の係合を伴うモード移行を禁止することで、エンジン2の暖機運転が完了する前にエンジン2と電動モータ3とが高回転域で同期されることによりエンジン2に負担が生じる事態を回避できる。
【0066】
次に、ステップS28でNOと判定される場合、即ち、HEVモードでの走行中に要求走行モードが過渡モードとなる場合、クラッチ断続条件(ショック許容条件)が成立するか否かが判定される(ステップS39,S40)。即ち、HEVモードから過渡モードに移行すべくクラッチ5を切断してよいか否かが判定される。ステップS39,S40は、ステップS34,S35と同じである。即ち、本実施形態では、クラッチ5を係合する条件とクラッチ5を切断する条件とを同一にしてクラッチ断続条件としている。なお、クラッチ係合条件とクラッチ切断条件とを互いに異ならせてもよい。
【0067】
クラッチ断続条件(ショック許容条件)が成立したと判定されると(ステップS40:YES)、過渡モードが確定走行モードとなる(ステップS41)。そうすると、クラッチ制御部25がクラッチ操作信号をクラッチアクチェータ6に送信し、クラッチ5を切断させる(ステップS42)。そして、過渡モードが現在の確定走行モードとして保存される(ステップS23)。他方、クラッチ断続条件(ショック許容条件)が成立しないと判定されると(ステップS40:NO)、過渡モードの確定が禁止され、HEVモードが確定走行モードとして維持される。
【0068】
このように、エンジン2が駆動され且つクラッチ5が係合された状態のHEVモードでの走行中には、クラッチ断続条件(ショック許容条件)が成立しないと、クラッチ5を切断させる過渡モードが要求されても過渡モードへの移行が禁止される。そのため、エンジン2が駆動した状態でクラッチ5が切断されることがなく、急なトルク変動が生じることがない。よって、ショックが発生して欲しくない走行状態において自動的にトルク変動が発生することを防止でき、ハイブリッド二輪車1の走行フィーリングを良好に保つことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ハイブリッド二輪車(ハイブリッド式リーン車両)
2 エンジン
3 電動モータ
5 クラッチ
8 駆動輪
20 制御装置
23 走行モード要求部
24 走行モード確定部