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特許7185539天ぷら衣材用そば粉及び天ぷら衣材用プレミックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】天ぷら衣材用そば粉及び天ぷら衣材用プレミックス
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20221130BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20221130BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019006570
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020114189
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(73)【特許権者】
【識別番号】598036779
【氏名又は名称】松屋製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 沙矢香
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-022245(JP,A)
【文献】特開2014-014299(JP,A)
【文献】特開2000-069925(JP,A)
【文献】日本家政学会誌,2018年,Vol.69,No.4,pp.217-224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白含量が5~17質量%且つ平均粒径130~300μmの天ぷら衣材用そば粉。
【請求項2】
請求項1に記載の天ぷら衣材用そば粉を含む天ぷら衣材用プレミックス。
【請求項3】
請求項1に記載の天ぷら衣材用そば粉又は請求項2に記載の天ぷら衣材用プレミックスを用いて製造されたことを特徴とする天ぷら。
【請求項4】
請求項1に記載の天ぷら衣材用そば粉又は請求項2に記載の天ぷら衣材用プレミックスを含む衣材を揚げ種に付着させて油ちょうする工程を含む、天ぷらの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天ぷら衣材用そば粉及び天ぷら衣材用プレミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらの衣にそば粉を使用することは一般に知られており、更科そば粉に卵黄等を混ぜた衣を付けた天ぷらは「金ぷら」と呼ばれ江戸時代には珍重されていた(非特許文献1、非特許文献2)。「そば・そば料理の新しい世界」(著者:永山寛康、(株)旭屋出版)では、さらしな黄金衣として更科粉を溶いた衣で揚げる天ぷら、そば会席メニューのひとつとしてそば衣揚げを紹介している(非特許文献3)。
天ぷらの衣にそば粉を使用することについて、変わり衣のひとつとしてそば粉を配合した天ぷらのレシピが料理レシピのインターネットコミュニティサイトなどに数多くあり、そば会席のメニューのひとつ等でそば粉の天ぷらを提供する店もある。
そば粉を衣材として使用することで通常の小麦粉で作られる天ぷらとは異なる風味をもつ天ぷらを賞味することができる。日本食品標準成分表によるとそば粉はビタミン、ミネラル類が小麦粉(薄力粉)に比べて豊富に含まれ、そばに特有のポリフェノールの一種であるルチンが含まれるため健康効果が期待できる。
一般的にそば粉には更科、挽きぐるみ、藪等に分類されている。ロール製粉では、更科そば粉は澱粉質が多く蛋白含量の少ないそばの実の中心部分を主体に取り分けたもの、挽きぐるみそば粉は前述の更科部分を除くかある程度含み外皮(そば殻)を除いた胚乳部や胚芽部分も含んで挽きこんだ全粒粉、藪系そば粉はより外皮に近い蛋白含量の多い部分を挽いたものが主体で色が濃く風味も強いそば粉である。また食品分析の観点からは、そば粉はそばの実のどの部分由来のものであるか、内側から大きく分けて内層粉(一番粉)、中層粉(二番粉)、外層粉(三番粉)、また全粒粉である全層粉に分類されている。必ずしも厳密に対応するものではないが、更科系そば粉は主に内層粉、挽きぐるみそば粉は主に全層粉、藪系そば粉は主に中層粉及び外層粉を含む。
天ぷらの衣は一般に口溶けが良く、サクサク、カリッとした歯切れの良い食感が良いとされており、その食感を長時間保持できるのが望ましい。挽きぐるみ・藪系そば粉を単に使用して天ぷらを作製すると、そば粉の蛋白含量が多いため天ぷら用バッターの粘りが強く、具材への付着量が多くなるため衣が重くなり歯切れの悪い食感で、サクサクとした食感に乏しく、バッターの粘りを弱くするために加水量を増やすと衣が具材に付着しにくくなる傾向があった。そば粉の蛋白質が少ない為、より粘りの出にくい内層粉主体の更科そば粉を使用すると揚げ立てはサクサク、カリッとした食感となるが、その食感が長時間持続せずに失われる傾向があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「たべもの起源事典 日本編」(ちくま学術文庫) 岡田哲 著 p.197~198
【文献】知っておきたい「食」の日本史(角川ソフィア文庫)宮崎正勝 著 p.169
【文献】そば・そば料理の新しい世界(旭屋出版)永山寛康 著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フライ後長時間保存しても、揚げ立てのサクサク感とカリッとした歯切れの良い食感が維持される天ぷらを製造するために使用する、天ぷら衣材用そば粉及び天ぷら衣材用プレミックスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、蛋白含量が5~17質量%で平均粒径130~300μmのそば粉を天ぷら衣材に使用するとフライ後長時間保存しても、揚げ立てのサクサク感とカリッとした歯切れの良い食感が維持される天ぷらを製造することができることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]蛋白含量が5~17質量%且つ平均粒径130~300μmの天ぷら衣材用そば粉。
[2]前記[1]に記載の天ぷら衣材用そば粉を含む天ぷら衣材用プレミックス。
[3]前記[1]に記載の天ぷら衣材用そば粉又は前記[2]に記載の天ぷら衣材用プレミックスを用いて製造されたことを特徴とする天ぷら。
[4]前記[1]に記載の天ぷら衣材用そば粉又は前記[2]に記載の天ぷら衣材用プレミックスを含む衣材を揚げ種に付着させて油ちょうする工程を含む、天ぷらの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の天ぷら衣材用そば粉又は天ぷら衣材用プレミックスを使用して天ぷらを製造することで、フライ後長時間保存しても、揚げ立てのサクサク感とカリッとした歯切れの良い食感が維持される天ぷらを製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<天ぷら衣材用そば粉>
本発明における「天ぷら」は一般には畜肉や魚介類、野菜類等の揚げ種に衣材を付着させた後、熱した油浴中で油ちょう(乾熱加熱)して得られる食品である。本発明における天ぷらには、フリッター(洋風天ぷら)等も含まれる。
【0009】
本発明において「天ぷら衣材」とは一般には天ぷらに使用される衣材であり、例えば穀粉を主体とする粉体組成物に水、卵液等の液体材料を加えて均質化し、バッターとして調製した後に揚げ種に付着させるものが含まれる。
【0010】
本発明の天ぷら衣材用そば粉は、蛋白含量が5~17質量%且つ平均粒径130~300μmである。
【0011】
本発明の天ぷら衣材用そば粉の平均粒径は好ましくは150μm~300μm、さらに好ましくは180μm~300μm、より好ましくは200μm~300μm、最も好ましくは250μm~300μmである。係る範囲内であれば本発明の効果が発揮される。
本発明において平均粒径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)、体積基準分布で測定した粒度分布を基準として求めたものをいう。前記体積基準分布で測定した粒度分布とは粒子体積の全粒子体積に対する割合をいい、前記平均粒径とは、小さな粒子から累積した粒子体積が全粒子体積の50%になった時の粒径、すなわちメジアン径をいう。
【0012】
本発明の天ぷら衣材用そば粉の蛋白含量は好ましくは6~15質量%、さらに好ましくは11~15質量%、最も好ましくは12~13質量%である。係る範囲内であれば本発明の効果が発揮される。
本発明において、蛋白含量は常法により測定することができる。例えば近赤外分光光度計を使用して測定することができる。
【0013】
本発明の天ぷら衣材用そば粉の原料として使用できるそばの品種や産地は特に限定されない。例えばそばの品種としてはキタワセソバ、階上早生、常陸秋ソバ等、産地としては国内、中国、北米、ロシア等が挙げられる。
【0014】
本発明の天ぷら衣材用そば粉を製造する際の製造法については特に限定されず、通常そば粉の使用されている方法、例えばロール製粉機、石臼などを用いることができる。そばの実を製粉した後に得られる粉砕物を上記の平均粒径となるように篩で選別することにより所定の平均粒径のそば粉を得ることができる。
【0015】
<天ぷら衣材用プレミックス>
本発明において、上記天ぷら衣材用そば粉を含む、天ぷら衣材用プレミックスを用いてもよい。
ここで一般にプレミックスは、その使用用途に応じて、主成分たる穀粉以外の穀粉、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料、任意に油脂類などを混合したものをいう。
本発明の天ぷら衣材用プレミックスは、上記天ぷら衣材用そば粉以外に、穀粉類及び澱粉類のような澱粉質原料、乳化剤、卵加工粉末をさらに添加することで、より軽くサクサク感のある歯切れがよく口溶けのよい食感を得ることができる。
穀粉類としては例えば小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、ひえ粉、大豆粉、トウモロコシ粉などが挙げられる。澱粉類としては例えば小麦、タピオカ、馬鈴薯、甘藷、トウモロコシ、米、サゴヤシ等から得られる生澱粉及びこれらを化工処理(たとえば酸化、エーテル化、エステル化、架橋)した加工澱粉等が挙げられる。澱粉質原料として、好ましくは生澱粉及び加工澱粉を使用するのがよい。
本発明の天ぷら用プレミックスが上記天ぷら衣材用そば粉以外に穀粉や澱粉類などの澱粉性原料を含む場合、天ぷら衣材用プレミックスに含まれる澱粉性原料(上記天ぷら衣材用そば粉を含む)全体の質量に対する上記天ぷら衣材用そば粉の割合は好ましくは45~100質量%であり、より好ましくは55~92.5質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。
本発明の天ぷら衣材用プレミックスが澱粉類を含む場合、天ぷら衣材用プレミックスに含まれる澱粉性原料(上記天ぷら衣材用そば粉を含む)全体の質量に対する澱粉類の割合は好ましくは0~55質量%であり、より好ましくは7.5~45質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。
乳化剤は、特に限定なく使用でき、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。乳化剤は天ぷら衣材用プレミックスの全量に対し、好ましくは0~2.0質量%であり、より好ましくは0.1~1.5質量%、さらに好ましくは0.5~1.0質量%の量で含むことができる。
卵加工粉末としては、鶏卵粉、卵白粉、卵黄粉等を使用することができる。卵加工粉末は天ぷら衣材用プレミックスの全量に対し、好ましくは0~2.0質量%であり、より好ましくは0.1~1.5質量%、さらに好ましくは0.5~1.0質量%の量で含むことができる。
本発明の天ぷら衣材用プレミックスは、上記天ぷら衣材用そば粉、穀粉類及び澱粉類のような澱粉質原料、乳化剤、卵加工粉末以外にも、ベーキングパウダー、重曹、ふくらし粉、イスパタ等の膨張剤、乳蛋白質、植物性蛋白質、油脂、増粘多糖類、デキストリン、糖類、食塩、無機塩類、調味料、香辛料、香料、着色料、保存料等のような天ぷらを製造する為に通常使用される副原料を含むことができる。
【0016】
<天ぷら及び天ぷらの製造方法>
【0017】
本発明の天ぷらは、上記天ぷら衣材用そば粉又は天ぷら衣材用プレミックスを含む衣材を揚げ種に付着させて油ちょうする工程を含む以外は常法に従って製造することが出来る。例えば上記天ぷら衣材用そば粉又は天ぷら衣材用プレミックスに加水してバッター液として調製し、揚げ種に、任意に粉末調味料あるいは粉末調味料及び/又は液体調味料を含有する調味液で下味をつけ、任意に小麦粉等の穀粉を主体とする打ち粉を付着し、バッター液を被覆した後、60~190℃に熱した食用油の中で油ちょうすることによって製造される。
【0018】
本発明の天ぷらの製造においては、上記天ぷら衣材用そば粉以外に、通常天ぷらの製造に使用されるものであれば何れも使用することができる。例えば、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、ひえ粉、大豆粉、トウモロコシ粉などの穀粉類;小麦、タピオカ、馬鈴薯、甘藷、トウモロコシ、米、サゴヤシ等から得られる生澱粉及びこれらを化工処理(たとえば酸化、エーテル化、エステル化、架橋)した加工澱粉等;ベーキングパウダー、重曹、ふくらし粉、イスパタ等の膨張剤;鶏卵粉、卵白粉、卵黄粉等の卵加工粉末;乳蛋白質、植物性蛋白質、油脂、増粘多糖類、デキストリン、糖類、食塩、無機塩類、調味料、香辛料、香料、着色料、保存料等を例示することができる。
また本発明の天ぷらの製造方法において、油ちょうに使用する食用油としては、菜種油、ごま油、大豆油、コーン油、紅花油、オリーブ油、米油、綿実油、ひまわり油、サラダ油、ショートニング、ラードなどを使用できる。
また本発明の天ぷらの製造方法において、具材(揚げ種)は畜肉や魚介類、野菜、山菜等の食材が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0019】
油ちょう工程において、加熱温度や加熱時間に特に制限はないが、天ぷらの種類によって適宜変えることができる。
【実施例
【0020】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0021】
製造例1 標準的なそば粉の製造
中国産ぬき実(玄蕎麦からそば殻を取り除いたもの)を小型製粉機(株式会社國光社製「やまびこ号L型」)にて粉砕し、目開き180μmの篩で篩い分け、篩を通り抜けたものをそば粉Mとした。篩を通り抜けなかった粉砕物をさらに粉砕し、目開き180μmの篩で篩い分け、篩を通り抜けたものをそば粉A-1とした。篩を通り抜け無かった粉砕物をさらに粉砕し、同様に目開き180μmの篩で篩い分け、篩を通り抜けたものをそば粉A‐2とした。篩を通り抜けなかった粉砕物をさらに粉砕し、同様に目開き180μmの篩で篩い分け、篩を通り抜けたものをそば粉Bとした。同様に篩を通り抜けなかった粉砕物を粉砕して目開き180μmの篩で篩い分け、篩を通り抜けたものをそば粉B-2とした。篩を通り抜けなかった粉砕物をB-3とした。そば粉Bとそば粉B-2を質量比約7:3で混合してそば粉Cを得た。そば粉Bとそば粉B-2を質量比約4:6で混合してそば粉Dを得た。そば粉B-2とそば粉B-3を質量比約1:1で混合してそば粉Nを得た。
得られたそば粉をマイクロトラック法による粒度分布測定(マイクロトラック・ベル株式会社製、MT3000にて)及び近赤外分光光度測定(株式会社ニレコ社製:DS2500にて)に供したところ、そば粉の蛋白量及び平均粒径(体積基準メジアン径)は表1の通りであった。
表1
平均粒径は、粒度分布測定値の累積50%の粒径を記載している。
【0022】
試験1 天ぷら衣材用プレミックスの製造及びプレミックスを使用した天ぷらの製造
90質量部のそば粉(製造例1で得たそば粉)、10質量部のリン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業、パインベークCC)及び1質量部のベーキングパウダー(奥野製薬工業、トップふくらし粉750)をミキサー(エフ・エム・アイ社製、キッチンエイドミキサーKSM5)に投入し、ビーターを使用し低速で3分間混合してプレミックスを製造した。
プレミックス100質量部と水180質量部をボウルに投入して混合し、バッターを調製した。厚さ1cmの輪切りにしたさつまいもにバッターを付け、160~170℃の菜種油中で2分30秒間揚げて天ぷらを作製した。
なお、バッターを調製する際の水の量は、揚げ種に付着するバッター液が一定量になるように粘度調整するために、適宜増減させた。本試験例であれば、厚さ1cm、直径3.5cmのさつまいもに2~3gのバッター液が付着する程度の粘度であり、目安として800~1000mPa・sである。
得られた天ぷらを油切りし、揚げた直後(0時間)及び室温で3時間静置した後、熟練パネラー10名により評価基準表1に従って食感(サクサク感)を評価した。なお、評価基準においてそば粉に代えて小麦粉(日本製粉社製、ハート)を使用した標準的な天ぷら衣材用プレミックスを使用して製造した天ぷらの揚げ直後の評価を5点とし、標準的なそば粉であるそば粉Cを使用して製造した天ぷらの揚げ直後の評価を3点とした。結果を表2に示した。
【0023】
評価基準表1
表2
【0024】
そば粉A-2及びそば粉Bでは、揚げ立ての食感はサクサクとカリッとした歯切れがあり良好であったが、3時間後にはネチャつきがあり歯切れも悪くなった。そば粉C及びそば粉Dでは、揚げ立ては普通の食感であったが3時間後はネチャつきがあり歯切れも悪く、好ましくなかった。
【0025】
製造例2 そば粉の製造
産地の異なる各種ぬき実(中国産、ロシア産)を小型石臼(谷貝鉄工所製、石臼碾製粉機)にて粉砕し、得られたそば粉を目開き710μm、600μm、500μm、425μm、355μm、300μm、125μmの篩にて篩い抜けたそば粉E~L及びOを得た。そば粉A-1、そば粉M、そば粉Nは製造例1の方法により製造した。
なお、そば粉A-1、M及びN、そば粉E、F、H、J、K及びL、そば粉G及びIはそれぞれ同じむき実由来である。
各々のそば粉の蛋白量及び平均粒径を測定したところ、表3の通りであった。
表3
【0026】
試験2 天ぷらの食感に与えるそば粉の平均粒径の影響
そば粉をそば粉E~O又はそば粉A-1に変えた以外は試験1に従って天ぷらを製造し、評価基準表1に従って食感(サクサク感、ざらつき)を評価した。結果を表4に示した。
いずれのそば粉も揚げ立ての食感は歯切れ良く良好であった。実施例のそば粉E~I及びそば粉A-1は3時間後でも歯切れのある食感が保たれていたが、比較例のそば粉J~Mはややネチャつきがあり歯切れが悪くなった。特に平均粒径が300μmより大きいそば粉Oはザラツキや歯にあたる食感を感じ、衣材として適さなかった。蛋白含量17%を超えるそば粉Nはそばの風味は強いものの、ねちゃつきが感じられ衣材として適さない食感であった。
表4

【0027】
試験3 天ぷらの食感に与える澱粉の種類の影響
そば粉Hを使用して、澱粉の種類を表5のように変えた以外は試験1に従って天ぷらを製造し、評価基準表1に従って食感(サクサク感)を評価した。結果を表5に示した。
いずれの澱粉を使用した場合も揚げ立ての食感は歯切れ良く、3時間後も歯切れが良い食感が保たれていた。その中でも生澱粉、リン酸架橋澱粉、酸化澱粉はより歯切れの良い食感であった。
表5
生澱粉:馬鈴薯生澱粉(松谷化学工業、松谷かめ)
酢酸澱粉:酢酸タピオカ澱粉(松谷化学工業、松谷さくら2)
酸化澱粉:酸化タピオカ澱粉(松谷化学工業、スタビローズT10)
リン酸架橋澱粉:リン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業、パインベークCC)
エーテル化澱粉:ヒドロキシプロピルリン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業、ゆり)
【0028】
試験4 天ぷらの食感に与える澱粉の量の影響
そば粉Hを使用して、リン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業、パインベークCC)の量を変えた以外は試験1に従って天ぷらを製造し、評価基準表1に従って食感(サクサク感)を評価した。結果を表6に示した。
澱粉を5質量%添加した場合は0質量%よりも衣が軽く歯切れの良い食感となり、澱粉の添加量が増加するにしたがいより軽くサクサク感のある歯切れの良い食感になった。40質量%を超えて添加すると小麦粉を使用したプレミックスと同等の歯切れの良い食感となったが、硬めの食感で色調も白くそば粉の特徴がほとんど感じられないものとなった。
表6
【0029】
試験5 天ぷらの食感に与える乳化剤の影響
90質量部のそば粉H、10質量部のリン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業、パインベークCC)及び1質量部のベーキングパウダー(奥野製薬工業、トップふくらし粉750)に乳化剤(太陽化学、サンレシチンB11)を混合し、プレミックスを製造した。試験1に従って天ぷらを製造し、評価基準表1に従って食感(サクサク感)を評価した。結果を表7に示した。
乳化剤を配合した方がサクサク感と歯切れの良さが向上した。
表7
【0030】
試験6 天ぷらの食感に与える卵加工粉末の影響
90質量部のそば粉H、10質量部のリン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業、パインベークCC)、ベーキングパウダー(奥野製薬工業、トップふくらし粉750)、卵白粉末(太陽化学、サンキララ21)、卵黄粉末(ミツトモ)、全卵粉末(ミツトモ)を混合し、プレミックスを製造した。試験1に従って天ぷらを製造し、評価した。結果を表8に示した。その結果、そば粉に副資材等を混合したプレミックスにすることで、そば粉のみの場合よりサクサク感があり歯切れがよく、口溶けのよい食感となる天ぷらを製造することができた。
【0031】
表8